JP3964622B2 - 修飾されたviii因子 - Google Patents
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Description
関連出題に対するクロスリファレンス
本出願は、1999年5月20日付の米国特許出願第09/315,179号からの優先権を請求するものである。
【0002】
連邦研究支援の承認
政府は、本発明に導く研究の資金を一部提供した国立衛生研究所助成金第4246215号に基づき発生する本発明に対する権利を有する者である。
【0003】
発明の背景
本発明は一般に、ヒト及び動物のVIII因子アミノ酸配列をもつか又はヒトVIII因子及び非VIII因子アミノ酸配列をもつハイブリッドVIII因子、及びその調製及び使用方法に関する。
【0004】
血液凝固は、病巣部位において損傷を受けた血管の切断された壁に血小板が付着した時に起こる。その後、酵素で調節される反応カスケードの中で、可溶性ファブリノーゲン分子が、酵素トロンビンにより、血栓内で血小板をまとめて保持するフィブリンの不溶性ストランドへと変換される。該カスケード内の各ステップにおいて、タンパク質前駆物質は、系列内の次のタンパク質前駆物質を分割するプロテアーゼへと変換される。大部分のステップで補因子が必要となる。
【0005】
VIII因子は、フォン・ウィルブランド因子に対し非共有的にかつ密に結合した血液中の不活性前駆物質として循環する。VIII因子は、トロンビン又はXa因子によってタンパク質分解的に活性化させられ、このトロンビン又はXa因子がそれをフォン・ウィルブランド因子から解離させカスケード内のそのプロ凝固性機能を活性化させる。その活性形態において、タンパク質VIIIa因子は、X因子活性化に向かってのIXa因子の触媒効率を数ケタ分増大させる補因子である。
【0006】
VIII因子での治療を受けていない、VIII因子又は対VIII因子抗体欠損症を患う人は、関節内の炎症性反応から早期死亡に至るまでの一定範囲の重大な症候をひき起こす可能性のある制御されていない内出血に苦しんでいる。米国で約10000人にのぼる重症血友病素因者は、充分な頻度及び濃度で投与された場合に血液の正常な凝固能力を回復させることになるヒトVIII因子の輸注による治療を受けることができる。事実、VIII因子は従来、血友病A患者から誘導された血漿中の血液凝固欠陥を矯正する正常な血漿内に存在する物質として定義づけされている。
【0007】
VIII因子の活性を阻害する抗体(「阻害物質」又は「阻害性抗体」)の発生は、血友病患者の管理における重大な合併症である。VIII因子の治療的輸注に応答して、血友病A患者のほぼ20%において自己抗体が発生している。それ以前には治療を受けておらずに阻害物質を発生させた患者では、通常1年未満の治療期間内に阻害物質が発生する。さらに、それまで正常なVIII因子レベルを有していた患者において、時としてVIII因子を不活性化させる自己抗体が発生する。阻害物質の力価が充分に低い場合、VIII因子用量を増加させることによって患者を管理することができる。しかしながら往々にして、阻害物質力価は非常に高くそのためVIII因子によってそれに対抗することはできない。代替的な1つの戦略は、第IX因子複合調製物[例えばKONYNE(登録商標)、Proplex(登録商標)]又は組換え型ヒト第VIIa因子を用いて正常な止血中にVIII因子に対する需要を迂回させることにある。さらに、ブタVIII因子はヒトVIII因子に比べ阻害物質との反応性が通常実質的に低いことから、部分的に精製されたブタVIII因子調製物[HYATE:C(登録商標)]が使用される。ヒトVIII因子に対し阻害性抗体を発生させた数多くの患者はブタVIII因子での治療を受けて成功しており、かかる治療を長期間にわたり寛容していた。しかしながら、単数又は複数回の輸注の後にブタVIII因子に対して阻害物質が発生しうることから、ブタVIII因子の投与も完全な解決法ではない。
【0008】
血友病Aの治療用として、さまざまな純度のヒト血漿由来のVIII因子のいくつかの調製物が市販されている。これらには、ウイルスに対して加熱処理又は洗剤処理されているものの有意なレベルで抗原性タンパク質を含有する、数多くのドナーのプールされた血液から誘導された部分精製済みVIII因子;抗原性不純物及びウイルス汚染のレベルがより低いモノクローナル抗体で精製されたVIII因子;及び現在その臨床試験が行なわれている組換え型ヒトVIII因子が含まれる。残念なことに、ヒトVIII因子は、生理的濃度及びpHで不安定であり、血中に極めて低濃度(血漿1mlあたり0.2μg)でしか存在せず、特異的血液凝固活性が低い。
【0009】
血友病素因者は、出血及びその結果発生する変形性血友病関節症を防止するべくVIII因子を毎日交換することを必要とする。しかしながら供給は不適切であり、分離及び精製上の問題、免疫原性及びエイズ及び肝炎感染性のリスクを除去する必要性に起因して、治療的使用には問題がある。組換え型ヒトVIII因子又は部分的に精製されたブタVIII因子の使用によっても、全ての問題が解決されるわけではない。
【0010】
一般に使用されている市販の血漿由来VIII因子に付随する問題は、より優れたVIII因子製品の開発に対する多大な関心を刺激してきた。従って、1分子あたりより多くの血液凝固活性単位を送達できるようにより高い効力をもつVIII因子分子; 選択されたpH及び生理的濃度で安定しているVIII因子分子; 阻害性抗体の産生をひき起こす可能性がより低いVIII因子分子; そしてヒトVIII因子に対する抗体をすでに獲得した患者における免疫検出を回避するVIII因子分子に対するニーズが存在している。
【0011】
従って、本発明の目的は、VIII因子が欠損しているか又はVIII因子に対する阻害物質を有する患者における血友病を矯正するVIII因子を提供することにある。
【0012】
本発明のさらなる目的は、血友病素因者の治療方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらにその他の目的は、選択されたpH及び生理学的濃度で安定しているVIII因子を提供することにある。
【0014】
本発明のさらにその他の目的は、ヒトVIII因子よりも大きい凝固活性をもつVIII因子を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、それに対し産生される抗体が比較的少ないVIII因子を提供することにある。
【0016】
発明の要約
本発明は、ヒト及びブタ又はその他の非ヒト哺乳動物(本書ではまとめて「動物」と呼ぶ)から誘導されたVIII因子アミノ酸配列をもつハイブリッドVIII因子を内含するか又は第2の実施形態においては、好ましくはVIII因子の抗原性及び/又は免疫原性領域内で置換されている、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列(非VIII因子アミノ酸配列)及びヒト又は動物又はその両方から誘導されたVIII因子アミノ酸配列を有するハイブリッド等価物のVIII因子を内含する、凝固活性をもつ分離され精製されたハイブリッドVIII因子分子及びその断片を提供する。当業者であれば、制限的な意味なく、ヒトVIII因子に比べて大きい凝固活性(「より優れた凝固活性」)をもつヒト/動物VIII因子;非免疫原性ヒト/等価物VIII因子;非抗原性ヒト/等価物又はヒト/動物VIII因子; より優れた凝固活性をもつ非免疫原性ヒト/動物又はヒト/等価物VIII因子; より優れた凝固活性をもつ非抗原性ヒト/動物又はヒト/動物/等価物VIII因子;非免疫原性、非抗原性ヒト/等価物又はヒト/等価物/動物VIII因子;及びより優れた凝固活性をもつ非免疫原性、非抗原性ヒト/動物/等価物VIII因子を含めた数多くのハイブリッドVIII因子構成体を調製できることを認識することだろう。
【0017】
ハイブリッドVIII因子分子は、ヒト及び動物のVIII因子のサブユニット又はドメインの分離及び組換え或いはヒト及び動物のVIII因子遺伝子の遺伝子工学処理により産生される。
【0018】
好ましい実施形態においては、ヒトVIII因子の対応する要素の代りに動物のVIII因子の要素を用い、結果としてハイブリッドヒト/動物VIII因子分子を得るために、組換え型DNA方法が使用される。第2の好ましい実施形態においては、ヒト又は動物のVIII因子内又はハイブリッドヒト/動物VIII因子内の単数又は複数のアミノ酸を、VIII因子との既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸、好ましくはVIII因子に対する自然に発生する阻害性抗体との免疫反応性がヒトVIII因子に比べて低いアミノ酸配列(「非抗原性アミノ酸配列」)及び/又はヒトVIII因子に比べてVIII因子に対する抗体の産生を惹起する可能性の低いアミノ酸配列(「非免疫原性アミノ酸配列」)で置換するために、組換え型DNA方法が使用される。免疫原性又は抗原性配列と置換するのに使用できるアミノ酸配列の一例は、アラニン残基の配列である。
【0019】
その他の実施形態においては、VIII因子のサブユニットは、ヒト又は動物の血漿から分離及び精製され、ハイブリッドヒト/動物VIII因子は、動物のH鎖サブユニットとヒトL鎖サブユニットの混合又はヒトH鎖サブユニットと動物のL鎖サブユニットの混合のいずれかにより産生され、かくしてヒトL鎖/動物H鎖及びヒトH鎖/動物L鎖のハイブリッド分子が産生される。これらのハイブリッド分子はイオン交換クロマトグラフィによって分離される。
【0020】
代替的には、VIII因子の単数又は複数のドメイン又は部分的ドメインが、ヒト又は動物の血漿から分離され精製され、1つの種からのドメイン又は部分的ドメインを第2の種のドメイン又は部分的ドメインと混合することにより、ハイブリッドヒト/動物VIII因子が産生される。ハイブリッド分子は、イオン交換クロマトグラフィにより分離できる。
【0021】
(a) 血漿由来のヒトVIII因子のサブユニットと血漿由来の動物VIII因子のサブユニットの分離とそれに続くヒト及び動物のサブユニットの混合による凝固活性の再構築、及びそれに続く、イオン交換クロマトグラフィによるハイブリッドヒト/動物VIII因子の分離;(b) 血漿由来のヒトVIII因子のドメイン又は部分的ドメインと血漿由来の動物VIII因子のドメイン又は部分的ドメインの分離、及びそれに続くヒト及び動物のドメインの混合による凝固活性の両構築、及びそれに続くイオン交換クロマトグラフィによるハイブリッドヒト/動物VIII因子の分離;(c) 組換え型DNA技術による動物のVIII因子のドメイン又は部分的ドメインの構築及び凝血活性をもつハイブリッドヒト/動物VIII因子を産生するための動物及びヒトのVIII因子のドメインの組換え型交換;(d) 1つの種のVIII因子の特異的アミノ酸残基をその他の種のVIII因子の対応するユニークアミノ酸残基と置き換えることによるハイブリッドヒト/動物VIII因子の創造;又は(e) VIII因子の特異的アミノ酸残基が部位特異的突然変異誘発によりVIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸残基と置き換えられている、ヒト又は動物のアミノ酸配列又はその両方をもつハイブリッド等価物VIII因子分子の創造、という段階を有する、高度に精製されたハイブリッドVIII因子を調製するための方法が記述されている。
【0022】
本書で記述されているブタVIII因子をコードする全DNA配列の決定により、初めて、適切な宿主細胞内でブタVIII因子をコードするDNAを発現させることによる全長ブタVIII因子の合成が可能となった。従って、精製された組換え型ブタVIII因子が、本発明の1つの態様である。ブタVIII因子の各ドメインをコードするDNAならびにその任意の特定された断片を同様に、独自でか又はヒトVIII因子をコードするDNAと組合わせた形で発現させて、本書に記述するハイブリッドヒト/ブタVIII因子を作ることができる。さらに、Bドメインの全て又は一部が欠失したブタfvIII(Bドメイン無しのブタfvIII)は、Bドメインの単数又は複数のコドンの欠失を有するブタfvIIIをコードするDNAの発現により、本発明の一部として利用可能となっている。
【0023】
ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子の一部の実施形態は、ヒトVIII因子のものよりも大きくかつブタVIII因子に等しいかそれより大きい特異的活性を有する。ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子の一部の実施形態は、ヒト又はブタのVIII因子に比べて、ヒト又はブタにおけるより低い免疫原性及び/又はVIII因子に対する阻害性抗体に等しいか又はより低い免疫反応性を有する。
【0024】
同様に提供されているのは、医薬組成物及びハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子を投与する段階を含むVIII因子欠損症患者の治療方法である。
【0025】
(発明の詳細な説明)
相反する規定又は指示の無いかぎり、本書で使用される「VIII因子」というのは、任意の動物、任意のハイブリッドVIII因子又は修飾されたVIII因子からのあらゆる機能的VIII因子タンパク質分子を意味し、「ハイブリッドVIII因子」又は「ハイブリッドタンパク質」というのは、ヒト、ブタ及び/又は非ヒト、非ブタ哺乳動物種由来のVIII因子アミノ酸配列を含むあらゆる機能的VIII因子タンパク質分子又はその断片を意味する。かかる組合せには、(1)ヒト/ブタ;(2)ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物例えばヒト/マウス;(3)ブタ/非ヒト、非ブタ哺乳動物、例えば、マウス/イヌといったハイブリッドVIII因子分子又は断片のいずれか又は全てが包含されるが、これらに制限されるわけではない。かかる組合せには同様に、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列が置換されているハイブリッド、ヒト、ブタ、又は非ヒト、非ブタ哺乳動物由来のVIII因子アミノ酸配列を含む、さらに以下で定義するようなハイブリッドVIII因子等価分子又はその断片も包含される。かかるハイブリッド組合せには同様に、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列が置換されている2つ以上の種又はヒト/ブタ/マウスといった2つ以上の種から誘導されたハイブリッドVIII因子アミノ配列も包含される。相反する指示のないかぎり、「ハイブリッドVIII因子」には、研究目的のプローブとして又は診断用試薬として、1つの実施例の中で以下に記述するように使用することのできる、ハイブリッドVIII因子の断片も包含される。
【0026】
本書で使用される「哺乳動物VIII因子」には、相反する規定のないかぎり、任意の非ヒト哺乳動物から誘導されたアミノ酸配列を伴うVIII因子が含まれる。本書で使用される[動物]というのは、ブタ及びその他の非ヒト哺乳動物を示す。
【0027】
本書で使用される「融合タンパク質」又は「融合VIII因子又はその断片」というのは、1つのタンパク質のためのコーディング配列が、例えば融合タンパク質をコードするハイブリッド遺伝子を産生するために異なる遺伝子からの第2のタンパク質のためのコーディング配列にその一部分を融合させることによって広範に改変されているようなハイブリッド遺伝子の産物のことである。本書で使用されているように、融合タンパク質は、本出願で記述されているハイブリッドVIII因子タンパク質のサブセットである。
【0028】
本書で使用されているような、「対応する」核酸又はアミノ酸又はそのいずれかの「対応する」配列とは、核酸又はアミノ酸番号は同一でないかもしれないものの、その他の種のVIII因子分子内の1つの部位としての機能及び/又は構造が同じである、VIII因子又はハイブリッドVIII因子分子又はその断片内の一部位に存在するもののことである。その他のVIII因子配列「に対応する」配列は、実質的にかかる配列に対応し、ストリンジェント条件下で指定された配列番号の配列に対してハイブリッド形成する。その他のVIII因子配列「に対応する」配列は同様に、VIII因子又は請求されているプロ凝固性ハイブリッドVIII因子又はその断片の発現を結果としてもたらし、遺伝子コードの冗長性は別にして、指定された配列番号にハイブリッド形成することになる配列も包含される。
【0029】
本書で使用するような「ユニーク」アミノ酸残基又は配列というのは、その他の種のVIII因子分子内の相同な残基又は配列とは異なる1つの種のVIII因子分子内のアミノ酸配列又は残基のことである。
【0030】
本書で使用する「特異的活性」というのは、ヒトVIII因子欠損性血漿の凝固欠陥を矯正することになる活性のことである。特異的活性は、ヒトVIII因子欠損性血漿の血液凝固時間を正常なヒトの血漿のものと比較する標準的検定において、合計VIII因子タンパク質1ミリグラムあたりの血液凝固活性の単位で測定される。VIII因子活性の1単位は、正常なヒトの血漿1ミリリットル中に存在する活性である。検定において、血塊形成のための時間が短かくなればなるほど、検定対象のVIII因子の活性は大きくなる。ハイブリッドヒト/ブタVIII因子は、ヒトVIII因子検定において、凝固活性を有する。この活性は、その他のハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子分子又はその断片のものと同様、血漿由来の又は組換え型のいずれかのヒトVIII因子のものよりも小さくても、同等であっても又は大きくてもよい。
【0031】
ヒトVIII因子のcDNAヌクレオチド及び予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び2に示されている。VIII因子は、「ドメイン」配列NH2−A1−A2−B−A3−C1−C2−COOHを定義する内部配列相同性をもつ約300kDaの1本鎖タンパク質として合成される。VIII因子分子において、本書で使用する「ドメイン」は、内部アミノ酸配列同一性及びトロンビンによるタンパク質分解性分割部位によって定義されるアミノ酸の連続的配列のことである。相反する規定のないかぎり、VIII因子ドメインは、ヒトアミノ酸配列(配列番号2)と整列させたとき以下のアミノ酸残基を包含する: A1、残基Ala1−Arg372;A2、残基Ser373−Arg740;B、残基Ser741−Arg1648;A3、残基Ser1690−Ile2032;C1、残基Arg2033−Asn2172;C2、残基Ser2173−Tyr2332。A3−C1−C2配列には、残基Ser1690−Tyr2332が含まれる。残りの配列、残基Glu1649−Arg1689は通常、VIII因子L鎖活性化ペプチドと呼ばれる。VIII因子は、フォン・ウィルブランド因子からそれを解離して、プロ凝固性機能をもつVIIIa因子を形成するトロンビン又はXa因子によって、タンパク質分解により活性化される。VIIIa因子の生物学的機能は、X因子に向かうIXa因子の触媒効率を数ケタ分増大させることにある。トロンビンで活性化されるVIIIa因子は、血小板又は単球の表面上でIXa因子及びX因子と複合体を形成する160kDaのA1/A2/A3−C1−C2ヘテロ三量体である。本書で使用されている「部分的ドメイン」というのは、1つのドメインの一部を成す連続するアミノ酸配列である。
【0032】
本書で使用されるヒト又は動物のVIII因子の「サブユニット」は、タンパク質のH鎖及びL鎖である。VIII因子のH鎖は、3つのドメイン、A1、A2及びBを含む。VIII因子のL鎖も、3つのドメイン、A3、C1及びC2を含む。
【0033】
ハイブリッドVIII因子又はその断片は、(1)対応するヒトサブユニット又は動物サブユニットに対する分離された血漿由来の動物のサブユニット又はヒトサブユニット(H鎖又はL鎖)の置換によって;(2)対応する動物のドメイン又はヒトのドメインに対するヒトのドメイン又は動物のドメイン(A1、A2、A3、B、C1及びC2)の置換によって; (3)動物のドメイン又はヒトのドメインの一部分に対するヒトのドメイン又は動物のドメインの一部分の置換によって; (4)対応する動物又はヒトのアミノ酸(単複)に対する単数又は複数のユニークなヒト又は動物のアミノ酸を含む少なくとその他の特異的配列の置換によって; 又は、(5)ヒト、動物又はハイブリッドのVIII因子又はその断片の中の単数又は複数の特異的アミノ酸残基を含む少なくとその他の配列に対する、VIII因子と既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列の置換によって、作ることができる。本書で使用されている、「Bドメインの無い」ハイブリッドVIII因子、ハイブリッド等価物のVIII因子又はそのいずれかの断片というのは、Bドメイン又はその一部が欠如している本書に記述されたハイブリッドVIII因子構成体のいずれか1つのことである。
【0034】
本書で使用される「エピトープ」、「抗原部位」及び「抗原決定基」という語は、同義語として用いられ、1つの抗体によって特異的に認識されるヒト、動物、ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片の一部分として定義づけされる。これは、任意の数のアミノ酸残基で構成され得、タンパク質の一次、二次又は三次構造により左右され得る。本開示に従うと、少なくとその他のエピトープを包含するハイブリッドVIII因子、ハイブリッドVIII因子等価物又はそのいずれかの断片を、以下で記述する診断検定における試薬として使用することができる。いくつかの実施形態においては、ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片は、交叉反応性をもたないか又は、ヒト又はブタのVIII因子に比べて全ての天然に発生する阻害性VIII因子抗体との交叉反応性が低いものである。
【0035】
本書で用いられる「免疫原性部位」という語は、本書で記述する例えばELISAといった免疫決定法又はベセスダ検定といったような日常的プロトコルによって測定されるようなヒト又は動物におけるVIII因子、ハイブリッド、ハイブリッド等価物又は断片に対する抗体の産生を特異的に惹起するヒト又は動物のVIII因子、ハイブリッド又はハイブリッドの等価物のVIII因子の領域として定義づけされる。それは、任意のアミノ酸残基で構成され得、タンパク質の一次、二次又は三次構造に左右され得る。いくつかの実施形態においては、ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片は、非免疫原性であるか又は、ヒト又はブタのVIII因子に比べ動物又はヒトにおける免疫原性が低い。
【0036】
本書で使用されている「ハイブリッドVIII因子等価物分子又はその断片」又は「ハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片」というのは、ヒト、動物又はハイブリッドのVIII因子又はその断片内の単数又は複数の特異的アミノ酸残基を包含する少なくとその他の配列に対し置換されたヒト又は動物のVIII因子配列と既知の同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基を包含する少なくとその他の配列を含む活性VIII因子又はハイブリッドのVIII因子分子又はその断片のことである。ヒト又は動物のVIII因子配列との既知の同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基の配列は同様に本書では「非VIII因子アミノ酸配列」と呼ばれている。好ましい実施形態においては、VIII因子配列に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)は、アラニン残基である。その他の好ましい実施形態においては、VIII因子配列に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)で置換される特異的VIII因子配列には、結果として得られるハイブリッドVIII因子等価物分子又はその断片のVIII因子阻害性抗体との免疫反応性が比較的低いか全く無いような形で、天然のVIII因子阻害性抗体との免疫反応性のある抗原部位が含まれる。さらにその他の好ましい実施形態においては、VIII因子配列に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)で置換される特異的VIII因子配列には、結果として得られるハイブリッドVIII因子等価物分子又はその断片の免疫原性が比較的低くなるような形で、動物又はヒトにおけるVIII因子阻害性抗体の形成を惹起する免疫原性部位が含まれる。
【0037】
本書で使用される「VIII因子欠損症」には、欠陥VIII因子の産生、VIII因子の不適切な産生又は無産生、又は阻害物質によるVIII因子の部分的又は完全な阻害によってひき起こされる血液凝固活性の欠損症が包含される。血友病Aは、X連鎖遺伝子の欠陥及びそれがコードするVIII因子タンパク質の不在又は欠損の結果として起こる一つのタイプのVIII因子欠損症である。
【0038】
本書で使用されている「診断検定」には、医学的療法の選択を助けるためテスト標本内に存在する特定の抗体の量を検出しかつ/又は数量化するために、抗原−抗体相互作用を一定のやり方で利用する検定が含まれる。当業者にとっては既知のこのような検定が数多く存在している。しかしながら本書で使用されているように、ハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子DNA又はその断片及びそこから発現されたタンパク質は、全体的に又は部分的に、別途既知の検定において対応する試薬に代って置換させることができ、かくして、修正された検定をVIII因子に対する抗体の検定及び/又は数量化に使用することが可能である。ヒト又は動物のVIII因子又はハイブリッドのヒト/動物/VIII因子に対する抗体の検出のための既知の検定の修正を可能にするのは、これらの試薬、ハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子 DNA又はその断片又はそこから発現されたタンパク質の使用である。かかる検定には、ELISA、免疫拡散検定及び免疫ブロット法が含まれるが、これらに制限されるわけではない。これらの検定法のいずれかを実施するのに適した方法は、当業者にとっては既知のものである。本書で使用されている、タンパク質の少なくとその他のエピトープを内含するハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子又はその断片は、診断試薬として使用することができる。ハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子又はその断片を使用できるその他の検定の例としては、ベセズダ検定及び抗凝固検定が含まれる。
【0039】
ヒト又は動物のVIII因子又はヒト/動物ハイブリッドVIII因子又は修飾されたVIII因子をコードするDNAの「発現産物」は、制限的な意味なくグリコシル化、タンパク質分解分割などを含む基準となるDNAによりコードされたタンパク質の翻訳前又は後の修飾のこのような特長を包含する、適切な宿主細胞内での基準DNAの発現から得られる産物である。当該技術分野においては、かかる修飾が発生可能であり、宿主細胞型及びその他の要因に応じて幾分か異なるものであり得、かつ、プロ凝固性活性を保持しながら、産物の分子のイソ型を結果としてもたらし得るということが知られている。例えば、本書に参考として包含されているLind, P.et al., Eur. J. Biochem,232;1927(1995)を参照のこと。
