JP2003295579A - 帯電装置及びこれを備えた画像形成装置 - Google Patents

帯電装置及びこれを備えた画像形成装置

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JP2003295579A JP2003126450A JP2003126450A JP2003295579A JP 2003295579 A JP2003295579 A JP 2003295579A JP 2003126450 A JP2003126450 A JP 2003126450A JP 2003126450 A JP2003126450 A JP 2003126450A JP 2003295579 A JP2003295579 A JP 2003295579A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に形成さ
れる放電ギャップを確実にかつ均一に維持することが可
能な帯電装置を提供する。 【解決手段】可撓性を有するフィルム102の両端を支
持部材103〜105で支持、固定し、帯電用部材10
1が構成される。このフィルム102は比較的弱い機械
的当接力で被帯電体110に接触して領域Nを形成す
る。そして、電源106から電圧が供給されると、領域
Nのフィルム102と被帯電体110の導電性基体11
1との間には、機械的当接力より大きな静電的な吸着力
が働く。この静電吸着力によって、領域Nのフィルム1
02は被帯電体110に倣うように当接する。したがっ
て、例え、被帯電体に凹凸があっても、フィルムに働く
静電吸着力は、凹部、凸部共に略等しいため、フィルム
を被帯電体の軸方向に良く倣わせることができる。その
結果、安定した放電ギャップが形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリンター、ビデオプ
リンター、ファクシミリ、複写機、ディスプレー等の画
像形成装置に関し、特にこの装置に使用する帯電装置に
関する。更に詳しくは、外部から電圧を印加した帯電用
部材を被帯電体に接触させて被帯電体面の帯電処理もし
くは除電処理を行なう帯電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】以降、被帯電体として感光体を用い電子
写真方式により画像形成を行う画像形成装置に使用され
る帯電装置を例にして説明する。外部から電圧を印加し
た帯電用部材を被帯電体に接触させて被帯電体面の帯電
処理を行なう帯電装置は、帯電用部材を被帯電体である
感光体表面に接触させることで、帯電用部材と感光体と
の接触箇所近傍に空隙(つまり、放電ギャップ)を作
り、この空隙で生じる放電現象により、感光体を帯電さ
せるものである。この帯電装置は、コロナ帯電装置に比
べ、電源の低圧化が図れる、オゾン発生量が極めて少な
い等の利点があるため、注目され、実用化されている。
【0003】ここで、帯電用部材としては、特開昭55
−29837号公報に開示されるような導電性繊維ブラ
シ、特開昭56−132356号公報に開示されるよう
な導電性弾性ローラ、特公平2−14701号公報に開
示されるような導電性ブレードがあった。
【0004】さらに、近年、可撓性を有するフィルムを
帯電用部材として用いた帯電装置が提案されていた。特
開平4−86681号公報には、可撓性を有するフィル
ム(明細書中にはシートと記載されている)の両端を支
持し、弛み部の中央を感光体に接触させる構成の帯電装
置が開示されていた。また、USP5192974号に
は、可撓性を有するフィルムの一端を支持し、自由端部
を感光体に接触させる構成の帯電装置が開示されてい
た。また、USP5243387号には、回転可能なロ
ーラの回りに、ローラ径より内径の大きいチューブをか
ぶせ、チューブの感光体から遠い側をローラに押し当
て、弛み部を感光体に接触させる構成の帯電装置が開示
されていた。
【0005】また、均一帯電性を確保するために、帯電
用部材の表面粗さを規定した特許が出願されていた。例
えば、特開昭56−132356号公報に、導電性弾性
ローラの表面粗さと帯電ムラとの関係が開示されてい
た。USP5008706号においては、帯電用部材と
感光体との表面粗さの関係を規定していた。特開平2−
198468号公報においては、帯電用部材の最大粗さ
の範囲を規定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特開平4−
86681号公報に開示される帯電装置は、帯電用部材
と感光体との接触状態がフィルムの弛み方によって決定
されるため、不確実である。接触状態が不確実であるた
め、接触箇所近傍に形成される放電ギャップも不確実で
ありかつ安定しない。従って帯電の均一性が得られない
といった課題があった。さらに、フィルムの接触状態が
不確実であるため、フィルムが感光体を叩いて、帯電音
が発生するといった課題があった。
【0007】また、USP5243387号に開示され
る帯電装置も、帯電用部材と感光体との接触状態がチュ
ーブの弛み方によって決定されるため、不確実である。
従って帯電の均一性が得られないといった課題があっ
た。さらに、構成が複雑であるといった課題もあった。
【0008】さらに、USP5192974号に開示さ
れる帯電装置は、フィルムの自由端の稜線がわずかに変
形したり、また、稜線の精度がでていないと、フィルム
と感光体との接触が不均一になる。その結果、接触箇所
近傍に形成される放電ギャップも不均一になりかつ安定
性に乏しい。従って帯電の均一性が得られないといった
課題があった。
【0009】なお、特開平4−86681号公報には、
帯電用部材と被帯電体の背面側の導電体層間には電界が
発生して電気的な力が生じることは述べられている。と
ころが、この公報では、交流電圧重畳時の振動あるいは
騒音の発生原因としてその電気的な力を捉えているのみ
で、積極的に圧接力として使用する発想はなかった。
【0010】そこで、本発明は、これら課題を解決する
ものであって、その目的は、帯電用部材と感光体との接
触箇所近傍に形成される放電ギャップを確実にかつ均一
に維持することが可能な帯電装置を提供することにあ
る。また、他の目的は、感光体あるいは帯電用部材を摩
擦劣化させ難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を
行うことが可能な帯電装置を提供することにある。
【0011】さらに、他の目的は、クリーニングブレー
ドをすり抜けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物
が、帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に滞留し難い
帯電装置を提供することにある。さらに、他の目的は、
安定性・信頼性に優れた帯電装置を備え、高品質の画像
を得ることが出来る画像形成装置を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
めに、請求項1の発明の帯電装置は、外部より電圧が印
加された帯電用部材を被帯電体に接触させて帯電処理を
行う帯電装置において、前記帯電用部材の前記被帯電体
への当接力が、電圧が供給された状態で、主として、静
電吸着力によって与えられ、その静電吸着力による当接
力は機械的な当接力よりも大きいことを特徴とする。
【0013】また、請求項2の発明の帯電装置は、機械
的当接力が10(g/cm)以下であることを特徴とす
る。更に、請求項3の発明の帯電装置は、被帯電体の移
動開始後に帯電用部材に電圧を供給する、もしくは、帯
電用部材への電圧供給停止後に被帯電体の移動を停止す
ることを特徴とする。
【0014】更に、請求項4の発明の帯電装置は、前記
帯電用部材が、可撓性を有するフィルムの両端を支持部
材で固定支持された構成であり、電圧が供給された状態
で前記フィルムと前記被帯電体との接触領域より前記被
帯電体の移動方向の下流側の前記フィルムの曲率半径
が、前記接触領域より前記被帯電体の移動方向の上流側
の曲率半径よりも小さいフィルム形状を取ることを特徴
とする。
【0015】更に、請求項5の発明の帯電装置は、前記
帯電用部材が、可撓性を有するフィルムの両端を支持部
材で固定支持された構成であり、前記フィルムの固定端
間の距離をL1、前記フィルムの曲線上で前記フィルム
の最大距離を与える長さをL4とした場合、L1<L4
であることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。更
に、請求項6の発明の画像形成装置は、請求項1ないし
5のいずれか一つに記載の帯電装置を備えたことを特徴
とする。
【0016】
【作用】本発明の帯電装置及びこれを備えた画像形成装
置による作用は以下の通りである。まず、請求項1ない
し5記載の発明においては、機械的な当接力が小さいの
で被帯電体や帯電用部材を摩擦劣化させることがない。
さらに、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、接触
領域の下流側に流すことができる。そして、接触領域の
上流側に異物を過剰に滞留させることがない。
【0017】請求項3記載の発明においては、帯電装置
を動作させないときの当接力が弱いので、この期間を利
用することにより、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異
