JP3967912B2 - エアバッグ装置付きステアリングホイール - Google Patents

エアバッグ装置付きステアリングホイール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エアバッグ装置を備えたステアリングホイールの構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の乗員保護思想の高まりと共に、運転者を車両の衝突から保護する手段として、ステアリングホイールにエアバッグ装置を装着する事は一般化してきている。係るステアリングホイールは、ステアリングホイールの中央部にエアバッグ装置を装着した構成であり、該エアバッグ装置は、エアバッグとこれを膨張させるためのガスを発生させるガス発生器とを保持したリテーナと、その表面側を被う蓋部材としてのバッグカバーとからなり、バッグカバーには衝突時にエアバッグを膨出させるために開裂する破断部が形成された構造となっている。係るエアバッグ装置の構造上、バッグカバーはステアリングホイールの前面中央に位置するにも拘らず、破断部が形成されている関係上、その形状構造には大きな制約がある。
【0003】
一方、顧客のニーズや嗜好の多様化に伴い、ステアリングホイールにもデザインの多様化が求められて来ている。特に、スポーツカータイプの車にはスポーティなステアリングホイールのデザインが要求されている。そこで、最近では、図8に示した如きエアバッグ装置付きステアリングホイールが提案されている。このステアリングホイールは、USP6231074号に開示されているもので、ステアリングホイールBの中央にエアバッグ装置Aが装着され、該エアバッグ装置Aの周囲を囲む様に意匠部材Cが配置された構造のものであって、前記意匠部材Cを無塗装のステンレス鋼等の金属部材で形成する事により、意匠部材Cに金属光沢を発現してスポーティな感覚を与えるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
係るステアリングホイールにおいては、図8のE−E断面である図9に示されている如く、前記意匠部材CはステアリングホイールBにボルト・ナット部材81によって固着され、エアバッグ1とガス発生器2とを内蔵したリテーナ3及び蓋部材である表側のバッグカバー4とを有するエアバッグ装置Aは、ステアリングホイールの中央底部にコイルバネ82によって保持された構成となっている。
【0005】
従って、ステアリングホイール中央のエアバッグ装置の表面露出部分、即ちエアバッグ展開時に破断するバッグカバー4の大きさは、従前のエアバッグ装置のバッグカバー部分の面積(図中のAとCの表面側面積の合計面積)よりも著しく小さくなる事は避けられない。このため、該バッグカバー4の破断部5も、図8に点線で示している様に小径のバッグカバー表面露出部内に小さく形成せざるを得なくなっている。
【0006】
この結果、衝突時にエアバッグが展開する際には、エアバッグはバッグカバー4に形成された小さな破断口から乗員の顔面に向かって勢い良く飛び出す事になり、乗員は膨出したエアバッグによって傷害を受ける危険性を孕んでいる。これは、エアバッグ展開時の乗員のエアバッグによる傷害を軽減しようとする技術の流れに逆行しており、係る傷害値軽減の点では後退したものとなっている。
【0007】
又、エアバッグ装置Aの下面に配置したコイルバネ82によって該エアバッグ装置Aを揺動可能に保持させ、図示されていないが、これによってホーンスイッチを作動する構成となっているが、エアバッグ1,ガス発生器2及びこれらを保持するリテーナ3並びに前記バッグカバー4からなる重量物のエアバッグ装置全体を前面に付勢しつつ保持する前記コイルバネ82としては、強力なコイルバネが要求され、このために、バッグカバー4の表面部を小さな力で叩いた程度ではホーンは作動せず、運転中のホーンによる警報に失敗する例は多くの運転者が経験するところである。
【0008】