【0040】
「免疫反応性減少性」アミノ酸は、ここでは、抗体−抗原対の結合エネルギーに対する貢献度が全くないわけではないが僅かであるようなアミノ酸として定義される。免疫反応性減少性であるものとして知られているいくつかのアミノ酸の制限的意味のない例には、アラニン、メチオニン、ロイシン、セリン及びグリシンが包含されている。一定の与えられた抗原−抗体対内の一定の与えられたアミノ酸置換によって達成可能な免疫反応性の減少は、同様に、タンパク質の立体配座、エピトープアクセス可能性などに対し置換が及ぼす可能性のあるいずれかの効果によって左右されるということがわかるだろう。
【0041】
方法の一般的記述
米国特許出願番号第07/864,004号は、ヒト又はブタのVIII因子分子の要素がその他の種のVIII因子分子の対応する要素に置換させられている、凝固活性をもつハイブリッドのヒト/ブタVIII因子分子の発見について記述していた。米国特許出願第08/212,133号及びPCT/US94/13200号は、1つの種のVIII因子分子の要素がその他の種のVIII因子分子の対応する要素に置換させられている、プロ凝固性ハイブリッドヒト/動物及びハイブリッド等価物VIII因子分子について記述している。
【0042】
本発明は、精製度の高いヒトVIII因子と比べて標準的クローニング検定においてより大きい凝固活性をもち;かつ/又はヒト又はブタのVIII因子に比べヒト又はブタのVIII因子に対する阻害性抗体に対する免疫反応性が低く;かつ/又はヒト又はブタのVIII因子に比べてヒト又は動物における免疫原性が低く;かつ/又はその他の治療上有用な特性をもつものを含めた、ハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子分子、修飾済みVIII因子分子及びその断片及びかかるハイブリッド及び修飾済みVIII因子分子をコードする核酸配列を提供する。これらのハイブリッド及び/又は修飾済みのVIII因子分子は、以下のように構築することができる。
【0043】
本書では、少なくとも5つのタイプの活性ハイブリッドヒト/ブタ又はハイブリッド等価物のVIII因子分子又はその断片、これらのハイブリッドVIII因子分子をコードする核酸配列及びそれらを調製する方法が開示されている:これはすなわち、(1)対応するブタ又はヒトサブユニットに対しヒト又はブタ置換(すなわちH鎖又はL鎖)を置換することにより;(2)対応するブタ又はヒトドメイン(単複)に対し単数又は複数のヒト又はブタドメイン(すなわちA1、A2、A3、B、C1 及びC2)を置換することにより、;(3)単数又は複数のブタ又はヒトドメインの対応する部分に対して単数又は複数のヒト又はブタドメインの連続的部分を置換することにより;(4)対応するブタ又はヒト配列に対しヒト又はブタのVIII因子内の単数又は複数のユニークなアミノ酸配列を含む少なくとも1個の特異的配列を置換することにより、;及び(5)ヒト、ブタ又はハイブリッドのヒト/ブタVIII因子内の単数又は複数のアミノ酸の少なくとも1個の特異的配列に対して、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基(「非VIII因子アミノ酸配列」)を包含する少なくとも1個の配列を置換することにより得られるものである。修飾済みVIII因子分子は、特定された位置に単数又は複数のアミノ酸置換を有する。
【0044】
同じ方法により、少なくとも5つのタイプの活性ハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物又はハイブリッド等価物VIII因子分子又はその断片及びそれらをコードする核酸配列も調製可能である: すなわち、(1)対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトのサブユニットに対してヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物サブユニット(すなわちH鎖又はL鎖)を置換することにより;(2)対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトのドメイン(単複)に対して、単数又は複数のヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物のドメイン(すなわちA1、A2、A3、B、C1 及びC2)を置換することによって、;(3)単数又は複数の非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトのドメインの対応する部分に対して単数又は複数のヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物のドメインの連続する部分を置換することにより、;(4)対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトの配列に対してヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子内の単数又は複数のユニークなアミノ酸残基を包含する少なくとも1個の特異的配列を置換することにより;及び(5)ヒト、非ヒト、非ブタ哺乳動物又はハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVIII因子の中の単数又は複数のアミノ酸の少なくとも1個の特異的配列に対して、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基(「非VIII因子アミノ酸配列」)を包含する少なくとも1個の配列を置換することにより得られるものである。個々のアミノ酸置換は、コーディングDNAの対応するセグメントの部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。
【0045】
さらに、当業者であれば、ブタ/マウスといった2種以上の非ヒト哺乳動物からのVIII因子アミノ酸配列を含みさらには非VIII因子アミノ酸配列を含む前出の2つのパラグラフの中のタイプ(1)〜(5)に対応する、少なくとも5つのタイプの活性ハイブリッドVIII因子分子又はその断片を調製するために、同じ方法を使用できるということを容易に認識することだろう。
【0046】
以上にグループ(1)〜(3)の下で列挙したハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子タンパク質又はその断片は、血漿由来のVIII因子のサブユニット、ドメイン又はドメインの連続的部分を分離しその後ひき続き再構築及び精製を行なうことによって作られる。以上の(3)〜(5)のグループの下で記述されたハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子タンパク質又はその断片は、組換え型DNA方法によって作られる。ハイブリッド分子は、以下でさらに詳細に記述されているように、さまざまな領域の起源に応じて、動物配列よりも多い又は少ない百分率でヒト配列を含有することができる。
【0047】
現在の情報では、Bドメインがいかなる阻害性エピトープももたず、VIII因子機能に対する既知の効果を全くもたないことから、一部の実施形態では、Bドメインは、本書で記述された方法のいずれかにより調製された活性のハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子分子又はその断片(「B(−)因子VIII」)内で欠失している。
【0048】
実施例4では、ブタH鎖及びヒトL鎖を含みかつ上述の第1のタイプのハイブリッドに対応するハイブリッドヒト/ブタVIII因子が、ヒトVIII因子に比べ標準的クローニング検定中でより大きい特異的凝固活性を有することが示されている。凝固活性をもつハイブリッドヒト/動物又は等価物VIII因子は、その活性がヒトVIII因子のものよりも高い、等しい又は低いのいずれであるかにかかわらず、阻害物質をもつ患者の治療において有用であり得るが、これは、これらの阻害物質がヒト又はブタのいずれかのVIII因子との反応性よりも低い反応性しかハイブリッドヒト/動物又は等価物のVIII因子に対してもち得ないからである。
【0049】
再構築による分離されたヒト及び動物のVIII因子サブユニットからのハイブリッドVIII因子分子の調製
本発明は、サブユニット置換を伴うハイブリッドヒト/動物VIII因子分子又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製し分離する方法、及びそのプロ凝固活性を特徴づけするための方法を提供する。Fay, P. J. et al.(1990)J. Biol. Chem.265:6197;及びLollar. J.S. et al.(1988)J. Biol. Chem.263:10451、により報告された手順から修正された1つの方法には、ヒト及び動物のVIII因子のサブユニット(H鎖及びL鎖)の分離とそれに続くヒトH鎖と動物L鎖の組換え又はヒトL鎖と動物H鎖の組換えが関与している。
【0050】
ヒト及び動物の両方の個々のサブユニットの単離には、L鎖/H鎖2量体の解離が関与する。これは、例えばエチレンジアミノ四酢酸(EDTA)でのカルシウムのキレート化とそれに続くmonoS(商標)HPLC(Pharmacia-LKB,Piscataway, NJ)によって達成される。ハイブリッドのヒト/動物VIII因子分子は、カルシウムの存在下で単離済みサブユニットから再構築される。Lollar, J.S. et al.(1988)Blood 71:137−143によって記述されているようなブタのVIII因子の単離手順により、mono S(商標)HPLCにより未反応のH鎖から、ハイブリッドヒトL鎖/動物H鎖又は動物L鎖/ヒトH鎖のVIII因子が単離される。
【0051】
1つの実施形態において活性ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製するために使用され、以下の例で詳述されている、これらの方法は、ヒトVIII因子のプロ凝固活性の6倍以上のプロ凝固活性をもつハイブリッドヒトL鎖/ブタH鎖分子を結果としてもたらす。
【0052】
同じ方法により、その他のハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVIII因子分子を調製し、単離しかつ活性について特徴づけすることができる。当業者であれば、これらの方法が同様に、その他の種のH鎖又はL鎖と組合わされた1つの種のL鎖又はH鎖を含む、ブタ/マウスといったようなハイブリッド動物/動物/VIII因子を調製し、単離し活性について特徴づけするためにも使用可能であることを容易に認識することだろう。
【0053】
再構築による分離されたヒト及び動物のVIII因子ドメインからのハイブリッドVIII因子分子の調製
本発明は、ドメイン置換を伴うハイブリッドヒト/動物VIII因子分子又はその断片、それらをコードする核酸配列、それらを調製し単離する方法、及びそのプロ凝固活性を特徴づけするための方法を提供する。1つの方法には、ヒトのVIII因子の単数又は複数のドメイン及び動物のVIII因子の単数又は複数のドメインを単離することそしてそれに続いて、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子についてLollar. P et al.(1992年11月25日)J. Biol. Chem.267(33):23652−23657によって記述されているように凝固活性をもつハイブリッドヒト/動物VIII因子を形成するべくヒト及び動物のドメインを組換えすることが関与している。
【0054】
特定的に提供されているのは、ドメイン置換されたハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVIII因子を構築できる方法が実施形態により例示されている、ヒトA2ドメインに対するブタA2ドメインの置換を伴うハイブリッドヒト/ブタVIII因子である。血漿由来の非ヒト、非ブタ哺乳動物及びヒトのA1/A3−C1−C2ニ量体が、VIII因子からのA2ドメインの解離によって単離される。これは、例えばNaOHの存在下で達成され、その後、混合物は希釈され、二量体はmonoS(商標)HPLC(Pharmacia−LKB,Piscataway, NJ)を用いて溶出される。A2ドメインは、monoS(商標)HPLCにおいて二次成分としてVIII因子から単離される。ハイブリッドヒト/動物VIII因子分子は、1つの種のA2ドメインとその他の種のA1/A3−C1−C2ニ量体を等量ずつ混合することにより再構築される。
【0055】
単数又は複数のドメイン置換を伴うハイブリッドのヒト/動物VIII因子又はその断片は、Lollar, J.S. et al.(1988)Blood 71:137−143によって記述されているように、ブタVIII因子の単離手順により、mono S(商標)HPLCによって未反応のニ量体及びA2の混合物から単離される。そのうちの任意の単数又は複数のものをその他の種のVIII因子内の対応するドメインに置換させることのできる、1つの種のVIII因子のA1、A3、C1、C2及びBドメインを調製し単離するために、日常的方法を使用することも可能である。当業者であれば、ブタ/マウスといったようなドメイン置換されたハイブリッドの動物/動物VIII因子を調製し単離し活性について特徴づけするためにこれらの方法を使用することもできるということを直ちに認識することだろう。
【0056】
以下の例で詳述するこれらの方法は、プロ凝固活性をもつハイブリッドVIII因子を結果としてもたらす。
【0057】
ヒト、動物及びハイブリッドのVIII因子サブユニット、ドメイン又はドメインの一部分をコードする配列の組換え工学処理によるハイブリッドVIII因子分子の調製
サブユニット、ドメイン、ドメインの連続的部分の置換
本発明は、サブユニット、ドメイン及びアミノ酸配列の置換を伴う活性の、組換え型ハイブリッドヒト/動物及びハイブリッド等価物VIII因子分子及びその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、これらを調製し単離する方法、そしてその凝固、免疫反応性及び免疫原性特性を特徴づけする方法を提供している。
【0058】
ヒトVIII因子遺伝子は、Toole, J.J. et al.(1984)Nature 312:342−347(Genetics Institute) ;Gitschier, J. et al.(1984)Nature 312:326−330(Genentech):Wood, W.I.et al.(1984)Nature 312:330−337(Genentech);Vehar, G.A. et al.(1984)Nature 312:337−342(Genentech);WO 87/04187;WO 88/08035;WO 88/03558;米国特許 第4,757,006号により報告されているとおり、哺乳動物の細胞において単離され発現され、cDNAからアミノ酸配列が演繹された。Capon et al.に対する米国特許第4,965,199号は、哺乳動物の宿主細胞内でVIII因子を産生するための組換え型DNA方法及びヒトVIII因子の精製について開示している。CHO(チャイニーズハムスタ卵巣)細胞及びBHKC(ベビーハムスター腎細胞)上でのヒトVIII因子の発現が報告されてきた。Bドメインの一部又は全部を欠失させるためにヒトVIII因子が修飾され(米国特許第4,868,112号)、ヒト第V因子BドメインでのヒトVIII因子 Bドメインの置換が試みられてきた(米国特許第5,004,803号)。ヒトVIII因子をコードするcDNA配列及び予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び2に示されている。配列番号1では、コーディング配列はヌクレオチド位置208で始まり、トリプレットGCCは、配列番号2で示されているようにアミノ酸番号1(Ala)に対するコドンである。
【0059】
ブタVIII因子が血漿から単離され精製された〔Fass, D.N. et al.(1982)Blood 59:594〕。セルロプラスミン及び凝固因子Vに対する相同性をもち大幅に不適切に位置特定されたN末端L鎖配列の一部分に対応するブタVIII因子の部分的アミノ酸配列が、Church et al.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci.USA 81:6934により記述された。Toole, J.J. et al.(1984)Nature 312:342−347は、ブタVIII因子の4つのアミノ酸断片のN末端の部分的配列決定について記述したが、VIII因子分子内でのその位置に関して断片を特徴付けることはしなかった。ブタVIII因子のBドメイン及びA2ドメインの一部分のアミノ酸配列は、Toole, J.J. et al.(1986)Proc. Natl. Acad. Sci,USA 83:5939−5942によって報告された。ブタVIII因子の完全なA2ドメインをコードするcDNA配列及び予測されたアミノ酸配列、及び全てのドメイン、全てのサブユニット及び特異的アミノ酸配列の置換をもつハイブリッドヒト/ブタVIII因子については、1994年11月5日に米国特許第5,364,771号として発行されたJohn S. Lollar 及び Marschall S. Runge による1992年4月7日付けの「ハイブリッドヒト/ブタVIII因子」という表題の米国特許出願第07/864、004号の中及びWO93/20093の中で開示された。配列番号1で示されたような成熟ヒトVIII因子内の残基373−740に対し配列同一性をもつブタVIII因子のA2ドメインをコードするcDNA配列及び予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3及び4に示されている。より最近では、対応するヒトドメインに対し置換されたブタA1及び/又はA2ドメインを伴うキメラVIII因子及びブタVIII因子のA1及びA2ドメインのヌクレオチド及び対応するアミノ酸配列が、WO94/11503号で報告された。完全なA1ドメイン、活性化ペプチド、A3、C1及びC2ドメインならびにコードされたアミノ酸配列を包含する、ブタのVIII因子をコードする全ヌクレオチド配列は、1999年1月12日付で発行された米国特許第5,859,204号内で開示されている。
【0060】
ブタ及びヒトのVIII因子は両方共、2サブユニットのタンパク質として血漿から単離される。H鎖及びL鎖として知られているサブユニットは、カルシウム又はその他の2価の金属イオンを必要とする非共有結合によりまとめて保持される。VIII因子のH鎖は共有結合でリンクされた3つのドメイン、A1、A2及びBを含有する。VIII因子のL鎖は同様に、A3、C1及びC2と呼ばれる3つのドメインをも含有する。Bドメインは、既知の生物学的機能を全くもたず、タンパク質分解によってか又は組換え型DNA技術の方法により、VIII因子のいずれの測定可能なパラメータにも有意な改変無く除去又は部分除去され得る。ヒト組換え型VIII因子は、哺乳動物の細胞内で発現されないかぎりグリコシル化されないものの、血漿由来のVIII因子と類似の構造及び機能をもつ。
【0061】
ヒト及びブタの活性化されたVIII因子(「VIIIa因子」)は、A1とA2の両方ドメイン間のH鎖の分割に起因して3つのサブユニットを有する。この構造は、A1/A2/A3−C1−C2と呼ばれる。ヒトVIII因子は、ブタのVIIIA因子を安定化させる条件下で安定していないが、これはおそらく、ヒトのVIIIA因子のA2サブユニットの会合がより弱いものであるためと思われる。ヒト及びブタのVIIIA因子のA2サブユニットの分離は、VIIIA因子分子内の活性の喪失と結びつけられる。Yakhyaev, A. et al.(1997)Blood 90:Suppl.1、アブストラクト#126は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質によるA2ドメインの結合を報告し、かかる結合により媒介されるA2の細胞取込みが、VIII因子活性をダウンレギュレートするように作用することを示唆している。
【0062】
代表的態様として特定的に提供されているのは、置換されたA2ドメインをもつ活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子、それをコードする核酸配列及び調製、単離及びその活性の特徴づけ方法である。このハイブリッド構成体の調製方法は同様に、サブユニット、ドメインの連続的部分又はA2以外のドメインの置換をもつ活性の組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子又はその断片を調製するために使用することもできる。当業者であれば、これらの方法が同様に、サブユニット、ドメイン又はドメインの連続的部分が置換されているその他の組換え型ハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物又は動物/動物のハイブリッドVIII因子分子又はその断片をいかにして調製できるのかをも実証しているということを認識することだろう。
【0063】
関連するVIII因子配列をコードするヒトcDNA〔Biogen, Inc.〕又はブタcDNA(本書に記述されているもの)から出発して、組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子が調製される。好ましい実施形態においては、cDNAによりコードされたVIII因子は、ドメイン A1−A2−A3−C1−C2を包含し、全Bドメインは欠如しており、Wood et al.(1984)Nature 312:330−337の番号づけシステムに従って一本鎖ヒトVIII因子のアミノ酸残基1−740及び1649〜2332(配列番号2参照)に対応する。
【0064】
ブタ又はヒトのVIII因子cDNAの個々のサブユニット、ドメイン又は連続的部分は、確立された突然変異誘発技術によってクローニングされかつ対応するヒト又はブタのサブユニット、ドメイン又はドメインの一部分に代って置換することができ、又そうされてきた。例えば、Lubin, IM. et al.(1994)J.Biol. Chem. 269(12):8639−8641は、適切な制限部位を用いてヒトドメインに対しブタA2ドメインを置換するための技術を記述している。その他の種のVIII因子cDNAに対して1つの種のVIII因子cDNAのいずれかの任意の領域を置換するためのその他の方法としては、Horton, R.M. et al.(1993)Merh. Enzymol 217:270−279によって記述されているような、オーバーラップ拡張によるスプライシング(「SOE」)が含まれる。
【0065】
サブユニット、ドメイン又はドメインの一部分をコードするハイブリッドVIII因子cDNA又は全ハイブリッドcDNA分子は、Selden, R.F.「哺乳動物細胞内へのDNAの導入」 Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubet et al., eds(1991)中により記述されているように、確立された技術によって培養細胞内での活性ハイブリッド ヒト/ブタ VIII因子タンパク質分子の究極の発現のため発現ベクター内にクローニングされる。
【0066】
好ましい実施形態においては、ブタの配列がA2ドメイン又は部分ドメインといったようなドメイン又は部分ドメインをコードしているVIII因子をコードするハイブリッドのヒト/ブタcDNAが、ReNeoといったような哺乳動物発現ベクター内に挿入されてハイブリッドのVIII因子構成体を形成する。ハイブリッドVIII因子の予備的特徴づけは、ReNeo 哺乳動物発現ベクター内にハイブリッドcDNAを挿入しCOS−7細胞内でハイブリッドタンパク質を過渡的に発現することによって達成される。次に活性ハイブリッドタンパク質が発現されているか否かの決定を行なうことができる。発現ベクター構成体はさらに、リポゾーム媒介トランスフェクションといったような当該技術分野においては日常的作業である方法を用いてベビーハムスターの腎臓細胞といったような培養中の細胞を安定した形でトランスフェクションするために使用される(Lipofectin(商標),Life Technologier, Inc.)。組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質の発現は、配列決定、ノーザン及びウェスタンブロット法又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により確認できる。タンパク質を安定した形で発現するトランスフェクションを受けた細胞が中に維持される培地内のハイブリッドVIII因子タンパク質は、適切な緩衝液中で沈降、ペレット化、洗浄及び再懸濁することができ、組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質は、例えばモノクローナル抗−A2−Sepharose(商標)を用いてイムノアフィニティクロマトグラフィを含む標準的技術により精製し得る。
【0067】
さらなる実施形態においては、サブユニット、ドメイン又はアミノ酸配列置換を含むハイブリッドVIII因子は、例えば安定性、分泌、欠失、単離などを増強するタンパク質又はペプチドをコードする配列がVIII因子コード配列に隣接した場所に挿入されている組換え型分子から融合タンパク質として発現されている。融合タンパク質の調製において例えばプロモータ、作働遺伝子及び調節遺伝子を含む同種又は異種の発現制御配列を使用するための確立されたプロトコルが、すでに知られており、当該技術分野において日常的に用いられている。 Current Protocol in Molecular Biology(分子生物学における現行プロトコル)(Ausubel. F.M., et al., eds),Wiley Interscience,N.Y. を参照のこと。発現は、Bドメインの一部分を包含することにより増強される。特に、「SQ」と呼ばれるBドメインの部分を包含することで〔Lind, P. et al.(1995)上述〕、有利な発現がもたらされることになる。「SQ」構成体には、BドメインN末端の5つのアミノ酸とBドメインC末端の9つのアミノ酸を除き、ヒトBドメインの全てが欠如している。
【0068】
精製されたハイブリッドVIII因子又はその断片は、精製された組換え型ヒトVIII因子を標準として用いて、例えば無血漿VIII因子検定、一段階式血液凝固検定及び酵素結合免疫吸着検定法を含む標準的検定により、免疫反応性及び凝固活性について検定し得る。
【0069】
プラスミド及び真核性ウイルスベクターの両方を包含するその他のベクターも、有能な実務家の好み及び判断に応じて、真核細胞内で組換え型遺伝子構成体を発現するのに使用することができる(例えば、Sambrook et al., 第16章参照)。細胞、酵母及び昆虫細胞系を包含するその他のベクター及び発現系を使用することもできるが、グリコシル化の差異又は欠如のため好まれない。
【0070】
