JP3975818B2 - インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体、インクジェット受理コ−ティング剤、インクジェット記録紙およびインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法 - Google Patents

インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体、インクジェット受理コ−ティング剤、インクジェット記録紙およびインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方式において使用される記録媒体にコ−ティングされ、インクジェットインクの受理層としての役割を果たすインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体、該樹脂粒子水性分散体を必須成分として含むインクジェット受理コ−ティング剤、該コ−ティング剤が塗布されたインクジェット記録紙およびインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録媒体は、多くの場合セルロ−スパルプを主成分とする紙等が用いられている。これらの記録媒体は、インクジェットインクのような水性インクを印字させると、にじみや染み込みにより印刷画像の鮮明性等が低下する。これを防止し、画像品位を向上させるために、記録媒体の表面を親水性ポリマ−を含むコ−ティング剤で処理したり、シリカやアルミナ等の無機化合物をコ−ト処理する技術が実用に供されているが、かかる技術によっても十分な画像品位を得ることはできず、また処理することによって紙等の記録媒体の重量が増し、取り扱いに不便が生じていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、良好な画像品位を得ることのできるインクジェット受理コ−ティング剤として好適に使用できる樹脂粒子水性分散体とその製造方法、該樹脂粒子水性分散体を含むコーティング剤および該コーティング剤を塗布したインクジェット記録紙を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、本発明の課題を達成すべく鋭意検討した結果、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、ガラス転移温度が−50〜70℃、重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなるポリエステル樹脂(A)を、体積平均粒子径が500nm〜10μmのポリエステル樹脂粒子として水性媒体中に分散させることにより得られる水性分散体をインクジェット受理コーティング剤として用いると、インクのにじみや染み込みがなく鮮明に印字でき、優れた画像品位が得られ、インクジェット受理コーティング剤として好ましく使用できること、該コーティング剤でコーティングされたインクジェット記録紙は、インクのにじみや染み込みがなく鮮明に印字でき、得られる画像の品位が良好で、更に、コーティング後も従来の記録紙よりも軽量であること、上記水性分散体を調製するに際し、ポリエステル樹脂(a)を含有する樹脂溶融体(I)を用い、該ポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部の中和と、該樹脂溶融体(I)の溶融状態での0.2〜1.0MPaの圧力下における加熱された水性媒体への分散と、冷却とを行うことにより、体積平均粒子径が500nm〜10μmの樹脂粒子を含む水性分散体を、無溶剤下に界面活性剤を必要とせずに得ることができること等を見出し、本発明をなすに至った。
【0005】
即ち、本発明は、体積平均粒子径が500nm〜10μmのポリエステル樹脂粒子が水性媒体中に分散されているポリエステル樹脂粒子水性分散体であって、該ポリエステル樹脂が、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、かつ、示差走査熱量測定法(DSC法)によるガラス転移温度が−50〜70℃で、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−法(GPC法)による重量平均分子量が3,000〜100,000で、下記一般式(1)で表される末端構造を有する酸価が8〜100mgKOH/gであるポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなるポリエステル樹脂(A)であることを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体を提供するものである。
【化2】
Figure 0003975818
(式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数が4〜20のアルキル基または炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表すが、共に水素原子であることはない。)
【0006】
また、本発明は、前記インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体を必須成分として含有することを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記インクジェット受理コ−ティング剤がコ−ティングされていることを特徴とする、インクジェット記録紙を提供するものである。
【0008】
更に、本発明は、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、かつ、示差走査熱量測定法(DSC法)によるガラス転移温度が−50〜70℃で、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−法(GPC法)による重量平均分子量が3,000〜100,000で、下記一般式(1)で表される末端構造を有する酸価が8〜100mgKOH/gであるポリエステル樹脂(a)を必須成分として含有する樹脂溶融体(I)を用い、該ポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部の中和と、該樹脂溶融体(I)の溶融状態での加熱された水性媒体(II)中への0.2〜1.0MPaの圧力下での分散とを行った後、冷却を行うことを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法を提供するものである。
