JP3968372B2 - 正極活物質用マンガン酸化物 - Google Patents

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Description

本発明は、電池の正極活物質として用いるマンガン酸化物に関する。
マンガン酸化物は、ニッケルマンガン電池、アルカリ電池、マンガンリチウム電池などの正極活物質として広く使用されている。中でも、電解二酸化マンガンは、比較的安価である上、高放電容量の電池を実現できるため、近年、これを正極活物質として用いたアルカリ電池は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機、PDAなどの電子機器用駆動電源として広く利用されている。
最近、電子機器の高性能化に伴い、正極活物質として用いるマンガン酸化物にも、より一層のハイレート特性、すなわちハイレートでの連続放電特性が求められるようになって来ているが、本来的に電解二酸化マンガンは、電池の正極活物質として用いた場合、放電電流が大きくなると電解二酸化マンガンの利用率が低下して大電流を効率良く取り出せなくなる課題を有している。そこで従来、ハイレート特性を向上させるための種々の提案が為されてきた。
例えば特許文献1には、硫酸マンガン及び硫酸溶液にアンモニウム塩を添加した電解液を電解して得た、アンモニアを有するα型二酸化マンガンを、リチウム塩水溶液で中和処理し、またはリチウム塩を混合することにより、リチウム二次電池の正極材料として使用することが提案されている。
特許文献2には、120℃以上400℃を超えない範囲での加熱処理により除去される水のモル数が、Mn原子1モル当たり0.16以上である電解二酸化マンガンを正極に用いることが提案されている。
特許文献3には、最大粒子径が100μm以下で、1μm以下の粒子個数が15%未満で、かつそのメジアン径が20〜60μmの範囲にある電解二酸化マンガン粉末であって、該粉末を窒素中150℃で脱気した後、窒素とヘリウムの混合ガス吸着法により測定した比表面積が50m2/g以上である電解二酸化マンガン粉末が提案されている。
また、特許文献4には、最大粒子径が100μm以下で、1μm以下の粒子個数が15%未満で、かつそのメジアン径が20〜60μmの範囲にある電解二酸化マンガン粉末であって、該粉末を、X線源としてCuKαを用いた測定において、ミラー指数が(110)である回折面の半価幅が3.5°未満である微小結晶サイズの大きな電解二酸化マンガン粉末が提案されている。
特許文献5には、ハイレート間欠性能を向上させたアルカリマンガン電池用正極合材として、表面硫酸量が0.10重量%以上であり、かつ、表面アルカリ金属量が0.20重量%未満である二酸化マンガンが開示されている。
特許文献6は、チタンを電解二酸化マンガンに0.001〜3.0重量%含有させることにより、電化二酸化マンガンの比表面積を高めて反応面積を高めることによりハイレート特性を高める方法が提案されている。
更に、特許文献7には、ハイレート特性を向上させることができる電解二酸化マンガンとして、硫酸根を1.3〜1.6重量%含有するものが開示されている。
特開平5−21062号 特開平5−174841号 特開2002−289185号 特開2002−289186号 特開2002−304990号 特開2003−163003号 特開2004−47445号
本発明は、従来とは異なる観点からマンガン酸化物について研究を進め、その結果得られた新たな知見に基づき、優れたハイレート特性を実現することができるマンガン酸化物を提供せんとするものである。
本発明は、組成式MnSabMexc・zH2O(但し、Me:Ti,Ca、Mg、Ln(ランタノイド)の一種あるいは二種以上の組合せ)で表されるマンガン酸化物であって、
aは、0.010以上0.015以下であり、
bは、0.30以上0.40以下であり、
cは、1.8以上2.3以下であり、
xは、0或いは0より大きく0.015以下であり、
zは、0を超える値であり、
参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定されるマンガン酸化物の開回路電位が250mV以上、或いは、マンガン酸化物:黒鉛=94:6の割合で黒鉛を混合した時に、参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定される、前記マンガン酸化物と黒鉛との混合物の開回路電位が230mV以上であることを特徴とするマンガン酸化物を提案する。
本発明のマンガン酸化物は、開回路電位(OCPともいう)が高いため、放電電圧が高くても、すなわちハイレート領域の使用であっても放電持続時間を長く維持できるというハイレート特性を備えている。
マンガン酸化物中に所定量の「S」「H」が取り込まれることによって、放電反応時に、マンガン酸化物内から直接かつ速やかにプロトン(H+)が供給され、高負荷時においても放電反応(ハイレート放電)が追随でき易くなり、ハイレート特性に優れた電池(例えばアルカリ電池)を実現することができるものと考えられる。