組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質を、培養及び組換え型哺乳動物タンパク質発現のために一般に使用されるさまざまな細胞の中で発現させることが可能である。特に、数多くのげっ歯類細胞系統が、大型タンパク質の発現のための特に有用な宿主であることが発見されている。American Type Culture Collection(米国標準培養収集機関)Rockville, MD.から入手可能な好ましい細胞系統としては、ベビーハムスター腎細胞、及び日常的手順及び培地を用いて培養されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がある。
【0071】
サブユニット、ドメイン又はアミノ酸配列置換をもつハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製するために利用されるのと同じ方法を、その他の組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質及びその断片及び、ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物又は動物/動物といったようなこれらのハイブリッドをコードする核酸配列を調製するために使用することができる。既知のヒトDNA配列由来のプライマから始めて、マウスのVIII因子cDNA及びブタVIII因子cDNAの一部がクローニングされた。ハイブリッドヒト/動物又は動物/動物VIII因子分子を調製する上で使用するためのその他の種のVIII因子配列は、出発点として既知のヒト及びブタDNA配列を用いて得ることができる。利用可能なその他の技術には、動物の組織DNAを用いたPCR増幅、及びVIII因子配列をクローニングして取り出すための動物由来のcDNAライブラリの使用、が含まれる。
【0072】
1つの代表的態様として、ハイブリッドヒト/マウスVIII因子タンパク質を以下のように作ることができる。ヒトVIII因子遺伝子のマウス相同体に対応するDNAクローンが、単離され、配列決定され、マウス、ヒトのVIII因子分子及びブタのVIII因子分子の一部の予測されたアミノ酸配列の比較を包含するElder. G., et al(1993)Genomics 16(2);374−379の中で記述されている通りに、マウスVIII因子タンパク質のアミノ酸配列が予測された。マウスVIII因子cDNA配列及び予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5及び配列番号8の中に示されている。好ましい実施形態においては、Sarkar, G et al.(1989)Science 244:331−334内に記述された転写配列決定(transcript sequencing)(RAWTS)方法でのRNA増幅を使用することができる。簡単に言うと、その段階としては、(1)オリゴ(dT)又はmRNA特異的オリゴヌクレオチドプライマでのcDNA合成;(2)増幅されるべき領域と相補的な配列に付着されたファージプロモータを1つの又は両方のオリゴヌクレオチドが含んでいるポリメラーゼ連鎖反応(PCR);(3)ファージプロモータでの転写;及び(4)ネストされた(内部)オリゴヌクレオチドでプライミングされる転写体の逆転写酵素媒介ジデオキシ配列決定、がある。配列情報の明示に加えて、この方法は、適切なPCRプライマ内に翻訳開始シグナルを取込むことによりin vitro翻訳産物を生成することができ、その他の種からの新規mRNA配列情報を得るために使用可能である。
【0073】
アミノ酸(単複)の置換
本発明は、その他の種の対応するアミノ酸配列又はその断片に対し置換された1つの種の単数又は複数のユニークなアミノ酸を内含する少なくとその他の配列を含んで成る活性の組換え型ハイブリッドヒト/動物及び動物/動物VIII因子分子又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製し単離するための方法及びそれらの凝固、免疫原性及び免疫反応性特性活性を特徴づけする方法を提供している。
【0074】
A2ドメインは、VIII因子分子のプロ凝固活性のために必要である。研究から、ブタのVIII因子がヒトのVIII因子よりも6倍大きいプロ凝固活性を有すること(Lollar, P. et al.(1991)J.Biol.Chem.266:12481−12486)及びヒト及びブタのVIII因子の間の凝固活性の差がヒトとブタのA2ドメイン内の単数又は複数の残基の間のアミノ酸配列の差異に基づくものと思われること(Lollar, P.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:23652−23657)が示されている。さらに、ヒトVIII因子分子内のA2及びC2ドメイン及び場合によっては第3のL鎖領域は、全てとはいわないまでも大部分の阻害性抗体がHoyer(1994)Semin. Hewatol. 31:1−5.に従って反応するエピトープを宿すと考えられている。
【0075】
組換え型ハイブリッドヒト/動物、動物/動物又は等価物のVIII因子分子又はその断片は、以下でより詳しく例示されるように2つの種の分子間でアミノ酸配列が異なっている、その他の種の対応する配列に対する1つの種のVIII因子のA2、C2及び/又はドメインからの単数又は複数のユニークアミノ酸が包含する少なくとその他の特異的配列の置換によって作ることができる。本書で記述されている好ましい実施例においては、本発明は、1つのエピトープを包含する対応するヒトアミノ酸配列に対して置換させられたブタのアミノ酸配列を含む活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子において、VIII因子に対する阻害性抗体との免疫反応性が減少しているか又は全く無いハイブリッドVIII因子を提供する。さらなる実施形態においては、第3の種内の対応する配列に対し置換された複数の種からのアミノ酸配列を含む活性組換え型ハイブリッドVIII因子分子も同様に作ることができる。同様に、以下でさらに詳述するように、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸を内含する少なくとその他の配列を内含するヒト、動物又はハイブリッドのVIII因子を含んで成る組換え型ハイブリッド等価物分子も作ることができる。
【0076】
記述されたような特異的アミノ酸置換をもつあらゆるハイブリッドVIII因子構成体を、増強された凝固活性及び/又は減少した抗体免疫反応性をもつハイブリッドVIII因子分子の同定のためVIII因子に対する阻害性抗体との反応性について及び凝固活性についての標準的手順によって検定することが可能である。同様に、ヒト又はブタのVIII因子に比べて減少した凝固活性のみならず低下した抗体反応性をも有するハイブリッド分子を同定することもできる。当業者であれば、ヒト又はブタのVIII因子に比べて少ない、等しい又は大きい凝固活性をもつハイブリッドVIII因子分子又はその断片が、VIII因子欠損症患者の治療に有用であることを認識するだろう。特異的アミノ酸の置換を伴う活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製するための本書に記述された方法を用いて、活性の組換え型ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVIII因子タンパク質、ハイブリッドの動物−1/動物−2 VIII因子及び、ハイブリッドの等価物VIII因子又はその断片Iを調製することが可能である。
【0077】
改変された凝固活性をもつハイブリッドのVIII因子分子
本発明は、本書で記述されているような確立した部位特異的突然変異誘発技術を用いて、その他の種のVIII因子の対応するアミノ酸配列に対して置換された1つの種のVIII因子内のプロ凝固活性をもつ単数又は複数のユニークなアミノ酸を包含する少なくとその他の特異的配列を含んで成る、プロ凝固組換え型ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、又は等価物VIII因子分子又はその断片を提供する。置換において使用されるべき特異的配列は、以下のように選択されハイブリッド構成体が調製され凝血活性について検定される。好ましい例示的実施形態として特定的に提供されるのは、A2ドメイン内にアミノ酸配列Bを含むハイブリッドヒト/ブタVIII因子である。当業者であれば、改変された凝固活性つまり好ましくはヒトVIII因子に比べて増大した凝固活性をもつその他のハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子分子又はその断片を調製するためにこれらの方法を使用できるということがわかる。
【0078】
ブタVIII因子内のより大きな凝固活性の根拠は、Lollar, P. et al.(1990)J. Biol. Chem.265;1688−1692:Lollar, P. et al.(1992)J. Biol. Chem.267:23652−23657;Fay, P.J. et al.(1992)J. Biol. Chem.267:13246−13250によると、活性の喪失を導くブタVIII因子よりも急速なヒトVIII因子のA2サブユニットの自発的解離にあると思われる。
【0079】
ヒト及びブタのVIII因子 A2ドメインのアミノ酸配列のアラインメントの比較(残基番号づけは、ヒトVIII因子の全長アミノ酸配列、配列番号2との関係において位置373で始まる)が、図1Cに示されている。改変された凝固活性をもつハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子の調製のために、ヒトA2ドメイン内でのヒト及びブタのA2アミノ酸配列(それぞれ配列番号2及び6)の比較に基づいて顕示された突然変異誘発の初期標的候補が、表Iに示されている。
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表1及び図1A〜1Bは、A2ドメインの17%しか構成しないもののヒト及びブタのA2ドメイン間の配列差の70%を包含するヒト及びブタのA2ドメインアミノ酸配列(それぞれ配列番号2及び6)内の7つの配列を例示している。
【0080】
ヒトVIII因子のA2ドメイン(Ser373〜Arg740)内のアミノ酸配列Ser373〜Glu604が相同のブタ配列で置換された、組換え型ハイブリッドヒト/ブタ構成体が記述されている。この構成体は、A2阻害物質と反応せず、ヒトB(−)VIII因子と同じ凝固活性をもつ。ヒトVIII因子に比べて増大した凝固活性をもつヒトVIII因子内の完全なブタA2ドメイン置換を含む血漿由来のハイブリッド分子が記述されている。これらの構成体を比較すると、残基Asp605とArg740の間の領域がヒト及びブタのVIII因子間の活性差の原因であることが明らかになる。この領域は、例えば、A2のNH2末端領域内にブタの置換を含むハイブリッドのVIII因子分子を作るために広く用いられてきた「オーバーラップ拡張によるスプライシング」(SOE)方法といったような確立された部位特異的突然変異誘発技術を用いることによって、Asp605とArg740の間の領域内にブタの置換を伴う組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子を系統的に作ることによって、さらに特定的に定義し得る。これらの分子は、上述のとおり、COS−7細胞及びベビーハムスター腎細胞の中で発現させることができる。これらは、ヘパリシ−Sepharose(商標)及び免疫親和性クロマトグラフィといったような当該技術分野において既知の方法を用いて均質性に至るまで精製可能である。タンパク質濃度は、A280での紫外線吸光により推定でき、構成体の比活性は、A280で(単一段階の血液凝固検定により1mlあたりのユニット数で測定された)凝固活性を除することで決定できる。ヒトVIII因子は約3000〜4000U/A280の比活性をもち、一方ブタのVIII因子は約20000U/A280の比活性をもつ。好ましい実施形態においては、プロ凝固性の組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子は、20000U/A280の比活性をもち、A2ドメイン内に最少量のブタ置換を含む。
【0081】
本書で記述するように、ヒトVIII因子に比べて増強されていても、等しくても又は低減されていてもよいが好ましくは増強されているハイブリッド タンパク質を同定するために部位特異的突然変異誘発が使用される。ハイブリッドヒト/ブタの実施形態においては、Ho. S. N, et al. 77Gene 51−59(1994)によって及び例7及び8内で記述されているように、好ましくはオーバラップ拡張によるスプライシング(SOE)方法を用いて、特異的ヒト配列がブタ配列で置換される。ヒトA2ドメインの一部分についてアミノ酸配列をループアウトするのに行なわれたように(例7参照)、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発も使用することができる。ハイブリッドの機能的分析は、凝固活性を明らかにすることから、配列をさらに吟味し、標準的な点突然変異分析技術によりプロ凝固性配列についてマッピングすることができる。
【0082】
本発明は、ハイブリッドVIII因子cDNA及びタンパク質を、DNA配列決定、凝固活性検定、ELISA及び精製済みハイブリッドVIII因子の280nmでのUV吸光度による質量、凝固比活性(U/mg)、精製済みハイブリッドVIII因子のSDS−PAGEなどといった、確立され日常的なものである方法によって、特徴づけしうる、ということを考慮している。アミノ酸、炭水化物、硫酸塩又は金属イオン分析といった、臨床的有効性についてのその他の既知のテスト方法が必要とされる。
【0083】
ヒトVIII因子に比較してより優れた凝固活性をもつ組換え型ハイブリッドVIII因子は、血漿由来のVIII因子よりも作るのに費用がかからず、VIII因子欠損症の有効な治療に必要とされるVIII因子の量を減少させることができる。
【0084】
低減した免疫反応性をもつハイブリッドVIII因子分子
VIII因子の凝固活性を阻害する抗体(「阻害物質」又は「阻害性抗体」)と免疫反応性をもつエピトープが、VIII因子内の既知の構造−機能関係に基づいて特徴づけされてきた。恐らく、阻害物質は、VIII因子のドメイン構造と結びつけられた巨大分子相互作用又は、フォン・ウィルブランド因子、トロンビン、Xa因子、IXa因子又はX因子とのその会合のいずれかを分断することによって作用することができると思われる。しかしながら、Fulcher et al.(1985)Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:7728−7732;及びScandella et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6152−6156により記述されているように、ヒトVIII因子に対する阻害性抗体の90%以上は、VIII因子の40kDaのA2ドメイン又は20kDaのC2ドメイン内にあるエピトープに結合して、これらのドメインと結びつけられた特定の機能を崩壊することによって作用する。A2及びC2エピトープに加えて、Scandella et al.(1993)Blood 82:1767−1775に従うと、VIII因子のL鎖のA3及びC1 ドメイン内に第3のエピトープが存在する可能性がある。この推定上の第3のエピトープの意義は未知であるが、VIII因子内のエピトープ反応性の一部分を説明しているように思われる。
【0085】
Lollar et al.(1994)J. Clin. Invest. 93:2497−2504.により示されているように、抗A2抗体は、第X因子の活性化を遮断する。Ware et al.(1992)Blood Coagul. Fibrinolysis 3:703−716、により記述された欠失突然変異誘発による以前のマッピング研究は、A2エピトープが、40kDaのA2ドメインのNH2末端の20kDa領域内にあるものと位置特定した。競合的免疫ラジオメトリック検定は、A2阻害物質が、Scandella et al.(1992)Throm. Haemostas 67:665−671.により記述され例8で実証されるように、共通のエピトープ又は狭くクラスタ化したエピトープのいずれかを認識するということを示した。
【0086】
本発明は、活性組換え型ハイブリッド及びハイブリッド等価物のVIII因子分子又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、これらを調製し単離する方法及びこれらを特徴づけする方法を提供している。これらのハイブリッドは、その他の種のVIII因子の対応するアミノ酸配列に対して置換された1つの種のVIII因子の単数又は複数のユニークなアミノ酸を包含する少なくとも1個の特異的アミノ酸配列をさらに含むヒト/動物、動物/動物又は等価物のハイブリッドVIII因子分子を含むか;又は、ヒト、動物又はハイブリッドのVIII因子内の特異的アミノ酸配列に対し置換された、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸を包含する少なくとも1個の配列を含む。結果として得られるハイブリッドのVIII因子は、ヒト又はブタのVIII因子に比べてVIII因子阻害性抗体に対する免疫反応性が低いか反応性を全くもたない。
【0087】
VIII因子分子内のアミノ酸の置換について以上の節で記述したアプローチを用いると、阻害性抗体が向けられているA2、C2又はその他のいずれかのドメイン内の単数又は複数の重要域を包含する、ハイブリッド等価物VIII因子分子のアミノ酸配列又は好ましくはヒトであるその他の種のVIII因子内の単数又は複数のアミノ酸を包含する少なくとも1個の配列に対して置換させられている、好ましくはブタである1つの種の対応するVIII因子アミノ酸配列を選択するために、突然変異分析が利用される。これらの方法については以下でさらに詳細に記述されている。結果として得られるプロ凝固性組換え型ハイブリッド構成体は、標準的検定を用いてヒトVIII因子に比べた場合、阻害性抗体に対する免疫反応性が低いか、又は反応性を全くもたない。以下で記述するように、増々小さくなるアミノ酸配列の系統的置換とそれにつづく免疫反応性についてのハイブリッド構成体の検定を通して、VIII因子分子のあらゆるドメイン内のエピトープは、より低い免疫反応性しかもたないか又はこれを全くもたないアミノ酸配列により置換された状態でマッピングされ、ハイブリッドVIII因子が調製される。
【0088】
当業者であれば、阻害性抗体が向けられているA2、C2及び/又はその他のドメイン内にエピトープを含む単数又は複数のアミノ酸を包含する少なくとも1個の配列を同定し置換し、かつ、ヒト又はブタのVIII因子に比べて低い免疫反応性しかもたないか又は全く反応性をもたないプロ凝固性組換え型ハイブリッドヒト/動物、動物/動物又は等価物のVIII因子又はその断片を構築するために、エピトープマッピング、ハイブリッドVIII因子分子の構築及び構成体の突然変異分析を組合わせたこのアプローチを使用することができる、ということがわかる。このアプローチは、例8に記述されているように、実施例と同様抗VIII因子抗体に対する抗原性を全くもたず、ヒトA2ドメイン内にブタのアミノ酸置換を有する組換え型プロ凝固性ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製するために使用される。
【0089】
通常、ブタVIII因子は、ヒトVIII因子に対する阻害性抗体と、限定的にか又は全く反応しない。以下のように、A2以外のドメイン内での置換及びその他の種のVIII因子を用いていかにしてハイブリッドVIII因子を調製できるかの一例として、ADドメイン内のアミノ酸置換に基づく阻害性抗体との反応性が減少した又は全くない組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子が調製される。ブタA2ドメインは、例6、7及び8及び以上で記述されたような標準的クローニング技術によってクローニングされ、次に、cDNAを切断するための制限部位の使用又はオーバーラップ拡張によるスプライシング(SOE)といったような日常的手順を用いてA2ドメイン内で切断されスプライスされる。結果として得られたブタのアミノ酸配列は、ヒトのA2ドメイン内へと置換されてハイブリッドVIII因子構成体を形成し、この構成体は、好ましくはReNeoである。哺乳動物の発現ベクター内に挿入され、好ましくはベビーハムスター腎細胞である培養細胞内に安定した形で移入され、上述のとおり発現される。ハイブリッドVIII因子は、例えば日常的なベセズダ検定又は無血漿色素産生基質検定により、抗A2抗体を用いて免疫反応性について検定される。ベセズダ単位(BU)は、阻害物質力価を測定するための標準的な方法である。ベセズダ力価をハイブリッド内で測定できない場合には(<0.7 Bu/mgIgG)置換された対応するブタ配列の領域内で、ヒトA2エピトープが除去されたのである。エピトープは漸進的に狭められ、かくして、可能なかぎりわずかなブタ配列しか伴わないハイブリッドヒト/ブタ分子を産生するために、特異的A2エピトープを決定することができる。本書で記述するように、阻害的免疫反応性にとってきわめて重要であるアミノ酸 Arg484−Ile508に対応する25残基の配列が同定され、ヒトのA2ドメイン内で置換される。この配列内には、ヒトとブタのVIII因子の間にはわずか9つの差しかない。この領域をさらに分析し置換することが可能である。
【0090】
A2ドメインに置換を有するかまたは有さずに、C1、C2または他のドメインにおけるアミノ酸配列の置換に基づいて、阻害抗体との低下した反応性を有するかまたは反応性を有していない、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子をまた製造することができる。C2エピトープは例えば、部位特異的変異誘発と合わせた相同走査アプローチを用いて位置決定することができる。より詳細には、その手法は、A2ドメインにおけるアミノ酸置換について本明細書に記載したのと同じかまたは同様であることができ、例えば、RT-PCRを用いるかまたは、ヒトC2または他のドメインDNAを用いてブタ肝臓cDNAライブラリーを調べることによる、ブタC2または他のドメインをクローン化すること;C2または他のドメインにおけるエピトープを位置決定し、かつ同時に置換するための制限部位技術および/または連続SOE;B(-)VIII因子におけるヒトC2または他のドメインの置換;発現ベクター、例えばpBluescriptへの挿入;培養した細胞における発現;ならびに免疫反応性についての通常のアッセイを含む。アッセイのために、C2ハイブリッドVIII因子とC2-特異的阻害剤との反応性、MR[スカンデラ(Scandella)ら、(1992) Thomb. Haemostasis 67:665-671およびルビン(Lubin)ら、(1994)]および/または親和性クロマトグラフィーにより製造される他のC2特異的抗体を成し遂げることができる。
【0091】
C2ドメインは、アミノ酸残基2173-2332(配列番号2)からなる。シマ(Shima), M.ら、Thromb. Haemostas 69:240-246によれば、この154のアミノ酸領域内で、阻害剤活性は、残基2248-2312間の65のアミノ酸領域に特異的であると思われる。ヒトおよびブタVIII因子のC2配列がこの領域において約85%同一であるなら、それは、VIII因子の機能的に活性な領域のどこか他の場所であるので、ヒトおよびブタのVIII因子 C2アミノ酸配列間に約10個の差異があり、これは、置換されたC2配列を用いてハイブリッドを構成するために最初の標的として使用することができる。
【0092】
臨床的に重要なVIII因子エピトープは、A2およびC2ドメインに限られるようである。しかしながら、VIII因子の他の領域(A1、A3、BまたはC1ドメイン)に対する抗体が同定されるなら、非抗原性ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子について本明細書に記載したアプローチを用いて、エピトープを位置決定し、除去することができる。
【0093】
より詳細には、推定の第2のL鎖エピトープおよび/または任意の他の動物またはヒトのVIII因子ドメインにおける任意の他のエピトープの位置決定をまた達成することができる。初めに、A3またはC1ドメインにおける第3の阻害剤エピトープの存在の決定を以下のように行うことができる。ヒト(「H」)およびブタ(「p」)VIII因子アミノ酸配列をモデルとして用いて、A1p-A2p-A3p-C1H-C2pおよびA1p-A2p-A3H-C1p-C2pのB-ドメイン欠如(domainless)ハイブリッドが構築される。ブタVIII因子に対して低い力価を有するかまたは力価が検出できない約20人の患者血漿(ドクター ドロテア スカンデラ(Dr. Dorothea Scandella)、アメリカン赤十字(American Red Cross)から)からの阻害剤IgGが、ハイブリッドに対して試験される。第3のエピトープがA3ドメインにあるなら、阻害IgGはA1p-A2p-A3H-C1p-C2pと反応するが、A1p-A2p-A3p-C1H-C2pとは反応しないことが予想される。逆に、第3のエピトープがC1ドメインにあるなら、阻害IgGはA1p-A2p-A3p-C1H-C2pと反応するが、A1p-A2p-A3H-C1p-C2pとは反応しないことが予想される。第3のエピトープが同定されるなら、それは、A2およびC2エピトープについて本明細書において記載した手順によって特性決定される。
【0094】
例えば、C1またはA3ドメインエピトープに特異的な抗体は、A1p-A2p-A3H-C1p-C2pおよびA1p-A2p-A3p-C1H-C2pハイブリッドを用いる親和性クロマトグラフィーによって、および、組換えVIII因子 C2-Sepharaose(商標)を通すことによるC2特異的抗体の除去によって、全患者IgGから分離することができる。推定の第3のエピトープはSOE構築体によって同定され、ここでは、好ましい実施態様においては、ヒトVIII因子 A3またはC1ドメインの一部が系統的にブタ配列で置きかえれられている。
【0095】
減じられた免疫原性を有するハイブリッドVIII因子分子:
分子は、ヒトまたは動物において抗体の生成を誘発することができるとき、免疫原性である。本発明は、他の種のVIII因子の免疫原活性を有する対応するアミノ酸配列が置換された1つの種のVIII因子の1つ以上のユニークアミノ酸を含む少なくとも1つの特異的アミノ酸配列;または、ヒト、動物もしくはハイブリッドの因子のアミノ酸配列が置換されているVIII因子に対する公知の同一性を有していない1つ以上のアミノ酸を含む少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、ヒトまたは動物における野生型ヒトブタVIII因子より免疫原性が低い、プロ凝固性(procoagulant)組換えハイブリッドヒト/動物または動物/動物VIII因子分子、ハイブリッドVIII因子等価分子またはいずれかの断片を提供する。このハイブリッドは、動物またはヒトにおいて阻害剤展開の発生率を低下させるために、かつVIII因子欠乏症を治療するために使用することができ、予め治療されていない血友病患者を治療するのに使用するのが好ましい。好ましい実施態様においては、修飾されたVIII因子は、ヒトVIII因子アミノ酸配列を含み、免疫原活性を有するヒトアミノ酸配列が置換された1つ以上のアラニン残基をさらに含み、ヒトまたは動物において減じられた免疫原性を有するかまたは免疫原性がないプロ凝固性組換えハイブリッド等価分子またはその断片を生じる。