【化2】
Figure 0003975818
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるポリエステル樹脂(a)は、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、かつ、DSC法によるガラス転移温度が−50〜70℃で、GPC法による重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリエステル樹脂であればよく、例えば、
▲1▼アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸やその無水物と、二価のアルコールを必須として、必要に応じて、その他の二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等を混合し、窒素雰囲気中で加熱下に酸価と水酸基価を測定しながら脱水縮合する方法、
▲2▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須の成分として調製した、末端に水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を有していても良い)を加熱溶解し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する酸無水物を投入し、ポリエステル樹脂の末端水酸基に開環付加させる方法、
▲3▼二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとを必須の成分として調製した、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂(主鎖中にカルボキシル基や水酸基を含有していても良い)を加熱溶融し、そこにアルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を投入し、ポリエステル樹脂の末端カルボキシル基の一部に開環付加させる方法、
等の製造方法により調製できる。
【0010】
前記した調製方法で使用される装置としては、窒素導入口、温度計、攪拌装置、精留塔等を備えた反応容器等の回分式の製造装置が好適に使用できるほか、脱気口を備えた押出機や連続式の反応装置、混練機等も使用できる。また、前記脱水縮合の際、必要に応じて反応系を減圧することによって、エステル化反応を促進することもできる。さらに、エステル化反応の促進のために、種々の触媒を添加することもできる。
【0011】
ポリエステル樹脂(a)の有するアルキル基、アルケニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0012】
前記調製方法▲1▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する二塩基酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクチル無水コハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸等が挙げられる。
【0013】
2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族ジオ−ル類;ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルF等のビスフェノ−ル類;ビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノ−ルAのプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノ−ルAアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル、水添ビスフェノ−ルA等のアラルキレングリコ−ルまたは脂環式のジオ−ル類等が挙げられる。
【0014】
その他の二塩基酸やその無水物としては、例えば、マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、修酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、ヘキサヒドロフタル酸およびその無水物、テトラブロムフタル酸およびその無水物、テトラクロルフタル酸およびその無水物、ヘット酸およびその無水物、ハイミック酸およびその無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族又は脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
【0015】
三官能以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
【0016】
一塩基酸としては、例えば、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸等が挙げられる。
【0017】
三官能以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−ト等が挙げられる。
【0018】
また、三官能以上の多価アルコールとして、下記に示すようなポリエポキシ化合物も挙げられる。例えば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、水添ビスフェノールA等の種々の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0019】
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の種々のフェノ−ル性水酸基の2個を含有する化合物のポリグリシジルエーテル類;前記したフェノ−ル性水酸基の2個を含有する化合物のエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド付加体等の誘導体のジグリシジルエーテル類;