物を、接触領域の下流側により効率的に流すことができ
る。
【0018】請求項4および5記載の発明においては、
被帯電体との接触部の下流側の曲率を上流側よりも小さ
くすることにより、被帯電体の回転や電圧印加によって
も帯電用部材の形状が変形しにくいので、この結果、帯
電用部材と被帯電体との接触箇所近傍に形成される放電
ギャップを確実にかつ均一に維持することが可能とな
る。従って、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化さ
せ難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を行うこと
が可能な帯電装置を提供することが可能になった。
【0019】請求項6記載の発明においては、安定性・
信頼性に優れた帯電装置を備えることにより、過帯電や
帯電不足や帯電むらなどがないため、高品質の画像を得
ることができる。
【0020】
【実施例】以下図面に基づいて、本発明について詳細に
説明する。
【0021】(実施例1)図1は、本発明に係わる帯電
装置の実施形態を示す概略断面図である。図1(a)は
帯電用部材の概略断面図である。帯電用部材101は、
可撓性を有するフィルム102の両端を支持部材103
〜105で支持、固定し、フィルム102の支持されて
いない側を鉛直下向きに向けた状態で示されている。フ
ィルム102は、固定端S1、S2から下向きに撓み部
を形成する。この撓み部は、図に示すように、固定端間
の距離(固定端S1とS2の直線距離)を短くすると、
曲げに対する反発力によって涙滴に似た形状を描く。
【0022】図1(a)に示す帯電用部材101を、被
帯電体110に、フィルム102の支持されていない側
を被帯電体110の回転方向(図中矢印)の下流側に向
く形で接触させた状態が同図(b)である。図に示すよ
うに、フィルム102は涙滴に似た形状を示す。そし
て、フィルム102は接触領域Nで被帯電体110に接
触し、その領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上
流側の領域P1のフィルム102の曲率半径よりも、下
流側の領域P2のフィルム102の曲率半径の方が小さ
くなる。このようにフィルム102を被帯電体110に
接触させる構成が本発明の典型的な形態例である。
【0023】次に、このような帯電用部材を被帯電体で
ある感光体の接触させ帯電処理を行った例について説明
する。図1(b)において、被帯電体110は、導電性
基体111上に下引き層112、感光層113がこの順
に形成された構成である。図示しない駆動手段によって
矢印方向に回転可能に構成されている。一方、帯電装置
100は、帯電用部材101の支持部材104が電源1
06と接続される。そして、被帯電体110を矢印方向
に移動させ、と同時に、電源106から電圧を帯電用部
材101に供給すると、被帯電体110は帯電処理され
る。
【0024】ここで、被帯電体110を線速度30(m
m/s)で回転駆動しつつ、電源106により帯電用部
材101に直流電圧Vaを供給して、帯電処理直後の被
帯電体110の表面電位Vsを測定した。但し、表面電
位測定と帯電処理の間には図示しない除電手段によって
表面電位Vsの初期化を行っている。なお、使用した被
帯電体110の感光層113は、負帯電用機能分離型有
機感光層であり、比誘電率3.3、厚み20(μm)で
ある。
【0025】フィルム102の形状は、帯電処理を行っ
ても、図1(b)に示す形状を維持していた。つまり、
被帯電体110の回転、電圧印加を行っても、フィルム
102の形状は変化しなかった。
【0026】供給した電圧Vaと得られた表面電位Vs
との関係を図2 に示す。同図において、横軸は帯電用
部材101に印加した電圧Vaを、縦軸は表面電位Vs
を示す。図中、○印は、測定点を示し、実線は、測定点
を結んだ線である。結果から、0(V)>Va>−56
5(V)の範囲では、被帯電体110は帯電処理されな
い。つまり、帯電開始電圧Vthは、−565(V)で
ある。Vaの絶対値が565(V)以上の領域では、グ
ラフは傾き1の直線となる。つまり、被帯電体110の
表面電位Vs(V)は、 Vs=0 0>Va>−565 Vs=Va+565 −565≧Va となる。これは図3を用いて以下のように説明できる。
【0027】図3は、Paschen曲線と、空隙距離
gに対する空隙電圧Vgとの関係曲線とを示す図であ
る。同図において、横軸は被帯電体と帯電用部材との空
隙距離gを、縦軸は空隙電圧Vgもしくは破壊電圧Vb
を示す。曲線131(実線で示す)は、空隙距離gによ
って決まる破壊電圧Vbを示す、Paschenの曲線
である。曲線132(一点鎖線で示す)は、被帯電体と
帯電用部材の電位差が比較的大きい場合における、空隙
距離gと空隙電圧Vgとの関係曲線であり、曲線133
(破線で示す)は放電が起こる限界の電位差が空隙に存
在する場合の空隙距離gと空隙電圧Vgとの関係曲線で
ある。
【0028】帯電用部材と被帯電体表面との間に存在す
る空隙(放電ギャップ)に分圧される空隙電圧Vgが、
空隙距離gによって決まる破壊電圧Vbを超えると、帯
電用部材から被帯電体へと放電現象が生じる。具体的に
説明すると、帯電用部材と被帯電体表面とが徐々に接近
してくると、空隙距離gは減少する。そして電圧Vg
は、ポイントA1からポイントA2へと向かい、空隙の
静電容量が増大するに伴って空隙電圧Vgは小さくな
る。そして、空隙電圧Vgが破壊電圧Vbに至ると(ポ
イントA2)、帯電用部材から被帯電体へと電荷が放出
(放電現象)される。その結果、被帯電体の表面電位が
Vcとなる。そして、放電現象は、空隙距離gが減少す
るに伴って、Paschenの曲線131に沿って継続
し、ポイントA3に至る。ポイントA3はそれ以上空隙
距離gが小さくなっても空隙電圧Vgが破壊電圧Vbを
超えることがなくなる点であり、ここで放電現象は終了
する。その結果、帯電処理も終了し、被帯電体は、表面
電位Vsに帯電処理される。
【0029】ここで、破壊電圧Vb(つまり、曲線13
1)は、空隙距離gが8(μm)より大きい領域では
式、 Vb=−312−6.2g ・・・・(1) で表される。また、被帯電体の感光層の膜厚をdpc、
感光層の比誘電率をεpcとすると、空隙電圧Vg(つま
り、曲線132)は、 Vg=(Va−Vc)・g/{(dpc/εpc)+g} ・・・・(2 ) で表される。なお、Vaは帯電用部材に印加した電圧、
Vcは帯電処理前もしくは帯電処理中の被帯電体の表面
電位である。
【0030】ここで、実験に用いた感光層の厚さdpc=
20(μm)、感光層の比誘電率εpc=3.3を式(2)
に代入し、放電現象が終了する、ポイントA3における
(Va−Vs)およびgを求める(放電現象終了時点に
おける被帯電体の表面電位はVsであるので、式(2)に
おいて、VcをVsに書き直した)。Vb=Vg、Va
−Vs=Vthとして、曲線132に曲線131が接す
る条件(つまり、gに関する2次方程式が重解を持つ条
件)を求めると、 Vth=−565(V) g= 17.4(μm) となる。このVthの値は図2に示した閾値と一致す
る。以上の結果から、本発明の帯電装置の帯電処理は、
帯電用部材と被帯電体との間の空隙(放電ギャップ)に
おける放電現象によることが確認できた。
【0031】次に、放電ギャップの領域がどの程度にな
るのかを見積もってみる。例えば被帯電体の表面電位V
sを−700(V)に帯電する例とし、Va=Vs+V
th=−1265(V)として、式(1)、(2)からポイン
トA2の放電が開始する空隙距離を求めると、g=14
6(μm) となる。
【0032】以上の結果から、本発明の帯電装置の帯電
処理は、帯電用部材と被帯電体との間の空隙距離が略1
50(μm)〜略17(μm)の間の領域において、放
電現象を利用して行われることが解る。したがって、帯
電用部材と感光体表面との距離が徐々に近接して、その
空隙距離が概ね150(μm)以下となる領域を全帯電
領域にわたって均一に形成することが必要になる。本発
明の帯電装置は、かかる帯電用部材と感光体との間の放
電ギャップを安定的に形成することができる構成であ
る。
【0033】その理由を図1を用い以下に説明する。前
述のごとく、本発明の帯電装置は、フィルム102を接
触領域Nで被帯電体110に接触させ、その領域Nの被
帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィ
ルム102の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィ
ルム102の曲率半径の方が小さくなるような形状を取
る。
【0034】ここで、接触領域Nを形成する理由は、領
域Nの前後に、フィルム102と被帯電体110との間
に安定した放電ギャップを形成するためである。この領
域Nは被帯電体の軸方向に沿って(つまり、有効帯電幅
領域に)安定的に形成される必要がある。
【0035】本発明の帯電装置の場合、フィルム102
は比較的弱い機械的当接力で、被帯電体110に接触
し、領域Nを形成する。そして、電源106から電圧が
供給されると、領域Nのフィルム102と被帯電体11
0の導電性基体111との間には静電的な吸着力が働
く。この静電吸着力によって、領域Nのフィルム102
は被帯電体110に倣うように当接する。
【0036】ここで、領域Nを形成するための力が機械
的な力だけであると、その力を被帯電体の軸方向に分散
させ、フィルムを被帯電体に良く倣わせることは難し