【0096】
ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を用いた、VIII因子分子における非抗原アミノ酸配列の置換と合わせた、エピトープ位置決定および変異分析について本明細書で記載したプロセスは、低い抗原性を有するハイブリッド分子を生じる。このモデルおよび関連方法を用いて、本明細書で記載した任意のハイブリッド構築体を、部位特異的変異誘発技術によって変えて、できるだけ多くの任意の機能性エピトープを除去して、ハイブリッドVIII因子を認識する免疫系の能力を最小にし、それによって免疫原性を減らすことができる。
【0097】
抗原性をさらに減らし、より小さい免疫原性のハイブリッドVIII因子を構築するために使用することができる1つの方法は、ヒト、動物またはハイブリッドの等価VIII因子における選択された特異的アミノ酸配列のアラニン走査変異誘発(alanine scanning mutagenesis)(カニンガム(Cunningham)、B.C.ら、(1989)、Science 244:1081-1085により記載された)である。アラニン走査変異誘発においては、推定でエピトープに関係するアミノ酸側鎖が、部位特異的変異誘発を用いて、アラニン残基で置換される。アラニン変異体の野生型タンパク質への抗体結合を比較することによって、個々の側鎖の結合相互作用への相対的寄与を決定することができる。アラニン置換は特に有用であると思われる。というのは、抗体結合への側鎖の寄与は、β炭素以外は除去されるが、グリシン置換と違って、主鎖の配座は通常変えられないからである。アラニン置換は、タンパク質-タンパク質相互作用を支配する主要な立体的な疎水的または静電気的作用を賦課することはない。
【0098】
タンパク質の抗原-抗体相互作用においては、通常約15〜20の、抗体と接触する抗原側鎖がある。主鎖相互作用とは反対であるように、側鎖相互作用はタンパク質-タンパク質相互作用を支配する。最近の研究では、わずかだけ(約3〜5)のこれらの側鎖相互作用が結合エネルギーのほとんどに寄与することが示唆された。クラックソン(Clackson), T.ら、(1995) Science 267:383-386参照。幾つかのネズミモノクローナル抗体について成長ホルモンエピトープの広範囲の分析は、結合エネルギーへの側鎖の寄与について以下の階層を示し:Arg>Pro>Glu-Asp-Phe-Ile、Trp、Ala、GlyおよびCysは試験されていない[ジン(Jin), L.ら、(1992) J. Mol. Biol. 226:851-865]。本明細書に記載されたA2エピトープについての結果はこれと一致する。というのは、484〜508のA2セグメント中の25個の残基のうちの12個が、これらの側鎖を含むからである(図1C)。
【0099】
ある種のアミノ酸残基が抗体によって特によく認識されるという発見は、公知のエピトープからのこれらの残基の除去がこれらのエピトープを認識する免疫系の能力を低下させる、すなわち、分子をより小さい免疫原性にすることができることを示す。A2エピトープの場合には、免疫原性の残基は、VIII因子凝固活性の喪失なしに置き換えることができる。例えば、HP9においては、Arg484をSerで置換し、Pro485をAlaで置換し、Arg489をGlyで置換し、Pro492をLeuで置換し、Phe501をMetで置換する。さらに、実施例8に記載された、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子構築体における免疫反応性を試験するために使用した患者血漿からの結果は、異なる患者からの抗体が、A2ドメインにおいて同じかまたは非常に類似の構造領域を認識すること、および、A2阻害剤の結合に関係するA2ドメインにおける残基がほとんど変更を示さないと思われることを示す。かくして、ヒトVIII因子残基484〜508に含まれるA2エピトープは、VIII因子の他の構造領域よりよくヒト免疫系により認識されることにおいて、免疫優性なエピトープである。完全なプロ凝固性活性を維持しながら、この構造を、別の種からの非抗原性VIII因子配列または非VIII因子アミノ酸配列で置換すると、免疫系によるハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子の認識を変えることが予想される。
【0100】
エピトープを支配する傾向があるかさ高いおよび/または帯電した残基を小さい天然の側鎖(例えばアラニン)で置換する部位特異的変異誘発は、より少ない免疫原性領域を生じ得ることが予期される。それぞれの重要な阻害剤エピトープにこれらの幾つかの置換基を含む分子は、免疫系が、抗原-抗体相互作用の典型である鍵-鍵穴機構により適合するのが困難であろうと予想される。その低い抗原性の故に、そのようなハイブリッド分子は、阻害剤でVIII因子欠乏症患者を治療するのに有用であり得る。そして、その低い免疫原性の故に、予め治療されていない血友病A患者を治療するのに有用であり得る。
【0101】
一般的結果は、少しの鍵となる残基のうちの1つの変異は、幾つかの次数の大きさだけ与えられたタンパク質-タンパク質相互作用のための結合定数を減らすのに十分であることである。かくして、すべてのVIII因子エピトープは、限られた数の、阻害剤の展開に不可欠のアミノ酸を含むと思われる。VIII因子の各エピトープのために、免疫原活性を有する1つ以上の特定のアミノ酸を含む少なくとも1つの配列をアラニンで置換することは、野生型VIII因子より免疫原性が少ない活性分子を生じ得る。好ましい実施態様においては、ハイブリッドVIII因子はB-ドメイン欠失である。
【0102】
免疫原活性を有するVIII因子におけるアミノ酸配列を、ほとんどまたは全く免疫原活性を有さないアミノ酸配列で置換して、活性な組換えハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子を製造する方法は、典型的実施態様として、A2ドメインにアミノ酸置換を有するハイブリッドヒト/ブタVIII因子を用いて、以下のようである。ヒトVIII因子領域484〜508には25個の残基がある。部位特異的変異誘発を使用して、全部で475個の変異体について、任意のこれらの残基が任意の他の19個のアミノ酸で置換されている、単一の変異体を作ることができる。さらに、1つより多い変異を有するハイブリッド分子を構築することができる。
【0103】
ハイブリッド構築体は、フリゲット(Friguet), B.ら、(1985) J. Immunol. Methods 77:305-319(1985)に記載されているように、阻害剤抗体についての結合定数を測定することによって、抗原性についてアッセイすることができる。好ましい実施態様においては、結合定数は、少なくとも3次数の大きさだけ減らされ、これは、ベセスダ(bethesda)力価を臨床的に重大でないレベルまで下げる。例えば、A2抗体による阻害のIC50(結合定数の粗い尺度)は、実施例8において記載された、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子構築体HP2、HP4、HP5、HP7およびHP9で減少され、このことは、ベセスダ(bethesda)力価を測定不能なレベルに下げることと関連した。例えば、ヒトVIII因子の2重または3重変異体(例えば、ヒトVIII因子 Arg484->Ala、Arg489->Ala、Phe501->Ala3重変異体)は、治療上の使用のために十分に低い抗原性を有する分子を生じることが予想される。同様の変異を、C2エピトープおよび推定の第3のエピトープにおいて行うことができる。好ましい実施態様は、2つまたは3つのVIII因子エピトープへの2個または3個のアラニン置換を含む。これらの領域への他の置換をまた行うことができる。
【0104】
好ましい実施態様においては、ヒトまたはブタVIII因子より、ヒトおよび動物における抗原性が小さいか、および/または免疫原性が小さい、ハイブリッド等価VIII因子分子が同定される。そのようなハイブリッド等価構築体は、それらの減少した抗原性および/または免疫原性について、動物において試験することができる。例えば、対照ならびに、VIII因子欠乏症のウサギ、ブタ、イヌ、マウス、霊長類および他の哺乳動物を、動物モデルとして使用することができる。1つの実験プロトコールにおいては、ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子を計画的に6ヶ月〜1年の期間にわたって動物に、好ましくは静脈内注入によって、5〜50単位/kg体重、好ましくは10〜50単位/kg体重、最も好ましくは40単位/kg体重の投与量範囲で、投与することができる。決まった方法(免疫アッセイおよびベセスダ(bethesda)検定を含む)により、試験期間中にわたる注入後間隔をあけて採取した血漿試料中で、抗体を測定することができる。決まった手順(1段階凝固検定を含む)を用いて、試料中の凝固活性がまた測定できる。
【0105】
ハイブリッド等価なVIII因子分子を、ヒトにおいて、少なくとも2つのタイプの臨床的試みにおいて、減ぜられた抗原性および/または免疫原性について試験することができる。ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が阻害抗体と免疫反応性であるかどうかを決定するように設計された、1つのタイプの試みにおいては、ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が、好ましくは静脈内注入により、治療上のヒトまたはブタVIII因子の凝固活性を阻害するVIII因子に対する抗体を有する、VIII因子欠乏症の約25人の患者に投与される。ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子の投与量は、5〜50単位/kg体重、好ましくは10〜50単位/kg体重、最も好ましくは40単位/kg体重の範囲にある。各投与の約1時間後、血液試料からのVIII因子の回収率を、1段階凝固検定において測定する。注入の約5時間後に試料を再び採取し、回収率を測定する。全回収率および試料からの因子VIIの消失速度は、抗体力価および阻害活性の予測である。抗体力価が高いなら、VIII因子回収率は通常測定することができない。回収率結果を、血漿由来ヒトVIII因子、組換えヒトVIII因子、ブタVIII因子および他の普通に使用される治療形態のVIII因子またはVIII因子置換物を用いて治療した患者における回収率結果の回収率と比較する。
【0106】
ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が免疫原性であるかどうか、すなわち、患者が阻害抗体を展開するかどうかを決定するように設計された、第2のタイプの臨床上の試みにおいては、先の段落において記載したように、ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が、約100人の予め治療されていない、VIII因子に対する抗体を展開しなかった血友病患者に投与される。治療は、6ヶ月〜1年の期間にわたってほぼ2週間ごとに行われる。この期間中1〜3ヶ月の間隔で、血液試料を取り、ベセスダ(bethesda)検定または他の抗体検定を行って、阻害抗体の存在を決定する。上記したようにして、各注入後に回収検定をまた行うことができる。結果を、血漿由来ヒトVIII因子、組換えヒトVIII因子、ブタVIII因子または他の普通に使用される治療形態のVIII因子またはVIII因子置換物を受けた血友病患者と比較する。
【0107】
ヒトおよび非ブタ、非ヒト哺乳動物VIII因子アミノ酸配列を用いた、ハイブリッドVIII因子分子の製造
特定のアミノ酸の置換を用いる、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を製造するために使用される方法は、A2、C2および/または他のドメインにおける1個以上のアミノ酸の置換に基づいて、ヒトまたはブタVIII因子と比べて変えられているかまたは同じ凝固活性および/または等しいかまたは減らされた免疫反応性および/または免疫原性を有する、組換えハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物または動物/動物VIII因子タンパク質を製造するために使用することができる。
【0108】
アミノ酸配列同一性の同様の比較を、ヒトおよび非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子タンパク質の間で行って、プロ凝固活性、抗-A2および抗-C2免疫反応性および/または免疫原性または、他のドメインにおける免疫反応性および/または免疫原性が存在する、アミノ酸配列を決定することができる。次に、同様の方法を使用して、ハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子分子を製造することができる。上記したように、各ハイブリッドの機能分析は、阻害抗体に対する減じられた反応性および/または減らされた免疫原性、および/または増加された凝固活性を明らかにし、その配列は、点変異分析によってさらに詳細に分析することができる。
【0109】
例えば、ハイブリッドヒト/マウスVIII因子分子を、上記したようにして製造することができる。ヒト(配列番号2)およびマウス(配列番号6)のA2ドメインのアミノ酸配列アラインメント(alignment)は、図1Cに示されている。エルダー(Elder)らによって報告されたように、マウスcDNA(配列番号5)によりコードされるVIII因子タンパク質は、全体的にヒト配列(配列番号2)への74%配列同一性(Bドメインが比較から除かれるときには87%同一性)にて、2319個のアミノ酸を有し、ヒトVIII因子より32個アミノ酸が短い。マウスAおよびCドメインにおけるアミノ酸配列(配列番号6)は非常によく保存され、ヒト配列(配列番号2)に対して84-93%配列同一であり、一方、Bおよび2つの短い酸性ドメインは42〜70%配列同一性を有する。詳細には、A1、A2およびA3マウスアミノ酸配列(配列番号6)は、対応するヒトアミノ酸配列(配列番号2)に対して85、85および90%同一である。C1およびC2マウスアミノ酸配列は、対応するヒトアミノ酸配列に対して93および84%同一である。予想されるマウスVIII因子アミノ酸配列(配列番号6)においては、番号付けの目的のためのアミノ酸配列同一性を用いて、A1、A2およびA3ドメインは、ヒトVIII因子アミノ酸1〜372、373〜740および1690〜2032にそれぞれ相同である。
【0110】
トロンビン/Xa因子および1つを除くすべての活性化されたタンパク質C開裂部位は、マウスVIII因子において保存される。フォン ウィルブランド(von Willebrand)因子結合のためのチロシン残基がまた保存される。
【0111】
エルダー(Elder)らによれば、マウスVIII因子のヌクレオチド配列(配列番号5)は7519個の塩基を含み、ヒトヌクレオチド配列(配列番号1)との全体的に67%同一性を有する。ネズミコード配列の6957個の塩基対は、ヒトVIII因子におけるコード配列の7053個の塩基対との82%配列同一性を有する。Bドメインが比較に含まれないときには、88%ヌクレオチド配列同一性がある。
【0112】
エルダー(Elder)らは、ヒトおよびマウスVIII因子分子は全体的に74%同一であること、ならびに、変更されるときに血友病へと至る95%のヒト残基がマウスにおいて同一であることを報告する。これらのデータは、ブタVIII因子分子において凝固活性および/または抗体に対する免疫反応性を有するアミノ酸配列を同定するのに使用される同じ技術をマウスまたは他の動物のVIII因子へ適用して、同様のアミノ酸配列を同定し、かつハイブリッド分子を製造することを支持する。
【0113】
ヒトおよび非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子アミノ酸配列および非VIII因子アミノ酸配列を用いた、減じられた交差反応性を有するハイブリッドVIII因子分子の製造
ブタVIII因子は、ヒトVIII因子に対する阻害抗体を有するVIII因子欠乏症患者を治療するために臨床的に使用される。ヒト血漿がブタVIII因子と反応する交差反応性を、ハイブリッドブタ/非ヒト、非ブタ哺乳動物またはハイブリッド等価VIII因子の製造によって減らすことができる。好ましい実施態様においては、決まったベセスダ(bethesda)検定および標準として特定の他の哺乳動物血漿を使用して、ヒトA2、C2または他のドメイン特異的阻害剤が非ヒト、非ブタ哺乳動物(「他の哺乳動物」)VIII因子と反応するかどうかの決定がなされる。通常、阻害剤力価を血漿中で測定するので、精製した他の哺乳動物VIII因子は必要ではない。阻害剤が他の哺乳動物VIII因子、例えばその配列が公知であるネズミVIII因子と反応しないなら、ヒト/ブタハイブリッドを用いて同定されるように、対応する他の哺乳動物配列はブタエピトープ領域中へと置換することができる。動物の配列が知られたなら、部位特異的変異誘発技術、例えばクンケル(Kunkel), T.A.ら、(1991) Meth. Enzymol. 204: 125-139により記載されたオリゴヌクレオチド仲介変異誘発を使用して、ハイブリッドブタ/動物VIII因子分子を製造することができる。他の動物血漿が、ネズミまたはブタVIII因子より、A2、C2または他のVIII因子阻害剤との反応性が小さいなら、ブタエピトープに対応する動物の配列を、決まった方法、例えばRT-PCRならびに、部位特異的変異誘発によって構築されたハイブリッドヒト/動物またはブタ/動物VIII因子によって決定することができる。また、ブタVIII因子に比べて減じられたヒト血漿との交差反応性を有するハイブリッドヒト/動物またはブタ/非ブタ哺乳動物VIII因子を製造することができ、これは、1つ以上の他の動物からの対応するアミノ酸配列置換を有する。さらなる実施態様においては、VIII因子アミノ酸配列との公知の同一性を有していないアミノ酸配列、好ましくは、ブタエピトープ配列のための、アラニン走査変異誘発技術を用いたアラニン残基の置換によって、交差反応性を減じることができる。
【0114】
臨床的に重要なエピトープの同定後、阻害剤血漿の広い調査に対して、イン ビトロ(in vitro)で試験されるときに、ブタVIII因子と比べて小さいかまたは等しい交差反応性を有する組換えハイブリッドVIII因子分子が発現される。好ましくは、これらの分子は、これらのドメインにおける免疫反応性アミノ酸配列が他の哺乳動物の配列で置き換えられた、結合されたA2/C2ハイブリッドである。これらの領域におけるさらなる変異誘発を行って、交差反応性を減じることができる。望ましくはあるが、減じられた交差反応性は、存在するブタVIII因子濃縮物よりも利点を有し得る生成物を製造するために必要ではなく、これは、汚染ブタタンパク質による副作用を生じ、ブタVIII因子配列の免疫原性による厄介な作用を生じ得る。ハイブリッドヒト/他の哺乳動物またはブタ/他の哺乳動物VIII因子分子は、外来のブタタンパク質を含まない。その上、ブタA2ドメインにおいて行った広範なエピトープ位置決定は、95%より多い治療上のハイブリッドヒト/ブタVIII因子配列がヒトであることを示す。
【0115】
ハイブリッドVIII因子等価物の製造
上記し、実施例に記載したVIII因子分子におけるアミノ酸置換の方法をまた使用して、ヒト、動物またはハイブリッドのVIII因子に抗原性および/または免疫原性部位を含む少なくとも1つの特定のアミノ酸配列が置換された、VIII因子に対する公知のアミノ酸配列同一性を有していない1つ以上のアミノ酸を包含する少なくとも1つのアミノ酸配列(非VIII因子配列)を含む、プロ凝固性組換えハイブリッドVIII因子等価分子またはその断片を製造することができる。得られる活性ハイブリッドVIII因子等価分子は、VIII因子阻害抗体との等しいかまたは少ない反応性および/または、未置換のヒト、動物またはハイブリッドのVIII因子より少ないヒトおよび動物における免疫原性を有する。
【0116】
ヒトまたは動物VIII因子またはハイブリッドヒト/動物VIII因子における凝固活性および/または抗原活性および/または免疫原活性に不可欠のアミノ酸のこれらの配列を置換して、ハイブリッドの等価VIII因子分子を製造することができる適当なアミノ酸残基は、凝固活性、抗原活性または免疫原活性を有する動物またはヒトVIII因子アミノ酸配列に対して公知の配列同一性を有していない任意のアミノ酸を包含する。好ましい実施態様においては、置換することができるアミノ酸は、アラニン変異誘発技術を用いたアラニン残基を包含する。
【0117】
本明細書に記載されたハイブリッドVIII因子等価分子はまた、動物VIII因子配列に対する公知の同一性を有していないアミノ酸残基が、凝固活性、抗原活性または免疫原活性に不可欠でないアミノ酸残基の代わりに用いられた分子を包含する。
【0118】
上記したように、ハイブリッドVIII因子等価分子の1つの実施態様においては、分子は、阻害剤血漿との減じられた交差反応性を有する。交差反応性VIII因子における1つ以上のエピトープが、上記したように同定されており、よって、非VIII因子アミノ酸配列、好ましくは、例えばアラニン走査変異誘発法を用いてアラニン残基で置換されている。
【0119】
好ましい実施態様においては、VIII因子に対する公知の配列同一性を有していない1つ以上のアミノ酸、好ましくはアラニン残基(好ましくはヒトVIII因子において、エピトープを含む1つ以上のアミノ酸を含む少なくとも1つの配列が置換されているか、および/または免疫原性部位を含む1つ以上のアミノ酸を含む少なくとも1つの配列が置換されている)を包含する少なくとも1つの配列を含むプロ凝固性組換えハイブリッドVIII因子等価分子が製造される。得られるハイブリッド等価VIII因子分子またはその断片は、VIII因子に対して阻害抗体との減じられた免疫反応性を有するかまたは免疫反応性を有さず、および/またはヒトまたは動物において減じられた免疫原性を有するかまたは免疫原性を有しない。非抗原性のブタユニークアミノ酸配列による置換のためにヒトVIII因子のA2ドメインにおいて特定の抗原性アミノ酸配列を同定する方法は、実施例7および8に記載されており、ヒトおよび動物のVIII因子のA2および他のドメインにおける抗原性配列を同定するための、および、非VIII因子アミノ酸配列を置換するための部位特異的変異誘発法、例えばアラニン走査変異誘発を使用するための例である。
【0120】
ヒトA2エピトープは実施例8に記載のように25またはそれ以下のアミノ酸に狭められたため、ヒトアミノ酸配列を有する限られた数のハイブリッドVIII因子構築体にアラニンスキャニング突然変異誘発を施し、どれがプロ凝固性であり、非免疫活性であり、そして/またはA2アミノ酸置換に基づく非免疫原性ハイブリッドVIII因子構築体であるかを決定することができる。A2ドメインでは、ハイブリッド構築体において、抗原性と免疫原性両方の低下を達成する、アラニン置換のための最も可能性の高い候補は、Arg484、Pro485、Tyr487、Ser488、Arg489、Pro492、Val495、Phe501、およびIle508である。これらの突然変異体の各々を含むハイブリッド構築体の、mAb413に対する結合親和性およびA2特異的患者のIgGのパネルはELISAにより決定されるであろう。活性であり、且つ、A2インヒビターに対する結合親和性が2桁以上低下する突然変異体は、いずれもA2置換されたVIII因子分子の候補である。エピトープが変化すればするほど免疫原性は低くなるという仮定に基づき、1以上の突然変異を有する構築体が選択されるであろう。ヒトとブタの両方のVIII因子に共通するエピトープのための重要残基があるかも知れないことから、Arg484〜Ile508間の領域には、その他の候補残基があることもあり得る。例えば、蛋白−蛋白相互作用にはしばしば荷電残基が関与しているが、事実、Arg490に対するアラニン置換基は、ヒトVIII因子のインヒビターに対して僅か0.2%の反応性を有するに過ぎない、プロ凝固性VIII因子を生成する(表VI)。同様に、Lys493に対するアラニン置換もまた可能な候補である。
【0121】
この方法は、ハイブリッド等価VIII因子構築体を作製するための、C2エピトープおよび、A3またはC1ドメインにあると思われる推定第三エピトープ、ならびにVIII因子中に同定されるその他任意のエピトープで実施することができる。
【0122】
診断検定
ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、または等価VIII因子 cDNAおよび/またはここから発現される蛋白は、その全体または一部を、例えば人間のVIII因子欠損患者の血清および体液の試料を包含する基質中の、ヒトまたは動物のVIII因子またはハイブリッドヒト/動物因子または等価なVIII因子に対する阻害抗体の検出のための診断試薬として、検定に使用することができる。これらの抗体検定は、例えばELISA検定、免疫ブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫拡散検定、およびVIII因子生物活性の検定(例えば、凝固検定による)を包含する。これらの試薬の製造技術およびそれらの使用方法は当業者に知悉されている。例えば、患者の血清試料中の阻害抗体の検出のためのイムノアッセイは、少なくとも1個の抗原部位を含む充分量のハイブリッドヒト/動物VIII因子を被検試料と反応させることを含むことができる[ここで、この量は、試料中の阻害抗体と、検出可能な複合体を形成するのに充分である]。
【0123】
核酸およびアミノ酸プローブは、ハイブリッドヒト/ブタ、ヒト/非ヒト非ブタ哺乳動物、動物/動物、もしくは等価なVIII因子 cDNAまたは蛋白分子もしくはそのフラグメントの配列に基づいて作製することができる。幾つかの態様において、これらは、市販の色素または酵素的、蛍光、化学ルミネセンスもしくは放射性標識を用いて標識することができる。このアミノ酸プローブは、例えば、ヒト、動物、またはハイブリッドヒト/動物VIII因子の存在が疑われる血清またはその他の体液をスクリーニングするために使用することができる。インヒビターのレベルを患者で定量して健康な対照と比較し、これを例えばVIII因子欠損患者をハイブリッドヒト/動物またはハイブリッド等価VIII因子で治療できるかどうかを決定するために使用することができる。このcDNAプローブは、例えばDNAライブラリーのスクリーニングにおいて研究目的に使用することができる。
【0124】
医薬組成物
ハイブリッドヒト/動物、ブタ/非ヒト非ブタ哺乳動物、動物1/動物2,または等価VIII因子を含有する医薬組成物は、単独または適当な薬学的安定化化合物、デリバリー媒質、および/または担体媒質と組み合わせて、RemingtonのPharmaceutical Sciences(E.W.Martin)に記載のような既知の方法に従って製造する。
【0125】
一つの好ましい態様では、静脈内注入のための好ましい担体またはデリバリー媒質は、生理食塩水または燐酸緩衝化食塩水である。
【0126】
別の好ましい態様では、好適な安定化化合物、デリバリー媒質、および担体媒質は、他のヒトまたは動物蛋白、例えばアルブミンを包含するが、これに限定される訳ではない。
【0127】