【0020】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の種々のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の種々の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
【0021】
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネン、ビニルシクロヘキセン等の各種の炭化水素系ジエンのビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の種々の脂環式ポリエポキシ化合物;ポリブタジエン、ポリイソプレン等の種々のジエンポリマーのエポキシ化物等が挙げられる。
【0022】
一価のアルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0023】
製造方法▲2▼のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を調整するのに用いる、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとしては、例えば、製造方法▲1▼で示した、その他の二塩基酸やその無水物、二価のアルコール等を用いることができる。
【0024】
また、例えば、製造方法▲1▼に示した、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等も必要に応じて調製しても良い。
【0025】
製造方法▲2▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する酸無水物としては、例えば、n−ブチル無水コハク酸、n−ペンチル無水コハク酸、ネオペンチル無水コハク酸、n−ヘキシル無水コハク酸、n−ヘプチル無水コハク酸、n−オクチル無水コハク酸、イソオクチル無水コハク酸、2−エチルヘキシル無水コハク酸、n−ドデシル無水コハク酸、イソドデシル無水コハク酸、n−ドデセニル無水コハク酸、イソドデセニル無水コハク酸、6−ブチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、6−n−オクチル−1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0026】
製造方法▲3▼のカルボキシル基含有ポリエステル樹脂を調整するのに用いる、二塩基酸やその無水物と二価のアルコールとしては、例えば、製造方法▲1▼で示した、その他の二塩基酸やその無水物、二価のアルコール等を用いることができる。
【0027】
また、例えば、製造方法▲1▼に示した、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸、三官能以上の多価アルコール、一価のアルコール等も必要に応じて調製しても良い。
【0028】
製造方法▲3▼で使用する、アルキル基やアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物としては、例えば、ヒマシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸等、種々の飽和あるいは不飽和の脂肪酸のモノグリシジルエステルや、イソノナン酸、バ−サチック酸等の分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル等が挙げられる。前記した分岐脂肪酸のモノグリシジルエステルの市販品としては、カージュラE10(シェルケミカル社製)等が挙げられる。
【0029】
前記した、二塩基酸やその無水物、三官能以上の多塩基酸やその無水物、一塩基酸は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、カルボキシル基の一部または全部がアルキルエステル、アルケニルエステル又はアリ−ルエステルとなっているものも使用できる。
【0030】
前記した、2価のアルコール、3価以上の多価アルコール、1価のアルコールは、単独で使用してもよいし2種以上のものを併用しても良い。また、例えば、ジメチロ−ルプロピオン酸、ジメチロ−ルブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸等の、1分子中に水酸基とカルボキシル基を併有する化合物あるいはそれらの反応性誘導体も使用できる。
【0031】
ポリエステル樹脂(a)は、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、DSC法によるガラス転移温度が−50〜70℃で、GPC法による重量平均分子量が3,000〜100,000であるポリエステル樹脂であれば良いが、なかでも、前記調製方法▲2▼で得られる、末端に水酸基を有するカルボキシル基含有ポリエステル樹脂の末端水酸基にアルキル基またはアルケニル基を有する酸無水物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂(a−2)や、調製方法▲3▼で得られる、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂の末端カルボキシル基にアルキル基またはアルケニル基を有する脂肪族モノエポキシ化合物を開環付加させて生成する末端構造を有するポリエステル樹脂(a−3)が、樹脂を粒子状で水性媒体中に分散させた際に樹脂粒子が安定に分散できることから好ましい。この際使用する末端に水酸基を有するポリエステル樹脂や末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、既にアルキル基やアルケニル基を含有していても良いし、含有していなくても良い。
【0032】
ポリエステル樹脂(a)は、ポリエステル樹脂(a−2)の有する末端構造やポリエステル樹脂(a−3)の有する末端構造を、それぞれ単独でポリエステル樹脂1分子中に含んでいても良いし、これらの末端構造を両方有していてもよい。
【0033】
ポリエステル樹脂(a)は、なかでも、調製方法▲2▼で得られる一般式(1)で表される末端構造や、調製方法▲3▼で得られる一般式(2)または(3)で表される末端構造を有するポリエステル樹脂が特に好ましい。
