JP3967209B2 - 自動車用ディスクホイール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイールディスクとホイールリムとからなる自動車用ディスクホイールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ディスクホイールとして、ホイールリムの内周面に、ホイールディスクの外周縁に形成されたディスクフランジ部を嵌合して溶接されてなる、いわゆる2ピースタイプのものが種々提案されている。ここで、ディスクフランジ部は、ホイールリムのドロップ部又はビードシート部のいずれかの内周面に嵌合されるようにしているものが一般的である。中でも、例えば特開平11−59101号公報に開示されているような、ディスクフランジ部を意匠面側(外側)のビードシート部に嵌合する自動車用ディスクホイールにあっては、ホイールディスクにより形成される意匠面を、広く確保できるという利点がある。ここで、ホイールディスクとホイールリムとは、ディスクフランジ部の先端領域で隅肉溶接を行うことによって一体化されていることが一般的である。
【0003】
自動車用ディスクホイールは、自動車を構成する各種部品にあって、最も重要な保安部品の一つであることから、様々な規格が存在し、該規格を満足する要求性能が求められている。このような要求性能として、自動車に装着された場合における耐久性能を確認する回転曲げ耐久試験(試験方法JIS D 4103)及び半径方向負荷耐久試験(試験方法JIS D 4103)があり、これら耐久試験を所定レベル以上で満足することが必要とされる。ここで、回転曲げ耐久試験は、一定速度で回転するホイールのハブ取付面に曲げモーメントを与える試験であり、この耐久性能を向上させるためには、ディスクホイールの厚肉化が効果的である。また、半径方向負荷耐久試験は、一定回転するタイヤを装着したホイールに半径方向負荷を加えながら回転させる試験であり、この耐久性能を向上させるためには、ディスクホイールの弾性限界までのたわみ量を大きくすることが効果的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の自動車用ディスクホイールにあっては、ホイールディスクとホイールリムとが嵌合している部位と、ホイールディスクのハブ取付面との、軸方向位置が比較的近い構成やほぼ同位置の構成としたものが存在する。例えば、意匠性を向上させるため、ビードシート部で嵌合し、かつ、オフセット(ホイールリムの1/2幅位置からハブ取付面までの偏差)を意匠面方向に大きくした構成としている。ところが、このような構成にあって、回転曲げ耐久試験による耐久性能を向上させるため、ホイールディスクの板厚を厚肉化すると、半径方向負荷耐久試験による耐久性が低下することとなっていた。これは、厚肉化によってホイールディスクが高剛性化することにより、半径方向負荷耐久試験にあって、ホイールディスクにたわみ変形が生じ難くなるから、ホイールディスクとホイールリムとの嵌合する溶接部に負荷応力が集中し、該溶接部で亀裂や破損等が生じ易くなるためである。すなわち、回転曲げ耐久試験と半径方向負荷試験の両者の耐久性能をそろって向上させることは困難であった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決し、回転曲げ耐久試験と半径方向負荷耐久試験の両者の耐久性能をそろって向上させ得る、自動車用ホイールを提案することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した自動車用ディスクホイールにあって、プレス成形することにより形成されたスチール製ホイールディスクの、その外周縁に形成されたディスクフランジ部を、ホイールリムの内周面に嵌合してなる自動車用ディスクホイールにおいて、前記ディスクフランジ部の、ホイールリムとの、嵌合面の直外側に位置する嵌合境界領域に、円周方向に沿って形成された凹溝からなる周回溝部を備えていることを特徴とするものである(請求項1)。ここで、周回溝部は、円周方向に周回する凹溝となっており、該周回溝部の断面形状としては、コ字状、U字状、V字状、半円状等のように様々な形状とすることが可能である。
【0007】
