JP3965400B2 - 圧縮成形木材の製造方法 - Google Patents
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しかしながら合成樹脂や軽金属は、木や竹といった自然素材が備える人間の感性に訴えかける優しい風合いや、例えば自然な木目などが醸す優れた視覚効果などを欠いているため、画一的な工業デザインになりがちである。
そのため、木材を、自然素材としての風合いや自然な木目などを生かして、工業製品に用いるために、強度が改善された圧縮成形木材が提案されている。
また、木材の表面性を改善して耐腐食性などを向上する木材の表面処理方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、室温で固体である木材含浸用の無溶媒溶融物を含浸させた木材部品と、そのような溶融物を加熱および加圧して浸漬させる木材への含浸方法が記載されている。
圧縮成形木材では強度は改善されるものの、表面から、例えば水分などが浸透することにより劣化する場合がある。これを防止するためにコーティング処理を行うのが一般的であるが、この場合、木材表面がコーティング材で覆われて、自然素材の風合いが失われてしまうという問題がある。
また、表面に傷がつくとコーティング層が失われてしまうので、そこから水分が浸透して劣化が進み、耐久性が損なわれるという問題がある。
特許文献1に記載の技術では、室温で固体である溶融物を木材に含浸させるので、表面が傷ついたとしても、水分などの浸透が抑えられる。そのため耐久性は維持されるものの、木材を加熱溶融された溶融物に浸漬して含浸させるため、木材の表面が溶融物により層状に覆われることになる。その結果、コーティング処理と同様に自然素材の風合いが失われてしまうという問題がある。
木材の風合いを取り戻すため、木材表面を露出させようとすれば、例えば表面研磨などにより、表面の溶融物層を除去する工程を追加しなければならないので手間がかかるという問題がある。
この発明によれば、溶融したワックスを圧縮工程および固定工程の少なくともいずれかで、昇温状態において供給するため、溶融したワックスが木材の表層部に円滑に浸透される。そして、所定時間型締めを持続して金型形状の転写・固定を行うとともに、ワックスの流動性が失われる温度になってから脱型する。そのため、ワックスが流動性を有する間、型締めが持続されて、木材表面が金型表面に密着するので、圧縮成形木材表面がワックス層で全体的に覆われることなく、木材表面が露出した状態で脱型できる。
その際、金型と木材表面との間で、圧縮を受ける溶融したワックスは、潤滑剤の機能を有するので、圧縮が円滑に行われるとともに、溶融したワックスが金型表面形状に倣うので、表面の光沢が向上できる。また、脱型工程では、木材の表層部に存在するワックスにより離型性が向上できる。
なお、ここで、圧縮成形木材の表層部とは、圧縮成形木材の表面から適宜深さで内部側に広がる領域を意味する。
この発明によれば、少なくとも金型で囲まれる空間内を真空吸引して負圧状態とするので、木質繊維内に存在する空気・水分などが少なくとも金型で囲まれる空間内から排出され、それらが排出された木質繊維内に円滑にワックスを浸透させることができる。
この発明によれば、真空吸引可能な圧力容器内に金型を配置して圧縮工程および固定工程を行うので、金型を真空吸引するための構造とする必要がなく、汎用的な金型構造であっても、これら工程での真空吸引を容易に行うことができる。
この発明によれば、融点が比較的高い添加物であっても、溶融したワックスの母体材料に混合することで、圧縮成形木材の表層部に添加物を分散させることができる。
本発明の実施形態に係る圧縮成形木材について説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の実施形態に係る圧縮成形木材について説明するための斜視説明図、A−A断面図である。図2(a)は、本発明の実施形態に係る圧縮成形木材のワックス含浸部における木質繊維に垂直な断面の構造について説明するための模式説明図である。図2(b)は、圧縮前の木材の木質繊維に垂直な断面の構造について説明するための模式説明図である。
図1(a)に示す圧縮成形木材1は、その一例であって、平面視略矩形状の底面部の周囲を側壁部1Cが囲むことで、一方に開口した函体として成形されている。コア側の金型により内面1Bが、キャビティ側の金型により外面1Aが形成されている。