本発明は、係る現状に鑑みてなされたもので、ステアリングホイールにスポーティーな意匠性を持たせると共に、エアバッグ展開時にも乗員に傷害を与える事なくエアバッグの展開が円滑に行われる様にしたエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供する事を第1の目的とし、加えて、小さな力でホーンを作動させる事のできるホーンスイッチ機構を備えたエアバッグ装置付きステアリングホイールを提供する事を第2の目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のエアバッグ装置付きステアリングホイールは、折り畳まれたエアバッグ(1)とガス発生器(2)とを保持して内部に収納するリテーナ(3)と該リテーナの表面側に配置され且つエアバッグ展開時に開裂する破断溝(5)を有するバッグカバー(4)とを備えたエアバッグ装置(A)が、ステアリングホイール(B)の中央部に配置され、且つ、前記エアバッグ装置(A)の前面側の前記バッグカバー(4)とステアリングホイール(B)との間に該バッグカバー(4)の表面外周部を囲繞する様に意匠部材(C)が配置されてなるエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
エアバッグ展開時には、前記バッグカバー(4)に形成された破断溝(5)の開裂と共に、該バッグカバー(4)の開裂力によって前記意匠部材(C)も開裂してエアバッグ(1)を展開させる様にしてなり、
前記バッグカバー(4)は、ステアリングホイール(B)の表面に露出する表面部材(4a)と、該表面部材(4a)の少なくとも上側部位又は全周に亘って形成され且つ前記意匠部材(C)の裏面側に回り込む様に前記表面部材(4a)に連接して形成された段部(4b)と、該段部(4b)に連接して形成された周壁部(4c)とからなり、
前記表側部材(4a)の裏面には、前記ステアリングホイール(B)の正位置において略中央部に水平方向に延在する水平方向破断溝(5a)と、その両端部の上下方向に延在する上下方向破断溝(5b)とが形成され、
前記表面部材(4a)の上側部位に位置する前記段部(4b)には、該表面部材(4a)の前記上下方向破断溝(5b)の各上端部に連続して段部に達する段部破断溝(5c)が形成されており、
前記意匠部材(C)の前記バッグカバー(4)の前記段部(4b)の上側部分に隣接する部位には、前記段部破断溝(5c)の位置よりも外側位置に、エアバッグ展開時に開裂する一対の破断溝(6)が形成されており、
これにより、エアバッグ展開時には、前記バッグカバー(4)と共に前記意匠部材(C)の上部をも開裂させてエアバッグを膨出させる様にしてなることを特徴とする。
【0010】
そして前記意匠部材(C)は、前記バッグカバー(4)の表面部材(4a)の外周部を囲繞する表面意匠部(7a)と該表面意匠部(7a)に連続して下方に延在する脚部(7b)とを有し、該意匠部材(C)の前記一対の破断溝(6)の中間部位の裏面には、前記表面意匠部(7a)から前記脚部(7b)に至る中央破断溝(6a)が形成されていることが望ましい。
【0011】
また、前記意匠部材(C)は、前記バッグカバー(4)の表面部材(4a)の外周部を囲繞する表面意匠部(7a)と該表面意匠部(7a)に連続して下方に延在する脚部(7b)とを有し、該脚部(7b)の適所が前記リテーナ(3)に固着されており、これによって、前記意匠部材(C)は、予めエアバッグ装置(A)と一体的に組み立てられていることが望ましい。
また、前記リテーナ(3)は、前記ステアリングホイール(A)に固着されてなることが望ましい。
【0012】
また、前記バッグカバー(4)は、前記リテーナ(3)に前後方向に揺動可能に係止され、且つ該バッグカバー(4)の裏面側に配置された弾性部材(8)によって前面側に付勢されており、該バッグカバー(4)の裏面側とステアリングホイール(B)又は前記リテーナ(3)との間の適所にホーンスイッチ(9)が配置されており、これにより、前記バッグカバー(4)を押圧する事によってホーンスイッチ回路を閉成する様にしてなることが望ましい。
【0013】
また前記バッグカバー(4)は、前記周壁部(4c)の周方向に複数個形成された係止穴(4d)内に、前記リテーナ(3)からその外方に突出して形成された係止片(3a)を遊嵌する事により、該バッグカバー(4)を前後方向に揺動可能に係止してなることが望ましい。
また、前記リテーナ(3)の外周部外側にホーンスイッチ支持板(3b)が突出して形成され、該ホーンスイッチ支持板(3b)にホーンスイッチ(9)を保持させてなることが望ましい。
【0014】
また前記ホーンスイッチ(9)は、板バネ(8)の一端が電気絶縁体で形成された保持部材(10)を介して前記ホーンスイッチ支持板(3b)に保持され、該板バネ(8)の先端部に可動接点(9a)が形成され、前記ホーンスイッチ支持板(3b)の該可動接点(9a)対応部に固定接点(9b)が形成されており、前記板バネ(8)によって前記バッグカバー(4)を前面側に付勢していることが望ましい。
また前記固定接点(9b)は、前記ホーンスイッチ支持板(3b)及び前記リテーナ(3)を介して車体側と電気的に接続されてアースされており、前記可動接点(9a)はホーン電源の陽極に接続されていることが望ましい。