【化3】
Figure 0003975818
(式中、R1及びR2は、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数が4〜20のアルキル基又は炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表すが、両方ともに水素原子であることはない。また、R3は炭素原子数が4〜20のアルキル基又は炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表し、R4 は炭素原子数が4〜20のアルキル基又は炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表す。)
【0034】
前記一般式(1)、(2)及び(3)中のR〜Rが示している炭素原子数が4〜20のアルキル基や炭素原子数が4〜20のアルケニル基は、直鎖状でも分岐状でも良く、例えば、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ドデシル基、ドデセニル基等が挙げられる。
【0035】
次に、ポリエステル樹脂(a)の性状について説明する。
ポリエステル樹脂(a)は、コ−ティング剤として使用した場合に良好な造膜性を示す必要があるので、その示差走査熱量測定法(DSC法)によるガラス転移温度(Tg)が−50〜70℃の範囲にある必要があり、好ましくは−30〜50℃、更に好ましくは10〜50℃の範囲が適切である。−30〜50℃の範囲のTgを有するポリエステルを調製するためには、特に制限はないが室温よりも低い温度域にTgを有するポリエステルを調製する場合は、たとえばアルコール成分として、1,4−ブタンジオ−ル、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ジエチレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル等の分岐部分をもたない炭素数が4以上の直鎖状グリコ−ルを使用することが好ましく、その使用量も全アルコ−ル成分中20モル%以上が好ましく、50モル%以上であることがさらに好ましい。また、この場合使用する酸成分についても芳香族二塩基酸類に替えて/又は併用して、炭素数が4以上の直鎖状二塩基酸、たとえばアジピン酸、セバチン酸、ドデカン二酸等を使用することが好ましい。さらにかかる二塩基酸類の使用量も全酸成分中20モル%以上であることが好ましく、さらに50モル%以上であることがさらに好ましい。
【0036】
ポリエステル樹脂(a)は、該樹脂中のカルボキシル基の一部乃至全部が塩基性化合物により中和されることにより微細な粒子化が容易で、かつ、粒子が水性媒体中で安定に存在することができることから、カルボキシル基を有していることが必須である。ポリエステル樹脂(a)の酸価は、8〜100mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、15〜50mgKOH/gの範囲であることがより好ましい。
【0037】
カルボキシル基の一部乃至全部の中和に用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ化合物、それらの炭酸塩、それらの酢酸塩;アンモニア水;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類等を使用することができる。これらは、単独でも2種以上でも構わない。なかでもアンモニア水が好ましい。
【0038】
ポリエステル樹脂(a)は、GPC法による重量平均分子量が3,000〜100,000であることが必要である。重量平均分子量をこの範囲にするためには、前記したポリエステルを調製する際に使用される原料の中で、3官能以上の原料の使用量を仕込み重量中5%以下とすることが好ましく、2%以下とすることがさらに好ましい。また、アルコール成分と酸成分との当量比(Eg/Ea、Egはアルコ−ル成分の全当量数、Eaは酸成分の全当量数)は、1.1以上であることが好ましい。ポリエステル樹脂(a)は、コーティング剤の耐水性を良好とするために、GPC法による重量平均分子量が、5,000〜20,000の範囲にあることが好ましい。
【0039】
次に、本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体中のポリエステル樹脂粒子と、該ポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂(A)について説明する。ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(a)の有するカルボキシル基の一部ないし全部が前記した塩基性化合物によって中和されてなるものである。ポリエステル樹脂粒子は、その体積平均粒子径が500nm〜10μmの範囲にあるものである。良好な平滑性を得るためには体積平均粒子径がこの範囲にあることが必要であり、さらに1μm〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0040】
かかる範囲の粒子径をもつ水性分散体を得るためには、ポリエステル樹脂(A)のもつカルボキシル基が塩基性化合物で中和される程度は、ポリエステル樹脂(A)1000gあたりの中和されたカルボキシル基の量が0.10〜1.80モルの範囲にあることが好ましく、0.20〜0.90モルの範囲がより好ましい。
【0041】
本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体中の樹脂粒子としては、その内部に、好ましくは複数個の空隙部分を有する樹脂粒子が好ましい。かかる空隙の存在により、インクジェットインクの吸収が良くなりドット状に印字されたインクが瞬時に固定され、その結果画像の輪郭がシャ−プとなって印刷品位が著しく向上する。また、空隙の他の効果として、粒子の密度が小さくなり、より軽量な粒子を調製できることから、本発明のコ−ティング剤で処理することによりインクジェット記録紙の軽量化が図れる。
【0042】
次に、本発明のインクジェット受理コ−ティング剤について説明する。