また、マンガン酸化物の結晶成長の間に「S」乃至「Me」が取り込まれると、これが結晶成長に際して制御因子として働き、ハイレート特性が更に優れたものとなる。詳細なメカニズムは不明であるが、おそらくマンガン酸化物の結晶成長の間に取り込まれた「S」「Me」が結晶成長に際して制御因子と働き、プロトン(H+)を含めて放電反応物の供給がより一層スムースになると同時に放電生成物の拡散もスムースになるため優れたハイレート特性が実現されるものと考えられる。ただし、一定量以上の「S」「Me」が存在するとプロトン(H+)の拡散を阻害することになる為、「S」「Me」の量を適正にすることが重要であるとも考えられる。
以上のように本発明のマンガン酸化物は、所定の組成において開回路電位が高く、正極活物質として高電位を備えているから、これを電池の正極活物質として用いることにより、高出力を発現可能な電池を構成することができるばかりか、負極活物質及び電解液の選択の幅を大きく広げることができる。
なお、本発明において「ハイレート」とは、アルカリ電池(LR06)及びニッケルマンガン電池(ZR06)の場合には400mA以上(LR06及びZR06の場合約1300mAに相当)の使用領域をハイレートと言う。後述する試験では、ハーフセルにおいて25mAの電流を所定の電圧を維持しつつ継続的に連続放電することによってハイレート特性を検討した。
本発明の組成式MnSabMexc・zH2Oにおいて「S」「H」及び「Me」は、事後的に添加されて混合状態で存在するものとは異なり、マンガン酸化物内に含有され、X線回折において「S」「H」「Me」のピークが観察されない状態を意味し、マンガン酸化物と一体的に含有されている状態のものをいう。
また、組成式MnSabMexc・zH2Oにおける「z」は、マンガン酸化物を110℃で2時間乾燥させた時のマンガン酸化物1モル当たりの重量減少をH2Oのモル数に換算した値である。この「H2O」は110℃での加熱乾燥によって蒸発し得る状態にある水、すなわちマンガン酸化物中にH2Oの状態で含有される水であるから、事後的に添加された水分とは異なる。又、マンガン酸化物を200〜400℃に加熱した際に蒸発する水分を結合水などと言うが、この結合水は110℃での加熱乾燥では蒸発しないため、結合水とも異なる。
本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意であり、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含する。
次に、本発明の実施の形態について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
本発明のマンガン酸化物は、組成式MnSabMexc・zH2Oで表されるマンガン酸化物である。
本発明のマンガン酸化物は、上記組成を満足するのであれば、天然マンガン酸化物、化学合成マンガン酸化物、電解マンガン酸化物、その他のマンガン酸化物のいずれでもよいが、安価でかつ上記組成を実現し易いという観点から、硫酸マンガン溶液を電気分解することによって生成(析出)して得られるマンガン酸化物が好ましい。
上記組成式において、Sのモル比率としての「a」は、0.010以上0.015以下であることが重要であり、好ましくは0.012以上0.014以下である。このSのモル比率aは、電解法によってマンガン酸化物を製造する場合であれば、例えば電解装置の設計(電解液の上層を高温層とし下層を低温層とすることも含む)、電解液の硫酸濃度、電解条件などによって調整することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
S元素の定量はICP分析装置を使って測定することができる(JIS K 1467:2003)。
上記組成式において、Hのモル比率としての「b」は、0.30以上0.4以下であることが重要であり、好ましくは0.33以上0.37以下である。このHのモル比率bは、電解法によってマンガン酸化物を製造する場合であれば、例えば電解装置の設計(電解液の上層を高温層とし下層を低温層とすることも含む)、電解液の硫酸濃度、電解条件などによって調整することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
H元素の定量は、窒素雰囲気中で110から500℃まで加熱した際に試料から放出された水分量をカールフィッシャー水分計で測定し、得られた水分量から、110℃で加熱乾燥した際に放出される水分量を除いた値に基づいて算出することができる。
なお、マンガン酸化物におけるHの存在状態として、H+、OH-、H2Oが考えられるが、試料を500℃まで加熱した場合、MnOx値に大きな減少は観られないため、この点から周囲の酸素を捉えてH2Oとして蒸発するプロトン(H+)の絶対量はほとんどなく、主にOH-、H2Oとして存在すると考えられる。
さらに、Sに対するHの量が所定比率であることが好ましい。具体的には、Sに対するHの比率b/aは35以下であるのが好ましく、中でも20以上35以下であるのが好ましく、その中でも特に24以上33以下であるのが好ましい。
Sに対するHの比率b/aは、電解法によってマンガン酸化物を製造する場合であれば、例えば電解装置の設計(電解液の上層を高温層とし下層を低温層とすることも含む)、電解液の硫酸濃度、電解条件などによって調整することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
上記組成式において、Oのモル比率としての「c」は、1.8以上2.3以下であることが重要である。このOのモル比率cは、S、H及びMeの含有量を変化させることにより調整することができる。但し、この方法に限定されるものではない。