【0015】
また前記保持部材(10)の両側部にスリット状装着溝(10a)が形成され、前記リテーナのホーンスイッチ支持板(3b)には前記保持部材(10)の前記スリット状装着溝(10a)に嵌合するガイド部(10b)が形成されており、前記保持部材(10)の前記スリット状装着溝(10a)を該ガイド部(10b)に嵌合する事により、前記ホーンスイッチ(9)を前記リテーナ(3)に装着する様にしてなることが望ましい。
また、前記リテーナのホーンスイッチ支持板(3b)は、前記ステアリングホイール(B)のスポーク部(11)の位置に対応させて複数個配置され、前記ホーンスイッチ(9)は、該スポーク部(11)近傍位置に配置されていることが望ましい。
【0016】
また、前記ホーンスイッチ(9)の保持部材(10)の上面は、前記意匠部材(C)の下面に突出して形成された突起部(19)に当接し、該保持部材(10)の下面は、前記ステアリングホイールのスポーク部(11)に当接して配置されており、これにより、前記保持部材(10)を、前記意匠部材(C)と前記スポーク部(11)とで挟持する様にしてなることが望ましい。
さらに前記ホーンスイッチ(9)は複数個設置されており、各ホーンスイッチの板バネ(8)が配線(12)によって電気的に接続されていることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るステアリングホイールの一部切り欠き平面図であり、図2は図1のA−A断面図,図3は図1のB−B断面図,図4は図1のC−C断面図,図5は図1のD−D断面図である。先ず図1に示している様に、本発明のステアリングホイールBは、前面中央にエアバッグ装置Aが配置され、該エアバッグ装置Aの周囲を囲繞する様に意匠部材Cが配置された構成となっている。該エアバッグ装置Aは、図2,図3に示されている様に、ガス発生器2とエアバッグ1とがリテーナリング13とボルト14とのよって固着された金属製のリテーナ3と、この上面を被う様に配置されたバッグカバー4とからなっている。
【0018】
前記バッグカバー4は、図2,図3に示している様に、ステアリングホイールの表側に露出する表面部材4aと、これに連接して少なくともステアリングホイールの正位置における上側部位(12時側)に形成されて前記意匠部材Cの裏面側に回り込む段部4bと、該段部4bに連接して形成された周壁部4cとからなり、該周壁部4cの周方向の適所に、リテーナ3と係止するための係止穴4dが複数個形成されている。一方、前記リテーナ3側には、該係止穴4dに対応する位置に係止片3aが外側に突出して形成されている。従って、リテーナの係止片3aを前記バッグカバーの係止穴4dに挿入する事によりバッグカバー4がリテーナ3に係止される構造となっているが、該係止穴4dの穴高さhを前記係止片3aの厚みよりも充分大きく設定しておく事により、バッグカバー4はリテーナ3に遊嵌されて前後方向に揺動可能な状態となっている。
【0019】
又、前記バッグカバー4の裏面側には、エアバッグの展開時に開裂して開口するための破断溝5が形成されている。この破断溝5は、先ず表側部材4aの裏面側には、ステアリングホイールの正位置において略中央部に水平方向に延在する水平方向破断溝5aと、その両端部の上下方向に延在する上下方向破断溝5bとが形成され、又、前記表面部材4aの上側部位に位置する前記段部4bには、該表面部材4aの前記上下方向破断溝5bの上端部に連続して段部に達する段部破断溝5cが形成されている。
【0020】
次に、前記意匠部材Cは、金属光沢塗装等が施された合成樹脂製の部品であって、表面に任意の意匠線15a,15bを有しており、前記バッグカバー4の表面部材4aの外周面とステアリングホイールBとの間に配置される意匠部品である。この意匠部材Cは、前記バッグカバー4の表面部材4aの外周部を囲繞してステアリングホイールの表側に露出する表面意匠部7aと、これに連続して下方に延在する脚部7bとを有しており、前記バッグカバー4の前記段部4bの上側部分に隣接する部位には、前記バッグカバーの段部破断溝5cの位置よりも外側位置に、エアバッグ展開時に開裂する一対の破断溝6が形成されている。これにより、エアバッグ展開時には、前記バッグカバー4が開裂すると、その上側部分は、前記段部4bの内側角部4eを回動支点として外側に開き、このバッグカバー4の外側に開く力(開裂力)が前記意匠部材Cも外側に開く力として作用し、この力によって前記一対の破断溝6が開裂して該意匠部材Cも外側に開く事になる。
【0021】