本発明のインクジェット受理コ−ティング剤は、本発明のポリエステル樹脂(A)からなる水性分散体を必須の成分として調製されるコ−ティング剤であって、必要に応じて他の成分を含むものである。他の成分としては、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、増粘剤、防腐剤、浸透剤、蛍光増白剤、炭酸カルシウムやクレ−等の充填剤、界面活性剤、分散剤、染料・無機顔料や有機顔料等の着色剤、SBRラテックスやアクリルエマルジョン等の他の樹脂成分などが挙げられる。これらの成分から本発明のコ−ティング剤を調製するには、種々の方法が用いられるが、これらの成分を適当な混合機を使用して混合し、適当な粘度となるように水で希釈し塗布される。
【0043】
次に本発明のインクジェット記録紙について説明する。本発明のコ−ティング剤が塗布される紙は、特に制限はなくインクジェット記録方式に適したものであれば使用することができる。たとえば、普通紙、上質紙(未塗装)、ア−ト紙等が挙げられる。これらの紙に本発明のコ−ティング剤を目標性能を得るのに適切な量となるようにカ−テンコ−タ−等の手段で塗布される。塗布量としては、特に制限はないが0.5〜30g/mの量が多く採用される。
【0044】
次に、本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法について説明する。
本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体は、ポリエステル樹脂(a)を必須成分として含有する樹脂溶融体(I)を用い、該ポリエステル樹脂(a)のカルボキシル基の一部乃至全部の中和と、該樹脂溶融体(I)の溶融状態での加熱された水性媒体(II)中への0.2〜1.0MPaの圧力下での分散とを行った後、冷却を行うことを特徴とする。この際好ましい製造方法としては、例えば、
工程(1) ポリエステル樹脂(a)と、その他必要に応じて、他の樹脂成分や、保水剤、分散助剤などの添加剤等を加圧ニ−ダ−、加熱3本ロ−ル、2軸押出混練機などを用いて溶融混練した樹脂溶融体(I)とする工程、
工程(2) 塩基性化合物を含有し、かつ、ポリエステル樹脂(a)の溶融温度以上の温度に加熱した水性媒体中に、0.2〜1.0MPaの加圧下で、該樹脂溶融体(I)を溶融状態で機械的手段により分散させる工程、
工程(3) 分散後、圧力を常圧(大気圧)に戻すと共に、冷却を行う工程、
という工程からなる製造方法等が挙げられる。
【0045】
前記の調製方法では、ポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の中和を、塩基性化合物を含有した水性媒体と混合することにより行っているが、該カルボキシル基の中和は、この方法に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基の塩基性化合物による中和を行った後、0.2〜1.0MPaの加圧下に樹脂溶融体(I)を水性媒体中に機械的手段で分散させる方法や、樹脂溶融体(I)を0.2〜1.0MPaの加圧下に水性媒体(II)中に機械的手段で分散させたのち、攪拌下で塩基性化合物を加えて中和する方法であっても良い。
【0046】
工程2において、加熱した水性媒体中に、0.2〜1.0MPaの加圧下で、該樹脂溶融体(I)を溶融状態で機械的手段により分散させることにより、樹脂粒子内に多数の空隙部分が形成される。かかる空隙の存在により、インクジェットインクの吸収が良くなりドット状に印字されたインクが瞬時に固定され画像の輪郭がシャ−プとなって印刷品位が著しく向上すると共に、粒子の密度が小さくなり、より軽量な粒子が調製できる。圧力は、0.2〜0.7MPaがより好ましい。
【0047】
前記工程2の樹脂溶融体(I)を水性媒体中に機械的手段により微分散させるための装置としては、特に限定されるものではないが、代表的な市販品を例示すると、マントンゴ−リン高圧ホモジナイザ−(ゴ−リン社)、連続式超音波ホモジナイザ−(日本精機株式会社)、ナノマイザ−(ナノマイザ−社)、マイクロフルイダイザ−(みずほ工業株式会社)、ハレル型ホモジナイザ−、スラッシャ(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユ−ロテック)などがあり、なかでも回転型連続分散装置であるキャビトロンが好ましい。
【0048】
上記回転型連続分散装置キャビトロンは、スリットを有するリング状の突起を備えた固定子と、スリットを有するリング状の突起を備えた回転子とが、間隔を保って相互に咬み合うように同軸上に設けられた構造を有する回転型連続分散装置であり、これを用いた分散方法は、この分散装置の固定子と回転子の中心部分に、樹脂溶融体(I)と塩基性化合物を含有する水性媒体とを供給し、回転子を回転させながら該スリットと該間隔とを通して中心部分から外周の方向に流動させることにより、塩基性化合物を含有する水性媒体中に樹脂溶融体(I)を粒子状で分散させる方法である。
【0049】
以下、図面により上記のような回転型連続式分散装置を用いた本発明にかかる製造方法について詳しく説明する。
【0050】
図1は本発明に用いられる回転型連続式分散装置の固定子の一例を示す斜視図、図2は本発明に用いられる回転型連続式分散装置の回転子の一例を示す斜視図、図3は本発明に用いる回転型連続式分散装置の要部の一例を表した断面図、図4は図3のA−A’断面を側面から見たときの固定子突起と回転子突起の組み合わせ状態を表した図である。
【0051】
図1〜図4に示すように、回転型連続式分散装置の固定子1は、中心に設置され、その中心に液入口2を備えている。固定子1の円形状の面上には、固定子1と同心円でリング状に並べられた突起3が1段又は2段以上の多段状に備えられており、従って、突起3同士の間隙には、円周溝4が形成されている。そして、突起3同士の間には複数のスリット5が形成されている。
【0052】
この分散装置内の固定子1に対向する内壁の中心には駆動軸6が設置され、駆動装置に接続されて回転される。回転子7は、固定子1と平行で、かつ中心が揃うように駆動軸6の先端に固定されている。固定子1に対向する回転子7の面上には、回転子7と同心円でリング上に並べられた突起8が一段または2段以上の多段状に備わっている。従って、突起8同士の間隙には、固定子1と同様に、環状の溝9が形成されている。そして、突起8同士の間には複数のスリット10が形成されている。
【0053】
