JP3966301B2 - 車両用レーダ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも車幅方向の所定角度範囲内に渡って複数の送信波を照射し、各送信波に対する反射波を受信した際に、その反射波の強度に応じた受信信号を発生させ、その受信信号に基づいて、反射物体を検出する車両用レーダ装置に関するものである。
従来より、例えば特許文献1に示されるように、光波、ミリ波などの送信波を車両前方に照射し、その反射波に基づいて、車両前方の反射物体を検出する車両用レーダ装置が提案されている。この種の装置は、例えば、先行車両等との間隔が短くなったことを検出して警報を発生する装置や、先行車両と所定の車間距離を維持するように車速を制御する装置などに適用され、それらの制御対象としての先行車両の検出に利用される。
この車両用レーダ装置では、レーザダイオードによって発光されたレーザ光の照射方向を回転駆動されるポリゴンミラーを用いて変化させ、車幅方向及び高さ方向それぞれの所定角度範囲に渡り複数本のレーザ光を照射する。そして、各レーザ光が反射物体によって反射された場合、その反射光を受光レンズを介して受光する。その受光された反射光は受光素子に導かれ、受光素子は、その受光強度に対応する電圧信号を出力する。そして、レーザ光が照射されてからこの電圧信号が基準電圧以上となるまでの時間間隔に基づいて、反射物体までの距離を検出するとともに、そのレーザ光の照射角度に基づいて車幅方向及び車高方向の位置も検出する。
特開2002−40139号公報
上記車両用レー装置は、先行車両を検知対象とし、自車両から先行車両までの距離や先行車両の速度の検出を行っている。このような車両用レー装置では、例えば、先行車両の後面に泥や雪等が付着している場合、先行車両によって反射される反射光の強度が低下してしまい、受光信号中、先行車両によって反射された反射光に対応する強度を持つ受光信号成分と種々の要因で発生するノイズ成分との区別が困難となる。その結果、レーダ装置の検知可能距離が低下するとの問題が生じる。
この問題を解決するものとして、本発明者らは、先に、レーザ光を走査するポリゴンミラーを回転させたときに、レーザ光が筐体の外に出射されなくなる回転角度が存在することを利用し、そのときに得られた受光信号には反射ノイズ成分しか含まれていないものとして、ノイズ成分を求めるという発明について出願している(特願2002−346282号参照)。
しかしながら、このような手法を採用する場合、光が筐体の外に出射されない角度範囲を光学機構の設計要件として織り込まなければならず、光学設計上の大きな制約になりうることが判った。
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、反射強度が低下した先行車両の検知可能距離の低下を抑制することが可能であり、かつ、光学設計上の制約を少なくすることが可能な車両用レーダ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1ないし3に記載の車両用レーダ装置では、受信手段に、反射波を受信した際にその反射波の強度に応じた受信信号成分を含む信号を出力する受信信号出力部(81、82)に加え、受信信号成分を含まず、ノイズ成分を含む信号を出力するノイズ成分出力部(83)と、反射物体検出手段に伝える受信信号として、受信信号出力部が出力する信号とノイズ成分出力部が出力する信号のいずれか一方を選択する選択部(84)とを備えている。そして、ノイズ成分算出部では、選択部にてノイズ成分出力部が出力する信号が受信信号として選択されているときの受信信号に基づいて、ノイズ成分の算出を行わせ、除去部では、選択部にて受信信号出力部が出力する信号が受信信号として選択されているときの受信信号からノイズ成分を除去させる。さらに、ノイズ成分算出部に、発信手段が発信する送信波のスキャニング角度に対応する反射光ノイズの相関を記憶させ、受信信号に受信信号成分が含まれていないと判定されたとき伝えられた受信信号とそのときのスキャニング角度とから、相関に基づいて、そのときのスキャニング角度とは異なるスキャニング角度を含め、スキャニング角度ごとの反射光ノイズを求めることを特徴としている。
このように、選択部にて受信信号出力部が出力する信号とノイズ成分出力部が出力する信号とが選択できるようにすることで、ノイズ成分出力部の出力する信号に基づいて、ノイズ成分算出部にてノイズ成分の算出を行うことが可能となる。そして、除去部では、選択部にて受信信号出力部が出力する信号が受信信号として選択されているときの受信信号からノイズ成分を除去させることが可能となる。
これにより、レーダ装置の検知可能距離が低下することを防ぐことが可能となる。そして、ノイズ成分の検出をノイズ成分出力部および選択部を用いて行っていることから、従来のように、光が筐体の外に出射されない角度範囲を光学機構の設計要件として織り込む必要がない。したがって、光学設計上の制約も少なくすることが可能となる。
また、受光信号成分が無いと判定されたときにのみ、反射光ノイズ成分の算出が行われるようにし、算出された反射光ノイズ成分と予め記憶された反射光ノイズの角度依存性とから、スキャニング角度ごとの反射光ノイズ成分を算出することができる。このため、スキャニング角度別に反射光ノイズ成分を学習する場合のように、学習処理の占める規模および学習結果を記憶するメモリを膨大させることなく、スキャニング角度ごとの反射光ノイズ成分を学習することが可能となる。
この場合、請求項2に示されるように、ノイズ成分出力部が受信信号出力部と同等のインピーダンスを有するダミー回路(83)で構成されるようにすれば、ノイズ成分の同一性を保つことができる。
なお、ノイズ成分算出手段および除去手段は、請求項3に示されるように、積算部により、選択部にて選択された受信信号の積算を行った後の信号、つまり受信信号の積算信号に基づいて、ノイズ成分の算出や受信信号からのノイズ成分の除去を行うことができる。
請求項に記載の発明では、反射物体検出手段に、反射波を受信した際にその反射波の強度に応じて出力される受信信号成分が受信信号に含まれているか否かを判定する判定部(103)と、判定部にて受信信号に受信信号成分が含まれていないと判定されたときには、ノイズ成分算出部に、そのときの受信信号が伝えられるようにするスイッチ部(160)とを備えることを特徴としている。