上記組成式において、「Me」はTi,Ca、Mg、Ln(ランタノイド)の一種あるいは二種以上の組合せであり、原料中に含まれている不可避不純物と故意に添加された物とを区別するものではない。
「Me」のモル比率としての「x」は、0或いは0より大きく0.015以下であることが重要であり、好ましくは0.000001以上0.013以下、さらに好ましくは0.00001以上0.013以下である。すなわち、Meは必ずしも含まれていなくてもよいが、少しでも含まれていると結晶成長の際に制御因子として働き、ハイレート特性を更に優れたものとすることができる。但し、上述したように「Me」が多すぎるとプロトン(H+)の拡散を阻害することになる為、その量を適正にすることが重要である。
上記組成式において、「z」は、マンガン酸化物中にH2Oの状態で含有される水のモル比率を意味し、110℃で十分加熱乾燥させた時の重量減少を、マンガン酸化物1モル当たりのH2Oモル数に換算した値であり、若干でも存在すれば、すなわち0を超える値であればよいが、好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.15以下である。
上記組成を有するマンガン酸化物の中でも、X線回折法(XRD)で測定される(310)面のピーク強度I(310)と(221)面のピーク強度I(221)との比率が、I(310)/I(221)<0.4、特に<0.38、中でも特に<0.35であるのが好ましい。ピーク強度I(310)とピーク強度I(221)の比率が0.4よりどれだけ小さいかは、結晶構造がどれだけ乱れているかの指標、言い換えればマンガン酸化物内にS、H及びMeがどれだけ含有されているかの指標となる。したがって、I(310)/I(221)<0.4であれば、マンガン酸化物内にS、H及びMeが十分に取り込まれていることの一つの目安となる。但し、例外はある。
また、X線回折法(XRD)で測定される(110)面の面間隔d値が4.01Å以上、特に4.01〜4.09、中でも特に4.01〜4.08であるのが好ましい。
(110)面の面間隔d値はMnとOの結合状態に起因して変化する値である。詳細な理由は不明であるが、面間隔d値が4.01Å以上以上であればハイレート特性がより一層優れたものとなることが確かめられている。
本発明のマンガン酸化物は、参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定されるマンガン酸化物の開回路電位が250mV以上であることが重要であり、好ましくは250mV以上350mV以下、特に好ましくは260mV以上350mV以下の特性を備えたものである。
また、黒鉛と混合して正極合剤とする場合には、マンガン酸化物:黒鉛=94:6の割合で黒鉛を混合した時に、参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定される、前記マンガン酸化物と黒鉛との混合物の開回路電位が230mV以上であることが重要であり、好ましくは230mV以上330mV以下、特に好ましくは240mV以上330mV以下の特性を備えたものである。
(マンガン酸化物の製造方法)
本発明のマンガン酸化物の製造方法は、例えば、硫酸マンガン及び硫酸溶液からなる電解液を電気分解する方法において、電解槽内に高温の上層電解液層と低温の下層電解液層とを形成すると共に、電解電流密度、電解液の硫酸濃度等を調整することにより、目的とする組成のマンガン酸化物を製造することができる。以下、この製造方法についてより詳細に説明する。
電極として陽極には、チタン、チタン合金、鉛板、黒鉛板等を用い、陰極には、カーボン等を用いればよい。但し、これらに限定するものではない。
上層電解液層の温度は90〜100℃、低温の下層電解液層の温度は60〜85℃、特に65〜84℃とするのが好ましい。このように高温の上層電解液層と低温の下層電解液層とを形成する手段は、特に制限するものではないが、一例としては、電解槽の底部から補給液を上方向に送液するように導入管を設け、所定温度の電解液を所定の送液速度で補給しながら、熱交換器の配設位置とその加熱温度を調整する手段を紹介することができる。
電解液の硫酸濃度、マンガン濃度及び電解電流密度は、これらのバランスによって所望の組成となるように調整するのが好ましい。それぞれの値に絶対値としての制限はないが、一つの目安としては、電解液の硫酸濃度は30〜100g/L、特に55〜75g/Lであるのが好ましく、電解液中のマンガン濃度は10〜39g/L、特に10〜35g/Lであるのが好ましく、電解電流密度は20〜100A/m2、特に30〜70A/m2であるのが好ましい。
なお、送液速度つまり電解液の補給速度は、電解液の硫酸濃度が所定濃度に保持されるように設定すればよい。
Meを含有させる場合、Meを多く含む原料を選択するか、或いは電解液にMe化合物を添加するようにすればよい。この際、Me化合物としては、硫酸塩化合物、硝酸塩化合物、塩化塩化合物などを挙げることができる。具体的には、補給液としての硫酸マンガン溶液にこれらのMe化合物を溶解して添加する方法が好ましい。
陽極上に電析固着したマンガン酸化物の析出物を剥離し、必要に応じて粉砕及び分級するのが一般的である。但し、必ず粉砕及び分級をしなければならないというものではない。