かかる構成にあっては、ディスクフランジ部の嵌合境界領域に周回溝部を備えたことにより、該周回溝部の形成された部位の剛性が、ディスクフランジ部のその他部位に比して低くなる。これにより、厚肉化されて高剛性となったホイールディスクからなる自動車用ディスクホイールを半径方向負荷耐久試験した場合に、ホイールディスクにかかる負荷を、周回溝部の形成された部位のたわみ変形によって、負担することが可能となる。このため、従来、ホイールリムとホイールディスクとの溶接部に集中していた応力を、該周回溝部の形成された部位にも適切に分散させることができるから、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることが可能となる。而して、回転曲げ耐久試験による耐久性能を向上させるために厚肉化されたホイールディスクにあっても、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることができるから、回転曲げ耐久試験と半径方向負荷耐久試験の両者を高いレベルで充足できる耐久性能を発揮させることが可能となる。また、これにより、製品設計の自由度が拡大するという利点も生じ、意匠性の向上にも大いに役立つ。
【0008】
上述のような構成を、ホイールディスクのディスクフランジ部をホイールリムに形成されたビードシート部の内周面に嵌合してなる自動車用ディスクホイールに適用すること(請求項2)が提案される。ここで、ビードシート部は、ホイールリムの外周面の内外両側に夫々形成され、外側のビードシート部にディスクフランジ部が嵌合されるようにする構成が、上述したように自動車用ディスクホイールとして好適に用い得る。このように、ディスクフランジ部をビードシート部の内周面に嵌合してなる自動車用ディスクホイールにあっては、オフセットが大きく、嵌合位置とディスクフランジ部のハブ取付面との軸方向位置がほぼ同じ位置となる構成が多い。そのため、上述したように従来、半径方向負荷耐久試験において、ディスクフランジ部がたわみ変形し難く、耐久性に限界が生じていた。ここで、上述のようにディスクフランジ部の嵌合境界領域に周回溝部を備えるようにしたことにより、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることができる。而して、回転曲げ耐久試験による耐久性能向上のため、比較的板厚を厚肉化した場合にあっても、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることが可能である。
【0009】
このようなディスクフランジ部の周回溝部が、該周回溝部の厚みに比して、0.4倍〜1.0倍の溝深さにより形成されるようにした構成(請求項3)が提案される。ここで、周回溝部の厚みとは、該周回溝部の最深部(溝深部)における肉厚を示し、該周回溝部の最小肉厚である。また、周回溝部の溝深さは、該周回溝部の最深部における深さを示す。例えば、図3のように、周回溝部の厚みD及び溝深さCが示される。かかる構成により、半径方向負荷耐久試験にあって、周回溝部の形成された部位に適切なたわみ変形を生じさせることができるから、従来、溶接部に集中していた応力を、該周回溝部の形成された部位にも適切に分散させることができ、該耐久試験における耐久性能を一層向上させることが可能となる。ここで、周回溝部の溝深さを、周回溝部の板厚に対して、0.4倍より小さくした場合には、半径方向負荷耐久試験における負荷応力を充分に分散させることができず、耐久性能がほとんど向上しない。また、1.0倍より大きい場合には、この嵌合境界領域に応力が集中し、耐久性能を向上させることが難しい。そして、さらに好適に耐久性能を向上させる範囲として、0.6倍〜0.8倍とすることが望ましい。
【0010】
このようなディスクフランジ部の周回溝部が、 ディスクフランジ部の外周面に形成されるようにした構成(請求項4)が提案される。かかる構成により、周回溝部の形成された部位がホイールリムと接触しない状態となるから、たわみ変形を生じさせ易くなり、半径方向負荷耐久試験における負荷応力を適切に分散できるため、安定的に応力集中を緩和することが可能となる。
【0011】
