JP3965838B2 - カラー蛍光ランプ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体とピロリン酸カルシウム粉末との混合物から成る発光組成物及びそれを用いたカラー蛍光ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
カラー蛍光ランプは単色蛍光物質を塗布した蛍光ランプであり、淡いイメージの色光が得られるので、看板照明、電飾照明、ウインドー照明、色を活かした雰囲気照明等に用いられている。従来、ピンク色発光のカラー蛍光ランプ用としては、ピンク色発光の鉛、マンガン付活ケイ酸カルシウム蛍光体、又はオレンジ色発光のスズ付活リン酸ストロンチウムマグネシウム蛍光体と深赤色発光のマンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム蛍光体の混合物から成る混合蛍光体が用いられていた。しかしながら、鉛、マンガン付活ケイ酸カルシウム蛍光体の場合、発光色は白っぽいピンク色であり、色純度が低く、ランプの光束維持率も低いという問題があった。また、スズ付活リン酸ストロンチウムマグネシウム蛍光体とマンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム蛍光体の混合蛍光体の場合、色純度を上げるには高価なマンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム蛍光体の混合割合を増やす必要からコスト高になり、ランプの光束も低下するという問題があった。
【0003】
これに対し、白色物質の無機物質を蛍光体重量に対し10〜230%の範囲で混合希釈することにより、高価な蛍光体の使用量が削減できることが特開昭57−128452号公報に開示されている。白色粉末の無機物質としてはカルシウムのピロリン酸塩、或いはオルソリン酸塩、或いは両者の混合物が使用できることが記載されている。また、バルブ内面の蛍光層が蛍光体と紫外線反射物質にて構成され、紫外線反射物質の占める割合が全体の30〜95重量%に設定される蛍光層を具備した蛍光ランプについて特開昭58−218745号公報に開示され、高価な蛍光体の使用量を削減可能で、紫外線反射物質は具体的には酸化チタン(TiO2)、アルミナ(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、ピロリン酸カルシウム(Ca227)などが使用できることが記載されている。
【0004】
これらの手法を用い、ユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体に紫外線反射物質としてピロリン酸カルシウムを混合し、蛍光ランプを作製したところ、ランプの発光色がピンク色の方に引き寄せられることから、ピンク色発光のカラー蛍光ランプに使用できることがわかった。この色調の変化は、水銀蒸気放電に基づく可視域の青紫色系発光の強度はほぼ変わらないが、ピロリン酸カルシウムを混合することで赤色発光強度が低下し、全体としてピンク色の発光色となることによる。
【0005】
しかしながら、上記ピンク色発光のカラー蛍光ランプを作製した場合、管端の色差の問題が新たに発生した。これは、蛍光ランプの製造工程中、ガラス管に発光組成物を塗布する工程で完全に均一に混合された塗布懸濁液を用いても、乾燥され蛍光体層が形成される時に、ガラス管の塗布上部と下部で、蛍光体層中の蛍光体とピロリン酸カルシウムの成分比がずれてしまうことによる。このように蛍光ランプの両端で発光色の色差が発生することは、カラー蛍光ランプにおいて問題となることから、改良が必要とされる。
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は上述した問題を解決することを目的とし、ピンク色発光のカラー蛍光ランプに用いたとき、色純度が良く、ランプ光束及び光束維持率が高く、管端の色差の少ない蛍光ランプを低コストで得ることのできる発光組成物及びそれを用いたカラー蛍光ランプを提供することを目的としている。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は上述した問題を解決するために鋭意検討した結果、ピンク色発光のカラー蛍光ランプ用として、ユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体とピロリン酸カルシウム粉末の混合物から成る発光組成物を用いることにより、色純度が良く、ランプ光束及び光束維持率が高く、管端の色差の少ないカラー蛍光ランプが低コストで得られることを新たに見いだし本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明のカラー蛍光ランプは、組成式が(Y1-k,Euk23(ただし、kは0.021≦k≦0.066の範囲である。)で表され、平均粒径が2〜6μmの範囲のユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体とピロリン酸カルシウム粉末の混合物から成る発光組成物が管壁に塗布されたピンク色発光のカラー蛍光ランプであって、前記蛍光体の占める割合は発光組成物全重量に対し10〜50重量%の範囲であり、ピロリン酸カルシウム粉末の平均粒径aと前記蛍光体の平均粒径bとの比a/bは1≦a/b≦1.5の範囲であり、該カラー蛍光ランプのランプ色度は0.50≦x≦0.59、0.31≦y≦0.34の範囲であることを特徴とする。
【0008】
蛍光体中のEuの濃度kについては、蛍光体1モルに対し、0.021モル以上、0.066モル以下の範囲に調整する。0.021モルより少ないと光吸収が悪くなり、その結果蛍光体の発光強度は低下し、ランプ光束も低下する。0.066モルよりも多くなると、濃度消光を起こし、蛍光体の発光強度及びランプ光束は低下する。また、蛍光体の平均粒径は2〜6μmの範囲が好ましい。2μm未満の場合、蛍光体の発光強度は低く、ランプ光束は低下する。また、蛍光体粒子の分散性が悪く、塗布特性が悪化する。逆に、6μmを越えると、通常のカラー蛍光ランプの塗布重量(2〜4mg/cm2)ではランプ光束が低下し、ランプ光束を上げるためには塗布重量を増加する必要があり、コスト面で厳しくなる。ここで平均粒径は、空気透過法により比表面積を測定し、一次粒子の粒径の平均値を求めたものであり、フィッシャーサブシーブサイザー(F.S.S.S.)を用いて測定した値である。