この際の粉砕方法としては、ジョークラッシャー等により粗粉砕して数cmの塊状物に粉砕し、さらに微粉砕を行うためにローラーミル等により粉砕を行い、必要に応じてさらに乳鉢、湿式ボールミル粉砕、臼(ミル)粉砕、乾式ボールミル粉砕等によって粉砕を行うようにすればよい。
また、分級方法は、篩によるほか、粉砕して得られたマンガン酸化物粉末を純水中に分散させ、沈降粉末をろ過し乾燥を行うことにより微粉末を除去する方法等を採用することができる。
このように微粉砕したマンガン酸化物粉は、必要に応じて、表面に残留する遊離酸を取り除くため、水洗もしくはアルカリを用いて洗浄・乾燥を行うようにする。
開回路電位を高める手段としては、種々の方法が挙げられるが、組成式MnSabMexc・zH2Oで表されるマンガン酸化物においては、Sの量を多くし、かつHの量を少なくする。すなわち、b/aを比較的小さくする、好ましくはb/aが35以下、中でも20以上35以下、その中でも特に24以上33以下にすれば、例外はあるが一般的にはOCPを高くすることができる。具体的な手段としては、Mnの電解酸化反応をゆっくり又は少量で行う製造条件において、硫酸濃度を高めるか、Mn濃度を下げるか、或いは電流密度を下げるかの方向でこれらのバランスを調整すると、二酸化マンガン純分が上昇してb/aが小さくなりOCPを高めることができる。
また、電解によって得られたマンガン酸化物を酸化剤で処理することによってもOCPを高めることができる。マンガン酸化物を酸化剤で処理する方法としては、例えばマンガン酸化物を過マンガン水溶液に浸漬した後、水洗する方法を挙げることができる。
なお、上述した製造方法は、本発明のマンガン酸化物を製造するための一例であり、これに限定するものではない。マンガン酸化物中にS、H、場合によってはMeがそれぞれ所定量含有されるようにマンガン酸化物を製造できる他の方法でも製造可能であると考えられる。
(用途)
本発明のマンガン酸化物は、ニッケルマンガン電池、アルカリ電池などの正極活物質として好適に用いることができる。特に、本発明のマンガン酸化物は開回路電位が250mV以上であるから、ハイレート特性に優れており、これを正極活物質として用いた電池は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話機、PDAなどの電子機器用駆動電源として好適に用いることができる。

また、本発明のマンガン酸化物は、黒鉛を混合した時の開回路電位が230mV以上であるから、ニッケルマンガン電池用の正極活物質原料としても好適である。すなわち本発明のマンガン酸化物にオキシ水酸化ニッケル及び黒鉛を加えてなる混合合材を正極活物質として用いてニッケルマンガン電池を構成すれば、ハイレート特性に優れ、高出力を実現可能な電池を提供することができる。
電池の負極活物質は従来から知られているものでよく、特に限定されないが、マンガン電池、アルカリマンガン電池の場合は亜鉛等を、リチウム電池の場合はリチウム等を用いるのが一般的である。
電池を構成する電解液も従来から知られているものでよく、特に限定されないが、マンガン電池では塩化亜鉛又は塩化アンモニウム、アルカリ電池では水酸化カリウム、リチウム電池ではリチウム塩の有機溶媒溶液等を用いるのが一般的である。
本発明のマンガン酸化物を用いて、アルカリマンガン電池を構成する例について説明すると、例えばマンガン酸化物と導電剤である黒鉛と混練し、これを圧縮成型し正極缶の内側に配置する。また、正極活物質の内側にセパレータを介してゲル状亜鉛粉末からなる負極材を設けるようにして構成することができる。但し、この構成例に限定されるものではない。
また、ニッケルマンガン電池を構成する場合には、例えばマンガン酸化物と、オキシ水酸化ニッケルと、導電剤である黒鉛と混練し、これを正極合材とすればよい。
(実施例1)
5Lビーカーを電解槽として用い、陽極としてチタン板、陰極として黒鉛板をそれぞれ交互に電解槽内に懸吊し、電解槽の底部から補給液が上方向に補給されるように硫酸マンガン電解補給液の導入管を設けた。この際、電解液に浸漬している極板の長さ1に対して、電解槽底から極板下端までの距離が0.2となる長さの電極を用いた。
60℃に調整した電解補給液を前記導入管を通じて電解槽内に注入し、電解するに際して電解液の組成がマンガン35g/L、硫酸60g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を95〜98℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保つようにしながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
電解析出して得られたマンガン酸化物は粗粉砕し、90℃の熱水で30分洗浄後、デカンテーションし、さらに同量の水で24時間撹拌洗浄し、再びデカンテーションした。そして、ここで得られたマンガン酸化物を苛性ソーダによりマンガン酸化物のJISpHが3.5になるよう中和後、95℃で0.5時間加熱乾燥し、そして平均粒径が約35μmとなるよう微粉砕してマンガン酸化物粉体を得た。
(実施例2)
実施例1と同様の電解槽において、電解液に浸漬している極板の長さ1に対して、電解槽底から極板下端までの距離が0.4となる長さの電極を用い、他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例3)