このように、受信信号成分が無いと判定されたときには、受信手段からの受信信号が反射光ノイズ成分のみによるものであるとして、そのときの受信信号がノイズ成分算出部に入力されるようにしている。このため、反射光ノイズ成分を算出することが可能となり、除去部にて受信信号から反射光ノイズ成分を減算することが可能となる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態における車両用レーダ装置が適用された車両用制御装置1のシステムブロック図である。以下、この図に基づいて、車両用レー装置を備えた制御装置1の詳細について説明する。
車両用制御装置1は、車両用レーダ装置の検出結果に基づいて、警報すべき領域に障害物が存在する場合に警報を出したり、先行車両との車間距離を、所定の車間距離に維持するため、車速を制御する機能を備えるものである。
図1に示されるように、車両制御装置1は、認識・車間制御ECU3を中心に構成されている。認識・車間制御ECU3は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータを主として、各種の駆動回路や検出回路を備えた構成となっている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
認識・車間制御ECU3は、車両用レーダ装置としてのレーザレーダセンサ5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々検出信号を受け取り、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力する。また、認識・車間制御ECU3には、警報音量を設定する警報音量設定器24、警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27、及び自動車に発生したヨーレートを検出するヨーレートセンサ28が接続されている。そして、認識・車間制御ECU3は、電源スイッチ29を備え、電源スイッチ29がオンされることにより、所定の処理を開始する。
レーザレーダセンサ5は、図2(a)に示されるブロック構成として表されるもので、発光部70a、受光部70b及びレーザレーダCPU70cなどを主要部として構成されている。
発光部70aは、パルス状のレーザ光を、発光レンズ71及びスキャナ72を介して放射する半導体レーザダイオード(以下、単にレーザダイオードという)75を備えている。そして、レーザダイオード75は、レーザダイオード駆動回路76を介してレーザレーダCPU70cに接続され、レーザレーダCPU70cからの駆動信号によりレーザ光を放射(発光)する。また、スキャナ72にはポリゴンミラー73が鉛直軸を中心に回転可能に設けられ、レーザレーダCPU70cからの駆動信号がモータ駆動部74を介して入力されると、このポリゴンミラー73は図示しないモータの駆動力により回転する。なお、このモータの回転位置は、モータ回転位置センサ78によって検出され、レーザレーダCPU70cに出力される。
ポリゴンミラー73は、略六角錐台形状を成し、その6つの側面がミラーを構成している。そして、各側面の底面に対する面倒れ角が異なっていることから、ポリゴンミラー73は、車幅方向及び車高方向それぞれの所定角度の範囲で不連続にレーザ光を走査するように、レーザ光を出力することができる。このようにレーザ光を2次元的に走査させるのであるが、その走査パターンを図3を参照して説明する。
図3は、レーザレーダセンサの照射領域を示す斜視図を示している。出射されたレーザビームは、測定エリア121内の右端から左端にかけて例えば等間隔で出射されるが、図3では、測定エリア121内の右端および左端のパターン122のみが示してあり、その途中は省略してある。また、出射レーザビームパターン122は、図3では一例として略楕円形のものを示しているが、この形に限られるものではなく長方形等でもよい。さらに、レーザ光を用いるものの他に、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであってもよい。また、スキャン方式にこだわる必要はなく、距離以外に2方位を測定できる方式であればよい。
図3に示すように、レーザ光は、その照射方向をZ軸としたとき、車幅方向となるX軸および高さ方向となるY軸によって構成されるZ軸に垂直なXY平面内を順次走査するように照射される。本実施形態では、X軸が走査方向、Y軸が基準方向となる。
レーザ光が2次元走査を行うスキャンエリアは、X軸方向に例えば0.08deg×451点=20deg、Y軸方向に例えば0.7deg×6ライン=4degとなっている。また、走査方向はX軸方向については図3において左から右へ、Y軸方向については図3において上から下へとなっている。具体的には、まずY軸方向の最上部に位置する第1走査ラインについてX軸方向において左から右へ0.08°おきにレーザ光が順次照射される。その後、Y軸方向の最上部から1列下の第2走査ラインにおいても同様にX軸方向に0.08°おきにレーザ光が順次照射される。このようにして第6走査ラインまで同様にレーザ光が照射され、第1走査ラインから第6走査ラインまで、走査ラインごとに、複数のレーザ光が照射される。
上述したスキャンエリアにレーザ光を照射した際、このレーザ光による反射光が受光された場合、レーザ光の照射角度を示すスキャン角度θx、θyと測距された距離Lとが得られる。なお、ここでいう2つのスキャン角度θx、θyは、それぞれ出射されたレーザ光をYZ平面に投影した線とZ軸との角度が縦スキャン角θy、出射されたレーザビームをXZ平面に投影した線とZ軸との角度が横スキャン角θxと定義されるものである。
レーザレーダセンサ5の受光部70bには、集光レンズ81と受光素子82とが設けられていると共に、ダミー回路83およびセレクタ84が備えられている。集光レンズ81は、図示しない物体に反射されたレーザ光を集光させるものである。受光素子82は、光を受け取ると、受け取った光の強度に対応する電圧(受光信号)を出力するようになっている。
ダミー回路83は、例えばRCで組まれ、受光素子82と同一インピーダンスで構成されている。セレクタ84は、受光部70bの後段に配置される増幅回路85が接続される接続元をセレクトするものであり、セレクタ84に備えられるセレクト1には受光素子82が接続され、セレクト2にはダミー回路83が接続された状態となっている。
これらの構成により、増幅回路85の接続元が受光素子82となる場合と、接続元がダミー回路83となる場合とが選択できるようになっている。すなわち、セレクタ84がセレクト1とされているときには受光信号が増幅回路85に出力され、セレクト2とされているときには受光信号が出力されず、ダミー回路83の出力、具体的にはダミー回路83が受ける電磁波ノイズ等のみが載った信号が増幅回路85に出力されるようになっている。