燐脂質ベシクルまたはリポソーム懸濁液もまた、薬学上許容し得る担体またはデリバリー媒質として好ましい。これらは当業者の知悉する方法に従って製造でき、例えば、ホスファチジルセリン/ホスファチジルコリンまたはその他の燐脂質の組成物、または、VIII因子は負に荷電した燐脂質膜に結合することから、表面に負の電荷を与える洗浄剤を含み得る。リポソームは、適当な脂質(例えばステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラカドイルホスファチジルコリン、およびコレステロール)を無機溶媒に溶解し、次いでこれを蒸発させて容器表面に乾燥脂質の薄膜を残すことによって製造できる。次にVIII因子の水溶液をこの容器に導入する。次いで容器を手で円運動させて脂質を容器側面から遊離させて脂質凝集物を分散させ、それによりリポソーム懸濁液を形成させる。
【0128】
ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子は、ビタミンK依存性凝固因子、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子(vWf)またはVIII因子結合部位を含むvWf、およびシュクロースのような多糖類を包含する、その他の適当な安定化化合物、デリバリー媒質、および/または担体媒質と組み合わせることができる。
【0129】
ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子はさらに、ヒトVIII因子を到達させるのと同じ方法で、レトロウイルスベクターのようなデリバリー手段を用いて、遺伝子治療によって到達させることができる。この方法は、VIII因子cDNAを人間の細胞中に取り込ませ、これをVIII因子欠損患者に直接移植するか、または、これを、VIII因子分子を透過するが細胞は透過しない移植可能装置に入れ、次いでそれを移植することから成る。好ましい方法はレトロウイルス仲介遺伝子転移であろう。この方法では、修飾したレトロウイルスのゲノム中に外因性遺伝子(例えばVIII因子cDNA)をクローニングする。この遺伝子はウイルス手段によって宿主細胞のゲノムに挿入され、そこで当該細胞により発現される。レトロウイルスベクターは、それがウイルスを産生せず、宿主のウイルス感染を防止するよう修飾する。この種の治療の一般的原則は当業者に知悉されており、文献に論じられている[例えば、Kohn,D.B.等、(1989) Transufusion 29:812-820]。
【0130】
ハイブリッドVIII因子はハイブリッド分子の半減期および保存期間を増大させるためvWfに結合させて保存することができる。さらに、VIII因子の凍結乾燥は、vWf存在下での活性分子の収率を改善することができる。商業的供給者により用いられているヒトおよび動物VIII因子の現行保存法を、ハイブリッドVIII因子の保存に利用することができる。これらの方法には、(1)部分精製状態でのVIII因子の凍結乾燥(さらなる精製なしに注入されるVIII因子「濃縮物」として);(2)チンマーマン法によるVIII因子の免疫親和精製およびVIII因子を安定化するアルブミンの存在下での凍結乾燥;(3)アルブミン存在下での組換えVIII因子の凍結乾燥、が包含される。
【0131】
加えて、ハイブリッドVIII因子は、0.6M NaCl、20mM MES、および5mM CaCl2(pH6.0)中、4℃で無期限に安定であり、また、これらの緩衝液中で凍結保存でき、且つ殆ど活性を失わずに融解させることができる。
【0132】
治療の方法
ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子を使用して、阻害抗体を持つおよび持たない血友病患者において、そして阻害抗体の発現に起因する後天的VIII因子欠損の患者において、VIII因子欠損に起因する制御不能の出血(例えば、動脈内、頭蓋内、または胃腸管出血)を治療する。活性物質は好ましくは静脈内投与する。
【0133】
さらに、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子は、当該ハイブリッドを産生するよう遺伝学的に作り替えられた細胞の移植によって、または、上記のように係る細胞を含む装置の埋め込みによって投与することができる。
【0134】
好ましい態様において、単独または安定剤、デリバリー媒質、および/または担体と組み合わせたハイブリッドもしくはハイブリッド等価VIII因子の医薬組成物は、ヒトまたは動物VIII因子の注入のために用いられるのと同じ方法に従って、患者に静脈内注入する。
【0135】
治療を必要とする患者に投与しなければならないハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子組成物の治療用量は、VIII因子欠損の重篤度に応じて変わるであろう。一般に、用量レベルは、頻度、作用持続時間、ならびにそれぞれの患者の出血エピソードの重篤度および持続時間と調和した単位で調節する。したがって、ハイブリッドVIII因子は、標準的凝固検定で測定される、出血を止めるための治療的有効量の該ハイブリッドを患者に到達させるに充分な量の、薬学上許容し得る担体、デリバリー媒質、または安定剤中に含有させる。
【0136】
VIII因子は、古典的には、血友病Aの人間に由来する血漿における凝固不全を是正する、正常血漿中に存在する物質として定義される。精製および部分精製型のVIII因子のインビトロ凝固活性は、人間の患者でのVIII因子の注入用量を算出するために使用され、そしてこれは、患者血漿から回収される活性の、およびインビボ出血異常是正の、信頼し得る指標である。Lusher,J.M.等、328 New Engl.J.Med. 328:453-459;Pittman,D.D.等、(1992)Blood 79:389-397;およびBrinkhous等、(1985) Proc.Natl.Acad.Sci. 82:8752-8755によると、新規なVIII因子分子のインビトロ標準検定と、イヌの注入モデルまたは人間の患者でのそれらの挙動との間に食い違いは報告されていない。
【0137】
通常、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子の投与により患者において達成されるべき血漿VIII因子の所望レベルは、正常の30〜100%の範囲である。ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子の好ましい投与方法において、この組成物は、約5ないし50単位/kg体重の範囲、より好ましくは10〜50単位/kg体重の範囲の好ましい用量で、そして最も好ましくは20〜40単位/kg体重の用量で静脈内投与され;投与間隔は約8〜24時間の範囲であり(重症の血友病患者の場合);そして治療期間は、日数にして1〜10日間、または出血エピソードが解消するまでである。例えば、Roberts,H.R.およびM.R.Jones、「血友病および関連病態−プロトロンビンの先天性欠損症(第II因子、第V因子、および第VIIないしXII因子)」、Ch.153、1453-1474、1460、Hematology、Williams,W.J.等編(1990)を参照されたい。インヒビターを有する患者は、より多くのハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子を必要とするかも知れず、または、ヒトVIII因子より高い比活性、もしくは低下した抗体反応性もしくは免疫原性の故に、患者は、より少ないハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子を必要とするかも知れない。ヒトまたはブタVIII因子による治療において、注入されるハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子の量は一段階VIII因子凝固検定によって定められ、また、選ばれた例においては、注入後に患者の血漿中のVIII因子を測定することによりインビボ回復が決定される。いかなる特定の対象に対しても、個体の必要性および該組成物を投与しまたはその投与を管理する人間の専門的判断に従い、時間経過に伴う個別的用量計画が決定されるべきであり、また、本明細書に開示される濃度範囲は例示に過ぎず、特許請求される当該組成物の範囲または実施の限定を意図するものではないということが理解されるべきである。
【0138】
治療は、必要に応じて、該組成物の静脈内1回投与、または長期間にわたる定期的もしくは連続投与の形を取り得る。別法として、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子は、リポソームによって1回または様々な時間間隔で数回、皮下または経口投与することができる。
【0139】
ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子はさらに、ヒトVIII因子に対する抗体を発現した血友病患者においてVIII因子欠損に起因する制御不能な出血を治療するために使用することもできる。この場合、単独のヒトまたは動物VIII因子に優る凝固活性は必要ない。ヒトVIII因子に劣る凝固活性(即ち、3000単位/mg未満)は、もしこれが患者血漿中の抗体により中和されないならば、有用であろう。
【0140】
ハイブリッドVIII因子および修飾されたVIII因子は、ヒトVIII因子とは比活性の点で相違し得るということが本明細書で立証された。ヒトVIII因子より大きなプロ凝固活性を有する、ハイブリッド、ハイブリッド等価および修飾VIII因子蛋白は、患者のVIII因子欠損を是正するために要する用量がより低いため、血友病の治療に有用である。ヒトVIII因子より低いプロ凝固活性を有するハイブリッド、ハイブリッド等価および修飾VIII因子は、さらに、正常なヒトVIII因子に比して少なくとも1%の比活性を有するならば、治療用途にとって好適である。故に、プロ凝固活性を有する本発明に係るハイブリッド、ハイブリッド等価または修飾VIII因子は、ヒトVIII因子の少なくとも1%の比活性を有すると定義される。
【0141】
上記で一般的に記載した、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子分子およびそれを単離し、特性決定し、作製し、そして使用する方法は、以下の非限定的実施例を参照することによりさらに理解されるであろう。
【0142】
実施例1:ブタVIII因子およびハイブリッドヒト/ブタVIII因子の検定
ブタVIII因子は、当該分子の比活性に基づくと、ヒトVIII因子より凝固活性が高い。これらの結果は実施例4の表IIIに示す。この結論は、ヒトブタVIII因子を公正に比較できる適当な標準曲線の使用に基づくものである。凝固検定は、血友病A患者から誘導された血漿の凝固時間を短縮する、VIII因子の能力に基づくものである。2種類の検定を使用した:一段階および二段階検定である。
【0143】
一段階検定においては、血友病Aの血漿0.1mL(George King Biomedical,Inc.)を、活性化部分トロンボプラスチン試薬(APTT)(Organon Teknika)0.1mLおよび試料または標準(希釈したクエン酸塩添加正常ヒト血漿より成る)0.01mLと共に水浴中37℃で5分間インキュベートした。インキュベーションの後、20mMCaCl20.1mLを添加し、フィブリン凝塊の生成に要する時間を目視により決定した。
【0144】
VIII因子の単位は、クエン酸塩添加正常ヒト血漿1mL中に存在する量として定義する。ブタおよびヒトVIII因子活性を、標準としてのヒト血漿と直接比較した。血漿標準または精製蛋白の希釈は0.15M NaCl、0.02M HEPES(pH7.4)中に行った。最高希釈を1/50とし、3または4希釈の血漿に基づく標準曲線を作製し、log10凝固時間をlog10血漿濃度に対してプロットすると、直線状のプロットが得られる。未知試料中のVIII因子の単位はこの標準曲線からの内挿によって決定した。
【0145】
一段階検定は、血友病A血漿中に形成されるアクティベーターによるVIII因子の内因性活性化に依拠し、一方、二段階検定は、プレ活性化VIII因子のプロ凝固活性を測定するものである。二段階検定においては、トロンビンと反応させておいたVIII因子を含有する試料を、前もって37℃で5分間インキュベートしておいた活性化部分トロンボプラスチンとヒト血友病A血漿の混合物に加えた。次に、得られた凝固時間を上記の同じヒト標準曲線に基づき、単位/mLに変換した。二段階検定での相対活性は、VIII因子をプレ活性化しておいたが故に一段階検定での活性より高かった。
【0146】
実施例2:ヒトおよびブタVIII因子間の機能的相違の特性決定
ブタおよびヒトの血漿由来VIII因子とヒト組換えVIII因子の単離は、Fulcher,C.A.等、(1982) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1648-1652;Toole等、(1984) Nature 312:342-347(Genetics Institute);Gitschier等、(1984) Nature 312:326-330(Genentech);Wood等、(1984) Nature 312:330-337(Genentech);Vehar等、312 Nature 312:337-342(Genentech);Fass等、(1982) Blood 59:594;Toole等、(1986) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5939-5942の文献に記載されている。これは幾つかの方法で達成できる。これらの調製物は、ヒトとブタのVIII因子の間に安定性の機能的相違があるものの、全てサブユニットの組成の点で類似している。
【0147】
ヒト組換えおよびブタVIII因子の比較のため、高度精製ヒト組換えVIII因子(Cutter Laboratories、バークレイ、CA)およびブタVIII因子[Fass等、(1982) Blood 59:594の記載に従い免疫精製した]の調製物をMono Q(商標)(Pharmacia-LKB、ピスカタウェイ、NJ)アニオン交換樹脂(Pharmacia,Inc.)上の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付した。このMono Q(商標)HPLC工程の目的は、比較目的のためヒトおよびブタVIII因子を共通の緩衝液への交換の少量の不純物を取り除くことであった。VIII因子1000〜2000単位を入れたバイアルをH2O 5mLで再構成した。次いでHepes(2M、pH7.4)を加え最終濃度を0.02Mとした。0.15M NaCl、0.02M Hepes、5mM CaCl2、pH7.4(緩衝液Aに0.15M NaClを添加)で平衡化したMono Q(商標)HR5/5カラムにVIII因子を適用し;10mLの緩衝液A+0.15M NaClで洗浄し;緩衝液A中の0.15M〜0.90M NaClの直線勾配20mL、1mL/分の流速で溶出させた。
【0148】
ヒト血漿由来VIII因子(Mono Q(商標)HPLCにより精製)およびブタVIII因子の比較のため、免疫親和精製した血漿由来ブタVIII因子を0.04M Hepes、5mM CaCl2、0.01%Tween-80、pH7.4で1:4に希釈し、ヒトVIII因子について前段落に記載したのと同じ条件下にMono Q(商標)HPLCに付した。ヒトおよびブタのVIII因子の単離のためのこれらの方法は、当業者にとって標準的なものである。
【0149】
カラム画分を一段階凝固検定によりVIII因子活性について検定した。材料のA280による活性の単位で表されたこの検定の平均結果を表IIに示すが、これは、一段階検定を用いた場合、ブタVIII因子がヒトVIII因子の少なくとも6倍の活性を有することを示している。
【0150】
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実施例3:ヒトおよびブタVIII因子の安定性の比較
VIII因子のための一段階検定の結果は、試料中のVIII因子からVIIIa因子への活性化と、生成したVIIIa因子活性の喪失の可能性を反映している。ヒトおよびブタVIII因子の安定性の直接比較を行った。Mono Q(商標)HPLC(Pharmacia,Inc.、ピスカタウェイ、NJ)からの試料を同じ濃度および緩衝液組成に希釈し、トロンビンと反応させた。様々な時間に試料を二段階凝固検定用に採取した。典型的には、ピーク活性(2分において)はブタVIIIa因子がヒトVIIIa因子の10倍高く、ブタおよびヒトVIIIa因子の両活性はその後低下したが、ヒトVIIIa因子活性はより速やかに低下した。
【0151】
一般に、安定なヒトVIIIa因子を単離する試みは、安定なブタVIIIa因子を生成する条件を使用しても成功しない。これを立証するため、Lollar等、(1989) Biochemistry 28:666に記載のように、Mono Q(商標)HPLC精製したヒトVIII因子をトロンビンで活性化し、安定なブタVIIIa因子を生成する条件の下でMono S(商標)カチオン交換(Pharmacia,Inc.)HPLCに付した。
【0152】
0.2M NaCl、0.01M Hepes、2.5mM CaCl2(pH7.4)に入れたヒトVIII因子43μg/mL(0.2μM)(総体積10mL)をトロンビン(0.036μM)と10分間反応させ、この時点でトロンビンを不可逆的に不活性化するため、FPR−CH2Cl D−フェニル−プロリル−アルギニル−クロロメチルケトンを0.2μM濃度となるまで加えた。次にこの混合物を40mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、5mMCaCl2(pH6.0)で1:1に希釈し、5mM MES、5mMCaCl2(pH6.0)(緩衝液B)に0.1M NaClを添加したもので平衡化したMono S(商標)HR5/5HPLCカラム(Pharmacia,Inc.)に2mL/分でロードした。VIIIa因子は、1mL/分の、緩衝液B中の0.1M NaClから0.9M NaClに至る勾配20mLによりカラム洗浄無しに溶出した。
【0153】
二段階検定で凝固活性を有する画分は、これらの条件下に単一ピークとして溶出した。ピーク画分の比活性はおよそ7500U/A280であった。Mono S(商標)VIIIa因子のピークをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に付し、その後蛋白を銀染色すると、VIII因子のヘテロ二量体(A3−C1−C2/A1)誘導体に相当する2つのバンドが現れた。A2断片は低濃度のためこれらの条件での銀染色では同定されなかったが、125I標識により微量成分として同定された。
【0154】
ヒトVIII因子の結果とは対照的に、Mono S(商標)HPLCにより同一条件下で単離されたブタVIIIa因子は1.6x106U/A280の比活性を持っていた。SDS−PAGEによるブタVIIIa因子の分析は、A1、A2、およびA3−C1−C2サブユニットに相当する3個の断片を示し、ブタVIIIa因子が3個のサブユニットを有することを証明した。
【0155】
pH6.0でのヒトトロンビン活性化VIII因子調製物のMono S(商標)HPLCの結果は、ヒトVIIIa因子安定なブタVIIIa因子を産生する条件下では不安定であることを示している。しかしながら、ピーク画分中に微量のA2フラグメントが同定されたものの、凝固活性が少量のヘテロ三量体VIIIa因子からもたらされるのか、比活性の低いヘテロ二量体VIIIa因子からもたらされるのかの決定は、この方法のみからではできなかった。
【0156】
この問題を解決するためには、ヒトVIIIa因子を、それがA2サブユニットを失う前に単離する方法が望ましい。この目的のため、Mono S(商標)緩衝液のpHをpH5に低下させることを含む方法で単離を遂行した。Mono Q(商標)精製したヒトVIII因子(0.5mg)をH2Oで、0.25M NaCl、0.01MHepes、2.5mMCaCl2、0.005%Tween-80、pH7.4中0.25mg/mL(1μm)のVIII因子という最終組成となるまで希釈した(総体積7.0mL)。トロンビンを最終濃度0.072μmとなるまで加え、3分間反応させた。次いでFPR−CH2Cl(0.2μm)でトロンビンを不活性化した。次にこの混合物を40mM酢酸ナトリウム、5mMCaCl2、0.01%Tween-80、pH5.0で1:1に希釈し、0.01M酢酸ナトリウム、5mMCaCl2、0.01%Tween-80、pH5.0に0.1M NaClを添加したもので平衡化したMono S(商標)HR5/5HPLCカラムに2mL/分でロードした。VIIIa因子は、1mL/分の、同緩衝液中の0.1M NaClから1.0M NaClに至る勾配20mLによりカラム洗浄無しに溶出した。これは、SDS−PAGEおよび銀染色により示される検出可能量のA2断片を含むピークにおける凝固活性の回収をもたらした。ピーク画分の比活性は、pH6.0で回収された活性の10倍高かった(75000U/A280対7500U/A280)。しかしながら、4℃において無期限に安定である、pH6.0で単離されたブタVIIIa因子とは対照的に、ヒトVIIIa因子の活性はMono S(商標)からの溶出後数時間にわたり着実に低下した。さらに、pH5.0で精製し直ちに検定したVIIIa因子の比活性は、ブタVIIIa因子のわずか5%であり、これは、検定前に実質的な解離が起こったことを示すものである。
【0157】
これらの結果は、ヒトおよびブタ両者のVIIIa因子が3つのサブユニット(A1、A2、およびA3−C1−C2)から構成されることを実証する。サブユニットA2の解離は、生理的イオン強度、pH、および濃度などの幾つかの条件下におけるヒトおよびブタ両者のVIIIa因子の活性低下の原因である。幾つかの条件下におけるブタVIIIa因子の相対的安定性は、サブユニットA2のより強い解離のためである。
【0158】
実施例4:サブユニットを再構成することによるハイブリッドヒト/ブタVIII因子の調製
ブタのVIII因子L鎖およびVIII因子H鎖を下記のように単離した。EDTAの0.5M溶液、pH7.4をMono Q(商標)で精製したブタのVIII因子に加えて最終濃度0.05Mとし、室温で18〜24時間そのまま放置した。等量の10mMヒスチジン−Cl、10mMEDTA、および0.2% v/v Tween 80(pH6.0)(緩衝液B)を加え、この溶液を前もって緩衝液Aプラス0.25M NaCl中で平衡化したMono S(商標)HR 5/5カラムに1 ml/分で注入した。VIII因子H鎖は、SDS-RAGEによって判定されるように樹脂に結合しなかった。VIII因子L鎖は緩衝液Aに溶かした0.1〜0.7M NaCl 20mlの直線的勾配により1 ml/分で溶出され、SDS-RAGEによれば均一であった。VIII因子H鎖は下記の方法でMono Q(商標)HPLC(Pharmacia, Inc., Piscataway, N.J.)によって単離した。VIII因子H鎖は、VIII因子L鎖の精製中Mono S(商標)に吸着しない。VIII因子H鎖を含有する通過した材料に0.5M Hepes緩衝液(pH7.4)を加えることによりpH7.2に調整し、0.1M NaCl、0.02M Hepes、および0.01% Tween 80(pH7.4)中で平衡化したMono Q(商標)HR 5/5 HPLCカラム(Pharmacia, Inc.)に注入した。カラムをこの緩衝液10mlで洗浄し、VIII因子H鎖をこの緩衝液に溶かした0.1〜1.0M NaCl 20mlの勾配で溶出した。ヒトのL鎖およびH鎖を同じ方法で単離した。
【0159】
ヒトおよびブタのLおよびH鎖を下記のステップに従って再構成した。ヒトまたはブタのVIIIa因子L鎖10μl、100μg / mlを、1M NaCl、0.02M Heprs、5mM CaCl2、および0.01% Tween 80(pH7.4)中において、(1)同じ緩衝液に溶かした異種のH鎖25μl、60μg / ml、(2)0.02M Hepes 10μlおよび0.01% Tween 80(pH7.4)、および(3)0.6M CaCl2 5μlと、室温で14時間混合した。混合物を、0.02M MES、0.01% Tween 80、および5mM CaCl2(pH6)で1/4に希釈し、0.1M NaCl、0.02M MES、0.01% Tween 80、および5mM CaCl2(pH6)中で平衡化したMono S(商標)HR 5/5へ注入した。同一の緩衝液に溶かした0.1〜1.0M NaCl 20mlの勾配を1 ml/分で通し、フラクション0.5mlを回収した。各フラクションの280nmの吸光度を読み取り、各フラクションを一段階血餅形成検定によりVIII因子活性に対する吸光度で検定した。H鎖は過剰に存在し、遊離のL鎖(H鎖と対合していない)もまたMono S(商標)に結合するため、その過剰のH鎖は遊離のL鎖が調製物の一部でないことを保証する。再構成実験に続いてMono S(商標)HPLC精製を、鎖の全ての4つの可能な組合わせ、すなわちヒトのL鎖/ヒトのH鎖、ヒトのL鎖/ブタのH鎖、ブタのL鎖/ブタのH鎖、およびブタのL鎖/ヒトのH鎖について行なった。表IIIにヒトのL鎖/ブタのH鎖のVIII因子が天然のブタのVIII因子(表II)に匹敵する活性を有することを示し、またブタのH鎖中の構造要素がヒトVIII因子と比べてブタVIII因子の凝固剤活性を増加させる原因であることを示している。
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実施例5:ドメインを再構成することによる活性なハイブリッドヒト/ブタVIII因子の調製
ブタのA1/A3−C1−C2二量体、ブタのA2ドメイン、ヒトのA1/A3−C1−C2二量体、およびヒトのA2ドメインを、Lollar等の論文J. Biol. Chem. 267 (33) :23652−23657 (1992) に従ってそれぞれブタまたはヒトの血液から単離した。例えば、ブタのA1/A3−C1−C2二量体を単離するために、ブタのVIII因子(140μg)、pH6.0を、30分間5N NaOHを加えることによりpH8.0まで上昇させ、A2ドメインの解離および血餅形成検定による95%不活性化を生じさせた。混合物を緩衝液B(20mM Hepes、5mM CaCl2、および0.01% Tween 80(pH7.4))で1:8に希釈し、緩衝液B中で平衡化したMono S(商標)カラムへ注入した。A1/A3−C1−C2二量体を、緩衝液Bに溶かした0.1〜1.0M NaClの勾配を用いることによって約0.4M NaClにおける単一のシャープなピークとして溶出した。ブタのA2ドメインを単離するには、ブタのVIII因子をVIII因子 0.64mgから出発してLollar等の論文Biochem. 28:666−674 (1989) の方法に従って作成した。遊離のA2ドメインを、Mono S(商標)クロマトグラム中の0.3M NaClにおける二次成分(50μg)として単離した。
【0160】
ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子を二量体およびドメインから下記のように再構成した。精製した成分の濃度および緩衝液条件は下記のとおりである。すなわち、緩衝液A(5mM MES、5mM CaCl2、および0.01% Tween 80(pH6.0))プラス0.3M NaClに溶かした0.63μMのブタA2;緩衝液Bプラス0.4M NaCl(pH7.4)に溶かした0.27μMのブタA1/A3−C1−C2;0.3M NaCl、10mMヒスチジン−HCl、5mM CaCl2、および0.01% Tween 20(pH6.0)に溶かした1μMのヒトA2;0.5M NaCl、10mMヒスチジン−HCl、2.5mM CaCl2、および0.1% Tween 20(pH6.0)に溶かした0.18μMのヒトA1/A3−C1−C2。再構成実験は、等体積のA2ドメインおよびA1/A3−C1−C2二量体を混合することによって行なった。ブタA1/A3−C1−C2二量体との混合実験においては、0.5M MES、pH6.0の添加によってpHを6.0まで下げて70mMとした。