この固定子1と回転子7とは、固定子1の突起3と回転子7の突起8が僅かな間隙を保つように、咬み合わされた状態で使用に供される。
【0054】
この分散装置の液入口部2に、樹脂溶融体(I)と加熱された塩基性化合物を含有する水性媒体が供給され、これらからなる混合物は回転子7が回転すると、最も内側に位置する回転子7の突起8のスリット10に入り、遠心力により該回転子7の突起8の外側から環状の溝9に吐出され、次いで最も内側に位置する固定子1の突起3のスリット5に入る。さらに、このスリット5に流入した混合物は、固定子1の環状の溝4に押し出される。
【0055】
このようにして当該混合物は、回転子7の回転により遠心力を受け、スリット内を液入口から吐出口へと流動する。一方、回転子7と固定子1のスリットのずれにより混合物の遠心流れの封じ込めと開放が繰り返されて差圧が発生する。さらに、回転子7と固定子1の微少隙間で混合液に対し剪断力が働く。この中心から外周方向への流れと円周方向流れが直角に衝突し、それによって、強力な撹拌・破砕効果が発生し、これにより樹脂溶融体(I)が、加熱された塩基性化合物を含有する水性媒体中に粒子状で分散した分散体が得られる。
【0056】
この分散装置の回転子7の回転数は駆動軸に接続された駆動モーターで制御される。回転数が大きく周速が大きいほど大きい遠心力と剪断力を受けて、塩基性化合物を含有する水性媒体中に分散した樹脂溶融体(I)の粒子径が小さくなる。直径10cmの回転子を使用して体積平均粒子径が10μm以下の粒子を製造する場合、好ましい回転数は3,000〜10、000rpmである。
【0057】
このような回転型連続式分散装置を使用する場合、樹脂溶融体の良好な流動性を維持するために、当該分散装置には保温のためのジャケットを設置することが好ましい。そして、分散装置内の温度は、樹脂溶融体(I)の温度、供給する塩基性化合物を含む水性媒体の温度およびジャケットによる保温効果と装置内での剪断により発生する熱量のバランスを取ることにより、一定温度に制御される。
【0058】
かかる分散装置内の圧力は、塩基性化合物を含む水性媒体の装置内における蒸気圧と高速回転する回転子による吐出圧で決まる。また、得られた水性分散体を冷却して得られる分散体の取り出しは、取り出し口に自動圧力制御弁を設けて、内部圧を一定に保ちつつ、分散液を大気圧下に連続的に取り出すことが好ましい。
【0059】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。実施例中「部」とあるのは、特にことわりがない限り重量部をあらわす。
【0060】
合成例1[ポリエステル樹脂(a)の合成]
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ−、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコにビスフェノ−ルAのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数2.2)3,010部を仕込み、温度を140℃まで上げて撹拌を行いながらテレフタル酸1,451部、イソフタル酸171部を仕込み、さらに1時間を要して190℃まで温度を上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド2.0部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から245℃まで3時間を要して温度を上げ、同温度でさらに6時間脱水縮合反応を継続し、酸価が23mgKOH/gになったときに温度を230℃まで下げた。次いで同温度でカ−ジュラE10(シェルケミカル社製分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル)202部を投入した。同温度でさらに1時間反応を続け、最終的に酸価が11mgKOH/g、DSC法によるガラス転移温度(Tgと表記する。)が58℃、GPC法による重量平均分子量(Mwと表記する。)が16,600であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂(a−1)と略記する。
【0061】
合成例2(同上)
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ−、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコにエチレングリコ−ル394部、ネオペンチルグリコ−ル644部、トリメチロ−ルプロパン174部を仕込み、1時間を要して温度を120℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイド2.0部を投入した。次いで、イソフタル酸1,017部とアジピン酸894部を仕込み、生成する水を留去しながら同温度から240℃まで3時間を要して温度を上げた。同温度でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、酸価が13mgKOH/gになるまで反応させた。次いで、温度を230℃まで下げドデセニル無水コハク酸166部を徐々に投入し、同温度で1時間反応を継続し、酸価が23mgKOH/g、DSC法によるTgが18℃、GPC法によるMwが11,800、であるポリエステル樹脂を得た。これをポリエステル樹脂(a−2)と略記する。
【0062】
合成例3[比較対照用ポリエステル樹脂(a′)の合成]
合成例1において、カ−ジュラE10(シェルケミカル社製分岐脂肪酸のモノグリシジルエステル)の投入を行わなかった以外は同様にして、酸価が23mgKOH/g、DSC法によるTgが60℃、GPC法によるMwが15,700、であるポリエステル樹脂を得た。これを比較対照用ポリエステル樹脂(a´−1)と略記する。
【0063】
比較例3