通常の木材(針葉樹)の表面は、図2(b)に模式的に示すように、細胞壁Wに囲まれて、木材内部に連続する仮導管Tが形成され、仮導管Tが比較的大きく開口している。一方、圧縮成形木材1のワックス含浸部2では、図2(a)に模式的に示すように、細胞壁Wが圧縮方向につぶされ、仮導管Tの開口が細隙化しているものである。
ワックス5は、主に、このような細隙化した仮導管Tを通じて、表面から適宜深さの範囲に浸透され、ワックス含浸部2を形成している。なお、本明細書において木質繊維と言うときには、細胞壁Wで囲まれた単一の仮導管(針葉樹の場合)または導管(広葉樹の場合)を指すものとする。
そして、圧縮成形木材1の表面状態を改良するために、例えば、防湿、防水、膨潤防止、表面の平坦化(つや出し)、汚損防止、電気絶縁性付与など、種々の目的に応じて、適宜のワックスを採用することができる。
ただし、圧縮成形木材1が使用される環境温度では、固体であり、圧縮成形木材1が成形される際の昇温状態で、溶融して液体となるものを選定する。例えば、溶融温度が70℃〜180℃の範囲にあるものなどが好適に採用できる。
浸透を促進するために、溶融時の粘度はできるだけ低いことが好ましい。
添加物としては、目的に応じて種々の物質を採用することができるが、例えば、抗菌加工用の抗菌材、着色のための色材などを挙げることができる。
そのため、例えば水分が浸透して、圧縮成形木材1が膨潤して変形したり、木質繊維が腐食されたり、汚れが入り込んで汚損されたりすることを防止できる。また、表面に傷などを受けた場合でも、ワックス含浸部2が形成された範囲では、これらの効果を持続することができる。
したがって、圧縮成形木材1の強度やその表面の美観を経時にわたって持続できるので耐久性を向上することができる。
そして、表面が、全体的に樹脂やワックスなどのコーティング層で覆われないために、木材表面の触感、色彩、および質感など、自然素材である木材の風合いを保持することができるという利点がある。
図3は、本発明の実施形態に係る圧縮成形木材の製造方法の概略工程について説明するためのフローチャートである。図4(a)、(b)は、同じく荒削り工程、圧縮工程について説明するための工程説明図である。図5は、同じく固定工程の詳細について説明するためのフローチャートである。図6(a)は、同じく固定工程について説明するための工程説明図である。図6(b)は、同じく固定工程の第1の変形例について説明するための工程説明図である。
以下では、固定工程においてワックス5を含浸させる場合について説明する。
下型枠Aと上型枠Bとは、特に図示しないが、それぞれ金型温度を調整する温度調節機構を備え、上下方向に型締めして圧力を加えるプレス機構に保持されている。また、これらは、容器内が所定の圧力・温度を維持するとともに、高圧高温水蒸気の噴射、真空吸引が可能とされた圧力容器(不図示)に設置されている。
本工程では、金型温度を例えば180℃〜200℃に保ち、例えば180℃〜200℃、1〜1.6MPaの水蒸気を供給しながら圧縮する。荒削り木材10は、水蒸気を吸収するとともに加熱昇温されることで柔軟性を増すため容易に圧縮成形される。
図4(b)は、型締めされ、荒削り木材10が金型面A1、B1に沿う圧縮成形木材1の形状に成形されている様子を示す。
本工程の詳細について、図5、6を参照して説明する。
ステップS10では、圧縮工程での型締め状態を所定時間保持する。圧縮形状が永久固定されるまでの所定時間は、例えば木材の種類、水蒸気温度、圧力、金型温度により異なるが、本実施形態の範囲では、例えば、10分から1分程度である。木材に高温水蒸気を浸透させ続けることで、単に金型温度を高温に保つ場合に比べ、格段に型締め保持時間を短縮することができる。
ここで、真空吸引は、金型で囲まれる空間内を完全に真空にしなくてもよく、例えば、大気圧の半分くらいに減圧する程度でも、十分効率的に水分の排出や後述するワックス5の浸透を行うことができる。
以上で、固定工程(ステップS3)を終了する。
このようにして、本工程では、圧縮成形木材1に金型形状が転写・固定されるとともに、ワックス含浸部2が形成される。
また、圧縮成形木材1の表層部に含浸されたワックス5が金型面と接触するので、離型剤の作用効果を有するため、脱型が容易となるという利点がある。