ここで、ディスクフランジ部の周回溝部が、該ディスクフランジ部の嵌合幅に比して、0.2倍〜1.0倍の溝幅に形成されるものとした構成(請求項5)が提案される。ここで、周回溝部の溝幅とは、ディスクフランジ部の外表面における軸方向幅を示す。かかる構成により、ディスクフランジ部の嵌合面積が充分に確保されることとなるから、ホイールディスクとホイールリムとの嵌合状態を安定して維持することができる。これにより、自動車の走行安定性が充分に確保されることとなる。また、このように周回溝部の溝幅を設定することにより、この周回溝部の形成された部位に、半径方向負荷耐久試験における負荷応力を適切に分散させることができるから、該耐久試験による耐久性能を適切に向上させることが可能である。ここで、0.2倍より小さい場合には、この周回溝部に大きな応力が集中することとなり、耐久性能を向上させることが難しい。また、1.0倍より大きくなると、嵌合面積が小さくなるから、ホイールディスクとホイールリムとの嵌合状態が不安定なものとなり、自動車の走行安定性の低下が懸念される。また、この周回溝部に応力集中することにもなり、性能向上が困難となる。そして、さらに好適に耐久性能を向上させ、安定的な嵌合状態とし得る範囲として、0.5倍〜0.7倍とすることが望ましい。
【0012】
また、ディスクフランジ部の周回溝部が、溝深部を曲面形状としたものである構成(請求項6)が提案される。かかる構成により、半径方向負荷耐久試験にあって、溝深部に応力が集中することを防ぎ得るから、たわみ変形によって周回溝部が疲労破壊の起点となることを適切に防ぐことができる。而して、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を一層向上させることが可能となる。
【0013】
このようなディスクフランジ部の周回溝部が、外側開口端縁でホイールリムと非接触状態となるように形成されるようにした構成(請求項7)も提案される。かかる構成により、周回溝部の外側部分がホイールリムに拘束されることがないから、半径方向負荷耐久試験からの負荷応力によって、該周回溝部の形成された部位が内外両方向に対してたわみ変形することが可能となるため、該負荷応力を充分に負担することができ、応力を適切に分散させ易くすることができる。また、自動車に取り付けられた場合にあって、たわみ変形する周回溝部の嵌合境界領域が、ホイールリムと相互に擦り合うことを防ぎ得るから、この部分の塗装が剥がれることもなく、腐食や錆等の発生を防止できる。さらに、雨水や泥水等が周回溝部に貯留することなく排水され得るから、嵌合境界領域に腐食や錆等が発生することを防止できるという効果もある。さらにまた、自動車用ディスクホイールの意匠性が向上するという利点もある。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態例を添付図面に従って説明する。
図1はスチール製の自動車用ディスクホイール1の縦断面図であり、図2は意匠面側(外側)からの平面図である。この自動車用ディスクホイール1は、ホイールリム2と、ハブ孔3をその中央に具備するホイールディスク4とからなる、いわゆる2ピースタイプである。かかる自動車用ディスクホイール1は、ホイールリム2の外ビードシート部14の内周面に、ホイールディスク4のディスクフランジ部11を嵌め合わせた後、隅肉溶接によって、ディスクフランジ部11の先端領域をホイールリム2に接合する溶接部17が形成されて一体化されてなる。なお、隅肉溶接には、アーク溶接、レーザー溶接等の公知技術を用いることができる。
【0015】
ここで、ホイールディスク4は、中心にハブ孔3を有し、その半径方向外側に位置し周方向に互いに均等間隔で六個のボルト孔6が形成されている。さらに、ボルト孔6の半径方向外側から、外方向に向かって隆起する形状となる隆起部8が形成され、該隆起部8の半径方向内側の裏面には、車軸のハブと連結するハブ取付面10が形成されている。そして、この隆起部8には周方向に六個の飾り孔9が備えられている。この隆起部8及び飾り孔9は、意匠性の向上、剛性の向上、軽量化、放熱性の向上等の役割を果たしている。なお、この隆起部8及び飾り孔9は、ホイールの種類により配設されないものもあり得る。さらに、この飾り孔9の外側には、ホイールディスク4の軸方向と略平行となるディスクフランジ部11が形成されている。
【0016】
一方、ホイールリム2は、両側の開口縁にタイヤのサイドウォール部を支持するリムフランジ12、13が形成されており、自動車に取り付けた際に外側となるリムフランジ12の内側に、タイヤのビードを着座させる外ビードシート部14が連成され、内側のリムフランジ13の外側には内ビードシート部15が連成されている。さらに、外ビードシート部14と内ビードシート部15の間には、タイヤ装着時にタイヤのビードを落とすためのドロップ部16が設けられている。
【0017】
次に本発明の要部につき説明する。