なお、セレクタ84には、レーザレーダCPU70からのLD駆動信号が入力されるようになっており、このLD駆動信号に基づき、セレクタ84は、距離検出を行うときにセレクト1が設定され、距離検出を行わないときにセレクト2が設定されるようになっている。
これら受光素子82の出力する受光信号やダミー回路83の出力信号は、増幅器85にて増幅された後に、個々の受光信号に基づいて反射物体を検出する第1検出回路86と、所定個数の受光信号を積算してその積算信号に基づいて反射物体を検出する第2検出回路90とにそれぞれ入力される。以下、第1検出回路86及び第2検出回路90の構成及び作動について説明する。
図2(b)は、第1検出回路86の回路構成の一例を示したものである。この図に示されるように、第1検出回路86は、入力された個々の受光信号と基準電圧とを比較するコンパレータ87と、コンパレータ87の出力に基づいて、反射物体までの距離Lを算出する時間計測回路88とを備えている。
コンパレータ87は、増幅器85から出力された受光信号と基準電圧とを比較し、受光信号が基準電圧よりも大きくなっているときに、比較信号を時間計測回路88へ出力するものである。
時間計測回路88は、レーザ光が発光時刻と反射されたレーザ光の受光時刻とから受発光の時間間隔を求めるものである。すなわち、図4(a)に示される発光時のレーザ光の出力および受光信号の波形に示されるように、発光時刻t0から受光信号がピーク値となる時刻tpまでの時間間隔が求められる。
具体的には、レーザ光の発光時刻t0は、レーザレーダCPU70cからレーザダイオード駆動回路76へ出力されるLD駆動信号が時間計測回路88に入力されるようになっているため、そのLD駆動信号から検出される。
受光信号がピーク値となる時刻tpは、時間計測回路88に入力されるコンパレータ87からの比較信号に基づいて検出される。この時刻tpの検出手法について、図4(b)に示す受光信号波形を参照して説明する。
まず、図4(b)に示すように、受光信号が基準電圧V0を超えた立上がり時刻(t11、t21)と基準電圧V0よりも低下した立下り時刻(t12、t22)とが検出される。そして、これらの立上がり時刻及び立下り時刻に基づいて、ピーク値が発生する時間tpが算出される。
ここで、図4(b)では、強度が異なる2つの反射光に基づく受光信号を曲線L1、L2で示してある。図4(b)において、曲線L1は、強度が比較的強い反射光の受光信号を示し、曲線L2は、強度が比較的弱い反射光の受光信号を示している。
図4(b)に示すように、反射光の強度に対応した受光信号は、左右非対称の形状を示し、その非対称の度合いは受光信号の振幅が大きくなるほど強くなる。そのため、時間計測回路88は、例えば、受光信号の振幅に対応するパラメータである立上がり時刻(t11、t21)と立下り時刻(t12,t22)との時間間隔(Δt1、Δt2)を求める。そして、時間間隔(Δt1、Δt2)を考慮しつつ、立上がり時刻(t11、t21)と立下り時刻(t12、t22)とに基づいて、ピーク値発生時刻tpを算出する。
このようにして、電圧信号のピーク値発生時刻tpを算出した後、図4(a)に示したように、レーザ光を発光した時刻t0とピーク値発生時刻tpとの時間差Δtを求められる。このレーザ光発光時刻t0とピーク値発生時刻tpとの時間差Δtが2進デジタル信号に符号化されたのち、レーザレーダCPU70cに出力されるようになっている。
次に、第2検出回路90について説明する。図2(c)は、第2検出回路90の回路構成の一例を示したものである。この図に示されるように、第2検出回路90は、アナログ/デジタル(A/D)変換回路91を備えている。増幅器85から出力された受光信号は、このA/D変換回路91に入力され、デジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された受光信号は、記憶回路93に入力され、記憶される。なお、デジタル変換される受光信号は、レーザ光発光時間t0から所定時間(例えば2000ns)経過するまでの間に、増幅回路85から出力された信号である。そして、A/D変換回路91においては、図5に示すように、この受光信号を所定時間間隔(例えば10ns)でN個の区間に分割し、それぞれの区間の受光信号の平均値をデジタル値に変換する。
積算範囲指定回路95は、記憶回路93に記憶された受光信号の中から、X軸方向において隣接して照射された所定個数のレーザ光に対応する所定個数の受光信号を、後段の積算回路97に出力させる。この積算範囲指定回路95が指定する積算すべき受光信号の範囲について、図6及び図7を用いて説明する。
図6は、レーザ光の照射エリア及び、検知対象物体である先行車両130との関係を示している。なお、図6においては、簡略化のため、1走査ライン分の照射エリアのみを示している。
図6に示す先行車両130は、その後面にレーザ光に対して反射強度の高いリフレクタを備え、また車体もリフレクタほどではないが比較的高い反射強度を備えている。従って、通常は、先行車両130によって反射される反射光の強度は十分に高くなり、その反射光による受光信号も、図4(a)、(b)のように基準電圧V0を超える大きさとなる。しかしながら、例えば、先行車両130の後面に泥や雪等が付着している場合、その先行車両130によって反射される反射光の強度が低下する。従って、先行車両130によって反射された反射光に対応する受光信号が、基準電圧V0を超えない可能性がある。受光信号が基準電圧V0を超えない場合、個々の受光信号に基づいて先行車両130を検出することができない。さらに、先行車両130との車間距離が長くなるほど、反射波の強度が低下するため、個々の受光信号に基づいて所定の車間距離以上離れた先行車両130の検出も困難になる。
そのため、本実施形態においては、複数の受光信号を積算して、先行車両の反射波による受光信号を増幅し、強度の弱い反射波も検出可能とした。積算範囲指定回路95は、その積算すべき受光信号を指定するものである。
ここで、積算する受光信号の個数Nについては、検知対象物体の車幅方向の長さW、その検知対象物体の狙いとする検出距離L0、及びレーザ光の車幅方向のビームステップ角θに基づいて設定することが好ましい。すなわち、所定個数の送信波の照射範囲が、狙いとする検出距離L0において、検知対象物体の車幅方向の長さWに対応するように、積算する受光信号の個数Nを設定するのである。この関係を数式で示すと以下のようになる。
(数1)
N=W/(L0×tanθ)