ポリエステル樹脂(a−1)を150℃に加熱して樹脂溶融体とし、キャビトロンCD1010(株式会社ユ−ロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには水性媒体として、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.9重量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で125℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記樹脂溶融体と同時にキャビトロンに移送した〔(中和率300%、ポリエステル樹脂(a−1)1,000gあたりの中和されたカルボキシル基の含有量は0.18モル)。この時のキャビトロンの内部圧力は、0.5MPaであった。回転子の回転速度が7,500rpmの運転条件で製造した約140℃のポリエステル樹脂粒子分散体を圧力調整弁を介して常圧(大気圧)に戻しながら、30秒間で40℃まで冷却して出口から取り出した。この分散体水溶液の濃度は固形分で50重量%であった。マイクロトラックUPA150(Leeds plus Northlop社製粒度分布測定装置)による測定により、この分散体水溶液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は2.0μmであった。この分散体溶液を不揮発分が30重量%となるようにイオン交換水で希釈し、本発明のインクジェット受理コーティング用樹脂粒子水性分散体を得た。これを分散体1と略記する。この分散体中の樹脂粒子の断面の電子顕微鏡による観察では、粒子内部に複数の球形の空隙が観察された。比較例3の樹脂粒子断面の電子顕微鏡写真を図5に示す。
【0064】
第1表に示す配合比率に従って本発明のインクジェット受理コ−ティング剤を調製した。普通紙(A4サイズ)に塗工量が22〜23g/mとなるようにワイヤ−バ−No.12を用いて塗布しインクジェット記録紙を調製した。塗布後60℃で5分間予備乾燥した後試験印刷に供した。試験用印刷はエプソン社製インクジェットプリンタ−「Colorio CL−700」を使用した。第1表にインクジェット記録紙を用いた印刷試験結果を示した。第1表中の印刷品質の評価は、ISO標準画像を出力し、画像の鮮明性を目視で比較評価することにより行った。
【0065】
実施例2
ポリエステル樹脂(a−2)を80℃に加熱して樹脂溶融体とし、キャビトロンCD1010に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには水性媒体として、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した1.4重量%濃度の希アンモニア水を入れ、該アンモニア水の温度を50℃に保ちながら毎分0.1リットルの速度で、上記樹脂溶融体と同時にキャビトロンに移送した〔中和率200%、ポリエステル樹脂(a−2)1,000gあたりの中和されたカルボキシル基の計算値は0.40モル〕。この時のキャビトロンの内部圧力は0.2MPaであった。回転子の回転速度が7,500rpmの運転条件で製造した約70℃のポリエステル樹脂粒子分散体を圧力調整弁を介して常圧(大気圧)に戻しながら、20秒間で20℃まで冷却して出口から取り出した。この分散体水溶液の濃度は固形分で50重量%であった。この分散体水溶液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は1μmであった。この分散体溶液を不揮発分が30重量%となるようにイオン交換水で希釈し、本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体を得た。これを分散体2と略記する。この分散体中の樹脂粒子の断面の電子顕微鏡による観察では、粒子内部に多数の球形の空隙が観察された。実施例1と同様にして、インクジェット受理コーティング剤とインクジェット記録液を調製し、試験印刷を行った。その結果を第1表に示す。
【0066】
比較例1
ポリエステル樹脂(a′)を150℃に加熱して樹脂溶融体とし、キャビトロンCD1010に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには水性媒体として、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した2.1重量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で125℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記樹脂溶融体と同時にキャビトロンに移送した〔中和率300%、ポリエステル樹脂(a−3)1,000gあたりの中和されたカルボキシル基の計算値は0.4モル〕。この時のキャビトロンの内部圧力は0.5MPaであった。回転子の回転速度が7,500rpmの運転条件で製造した約140℃のポリエステル樹脂粒子分散体を圧力調整弁を介して常圧(大気圧)に戻しながら、30秒間で40℃まで冷却して出口から取り出した。この分散体水溶液の濃度は固形分で50重量%であった。この分散体水溶液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径は30μmであり、粒子の形状は不定形であった。この分散体溶液を不揮発分が30重量%となるようにイオン交換水で希釈し、比較対照用インクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体を得た。これを比較対照用樹脂粒子水性分散体1′と略記する。この分散体中の樹脂粒子の断面の電子顕微鏡による観察では、粒子内部にほとんど空隙が存在しないことが確認された。実施例1と同様にして、インクジェット受理コーティング剤とインクジェット記録液を調製し、試験印刷を行った。その結果を第1表に示す。
【0067】
比較例2
実施例2において、キャビトロンの内部圧力を圧力調整弁で調製せずに常圧(大気圧)下で分散体の調製を行った以外は、実施例2と同様にして、分散体水溶液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒子径が12μmの樹脂粒子水性分散体を得た。この分散体溶液を不揮発分が30重量%となるようにイオン交換水で希釈し、比較対照用インクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体を得た。これを比較対照用分散体2′と略記する。この分散体中の樹脂粒子の断面の電子顕微鏡による観察では、粒子内部には空隙は観察されなかった。実施例1と同様にして、インクジェット受理コーティング剤とインクジェット記録液を調製し、試験印刷を行った。その結果を第1表に示す。
【0068】
【表1】
