JP3970215B2 - 四フッ化エチレン樹脂シートの製造方法 - Google Patents
四フッ化エチレン樹脂シートの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、耐屈曲性、耐引裂性、防汚性および均一性に優れた四フッ化エチレン樹脂シートに係り、特に、耐腐食パッキング部材、食品・薬品等の非接着性搬送ベルト部材、機械工作物、構造材料部材等に好適な均一性に優れた四フッ化エチレン樹脂シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ素系樹脂、とりわけ四フッ化エチレン樹脂(以下、PTFE樹脂と略記する)は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、電気的特性、防汚性、非接着性等に優れるため、種々の工業分野に使用されている。
【0003】
しかしながら、その反面、PTFE樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンのような溶融樹脂と異なり、溶融状態でも粘度が高く押出成形や射出成形が難しいため、一般のフィルム成膜で用いられる溶融押出法、溶液流延法(キャスティング)等の方法が適用できず、加工が非常に困難な材料である。さらに、PTFE樹脂は、耐薬品性、耐熱性、耐候性、電気的特性、防汚性、非接着性等には優れているものの、耐屈曲性、耐引裂性、引張強度等の物理特性が劣り、構造材としては使用が困難であった。
【0004】
ところで、従来のPTFE樹脂フィルムの製造方法は、PTFE粉末を円筒状に成形して焼成し、これをいわゆる桂剥きに切削してフィルム化するスカイビング製法が、一般的に行われている。さらに、基板上に有機溶剤可溶性のフッ素樹脂薄膜を形成し、この表面にPTFE樹脂水性ディスパージョンを塗布乾燥して焼成後、有機溶剤中に浸漬してPTFE樹脂フィルムを分離する製造方法も提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
また、物理特性を向上させるために、ガラスクロスやアラミド織布にPTFE樹脂エマルジョンをディッピング法、塗布法などでコーテイングして370℃程度の温度で焼成するという工程を複数回繰り返して、所望の厚みの被膜を形成させる方法が一般に採用されている。これは、PTFE樹脂が接着性に乏しく、たとえばPTFE樹脂フィルムをガラスクロスに熱接着するというような通常の手段では、固着した被膜を形成できないためである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−278927号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したようなフィルムやシートの製造方法においては、物理的強度は考慮されていないため、依然として構造材としての強度に劣り使用できないものであり、また、ガラスクロスなどのクロス基材はPTFE樹脂エマルジョンをコーティングする方法では溶媒によって繰り返し湿潤・加熱されるため、耐熱有機繊維がいわゆる湿熱劣化を起こし、性能が低下するという問題があり、十分な強度は得られていない。
【0008】
したがって、本発明は、含浸・焼成工程を繰り返すことなく耐屈曲性、耐引裂性等の構造材として適した特性を有し、さらに所望の厚さを有するPTFE樹脂シートの製造方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のPTFE樹脂シートの製造方法は、基材紙上にPTFE樹脂微粒子を塗布した上に金網を重ね、これをカレンダロールにより1次圧着して予備成形シートとし、別の基材紙上にPTFE樹脂微粒子を塗布したものの上に上記予備成形シートを基材紙が上になるように重ねて2次圧着し、続いて焼成することを特徴としている。
【0012】
本発明のPTFE樹脂シートの製造方法によれば、基材紙上にPTFE樹脂微粒子と金網を1次圧着して予備成形シートとし、さらに別の基材紙上にPTFE樹脂微粒子とこの予備成形シートを重ねて2次圧着して焼成するので、全工程を通じて焼成工程が一度で済む。このため、ガラスクロスをPTFE樹脂エマルジョンに数回含浸・焼成する従来の方法のように同じ工程を繰り返す必要がなく、所望の厚さを有するPTFE樹脂シートを一度の工程で製造することができて好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、PTFE樹脂シートの製造装置の一例の模式図である。まず原料のPTFE樹脂微粒子10は、図示しない計量手段によって計量され、図示しないロールバーによって基材紙11上に均され、均一に層を形成する。このPTFE樹脂微粒子層が形成された基材紙11は、カレンダロール12に送られて圧着され、PTFE樹脂微粒子同士は仮固着させられる。続いてこの仮固着シート13は基材紙11を剥離して、PTFE樹脂微粒子層のみが焼成機14に送られて焼成され、PTFE樹脂シート15が得られる。