い。例えば、被帯電体に凹凸が存在した場合、機械的な
力は、凸部に集中する。したがって、フィルムは被帯電
体の凸部近傍で接触するものの、他の領域では被帯電体
に接触しない領域が発生する。結果として、フィルムを
被帯電体の軸方向に倣わせることができない。
【0037】ところが、静電吸着力によってフィルムを
被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電体に凹凸があ
っても、フィルムに働く力は、凹部、凸部共に略等しい
ため、フィルムを被帯電体の軸方向に良く倣わせること
ができる。その結果、安定した放電ギャップが形成でき
る。なお、静電吸着力でフィルムを被帯電体の軸方向に
良く倣わせるためには、フィルムに可撓性が要求され
る。
【0038】次に、領域Nよりも下流側の領域P2に、
領域P1より曲率半径の小さな領域を形成する理由を説
明する。まず、フィルム102の領域Nの上流側の領域
P1が曲率半径の大きな領域であるため、被帯電体との
間に形成される放電ギャップは、領域Nに近づくに連れ
徐々に狭くなる。このような放電ギャップにおいては、
安定に放電が開始、また、継続し、その結果、被帯電体
110の表面電位を常に安定した値にできる。
【0039】また、前述のごとく、領域Nのフィルム1
02には、被帯電体110の回転、あるいは、電圧の印
加によって、下流側に向く力が働く。この力によって、
フィルムは下流側に変形しようとする。ところが、領域
Nよりも下流側の領域P2に曲率半径の小さな領域を形
成すると、フィルム102の変形を阻止する力が領域P
2の近傍で働く。さらに、下流側に向く力は、領域Nの
面積に比例して大きくなるが、領域Nよりも下流側の領
域P2に曲率半径の小さな領域を形成することで、領域
Nを必要最小限の面積にでき、従って、下流側に向く力
自体も小さくできる。その結果、フィルム形状が変化し
ない。
【0040】図1に示すフィルム形状の他に、フィルム
の両端を支持した構成を取り、フィルムの変形を阻止す
る力を発生させるような形状の例を図4〜6に示す。図
4は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す
概略断面図である。
【0041】図4は、帯電用部材を構成するフィルムを
チューブ状のフィルムに換えたものである。チューブ状
のフィルム202の内側に支持部材203を入れ、フィ
ルム202を支持部材203と共に、他の支持部材20
4に挿入して、帯電用部材201が形成される。この
時、フィルムは固定端S3、S4を持つ。そして、被帯
電体110に、フィルム202の支持されていない側が
被帯電体110の回転方向(図中矢印)の下流側に向く
形で接触させる。図に示すように、フィルム202は、
涙滴に似た形状を示す。そして、フィルム202は接触
領域Nで被帯電体110に接触し、その領域Nの被帯電
体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム
202の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム
202の曲率半径の方が小さい。ここで、チューブ状の
フィルムを用いると、フィルムを支持部材に支持する方
法を簡略化できる。
【0042】図5は、本発明に係わる帯電装置の他の実
施形態例を示す概略断面図である。図5は、帯電用部材
を構成するフィルムを多層構成のフィルムに換えたもの
である。さらに、フィルムの固定端間の距離を0(m
m)とした。
【0043】同図(a)は、非動作時の状態を示す図で
ある。導電層253上に抵抗層254が形成されたフィ
ルム252の両端を重ね合わせ、支持部材255に接着
して、帯電用部材251が構成される。そして、被帯電
体110の回転方向(図中破線矢印)の下流側にフィル
ム252の支持されていない側が向くように設置され、
帯電装置が構成される。なお、フィルム252の被帯電
体110に接する側の面に抵抗層254が形成される。
【0044】そして、非動作時の状態では、フィルム2
52は被帯電体110に非接触の状態、もしくは、接触
しているが強固には接触していない状態である。ここ
で、強固に接触していない状態とは、フィルムの機械的
な当接力が10(g/cm)以下である状態を指す。
【0045】同図(b)は、動作時の状態を示す図であ
る。被帯電体を矢印方向に回転させ、図示していない電
源から電圧を供給した状態である。電圧を印加すること
によって、電源→支持部材255→導電層253(面内
方向移動)→抵抗層254(厚み方向移動)という経路
で電荷(電流)が移動する。そして、フィルム252と
被帯電体110との間に静電吸着力が発生し、フィルム
252は接触領域Nで被帯電体110に接触する。この
力により、フィルム252は、形状を維持した状態で、
被帯電体110側に極わずか変位する。そして、フィル
ム252は、被帯電体110の軸方向に倣い、圧接され
る。その時、フィルム252は涙滴に似た形状を示す。
そして、領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流
側の領域P1のフィルム252の曲率半径よりも、下流
側の領域P2のフィルム252の曲率半径の方が小さい
形状を取る。
【0046】なお、この場合、動作開始時もしくは動作
終了時(電圧のオン時、オフ時)に、フィルム252は
極わずかに変位するが、動作中は変位することはなく、
領域Nは極めて安定している。これは、フィルム形状
が、領域P1のフィルム252の曲率半径よりも、領域
P2のフィルム252の曲率半径の方が小さい形状であ
るからである。
【0047】図6は、本発明に係わる帯電装置の他の実
施形態例を示す概略断面図である。図6は、フィルムの
支持方法を換えたものである。同図(a)の帯電用部材
301は、フィルム302の両端を、支持部材303、
304に固定端S5、S6となるように支持した構成で
ある。そして、図示していない電源から電圧が供給され
ると、フィルム302と被帯電体110との間には静電
吸着力が発生し、この力によって、フィルム302は被
帯電体110に領域Nで接触する。そして、被帯電体1
10の回転方向(図中矢印)の上流側の固定端S5から
領域Nまでのフィルム302は、略直線形状の領域P1
を有し、領域Nから下流側の固定端S6までのフィルム
302は、曲率半径の小さい領域P2を有している。こ
の場合も領域P1の曲率半径よりも領域P2の曲率半径
の方が小さい構成である。
【0048】同図(b)は、同図(a)の支持部材30
4を矢印310方向に移動し、領域Nに対し被帯電体1
10の回転方向(図中矢印)の下流側の領域P2の曲率
半径を同図(a)より小さくしたものである。図6
(a)に対し、図6(b)で示す帯電装置の方が、領域
P2の曲率半径が小さい。したがって、フィルムの変形
を阻止する力が大きくなるのでより望ましい。
【0049】本発明に係わる帯電装置の帯電用部材を構
成するフィルムの他の構成としては、単層のフィルム
(つまり、抵抗層のみで構成されたフィルム)、抵抗層
と表面層との2層フィルム、絶縁性の基材に導電層と抵
抗層とがこの順に形成された多層フィルム等、各種のバ
リエーションがある。
【0050】抵抗層は、導電性物質分散層や、導電性樹
脂、半導電性樹脂から形成した層である。導電性物質分
散層としては、下記物質群a)、b)を下記物質群c)〜f)か
ら選ばれる樹脂中、もしくは、下記物質群g)〜j)から選
ばれるゴム弾性を有する物質中に分散もしくは相溶し、
層状に形成したものである。導電性樹脂としては、下記
物質群b)から選ばれる物質が挙げられる。半導電性樹脂
としては、下記物質群c)から選ばれる物質が挙げられ
る。
【0051】導電層は、帯電用部材の支持部材から被帯
電体と接触する箇所の抵抗層へと電荷(電流)を供給す
る役割をする。したがって、抵抗層よりも低抵抗であれ
ばよい。導電層の例としては、金属蒸着層、導電性粒子
分散層、導電性樹脂から形成した層等がある。金属蒸着
層としては、アルミニウム、インジウム、ニッケル、ス
ズ、銅等の金属、合金を層状に蒸着したものが挙げられ
る。導電性物質分散層としては、下記物質群a)、b)を下
記物質群c)〜f)から選ばれる樹脂中に分散もしくは相溶
し、層状に形成したものが挙げられる。導電性樹脂とし
ては、下記物質群b)から選ばれる物質が挙げられる。
【0052】表面層は、フィルムの被帯電体に接触する
面に形成される層である。フィルムを摩耗等から守る、
保護層より下層の層からの低分子量成分の滲み出しを防
止する、トナー等の離型性を高める等の役割をし、下記
物質群c)〜f)から選ばれる物質からなる。さらに、下記
物質群a)、b)を下記物質群c)〜f)から選ばれる樹脂中に
分散もしくは相溶したものも挙げられる。絶縁性の基材
としては、下記物質群d)〜f)から選ばれる樹脂が挙げら
れる。
【0053】なお、抵抗層、表面層の抵抗値について
は、後述のように、その体積抵抗率を規定しても、実使
用時の抵抗値と一対一には対応しないことが解ってい
る。それは、一般に、抵抗層、保護層の抵抗は、電流依
存性を持つからである。フィルムの抵抗値については、
後述のような方法で測定される。
【0054】フィルムの作成方法であるが、まず、基材
を形成する。ここで、基材としては、絶縁性の基材、導
電層、抵抗層がある。基材の作成方法は、基材を構成す
る物質を、熱溶融→分散、相溶→押し出し成形し、フィ
ルム形状に成形する、あるいは、溶剤に溶解→分散、相