Caを多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給し、他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例4)
Lnを多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給すると共に、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸70g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った。(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例5)
電解液及び電解補給液にTiを0.25g/L及びLnを0.25g/L添加し、電解するに際して電解液の組成をマンガン20g/L、硫酸80g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例6)
電解するに際して電解液の組成がマンガン20g/L、硫酸80g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を87〜93℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(実施例7)
電解するに際して電解液の組成がマンガン10g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を96〜99℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(実施例8)
電解するに際して電解液の組成がマンガン10g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を87〜93℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(実施例9)
電解するに際して電解液の組成がマンガン30g/L、硫酸60g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を96〜99℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度60A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(実施例10)
電解液及び電解補給液にTiを0.25g/L添加し、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸60g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度60A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例11)
電解するに際して電解液の組成がマンガン40g/L、硫酸55g/Lとなるように調整し、電流密度55A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に電解析出してマンガン酸化物を得た。次に、電解析出して得たマンガン酸化物50gを、0.05モルKMnO4水溶液(酸化剤水溶液、30℃)300ml中に投入し、マグネットスターラーで1時間攪拌継続した後、水洗し、107℃で乾燥した。乾燥後、粗粉砕し、90℃の熱水で30分洗浄した後デカンテーションし、さらに同量の水で24時間撹拌洗浄し、再びデカンテーションした。そして、ここで得られたマンガン酸化物を苛性ソーダによりマンガン酸化物のJISpHが3.5になるよう中和後、95℃で0.5時間加熱乾燥し、そして平均粒径が約35μmとなるよう微粉砕してマンガン酸化物粉体を得た。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値は表1に示した。
(実施例12)
Mgを多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給し、他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例13)
実施例12に比べ、Mgを更に多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給し、他の条件は実施例12と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例14)
電解液及び電解補給液にTiを0.56g/L添加し、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸60g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度60A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例15)
実施例4に比べ、Lnを更に多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給すると共に、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸70g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った。(詳しくは表1を参照のこと)。