又、前記意匠部材Cの前記一対の破断溝6の中間部位(ステアリングホイールの12時の位置)の裏面には、前記表面意匠部7aから前記脚部7bに至る中央破断溝6a(図3参照)を形成しておけば、意匠部材Cの開裂時には、該中央破断溝6aの部分で左右にも開裂するので、意匠部材Cの上側円弧部分は、左右に分かれて上方に開くので、エアバッグの展開が円滑に行われることになる。尚、この中央破断溝6aは、意匠部材Cの上面7cが図示の実施例の如く円弧状をしており、該円弧状部に形成された破断溝6によって該意匠部材が開裂する場合に特に有効な破断溝であるが、前記意匠部材の上面7cが水平面の場合には省略する事の可能な破断溝である。
【0022】
又、前記意匠部材Cの脚部7bの適所には、図4に示している様に、内側に突出して延在する取付脚7dが設けられており、該取付脚7dとリテーナ3の意匠部材取付け脚部3cとが、リベット16によって連結固定されている。この取付脚7dは、意匠部材Cの脚部7bの数カ所に設けられており、その数と取付け強度は、エアバッグ展開時に該意匠部材に作用する力によっても該意匠部材がリテーナから分離しない程度の保持力が得られる様に考慮されている。尚、この取付脚7dが配置されている部分の前記バッグカバー4の周壁部4cには切り欠き部4fが形成されており、該取付脚7dとリテーナ3との取り付けの障害にならない様に工夫されている。この様に、意匠部材Cがリテーナ3に固着される事により、該意匠部材Cはエアバッグ装置Aと一体化される事になるので、自動車組立体工場或いはステアリングホイール工場において、エアバッグ装置Aと意匠部材Cとをステアリングホイールに組付けるに当り、従来の図8に示した構造のものでは、これらの3部品を夫々組付ける必要があったが、本実施例では、意匠部材Cはエアバッグ装置Aに組付けられているので、従来のエアバッグ装置付きステアリングホイールと同様にエアバッグ装置AをステアリングホイールBに組付けるだけの工程となるので、部品点数が増えたにも拘らず、組立工数の増加が生じないという利点がある。
【0023】
次に、図5は、エアバッグ装置AのステアリングホイールBへの取付け構造を示しており、通常の場合と同様に、リテーナ3に形成された取付けブラケット3dをステアリングホイールBの本体部分にボルト17にて常法に従って固着している。これにより、意匠部材Cを一体的に保持したエアバッグ装置Aが、ステアリングホイールBに固着される事になる。
【0024】
尚、前記意匠部材Cの脚部7bの下端或いは表面意匠部7aの周縁下面は、ステアリングホイールのコアカバー18の上端面と係合する構造となっており、外部からステアリングホイール内にゴミ等が入り込むのを防止する構造となっている事はいうまでもない。
【0025】
上記構成のエアバッグ装置が展開する場合の前記バッグカバー4及び意匠部材Cの開裂状態について、図6の概念図を用いて説明する。同図(a)〜(c)はエアバッグ展開時のバッグカバーと意匠部材の開裂状態を経時的に示した概念図であり、図(a)は未展開の状態を示し、図(b)は展開開始時の開裂状態を示し、図(c)は展開終了時の開裂状態を示している。
【0026】
同図(a)のエアバッグの未展開の状態は、前記図1の状態と同様であるので詳細説明は省略する。自動車が衝突事故を起こし、所定値以上の衝撃が検出されると、ガス発生器に点火されてエアバッグの膨張が開始される。この膨張初期の段階では、同図(b)に示している様に、エアバッグ(図示せず)の膨張力によって、先ず、前記バッグカバー4の表側部材4aに形成されている水平方向破断溝5aとその両端部の上下方向に延在する上下方向破断溝5bとの開裂が生じ、表側部材4aは上下に分かれて展開を開始する。続いて、同図(c)に示している様に、前記表面部材4aの上側部位に位置する前記段部4bに形成されている段部破断溝5cが開裂し、前記段部4bの裏面側角部4eを回転中心(ヒンジ)に展開して前記表側部材4aが完全展開する。この意味において、前記段部破断溝5cは、バッグカバーの段部の裏面側角部がヒンジとなる様に、該裏面側角部4eの部分で開裂が止まる様に段部4bにのみ形成され、その下方の周壁部4cには達しない程度の溝となす事が好ましい。
【0027】
又、この段部破断溝5cの展開過程では、同時に、前記表側部材4a及び段部4bから前記意匠部材Cに裏面側から表側に押し上げる力が作用し、この結果、前記意匠部材Cに前記段部破断溝5cの位置よりも外側位置に形成されている一対の破断溝6が開裂して該意匠部材Cの展開が行われ、エアバッグの膨出が完了する。尚、この意匠部材Cの展開に際し、展開した意匠部材が飛散しない様に該意匠部材がリテーナにリベット16で固定されている事は前述の通りである。