溶→(重合)→押し出し成形し、フィルム形状に成形す
る等の方法がある。基材上に導電層、抵抗層、保護層を
形成する方法としては、各々の物質を溶剤に溶解→分散
もしくは相溶→(重合)→ディップコートもしくはスプ
レーコートする方法がある。
【0055】(物質群) a)カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、ア
セチレンブラック、カーボンフィラー)、金属酸化粉
(例えば、ITO粉、SnO2 粉)、金属、合金粉(例
えば、Ag粉、Al粉)、塩(例えば、四級アンモニウ
ム塩、過塩素酸塩)。 b)ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジア
セチレン、ポリエチレンイミン等の導電性を有する樹
脂。 c)エチルセルロース、ニトロセルロース、メトキシメチ
ル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、共重合ナイ
ロン、ポリビニルピロリドン、ガゼイン等の樹脂、ある
いは、これらの樹脂の混合物。 d)ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル
樹脂、ポリスチレン、ポリ−1−メチルスチレン等のス
チレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルクロライド、
ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、
ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル樹脂、ポリ
カーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹
脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン
樹脂等の熱可塑性樹脂、またはこれらの共重合体、混合
体。
【0056】e)ポリビニルアルコール、ポリアリルアル
コール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポ
リアリルアミン、ポリビニルアクリル酸、ポリビニルメ
タクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリ乳酸、ガゼイン、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、デンプン、アラビアゴ
ム、ポリグルタミン酸、ポリアスバラギン酸、ナイロン
樹脂等の水溶性樹脂、またはこれらの共重合体、混合
体。
【0057】f)エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタ
ン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹
脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂。 g)天然ゴム。
【0058】h)シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシ
リコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴ
ム、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、スチレ
ンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレ
ンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴ
ム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエ
チレン、チオコール、等の合成ゴム、またはこれらのブ
レンド。
【0059】i)スチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリ
ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、メタクリル樹脂等を
含むエラストマー材料。j)ポリウレタンフォーム、ポリ
スチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、エラストマ
ーフォーム、ゴムフォーム等の軟質フォーム材料。
【0060】また、本発明に係わる帯電装置の帯電用部
材に供給する電圧は、直流電圧に限られず、直流電圧に
交流流電圧を重畳した電圧であっても良い。さらに、電
圧を供給するのではなく、電流を供給しても良い。ま
た、支持部材は、フィルムを支持する役目と、さらに、
フィルムに電圧(電流)を供給する役目を持つ。といっ
て、支持部材全てを導電性部材で構成する必要ない。例
えば、図1の場合、支持部材104のみを導電性部材で
構成し、支持部材103、同105を絶縁性部材で構成
しても良い。
【0061】本発明の上記構成を得るために必要な帯電
用部材の特性について、以下、具体例に基づいて詳細に
説明する。 (具体例1)具体例1として、フィルムの断面形状と帯
電性能との関係を調査した結果について説明する。な
お、帯電性能については、帯電装置を画像形成装置に搭
載し、解像度600(DPI=Dot Per Inch)で2×2
パターンをA4サイズの記録紙上に形成し、その記録紙
の画像の様子から、帯電ムラの状態を調べた。さらに、
画像形成装置の動作時、非動作時における帯電装置の様
子を観察した。
【0062】初めに、実験に用いた画像形成装置につい
て説明する。図7は、実験に用いた画像形成装置の概略
断面図であって、帯電装置として、図1で示す帯電装置
を搭載した例で示す。
【0063】接地された、円筒状の導電性基体(アルミ
ニウム素管)上に、下引き層(アルマイト層)、感光層
(負帯電用機能分離型有機感光層、感光層厚み20(μ
m)、感光層比誘電率3.3)がこの順に形成された、
外径30(mmφ)の被帯電体110が、画像形成開始
信号を受けて、図示していない搬送手段によって矢印方
向に30(mm/s)で回転を始める(動作開始)。帯
電用部材102の支持部材104に電源106から電圧
Va=−1.17(kV)が供給(通電)される。する
と、領域Nより上流側の放電ギャップにおいて、フィル
ム102から被帯電体110へと電荷が移動(放電現
象)し、被帯電体110表面が電位Vs≒−600
(V)に帯電処理される。なお、有効帯電幅は220
(mm)とした。
【0064】しかる後、図示していない潜像形成装置よ
り出射される光141により、600(DPI)の潜像
を被帯電体110上に形成する。ここで、形成する潜像
は、2×2パターンである。なお、2×2パターンと
は、600(DPI)の4ドット×4ドット四方のう
ち、2ドット×2ドット四方が露光されるようなパター
ンを言う。この潜像を現像装置142より反転現像す
る。なお、現像装置142は、主として、現像ローラ
と、その外周に摺接する供給ローラと、金属や樹脂で構
成される薄板バネ状の弾性ブレードと、トナーとからな
る。供給ローラによって現像ローラに供給されたトナー
は、弾性ブレードによって薄層形成され、被帯電体11
0と現像ローラが圧接されている現像領域まで搬送され
る。その過程でトナーは負帯電される。そして、被帯電
体110の電位コントラスト(潜像)及び現像電源(図
示せず)により形成される現像電界によって、トナーが
被帯電体110の露光箇所に選択的に現像される。被帯
電体110上に現像されたトナーは、矢印方向に移動す
るA4サイズの記録紙143へと転写装置144によっ
て転写される。なお、転写装置144は、主として、被
帯電体110に圧接し、被帯電体110と略等速で回転
駆動される転写ローラで構成される。転写ローラにトナ
ーの帯電極性と逆極性の電圧を供給することで、被帯電
体110上のトナーを記録紙143上に静電転写する。
そして、図示していない定着手段によって記録紙143
上にトナーが定着される。
【0065】転写後に被帯電体110に残留したトナー
は、クリーニング装置145によって除去される。な
お、クリーニング装置は、主として、被帯電体110に
当接するクリーニングブレードからなり、その機械的な
当接力によって、被帯電体110上に残留したトナーを
除去する。そして、被帯電体110は、再び帯電装置に
よって帯電処理される。このようにして、記録紙143
上に画像が形成される。
【0066】では、実験に使用した帯電装置を図8を基
に説明する。なお、図8、帯電用部材の取付パラメータ
を説明するための図であり、基本的には図1(b)と同
等な図である。
【0067】表1に示す帯電装置1〜3を準備した。な
お、フィルムは、 ナイロン樹脂 90(wt%) ファ
ーネスブラック 10(wt%) を溶融混練し、しかる
後、フィルム成形機で厚み50(μm)となるように押
し出して形成した。形成後のフィルムのヤング率を、J
IS K7127に則って測定したところ、50(kg
/mm2)であった。
【0068】ここで、固定端S1と固定端S2間の距離
をL1(mm)(図示せず)、固定端S1から固定端S
2に至るフィルム102の長さをL2(mm)(図示せ
ず)、固定端S1と固定端S2の中点を点Q1、被帯電
体の中心を点O、被帯電体110の頂点を点Q2、線分
OQ1の距離をL3(mm)(図示せず)、線分OQ2