このように積算する受光信号の個数Nを設定すると、狙いとする検出距離L0を上限とする距離範囲において、積算される受光信号の全てが、検知対象物体からの反射波を受光したときに出力される受光信号となる組み合わせが必ず存在することになる。この場合、反射波の強度に対応する受信信号成分を含む受光信号のみを積算することができるので、積算信号に基づいて反射波の検出感度を効率的に向上することができる。
図6に示す例では、検知対象としての先行車両の横幅を約1.8m、狙いとする検出距離を80mとし、かつ、レーザ光の車幅方向のビームステップ角が0.08degであるため、積算する受光信号の数は16個に設定した。
また、この積算範囲指定回路95は、積算回路97が16個の受光信号の積算信号を算出して、後段のコンパレータ103における比較処理、補間回路109における直線補間処理、及び時間計測回路111における時間差Δtの算出処理が完了する時間間隔で、積算する受光信号の範囲を移動させる。すなわち、図7に示すように、X軸方向において左から右に向かって走査するように451回照射されるレーザ光に対応して、受光信号に1から451までの番号を付与したとすると、まず、積算範囲指定回路95は1番から16番の受光信号を積算すべき受光信号の範囲として指定する。そして、上記時間間隔が経過すると、2番から17番の受光信号を、積算すべき受光信号の範囲として指定する。このように、積算範囲指定回路95は、受光信号を1個分ずつずらしながら、積算する受光信号の範囲を移動させる。このようにすれば、16個の受光信号を積算しながら、その積算信号による角度分解能の低下を最小限に抑制することができる。
すなわち、単に、受光素子82から出力された受光信号を16個ごとに分けて、それぞれ積算信号を求めた場合、反射光の検出感度を向上することはできるが、一方で、積算信号による角度分解能が、大幅に低下してしまう。それに対して、上述のように、積算する受光信号の範囲を、受光信号1個分ずつずらすようにすれば、角度分解能の低下を抑制できるのである。
積算範囲指定回路95によって指定された範囲に属する16個の受光信号が、記憶回路93から読み出され、積算回路97に出力される。積算回路97は、図8(a)に示すように、それぞれデジタル信号に変換済みの16個の受光信号を積算する。
このとき、この16個の受光信号の全てが同じ反射物体からの反射波に応じた受光信号成分Sを含んでいた場合には、その受光信号成分Sは、レーザ光の発光時刻から同じ時間だけ経過した時刻に現れる。従って、積算信号における受光信号成分S0は、各受光信号の受光信号成分Sが16倍に増幅されたものとなる。
一方、各受光信号に含まれるノイズ成分Nは、基本的に外来光等によってランダムに発生するため、16個の受光信号を積算した場合であっても、そのノイズ成分N0は、√16=4倍に増幅されるのみである。従って、積算回路97によって積算信号を算出することにより、受光信号成分S0とノイズ成分N0との比(S/N比)は4倍に向上する。
このため、個々の受光信号に含まれる受光信号成分Sが小さくて、ノイズ成分Nと区別することが困難な場合でも、上述した積算信号を用いることによって、増幅された受光信号成分S0に基づき反射物体を検出することが可能になる。
図2(c)において、スイッチング回路100は、積算回路97の出力先をコンパレータ103とバックグラウンドノイズ算出回路99とに切り換える役割を果たす。バックグラウンドノイズ算出回路99は、セレクタ84のセレクタ2が設定されているとき、すなわち距離検出が行われず、増幅器85からダミー回路83の出力信号を増幅した信号が出力されているときに、積算回路97から出力される積算信号に基づいて、受光信号に重畳されるノイズ成分を算出する。
本実施形態では、外周に面倒れ角が異なる6つのミラーを備えたポリゴンミラー73を回転させつつ、その各ミラーに451本のレーザ光を反射させることにより、X軸及びY軸方向にレーザ光を走査させている。このため、例えば、そのポリゴンミラー73の回転によって6つのミラーが切り換わるときには、距離検出が行われない期間となることから、その期間中に、セレクタ84がセレクト2が設定され、スイッチング回路100は、積算回路97の出力先をバックグラウンドノイズ算出回路に切り換えるようになっている。
このとき、積算回路97において積算される信号は、ダミー回路83の出力信号であることから、反射物体からの反射波に対応する受光信号成分Sは含まれていない。そして、ダミー回路83のインピーダンスが受光素子82と同等に設定されていることから、ダミー回路83が受光素子82と同等の電磁波ノイズ等を受けることになり、受光素子82の受光素子に重畳されるノイズ成分のみがその出力信号に含まれることになる。このため、積算回路97から出力される積算信号は、ノイズ成分Nのみが積算されたものとなる。従って、このノイズ成分Nを、後述する減算回路101により、受光素子82の受光信号を増幅および積算した積算信号から除去することにより、積算信号のS/N比をさらに向上することが可能となる。
なお、この距離検出を行わない期間中にも、発光部70aからレーザ光を発光させるようにするのが好ましい。これは、実際にレーザ光を発光しているときには、レーザ光の発光によって電磁波ノイズが発生し、それが受光信号に重畳する場合があるためである。
また、レーザ光が図3に示すスキャンエリアに照射されていないときに、積算回路97からは、複数個の積算信号が出力される。バックグラウンドノイズ算出回路99は、この複数個の積算信号を平均化処理して、平均化積算信号を算出する。この平均化処理としては、複数個の積算信号を単純平均しても良いし、加重平均処理によって算出しても良い。このように、ノイズ成分Nによる受信信号の積算信号を平均化処理することにより、その平均化積算信号には規則性のあるノイズ成分が特徴的に現れる。
つまり、受光信号に重畳されるノイズ成分は、基本的にはランダムに発生するが、中には、レーザレーダCPU70cのクロックパルスやレーザ光の発光による電磁波ノイズの影響によって規則性を有しているノイズ成分もある。このような規則性を有するノイズ成分は、平均化処理を繰り返すほど、ランダムなノイズ成分よりも強調される。そして、この規則性のあるノイズ成分は、必ず積算信号に含まれている。そこで、バックグラウンドノイズ算出回路にて平均化処理を行うことによってノイズ成分を求め、この平均化処理したノイズ成分を積算信号から除去することにより、規則性のあるノイズ成分を積算信号から確実に除去することが可能になる。