【0161】
可能な全ての4つのハイブリッドVIII a因子分子、〔pA2/(hA1/A3−C1−C2)〕、〔hA2/(pA1/A3−C1−C2)〕、〔pA2/(pA1/pA3−C1−C2)〕、および〔hA2/(hA1/A3−C1−C2)〕の凝固活性を、二段階血餅形成検定によりいろいろな回数で得た。
【0162】
A2ドメインとA3−C1−C2二量体の混合後の活性の発生は、1時間のうちにほぼ完了し、37℃で少なくとも24時間安定であった。表IVは、1時間で検定したときの再構成されたハイブリッドVIIIa因子分子の活性を示す。VIIIa因子分子の特異的活性を得る二段階検定は一段階検定とは異なり、その値は一段階検定によって得られたVIII因子分子の活性値と比較することはできない。
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表IVは、最大の活性がブタA2ドメイン/ヒトA1/A3−C1−C2、次いでブタA2ドメイン/ブタA1/A3−C1−C2二量体によって呈示されることを示している。したがって、ブタVIIIa因子のA2ドメインをヒトVIIIa因子のA1/A3−C1−C2二量体と混合した場合に凝固剤活性が得られた。さらに、ヒトVIIIa因子のA2ドメインをブタVIIIa因子のA1/A3−C1−C2二量体と混合した場合に凝固剤活性が得られた。単独ではA2、A1、およびA3−C1−C2領域は何の凝固剤活性も持たない。
【0163】
実施例6:ブタVIII因子のA2ドメインの単離および配列決定
ブタVIII因子のBドメインとA2ドメインの一部とをコード化するヌクレオチド配列のみが以前に配列決定されている(Toole等の論文Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:5939−5942 (1986))。全ブタVIII因子A2ドメインに対するcDNAおよび予想されるアミノ酸配列(それぞれ配列番号:3 および4)を本明細書に開示する。
【0164】
ブタVIII因子A2ドメインをブタ脾臓のRNA全体の逆転写およびPCR増幅によってクローン化した。既知のヒトVIII因子cDNA配列に基づく縮重プライマーおよびブタVIII因子配列の一部に基づく正確なブタのプライマーが用いられた。PCRの産物1kbを単離し、Bluescript(商標)(Stratagene)ファージミドベクター中に挿入することによって増幅した。
【0165】
ブタA2ドメインをジデオキシ配列決定法によって完全配列決定した。cDNAおよび予想されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:3および4で記述されるようなものである。
【0166】
実施例7:組換えハイブリッドヒト/動物VIII因子の調製
ヒトVIII因子のヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列(それぞれ配列番号:1および2)は文献に記載されている(Toole等の論文Nature 312:342−347 (1984) (Genetics Institute)、Gitschier等の論文Nature 312:326−330 (1984) (Genentech)、Wood等の論文Nature 312:330−337 (1984) (Genentech)、Vehar等の論文Nature 312:337−342 (1984) (Genentech) )。
【0167】
組換えハイブリッドヒト/動物VIII因子を作成するには、ヒトVIII因子cDNA(Biogen Corp.)の領域を除去し、配列アイデンティティーを有する動物cDNA配列を挿入することを必要とする。続いて、ハイブリッドcDNAを適切な発現系中で発現させる。一例として、対応するヒトA2配列を、一部または全てのブタA2ドメインで置換した、ハイブリッドVIII因子のcDNAをクローン化した。最初にヒトVIII因子のA2ドメインに対応する全cDNA配列、次いでA2ドメインのより小さな部分を、当業者には一般に知られている方法であるオリゴヌクレオチドの仲介する変異誘発によってループアウトした(例えば、Sambrook, J.、 E. F. FritschおよびT. Maniatisの著書「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」, Chapter 15, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor (1989)を参照されたい)。ステップは下記のとおりである。
【0168】
材料
メトキシカルボニル−D−シクロヘキシルグリシル−グリシル−アルギニン−p−ニトロアニリド(Spectrozyme(商標)Xa)ならびに抗VIII因子モノクローナル抗体ESH4およびESH8は、American Diagnostica(Greenwich, CT)から購入した。単層ホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン(75/25、w/w)の小胞は、Barenholtz, Y.等の論文Biochemistry 16:2806−2810 (1977) の方法に従って調製した。組換えデスルファトヒルジンは、Dr. R. B. Wallis, Ciba-Geigy Pharmaceuticals(Cerritos, CA)から得た。ブタ因子IXa、X、Xa、およびトロンビンは、Lollar等の論文Blood 63:1303−1306 (1984) およびDuffy E. J. 等の論文J. Biol. Che. 207:7621−7827 (1992) の方法に従って単離した。アルブミンを含まない純粋な組換えヒトVIII因子は、Baxter-Biotech(Deerfield, IL)から得た。
【0169】
ブタ VIII 因子A2ドメインのクローン化
ブタA2ドメインをコード化するcDNAは、Chomczyneki等の論文Anal. Biochem. 162:156−159 (1987) の記述に従って単離した逆転写ブタ脾臓mRNAのPCR後に得られた。cDNAは、プライマーとしてランダム六量体を備えた第一鎖cDNA合成キット(Pharmacia, Piscataway, N.J.)を用いて調製した。PCRは、既知の制限ブタA2のアミノ酸配列に基づく5′末端の縮重プライマー、5′AARCAYCCNAARACNTGGG3′(配列番号: 11)、およびブタA2ドメインの3′に直接隣接する既知のブタDNA配列に基づく3′末端の正確なプライマー、5′GCTCGCACTAGGGGGTCTTGAATTC3′(配列番号: 12)を用いて行なった。これらのオリゴヌクレオチドは、ヒト配列(配列番号: 1)中のヌクレオチド1186〜1203および2289〜2313番に対応する。増幅は、Taq DNAポリメラーゼ(Promega Corp.,Madison, WI)を用いて35サイクル(94℃で1分、50℃で2分、72℃で2分)行なった。増幅した断片1.1kbを、Murchuk, D等の論文Nucl. Acads. Res. 19:1154 (1991) の記述に従ってTベクター手順を用いてpBlueScript II KS(Stratagene)のEcoRV部位にクローニングした。Escherichia coli XL1-Blue受容能のある細胞を形質転換し、プラスミドDNAを単離した。配列決定は、Sequenase(商標)バージョン2.0(U.S. Biochemical Corp.; Amersham LifeScience, Inc., Arlington Hts, ILの一事業部)を用いて両方向で行なった。この配列は、同一のブタ(CircumVent(商標), New England Biolabs, Beverly, MA)由来の脾臓DNAの独立した逆転写で得たPCR産物の直接配列決定により得られたものと全く同じ配列によって確認した。自己抗体RCに対するエピトープを含有する領域は、ヒトVIII因子(配列番号: 2)中の373〜536番として同定された。
【0170】
ハイブリッドヒト/ブタ VIII 因子のcDNAの構築および発現
アミノ酸残基741〜1648番(配列番号: 2)をコード化する配列を欠く、BドメインのないヒトVIII因子(HB-、Biogen, Inc., Cambridge, MAから入手)を、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築用出発材料として用いた。HB-を発現ベクターReNeo中へクローニングした。操作を容易にするためにVIII因子に対するcDNAを、ReNeoからXhoI /HpaI 断片として単離し、XhoI /HpaI RVで消化したpBlueScript II KS中へクローニングした。オリゴヌクレオチド、5′CCTTCCTTTATCCAAATACGTAGATCAAGAGGAAATTGAC3′(配列番号: 7)を、Kunkel, T.A.等の論文Merh. Enzymol. 204:125〜139 (1991) の記述によるウラシル含有ファージDNAを用いる部位特異的変異誘発反応に使用して、同時にヒトA2配列(SEQ 配列番号:1中のヌクレオチド1169〜2304番)をループアウトし、SnaBI制限部位を導入した。プラスミドを含有する、A2ドメインのないヒトVIII因子をSnaBIで消化し、続いてClaIリンカーを加えた。次いでブタA2ドメインを、それぞれホスホリル化した5′プライマーすなわち5′GTAGCGTTGCCAAGAAGCACCCTAAGACG3′( 配列番号: 8)、および3′プライマーすなわち5′GAAGAGTAGTACGAGTTATTTCTCTGGGTTCAATGAC3′(配列番号: 9)を用いてPCRによって増幅した。ClaIリンカーをPCR産物に加え、続いて結合させてヒトVIII因子含有ベクターにした。5′および3′末端の接合を修正するためにそれぞれ配列番号: 8中に示されたオリゴヌクレオチドおよびヌクレオチド1〜22番(配列番号: 9中の5′GAA‐‐‐TTC)を用いる部位特異的変異誘発により、A1/A2およびA2/A3接合を修正して正しいトロンビンの開裂およびフランキング配列を回復した。HP1と呼ばれる得られた構築物において、ヒトA2ドメインはブタA2ドメインで正しく置換された。前置産物は、ブタA2ドメインのPCR増幅の結果としてA1‐A2接合に不要のチミンを含有した。この単独塩基を、変異原性オリゴヌクレオチド、5′CCTTTATCCAAATACGTAGCGTTTGCCAAGAAG3′(配列番号:10)を用いてループアウトした。得られたハイブリッドヌクレオチド配列は、ヒトA1、ブタA2、ならびにヒトA3、C1,およびC2ドメインを有する活性なVIII因子をコード化した。
【0171】
ヒトVIII因子を含有するpBlueScriptプラスミドとヒト/ブタA2VIII因子cDNAの間でSpeI/BamHI断片を交換することにより、BドメインのないcDNAの相同ヒト配列を、推定のA2エピトープを包含するブタのNH2末端A2ドメインの63%を含有する領域で置換した。配列は、A2ドメインおよびスプライス部位を配列決定することによって確かめられた。最後に、HB-中の対応する配列の代わりに全A2配列を含有するSpeI/ApaI断片で置換し、HP2構築物を産出した。
【0172】
DEAE−デキストランが仲介するDNA移入後、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubel, F.M.等編)中のSeldon, R.F.の記述、pp.9.21-9.26, Wiley Interscience, N.Y. に従って、COS−7細胞中のHB-およびHP2の予備的発現を試験した。活性なVIII因子の発現を確認し、予備的な抗体阻害調査を行った後、次いでリポソームが仲介する移入(Lipofectin Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)を用いてHB-およびHP2のDNAを生まれたばかりのハムスターの腎臓細胞中にしっかりと移入した。プラスミド含有クローンを、ダルベッコの修正イーグル培地−F12、すなわちG418を400μg/ml含有する10%ウシ胎児血清(DMEM-F12/10%ウシ胎児血清)中の耐G418性に関して選択し、続いてG418を100μg/ml含有するDMEM-F12/10%ウシ胎児血清中で保持した。HB-およびHP2VIII因子活性の最大の発現を示すコロニーをリングクローニングによって選択し、さらに特徴を調べるために増やした。
【0173】
血漿を含まないVIII因子検定、一段階血餅形成検定、および酵素免疫吸着測定により、HB-およびHP2VIII因子の発現を基準として精製した組換えヒトVIII因子を用いて比較した。HB-およびHP2に対してそれぞれ2600および2580単位/mgの特異的凝固剤活性が得られた。HB-およびHP2は、それぞれ細胞107個当たり、48時間当たり1.2および1.4単位/mlを産生した。これは野生型構築物のもの(2600±200単位/mg)と同じである。HB-およびHP2の特異活性は、血漿を含まないVIII因子検定においては見分けがつかなかった。
【0174】
A1、A2、A3、C1、および/またはC2ドメイン置換による組換えハイブリッドヒト/動物およびこれと同等のVIII因子の生物学的活性は、COS細胞哺乳類の一過性発現系の使用により最初に評価することができる。ハイブリッドヒト/動物およびこれと同等のcDNAはCOS細胞中に移入することができ、上清は上述のように一段階および二段階凝固検定を使用することによりVIII因子活性を分析することができる。加えてVIII因子活性は、より高感度であり、より多数の試料の分析を可能にする色素産生基質検定法を使用することによって測定することもできる。類似の検定法がVIII因子活性の検定において標準になっている(Wood等の論文Nature 312:330−337 (1984)、Toole等の論文Nature 312:342−347 (1984))。COS細胞中の組換えVIII因子の発現もまた標準手順である(Toole等の論文Nature 312:342−347 (1984)、Pittman等の論文Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2429−2433 (1988))。
【0175】
本明細書に記載した組換え分子用の出発材料として用いられるヒトVIII因子cDNAを、生物学的活性を有する産物を生み出すCOS細胞中で発現させた。上述のようにこの材料は、ハイブリッドヒト/動物のVIII因子分子を比較するために基準として用いることができる。検定における活性は、ハイブリッド分子の適切な比較のための特定の活性に変換される。このためには細胞によって産生されたVIII因子の質量の測定が必要であり、これは基準として精製したヒトおよび/または動物のVIII因子による免疫検定によって行なうことができる。VIII因子に対する免疫検定は、当業者にとっては定型化されている(例えば、Lollar等の論文Blood 71:137−143 (1988) を参照されたい)。
【0176】
実施例8:ハイブリッドヒト/動物およびこれと同等のVIII因子における阻害活性の決定
多分エピトープとして(すなわち、VIII因子と反応する阻害抗体の認識部位として)関わっているヒトおよび動物のVIII因子の配列は、定型化された手順を用いて、例えば下記に示したようにオーバーラップ拡張によるスプライシング法(SOE)などの部位特異的変異誘発技術と組み合わせて、VIII因子に対する抗体による検定の使用を通して決定することができる。対応する抗原性のヒトVIII因子配列と比較して抗原性でない動物の配列を同定することができ、標準の組換えDNA法に従って置換を行なって動物配列を挿入し、ヒト配列を欠失させることができる。VIII因子に対して何も既知の配列アイデンティティーを持たないアラニン残基などのアミノ酸の配列もまた、標準の組換えDNA法により、またはアラニン走査変異誘発により置換することができる。ブタのVIII因子は幾つかの阻害抗体と反応するがヒトのVIII因子より反応性は低く、これはインヒビターによる患者の最新治療に対して基盤を与える。組換えハイブリッド形成を行なった後、それらをBethesdaのインヒビター検定法を含む定型化された検定法によりインビトロで反応性を試験することができる。天然のヒトVIII因子および天然の動物VIII因子よりも反応性の低いこれら構築物は、置換治療の候補である。
【0177】
ヒトのVIII因子と反応する全部ではないとしても大部分の阻害抗体が向けられるエピトープは、アミノ酸2332個のヒトVIII因子分子中の2つの領域、すなわちA2ドメイン(アミノ酸残基373〜740番)およびC2ドメイン(アミノ酸残基2173〜2332番、両配列とも配列番号:2中に示される)に存在すると考えられる。A2エピトープは、ヒトA2ドメインの一部が置換されたヒトアミノ酸配列に対する配列アイデンティティーを有するブタ配列によって置換される組換えハイブリッドヒト−ブタVIII因子分子を作成することによって削除された。これは、実施例7に記載したように標準の分子生物学の技術によりブタA2ドメインをクローン化し、次いで制限部位を用いてA2ドメイン内でカッティングおよびスプライシングを行なうことによって達成された。HP2と呼ばれる得られた構築物において、ブタVIII因子の残基373〜604番(配列番号:4)は置換されてヒトA2ドメイン中に入る。HP2は、下記の方法を用いて抗ヒトVIII因子抗体との免疫活性が検定された。
【0178】
VIII 因子の酵素免疫吸着検定法
ミクロタイタープレートウェルを、ESH4すなわちヒトVIII因子L鎖抗体6μg/mlの0.15mlで被覆し、一夜インキュベートした。プレートをH2Oで3回洗浄した後、ウェルを0.15M NaCl、10mMリン酸ナトリウム、0.05% Tween 20、0.05% 脱脂粉乳、および0.05%アジ化ナトリウム(pH7.4)で1時間遮断した。感度を上げるためにVIII因子を含有する試料を、30nMトロンビンで15分間活性化させた。次いでトロンビンを阻害するために組換えデスルファトヒルジンを100nMで加えた。プレートを再度洗浄し、試料または基準として用いる純粋な組換えヒトVIII因子(10〜600ng/ml)0.1mlを加えた。2時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、ビオチニル化したESH8、すなわち別のVIII因子L鎖抗体0.1mlを各ウェルに加えた。ESH8は、Pierceのヘキサン酸スルホスクシンイミジル−6−(ビオチンアミド)のビオチン化キットを用いてビオチン化した。1時間インキュベートした後、プレートを洗浄し、ストレパビジンアルカリ性ホスファターゼ0.1mlを各ウェルに加えた。プレートをBio-Radのアルカリ性ホスファターゼ基質試薬キットを用いて現像させ、各ウェルに対して405nmで得られる吸光度をVmaxミクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices, Inc., Sunnyville, CA)を用いて決定した。未知のVIII因子濃度は、VIII因子標準曲線の直線部分から決定した。
【0179】
VIII 因子検定
HB-およびHP2VIII因子を一段階血餅形成検定法で測定した。これは上記の記述(Bowie, E.J.W.およびC.A.Owenの「Disorders of Hemostasis 」 (RamoffおよびFobes編) 中の記述、pp.43−72, Grunn & Stratton, Inc., Orlando,FL (1984))、または下記のように血漿を含まない検定により行なった。HB-またはHP2のVIII因子を、0.15M NaCl、20nM Hepes、5mM CaCl2、および0.01% Tween 80(pH7.4)中で、10nM IXa因子、425nM X因子、および50μM単層ホスファチジルセリン/ホスファチジルコリン(25/75、w/w)の小胞の存在下で、40nMトロンビンによって活性化した。5分後、0.05M EDTAおよび100nM組換えデスルファトヒルジンにより反応を停止し、得られたXa因子をHill-Eubanksの論文J. Biol. Chem. 265:17854−17858 (1990) の方法に従って色素産生基質検定法により測定した。これらの条件下において、形成されるXa因子の量は、基準として精製した組換えヒトVIII因子(Baxter Biotech, Deerfield, IL)を用いることによって判定されるように、出発VIII因子の濃度に直線的に比例した。
【0180】
血餅形成検定に先立ってHB-およびHP2のVIII因子を、ヘパリン−Sepharose(商標)クロマトグラフィにより、48時間順化培地から10〜15単位/mlまで濃縮した。HB-およびHP2のVIII因子を、血友病Aの血漿(George King Biomedical)に最終濃度1単位/mlになるまで加えた。RCまたはMR血漿あるいはmAbの原液413IgG (4μM) 中のインヒビターの力価を、Kasper, C.K.等の論文Thromb. Diath. Haemorrh. 34:869−872 (1975) の記述に従ってBethesdaの検定法によって測定した。インヒビターIgGは、Leyte, A. 等の論文J. Biol. Chem. 266:740−746 (1991) の記述に従って調製した。
【0181】
HP2は抗A2抗体と反応しない。したがって残基373〜603番は、抗A2抗体に対するエピトープを含有しなければならない。
【0182】
ハイブリッドヒト−ブタ VIII 因子の調製およびオーバーラップ拡張によるスプライシングによる検定(SOE)
A2エピトープをさらにしぼり込むために、ヒトA2領域にブタのアミノ酸置換を有するさらに幾つかのプロ凝固性組換えハイブリッドヒト/ブタVIII B因子ドメインを持たない分子を調製した。制限部位技術に加えて、Ho等の論文Gene 77:51−59 (1989) に記載の「オーバーラップ拡張によるスプライシング」法(SOE)を用いてブタVIII因子cDNAのいずれか任意の領域を置換した。SOEにおいてはスプライス部位は、所望のcDNAを産生するようにPCRによって増幅することができるオリゴヌクレオチドをオーバーラップさせることによって画定される。通称HP4からHP13までの10種類のcDNAを作成した。それらをReNeo発現ベクター中に挿入し、生まれたばかりのハムスターの腎臓細胞中にしっかり移入し、実施例7に記載のように高レベル(24時間当たり、細胞107個当たり0.5〜1μg(約3〜6単位))まで発現させた。VIII因子凝固剤活性を、A2ドメインすなわちmAb413に対して特異的なモデルマウスのモノクローナル阻害抗体の存在および不在下で決定した。インヒビターの不在下で全ての構築物は、B(‐)ヒトVIII因子と見分けがつかない特異な凝固剤活性を有していた。
【0183】
ハイブリッドヒト/ブタVIII因子構築物を、Bethesdaの検定法を用いて抗A2インヒビターmAb413との反応性を検定した(Kasper, C.K.等の論文Thromb. Diath. Haemorrh. 34:869−872 (1975))。Bethesda単位(BU)は、インヒビターの力価を測定するための標準的な方法である。結果を表Vに示し、組換えヒトVIII因子と比較する。
────────────────────────────────────
────────────────────────────────────
ブタの置換の境界は、挿入のNH2−末端及びC−末端におけるヒトとブタのVIII因子の間で異なる最初のアミノ酸によって定められる。表Vに示されているように、ベセスダ価が測定できない場合(<0.7 BU/mg IgG)、A2エピトープは置換されたブタ配列の領域にある。エピトープは、mAb413とHP9との非反応性に見られるように、わずか25の残基から成る残基484〜509(配列番号2)まで漸次狭められた。構築体HP4〜HP11までのうちで、HP9が阻害因子と反応しなかった最も「ヒト化」された構築体であった。これは、A2エピトープの重要な領域が配列Arg484〜Ile508の内部にあることを示している。
【0184】
この重要な領域におけるヒトとブタVIII因子の間のアミノ酸配列の比較に基づいて、さらに二つの構築体、HP12とHP13、が作られた。そこでは、それぞれ、ヒトのアミノ酸配列489〜508及び484〜488に対して対応するブタのアミノ酸配列が置換された。どちらもmAb413と反応しなかった。このことは、Arg484〜Ser489結合のそれぞれの側の残基がA2阻害因子との反応に重要であるということを示している。HP12では、わずか5残基だけが非ヒト残基であり、HP13では、わずか4残基だけが非ヒト残基である。484〜508、484〜488及び489〜508がブタで置換されたハイブリッドは、4人の患者血漿からのA2阻害因子による阻害の減少を示し、A2エピトープの構造には阻害因子ポピュレーション応答による変化はほとんどないことを示唆した。
【0185】
阻害因子血漿から調製された二つの抗A2IgG5試料と、最もヒト化された構築体、HP9、HP12及びHP13の反応性が測定された。mAb413と同様に、これらの抗体もHP9、HP12及びHP13と反応しなかったが、対照の構築体、HP(−)及びHP8とは反応した。
【0186】
決定的なA2エピトープを最終的に同定するために484〜508の間の領域を同じ手順を用いてさらに分析することができる。
【0187】
実施例7及び8で記述した方法を用いて、ヒトA2又はその他のドメインでアミノ酸置換された他のハイブリッドヒト/非ブタ哺乳類VIII因子、何らかのドメインでアミノ酸置換されたハイブリッドヒト/動物又は動物/動物VIII因子、又はハイブリッドVII因子等価分子又はそれらの断片、例えば抗VIII因子抗体に対する免疫反応性が弱い又は無いハイブリッドVIII因子など、を調製することができる。
【0188】
実施例9. 部位指向的突然変異誘発によるヒトVIII因子A2阻害因子反応性の除去
実施例8は、残基484及び508を境界とするブタの配列をヒトのVIII因子A2ドメインに挿入することによってA2特異的なVIII因子阻害因子のパネルに対して反応性が顕著に低下した分子が得られることを示した[Healey et al., (1995) J. Biol. Chem. 270:14505-14509 も参照]。 この領域では、ヒトとブタのVIII因子の間に9つのアミノ酸の差異がある。ヒトB−ドメイン欠如VIII因子におけるこれら9つの残基、R484、P485、Y487、P488、R489、P492、V495、F501及びI508(一文字のアミノ酸コードを用いる)が、部位指向的突然変異誘発によって個別にアラニンに変えられた。さらに、クローニングを容易にするために、A2エピトープに対する5’及び3’部位でVIII因子cDNAにMlu1及びSac2制限部位がそれらの部位に対応するアミノ酸を変えることなく設けられた。9つの変異体はベビーハムスター腎細胞に安定に移植され、高いレベルで発現された。9つの細胞が全て生物的に活性なVIII因子を産生した。それらは部分的に精製され、Healey et al. が記述しているようにヘパリン−Sepharoseクロマトグラフィーによって濃縮された。
【0189】