を基準として、被帯電体の回転方向を正方向として、∠
Q1OQ2をα(°)、さらに、∠S2Q1Oをβ
(°)とする。さらに、フィルム102の曲線上で点Q
1から最も遠い点を点Q3、線分Q1Q3に垂直な方向
で、フィルム102の最大距離を与える長さをL4(m
m)とした。帯電装置1〜3における詳細な設定条件を
表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】先ず、帯電装置1〜3の動作時、非動作時
の様子を観察した。帯電装置1〜3の動作時の様子を各
々図9(a)〜(c)に示す。同図(a)〜(c)にお
いて、各々、帯電用部材は番号、401、411、42
1に、フィルムは、402、412、422に対応す
る。
【0071】動作時のフィルムと被帯電体との接触領域
(ニップ)Nは、帯電装置1〜3共に、0.4(mm)
であった。そして、被帯電体の軸方向に均一な領域Nを
形成していた。さらに、動作時のフィルムの領域P2の
曲率半径は、帯電装置1〜3共に、0.5(mm)程
度、また、領域P1の曲率半径は、各々概ね、4(m
m)、3(mm)、3(mm)であった。そして、帯電
装置1〜3の非動作時のフィルム形状と動作時の形状と
は等しく、涙滴に似た形状を維持した。また、領域Nも
等しかった(したがって非動作時の様子は図には示さな
い)。さらに、動作時のフィルム形状、ならびに、領域
Nは常に安定していた。この理由は、上述のごとく、領
域P2に曲率半径の小さな領域(概ね0.5(mm)の
曲率半径)を形成したこと、ならびに、領域Nが0.4
(mm)と小さいこと、による。なお、涙滴に似たフィ
ルム形状は、L1<L4となるようにフィルムを支持部
材に支持することで得られる。
【0072】次に、2×2画像を形成した。帯電装置1
〜3は、良好で均一な画像を形成できた。この理由は以
下の通りである。フィルムの領域P1が曲率半径の大き
な領域であるため、被帯電体との間に形成される放電ギ
ャップが、領域Nに近づくに連れ徐々に狭くなる。そし
て、この放電ギャップは上述のごとく、フィルムの形状
が変化しないので、安定に存在する。したがって、安定
に放電が開始、また、継続し、その結果、均一な帯電が
できたのである。したがって、2×2画像も均一な画像
になる。
【0073】次に、帯電装置1〜3のフィルムと被帯電
体との間に働く力を測定した。測定は、被帯電体の周
に、他端にバネばかりを取り付けた糸を巻き付け、その
糸を30(mm/s)で引っ張った時にバネばかりに発
生する力を測定した。その測定値を、動摩擦係数で除し
た値をフィルムと被帯電体との間に働く力とした。な
お、測定は、帯電用部材に電圧を印加しない(非動作
時、フィルムの被帯電体への機械的当接力)時と電圧を
印加した時とで行った。動摩擦係数は、JISK712
5に則って測定した。その結果、動摩擦係数は0.3で
あった。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】表2に示すように、帯電装置1〜3共に、
機械的当接力は弱く、さらに、動作時の当接力も、比較
的弱い。ただし、動作時には、前述のごとく、静電吸着
力が働く。この静電吸着力によって、フィルムは被帯電
体の軸方向に倣う。
【0076】本発明のように、静電吸着力によってフィ
ルムを被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電体に凹
凸があっても、フィルムに働く力は、凹部、凸部共に略
等しい。さらに、その力は部分に集中することがない。
したがって、比較的弱い力でフィルムを被帯電体の軸方
向に倣わせることができる。その結果、安定した放電ギ
ャップが形成できる。
【0077】さらに、本発明の帯電装置は、帯電用部材
の被帯電体への当接力が弱い。そのため、被帯電体ある
いは帯電用部材を摩擦劣化させることがない。さらに、
クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添
剤や紙粉等の異物を、領域Nの下流側に流すことができ
る。そして、領域Nの上流側に異物を過剰に滞留させる
ことがない。したがって、長期にわたり、安定で均一な
帯電処理を行うことが可能となる。
【0078】さらに、帯電用部材の被帯電体への当接力
は非動作時の方がより弱い。したがって、被帯電体の回
転開始後に電圧を印加する、もしくは、電圧の供給をや
めた後に被帯電体の回転を停止すると、領域N近傍に滞
留している異物をより効果的に領域Nの下流側に流すこ
とができるので望ましい。あるいは、画像領域外におい
て、一時的に帯電用部材に供給する電圧を遮断しても同
様な効果が得られる。
【0079】(具体例2)具体例2として、フィルムの
変形を阻止する力を発生できる条件を、フィルムの曲げ
モーメントに着目して調べた。上述のごとく、領域Nの
下流側に曲率半径の小さな領域P2を形成した場合、そ
の領域P2の曲げモーメントとフィルムの変形の阻止力
とに関係があるかを調べた。
【0080】具体例1に示した帯電装置2をベースに、
帯電用部材の取付方等は変更せず、フィルム材質を表3
に示す材質に変更して実験を行った。評価は、具体例1
と同様にして行った。なお、表3には、帯電装置2の値
も併せて記した。
【0081】ここで、フィルムの曲げモーメントについ
て説明する。フィルムのヤング率をE(kg/m
2)、厚みをt(mm)、有効帯電幅をw(mm)、
曲率半径をρ(mm)とすると、フィルムの断面2次モ
ーメントI(mm4)および曲げモーメントM(kg・
mm)は、 I=w・t3/12 M=E・I/ρ=w・t3・E/(12・ρ) となる。表3に示す計算において、具体例1の結果から
ρ=0.5(mm)、w=220(mm)とした。
【0082】
【表3】
【0083】帯電装置4〜11の動作時及び非動作時の
様子を観察した。帯電装置4〜10は、非動作時のフィ
ルム形状と動作時のフィルム形状とは等しかった。さら
に、動作時のフィルム形状ならびに領域Nは常に安定し
ていた。帯電装置11は、動作開始時にフィルムが被帯
電体の回転方向下流側に引っ張られるように極わずか変
形した。そして、動作時に、領域Nは極わずか振動し
た。しかし、動作時のフィルム形状は安定していた。
【0084】次に、2×2画像を形成した。帯電装置4
〜10は、良好で均一な2×2画像を形成できた。帯電
装置11は、細く縦に延びる断続的な低濃度部が極希に
発生したが、これは、実用上問題にならない程度であっ
た。
【0085】結果から、望ましいフィルムの曲げモーメ
ントの範囲は、0.002(kg・mm)以上であるこ
とが解った。それによって、フィルムの変形を阻止する
力を発生させることができ、したがって、領域Nの上流
側の領域P1を安定的に維持することができる。
【0086】(具体例3)具体例3として、被帯電体の
軸方向にわたって領域Nを適正に形成できる条件を、フ
ィルムの曲げこわさに着目して調べた。つまり、フィル
ムに要求される可撓性について調査した。
【0087】実験は、図5に示す帯電装置をベースに行
った。帯電用部材の取付方は変更せず、フィルム材質を
変えて、以下に示す帯電装置12〜21を準備した。帯
電用部材の取付方を具体例1に則って標記すると表4の
ごとくなる。評価は、具体例1と同様にして行った。
【0088】
【表4】
【0089】<帯電装置12>過塩素酸リチウムを相溶
させた厚み0.04(mm)のポリウレタンからなる抵
抗層を形成し、その裏面ににカーボンブラックを分散さ
せた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からな
る導電層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に
対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗
値は、R=4×106(Ω)であった。
【0090】<帯電装置13>カーボンブラックを分散
させた厚み0.07(mm)のポリウレタンからなる抵
抗層を形成し、その裏面にカーボンブラックを分散させ
た厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からなる
導電層を形成し、さらに、抵抗層表面(導電層がない
側)に、架橋剤としてクエン酸を配合したN−メチルメ
トキシ化ナイロンからなる厚み0.01(mm)の表面
層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に対し、
導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、
R=1×107(Ω)であった。
【0091】<帯電装置14>カーボンブラックを分散
させた厚み0.04(mm)の導電性ポリウレタン樹脂
からなる抵抗層を形成し、その裏面にカーボンブラック
を分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹
脂からなる導電層を形成したフィルムを用いた。なお、
抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部
材の抵抗値は、R=8×106(Ω)であった。
【0092】<帯電装置15>カーボンブラックを分散
させた厚み0.040(mm)の導電性ポリウレタン樹
脂からなる抵抗層を形成したフィルムを用いた。帯電用
部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0093】<帯電装置16>架橋剤としてメラミンを
