JP3973139B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、耐半田性に優れた特性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電子部品は、主にエポキシ樹脂組成物で封止されている。これらのエポキシ樹脂組成物には、低圧トランスファー成形における良好な流動性、充填性、生産性向上のための硬化性等の成形性、これらを用いて得られた半導体装置には高い耐半田性が要求されている。成形性、特にエポキシ樹脂組成物の充填性を向上させるためには、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時に低粘度で高流動性を維持し、又耐半田性を向上させるためエポキシ樹脂組成物中の無機充填材の充填量を増加させることで低吸水化、高強度化、低熱膨張化を達成させる手法がある。
【0003】
ところがエポキシ樹脂組成物に無機充填材を多量に配合すると成形時のエポキシ樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、流動性が悪化し充填不良等の問題が生じるので、成形時のエポキシ樹脂組成物の溶融粘度を極力低くする必要がある。エポキシ樹脂組成物の溶融粘度を維持し、無機充填材を高充填化するためには、粒径の大きい充填材と粒径の小さい充填材を併用すること、即ち粒度分布の広いものを用いることが知られている。又樹脂と無機充填材との界面を制御するため、無機充填材をシランカップリング剤で表面処理する方法が知られているが、これらの方法でも成形時の溶融粘度の低下が不十分であると共に、シランカップリング剤で処理した無機充填材では凝集物が発生して成形時にゲート詰まりを起こし、半導体装置の未充填が発生することがある。
【0004】
これらの問題点を改良する手法として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂に無機充填材を予め加熱溶融して得られる溶融混合物を用いることにより、無機充填材の分散性を向上させることが提案されている。しかし元来無機充填材と樹脂との親和性は、弱いためその分散性には限界があり、無機充填材、特に微粒の無機充填材同士の凝集物の生成を完全には抑えられず、満足な成形性を得られない場合がある。
【0005】
特許第3033445号公報には、平均粒径の異なる充填材を併用する場合、粒径の大きい方のみをアルコキシ基含有シラン又はその部分加水分解物で処理した充填材と無処理の粒径の小さい充填材とを混合して用いることが開示されており、凝集物の低減及び流動性の向上の点では、或る程度改良されている。しかし充填材の凝集を完全に防止するには至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、カップリング剤で表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材とエポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂とを加熱溶融した溶融混合物を含むエポキシ樹脂組成物を用いることにより、流動性、充填性等の成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び耐半田性に優れた半導体装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、(D)平均粒径5〜40μmの無機充填材、(E)カップリング剤で表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材と前記エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂の一部又は全部とを加熱溶融した溶融混合物を含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2] カップリング剤が、一般式(1)である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0008】
【化2】
【0009】
[3] 第[1]項又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物について述べる。
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造は特に限定するものではないが、例えばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。これらの中では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック型エポキシ等が特に望ましい。
【0011】
本発明に用いるフェノール樹脂としては、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を言い、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ジフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。これらの中では、フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂等が好ましい。これらの配合量としては、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3が好ましい。
【0012】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0013】
本発明に用いる平均粒径5〜40μmと平均粒径0.1〜3μmの無機充填材は、通常半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状の溶融シリカである。これらの無機充填材は、単独でも混合して用いても差し支えない。平均粒径5〜40μmにおいて、平均粒径が5μm未満だと十分な流動性が得られず、40μmを越えると耐半田性が低下する。
【0014】
本発明に用いる平均粒径0.1〜3μmの無機充填材は、その表面をカップリング剤で処理されているものである。この表面処理された無機充填材は、平均粒径5〜40μmの無機充填材と併用することにより、粗い無機充填材の隙間に微小な無機充填材が挟まれ、いわゆる「ころ」の役目を果たすことでエポキシ樹脂組成物の流動性を向上させる。ところが微小な無機充填材は、相互に凝集し易いため十分に分散させなければ、「ころ」の役目を果たすことができない。そこで微小な無機充填材をカップリング剤で処理し、その表面を疎水化し凝集を崩すことにより良好な流動性を有するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
カップリング剤で表面処理される平均粒径0.1〜3μmの無機充填材の平均粒径が、0.1μm未満だと粒子同士の凝集を抑えることが難しくなる上に、「ころ」としては小さすぎ、3μmを越えると大きすぎて「ころ」の役目を果たさないので好ましくない。本発明に用いる無機充填材の平均粒径は、レーザー式粒度分布計((株)島津製作所製、SALD−7000)を用いて測定したものである。
【0015】
本発明に用いるカップリング剤は、一般に使用されているカップリング剤を指す。例えばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等が挙げられるが、好ましくはシランカップリング剤であり、更に好ましいものとしては一般式(1)で示される構造のものが望ましい。これらは単独でも混合して用いても差し支えない。カップリング剤は、予め水或いは必要に応じて酸又はアルカリを添加して、加水分解処理して用いてもよい。カップリング剤の添加量としては、平均粒径0.1〜3μmの無機充填材100重量部に対し、0.05〜5重量部が好ましく、0.05重量部未満では表面処理された無機充填材を配合したエポキシ樹脂組成物の硬化物の強度の向上が認められず耐半田性が低下する。5重量部を越えるとエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水率が増加し耐半田性が低下する。