【0028】
ここで、前記意匠部材Cの前記一対の破断溝6の中間部位に形成されている前記中央破断溝6aも破断して、該意匠部材Cの開裂部は左右に分離された状態で開裂する事になるので、バッグカバー4は意匠部材によって展開を阻害される事なく円滑に展開が行われると共に、エアバッグも乗員に向かって過度に膨出する事なく円滑に展開を完了する。尚、前記意匠部材Cに形成されている一対の破断溝6が前記段部破断溝5cの外側位置に配置されているので、該意匠部材Cの破断も円滑に行われる事になる。
【0029】
以上の如く、本発明においては、意匠部材をエアバッグ装置の周囲に配置してステアリングホイールの意匠性を向上させているにも拘らず、従来の意匠部材を配置していないステアリングホイールと同様に、円滑なエアバッグの展開が行われる事になる。
【0030】
次に、本発明の第2の目的であるホーンスイッチの作動の円滑化について説明する。本発明のホーンスイッチ9のステアリングホイールへの取付け構造は図3に、又、ホーンスイッチ9の構造は図7に夫々示している。先ず、ホーンスイッチ9の構造について図7によって説明すると、ホーンスイッチ9の可動接点9aは板バネ8の先端部に形成され、該板バネの後部は、合成樹脂等の電気絶縁材で形成された保持部材10に片持ち保持され、又、前記板バネ8の後端部には電気配線12が接続された構成となっている。これをホーンスイッチユニット9となし、ホーンスイッチを複数個設置する場合には、前記ホーンスイッチユニット9の板バネ8の後端部を、電気配線12によって直列に結線して該配線の端部にコネクタ18を設けている。尚、ホーンスイッチユニット9の可動接点9aに対応する固定接点については後述する。
【0031】
このホーンスイッチユニット9のステアリングホイールへの取付けは、前記保持部材10をエアバッグ装置のリテーナ3に装着する事によって行われる。具体的には、該保持部材10の両側部にスリット状装着溝10aが形成されており、一方、リテーナ3側には、このスリット状装着溝10aに嵌合するガイド部10bが前記リテーナ3のホーンスイッチ支持板3bに形成されており、前記スリット状装着溝10a内に前記ガイド部10bを嵌合する事によってリテーナへのホーンスイッチの装着が行われる。この装着された状態を図3に示している。同図に示している通り、ホーンスイッチ9の保持部材10は、リテーナ3からステアリングホイールのスポーク部11に向かって突出して配置されている金属製のホーンスイッチ支持板3bに装着されて保持されており、又、該保持部材10の上面は前記意匠部材Cの下面に突出して形成された突起部19によって抑えられ、一方、下面はステアリングホイールBのスポーク部11に当接している。これによりホーンスイッチ9は、リテーナ3に絶縁材で形成した保持部材10が装着され、該保持部材10の上下面は、意匠部材CとステアリングホイールBのスポーク部11とで挟持された状態となっており、ホーンスイッチ9のステアリングホイールへの保持を強固なものにしている。
【0032】
尚、前記リテーナ3のホーンスイッチ支持板3bの前記ホーンスイッチ9の板バネ8の先端に形成されている可動接点9aに対応する部分には、固定接点9bが配置されており、該固定接点9bはリテーナ3と電気的に接続されて車体を通してアース(接地)された状態となっている。従って、前記板バネ8の後端部に接続されている配線12のコネクタ18を、ホーンスイッチ電源(図示せず)の陽極側に接続しておけばホーンスイッチ回路が形成され、陰極側配線を不要となす事が可能となる。
【0033】
又、前記板バネ8の先端部8aは、前記バッグカバー4に形成されている板バネ係合部4gに当接して或いは係止されており、これにより、該板バネ8のバネ力によってバッグカバー4は上方(前方)に向けて常時付勢されている。一方、該バッグカバー4は、前述の通り、リテーナ3に前後に揺動可能に遊嵌されているので、バッグカバー4の表側部材4aに表側から押圧力を作用させれば、表側部材4aは、該押圧力によって前記板バネ8の付勢力に抗して後退(下降)し、該板バネ8の先端部の可動接点9aは前記リテーナ3側の固定接点9bと接触してホーンスイッチ回路が閉成され、ホーンが吹鳴する事になる。
【0034】
以上、図面に従って本発明を詳述したが、本発明はこの図示した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した思想の範囲内において、種々の変形例が存在する事はいうまでもない。例えば、図示の例は、3本スポークのステアリングホイールに本発明を適用した場合の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、4本スポークその他の形状,構造のステアリングホイールに適用できる事はいうまでもない。