配合した、N−メチルメトキシ化ナイロン層からなる厚
み0.010(mm)の抵抗層を、0.025(mm)
厚みのポリエステル基材の上に形成したフィルムを用い
た。帯電用部材の抵抗値は、R=2×107(Ω)であ
った。
【0094】<帯電装置17>カーボンブラックを分散
させた厚み0.1(mm)のエピクロルヒドリン−エチ
レンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層(弾性を有す
る抵抗層)上に、厚み0.01(mm)のポリピロール
を配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる表面
層を形成したフィルムを用いた。なお、表面層に対し、
抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=2
×107(Ω)であった。
【0095】<帯電装置18>カーボンブラックを分散
させた厚み0.44(mm)のエピクロルヒドリン−エ
チレンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層(弾性を有
する抵抗層)上に、厚み0.01(mm)のポリピロー
ルを配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる表
面層を形成したフィルムを用いた。なお、表面層に対
し、抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R
=2×107(Ω)であった。
【0096】<帯電装置19>ファーネスブラックを分
散させ、厚み0.09(mm)に形成したポリエステル
樹脂を抵抗層として形成したフィルムを用いた。帯電用
部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0097】<帯電装置20(比較例)>厚み0.07
5(mm)のポリエステル基材の上に、カーボンブラッ
クを分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン
樹脂からなる導電層を形成し、さらに、架橋剤としてク
エン酸を配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからな
る厚み0.02(mm)の抵抗層を形成したフィルムを
用いた。なお、抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗と
した。帯電用部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)で
あった。
【0098】<帯電装置21(比較例)>カーボンブラ
ックを分散させた厚み0.6(mm)のエピクロルヒド
リン−エチレンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層
(弾性を有する抵抗層)上に、厚み0.1(mm)のポ
リピロールを配合したN−メチルメトキシ化ナイロンか
らなる表面層を形成したフィルムを用いた。なお、表面
層に対し、抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値
は、R=2×107(Ω)であった。
【0099】ここで、フィルムの曲げこわさについて説
明する。フィルムのヤング率をE(kg/mm2)、厚
みをt(mm)、有効帯電幅をw(mm)とすると、フ
ィルムの断面2次モーメントI(mm4)および曲げこ
わさB(kg・mm2)は、 I=w・t3/12 B=E
・I=w・t3・E/12 となる。表5に示す計算にお
いて、w=225(mm)とした。なお、表5に示すヤ
ング率Eは、JIS K7127に則って測定した。
【0100】
【表5】
【0101】帯電装置12〜21の動作時及び非動作時
の様子を観察した。いずれも、非動作時のフィルム形状
と動作時のフィルム形状とは等しかった。さらに、動作
時のフィルム形状、ならびに、領域Nは常に安定してい
た。
【0102】次に、2×2画像を形成した。帯電装置1
2〜19は、良好で均一な2×2画像を形成できた。と
ころが、帯電装置20、21は、細く縦に延びる低濃度
部と、縦に延びる高濃度部が発生し、均一な画像(すな
わち帯電)は得られなかった。これは、実用上問題にな
る程度である。
【0103】これは、帯電装置12〜19の場合、動作
時、フィルムと被帯電体の導電性基体との間に働く静電
吸着力によって、領域Nのフィルムは被帯電体に倣うよ
うに当接する。ところが、帯電装置20、21の場合、
フィルムが硬いため(曲げこわさが大きいため)、静電
吸着力によってフィルムを被帯電体に当接させることが
できず、フィルムを被帯電体の軸方向に良く倣わせるこ
とができないのだと考えられる。その結果、安定した放
電ギャップが形成できず、帯電ムラが発生したのだと考
える。以上の結果から、フィルムの曲げこわさは3.8
(kg・mm2)以下が必要であることが解った。
【0104】さらに、 M:フィルムの曲げモーメント B:フィルムの曲げこわさ w:有効帯電幅(mm) t:フィルム厚み(mm) E:フィルムのヤング率(kg/mm2) ρ:フィルムと被帯電体の接触領域の下流側のフィルム
の曲率半径 とすると、具体例2、3の結果は、
【0105】
【数1】
【0106】である。不等式(3)、(4)から、 0.024・ρ≦w・t3・E≦45.6 ・・・・(5) なる関係式が導出される。ここで、 w=220(mm)、ρ=0.5(mm) であるとすれば、不等式(5)は、 0.00005≦t3・E≦0.21 ・・・・(6) とできる。したがって、本発明の帯電装置の帯電用部材
のフィルムは、不等式(6)を満足するフィルムが好まし
い。フィルムの材質としては、ナイロン系樹脂、ポリエ
チレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹
脂、ポリウレタン系樹脂、エピクロルヒドリン−エチレ
ンオキサイド共重合系ゴム等が好ましい。特に、ナイロ
ン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂が
好ましい。
【0107】(具体例4)具体例4では、フィルムの被
帯電体への機械的当接力を0(g/cm)とした例を示
す。
【0108】図10は、本発明に係わる帯電装置の他の
実施形態例を示す概略断面図である。同図(a)は、非
動作時の状態を示す図である。導電層503上に抵抗層
504が形成されたフィルム502の両端を重ね合わ
せ、支持部材505に接着して、帯電用部材501が構
成される。そして、帯電用部材501は、αが略70
(°)、βが略160(°)となるように設置される。
このように設置すると、非動作時の状態では、フィルム
502と被帯電体110との間に極わずかな隙間を形成
する。
【0109】図10(b)は、動作時の状態を示す図で
ある。被帯電体を矢印方向に回転させ、図示していない
電源から電圧を供給した状態である。同図(a)におい
て、図示していない電源より電圧を印加することによっ
て、電源→支持部材505→導電層503(面内方向移
動)→抵抗層504(厚み方向移動)という経路で電荷
(電流)が移動する。そして、フィルム502と被帯電
体110との間に静電吸着力が発生し、フィルム502
は接触領域Nで被帯電体110に接触する。この力によ
り、フィルム502は、形状を維持した状態で、被帯電
体110側に極わずか変位する。そして、被帯電体11
0の軸方向に倣い、圧接する。フィルム502は、領域
Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1
のフィルム502の曲率半径よりも、下流側の領域P2
のフィルム252の曲率半径の方が小さい形状を取る。
【0110】このような取付方の帯電装置においては、
フィルム252は、動作、非動作で、被帯電体110に
対し接、離をする。フィルム252の被帯電体への当接
力を測定したところ、非動作時0(g/cm)、動作時
2.4(g/cm)であった(なお、フィルム252と
被帯電体110との動摩擦係数は0.73であった)。
【0111】なお、この場合、動作開始時もしくは動作
終了時(電圧のオン時、オフ時)に、フィルム252は
極わずかに変位するが、動作中は変位をすることはな
く、また、動作中の領域Nも極めて安定している。
【0112】本具体例のように、静電吸着力のみによっ
てフィルムを被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電
体に凹凸があっても、フィルムに働く力は、凹部、凸部
共に略等しい。さらに、その力は部分に集中することが
ない。したがって、比較的弱い力でフィルムを被帯電体
の軸方向に倣わせることができる。その結果、安定した
放電ギャップが形成できる。また、帯電用部材の被帯電
体への当接力が弱い。そのため、被帯電体あるいは帯電
用部材を摩擦劣化させることがない。
【0113】さらに、帯電用部材の被帯電体への当接力
は電圧印加時のみしか働かない。したがって、被帯電体
の回転開始後に電圧を印加する、もしくは、電圧の供給
をやめた後に被帯電体の回転を停止することによって、
領域N近傍に滞留している異物を領域Nの下流側に流す
ことができる。その結果、領域Nの上流側に異物を滞留
させることがない。したがって、長期にわたり、安定で