図3は、ホイールディスク4のディスクフランジ部11と、ホイールリム2の外ビードシート部14との嵌合状態を示している。ここで、ディスクフランジ部11の嵌合面20の直外側に位置する嵌合境界領域21の外周面に、円周方向に沿って周回する周回溝部22が形成されている。この周回溝部22は、その溝深部が曲面形状となると共に、その外側開口端縁がホイールリム2と非接触状態となっている。すなわち、嵌合面20より外側では、ホイールディスク4とホイールリム2とは接触しないこととなる。
【0018】
ここで、図4に示すディスクフランジ部11にあって、該ディスクフランジ部11の外側表面における周回溝部22の軸方向溝幅Bは、嵌合面20の軸方向嵌合幅Aに比して、0.2倍〜1.0倍の範囲とし、さらに好適には0.5倍〜0.7倍が用い得る。また、周回溝部22の溝深さCは、該周回溝部22の最深部におけるホイール軸方向に対する垂線が、半径方向外側に向かって、該周回溝部22の溝幅22の両端を結んだ線と交わるまでの距離であり、該周回溝部22の溝深部の厚みDに比して、0.4倍〜1.0倍の範囲とし、さらに好適には0.6倍〜0.8倍とすることが良い。さらには、この周回溝部22の溝深部の形状を曲面形状とする。これによって、半径方向負荷耐久試験によりかかる応力によって、この周回溝部22から亀裂発生することを防止できる。この曲面形状としては、ディスクフランジ部11の板厚や長さ、又は自動車用ディスクホイール1の形状によって様々に設定することができる。本実施形態例としては、溝深部の曲面形状Eを曲率半径R0.8mm〜R3.0mmの範囲となるように設定することが好適に用いられる。
以下、さらに具体的な実施例により本発明を説明すると共に、従来構成と同様の周回溝部22を形成していない比較例と比較する。
【0019】
(実施例)
本実施例の自動車用ディスクホイール1にあっては、「17×6JJ」サイズのホイール形状に適用した場合である。ここで、「17×6JJ」サイズの「17」はリム径が17インチであることを示し、「6」はリム幅が6インチであることを示している。また、「JJ」はリムフランジの形状を示している。この「JJ」は一般的な自動車に用いらている形状である。尚、一般的に自動車用ディスクホイール1の形状を示す単位にはインチが用いられるため、ここではインチ単位で説明した。
【0020】
このような本実施例の自動車用ディスクホイール1にあって、ホイールディスク4の板厚はハブ取付面10から隆起部8までが約6.5mm、ディスクフランジ部11が約6mmであり、ホイールリム2の板厚は約3.5mmとなっている。そして、図3及び図4のように、周回溝部22を備えたディスクフランジ部11と外ビードシート部14との嵌合状態が構成されている。ここで、嵌合面20の嵌合幅Aは、約8mmとなっており、周回溝部22の溝幅Bは約5.5mmとなっている。この周回溝部22は、その最深部Eが曲率半径R1.5mmの曲面形状に形成され、該最深部の溝深さCが約2.4mmとしている。そして、この最深部の厚みDが約3.6mmとしている。また、この周回溝部22は、最深部から外側に約40°に傾斜し、内側に約15°に傾斜する傾斜面が形成されている。尚、ディスクフランジ部11の先端には、隅肉溶接によりホイールリム2と接合する溶接部17が形成されている。
【0021】
(比較例)
一方、比較例の自動車用ディスクホイール1’は、上記の実施例と同様に「17×6JJ」サイズのホイール形状であり、実施例の周回溝部22を備えていないホイールディスク4’により構成されている。この比較例にあっては、図5のように、ディスクフランジ部11’が外ビードシート部14に嵌合している。ここで、嵌合面20’の嵌合幅Aは、約12mmとなっている。そして、嵌合境界領域21’の板厚Fは約6mmとなっている。また、上記実施例と同様に、ディスクフランジ部11’の先端には、隅肉溶接によりホイールリム2と接合する溶接部17が形成されている。尚、この比較例は周回溝部22以外は上記実施例と同じ構成であるため、各構成部位を示す記号は同じものを使用し、説明は省略する。
【0022】
上述した実施例の自動車用ディスクホイール1と比較例の自動車用ディスクホイール1’とを半径方向負荷耐久試験によって耐久性能を比較した。ここで、半径方向負荷耐久試験は、JIS D 4103に従って行う。実施例と比較例の両者には、同じタイプのタイヤを装着し、半径方向に負荷する荷重を15600Nに設定し、ホイールに亀裂や破損等に異常が発生するまで回転させ、該異常の生じた回転数により耐久性能とする。
【0023】
実施例の自動車用ディスクホイール1を半径方向負荷耐久試験した結果、約150万回転により溶接部に亀裂が発生した。一方比較例の自動車用ディスクホイール1’を同様に半径方向負荷耐久試験した結果、約50万回転により溶接部が破損した。