図2(c)に示す減算回路101は、レーザ光がスキャンエリアに照射されているときに、積算回路97から出力される積算信号から、バックグラウンドノイズ算出回路99にて算出したノイズ成分を減算するものである。
この減算回路101によってノイズ成分が減算された積算信号は、コンパレータ103において、しきい値設定回路105から出力されるしきい値Vdと比較される。このしきい値Vdは、図2(b)において説明した基準電圧V0に対応する値である。
図9は、所定の時間間隔で離散的に積算信号の各デジタル値が算出されている場合の様子を示した図である。この図に示されるように、所定の時間間隔で離散的に各デジタル値が算出されている場合、その各デジタル値と基準電圧V0に対応するしきい値とが比較される。このとき、例えば、デジタル値Db、Dcの値がしきい値よりも大きい場合には、その比較結果が補間回路109に出力される。
補間回路109では、しきい値を横切ったと推測される立上がり時刻t1及び立下り時刻t2を直線補間によって求める。すなわち、しきい値を超えたデジタル値Dbとその直前のデジタル値Daとを結ぶ直線を想定し、その直線としきい値との交点に対応する時刻を求め、これを立上がり時刻t1とする。同様に、しきい値を超えたデジタル値Dcとその直後のデジタル値Ddとを結ぶ直線を想定する。これにより、所定の時間間隔で離散的にしか積算信号のデジタル値が得られなくても、その間が補間されることになる。そして、想定された直線としきい値V0との交点に対応する時刻を求めることで、積算信号のデジタル値がしきい値V0を超えたときを示す立上り時刻t1および下回ったときを示す立下り時刻t2が求められる。
時間計測回路111は、図2(b)の時間計測回路88と同様の処理を行い、図8(b)に示すように、立上がり時刻t1と立下り時刻t2とに基づいて、受光信号成分Sのピーク値の発生時刻を求め、レーザ光発光時刻とピーク値発生時刻との時間差Δtを算出し、それを示す信号をレーザレーダCPU70cに出力する。
レーザレーダCPU70cは、時間計測回路88、111から入力された時間差Δtから反射物体までの距離を算出し、その距離及び対応するレーザ光のスキャン角度θx、θyを基にして位置データを作成する。具体的には、距離及びスキャン角度θx、θyから、レーザレーダ中心を原点(0,0,0)とし、車幅方向をX軸、車高方向をY軸、車両前方方向をZ軸とするXYZ直交座標系における反射物体の位置データを求める。そして、このXYZ直交座標系における位置データを測距データとして認識・車間制御ECU3へ出力する。
なお、積算信号に基づいて反射物体までの距離を算出する場合、その積算信号に対応するレーザ光のスキャン角度θxは、積算した複数個の受光信号に対応する複数のレーザ光の中心位置のレーザ光のスキャン角度θxとする。
認識・車間制御ECU3は、レーザレーダセンサ5からの測距データを基にして物体を認識し、その認識物体から得た先行車の状況に合わせて、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより車速を制御する、いわゆる車間制御を実施する。また、認識物体が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理も同時に実施する。この場合の物体としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車等が該当する。
認識・車間制御ECU3の内部構成について、制御ブロックとして簡単に説明する。レーザレーダセンサ5から出力された測距データは物体認識ブロック43に送られる。物体認識ブロック43では、測距データとして得た3次元位置データに基づいて、物体の中心位置(X,Y,Z)、及び横幅W、奥行きD、高さH等の物体の大きさ(W,D,H)を求める。さらに、中心位置(X,Y,Z)の時間的変化に基づいて、自車位置を基準とするその物体の相対速度(Vx,Vy,Vz)を求める。さらに物体認識ブロック43では、車速センサ7の検出値に基づいて車速演算ブロック47から出力される車速(自車速)と上記求められた相対速度(Vx,Vy,Vz)とから物体が停止物体であるか移動物体であるかの識別が行なわれる。この識別結果と物体の中心位置とに基づいて自車両の走行に影響する物体が選択され、その距離が距離表示器15により表示される。
また、ステアリングセンサ27からの信号に基づいて操舵角演算ブロック49にて操舵角が求められ、ヨーレートセンサ28からの信号に基づいてヨーレート演算ブロック51にてヨーレートが演算される。そしてカーブ半径(曲率半径)算出ブロック57では、車速演算ブロック47からの車速と操舵角演算ブロック49からの操舵角とヨーレート演算ブロック51からのヨーレートとに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。そして物体認識ブロック43では、このカーブ半径Rおよび中心位置座標(X,Z)などに基づいて、物体が車両である確率、及び自車と同一車線を走行している確率等を判定する。この物体認識ブロック43にて求めたデータが異常な範囲の値がどうかがセンサ異常検出ブロック44にて検出され、異常な範囲の値である場合には、センサ異常表示器17にその旨の表示がなされる。
一方、先行車判定ブロック53では、物体認識ブロック43から得た各種データの中から先行車のデータを選択し、その先行車に対するZ軸方向の距離Zおよび相対速度Vzを抽出する。そして、車間制御部及び警報判定部ブロック55が、この先行車との距離Z、相対速度Vz、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態およびブレーキスイッチ9の踏み込み状態、スロットル開度センサ11からの開度および警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果を、警報が必要ならば、警報発生信号を警報音発生器13に出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19およびスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。そして、これらの制御実行時には、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知する。
以上説明したように、本実施形態では、受光素子82の受光信号とダミー回路83の出力信号が増幅器85で増幅されたのち、第2検出回路90に入力されるようにしている。このため、距離検出を行わないときに、ダミー回路83の出力信号に基づいて、受光素子82の受光信号に重畳されるノイズ成分を求めることが可能となる。したがって、受光素子82の受光信号からノイズ成分を除去したものに基づいて、距離検出を行うことが可能となる。