【0009】
ピロリン酸カルシウム粉末は可視域から紫外域の範囲において反射率が90%以上の白色物質から成る紫外線反射物質であって、ピロリン酸カルシウム粉末の平均粒径aと蛍光体の平均粒径bとの比a/bが1≦a/b≦1.5の範囲となる粒径範囲のものを使用する。管端の色差が、粒径比a/bが1≦a/b≦1.5の範囲で最も小さく、粒径比a/bが1未満、又は1.5を越えると大きくなるためである。
【0010】
発光組成物中の蛍光体の割合は、発光組成物全重量に対し10〜50重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、20〜50重量%の範囲である。10重量%未満では、ピンク色としての色純度が悪くなり、ランプ光束も低下する。逆に50重量%を越えると、蛍光ランプの発光色は赤みが強くなって色純度が悪くなり、またコストも高くなる。
【0011】
上記した発光組成物を、水銀および希ガスを含む封入ガスが充填された透光性ガラス管と、この透光性ガラス管内壁面に設けられた蛍光体粒子を含む蛍光体層と、封入ガス中で陽光中放電を維持するための手段とを備える蛍光ランプに形成することで本発明のカラー蛍光ランプを得ることができる。発光組成物の透光性ガラス壁面への塗布は蛍光体を塗布する通常の方法を用いて行うことができ、例えば、蛍光体層の脱落防止の目的で、微粒子のアルミナ、及びカルシウムバリウムボレート等の結着剤を使用することもできる。発光組成物の塗布量も蛍光体単独を塗布する場合と同じ程度の量である。
【0012】
図1に本発明のカラー蛍光ランプにおける発光組成物中の(Y0.965,Eu0.03523蛍光体(平均粒径4.0μm)の配合割合を種々に変化させ、FL40SS蛍光ランプを作製し、ランプ光束を測定した結果を示す。ここで、発光組成物の塗布重量は3.5gに固定している。発光組成物中ユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体が10重量%未満では、コスト削減メリットは大きいが、ランプ光束は大幅に低下する。逆に50重量%を越えると、ランプ光束は高いものの、コスト削減メリットは小さくなる。
【0013】
図2は同ランプの色度点をCIE色度座標上にプロットしたものである。発光組成物中ユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体が10〜50重量%の範囲の場合、発光色は0.50≦x≦0.59、0.31≦y≦0.34の範囲の色純度の良いピンク色を示すが、10重量%未満では、x、y値がともに小さくなり、発光色は青みが強くなる。逆に、50重量%を越えると、x、y値ともに大きくなり、発光色は赤みが強くなって、ともにピンク色としての色純度が悪くなる。
【0014】
このように、発光組成物中のユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体の配合割合を変えていくとカラー蛍光ランプの発光色が変化するのは、ランプの蛍光体層を透過する可視Hg線の強度はほぼ変わらないが、該蛍光体の配合割合を少なくしていった場合、赤色発光強度が低下し、全体として発光色が青色方向にシフトするためであり、逆に該蛍光体の配合割合を多くしていった場合、赤色発光強度が増加し、全体として発光色が赤色方向にシフトするためである。
【0015】
図3に、発光組成物中の(Y0.965,Eu0.03523蛍光体(平均粒径4.0μm)の配合割合が20%、50%の場合について、ピロリン酸カルシウム粉末の平均粒径aと前記蛍光体の平均粒径bとの比a/bを種々に変化させ、FL40SS蛍光ランプを作製し、管端の色差を測定した結果を示す。ここで、発光組成物の塗布重量は3.5gに固定している。また、管端の色差は、ランプ上部の発光色(x1,y1)とランプ下部の発光色(x2,y2)との色差を{(x1−x22+(y1−y22}×106で表したものである。発光組成物中の蛍光体の配合割合がいずれの場合も、粒径比a/bが1≦a/b≦1.5の範囲において、管端の色差が少ないことがわかる。
【0016】
【実施例】
[実施例1]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体20gと平均粒径が5.0μmのピロリン酸カルシウム粉末80gを乾式混合し本発明の発光組成物を得た。この発光組成物をニトロセルロース/酢酸ブチルバインダーに懸濁させた塗布液を調製し、通常の方法により蛍光ランプ(FL40SS)用ガラス管に発光組成物を3.5g塗布し、常法に従いカラー蛍光ランプを作製した。このようにして得られる蛍光層の成分比率は、塗布液の発光組成物の仕込み比率にほぼ一致する。得られたカラー蛍光ランプを積分球と分光光度計を用いて測定したところ、ランプ色度は、x=0.549,y=0.325(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1861ルーメンであった。光束維持率は、点灯初期(0時間)のランプ光束を100%として、100時間点灯後のランプ光束を相対値%で示したものであり、96%であった。また、管端の色差は、管端から20cmの部分以外を黒い布等で覆い、ランプ上部と下部の発光色を測定して求めたものであり、68であった。
【0017】
[実施例2]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体50gと平均粒径が5.0μmのピロリン酸カルシウム粉末50gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.580,y=0.332(CIE色度座標)であり、ランプ光束は2380ルーメン、光束維持率は97%であった。また、管端の色差は10であった。
【0018】
[比較例1]