【0024】
また、これら実施例の自動車用ディスクホイール1と比較例の自動車用ディスクホイール1’とを、回転曲げ耐久試験(JIS D 4103)した結果、両者の耐久性能はほぼ同等であった。この詳細は省略する。
【0025】
このように、周回溝部22を備えた実施例の自動車用ディスクホイール1は、半径方向負荷耐久試験にあって、比較例の自動車用ディスクホイール1’に比して、約3倍の耐久性能を発揮した。従って、本発明の周回溝部22を備えることにより、回転曲げ耐久試験の耐久性能と半径方向負荷耐久試験の耐久性能を高いレベルで維持することが可能となる。これにより、回転曲げ耐久試験による耐久性能を向上させるためにホイールディスク4の板厚を厚肉化した場合にあっても、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることが可能である。而して、ホイール設計の自由度が一層拡大できることとなり、意匠性の向上や、軽量化等の優れた性能を有する自動車用ディスクホイールの製造に大きく役立つ。
【0026】
一方、上述した周回溝部22は、一般的なプレス成形によってホイールディスク4の形状を形成した後、所定の切削バイト等によって、切削加工して形成することができる。また、ディスクフランジ部11をプレス加工する工程で、同時に押圧成形等によって形成することも可能である。このように周回溝部22は、従来のホイールディスク成形工程を大きく変更することなく、形成することが可能である。
【0027】
上述の実施形態例にあっては、ディスクフランジ部11をビードシート部の内周面に嵌合するホイール形状に適用した場合であるが、その他、ディスクフランジ部11をドロップ部の内周面に嵌合するホイールに適用することも可能である。また、ディスクフランジ部11の溶接部17とハブ取付面10との軸方向位置が比較的離れているようなホイールであっても適用可能であるが、溶接部17とハブ取付面10との軸方向位置がほぼ同じ位置であるホイールの方が、本発明の周回溝22によって耐久性能の向上する効果が大きい。
【0028】
また、上述の実施形態例にあって、周回溝部22は、溝深部を曲面形状とし、内外に傾斜面を設けた構成であるが、その他の構成として、周回溝部22の縦断面形状を、コ字形状とする構成や、半円形状とする構成等のように種々の形状とすることも可能である。さらには、このような周回溝部22をディスクフランジ11の内周面に設ける構成や、内外両面に設ける構成とすることも可能である。
【0029】
本発明は、ディスクフランジ11をホイールリム2の内周面に嵌合する構成からなる3ピースタイプの自動車用ディスクホイールにも適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、上述したように、ホイールディスクのディスクフランジ部の、ホイールリムとの、嵌合面の直外側に位置する嵌合境界領域に、円周方向に沿って周回溝部を備えるようにしたもの(請求項1)であるから、高剛性のホイールディスクからなる自動車用ディスクホイールを、半径方向負荷耐久試験した場合にあって、従来、ホイールリムとホイールディスクとの溶接部に集中していた応力を、該周回溝部の形成された部位にも適切に分散させることができ、該半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることが可能となる。而して、回転曲げ耐久試験と半径方向負荷耐久試験の両者を高いレベルで充足できる耐久性能を発揮させることが可能となる。また、これにより、製品設計の自由度が拡大するという利点も生じ、意匠性の向上にも大いに役立つ。
【0031】
このような構成を、ホイールディスクのディスクフランジ部をホイールリムに形成されたビードシート部の内周面に嵌合してなる自動車用ディスクホイールに適用したもの(請求項2)にあっては、回転曲げ耐久試験による耐久性能向上のため、比較的板厚を厚肉化した場合にあっても、半径方向負荷耐久試験による耐久性能を向上させることが可能である。
【0032】
上述の周回溝部が、該周回溝部の板厚に比して、0.4倍〜1.0倍の溝深さにより形成されるようにした構成(請求項3)にあっては、半径方向負荷耐久試験で、周回溝部の形成された部位に適切なたわみ変形を生じさせることができるから、従来、溶接部に集中していた応力を、該周回溝部の形成された部位にも適切に分散させることができ、該半径方向負荷耐久試験における耐久性能を一層向上させることが可能である。