これにより、レーダ装置の検知可能距離が低下することを防ぐことが可能となる。そして、ノイズ成分の検出をダミー回路83およびセレクタ84を用いて行っていることから、従来のように、光が筐体の外に出射されない角度範囲を光学機構の設計要件として織り込む必要がない。したがって、光学設計上の制約も少なくすることが可能となる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してレーザレーダセンサ5の受光部70bの構成を変更したものであり、その他の構成については同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図10は、本実施形態の車両用制御装置に備えられるレーザレーダセンサ5のブロック構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態のレーザレーダセンサ5における受光部70bは、第1実施形態に示したダミー回路83、セレクタ84を無くし、受光素子82の受光信号がそのまま増幅器85に入力されるようになっていることと、受光素子82の近傍に、LED等で構成された発光体140が配置されていることが第1実施形態に対して異なっている。
このような構成によれば、発光体140での発光を行うことにより、受光素子82に強い光を照射することが可能となる。このため、受光素子82を飽和させることが可能となり、この発光体140による発光時に何らかの光が受光素子82に入射されたとしても、受光素子82の出力がその入射光に応答しなくなる。すなわち、受光信号成分が飽和状態の一定値となる。
したがって、本実施形態では、距離検出を行うときには発光体140での発光を行わず、受光素子82に入射される光の強度に応じた受光信号が得られるようにし、距離検出を行わないときには発光体140での発光を行い、受光素子82における受光信号成分が一定値となるようにする。これにより、距離検出を行わないときの受光信号の波形から、一定値となる受光信号成分を差し引けば、ノイズ成分のみが残ることになる。そして、このときに得られるノイズ成分をバックグランドノイズ算出回路99で求めることにより、受光信号からノイズ成分を除去することが可能となり、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
なお、ここでは、発光体140を設ける例について説明したが、距離検出を行わないときに外部からの太陽光が入射されるようにして、受光素子82が受動的に入力光飽和状態になる状況を作り出し、それを利用することも可能である。このように、太陽光のようなDC光を受光素子82に入射すると、ショットノイズが増加することになるが、定常ノイズは変化しないため、ショットノイズが影響して定常ノイズを検出できないということはない。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してレーザレーダセンサ5の受光部70bの構成を変更したものであり、その他の構成については同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図11は、本実施形態の車両用制御装置に備えられるレーザレーダセンサ5のブロック構成を示したものである。この図に示されるように、本実施形態のレーザレーダセンサ5における受光部70bは、第1実施形態に示したダミー回路83、セレクタ84を無くし、受光素子82の受光信号がそのまま増幅器85に入力されるようになっていることと、受光素子82へのバイアス電流を流すための電源供給ライン中にトランジスタ等のスイッチング素子150を配置していることが第1実施形態に対して異なっている。
このような構成によれば、スイッチング素子150のオンオフに基づいて、受光素子82へのバイアス電流の供給のオンオフを制御することが可能となる。
受光素子82の入射光の強度に対する受光信号(出力電圧)の大きさは、バイアス電流が供給されているか否かによって大きく異なっており、バイアス電流が供給されていない状態であると、受光素子82に光が入射されても受光信号は著しくなまった波形となる。
したがって、本実施形態では、距離検出を行うときにはスイッチング素子150をオンさせ、バイアス電流が受光素子82に供給されるようにすることで、受光素子82から高い応答性を有する受光信号が得られるようにし、距離検出を行わないときにはスイッチング素子150をオフさせ、バイアス電流が受光素子82に供給されないようにすることで、受光素子82からにおける受光信号成分がバイアス電流が供給されているときと比べて小さな値となるようにする。これにより、距離検出を行わないときの受光信号の波形からノイズ成分を抽出することができる。そして、このときに得られるノイズ成分をバックグランドノイズ算出回路99で求めることにより、受光信号からノイズ成分を除去することが可能となり、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。上記各実施形態では、レーザレーダセンサ5の内部で発生する定常ノイズを学習する方法について説明したが、本実施形態では、レーザレーダセンサ5の外部の定常的な状況もノイズとみなして学習し、それを除去する。
例えば、レーザレーダセンサ5の直前にカバーガラスなどがある状況では、本来ターゲットとする先行車両からの反射光だけではなく、カバーガラスなどからの反射光成分も存在し、それが受光素子82に入射されることがある。このようなカバーガラスなどからの反射光成分は、先行車両までの距離検出を行うという目的においてはノイズとみなせる。
したがって、受光信号成分が無いときに得られた積算信号をバックグランドノイズ算出回路99に入力すれば、カバーガラスなどからの反射光成分を反射光ノイズ成分として学習することが可能となる。
このカバーガラスなどからの反射光ノイズは、出射される光のスキャニング方向によっても異なるため、スキャニング方向別に除去する必要がある。しかしながら、スキャニング角度は数百点もあり、そのすべてをスキャニング角度別に学習することは学習処理の占める規模および学習結果を記憶するメモリが膨大になり、現実的ではない。
このため、本発明者らは、カバーガラスなどからの反射光ノイズ成分の角度依存性が緩やかであること、反射光ノイズ成分はカバーガラスの汚れなどの状態によって変化するものの角度依存性はあまり変化しないこと、レーザレーダセンサ5の内部のノイズは角度依存性を持たないことから、代表点のみを学習すれば良いことを見出した。本実施形態では、このような知見に基づいて、反射光ノイズを求め、それを除去する。
