JP3976221B2

JP3976221B2 - ガス軟窒化法

Info

Publication number: JP3976221B2
Application number: JP2000257143A
Authority: JP
Inventors: 尚人竹内; 晋一斉藤
Original assignee: Dowa Holdings Co Ltd; Dowa Mining Co Ltd
Current assignee: Dowa Holdings Co Ltd
Priority date: 2000-08-28
Filing date: 2000-08-28
Publication date: 2007-09-12
Anticipated expiration: 2020-08-28
Also published as: JP2002069609A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の硬化法、詳しくは、ガス軟窒化法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、鋼の硬化法としてのガス軟窒化法は、アンモニアガス（ＮＨ_３ガス）と吸熱型変成ガス（ＲＸガス：ブタン変成ガスの場合の組成比率は、ＣＯ：２４容量％、Ｎ_２：４４容量％、Ｈ_２：３１容量％）の混合ガス雰囲気中で、鋼を５００〜６００℃に加熱処理して行われている。
【０００３】
すなわち、前記混合ガス中のＮＨ_３ガスと一酸化炭素（ＣＯ）が、鋼の表面で、下記（式１）及び（式２）のように反応し、これによって生成された窒素（Ｎ）及び炭素（Ｃ）が鋼中に拡散して化合物層を形成する。
【０００４】
２ＮＨ_３ →２（Ｎ）＋３Ｈ_２・・・（式１）
２ＣＯ →ＣＯ_２＋（Ｃ）・・・（式２）
この時、ＮはＣよりも拡散速度がはやく、鋼内部に深く侵入して拡散層を形成する。一方、Ｃは鋼表面で微細な炭化物を形成するとともに、窒化物の核として作用し硬い化合物層〔ε−Ｆｅ_２ −_３（Ｃ，Ｎ）〕を形成する。
【０００５】
しかしながら、前記反応式において、鋼表面へのガス吸着速度は、ＣＯガスの方がＮＨ_３ガスよりはやく、混合ガスのＣＯ／ＣＯ_２の比率が高い場合にはＮＨ_３ガスの鋼表面への接触を妨げることになる。
【０００６】
さらに、ＣＯ／ＣＯ_２の比率が、Ｂｏｕｄｏｕａｒｄ反応の平衡値を越えると、５００〜６００℃のガス軟窒化処理温度域では、前記（式２）の反応が進むようになる。該（式２）の反応が盛んにおこると鋼表面に微細なＣが析出し、より一層、ＮＨ_３ガスの接触が妨げられて、窒化が行われにくくなる。
【０００７】
さらに、従来のガス軟窒化法においては、前記（式１）の反応により、炉内の水素分圧が高くなって窒化速度が遅くなるという問題が生じるため、窒化反応を促進するために水素分圧を下げることが必要になる。そして、そのためには多くのＮＨ_３ガスを必要とせざるを得ないものであった。一般にこれまでのＮＨ_３ガスとＲＸガスの混合比率は、１．５〜２：１程度であり、高価なＮＨ_３ガスを大量に必要とするものであった。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
前記事情に鑑み、本発明は、従来のガス軟窒化法のように、高価なＮＨ_３ガスを大量に使用することなく、ＮＨ_３ガスとＲＸガスの混合比率を、１〜１．５：１程度に低減させ、従来とほぼ同等の品質の処理品を得ることができるガス軟窒化法を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、アンモニアガス（ＮＨ_３ガス）と吸熱型変成ガス（ＲＸガス）との混合比率が１〜１．５：１の軟窒化雰囲気に対して、総ガス添加量の２〜８容量％の二酸化炭素ガス（ＣＯ_２ガス）をさらに添加して被処理物の加熱処理を行うことを特徴とするガス軟窒化法である。
【００１０】
前記本発明によれば、これまでのＮＨ_３ガスとＲＸガスの供給量に、さらに適量のＣＯ_２ガスを添加してＣＯ／ＣＯ_２の比率を下げてＣＯ分圧を下げることに合わせてＮＨ_３ガス分圧を下げることでＮＨ_３ガスの比率を低減する。
【００１１】
さらに、適量のＣＯ_２ガスを添加することで、下記式（３）のように、水性ガス反応によりＨ_２分圧を下げてＮＨ_３ガスを低減させる。
【００１２】
ＣＯ_２＋Ｈ_２ →ＣＯ＋Ｈ_２Ｏ・・・（式３）
すなわち、ＣＯ_２ガスを添加すると、炉内のＨ_２と反応するので、ＮＨ_３ガスの解離が進みやすくなると同時に、窒化反応を阻害するＨ_２と反応するため、窒化速度を増すことができ、ＮＨ_３ガス量を低減できるものと考えられる。
【００１４】
なお、前記ＣＯ_２ガスの添加量は、実験の結果、総ガス添加量に対してＣＯ_２ガスの添加量を５容量％とした場合が、最も厚い化合物層及び硬さを得ることができ、前記ＣＯ_２ガスの添加量を約５容量％とした場合を頂点にして、４〜１容量％及び６〜１０容量％へ放物線を描き、２〜８容量％の添加において効果が確認されたものである。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の一実施の形態を説明する。図１には、本発明の方法を実施したバッチ炉が示されている。図中、１はラジアントチュ−ブ型ヒ−タ、２は攪拌用ファン、３は攪拌用ファンの駆動用モ−タ、４は供試材である。
【００１６】
また、５はＮＨ_３ガス供給管、６はＲＸガス供給管、７はＣＯ_２ガス供給管であり、図示のごとく、前記ＮＨ_３ガス供給管５及び前記ＲＸガス供給管６は、炉外において一本に集約されて炉内に導入され、前記ＣＯ_２ガス供給管７は、独立した別の供給管として炉内に導入されている。
【００１７】
【実施例１】
供試材：Ｓ４５Ｃ
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０．１２（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：１．７容量％
炉内温度：５７０℃
処理時間：２時間
なお、以下の各実施例における供試材、炉内温度及び処理時間は、いずれも前記実施例１と同様である。
【００１８】
【実施例２】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０．２４（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：３．３容量％
【実施例３】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０．３６（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：４．９容量％
【実施例４】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０．４８（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：６．４容量％
【実施例５】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０．６０（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：７．９容量％
【比較例】
供試材：Ｓ４５Ｃ
ガス添加量：ＮＨ_３ : ＲＸ :ＣＯ_２＝５：２：０（ｍ^３／Ｈ）
炉内温度：５７０℃
処理時間：２時間
この比較例は、ＣＯ_２ガスを添加せず、前記実施例１〜５と同じ供試材及び同じ条件によるガス軟窒化処理である。
【００１９】
前記実施例１〜５及び前記比較例における化合物層及び表面硬度測定結果を下記表１、図２及び図３に示す。
【００２０】
【表１】
前記表１、図２及び図３を検討すると、総ガス添加量に対してＣＯ_２ガスを２〜８容量％を添加することにより、ＣＯ_２ガスを添加しない場合に比べて、優れた化合物層の厚さ及び硬さが得られることが確認された。
【００２１】
すなわち、比較例における化合物層１５μに対して、実施例１、実施例２及び実施例４では１８μ、実施例３では２０μ、実施例５では１７μであり、比較例に比べてＣＯ_２ガスを添加した各実施例の化合物層が厚く形成されていることが確認された。
【００２２】
また、比較例における硬さＨｖ８１３に対して、実施例１ではＨｖ８２２、実施例２ではＨｖ８４８、実施例３ではＨｖ８５８、実施例４ではＨｖ８３５、実施例５ではＨｖ８１３であり、比較例以上の硬度の向上が確認された。
【００２３】
つぎに、ＮＨ_３ガスの供給量を減少させ、ＮＨ _３ガスとＲＸガスとの混合比率を、１〜１．５：１としたガス軟窒化処理を試みた。該ガス軟窒化処理は、ＮＨ３ガスの添加量を２〜４ｍ３／Ｈの範囲で減少させることにより行われた。
【００２４】
【実施例６】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝４：２：０．３３（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：５．２容量％
【実施例７】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝３：２：０．２７（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：５．１容量％
【実施例８】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝２：２：０．２１（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：４．９容量％
【実施例９】
ガス添加量：ＮＨ_３：ＲＸ :ＣＯ_２＝３：３：０．３０（ｍ^３／Ｈ）
ＣＯ_２ガス：４．７容量％
前記実施例６〜９及び前記比較例における化合物層及び表面硬度測定結果を下記表２に示す。なお、比較例は前記比較例に同じ。
【００２５】
【表２】