変異体の特性が、実施例7におけると同様に、マウスのモノクローナル阻害因子MAb413との反応性によって調べられた。この阻害因子は、これまで調べられた全てのヒト阻害因子と同じ又は非常に近いクラスターのA2ドメインのエピトープを認識する。阻害因子の反応性はベセスダ分析法を用いて測定された。簡単に言うと、ある阻害因子のベセスダ価とは、標準的な一段階VIII因子凝固分析においてVIII因子を50%阻害するような阻害因子の希釈度である。例えば、抗体の溶液を1/420に希釈して、それが組み換えVIII因子テスト・サンプルを50%阻害した場合、ベセスダ価は420Uになる。MAb413のように純粋なモノクローナルの場合、抗体の質量は知られているので、結果はMAb413のmg当たりのベセスダ価(BU)で表される。50%阻害点を見出すために、一連のMAb413希釈溶液が作成され、50%阻害点は曲線適合手順によって見出された。結果は次の通りである:
*野生型に対して
これらの結果は、モデルA2阻害因子に対するVIII因子の抗原性を、位置484、487、489及び492でアラニン置換を行うことによって因子10以上減少させることが可能であるということを示している。反応性はR489→Aでほとんど4けたも減少する。これらのアラニン置換体はいずれもVIII因子の抗原性及び免疫抗原性を低下させるために治療的に役に立つ可能性がある。
【0190】
この結果はアラニン走査性突然変異誘発の有効性を裏付け、さらに阻害的な抗体に反応するエピトープ内でアミノ酸配列が変化しても生物的活性が保たれることを示している。ヒトとブタの配列が異なっている9つの部位のうち、5つはまた、ヒトとマウスの配列が異なっている部位でもある。したがって、これらの位置でアラニン置換されたVIII因子は、現在知られている哺乳類のVIII因子で同定される配列が何も知られていない配列を有するハイブリッドVIII因子等価分子の例である。
【0191】
これ以上の修飾、例えば二つのアラニン置換を組み合わせることによる修飾、によってより広範な患者に対して抗原性を大きく減少させることができる。患者によって異なるポリクローナル変異抗体がVIII因子A2エピトープの変異体と反応する可能性があるからである。さらに、免疫抗原性(抗体を誘発する能力)は、一つより多くのアミノ酸置換を組み込むことによってさらに減少する。そのような置換は、アラニン、ブタ特異的なアミノ酸、又は免疫抗原性が低いことが知られている他のアミノ酸も含む。位置490、495及び501における置換は免疫抗原性を低下させるのに役立つと思われる。さらに、これらの置換は、ある種の患者抗体に対する反応性を低下させそうである。
【0192】
アラニンの他に、抗原性を低下させる別のアミノ酸置換が可能であるが、抗原−抗体結合エネルギーへの主要な寄与因子とされているもの、又はかさばった側鎖又は荷電を有する側鎖をもつものを避けるように注意を払うことが必要である。あるエピトープ内での置換がその抗原的な反応性を減少させるアミノ酸は、本明細書において「免疫反応性を減少させる」アミノ酸と呼ばれる。アラニン以外に、免疫反応性を減少させる他のアミノ酸としては、限定するものではないが、メチオニン、ロイシン、セリン、及びグリシンなどがある。あるアミノ酸で達成できる免疫反応性の減少は、また、置換がタンパク質のコンフォーメーション、エピトープのアクセスし易さなどに及ぼす影響にも依存することは理解されるであろう。
【0193】
ヒトとブタの配列の間で異なっている部位以外のA2エピトープ(アミノ酸484〜508)内部の他の部位におけるアミノ酸置換によって、さらに、阻害的な抗体に対する反応性を減少させることができる。アラニン走査性突然変異誘発を用いてA2エピトープ内のどんなアミノ酸に対してもアラニン置換体を得ることができる。こうして得られた各修飾VIII因子のプロ凝固活性及び阻害的な抗体によるその活性の阻害を分析することができる。アラニン以外の免疫反応性を減少させる他のアミノ酸を置換することによって、得られる修飾VIII因子の抗原性を減少させることができる。アミノ酸代替を単一のVIII因子分子で組み合わせてそのような置換によって所望の性質が最も大きく得られるようにすることができる。
【0194】
抗体−VIII因子相互作用の結合エネルギーに最も大きく寄与するアミノ酸の置換が最も好ましい。それは、例えば位置493、496、499、500、502、503、505及び507のいずれかにおける免疫反応性を減少させるアミノ酸の置換である。位置484、485、499、490、492、501及び508におけるこのタイプの置き換えに関するデータは、この置換によってプロ凝固活性は保たれ、阻害的な抗体による阻害され易さは減少するということを示している。(表VI)ヒスチジン置換が天然の配列で見られる。例えば、位置504でマウスVIII因子のヒスチジンが、ブタとヒトのVIII因子の両方ではロイシンによって置き換えられている。ブタとマウスのVIII因子は両方共位置487にヒスチジンを有するが、ヒトではそこがチロシンになっている。位置487でチロシンをアラニンに置き換えると、プロ凝固活性があって抗原性が実質的に減少したものが得られる(表VI)。アナロジーによって、位置497でヒスチジンを免疫反応性を減少させるアミノ酸で置換しても、プロ凝固活性を保ちながら阻害的な抗体による阻害を減少させることができる。免疫反応性を減少させるアミノ酸は、また、位置486、488、491、494、498、504及び506に置換することができる。これらの位置に現在あるアミノ酸は抗体の結合にあまり寄与しそうには思われないが、これらの部位に免疫反応性を減少させるアミノ酸を置換すると、例えばS488A、プロ凝固活性の抗体による阻害の減少に寄与するということが示された(表VI)。
【0195】
A2エピトープ内でのヒト、ブタ、マウス(図1A〜1H)及びイヌ(Cameron, C. et al., (1998) Thromb. Haemost. 79:317-322)の配列の比較から、この領域が相当な量の配列の変動を許容するということが明らかである。4つの種全部で保存されている遺伝子座は12しかない。それらはどれもプロ凝固活性にとって不可欠のものとは考えられない。実際、位置490で保存されているアルギニンをアラニンで置換した結果は、阻害因子の抗体に対する反応性が低下した活性の修飾VIII因子である(R490→A、表VI)。1以上のアミノ酸置換を行っても、プロ凝固活性に実質的に影響しない。例えば、抗体の結合に関わる二つのアミノ酸を置換すると、どちらか一つだけのときに比べて抗体による阻害を大きく減少させることができる。また、多数の置換は、単一アミノ酸の置換に比べてより広範な患者抗体に対して、得られた修飾VIII因子の反応性を減少させることができる。
【0196】
個々のアミノ酸置換を、抗原性の減少という性質ならびにVIII因子の他の機能的属性に関して評価することができる。個々のアミノ酸置換によって得られる性質を評価することによって、アミノ酸484〜508の領域に関する限り最適な性質を有する修飾VIII因子を得るために望ましい二つ以上のアミノ酸置換の組み合わせを同定することができる。
【0197】
部位指向的突然変異誘発を用いてアミノ酸484〜508をコードする領域におけるVIII因子DNAを修飾し、所望のアミノ酸置換を有する修飾されたVIII因子をコードする塩基配列を得ることができる。ヒトのVIII因子DNA塩基配列の適当な部位で、既存のアミノ酸をコードするトリプレットを部位指向的突然変異誘発によって変えて所望のアミノ酸をコードすることができる。所望のアミノ酸をコードするトリプレットは、遺伝コードによって定められている既知のトリプレットのどれであってもよい。単一のアミノ酸置換をコードするために天然の配列を変更することは、しばしば一つの塩基変化によって、場合によってはもっと多くの、最大で3つの塩基変化によって、遂行できる。部位指向的突然変異誘発を用いることによって、既存のコーディングを所望のアミノ酸置換をコードするために必要なものに変えるように全ての必要な塩基置換を直ちに実行することができる。特定のアミノ酸置換に導く塩基変化のいくつかの例を下に示す。これらは例示的なものであって、全部を尽くすものではない:
R484→G CGT→
GGT
P485→A CCT→
GCT
L486→S TTG→
TCG
Y487→L TAT→
CTT
S488→L TCA→
TTA
R489→S AGG→
AGT
R490→G AGA→
GGA
L491→S TTA→
TCA
P492→L CCA→
CTA
K493→A AAA→
GCA
G494→S GGT→
AGT
V495→A GTA→
GCA
K496→M AAA→
ATG
H497→L CAT→
CTT
L498→S TTG→
TCG
K499→M AAG→
ATG
D500→A GAT→
GCT
F501→S TTT→
TCT
P502→L CCA→
CTA
I503→M ATT→
ATG
L504→M CTG→
ATG
P505→A CCA→
GCA
G506→A GGA→
GCA
E507→G GAA→
GGA
I508→M ATA→
ATG
前記の例は、多くの免疫反応性を減少させるアミノ酸の置換が単一のヌクレオチドの変更によって遂行できることを示している。所望する他の置換も同様な仕方で、遺伝コードを参照して意図するアミノ酸置換体をコードするヌクレオチド・トリプレットを選択し、部位指向的突然変異誘発によって必要なヌクレオチドの変更を導入して意図するトリプレットを生成するという仕方で遂行できる。多重に置換された修飾VIII因子は、上述のようなヌクレオチド変更の単純な組み合わせによって作ることができる。例えば、R489→A及びP492→LのようにA2ドメインの二つのアミノ酸が置換された修飾VIII因子は、該当する部位にAGG→GCG及びCCA→CTAという3つのヌクレオチドの変更を導入することによって作ることができる。所望する他の変更又は変更の組み合わせも、本質的には上で述べたようにして設計して実行することができる。上述の部位指向的突然変異誘発によって得られる修飾VIII因子のDNAの塩基配列は、天然のヒトの塩基配列又は本明細書の他のところで述べる別の仕方で修飾された塩基配列とは、定められた部位で定められたヌクレオチド置換(単数又は複数)を有するという点だけが異なっている。プロ凝固活性が前述のように(実施例1及び8)1段階又は2段階分析によって分析される。阻害価の測定は、上述のKasper, C. K. et al., 前出、実施例8によるベセスダ分析である。
【0198】
実施例10
Klenow 断片、リン酸化Cla1リンカー、Not1リンカー、T4リガーゼ、及びTaqDNAポリメラーゼはPromega (Madison, Wisconsin)から購入した。ポリヌクレオチド・キナーゼはLife Technologies, Inc., Gaithersburg, Maryland から購入した。γ32P−ATP(Redivue, >5000 Ci/mmol)はAmersham から購入した。pBluescript II KS-及びE. coli Epicurean XL1 Blue 細胞はStratagene (La Jolla, California)から購入した。合成オリゴヌクレオチドはLife Technologies Inc.又はCruachem, Inc. から購入した。クローニングのためにPCR産物を生成するときは、5’リン酸化プライマーを用いた。ブタVIII因子cDNA又はゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のためのプライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド(nt)番号づけにはヒトVIII因子cDNAを基準として用いる(Wood et al., (1984) 前出)。
【0199】
ブタ脾臓全RNAが、酸グアニジューム・チオシアネート−フェノール−クロロフォルム抽出法によって単離された[Chomczynski et al., (1987) Anal. Biochem. 162: 156-159]。全脾臓RNAからブタのcDNAが、別に断らない限り、Moloney マウス白血病ウイルス逆転写酵素(RT)及び反応を開始させるためにランダム・ヘキサマーを用いて調製された(First-Strand cDNA 合成キット、Pharmacia Biotech)。RT反応は45mM Tris−Cl、pH8.3,68mM KCl、15mM DTT、9mM MgCl2、0.08mg/mlのウシ血清アルブミン及び1.8mM デオキシヌクレオチド・トリフォスフェート(dNTP)を含んでいた。ブタのゲノムDNAが脾臓から、標準的な手順(Strauss, W. M. (1995) 分子生物学における現行のプロトコル、F.M. Ausubel et al. 編、John Wiley & Sons, pp. 2.2.1-2.2.3)を用いて単離された。アガロース・ゲルからのDNAの単離はGeneclean II(Bio 101)又はQuiex II ゲル抽出キット(qiagen)を用いて行われた。
【0200】
PCR反応は、Hybaid OmmGene サーモサイクラーを用いて行われた。TaqDNAポリメラーゼを用いたPCR反応では、反応物には0.6mM MgCl2、0.2mM dNTP、0.5μM オリゴヌクレオチド・プライマー、50U/mlポリメラーゼ及び0.1体積の第一ストランドcDNA反応ミックスが含まれていた。別に断らない限り、PCR産物はゲル精製され、Klenow 断片によってブラント末端化し、エタノールで沈澱させ、脱リン酸化pBluescript II KS- のEcoRV部位に結紮するか又はT4リガーゼを用いてリン酸化ClaIリンカーに結合し、ClaIによって消化し、Sephacryl S400 クロマトグラフィーによって精製し、ClaIカット脱リン酸化pBluescript II KS- に結合した。別に断らない限り、結合はT4DNAリガーゼを用いて行われた(Rapid DNA ligation Kit, Boehringer Mannheim)。インサートを含むpBluescript II KS-プラスミドを用いてE. coli Epicurean XL1-Blue 細胞を形質転換した。
【0201】
プラスミドDNAの塩基配列決定は、Applied Biosystems 373a 自動DNAシーケンサー及びPRISMダイ・ターミネーター・キットを用いて、又はSequenase v. 2.0 シーケンシング・キット(Amersham Corporation)を用いて手動で行った。PCR産物の直接塩基配列決定は、オリゴヌクレオチドの32P-末端のラベリングを含めて、サイクル塩基配列プロトコルを用いて行われた(dsDNAサイクル・シーケンシング・システム、Life Technologies)。
【0202】
5’UTRシーケンス、シグナルペプチド、及びA1ドメイン・コドンを含むブタVIII因子cDNAクローンの単離
A2ドメインへのブタVIII因子cDNA5’は、雌ブタ脾臓全RNAのネスティッド(nested)RT−PCRによりcDNA末端の5’迅速増幅(5’−RACE)プロトコルを用いて増幅された(Marathon cDNA増幅、Clontech, Version PR55453)。これは、ロックドッキング・オリゴ(dT)プライマーを用いる第一ストランドcDNA合成[Borson, N.D. et al., (1992) PCR Methods Appl. 2: 144-148]、E. coli DNAポリメラーゼIを用いる第二ストランドcDNA合成、及び5’拡張二本鎖アダプター、配列番号13 5’−CTA ATA CGA CTC ACT ATA GGG CTC GAG CGG CCG CCC GGG CAG GT−3
3’−H2N−CCCGTCCA−PO4−5’
による結合が含まれ、この短い鎖は非特異的なPCRプライミングを減らすためにアミノ基で3’末端がブロックされており、それは3’末端の8つのヌクレオチドと相補的であった(Siebert, P. D., et al., (1995) Nucleic. Acids. Res. 23: 1087-1088)。PCRの第一ラウンドは、アダプター特異的なオリゴヌクレオチド、配列番号14 5’−CCA TCC TAA TAC GAC TCA CTA TAG GGC−3’(AP1と呼ばれる)をセンス・プライマーとして用い、ブタVIII因子A2ドメイン特異的オリゴヌクレオチド、配列番号15 5’−CCA TTG ACA TGA AGA CCG TTT CTC−3’(nt2081〜2104)をアンチセンス・プライマーとして用いて行われた。PCRの第二ラウンドは、ネスティッド(nested)、アダプター特異的なオリゴヌクレオチド、配列番号16 5’−ACT CAC TAT AGG GCT CGA GCG GC−3’(AP2と呼ばれる)をセンス・プライマーとして用い、ネスティッド(nested)、ブタA2ドメイン特異的オリゴヌクレオチド、配列番号17 5’−GGG TGC AAA GCG CTG ACA TCA GTG−3’(nt1497〜1520)をアンチセンス・プライマーとして用いて行われた。PCRは, 抗体で媒介されるホット・スタート手順を採用した市販のキット(Advantage cDNA PCR core kit )を用いて行われた[Kellog, D. E. et al., (1994) BioTechniques 16: 1134-1137]。PCR条件は、94℃で60秒間の変性、続いて30サイクル(第一のPCR)又は25サイクル(第二のPCR)の94℃での30秒間の変性、30秒間60℃でのアニーリング、そしてチューブ温度を制御して4分間68℃での伸長であった。この手順で、プロミネント(prominent)=1.6kbの産物が得られたが、これは、5’UTRへ150bp延びている断片の増幅と矛盾しない。PCR産物は、ClaIリンカーを用いてpBluescript にクローニングされた。4つのクローンのインサートが両方向で配列決定された。
【0203】
これらのクローンの配列には、137bpの5’UTR、シグナルペプチド、A1ドメイン及びA2ドメインの一部が含まれていた。4部位の少なくとも3つで一致に達していた。しかし、クローンは平均して4つのPCRで発生したと見られる突然変異を含んでおり、これは、複数のラウンドのPCRがクローニング可能な産物を生成するために必要とされたためであると思われる。従って、我々は、配列を確認するための別のPCR産物の合成のために、そしてクローニングして発現ベクターにするために、シグナルペプチド領域から得られた配列を用いてセンス鎖リン酸化PCRプライマー、配列番号18
【0204】
【化1】
【0205】
、RENEOPIGSPと呼ばれるもの、を設計した。太字の配列は開始コドンを表している。これへの配列5’は、VIII因子の発現に用いられる哺乳類発現ベクターReNeoへの挿入部位の5’と同一の配列である(Lubin et al., (1994) 前出)。この部位はXhol開裂部位を含んでいる(下線)。RENEOPIGSPとnt1497〜1520オリゴヌクレオチドを用いて、雌ブタ脾臓cDNAをテンプレートとして用いるTaqDNAポリメラーゼに媒介されるPCR反応を開始させた。他のいくつかのメーカーからのDNAポリメラーゼは検出できるほどの産物を生成できなかった。PCR条件は、94℃で4分間の変性、続いて94℃で1分間の変性を35サイクル、55℃で2分間のアニーリング、及び72℃で2分間の伸長、その後72℃で5分間の最終伸長ステップ、であった。PCR産物は、ClaIリンカーを用いてpBluescript にクローニングされた。これらのクローンの二つのインサートが両方向で配列決定され、一致配列と突き合わせられた。
【0206】
A3、C1及びC2ドメイン・コドンの5’半部を含むブタVIII因子cDNAクローンの単離
最初、B−A3ドメイン断片(nt4519〜5571)とC1−C2ドメイン断片(nt6405〜6990)に対応する二つのブタ脾臓RT−PCR産物がクローニングされた。得られたC2ドメインの3’末端は、VIII因子の終端エクソンであるエクソン26領域にまで延びていた。B−A3産物は、ブタ特異的なBドメイン・プライマー、配列番号19 5’CGC GCG GCC GCG CAT CTG GCA AAG CTG AGT T 3’を用いて作られた。ここで下線の領域は、ブタのVIII因子においてヒトのVIII因子のnt4519〜4530と並ぶ領域に対応する。オリゴヌクレオチドの5’領域は、元来クローニングのためであったNotI部位を含んでいる。B−A3産物を生成するのに用いられるアンチセンス・プライマー、配列番号20 5’−GAA ATA AGC CCA GGC TTT GCA GTC RAA−3’、はヒトVIII因子cDNAのnt5545〜5571での配列の逆コンプリメントに基づいていた。PCR反応は、50mM KCl、10mM Tris−Cl、pH9.0,0.1%Triton X−100、1.5mM MgCl2、2.5mMdNTPs、20μMプライマー、25単位/mlTaqDNAポリメラーゼ、及び1/20体積のRT反応ミックスを含んでいた。PCR条件は、94℃で3分間の変性、続いて94℃で1分間の変性を30サイクル、50℃で2分間のアニーリング、そして72℃で2分間の伸長であった。PCR産物は、T4DNAキナーゼを用いてリン酸化され、NotIリンカーが加えられた。NotIでカットされた後、PCR断片はBlueScript II KS- のNotI部位にクローニングされ、XL1−Blue細胞に形質転換された。
【0207】
C1−C2産物は、知られているヒトcDNA配列を用いてセンス及びアンチセンス・プライマー、それぞれ、配列番号21 5’−AGG AAA TTC CAC TGG AAC CTT N−3’(nt6405〜6426)及び配列番号22 5’−CTG GGG GTG AAT TCG AAG GTA GCG N−3’(nt6966〜6990の逆コンプリメント)、を合成して作られた。PCR条件はB−A2産物を生成するのに用いられた条件と同一であった。得られた断片は、Prime PCR Cloner Cloning System (5 Prime-3Prime, Inc., Boulder, Colorado)を用いてpNOTクローニング・ベクターに結紮され、IM109細胞で育成された。
【0208】
B−A3及びC1−C2プラスミドを部分的に配列決定して、ブタ特異的なセンス及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、それぞれ、配列番号23 5’−GAG TTC ATC GGG AAG ACC TGT TG−3’(nt4551〜4573)及び配列番号24 5’−ACA GCC CAT CAA CTC CAT GCG AAG−3’(nt6541〜6564)を作った。これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、Clontech Advantage cDNA PCRキットを用いて2013bpのRT−PCR産物を生成した。この産物はヒトのnt4551〜6564に対応し、L鎖活性化ペプチド(nt5002〜5124)、A3ドメイン(nt5125〜6114)及びC1ドメイン(nt6115〜6573)の大部分に対応する領域を含んでいる。C1−C2クローンの配列から、ヒトとブタのcDNAがnt6565からC1ドメインの3’末端まで同一であるということが確立されていた。PCR産物はpBluescript II KS-のEcoRV部位にクローニングされた。4つのクローンの配列が両方向で完全に決定された。4部位のうち少なくとも3つで一致に達した。
【0209】
C2ドメイン・コドンの3’半部を含むブタVIII因子cDNAクローンの単離
ヒトのVIII因子のC2ドメイン(ヌクレオチド6574〜7053)は、エクソン24〜26の内部に含まれる[Gitschier J. et al., (1984) Nature 312: 326-330]。ヒトのエクソン26は、ヌクレオチド6901〜8858に対応する1958bpを含んでいる。これには1478bpの翻訳されない3’配列が含まれる。C2ドメインの3’末端及び3’UTRに対応するエクソン26cDNAをクローニングする試みは、3’RACEによるもの[Siebert et al., (1995) 前出]、逆PCRによるもの[Ochman, H. et al., (1990) Biotechnology (N.Y) 8: 759-760]、制限部位PCRによるもの[Sarkar, G. et al. (1993) PCR Meth. Appl. 2: 318-322]、「予測できない開始の」PCRによるもの[Dominguez, O. et al. (1994) Nucleic. Acids Res. 22: 3247-3248]及びブタ肝臓cDNAライブラリーのスクリーニングによるものも失敗した。3’RACEは、ブタのVIII因子cDNAの5’末端をクローニングするのに用いて成功した同じアダプター結合された二本鎖cDNAライブラリーを用いて試みられた。従って、この方法の失敗はエクソン26に対応するcDNAが存在しないためではない。
【0210】
C2ドメインの3’半部をクローニングするために標的遺伝子ウオーキングPCR法[Parker, J.D. et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 3055-3060]が用いられた。ブタ特異的なセンス・プライマー、配列番号25 5’−TCAGGGCAATCAGGACTCC−3’(nt6904〜6924)が最初のC2ドメイン配列に基づいて合成され、実験室で得られるオリゴヌクレオチドから選択される非特異的な「ウオーキング」プライマーによるPCR反応に用いられた。次に、32P末端標識されたブタ特異的な内部プライマー、配列番号26 5’−CCGTGGTGAACGCTCTGGACC−3’(nt6932〜6952)を用いて、PCR産物をプライマー延長分析の標的にした[Parker et al. (1991) BioTechniques 10: 94-101]。興味深いことに、テストされた40の非特異的プライマーのうち、二つだけがプライマー延長分析でポジティブな産物を与え、この二つはC2ドメインの3’末端におけるヒトの正確な配列及び縮重配列:配列番号27 5’−GTAGAGGTCCTGTGCCTCGCAGCC−3’(nt7030〜7053)及び配列番号28 5’−GTAGAGSTSCTGKGCCTCRCAKCCYAG−3’(nt7027〜7053)に対応していた。これらのプライマーは、最初に通常のRT−PCRによって産物を得ようとして設計されたが臭化エチジューム色素結合によって目に見えるようにできるほど十分な産物を得られなかったものである。しかし、PCR産物はより敏感なプライマー延長法によって同定することができた。この産物をゲル精製して直接配列を決定した。これによってブタVIII因子3’の配列がnt7026まで延長された。
【0211】
前述の5’−RACEプロトコルで用いられたアダプター結合された二本鎖cDNAライブラリーを用いて生成されたネスティッドPCR産物のプライマー延長分析によって別の配列が得られた。第一ラウンドの反応では、ブタの正確なプライマー 配列番号29 5’−CTTCGCATGGAGTTGATGGGCTGT−3’(nt6541〜6564)及びAP1プライマーが用いられた。第二ラウンドの反応では、配列番号30 5’−AATCAGGACTCCTCCACCCCCG−3’(nt6913〜6934)及びAP2プライマーが用いられた。直接のPCR配列決定によって配列3’がC2ドメインの終わり(nt7053)まで延長された。C2ドメインの配列はC2ドメインの3’末端の近くのnt7045を除きユニークであった。反復されたPCR反応の分析からこの部位ではA、G、又はA/Gの二重の読みが生じた。