均一な帯電処理を行うことが可能となる。
【0114】(具体例5)具体例5では、帯電用部材の
抵抗値Rについて検討した。具体例1に示す帯電装置1
をベースに、帯電用部材の取付方等は変更せず、フィル
ム組成比と、フィルム膜厚と、有効帯電幅を変化させ
た。ここで、帯電用部材の抵抗値Rは、フィルム組成比
(ナイロン樹脂と導電剤との組成比)を変えることで変
化させた。フィルム膜厚は45(μm)、有効帯電幅は
225(mm)とした。
【0115】そして、抵抗値Rの異なる帯電用部材によ
り被帯電体の帯電を行い、帯電特性を調べた。ただし、
本発明において抵抗値Rとは帯電用部材に帯電に必要な
電流を流した時の抵抗を言う。さらに、実際に、具体例
1で示す画像形成装置にて、2×2、べた白、べた黒画
像を形成し、画像品質も調べた。
【0116】帯電用部材の抵抗値Rと帯電特性との関係
を図11に示す。図11において、横軸は帯電用部材の
抵抗値Rの対数値log(R)(Ω)、縦軸は被帯電体
の表面電位Vsの絶対値である。図中の記号は測定環境
を表し、□印はNN環境(20℃、50%RH)、○印
はHH環境(35℃、65%RH)、△印はLL環境
(10℃、15%RH)である。
【0117】図11に示されるように、環境により帯電
性能は異なるが、いずれの環境においても、表面電位V
sが抵抗値Rに依存せず、一定になる領域があることが
解る。この領域が、前述のPaschenの放電による
帯電が行われる領域である。この領域は、帯電用部材の
抵抗値Rが106〜3×107(Ω)の範囲内である。
【0118】抵抗値Rが106(Ω)以下では、Pas
chenの放電による帯電と、いわゆる電荷注入による
帯電とが行われる。これは、帯電用部材と被帯電体との
間に形成される放電ギャップにおいて、Paschen
の放電による帯電が行われ、さらに、領域N(ニップ)
内において、電荷注入による帯電が行われる。そのた
め、被帯電体の表面電位Vsは、帯電用部材の抵抗値R
が106〜3×107(Ω)の場合の表面電位Vsに比
べ、絶対値が大きな値になる。そして、帯電用部材の抵
抗値が減少するにつれ、電荷注入による帯電の寄与が大
きくなり、したがって、表面電位Vsの絶対値はより大
きくなる。例えば、帯電用部材の抵抗値Rが1桁低下す
ると、表面電位Vsの絶対値は200(V)程度上昇す
る。
【0119】抵抗値Rが108(Ω)以上でも、Pas
chenの放電による帯電が行われる。しかし、帯電に
必要な電流の供給が間に合わない、いわゆる、時定数遅
れと呼ばれる現象が発生し、帯電効率が低下する。その
ため、被帯電体の表面電位Vsは、帯電用部材の抵抗値
Rが106〜3×107(Ω)の場合の表面電位Vsに比
べ、絶対値が小さな値になる。そして、帯電用部材の抵
抗値Rが大きくなるにつれ、帯電効率の低下が著しくな
り、したがって、表面電位Vsの絶対値はより小さくな
る。例えば帯電用部材の抵抗値が1桁上昇すると、表面
電位Vsの絶対値は400(V)以上低下する。
【0120】次に、図12に表面電位Vsと画像品質と
の関係を示す。図12において、縦軸は表面電位Vsの
絶対値、横軸は、画像品質の項目である。なお画像品質
は、べた黒画像の画像濃度、2×2画像の画像ムラ、べ
た白画像の白地汚れの程度を評価した。図中にプロット
されている○、△、×印は、各々、良好もしくはムラ、
汚れが認められない(○)、実用上問題のないレベル
(△)、濃度不足もしくはムラ、汚れが目立ち、実用上
問題になる(×)である。また、各項目とも環境をパラ
メータとした。
【0121】図12より、表面電位Vsの絶対値が大き
くなると、画像濃度の低下、画像ムラならびに白地汚れ
の程度が悪化し、その程度が実用上問題のない表面電位
の絶対値は740(V)以下であることが解る。また、
表面電位Vsの絶対値が小さくなると、画像ムラ、白地
汚れの程度が悪化し、その程度が実用上問題のない表面
電位の絶対値は450(V)以上であることが解る。つ
まり、画像品質を確保するのに必要な表面電位Vsは−
740〜−450(V)の範囲であることが解る。さら
に望ましい表面電位は、環境によって異なり、NN環境
では−600(V)、HH環境では−620(V)、L
L環境では−580(V)であることが解る。
【0122】図11を用い、好ましい帯電用部材の抵抗
値の範囲を求めると、3×105〜1×108(Ω)とな
る。さらに望ましくは、Paschenの放電による帯
電が行われる領域内1×106〜3×107(Ω)であ
る。帯電用部材の抵抗値Rが上記範囲であれば、画像品
質を保証可能な表面電位を確保できる。
【0123】ここで帯電用部材の抵抗値Rの測定方法を
説明する。図1(b)に示す帯電装置において、被帯電
体を同一形状の導電性の円筒電極に変えた以外は、円筒
電極の表面移動速度、帯電用部材の円筒電極への押圧力
等は全て実際の帯電条件と同様にする。そして、被帯電
体を所定表面電位Vsに帯電するために必要な電流と同
一の電流を帯電用部材に流す。その時の帯電用部材と円
筒電極との間の電圧を測定することにより、帯電用部材
の抵抗値Rを求める。この測定方法の最も重要な点は、
帯電に必要な電流を帯電用部材に流して帯電用部材の抵
抗値を求めることにある。
【0124】なお、帯電に必要な電流は、実際の帯電処
理時の電流値を測定するか、もしくは、下式により求め
られる。
【0125】 I=εpc・εo・w・vp・Vs/dpc ここで、I(μA)は所定表面電位Vs(V)に帯電す
るために必要な電流、w(mm)は帯電用部材の有効帯
電幅、dpc(mm)は被帯電体の感光層の厚み、εp
cは被帯電体の感光層の比誘電率、vp(mm/se
c)は被帯電体の表面移動速度、εo(F/mm)は真
空の誘電率である。ちなみに、本実施例においては、感
光体ドラムを表面電位Vs=−600(V)に帯電する
のに必要な電流はI=−5.9(μA)である。
【0126】上記より、明かなように、本発明における
帯電用部材の抵抗は、実際の帯電時の状態を反映するも
のであり、単なる帯電用部材の体積抵抗率とは異なるも
のである。詳細に説明すると、帯電用部材の抵抗値は電
流(もしくは電圧)に依存する。一般に、電流が変化す
ると、抵抗も変化する。さらにまた、帯電用部材は被帯
電体と接触しているため、実際の帯電時の帯電用部材の
抵抗は、電気的な接触抵抗を含み、かつ、帯電用部材と
被帯電体との接触状態に依存する。例えば、被帯電体の
移動速度を変化させると、抵抗も変化する。よって、帯
電用部材に帯電に必要な電流を流し、かつ、帯電用部材
と電極との接触状態を被帯電体とのものと同一にして測
定した抵抗が、実際の帯電時の状態を反映する。
【0127】なお、具体例5で述べた内容については、
本発明に限定される内容でなく、帯電用部材が固定され
被帯電体を帯電処理する帯電装置一般に適用される内容
である。例えば、帯電用部材をデッキ型ブラシで構成し
た帯電装置や、帯電用部材をブレードで構成した帯電装
置等に適応可能である。
【0128】(実施例2)フィルムを種類を変えて帯電
用部材を構成し、画像形成を行ったところ、紙の進行方
向に平行に、スジ状の高濃度部(白スジ)が画像に発生
する場合があった。これは、何らかの原因で過帯電箇所
が発生したためである。
【0129】そこで、過帯電箇所に対応するフィルムを
観察したところ、領域N近傍のフィルム表面に突起が存
在していた。この突起を含む領域を走査型レーザー顕微
鏡(レーザーテック社製、1LM21)にて観察した。
【0130】図13に、フィルムの断面プロファイルを
示す。図中の実線が断面プロファイル、破線は中心線で
ある。図から、突起高さと突起大きさを計測する(図
中、高さ、大きさと記載)と、突起高さは6.2(μ
m)、また、突起の大きさは83(μmφ)であった。
なお、突起高さは、中心線からの高さとした。
【0131】このように、突発的な突起が領域N近傍に
存在すると、突起先端から被帯電体に向けて異常な火花
放電が生じる。もしくは、領域N内に存在すると、その
箇所に過剰な圧力が印加され、その結果、電荷が被帯電
体に直接注入される。このようなことにより、被帯電体
に過帯電箇所が生じるものと考えられる。
【0132】ここで、フィルムの表面粗さをJIS B
0601に則って測定したところ、Rz=1.2(μ
m)、Rmax=1.8(μm)であった。ここで、J
ISB0601で定義される表面粗さは、母平均の推定
のためのランダムな抜き取り試験で求められる値であ
る。したがって、傷と見なされるような並外れた高い山
や深い谷がない領域から基準長さ(測定領域)を抜き取
る必要がある。そのため、突発的に存在する突起の領域
は排除して基準長さを選定する。したがって、JIS
B0601で定義される表面粗さには、突発的な突起は
全く反映されない。
【0133】つまり、JISで定義される表面粗さには
反映されない、突発的な突起についても考慮しないと均
一帯電ができないことが解った。以降、突発的な突起と
JISで定義される表面粗さを区別するため、JISで
定義される表面粗さをベースの粗さとする。
【0134】上述のフィルムの領域Nならびにその上、
下流0.5(mm)の領域の表面を、くまなく走査型レ
ーザー顕微鏡で検査した。結果、上述の突発的な突起の
他に、高さ3.4(μm)、大きさ42(μmφ)の突
発的な突起が1つ確認できた。ただし、この突起に対応
する箇所の画像に、過帯電に起因する白スジは確認でき
なかった。
【0135】そこで、突発的な突起と帯電均一性との関
係を調べた。故意に突発的な突起を領域N近傍に数ヶ形
成して、突発的な突起と画像との関係を調べた。結果の