【0035】
又、前記意匠部材Cの破断構造は、ホーンスイッチ9の取付け位置に関係なく採用し得る構造であるので、前述の図8,9に示した如くエアバッグ装置A自体をステアリングホイールBに対して揺動自在となした構造のものにも適用し得る事は言うまでもない。
【0036】
更に、ホーンスイッチ9の取付け位置も、上述の実施例では、リテーナ3にホーンスイッチ9を保持させた構造のものを示しているが、該ホーンスイッチ9をステアリングホイールのスポーク部11に保持させ、このホーンスイッチ9に装着されている前記板バネ8によってバッグカバー4を上方(前方)に付勢する様になす事も可能である。尚、本実施例の如くエアバッグ装置にホーンスイッチを装着しておく方がステアリングホイールの組立工程が簡素化される点で有利である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によると、先ず、エアバッグ装置Aの周囲に意匠部材Cを配置しているにも拘らず、エアバッグの展開時には該意匠部材も開裂してエアバッグの膨出を阻害しない構造となっているので、従来のエアバッグ装置のみが装着されたステアリングホイールに比して、ステアリングホイールの意匠性が向上すると共に、ステアリングホイールのデザインの自由度も増し、顧客の多様な嗜好にも対応可能なエアバッグ装置付きステアリングホイールの提供が可能となる。特に、スポーツ車に対しても相応しいデザインのステアリングホイールの装着が可能となるので、全体のデザインバランスの取れたスプーツ車の提供が可能となる。
【0038】
又、エアバッグ装置のバッグカバー4に表側に露出する表面部材4aに連接して前記意匠部材Cの裏面に回り込む段部4bを形成し、該段部の裏面側角部4eをヒンジにしてバッグカバー4が展開する様にしているので、その展開力によって前記意匠部材Cには裏面から突き上げられる力が作用し、これによって該意匠部材の展開を行う様にしており、しかも、該意匠部材の破断溝6は、前記バッグカバー段部の破断溝よりも外側に位置させているので、該意匠部材の開裂と展開は確実に行われる事になり、エアバッグの展開も従来の意匠部材を用いない場合と同様に円滑に行われる事になる。
【0039】
又、前記エアバッグ装置のバッグカバー4をリテーナ3に遊嵌させて前後に揺動可能に保持させると共に、板バネ8によって前方方向に常時付勢する構造となし、この板バネ8を利用してホーンスイッチ9を形成する構造としているので、ホーンスイッチの作動に当たっては軽量なバッグカバー4のみを後方(下方)に弱い力で押圧すれば良く、従来のエアバッグ装置全体を揺動可能とするタイプのホーンスイッチ構造に比して、ホーンスの作動ミスが大幅に少なくなり、運転時の安全性も向上する。
【0040】
更に、使用する板バネ8も弱いバネ力の安価な板バネの使用が可能となるのみならず、部品点数も、板バネ8とその保持部材10と配線12のみとなり、従来のコイルバネを用いるホーンスイッチ構造に比して全体として簡素で且つ安価なホーンスイッチ構造となり、ステアリングホイールの生産コストの低減効果が期待される。
【0041】
又、前記板バネ8の先端部に可動接点9aを形成し、リテーナ側に固定接点9bを形成すると共に、該固定接点9bは、車体を通してアース(接地)されている前記リテーナに対して電気的に接続状態となす事により、ホーンスイッチの配線12は、陽極側のみの配線でよく、ホーンスイッチの構造の一層の簡略化が可能となる。
【0042】
又、ホーンスイッチの構造を、板バネ8の後部を電気絶縁体で形成した保持部10に保持させ、該保持部の両側部にスリット状の装着溝10aが形成し、該装着溝をリテーナ3のホーンスイッチ支持板3bに形成したガイド部10bに嵌合させて該リテーナ3にホーンスイッチ部材を保持させる構造にすれば、ホーンスイッチのリテーナへの取付けも極めて容易となり、ステアリングホイールの組立工程が簡素化される効果がある。
【0043】
更に、ホーンスイッチをステアリングホイールのスポーク部11の位置に対応させて配置し、ホーンスイッチ9の前記保持部10の上面は、前記意匠部材Cの下面に突出して形成された突起部19に当接させ、一方、前記保持部10の下面は、前記ステアリングホイールのスポーク部11に当接させる様に配置すると、ホーンスイッチの前記保持部10は、前記意匠部材Cの裏面と前記スポーク部11の上面とで挟持される事になるので、ホーンスイッチのステアリングホイールへの保持が一層強固なものとなり、車両の走行時の振動等によるホーンスイッチ取付け部の緩みもなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るエアバッグ装置付きステアリングホイールの一部切り欠き平面図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 図1のB−B断面図である。