Figure 0003975818
【0069】
【発明の効果】
実施例及び比較例に示すように、本発明のインクジェット受理コーティング剤用樹脂粒子水性分散体からなるコ−ティング剤を塗工して得られるインクジェット記録紙は、画像品位が良好で、記録紙の軽量化も可能となり、極めて実用性の高いものであることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる回転型連続式分散装置の固定子の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に用いられる回転型連続式分散装置の回転子の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に用いられる回転型連続式分散装置の要部の一例を表した断面図である。
【図4】図3のA−A′部を側面から見たときの固定子突起と回転子突起の組み合わせ状態を表した図である。
【図5】実施例1の樹脂粒子断面の電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 固定子
2 液入口
3 固定子の突起
4 固定子の円周溝
5 固定子突起のスリット
6 回転子の駆動軸
7 回転子
8 回転子の突起
9 回転子の円周溝
10 回転子突起のスリット

Claims (8)

  1. 体積平均粒子径が500nm〜10μmのポリエステル樹脂粒子が水性媒体中に分散されているポリエステル樹脂粒子水性分散体であって、該ポリエステル樹脂が、アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、かつ、示差走査熱量測定法(DSC法)によるガラス転移温度が−50〜70℃で、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−法(GPC法)による重量平均分子量が3,000〜100,000で、下記一般式(1)で表される末端構造を有する酸価が8〜100mgKOH/gであるポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部を塩基性化合物で中和してなるポリエステル樹脂(A)であることを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体。
    Figure 0003975818
    (式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数が4〜20のアルキル基または炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表すが、共に水素原子であることはない。)
  2. ポリエステル樹脂(a)が、GPC法による重量平均分子量が5,000〜20,000のポリエステル樹脂であり、かつ、ポリエステル樹脂(A)が、該樹脂(A)1000g当たりの中和されたカルボキシル基の含有量が0.10〜1.80モルのポリエステル樹脂である、請求項1記載のインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体。
  3. ポリエステル樹脂粒子が、内部に空隙を有するものである、請求項記載のインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体。
  4. 請求項1〜のいずれか1項記載のインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体を必須成分として含有することを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤。
  5. 請求項記載のインクジェット受理コ−ティング剤がコ−ティングされていることを特徴とする、インクジェット記録紙。
  6. アルキル基および/またはアルケニル基とカルボキシル基とを併有し、かつ、示差走査熱量測定法(DSC法)によるガラス転移温度が−50〜70℃で、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−法(GPC法)による重量平均分子量が3,000〜100,000で、下記一般式(1)で表される末端構造を有する酸価が8〜100mgKOH/gであるポリエステル樹脂(a)を必須成分として含有する樹脂溶融体(I)を用い、該ポリエステル樹脂(a)中のカルボキシル基の一部乃至全部の中和と、該樹脂溶融体(I)の溶融状態での加熱された水性媒体(II)中への0.2〜1.0MPaの圧力下での分散とを行った後、冷却を行うことを特徴とする、インクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法。
    Figure 0003975818
    (式中、R 1 及びR 2 は、同一又は異なり、水素原子、炭素原子数が4〜20のアルキル基または炭素原子数が4〜20のアルケニル基を表すが、共に水素原子であることはない。
  7. スリットを有するリング状の突起を備えた固定子と、スリットを有するリング状の突起を備えた回転子とが、間隔を保って相互に咬み合うように同軸上に設けられた構造を有する回転型連続分散装置を用い、この分散装置の固定子と回転子の中心部分に、樹脂溶融体(I)と塩基性化合物を含有する加熱された水性媒体とを供給して、回転子を回転させながら該スリットと該間隔とを通して中心部分から外周の方向に流動させることにより、樹脂溶融体(I)に含有されているポリエステル樹脂(a)のカルボキシル基の一部乃至全部の塩基性化合物による中和と、樹脂溶融体(I)の水性媒体中への溶融状態での分散とを行う、請求項記載のインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法。
  8. ポリエステル樹脂(a)が、GPC法による重量平均分子量が5,000〜20,000のポリエステル樹脂であり、かつ、ポリエステル樹脂(a)を、中和後のポリエステル樹脂(A)1,000g当たりの中和されたカルボキシル基の含有量が0.10〜1.80モルとなるまで中和する、請求項6または7記載のインクジェット受理コ−ティング剤用樹脂粒子水性分散体の製造方法。
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