図12は、本実施形態の車両用制御装置に備えられるレーザレーダセンサ5のブロック構成を示したものである。以下、この図に基づいて本実施形態のレーザレーダセンサ5について説明するが、本実施形態は、第1実施形態に対してレーザレーダセンサ5の回路構成を変更したものであり、その他の構成については同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
図12に示されるように、本実施形態のレーザレーダセンサ5における受光部70bは、第1実施形態に示したダミー回路83、セレクタ84を無くし、受光素子82の受光信号がそのまま増幅器85に入力されるようになっていることと、スイッチング回路100の代わりにコンパレータ103の比較結果を示す出力によって制御されるスイッチング素子160を備えていることが第1実施形態に対して異なっている。
このため、積算回路97の積算信号が常に減算回路101に入力されと共に、コンパレータ103にてノイズ成分が減算された積算信号がしきい値設定回路105から出力されるしきい値V0よりも小さく、受光信号成分が無いと判定されたときには、スイッチング素子160がオンし、積算信号がバックグランドノイズ算出回路99に入力される。したがって、バックグランドノイズ算出回路99では、受光信号成分が無いと判定されたときの積算信号から反射光ノイズ成分が算出され、それがそのときのスキャニング角度に応じたメモリに記憶されるようになっている。
さらに、本実施形態のバックグランドノイズ算出回路99には、反射光ノイズの角度依存性が記憶させてある。このため、受光信号成分が無いと判定されたときの積算信号から算出される反射光ノイズ成分を代表点の反射光ノイズとし、反射光ノイズの角度依存性と代表点の反射光ノイズとから、スキャニング角度ごとの反射光ノイズ成分を算出する。
以上説明したように、受光信号成分が無いと判定されたときには、受光素子82からの受光信号が反射光ノイズ成分のみによるものであるとして、そのときの積算信号がバックグランドノイズ算出回路99に入力されるようにしている。このため、反射光ノイズ成分を算出することが可能となり、減算回路101にて積算信号から反射光ノイズ成分を減算することが可能となる。
また、受光信号成分が無いと判定されたときにのみ、反射光ノイズ成分の算出が行われるようにしている。そして、算出された反射光ノイズ成分と予め記憶された反射光ノイズの角度依存性とから、判定されたときとは異なるスキャニング角度も含めて、スキャニング角度ごとの反射光ノイズ成分を算出するようになっている。このため、スキャニング角度別に反射光ノイズ成分を学習する場合のように、学習処理の占める規模および学習結果を記憶するメモリを膨大させることなく、スキャニング角度ごとの反射光ノイズ成分を学習することが可能となる。
なお、カバーガラスが汚れたなど、状況の変化が生じたことに関して、別途レーザレーダセンサ5に設けられる汚れモニタや雨、霧、雪などの検出センサからの情報がバックグランドノイズ算出部99に入力されるようにし、ノイズ成分の算出に利用することも可能である。
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
(1)上記第1〜第4実施形態それぞれで示した各構成を任意に組み合わせることも可能である。例えば、第1〜第3実施形態で示した各構成と第4実施形態で示した構造を組み合わせれば、レーザレーダセンサ5の内部と外部の双方のノイズ成分を効率的に求められるレーザレーダセンサ5とすることができる。
(2)上述した実施形態においては、第1検出回路86及び第2検出回路90において、個々の受光信号に基づく反射物体の検出と、複数個の受光信号を積算した積算信号に基づく反射物体の検出とを、それぞれ独立して行なう例について説明した。
しかしながら、個々の受光信号に基づいて反射物体が検出された場合、すなわち、個々の受光信号が基準電圧V0より大きい振幅を持っていることが検出されたとき、レーザレーダCPU70cあるいは第1検出回路80より、その受光信号の番号等、受光信号を特定するための情報を積算範囲指定回路95が受け取り、その受光信号を積算対象受光信号から除外するように構成しても良い。
受光信号の積算信号を利用する理由は、個々の受光信号が、反射物体を識別するのに十分な大きさの強度(振幅)を有していない場合でも、その反射物体を検出できるようにするためである。従って、個々の受光信号が反射物体を検出するのに十分な大きさの強度(振幅)を持っている場合には、そもそも積算信号を求める必要はない。さらに、個々の受光信号に基づいて反射物体を検出した方が、積算信号に基づいて反射物体を検出するよりも、角度分解能が向上する。このような理由から、個々の受光信号によって反射物体が検知できるならば、その検知結果に基づいて、反射物体に関する測距データを算出すべきである。
さらに、反射物体を検出するために十分に大きな振幅を持つ受光信号を除く受光信号を対象として、積算対象受信信号範囲を設定することで、演算処理量を減少し、演算時間を短くすることも可能になる。
(3)上述した実施形態においては、第1検出回路86及び第2検出回路90は、ハードロジック回路として構成される例について説明したが、それらの一部をレーザレーダCPU70cにおいてソフトウエアによって実現することも可能である。逆に、レーザレーダCPU70cにおける、レーザ光発光時刻t0と受光信号のピーク値発生時刻tpとの時間差Δtから反射物体までの距離Lを求める等の処理は、ハードロジック回路で実現することも可能である。
(4)上述した実施形態においては、X軸方向に走査される各走査ラインにおいて、隣接して照射される複数本のレーザ光に基づく受光信号を積算する例について説明した。しかしながら、積算する受光信号は、X軸方向に隣接して照射されるレーザ光に限らず、Y軸方向に隣接して照射されるレーザ光によるものであっても良い。さらに、隣接して照射されるレーザ光の範囲は、X軸及びY軸の複数の走査ラインに及ぶものであっても良い。
(5)上記実施形態では、レーザ光の2次元スキャンを行うために面倒れ角が異なるポリゴンミラー73を用いたが、例えば車幅方向にスキャン可能なガルバノミラーを用い、そのミラー面の倒れ角を変更可能な機構を用いても同様に実現できる。但し、ポリゴンミラー73の場合には、回転駆動だけで2次元スキャンが実現できるという利点がある。