例えば、溶融ワックスに浸漬するような場合は、表面にワックス層が残るので、木材表面を露出させるためには、含浸後に、例えば、研削、研磨工程などを行って余分なワックス層を除去する必要がある。また、その際の除去加工で、表面の平滑性が失われるので、つやを失った木質表面となるため、さらにつや出し工程なども設ける必要がある。
本方法によれば、このような工程を省略することができるので、木材表面を露出した光沢のある圧縮成形木材1を効率よく製造することができるものである。
また、ワックスを含浸させても、圧縮成形木材1が膨潤を起こして形状精度がばらつくといったことも防止することができる。
また、圧力容器内で各工程を行うので、汎用的な金型を用いて圧縮成形することができるという利点がある。
本変形例の圧縮成形木材の製造方法は、下型枠A、上型枠Bなどを圧力容器に入れないで行う方法である。以下、上記の実施形態と異なる点を中心に簡単に説明する。
本方法では、図6(b)に示すように、下型枠A、上型枠Bの型合せ面にOリング9のようなシール部材が設けられ、型締め時に、金型面A1、B1などで密閉される型内空間が気密、液密に保たれる構造とする。そして、そのような型内空間と外部の真空ポンプとを接続する真空引き管路20、高圧水蒸気を循環させる高圧水蒸気管路21が設けられている。下型枠A、上型枠Bの内部には、金型面A1、B1に開口する複数のワックス供給管7、8が設けられている。ワックス供給管7、8の先端は、弁機構22が設けられており、金型面に沿って閉止した状態と、ワックス5を供給するために開口する状態とを切り替えられるようになっている。
すなわち、圧縮工程では、予め高温高圧水蒸気を噴射処理した荒削り木材10を金型に移送して、圧縮を行い、型締めする。そして高圧水蒸気管路21を通して、型内空間に高温高圧水蒸気を循環させる。これにより、荒削り木材10の金型面への密着を確かなものとする。
そして、固定工程では、所定時間、上記の状態を保持して金型形状を完全に転写し、永久固定を図る。
所定時間経過後、高温高圧水蒸気の循環を停止して排水する。そして、真空引き管路10から水分および空気を真空吸引する。その後、ワックス供給管7、8によりワックス5を供給する。この場合、ワックス供給管7、8は、下型枠A、上型枠Bの内部に形成されているので、金型温度に加熱されており、溶融した状態でワックス5を供給できる。
所望のワックス含浸部2を形成した後、ワックス供給管7、8の弁機構を閉じてから、図5のステップS13とステップS14を行う。
本変形例は、ワックス5を固定工程で含浸させる代わりに、圧縮工程において含浸させるものである。
そのため、圧縮時に、荒削り木材10と金型面A1、B1との間にワックス5を供給しておく。金型温度は、ワックス5が溶融する温度であるから、ワックス5は、圧縮工程を通じて、荒削り木材10と金型面A1、B1との間で流動する状態にある。そのため、金型の圧縮力を受けて、木材の内部に浸透される。
そして、固定工程において、所定時間、型締め状態を保持して、金型形状を転写、固定する。その後、ワックス5の流動性が失われる温度まで冷却または放冷したのち、適宜乾燥させてから、脱型工程を行う。
2 ワックス含浸部
5 ワックス
6 注入管
10 荒削り木材
A1、B1 金型面
Claims (4)
- 木材を昇温して金型で圧縮する圧縮工程と、昇温状態で型締めを持続することにより木材に金型形状を転写・固定する固定工程と、前記金型から木材を脱型する脱型工程とを有する圧縮成形木材の製造方法であって、
前記圧縮工程および前記固定工程の少なくともいずれかにおいて、前記金型と前記木材表面との間に前記昇温状態の温度で溶融するワックスを供給して、前記木材の表層部に前記ワックスを浸透させ、前記ワックスの流動性が失われる温度になってから、前記脱型工程を行うことを特徴とする圧縮成形木材の製造方法。 - 前記金型と前記木材表面との間に前記ワックスを供給する際に、少なくとも前記金型で囲まれる空間内を真空吸引により負圧状態とすることを特徴とする請求項1に記載の圧縮成形木材の製造方法。
- 前記圧縮工程および前記固定工程を、真空吸引可能な圧力容器内に前記金型を配置して行うことを特徴とする請求項2に記載の圧縮成形木材の製造方法。
- 前記ワックスが、その母体材料の溶融温度より融点の高い添加物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧縮成形木材の製造方法。
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