(実施例16)
電解するに際して電解液の組成がマンガン20g/L、硫酸90g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を87〜93℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(実施例17)
電解するに際して電解液の組成がマンガン30g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を95〜98℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(比較例1)
電解するに際して電解液の組成をマンガン50g/L、硫酸20g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例2)
電解するに際して電解液の組成をマンガン45g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、電流密度55A/m2に設定し、他の条件は比較例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例3)
電解するに際して電解液の組成をマンガン40g/L、硫酸50g/Lとなるように調整するとともに、電流密度55A/m2に設定し、他の条件は比較例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例4)
電解液及び電解補給液にTiを0.25g/L添加し、電解するに際して電解液の組成をマンガン40g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、電流密度55A/m2に設定し、他の条件は比較例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例5)
実施例13に比べ、Mgを更に多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給し、他の条件は実施例13と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例6)
電解液及び電解補給液にTiを4.300g/L添加し、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸60g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度60A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例7)
実施例15に比べ、Lnを更に多く含むマンガン原料からなる硫酸マンガン電解補給液を調整して供給すると共に、電解するに際して電解液の組成をマンガン30g/L、硫酸70g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整することにより、電解液の上層の温度を95〜98℃に保ち、下層の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度55A/m2で10日間電解した。他の条件は実施例1と同じになるように電解析出及び粉砕・洗浄・乾燥を行った。(詳しくは表1を参照のこと)。
(比較例8)
電解するに際して電解液の組成がマンガン15g/L、硫酸100g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を95〜98℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度30A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(比較例9)
電解するに際して電解液の組成がマンガン30g/L、硫酸30g/Lとなるように調整するとともに、熱交換器の配設位置と加熱温度を調整し、電解液の上層(電解液に浸漬している電極板全体を含む上層部)の温度を95〜98℃に保つ一方、電解液の下層(電極板より下層部)の温度を65〜80℃に保ちながら、電流密度20A/m2で10日間電解し、その他の点は実施例1と同様に行った。
なお、マンガン濃度、硫酸濃度、電流密度の実測値の平均値を表1に示した。
(参考例1)
実施例6で得られたマンガン酸化物粉体を常温中で12ヶ月保存したものを、参考例1のサンプルとした。
Figure 0003968372
Figure 0003968372
実施例3−5、実施例10および実施例12−15の結果をみると、Ti、Ca、Ln、Mgのいずれを含む場合にも優れた特性(効果)が得られることが認められる。その一方、比較例5、7の結果をみると、Me量が多すぎると特性(効果)が低下することが認められる。このような点から、Me量(モル比率)の好ましい範囲としては0.015以下、特に0.004以下(実施例13参照)であると考えられる。
<評価>
上記実施例及び比較例で得られたマンガン酸化物の測定及び評価は、次に説明する方法で行った。
(水分量の測定)
試料としてのマンガン酸化物粉末を、110℃で2時間加熱乾燥した際に放出される水分量を測定した。