【0016】
本発明に用いる平均粒径0.1〜3μmの無機充填材をカップリング剤で処理するには、無機充填材とカップリング剤を攪拌混合し、混合機から取り出して常温にて1日以上放置する方法が有効である。カップリング剤を無機充填材の表面に均一に処理するために、水又は有機溶媒を、更に加えて攪拌した後に、常温にて1日以上放置するという手法も有効である。又より反応を進めるために攪拌時に混合機内の温度を50〜150℃に加熱するか、或いは常温で攪拌し混合機から取り出した後に50〜150℃で加熱してもよい。混合機としては、特に限定しないが、例えばボールミル、ヘンシェルミキサー、Vブレンダーやダブルコーンブレンダー等のブレンダー類、コンクリートミキサーやリボンブレンダー等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いるシランカップリング剤で表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材(E)と平均粒径5〜40μmの無機充填材(D)の重量配合割合[(E)/((D))]は、1/99〜30/70が好ましく、より好ましくは3/97〜25/75が望ましい。下限値を下回ると「ころ」として作用するものが少なくて流動性が不十分となるおそれがあり、上限値を越えると「ころ」が多くなりすぎ流動性が低下するおそれがある。
【0018】
本発明に用いるカップリング剤により表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材は、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂の一部或いは全部と予め分散し、冷却粉砕した溶融混合物とすることにより、粒子同士の凝集が完全に崩れ、更に本来なら樹脂が十分に行き渡らない微細な無機充填材の表面を樹脂で均一に覆うことができるため、無機充填材と樹脂との間の隙間をなくすことができる。平均粒径5〜40μmの無機充填材とこの溶融混合物を併用することにより、大きな粒子の間に潤滑油がたっぷりと塗られた「ころ」が存在することとなり、分散性が大きく向上し、良好な流動性、充填性等の成形性を得ることができ、無機充填材と樹脂との接着面積が多くなることで、硬化物の強度が高くなり、耐半田性の向上にも効果があると考えられる。
【0019】
カップリング剤で表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材とエポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂の一部又は全部とを溶融混合する方法として、溶融混合処理はミキサー等によって十分混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等により50〜170℃、1時間以内で好ましくは60〜120℃の溶融混合処理を行う。170℃以上で加熱溶融するとエポキシ樹脂とフェノール樹脂が反応して増粘し成形性が悪化して好ましくない。50℃以下では粘度が高く十分混合できないため好ましくない。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分を必須とするが、必要に応じてカーボンブラック等の着色剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤及びシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、赤燐等の種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他、必要に応じて添加する添加物をミキサー等を用いて十分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【0021】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
なお、実施例及び比較例で用いたエポキシ樹脂、フェノール樹脂、無機充填材の内容について以下に示す。
エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン(株)製、YX−4000、エポキシ当量190g/eq、融点105℃、以下、E−1という]
フェノール樹脂[三井化学(株)製、XLC−LL、水酸基当量165g/eq、軟化点79℃、以下H−1という]
表面処理無機充填材[平均粒径0.5μmの溶融球状シリカ100重量部を、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤1.0重量部で表面処理]
処理しない無機充填材[平均粒径0.5μmの溶融球状シリカ]
【0022】
溶融混合物の製造例
溶融混合物1
E−1を31重量部、H−1を26重量部、表面処理無機充填材90重量部を常温でミキサーを用いて攪拌した後、得られた混合物を二軸混練機を用いて90℃で溶融混合し、冷却後粉砕して溶融混合物1とした。
溶融混合物2
E−1を31重量部、表面処理無機充填材90重量部を常温でミキサーを用いて攪拌した後、得られた混合物を二軸混練機を用いて90℃で溶融混合し、冷却後粉砕して溶融混合物2とした。
溶融混合物3
E−1を31重量部、H−1を26重量部、表面処理無機充填材110重量部を常温でミキサーを用いて攪拌した後、得られた混合物を二軸混練機を用いて90℃で溶融混合し、冷却後粉砕して溶融混合物3とした。
【0023】
実施例1
溶融混合物1 147重量部
溶融球状シリカ(平均粒径27μm) 840重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという)5重量部
カーボンブラック 3重量部
カルナバワックス 5重量部
を混合し、熱ロールを用いて、95℃で8分間混練して冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0024】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。
熱時曲げ強度・熱時曲げ弾性率:JIS K 6911(5.17.1 成形材料)に準じて測定した。試験片(長さ80mm、高さ4mm、幅10mm)は、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒でトランスファー成形機を用いて成形し、175℃、8時間で後硬化して作成した。この試験片を測定台(支点間距離64mm)に保持した槽内で6分間予熱した後測定した。単位はそれぞれMPa。
充填性(ボイド):低圧トランスファー成形機を用いて成形温度175℃、圧力9.3MPa、硬化時間120秒で160pQFPを成形したものを、超音波探傷装置で観察し内部のボイドの評価を行った。○はボイドなし。△は一部にボイドあり。×は全面にボイドあり。
耐半田性:低圧トランスファー成形機を用いて成形温度175℃、圧力8.3MPa、硬化時間120秒で80pQFP(チップサイズ6.0mm×6.0mm)を成形し、175℃、8時間で後硬化した後、85℃、相対湿度85%で120時間の吸水処理を行った後、260℃のIRリフロー処理をした。パッケージ内部の剥離とクラックを超音波探傷機で確認した。10個のパッケージ中の不良パッケージ数を示す。
【0025】
実施例2、3、比較例1、2
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明に従うと、カップリング剤で表面処理された平均粒径0.1〜3μmの無機充填材とエポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂とを加熱溶融した溶融混合物を含むエポキシ樹脂組成物を用いることにより、流動性、充填性等の成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び耐半田性に優れた半導体装置を得ることができる。
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