前記表２を検討すると、ＮＨ_３ガス量を４ｍ^３／Ｈに減少させた場合に、比較例を越える化合物層の厚さと硬さの最大値が得られ、ＮＨ_３ガスを２〜３ｍ^３／Ｈに減少させた場合にも化合物層の厚さは比較例を越える値であるが、硬さの点において比較例より値が下がることが確認された。
【００２６】
下記表３には、ＮＨ_３ガスを低減した場合の原価ガス費としてのコストダウン例が示されている。
【００２７】
【表３】

前記表３を検討すると、前記比較例１のガス原価比を基準１００とした場合において、実施例６では８１、すなわち、１９％のコストダウン、実施例７では６２、すなわち、３８％のコストダウン、実施例８では４３、すなわち、５７％のコストダウンが試算された。
【００２８】
前記のごとく、ＮＨ_３ガス及びＲＸガスからなる雰囲気にＣＯ_２ガスを添加すると、該ＣＯ_２ガスが炉内のＨ_２と反応し、ＮＨ_３ガスの解離が進みやすくなると同時に、窒化反応を阻害するＨ_２と反応し、窒化速度を早め、結果的にＮＨ_３ガスの使用量を低減できるものと考えられる。
【００２９】
【発明の効果】
本発明によれば、従来のガス軟窒化法と同等の実用可能な化合物層及び硬度を、高価なＮＨ_３ガスの使用量を低減して得ることができ、経済的である効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のガス軟窒化法を実施したバッチ炉の縦断面図である。
【図２】ＣＯ_２ガス添加量と化合物層の厚さの関係を示す曲線図である。
【図３】ＣＯ_２ガス添加量と硬さの関係を示す曲線図である。

Claims

アンモニアガスと吸熱型変成ガスとの混合比率が１〜１．５：１の軟窒化雰囲気に対して、総ガス添加量の２〜８容量％の二酸化炭素ガスをさらに添加して被処理物の加熱処理を行うことを特徴とするガス軟窒化法。