(H元素の定量方法)
試料としてのマンガン酸化物粉末を、カールフィッシャー水分計を用いて、窒素雰囲気中で110から500℃まで加熱した際に水分のカウントが安定するまで保持することで放出される水分量を測定し、その水分量から、上記の110℃の加熱乾燥させた際に放出される水分量を除き、その除いた水分量からH元素のモル比率を算出した。
(S元素の定量方法)
JIS K 1467:2003に基づき、ICP分析装置でS元素の量を測定した。
(Me元素の定量方法)
JIS K 1467:2003に基づき、ICP分析装置で各Me元素の量を測定した。
(MnO2含有量及び全Mn量の測定)
MnO2含有量は、JIS K 1467:2003の通り測定した。全Mn量はKMnO4を用いた電位差滴定により測定した。
(酸素分の測定)
MnO2含有量及び全Mn量からMn酸化数を算出してMnOx値を算出した。また、Sの存在状態をSO4 2-と仮定し、S量から酸素量を算出した。さらにまた、窒素雰囲気中で110℃から500℃まで加熱した際に試料から放出される水分量をカールフィッシャー水分計で測定し、得られた水分量から、110℃で加熱乾燥した際に放出される水分量を除いた値に基づいて酸素量を算出した。そして、前記MnOx値から算出した酸素量、前記S量から算出した酸素量、および前記加熱乾燥した際に放出される水分量の合計量から全酸素量を求め、O元素のモル比率を算出した。
(XRD測定方法)
Cu管球を用いて、測定範囲10〜80°をスキャンステップ0.02°、スキャンスピード1°/minでXRD測定してXRDチャートを求めた。
得られたXRDチャートのピークのうち、Ramsdellite(空間群:Pnma)と帰属した場合における(110)面、(310)面、(201)面、(020)面、(211)面、(221)面のピークの平滑化処理、バックグラウンド除去処理及びKα2除去処理(最大強度比=0.500)を行ない、ピークトップの角度を用いて、(110)面のd値、(310)面/(221)面のピーク強度比I(310)/I(221)を算出し、表2に示した。
(OCPの測定方法)
上記実施例及び比較例で得たマンガン酸化物(サンプル)を0.3g秤量し、φ10mmの上部開放底付きニッケルめっきスチール缶に充填した。これを専用ダイスにセットし、油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけた後、金属ニッケルリボンを底部にスポット溶接した。
200mLビーカーに前記充填済みスチール缶を挿入し、ニッケルリボンを折り曲げて固定し、電解液として40%KOH水溶液を注入し、スチール缶部分を完全に浸漬させて1昼夜静置した後、参照電極(水銀/酸化水銀)を電解液に浸漬させ、デジタル電圧計でサンプルと参照電極間の電位(開回路電位:OCP)を測定した。
(黒鉛入りOCPの測定方法)
上記実施例及び比較例で得たマンガン酸化物(サンプル)と黒鉛を所定比率(94:6)で混合し、200mLビーカーにて薬さじで充分に攪拌混合した後、この混合剤0.2gを、専用ダイスにセットし、油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけた後、金属ニッケルリボンを底部にスポット溶接した。
200mLビーカーに前記充填済みスチール缶を挿入し、ニッケルリボンを折り曲げて固定し、電解液として40%KOH水溶液を注入し、スチール缶部分を完全に浸漬させて一昼夜静置した後、参照電極(水銀/酸化水銀)を電解液に浸漬させ、デジタル電圧計でサンプルと参照電極間の電位(黒鉛入りOCP)を測定した。
なお、実施例1で得られたマンガン酸化物に、3重量%、6重量%、12重量%、20重量%の割合(混合後の量に対する重量割合)で黒鉛を混合した場合の回路電位を上記同様に測定したところ、それぞれ242mV、240mV、238mV、236mVであった。すなわち、同一のマンガン酸化物であっても、黒鉛の混合量が増加すると開回路電位は低下し、その割合は、6重量%を中心に考えると、3重量%であれば2mV程度高くなり、12重量%であれば2mV程度低くなることが分った。これより、仮に電池内の黒鉛量が6重量%から上下にずれていても、前記の傾向から黒鉛量6重量%時の電位を推測することができる。
(ハーフセル特性の測定方法)
−アルカリマンガン電池−
上記実施例1〜11及び比較例1〜3で得たマンガン酸化物(サンプル)と黒鉛を所定比率(94:6)で混合し、200mLビーカーにて薬さじで充分に攪拌混合した後、この混合剤0.2gを、φ10mm円盤作製用ダイスにセットし、油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけて成形品を得た。この成形品をφ10mmの上部開放底付きニッケルめっきスチール缶に装入し、φ10mmニッケル網を成形品上部に装入した後、成形品を圧着するため油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけた。次いで成形品が圧着されたスチール缶をアクリル樹脂製モデルセルに装着し、対極として導電用タブをつけたニッケル網をモデルセルに装着し、電解液40%KOH水溶液をモデルセルに注入し、一昼夜静置した後、サンプル極と対極(:ニッケル)と電流計とを、電流値が予め設定されている定電流電源装置に配線し、参照電極(Hg/HgO)を電解液に浸漬させ、デジタル式電圧記録計でサンプル極と参照電極間の電位を測定記録した。