【図4】 図1のC−C断面図である。
【図5】 図1のD−D断面図である。
【図6】 本発明に係るエアバッグ装置の展開過程を示す概念図である。
【図7】 本発明で使用するホーンスイッチユニットの斜視図である。
【図8】 従来のエアバッグ装置付ステアリングホイールの例を示す平面図である。
【図9】 図8のE−E断面図である。
【符号の説明】
A エアバッグ装置
B ステアリングホイール
C 意匠部材
1 エアバッグ
2 ガス発生器
3 リテーナ
3a リテーナのバッグカバー係止片
3b リテーナのホーンスイッチ支持板
3c リテーナの意匠部材取付脚部
4 バッグカバー
4a バッグカバーの表面部材
4b バッグカバーの段部
4c バッグカバーの周壁部
4d バッグカバーの係止穴
4e バッグカバーの屈曲部(ヒンジ部)
4g バッグカバーの板バネとの係止部
5 バッグカバーの破断溝
5a バッグカバーの水平方向破断溝
5b バッグカバーの上下方向破断溝
5c バッグカバーの段部破断溝
6 意匠部材の一対の破断溝
6a 意匠部材の中央破断溝
7a 意匠部材の表面意匠部材
7b 意匠部材の脚部
8 弾性部材
9 ホーンスイッチ
9a ホーンスイッチの可動接点
9b ホーンスイッチの固定接点
10 ホーンスイッチの保持部
11 ステアリングホイールのスポーク部

Claims (13)

  1. 折り畳まれたエアバッグ(1)とガス発生器(2)とを保持して内部に収納するリテーナ(3)と該リテーナの表面側に配置され且つエアバッグ展開時に開裂する破断溝(5)を有するバッグカバー(4)とを備えたエアバッグ装置(A)が、ステアリングホイール(B)の中央部に配置され、且つ、前記エアバッグ装置(A)の前面側の前記バッグカバー(4)とステアリングホイール(B)との間に該バッグカバー(4)の表面外周部を囲繞する様に意匠部材(C)が配置されてなるエアバッグ装置付きステアリングホイールにおいて、
    エアバッグ展開時には、前記バッグカバー(4)に形成された破断溝(5)の開裂と共に、該バッグカバー(4)の開裂力によって前記意匠部材(C)も開裂してエアバッグ(1)を展開させる様にしてなり、
    前記バッグカバー(4)は、ステアリングホイール(B)の表面に露出する表面部材(4a)と、該表面部材(4a)の少なくとも上側部位又は全周に亘って形成され且つ前記意匠部材(C)の裏面側に回り込む様に前記表面部材(4a)に連接して形成された段部(4b)と、該段部(4b)に連接して形成された周壁部(4c)とからなり、
    前記表側部材(4a)の裏面には、前記ステアリングホイール(B)の正位置において略中央部に水平方向に延在する水平方向破断溝(5a)と、その両端部の上下方向に延在する上下方向破断溝(5b)とが形成され、
    前記表面部材(4a)の上側部位に位置する前記段部(4b)には、該表面部材(4a)の前記上下方向破断溝(5b)の各上端部に連続して段部に達する段部破断溝(5c)が形成されており、
    前記意匠部材(C)の前記バッグカバー(4)の前記段部(4b)の上側部分に隣接する部位には、前記段部破断溝(5c)の位置よりも外側位置に、エアバッグ展開時に開裂する一対の破断溝(6)が形成されており、
    これにより、エアバッグ展開時には、前記バッグカバー(4)と共に前記意匠部材(C)の上部をも開裂させてエアバッグを膨出させる様にしてなることを特徴とするエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  2. 前記意匠部材(C)は、前記バッグカバー(4)の表面部材(4a)の外周部を囲繞する表面意匠部(7a)と該表面意匠部(7a)に連続して下方に延在する脚部(7b)とを有し、該意匠部材(C)の前記一対の破断溝(6)の中間部位の裏面には、前記表面意匠部(7a)から前記脚部(7b)に至る中央破断溝(6a)が形成されている請求項1に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  3. 