【0033】
このような周回溝部が、 ディスクフランジ部の外周面に形成されるようにした構成(請求項4)にあっては、周回溝部の形成された部位がホイールリムと接触しない状態となって、たわみ変形を生じさせ易くなるため、半径方向負荷耐久試験における負荷応力を適切に分散でき、安定的に応力集中を緩和することが可能となる。
【0034】
また、このような周回溝部が、該ディスクフランジ部の嵌合幅に比して、0.2倍〜1.0倍の溝幅に形成されるものとした構成(請求項5)にあっては、ディスクフランジ部の嵌合面積を充分に確保できるため、ホイールディスクとホイールリムとの嵌合状態を安定して維持することができる。また、このような周回溝部により、この周回溝部の形成された部位に、半径方向負荷耐久試験における負荷応力を適切に分散させることができるから、該耐久試験による耐久性能を適切に向上させることが可能である。
【0035】
このような周回溝部が、溝深部を曲面形状としたものである構成(請求項6)にあっては、半径方向負荷耐久試験で、周回溝部が疲労破壊の起点となることを適切に防ぐことができ、耐久性能を一層向上させることが可能となる。
【0036】
このような周回溝部が、外側開口端縁でホイールリムと非接触状態となるように形成されるようにした構成(請求項7)にあっては、半径方向負荷耐久試験による負荷応力を充分に負担することが可能となり、応力を適切に分散させ易くすることができる。また、自動車に取り付けられた場合にあって、周回溝部の嵌合境界領域がホイールリムと相互に擦り合うことを防止できると共に、雨水や泥水等が該嵌合境界領域に貯留することを防ぐこともできるため、嵌合境界領域に腐食や錆等が発生することを防止できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用ディスクホイール1の縦断面図である。
【図2】本発明の自動車用ディスクホイール1の平面図である。
【図3】本発明にかかる実施例の自動車用ディスクホイール1の周回溝部22を表す拡大図である。
【図4】実施例のディスクフランジ部11を表す拡大説明図である。
【図5】従来技術にかかる比較例の自動車用ディスクホイール1’の嵌合状態を示す拡大図である。
【符号の説明】
1 自動車用ディスクホイール
2 ホイールリム
4 ホイールディスク
11 ディスクフランジ部
14 外ビードシート部
20 嵌合面
21 嵌合境界領域
22 周回溝部
A 嵌合幅
B 溝幅
C 溝深さ
D 周回溝部の厚み

Claims (7)

  1. プレス成形することにより形成されたスチール製ホイールディスクの、その外周縁に形成されたディスクフランジ部を、ホイールリムの内周面に嵌合してなる自動車用ディスクホイールにおいて、
    前記ディスクフランジ部の、ホイールリムとの、嵌合面の直外側に位置する嵌合境界領域に、円周方向に沿って形成された凹溝からなる周回溝部を備えていることを特徴とする自動車用ディスクホイール。
  2. ホイールディスクのディスクフランジ部を、ホイールリムに形成されたビードシート部の内周面に嵌合してなることを特徴とする請求項1記載の自動車用ディスクホイール。
  3. ディスクフランジ部の周回溝部が、該周回溝部の厚みに比して、0.4倍〜1.0倍の溝深さにより形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動車用ディスクホイール。
  4. ディスクフランジ部の周回溝部が、 ディスクフランジ部の外周面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用ディスクホイール。
  5. ディスクフランジ部の周回溝部が、該ディスクフランジ部の嵌合幅に比して、0.2倍〜1.0倍の溝幅に形成されているものであることを特徴とする請求項4記載の自動車用ディスクホイール。
  6. ディスクフランジ部の周回溝部が、溝深部を曲面形状としていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の自動車用ディスクホイール。
  7. ディスクフランジ部の周回溝部が、外側開口端縁でホイールリムと非接触状態となるように形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用ディスクホイール。
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