【0014】
図2は、PTFE樹脂シートの製造装置の他の一例の模式図である。図1と同様、原料のPTFE樹脂微粒子10は、図示しない計量手段によって計量され、図示しないロールバーによって基材紙11上に均され、均一に層を形成する。このPTFE樹脂微粒子層上に金網20を貼り合わせ、カレンダロール22によって圧着されて仮固着シート23を形成し、続いて図1同様、基材紙11を剥離して、図示しない焼成機に送られて焼成され、片面に金網が積層されたPTFE樹脂シートが得られる。
【0015】
本発明のPTFE樹脂シートの製造方法においては、図2に示す製造装置で1次計量および1次圧着を施し、続いて図3に示す製造装置で2次計量および2次圧着を施した後に焼成してPTFE樹脂シートを製造することができ、その製造方法を説明する。まず、図2に示す製造装置において基材紙11上にPTFE樹脂微粒子10を図示しない計量手段によって1次計量し、図示しないロールバーによって均し、PTFE樹脂微粒子層の厚さを均一にする。この上に金網20を貼り合わせ、カレンダロール22で1次圧着して仮固着シート23とする。さらに、図3に示す製造装置において別の基材紙31上にPTFE樹脂微粒子30を2次計量してロールバーによって均しPTFE樹脂微粒子層の厚さを均一にしたものの上に上記仮固着シート23を金網が下の面に来るようにして貼り合わせる。このシートに対してさらにカレンダーロール32によって2次圧着を施し、両面の基材紙11および31を剥離した後、図示しない焼成機に導入して焼成し、金網がPTFE樹脂中に埋設された構造を持つPTFE樹脂シートが得られる。
【0016】
なお、本発明において、PTFE樹脂微粒子を支持するために用いられた基材紙の除去工程は、仮固着シート形成直後の焼成工程前に行うことが、容易に焼成できること、基材紙をリサイクル使用できることなどから好ましい。なお、焼成条件を変化させることによって基材紙を焼成後に除去することも本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0017】
以上のように、本発明の製造方法によれば、全工程を通じて焼成工程が一度で済む。このため、ガラスクロスをPTFE樹脂エマルジョンに数回含浸・焼成する従来の方法のように同じ工程を繰り返す必要がなく、所望の厚さを有するPTFE樹脂シートを一度の工程で製造することができて好適である。また、PTFE樹脂シートの片面に貼り合わせたりPTFE樹脂中に埋設する金網としては、ステンレス、鉄、銅、真鍮等からなるものが挙げられる。また、特に金網に限るものではなく、ガラスクロス、アラミドクロス、金属繊維の織物や不織布、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔性もしくはメッシュ状のシートであれば金属、セラミックス、有機高分子等の材質に限定されることなくあらゆるものを適用することが可能である。
【0018】
本発明に使用される基材紙としては、上質紙、コート紙等の紙を適宜選択することができる。そして、基材紙はPTFE樹脂微粒子層を形成するための支持体としての機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0019】
本発明においてカレンダロールは、金属ロール、弾性ロールを適宜使用することができるが、図2のように金網が表面にある場合は、カレンダロールとして弾性ロールを用いることが好ましい。すなわち、金網側に鉄ロールなどの非弾性ロールを用いて1次圧着すると、金網の突起部が非弾性ロールに押圧されてPTFE樹脂微粒子層中に埋没させられ、この仮固着シートに2次圧着を施した場合、金網の両側に形成されるPTFE樹脂層のうち先に形成されるPTFE樹脂層は薄く、後に形成されるPTFE樹脂層は厚く形成されて不均衡になってしまう。しかしながら、ここで1次圧着において金網側のカレンダロールとしてシリコンゴム製等の弾性ロールを用いると、金網の突起部がカレンダロールの表面に食い込むことで金網が完全にPTFE樹脂微粒子中に埋没させられることを防止し、結果として最終的に得られるPTFE樹脂シートにおいて金網の両側のPTFE樹脂層の均衡を保つことが可能になる。