一覧を表6に示す。なお表6には、故意に作製した突起
の高さと、その突起に対応する箇所の画像に白スジが発
生したかを記す。画像の欄において、○:白スジが観察
できず、×:白スジが観察された、を示す。
【0136】
【表6】
【0137】次に、ベースの粗さをRz=2.5(μ
m)、Rmax=3.6(μm)としたフィルムを用意
した。このフィルムに故意に突発的な突起をニップ近傍
に数ヶ形成した。そしてこのフィルムを同様に評価し
た。結果の一覧を表7に示す。
【0138】
【表7】
【0139】ここで、突起の高さは、中心線からの高さ
としてきたが、中心線にRz/2の値を加えた線を基準
線として、その基準線からの高さとする。なお、新たに
定義した突起高さのことを実効的突起高さと呼称する。
【0140】図14は、定義した実効的突起高さを説明
するための図である。同図は、図13で示される断面プ
ロファイルにおいて、定義した実効的突起高さを示す図
である。図中の実線は断面プロファイル、破線は中心
線、一点鎖線は基準線である。また、基準線からの高さ
が実効的突起高さである。実効的突起高さに注目して、
表6、7を書き直して見る。結果を表8に示す。
【0141】
【表8】
【0142】表8の結果から、実効的突起高さと画像と
に関係があり、実効的突起高さが、4.4(μm)以上
であると、その突起により、被帯電体が過剰帯電され、
したがって、白スジ状の画像欠陥が発生することが解
る。つまり、高さが、 (Rz/2+4.4)(μm)
以上である、突発的な突起が領域N近傍に存在してはい
けない、ことが解る。
【0143】この結果から、帯電用部材の領域N近傍に
存在する突発的な突起の高さを、(Rz/2+4.4)
(μm) 未満とすると、異常帯電が防止でき、均一帯
電が可能となる。なお、この議論は、接触型帯電装置全
般に適応できる。例えば、ローラ帯電装置、ブレード帯
電装置である。
【0144】
【発明の効果】本発明の帯電装置によれば以下のような
効果を有する。請求項1ないし5記載の発明によれば、
機械的な当接力が小さいので被帯電体や帯電用部材を摩
擦劣化させることがない。さらに、トナーやトナー外添
剤や紙粉等の異物を、接触領域の下流側に流すことがで
きる。そして、接触領域の上流側に異物を過剰に滞留さ
せることがない。請求項3記載の発明によれば、帯電装
置を動作させないときの当接力が弱いので、この期間を
利用することにより、トナーやトナー外添剤や紙粉等の
異物を、接触領域の下流側により効率的に流すことがで
きる。
【0145】請求項4および5記載の発明によれば、帯
電用部材と被帯電体との接触箇所近傍に形成される放電
ギャップを確実にかつ均一に維持することが可能とな
る。また、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させ
難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を行うことが
可能な帯電装置を提供することが可能となる。さらに、
クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添
剤や紙粉等の異物が、帯電用部材と感光体との接触箇所
近傍に滞留し難い帯電装置を提供することが可能にな
る。
【0146】請求項6記載の発明によれば、安定性・信
頼性に優れた帯電装置を備えることにより、過帯電や帯
電不足や帯電むらなどがないため、高品質の画像を得る
ことができる。さらに、クリーニングブレードをすり抜
けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物が帯電装置に
滞留することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる帯電装置の実施形態を示す概
略断面図である。同図(a)は帯電用部材の概略断面図
であり、同図(b)は、同図(a)の帯電用部材を搭載
した帯電装置の概略断面図である。
【図2】 本発明に係わる帯電装置において、帯電用部
材に供給した電圧Vaと得られた被帯電体の表面電位V
sとの関係を示す図である。
【図3】 Paschen曲線と、空隙距離gに対する
空隙電圧Vgとの関係曲線とを示す図である。
【図4】 本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を
示す概略断面図である。
【図5】 本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を
示す概略断面図である。同図(a)は非動作の状態を、
同図(b)は動作時の状態を示す。
【図6】 同図(a)、(b)は、本発明に係わる帯電
装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
【図7】 本発明に係わる帯電装置を搭載した画像形成
装置の概略断面図である。
【図8】 本発明に係わる帯電装置の帯電用部材の取付
パラメータを説明するための図である。
【図9】 同図(a)〜(c)は、本発明に係わる帯電
装置の動作時の様子を示す概略断面図である。
【図10】本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を
示す概略断面図である。同図(a)は非動作の状態を、
同図(b)は動作時の状態を示す。
【図11】本発明に係わる帯電装置の帯電用部材の抵抗
値と帯電特性との関係を示す図である。
【図12】本発明に係わる帯電装置を搭載した画像形成
装置において、被帯電体の表面電位と画像品質との関係
を示す図である。
【図13】帯電不良を起こしたフィルム表面の断面プロ
ファイルを示す図である。
【図14】定義した実効的突起高さを説明するための図
である。
【符号の説明】
1…潜像担持体、7…現像装置、8…現像剤、9…現像
剤担持体、10…シャフト、11…弾性層、12…塗工
層、50…ローラーコーター、54…磁性塗料、61…
均平化部材、72…潤滑剤
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗原 一 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 (72)発明者 池上 昭彦 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 (72)発明者 ▲浜▼ 高志 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 (72)発明者 吉岡 研二郎 長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコ ーエプソン株式会社内 Fターム(参考) 2H200 FA02 FA08 FA09 FA10 FA17 FA19 GA14 GA16 GA23 GA33 GA44 GA49 GA59 GB12 HA03 HA22 HA29 HB13 HB14 HB21 HB31 HB43 HB45 HB46 HB47 HB48 JA02 JA28 LA18 LA19 LA38 LA40 MA03 MA04 MA05 MA06 MA17 MA20 MB01 MB02 MC02 MC03 NA02 NA06 PA05 PA10 PA11 PA14

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外部より電圧が印加された帯電用部材を
    被帯電体に接触させて帯電処理を行う帯電装置におい
    て、 前記帯電用部材の前記被帯電体への当接力が、電圧が供
    給された状態で、主として、静電吸着力によって与えら
    れ、その静電吸着力による当接力は機械的な当接力より
    も大きいことを特徴とする帯電装置。
  2. 【請求項2】 機械的当接力が10(g/cm)以下で
    あることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
  3. 【請求項3】 被帯電体の移動開始後に帯電用部材に電
    圧を供給する、もしくは、帯電用部材への電圧供給停止
    後に被帯電体の移動を停止することを特徴とする請求項
    1記載の帯電装置。
  4. 【請求項4】 前記帯電用部材は、可撓性を有するフィ
    ルムの両端を支持部材で固定支持された構成であり、電
    圧が供給された状態で前記フィルムと前記被帯電体との
    接触領域より前記被帯電体の移動方向の下流側の前記フ
    ィルムの曲率半径が、前記接触領域より前記被帯電体の
    移動方向の上流側の曲率半径よりも小さいフィルム形状
    を取ることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
  5. 【請求項5】 前記帯電用部材は、可撓性を有するフィ
    ルムの両端を支持部材で固定支持された構成であり、前
    記フィルムの固定端間の距離をL1、前記フィルムの曲
    線上で前記フィルムの最大距離を与える長さをL4とし
    た場合、L1<L4であることを特徴とする請求項1記
    載の帯電装置。
  6. 【請求項6】請求項1ないし5のいずれか一つに記載の
    帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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