(6) 上記実施形態では、レーザ光を用いたレーザレーダセンサ5を採用したが、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであってもよい。また、スキャン方式にこだわる必要はなく、距離以外に方位を測定できる方式であればよい。そして、例えばミリ波でFMCWレーダ又はドップラーレーダなどを用いた場合には、反射波(受信波)から先行車までの距離情報と先行車の相対速度情報が一度に得られるため、レーザ光を用いた場合のように、距離情報に基づいて相対速度を算出するという過程は不要となる。
本発明が適用された車両制御装置の構成を示すブロック図である。 (a)はレーザレーダセンサの構成を示す構成図であり、(b)はレーザレーダセンサにおける第1検出回路の構成を示す回路構成図であり、(c)はレーザレーダセンサにおける第2検出回路の構成を示す回路構成図である。 レーザレーダセンサの照射領域を示す斜視図である。 (a)は、距離検出の原理を説明するための波形図であり、(b)は受光信号におけるピーク値の算出方法について説明するための波形図である。 第2検出回路において、A/D変換回路による受光信号に対するデジタル変換処理を説明するための波形図である。 積算すべき受光信号の個数の設定方法を説明するための説明図である。 第2検出回路の積算範囲指定回路による、積算すべき受光信号の範囲の移動を説明するための説明図である。 (a)は、複数の受光信号を積算した場合、反射光の強度に対応した受光信号成分の増幅の程度が、ノイズ信号成分の増幅の程度よりも大きいことを説明するための説明図であり、(b)は、その積算信号に基づく、反射物体までの距離検出の原理を説明するための波形図である。 第2検出回路の補間回路において行われる、直線補間処理を説明するための波形図である。 本発明の第2実施形態の車両制御装置に備えられるレーザレーダセンサの構成を示す構成図である。 本発明の第3実施形態の車両制御装置に備えられるレーザレーダセンサの構成を示す構成図である。 本発明の第4実施形態の車両制御装置に備えられるレーザレーダセンサの構成を示す構成図である。
符号の説明
1…車両制御装置、5…レーザレーダセンサ、70a…発光部(発信手段)、70b…受光部(受信手段)、70c…レーザレーダCPU、71…発光レンズ、72…スキャナ、73…ミラー、74…モータ駆動回路、75…半導体レーザダイオード、76…レーザダイオード駆動回路、81…受光レンズ、82…受光素子(受光信号成分出力部)、83…ダミー回路(ノイズ成分出力部)、84…セレクタ(選択部)、85…増幅器、86…第1検出回路、87…コンパレータ、88…時間計測回路、90…第2検出回路、91…A/D変換回路、93…記憶回路、95…積算範囲指定回路、97…積算回路97、99…バックグラウンドノイズ算出回路(ノイズ成分算出部)、100…スイッチング回路、101…減算回路(除去部)、103…コンパレータ、105…しきい値設定回路、109…補間回路、111…時間計測回路、140…発光体(電磁波出力部)、150…スイッチ部。

Claims (4)

  1. 所定の角度範囲に渡って複数の送信波を照射する発信手段(70a)と、
    前記送信波に対する反射波を受信すると共に、前記反射波を受信した際にその反射波の強度に応じた受信信号を出力する受信手段(70b)と、
    前記受信手段からの前記受信信号に基づき、前記受信信号に重畳されるノイズ成分を算出するノイズ成分算出部(99)と、前記ノイズ成分算出部によって求められた前記ノイズ成分を前記受信信号から除去する除去部(101)と、前記除去部によって除去された前記受信信号に基づいて、前記送信波を反射した反射物体を検出する検出部(103、105、109、111)とを有してなる反射物体検出手段とを備えてなる車両用レー装置であって、
    前記受信手段は、
    前記反射波を受信した際にその反射波の強度に応じた受信信号成分を含む信号を出力する受信信号出力部(82)と、
    前記受信信号成分を含まず、前記ノイズ成分を含む信号を出力するノイズ成分出力部(83)と、
    前記反射物体検出手段に伝える前記受信信号として、前記受信信号出力部が出力する信号と前記ノイズ成分出力が出力する信号のいずれか一方を選択する選択部(84)とを備え、
    前記ノイズ成分算出部は、前記選択部にて前記ノイズ成分出力部が出力する信号が前記受信信号として選択されているときの前記受信信号に基づいて、前記ノイズ成分の算出を行うようになっており、
    前記除去部は、前記選択部にて前記受信信号出力部が出力する信号が前記受信信号として選択されているときの前記受信信号から前記ノイズ成分を除去するようになっており、
    前記ノイズ成分算出部は、前記発信手段が発信する前記送信波のスキャニング角度に対応する反射光ノイズの相関を記憶しており、前記受信信号に前記受信信号成分が含まれていないと判定されたとき伝えられた前記受信信号とそのときのスキャニング角度とから、前記相関に基づいて、そのときのスキャニング角度とは異なるスキャニング角度を含め、スキャニング角度ごとの反射光ノイズを求めるようになっていることを特徴とする車両用レー装置。
  2. 前記ノイズ成分出力部は、前記受信信号出力部と同等のインピーダンスを有するダミー回路(83)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用レー装置。
  3. 前記反射物体検出手段には、前記選択部にて選択された前記受信信号の積算を行う積算部が備えられており、
    前記ノイズ成分算出は、前記積算部で積算された前記受信信号から前記ノイズ成分を算出するようになっていると共に、前記除去部は、前記積算部で積算された前記受信信号から前記ノイズ成分を除去するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用レー装置。
  4. 前記反射物体検出手段は、前記反射波を受信した際にその反射波の強度に応じて出力される受信信号成分が前記受信信号に含まれているか否かを判定する判定部(103)と、
    前記判定部にて前記受信信号に前記受信信号成分が含まれていないと判定されたときには、前記ノイズ成分算出部に、そのときの前記受信信号が伝えられるようにするスイッチ部(160)とが備えられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の車両用レーダ装置。
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