定電流電源装置から25mA連続放電を行い、電位がカットオフ電位(−0.2V)に達した時点で放電終了し、−0.2V時の放電容量を測定した。
各実施例及び比較例のハーフセル特性(25mA)は、比較例3の測定値(放電容量)を100とし、これに対する比率で表2に示した。
−ニッケルマンガン電池−
実施例1,2及び比較例3で得たマンガン酸化物(サンプル)とオキシ水酸化ニッケルと黒鉛とを所定比率(47:47:6)で混合し、200mLビーカーにて薬さじで充分に攪拌混合した後、この混合剤0.2gを、φ10mm円盤作製用ダイスにセットし、油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけて成形品を得た。この成形品をφ10mmの上部開放底付きニッケルめっきスチール缶に装入し、φ10mmニッケル網を成形品上部に装入した後、成形品を圧着するため油圧プレス機で荷重2tonを10秒間かけた。次いで成形品が圧着されたスチール缶をアクリル樹脂製モデルセルに装着し、対極として導電用タブをつけたニッケル網をモデルセルに装着し、電解液40%KOH水溶液をモデルセルに注入し、一昼夜静置した後、サンプル極と対極(:ニッケル)と電流計とを、電流値が予め設定されている定電流電源装置に配線し、参照電極(Hg/HgO)を電解液に浸漬させ、デジタル式電圧記録計でサンプル極と参照電極間の電位を測定記録した。
実施例のハーフセル特性(25mA)は、比較例3の測定値(放電容量)を100とし、これに対する比率で表2に示した。
ニッケルマンガン電池はオキシ水酸化ニッケルが加わること以外はアルカリ電池と同様の電池構成である。なお且つ実施例1,2及び比較例3よりニッケルマンガン電池においても同様の効果が確認された。これらのことから、本発明による効果はニッケルマンガン電池においても同様の効果があると考えられる。


Claims (4)

  1. 組成式MnSabMexc・zH2O(但し、Me:Ti、Ca、Mg、Lnの一種或いは二種以上の組合せ。bは、窒素雰囲気中で110℃から500℃まで加熱した際にマンガン酸化物から放出された水分量から、110℃で加熱乾燥させた際に放出される水分量を除き、その除いた値に基づいて算出されるH元素のモル比率。cは、MnO2含有量及び全Mn量からMn酸化数を算出して得られたMnOx値に基づいて算出されたO元素のモル比率と、Sの存在状態をSO4 2-と仮定してS量に基づいて算出されたO元素のモル比率と、窒素雰囲気中で110℃から500℃まで加熱した際にマンガン酸化物から放出される水分量から、110℃で加熱乾燥した際に放出される水分量を除き、その除いた水分量に基づいて算出されたO元素のモル比率との合計値。zは、マンガン酸化物を110℃で2時間乾燥させた時のマンガン酸化物1モル当たりの重量減少をH2Oのモル比率に換算した値。)で表されるマンガン酸化物であって、
    aは、0.010以上0.015以下であり、
    bは、0.3以上0.5以下であり、
    cは、1.8以上2.3以下であり、
    xは、0或いは0より大きく0.015以下であり、
    zは、0を超える値であり、
    参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定される開回路電位が250mV以上であることを特徴とする、アルカリ一次電池の正極活物質用マンガン酸化物。
  2. 組成式MnSabMexc・zH2O(但し、Me:Ti、Ca、Mg、Lnの一種或いは二種以上の組合せ。bは、窒素雰囲気中で110℃から500℃まで加熱した際にマンガン酸化物から放出された水分量から、110℃で加熱乾燥させた際に放出される水分量を除き、その除いた値に基づいて算出されるH元素のモル比率。cは、MnO2含有量及び全Mn量からMn酸化数を算出して得られたMnOx値に基づいて算出されたO元素のモル比率と、Sの存在状態をSO4 2-と仮定してS量に基づいて算出されたO元素のモル比率と、窒素雰囲気中で110℃から500℃まで加熱した際にマンガン酸化物から放出される水分量から、110℃で加熱乾燥した際に放出される水分量を除き、その除いた水分量に基づいて算出されたO元素のモル比率との合計値。zは、マンガン酸化物を110℃で2時間乾燥させた時のマンガン酸化物1モル当たりの重量減少をH2Oのモル比率に換算した値。)で表されるマンガン酸化物であって、
    aは、0.010以上0.015以下であり、
    bは、0.3以上0.5以下であり、
    cは、1.8以上2.3以下であり、
    xは、0或いは0より大きく0.015以下であり、
    zは、0を超える値であり、
    マンガン酸化物:黒鉛=94:6の割合で黒鉛を混合した時に、参照電極に酸化水銀(Hg/HgO)、電解液に40%KOHを用いて、20℃で測定される開回路電位が240mV以上であることを特徴とする、アルカリ一次電池の正極活物質用マンガン酸化物。
  3. 請求項1又は2に記載のマンガン酸化物を正極活物質として用いてなる構成を備えた電池。
  4. 請求項1又は2に記載のマンガン酸化物にオキシ水酸化ニッケルと黒鉛とを混合してなる混合合材を正極活物質として用いてなる構成を備えた電池。

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