【0020】
さらに、前記弾性ロールを用いずに非弾性ロールを用いる場合、金網上に基材紙(工程紙)を敷いて圧着するという代替手段によって同様の効果を得ることが可能である。このように金網の上に敷かれた基材紙が屈曲して金網の突起部を食い込ませることで同様の効果が得られる。
【0021】
本発明において使用するPTFE樹脂微粒子は、PTFE樹脂からなるものであれば特に限定されず、粒径0.1〜1000μm、特に1〜600μm程度のものが、圧着により均一なPTFE樹脂微粒子層を形成できることから好ましい。中でも、懸濁重合法により製造されたものが特に好ましい。これは、流動性に優れ、基材紙上にロールバーにより層形成する時に、より均一な層を形成することができることによるものである。なお、乳化重合法によるものも流動性改質剤を用いることによって十分に使用することができる。
【0022】
以上のように、本発明のPTFE樹脂シートの製造方法によれば、基材紙上にPTFE樹脂微粒子と金網を1次圧着して予備成形シートとし、さらに別の基材紙上にPTFE樹脂微粒子とこの予備成形シートを重ねて2次圧着して焼成するので、全工程を通じて焼成工程が一度で済むため、ガラスクロスをPTFE樹脂エマルジョンに数回含浸・焼成する従来の方法のように同じ工程を繰り返す必要がなく、所望の厚さを有するPTFE樹脂シートを一度の工程で製造することができて好適である。
【0023】
【実施例】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
[参考例1]
PTFE樹脂微粒子(商品名:ポリフロンPTFE M391S、ダイキン工業社製)を厚さ220μmの基材紙(上質紙)の上に800μmの塗工ギャップでバー塗工し、これを基材紙と共に線圧140kg/cmのロールプレスに通し、未焼成成型シートを得た。上記基材紙を剥離後、未焼成成型シートを380℃のオーブン中に10分放置して、PTFE樹脂シートを得た。
【0024】
[実施例1]
PTFE樹脂微粒子(商品名:ポリフロンPTFE M391S、ダイキン工業社製)を厚さ220μmの基材紙(上質紙)の上に800μmの塗工ギャップでバー塗工し、これにSUS304金網(36メッシュ、線径0.3mmφ)を重ねて、下が金属ロール上がゴムロールであるプレスロールに基材紙が下になるように線圧14kg/cmで通して、予備成型シートを得る。また上記と同様に基材紙上にPTFE樹脂微粒子(商品名:ポリフロンPTFE M391S、ダイキン工業社製)が塗布されたものの上に上記予備成型シートを金網側が下になるように重ねて、下から基材紙/PTFE樹脂/金網/PTFE樹脂/基材紙となるような構成で線圧140kg/cm、ギャップ350μmの上下金属ロール間に通し、未焼成金網入シートを得た。上記未焼成金網入シートの両面の基材紙を剥離後、380℃のオーブン中に10分放置して、金網入PTFE樹脂シートを得た。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のPTFE樹脂シートの製造方法によれば、芯材をPTFE樹脂エマルジョンに含浸させる工程や焼成工程を繰り返すことなく1〜2次の圧着および一度の焼成のみによって所望の厚さを有し、かつ耐屈曲性、耐引裂性等の構造部材として良好な物理特性を有するPTFE樹脂シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 PTFE樹脂シートの製造装置における圧着工程および焼成工程の模式図である。
【図2】 PTFE樹脂シートの製造装置における圧着工程(1次圧着工程)の模式図である。
【図3】 PTFE樹脂シートの製造装置における2次圧着工程の模式図である。
【符号の説明】
10,30 PTFE樹脂微粒子
11,31 基材紙
12,22,32 カレンダロール
13,23,33 仮固着シート
14 焼成機
15 PTFE樹脂シート
20 金網
Claims (1)
- 基材紙上に四フッ化エチレン樹脂微粒子を塗布した上に金網を重ね、これをカレンダロールにより1次圧着して予備成形シートとし、別の基材紙上に四フッ化エチレン樹脂微粒子を塗布したものの上に上記予備成形シートを基材紙が上になるように重ねて2次圧着し、続いて焼成することを特徴とする四フッ化エチレン樹脂シートの製造方法。
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