鉛、マンガン付活ケイ酸カルシウム蛍光体100gを発光組成物として使用する以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.493,y=0.359(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1741ルーメン、光束維持率は92%であった。
【0019】
[比較例2]
スズ付活リン酸ストロンチウムマグネシウム蛍光体40gとマンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム蛍光体60gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.513,y=0.341(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1387ルーメン、光束維持率は96%であった。
【0020】
[比較例3]
スズ付活リン酸ストロンチウムマグネシウム蛍光体25gとマンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム蛍光体75gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.548,y=0.323(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1169ルーメン、光束維持率は96%であった。
【0021】
[比較例4]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体20gと平均粒径が6.5μmのピロリン酸カルシウム粉末80gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.544,y=0.325(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1857ルーメン、光束維持率は96%であった。また、管端の色差は104であった。
【0022】
[比較例5]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体20gと平均粒径が3.0μmのピロリン酸カルシウム粉末80gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.550,y=0.325(CIE色度座標)であり、ランプ光束は1864ルーメン、光束維持率は96%であった。また、管端の色差は148であった。
【0023】
[比較例6]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体50gと平均粒径が6.5μmのピロリン酸カルシウム粉末50gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.578,y=0.332(CIE色度座標)であり、ランプ光束は2379ルーメン、光束維持率は97%であった。また、管端の色差は37であった。
【0024】
[比較例7]
平均粒径が4.0μmの(Y0.965,Eu0.03523蛍光体50gと平均粒径が3.0μmのピロリン酸カルシウム粉末50gを乾式混合し、発光組成物を得る以外は、実施例1と同様に行った。ランプ色度は、x=0.581,y=0.332(CIE色度座標)であり、ランプ光束は2372ルーメン、光束維持率は97%であった。また、管端の色差は37であった。
【0025】
表1に実施例1、2及び比較例1、2、3のカラー蛍光ランプの性能、発光組成物のコスト比をまとめて比較する。この表から、本発明の実施例1、2の場合、比較例1、2、3に比べ、ランプ光束、光束維持率、コスト比のいずれにおいても優れていることがわかる。特に、ランプ色度が比較例3とほぼ同じである実施例1の場合、比較例3に比べ、ランプ光束は高く、コストは非常に低いことがわかる。
【0026】
【表1】
Figure 0003965838
【0027】
表2に実施例1、2及び比較例4、5、6、7のカラー蛍光ランプのランプ上部の発光色(x1,y1)、ランプ下部の発光色(x2,y2)及び管端の色差をまとめて比較する。この表から、本発明の実施例1と比較例4、5を比べた場合、また、実施例2と比較例6、7を比べた場合、いずれにおいても本発明の実施例が管端の色差が少ないことがわかる。
【0028】
【表2】
Figure 0003965838
【0029】
【発明の効果】
本発明の発光組成物を用いることにより、ランプ色度が0.50≦x≦0.59、0.31≦y≦0.34の範囲で色純度が良く、ランプ光束及び光束維持率が高く、管端の色差の少ないカラー蛍光ランプを低コストで得ることができる。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発光組成物中のユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体配合量とランプ光束の関係を示すグラフ図
【図2】本発明の発光組成物中のユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体配合量とランプ色度の関係を示すグラフ図
【図3】本発明の発光組成物中のピロリン酸カルシウム粉末とユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体の粒径比と管端の色差との関係を示すグラフ図

Claims (1)

  1. 組成式が(Y1-k,Euk23(ただし、kは0.021≦k≦0.066の範囲である。)で表され、平均粒径が2〜6μmの範囲のユーロピウム付活酸化イットリウム赤色発光蛍光体とピロリン酸カルシウム粉末の混合物から成る発光組成物が管壁に塗布されたピンク色発光のカラー蛍光ランプであって、前記蛍光体の占める割合は発光組成物全重量に対し10〜50重量%の範囲であり、ピロリン酸カルシウム粉末の平均粒径aと前記蛍光体の平均粒径bとの比a/bは1≦a/b≦1.5の範囲であり、該カラー蛍光ランプのランプ色度は0.50≦x≦0.59、0.31≦y≦0.34の範囲であることを特徴とするカラー蛍光ランプ
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