前記意匠部材(C)は、前記バッグカバー(4)の表面部材(4a)の外周部を囲繞する表面意匠部(7a)と該表面意匠部(7a)に連続して下方に延在する脚部(7b)とを有し、該脚部(7b)の適所が前記リテーナ(3)に固着されており、これによって、前記意匠部材(C)は、予めエアバッグ装置(A)と一体的に組み立てられている請求項1又は2に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  4. 前記リテーナ(3)は、前記ステアリングホイール(A)に固着されてなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  5. 前記バッグカバー(4)は、前記リテーナ(3)に前後方向に揺動可能に係止され、且つ該バッグカバー(4)の裏面側に配置された弾性部材(8)によって前面側に付勢されており、該バッグカバー(4)の裏面側とステアリングホイール(B)又は前記リテーナ(3)との間の適所にホーンスイッチ(9)が配置されており、これにより、前記バッグカバー(4)を押圧する事によってホーンスイッチ回路を閉成する様にしてなる請求項4に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  6. 前記バッグカバー(4)は、前記周壁部(4c)の周方向に複数個形成された係止穴(4d)内に、前記リテーナ(3)からその外方に突出して形成された係止片(3a)を遊嵌する事により、該バッグカバー(4)を前後方向に揺動可能に係止してなる請求項5に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  7. 前記リテーナ(3)の外周部外側にホーンスイッチ支持板(3b)が突出して形成され、該ホーンスイッチ支持板(3b)にホーンスイッチ(9)を保持させてなる請求項5又は6に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  8. 前記ホーンスイッチ(9)は、板バネ(8)の一端が電気絶縁体で形成された保持部材(10)を介して前記ホーンスイッチ支持板(3b)に保持され、該板バネ(8)の先端部に可動接点(9a)が形成され、前記ホーンスイッチ支持板(3b)の該可動接点(9a)対応部に固定接点(9b)が形成されており、前記板バネ(8)によって前記バッグカバー(4)を前面側に付勢している請求項7に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  9. 前記固定接点(9b)は、前記ホーンスイッチ支持板(3b)及び前記リテーナ(3)を介して車体側と電気的に接続されてアースされており、前記可動接点(9a)はホーン電源の陽極に接続されている請求項8に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  10. 前記保持部材(10)の両側部にスリット状装着溝(10a)が形成され、前記リテーナのホーンスイッチ支持板(3b)には前記保持部材(10)の前記スリット状装着溝(10a)に嵌合するガイド部(10b)が形成されており、前記保持部材(10)の前記スリット状装着溝(10a)を該ガイド部(10b)に嵌合する事により、前記ホーンスイッチ(9)を前記リテーナ(3)に装着する様にしてなる請求項7乃至9のいずれか1項に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  11. 前記リテーナのホーンスイッチ支持板(3b)は、前記ステアリングホイール(B)のスポーク部(11)の位置に対応させて複数個配置され、前記ホーンスイッチ(9)は、該スポーク部(11)近傍位置に配置されている請求項7乃至10のいずれか1項に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  12. 前記ホーンスイッチ(9)の保持部材(10)の上面は、前記意匠部材(C)の下面に突出して形成された突起部(19)に当接し、該保持部材(10)の下面は、前記ステアリングホイールのスポーク部(11)に当接して配置されており、これにより、前記保持部材(10)を、前記意匠部材(C)と前記スポーク部(11)とで挟持する様にしてなる請求項11に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
  13. 前記ホーンスイッチ(9)は複数個設置されており、各ホーンスイッチの板バネ(8)が配線(12)によって電気的に接続されている請求項11又は12に記載のエアバッグ装置付きステアリングホイール。
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