【0212】
二つの追加プライマー、配列番号31 5’−GGA TCC ACC CCA CGA GCT GG−3’(nt6977〜6996)及び配列番号32 5’−CGC CCT GAG GCT CGA GGT TCT AGG−3’(nt7008〜7031)を用いて配列決定が3’UTRにまで延長された。ほぼ15bpの3’UTR配列が得られたが、配列はいくつかの部位で明瞭でなかった。次に、3’未翻訳配列についての最良の推定に基づいていくつかのアンチセンス・プライマーが合成された。これらのプライマーはその3’末端にTGA停止コドンの逆コンプリメントを含んでいた。ある特定センス・プライマー配列番号33 5’−AAT CAG GAC TCC TCC ACC CCC G−3’(nt6913〜6934)と3’UTRアンチセンス・プライマー、配列番号34 5’−CCTTGCAGGAATTCGATTCA−3’を用いて、アガロースゲル電気泳動と臭化エチジューム染色によって目に見えるPCR産物がブタ脾臓ゲノムDNAとブタ脾臓cDNAの両方から得られた。クローニングのために十分な量の物質を得るために、第二ラウンドのPCRがネスティッドセンス・プライマー、配列番号35 5’−CCGTGGTGAACGCTCTGGACC−3’(nt6932〜6952)と同じアンチセンス・プライマーを用いて行われた。141bpのPCR産物はEcoRV−カットpBluescript II KS-にクローニングされた。ゲノムDNAから得られた3つのクローン及びcDNAから得られた3つのクローンの配列が両方向で得られた。nt7045を除いて配列は曖昧さがなく明瞭であったが、nt7045ではゲノムDNAは常にAであり、cDNAは常にGであった。
【0213】
ヒト、ブタ、及びマウスVIII因子の多数DNA配列の比較整列(図1A〜1H)
シグナルペプチド、A1、A2、A3、C1及びC2領域の比較整列が、CLUSTALWプログラム[Thompson, J.D. et al. (1994) Nucleic. Acids. Res. 22: 4673-4680]を用いて行われた。ギャップ・オープン及びギャップ・イクステンションのペナルティーは、それぞれ、10及び0.05であった。ヒト、マウス及びブタBドメインの比較整列については前に述べた[Elder et al. (1993) 前出]。ヒトA2配列は、配列番号2におけるアミノ酸373〜740に対応する。ブタのA2アミノ酸配列は配列番号4に与えられており、マウスA2ドメイン・アミノ酸配列は配列番号6、アミノ酸392〜759に与えられている。
【0214】
実施例11. 活性な、組み換えB−ドメインレス・ブタVIII因子(PB-)
材料
クエン酸塩添加血友病A及び正常なプールされたヒト血漿はGeorge King Biomedical, Inc. から購入した。胎仔うし血清、ジェネティシン(geneticin)、ペニシリン、ストレプトマイシン、DMEM/F12培地及びAIM−V培地はLife Technologies, Inc. から購入した。TaqDNAポリメラーゼはPromegaから購入した。VentDNAポリメラーゼはNew England Biolabsから購入した。 PfuDNAポリメラーゼとファージミド(phagemid)pBlueScript II KS-はStratageneから購入した。合成オリゴヌクレオチドはLife Technologies又はCruachem, Inc. から購入した。制限酵素はNew England Biolabs又はPromegaから購入した。クローニングのためにPCR産物を生成するときには、5’リン酸化プライマーを用いた。ブタVIII因子cDNA又はゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド(nt)番号付けではヒトVIII因子cDNAを基準として用いる[Wood et al. (1984) Nature 312: 330-337]。VIII因子発現ベクター(HB-/ReNeoと呼ばれる)は、Biogen, Inc.から入手した。HB-/ReNeoは、アンピシリン(ampicillin)及びジェネティシン(geneticin)耐性遺伝子及びトロンビンで生成されたSer741〜Arg1648開裂断片と定義される、Bドメイン全体を欠いたヒトVIII因子cDNAを含んでいる。ReNeoのVIII因子インサートの3’末端にあるVIII因子C2ドメインcDNAの突然変異誘発を簡単にするために、NotI部位がHB-/ReNeoの停止コドンに対して2塩基3’に、オーバラップスプライシング延長(SOE)突然変異誘発によって導入された[Horton, R.M. et al. (1993) Methods Enzymol. 217: 270-279]。この構築体はHB-Neo/NotIと呼ばれる。
【0215】
全RNAは、酸グアニジウム・チオシアネート−フェノール−クロロフォルム抽出によって単離された[Chomczynski, P. et al. (1987) Anal. Biochem. 162: 156-159]。cDNAはmRNAからMoloneyマウス白血病ウイルス逆トランスクリプターゼ(RT)とランダム・ヘキサマーをメーカー(First-Strand cDNA合成キット、Pharmacia Biotech)からの指示に従って用いて合成された。プラスミドDNAは、Qiagen Plasmid Maxi Kit (Qiagen, Inc.)を用いて精製された。PCR反応は、Hybaid OmniGene サーモサイクラーを用い、Taq、Vent又はPfuDNAポリメラーゼを用いて行われた。PCR産物は、ゲル精製され、エタノールで沈澱され、T4DNAリガーゼを用いてプラスミドDNAに結合された(迅速DNA結紮キット、Boehringer Mannheim)。インサートを含むプラスミドを用いて、E.coliEpicurean XL1-Blue細胞を形質転換させた。PCRによって生成された全ての新しいVIII因子DNA配列は、Applied Biosystems 373a 自動DNAシーケンサーとPRISM色素ターミネーター・キットを用いるジデオキシ配列決定法によって確認された。
【0216】
ブタC2ドメインを含むハイブリッドVIII因子発現ベクターHP20の構築
C1ドメインの3’末端及びC2ドメインの全部に対応するブタVIII因子cDNAが、既知のブタVIII因子cDNA配列に基づくプライマーを用いて脾臓全RNAからRT−PCRによってpBluescriptにクローニングされた[Healy, J.F. et al. (1996) Blood 88: 4209-4214]。この構築体及びHB-/ReNeoをテンプレートとして用いて、SOE突然変異誘発によってヒトC1−ブタC2融合生成物をpBlueScriptに構築した。このプラスミドのC1−C2断片がApaI及びNotIによって取り出され、ApaI/NotIカットHB-/ReNeo/NotIに結合され、HP20/ReNeo/NotI が生成された。
【0217】
ブタ軽鎖を含むBドメイン削除ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築(HP18)−
ヒトVIII因子L鎖はアミノ酸残基Asp1649〜Tyr2332から成る。ブタVIII因子cDNAの対応する残基がHB-のこの領域に置換されて、HP18と呼ばれるハイブリッドヒト/ブタVIII因子cDNA分子が生成された。これは、ブタのA2領域、A3ドメイン、C1ドメイン、及びC2ドメインの一部に対応するPCR産物をHP20の対応する領域に置換することによって行われた。構築を容易にするために、同義的なAvrII部位が、SOE突然変異誘発によってHP20のA2及びA3ドメインの接合部のnt2273に導入された。
【0218】
ブタシグナルペプチド、A1ドメイン、及びA2ドメインを含むBドメイン削除ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築(HP22)−
ヒトVIII因子シグナルペプチド、A1ドメイン及びA2ドメインは、アミノ酸残基Met(−19)〜Arg740から成る。ブタVIII因子cDNAの対応する残基がHB-のこの領域に置換されて、HP18と呼ばれる分子が生成された。さらに、同義的なAvrII部位が、SOE突然変異誘発によってHP22のA2及びA3ドメインの接合部のnt2273に導入された。HP22はブタシグナルペプチド−A1−部分A2断片をpBlueScript[Healy et al. (1996) 前出]で、HP1と呼ばれるブタA2ドメインを含むB−ドメイン欠如ハイブリッドヒト/ブタVIII因子[Lubin et al. (1994) 前出]と融合させることによって構築された。
【0219】
ブタBドメイン欠如VIII因子の構築(PB - )
HP18/BS(+AvrII)のSpeI/NotI断片がAvrII/NotIで消化され、AvrII/NotI消化されたHP22/BS(+AvrII)に結合されて、Bドメイン全体を欠くブタVIII因子である構築体PB-/BS(+AvrII)が生成された。PB−/BS(+AvrII)のXba/NotI断片をHP22/ReNeo/NotI(+AvrII)に結合することによってPB−がReNeoにクローニングされた。
【0220】
組み換えVIII因子分子の発現
PB-/ReNeo/NotI(+AvrII)及びHP22/ReNeo/NotI(+AvrII)が前に述べたように[Lubin,I.M. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269: 8639-8641]、COS細胞に一時的に形質移入され、発現された。HB-/ReNeo/NotI及びnoDNA(疑似)が対照として移入された。
【0221】
PB-、HP22,及びHB-のVIII因子活性が次のように色素産生分析によって測定された。COS細胞培養上澄みのサンプルが、0.15M NaCl、20mM HEPES、5mM cAC12、0.01%Tween−80,pH7.4の中で10nMのIXa因子、425nM X因子及び50μM単層ホスファチジルセリン−ホスファチジルコリン(25/75w/w)小胞の存在下で40nMトロンビンによって活性化された。5分後、0.05M EDTAと100nM組み換えデスルファトヒルジンによって反応を停止させ、得られたXa因子を色素産生基質分析によって測定した。色素産生基質分析では、0.4mM Spectrozyme Xaを加えて、パラ−ニトロアニリド放出の速さを405nmでの溶液の吸光度を測定することによって測定した。
【0222】
独立に形質移入された重複細胞培養上清の結果(405nmでの毎分の吸光度)
HB- : 13.9
PB- :139
HP22:100
疑似:<0.2
これらの結果は、ブタBドメイン欠如VIII因子およびブタA1及びA2サブユニットから成るBドメインレスVIII因子が活性を有することを示しており、ヒトBドメインレスVIII因子よりも高い活性を有することを示唆している。
【0223】
PB- が、ヘパリン−セファロース・クロマトグラフィーによって、増殖培地から部分的に精製され濃縮された。ヘパリン−セファロース(10ml)を0.075M NaCl、10mM HEPES、2.5mM CaCl2、0.005%Tween−80、0.02%窒化ナトリウム、pH7.40と平衡させた。発現する細胞からの培地(100〜200ml)をヘパリン−セファロースに加え、それを30mlの窒化ナトリウムを含まない平衡緩衝液で洗浄した。PB-は、0.65M NaCl、20mM HEPES、5mM CaCl2、0.01%Tween−80、pH7.40で溶出させ、−80℃で貯蔵した。VIII因子凝固活性の収率は普通50−75%であった。
【0224】
ブタBドメイン欠如VIII因子(PB - )の安定な発現
形質移入された細胞ラインは、10%胎仔ウシ血清、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコの修正イーグル培地−F12で維持された。胎仔ウシ血清は、使用する前に50℃で1時間加熱して不活性化された。HB-/ReNeo及びPB-/ReNeo/NotI(+AvrII)はBHK細胞に安定に形質移入され、発現する細胞は600μg/mlのジェネティシンを含む増殖培地で維持されることを除き前に述べた一般的なプロトコル[Lubin et al. (1994) Biol. Chem. 269: 8639-8641]を用いてジェネティシン耐性に関して選抜された。集密まで増殖させたコーニングT−75フラスコからの細胞を、Nuncトリプル・フラスコの600μg/mlのジェネティシンを含む培地に移し、集密まで増殖させた。培地を除去し、血清を含まない、ジェネティシンを含まないAIM−V培地(Life Technologies, Inc.)に代えた。VIII因子の発現が一段VIII因子凝固活性(上記参照)によってモニターされ、100〜150mlの培地が一日一回、4乃至5日間集められた。HB-及びPB-の培地での最大発現レベルは、VIII因子凝固活性で、それぞれ、1mlあたり102単位及び1mlあたり10〜12単位であった。
【0225】
PB - の精製
60%飽和硫酸アンモニウムによって培養上澄みからPB-を沈澱させ、次に、血漿由来ブタVIII因子の精製に関して前に述べたように[Lollar et al. (1993) VIII因子/VIIIa因子. Methods Enzymol. 222: 128-143]W3−3インムノアフィニティー・クロマトグラフィー及びモノQ高圧液体クロマトグラフィーによって精製した。PB-の 特異的凝固活性は一段凝固分析[Lollar et al. (1993) 前出]によって測定されたが、血漿由来のブタVIII因子と同様であった。
【0226】
SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で分析すると、PB-調製物は見かけの分子質量が160kDa、82kDa、及び76kDaという3つのバンドを含んでいた。82kDa及び76kDaのバンドは、前にA1−A2及びap−A3−C1−C2ドメインを含むヘテロダイマーとして記述されている(ここでapは活性化ペプチドを指す)[Toole et al. (1984) Nature 312: 342-347]。160kDaのバンドは、フッ化ポリビニリデン膜に移され、NH2−末端の配列決定が行われ、単一鎖VIII因子のNH2末端配列であるArg−Ile−Xx−Xx−Tyr(ここでXxは未決定を表す)が得られた[Toole et al. (1984) 前出]。すなわち、PB-は部分的にA2及びA3ドメインの間の開裂によって、二つの形態、単一鎖A1−A2−ap−A3−C1−C2タンパク質とA1−A2/ap−A3−C1−C2ヘテロダイマー、から成るように処理される。組み換えHB- の同様な処理が報告されている[Lind et al. (1995) Eur. J. Biochem. 232: 19-27]。
【0227】
ブタVIII因子の特性決定
我々は、5’UTRの137bp、シグナルペプチド・コーディング領域(57bp)、及びA1(1119bp)、A3(990bp)、C1(456bp)、及びC2(483bp)ドメインに対応するブタVIII因子のcDNA配列を決定した。以前に発表したBドメイン及び軽鎖活性化ペプチド領域[Toole et al. (1986) 前出]及びA2ドメイン[Lubin et al. (1994), 前出]の配列と合わせて、ここで報告される配列は翻訳された生成物に対応するブタVIII因子cDNAの決定を完成する。5’UTR領域、シグナルペプチド及びA1ドメインcDNAを含む断片が、5’−RACE RT−PCRプロトコルを用いてクローニングされた。ヒトC2配列に基づくプライマーは、A3,C1,及びC2ドメインの5’半部のクローニングに導くRT−PCR産物を生成することに成功した。C2ドメインの3’半部に対応するcDNA及び3’UTRcDNAはクローニングすることが難しいことが分かった。残りのC2ドメインは、結局、標的遺伝子ウオーキングPCR手順によってクローニングされた[Parker et al. (1991) 前出]。
【0228】
ここで報告される配列配列番号36は、C2ドメインの3’末端の近くのnt7045を除けば曖昧さがなく、このnt7045は上述のようにA又はGである。対応するコドンは、それぞれ、GAC(Asp)及びAAC(Asn)である。ヒト及びマウスコドンは、それぞれ、GAC及びCAG(Gln)である。これがポリモルフィズム(多形性)を表しているのか、それとも再現性があるPCRのアーチファクトであるのか、分かっていない。GAC及びAACの両方のコドンに対応するブタC2ドメイン置換を含む組み換えハイブリッドヒト/ブタB−ドメインレスVIII因子cDNAは安定して発現され、プロ凝固活性に何も検出できる差異はない。このことは、これら二つのC2ドメインの変型には何も機能的な差異はないということを示している。
【0229】
ブタVIII因子全長の予測されるアミノ酸配列配列番号37と、発表されているヒト[Wood et al. (1984) 前出]及びマウス[Elder et al. (1993) 前出]の配列との比較整列(アラインメントalignment)が図1A〜1Hに、翻訳後の変更、タンパク質分解開裂、及び他の巨大分子による認識の部位と合わせて示されている。整列させた配列の同一度が表VII に示されている。前に述べたように、これらの種のBドメインは、AドメインやCドメインよりも開きが大きい。これは、大きなサイズにも関わらずBドメインには知られている機能が何もないという所見[Elder et al. (1993) 前出;Toole et al. (1986) 前出]と矛盾しない。本発明の結果は、ブタVIII因子のBドメインは活性にとって必要ないということを裏付けている。本明細書に示された配列データに基づいて、ブタBドメインのコドンの全部又は一部を削除されたブタVIII因子をコードするDNAを発現させることによって、Bドメインの全部又は一部を削除されたブタVIII因子を合成することができる。A1ドメインAPC/IXa因子開裂ペプチド(残基337〜372)及びL鎖活性化ペプチドに対応する配列にも大きな開きがある(表VII )。この337〜372ペプチドを生成するための位置336におけるトロンビン開裂部位は、マウスではこの残基がアルギニンではなくグルタミンであるため明らかに失われている[Elder et al. (1993) 前出]。トロンビン開裂ペプチド(又はマウスVIII因子では、痕跡である可能性がある337〜372活性化ペプチド)の比較的急速な開きはフィブリノペプチドについて以前に注意されている[Creighton, T.E. (1993) タンパク質:構造及び分子的性質、W.H. Freeman, New York, pp. 105-138、の中で]。開裂した後のこれらのペプチドが機能を欠いていることが急速な開きの理由かもしれないと言われてきた。ヒトVIII因子におけるArg562は、VIII因子及びVIIIa因子の不活性化の際の活性化されたタンパク質Cの重要な開裂部位であると提唱されている[Fay, P.J. (1991) J. Biol. Chem. 266: 20139-20145]。この部位はヒト、ブタ、及びマウスのVIII因子で保存されている。
【0230】
可能なN−結合グリコシル化部位(NXS/T、ここでXはプロリンでない)が図1A〜1Hに見られる。保存されているN−結合グリコシル化部位は8つある:1つはA1ドメインに、1つはA2ドメインに、4つはBドメインに、1つはA3ドメインに、そして1つはC1ドメインにある。A及びCドメインの19のシステインは保存されているが、Bドメインのシステインでは開きがある。VIII因子における7つのジスルフィド結合のうち6つはV因子およびセルロプラスミンの相同部位にあり、両方のCドメインのジスルフィド結合はV因子に見られる[McMullen, B.A. (1995) Protein Sci. 4: 740-746]。ヒトVIII因子は硫酸化チロシンを位置346、718、719、723、1664及び1680に含んでいる[Pittman, D.D. et al. (1992) Biochemistry 31: 3315-3325; Michnick, D.A. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:20095-20102]。これらの残基はマウスVIII因子及びブタVIII因子で保存されるが(図1)、CLUSTALWプログラムはヒトVIII因子におけるTyr346に対応するマウスのチロシンを整列させることができなかった。
【0231】
マウス及びブタの血漿は、ヒト血友病A血漿の凝固欠陥を矯正することができ、これはこれらの種のA及びCドメインにおける残基の保存レベルと合致する。ブタVIII因子のプロ凝固活性はヒトVIII因子の活性よりも高い[Lollar, P. et al. (1992) J. Biol. Chem. 267: 23652-23657]。ここで述べたように発現され精製される組み換えブタVIII因子(Bドメインを削除したもの)もまた、ヒトVIII因子よりも大きな比(specific)プロ凝固活性を示し、血漿から得られるブタVIII因子と同程度である。これは、活性A1/A2/A3−C1−C2VIIIa因子ヘテロトリマーからのA2サブユニットの自発解離率の減少によるものかもしれない。プロ凝固活性のこの差異が種の適応の一例としての機能の進化的変化を反映しているかどうか[Perutz, M.F. (1996) Adv. Protein Chem. 36: 213-244]はまだ分からない。今や翻訳される産物に対応するブタVIII因子cDNA配列は完全であるから、相同体スキャンニング突然変異誘発[Cunningham, B.C., et al. (1989) Science 243: 1330-1336]が、ヒトとブタのVIII因子の間に、後者の優れた活性の原因となっている構造的な差異を同定する手段を提供するかもしれない。
【0232】
普通、ブタVIII因子は、VIII因子を移入された血友病患者で生ずる、又は一般人において自己抗体として生ずる阻害的な抗体とあまり反応しない。これが、阻害的な抗体を有する患者の管理でブタVIII因子濃縮物を用いる根拠である[Hay and Lozier (1995) 前出]。たいていの阻害因子はA2ドメイン又はC2ドメインにあるエピトープに向けられている[Fulcher, C.A. et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7728-7732; Scandella, D. et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 6152-6156; Scandella, D. et al. (1989) Blood 74: 1618-1626]。さらに、A3又はC1ドメインにある重要性が不明のエピトープが同定されている[Scandella et al. (1989) 前出;Scandella, D. et al. (1989) Blood 82: 1767-1775; Nakai, H. et al. (1994) Blood 84: 224a]。相同体走査突然変異誘発によってA2エピトープが残基484〜508にマップされている[Healey et al. (1995) 前出]。この25残基のセグメントでは、同一配列の比率が比較的低い(16/25又は64%)。この領域は、それに対する抗体が阻害的であるという事実に基づくと機能的に重要であると思われるが、それが明らかに比較的急速に遺伝的にドリフトしてきたということは興味深い。ブタA2ドメイン及びA3ドメインの比較整列は、A2エピトープがA3ドメインの対応する領域と検出できるほどの相同性を有していないことを示している。
【0233】
削除マッピングによって、ヒトVIII因子のC2阻害因子エピトープを残基2248〜2312の内部に位置づけることが提案されている[Scandella, D. et al. (1995) Blood 86: 1811-1819]。この65残基のセグメントではヒトとブタのVIII因子は83%同一である。しかし、C2エピトープを調べるためのこの領域の相同体走査突然変異誘発から、C2エピトープの主要な決定因子は予想外にもヒトのアミノ酸2181〜2243(配列番号2)及び図1Hに対応する領域にあったことを明らかにした。
【0234】
ヒトVIII因子のC2ドメインのいろいろな部分がブタVIII因子の対応する部分で置き換えられたヒト−ブタ・ハイブリッドVIII因子タンパク質が、本明細書で述べた戦略を用いて作られた(実施例8)。いろいろなC2−ハイブリッドVIII因子の合成は、配列番号37に与えられているブタC2領域をコードするヌクレオチド配列を用いてハイブリッドをコードするDNAを構築することによって遂行された。各ハイブリッドDNAは、形質移入された細胞で、ハイブリッドVIII因子を成長培地から部分的に精製できるほどに発現された。阻害因子がないときの活性が一段凝固分析によって測定された。
【0235】
5つのヒト阻害因子の組を用いて各ハイブリッドVIII因子をテストした。抗VIII因子抗体を含む阻害血漿は、組み換えヒトC2ドメインがその阻害を中和できることに基づいてヒトC2ドメインに向けられたものであることが以前に示されていた。全てのテスト血漿において、阻害価はC2ドメイン又はL鎖によって79%より大きく中和されたが、ヒト組み換えA2ドメインによっては10%未満しか中和されなかった。さらに、C2−ハイブリッドVIII因子は、C2ドメインと結合するマウスのモノクローナル抗体に対してテストされ、ヒトC2阻害因子抗体と同様に、それはVIII因子のリン脂質及びフォン・ビレブランド因子との結合を阻害した。
【0236】
抗体阻害価をC2−ハイブリッドVIII因子と比較することによって、ヒトC2阻害因子エピトープの主要な決定因子は残基2181〜2243の領域(配列番号2、図1Hも参照)であることが示された。OOOH末端から残基2253までの領域に向けられた抗C2抗体は、5つの患者血清のうち4つで同定されなかった。ヒトのアミノ酸残基番号2181〜2199及び2207〜2243に対応するブタの配列を比較すると、二つの領域が抗体結合に寄与していることは明らかであった。ヒトの残基2181〜2243に対応するブタのアミノ酸配列は配列番号37において1982〜2044という番号になっている。1982〜2044という番号のブタアミノ酸をコードするブタの配列は、配列番号35において5944〜6132という番号のヌクレオチドである。
【0237】
図1Hを参照すると、領域2181〜2243にはヒトとブタの配列に16のアミノ酸の差異があることが分かる。差異は、残基2181、2182、2188、2195〜2197、2199、2207、2216、2222、2224〜2227、2234、2238及び2243に見られる。これらの番号の残基の1以上でアミノ酸の置換を行って、ヒトの抗C2阻害因子抗体に反応しない修飾されたヒトVIII因子を作ることができる。アラニン走査的突然変異誘発は、前述のように、天然に見られる残基に対するアラニン置換を生成するのに便利な方法である。本明細書で述べているように、アラニン以外のアミノ酸で置換することもできる。個々のアミノ酸、特にヒト/ブタ又はヒト/マウスの間で同一でないもの、又は抗体結合に最も寄与しそうなもの、のアラニン置換によって、阻害的な抗体に対する反応性が低い修飾されたVIII因子を生み出すことができる。
【0238】
さらに、残基2181〜2243という定められた領域に免疫抗原的である可能性が低いアミノ酸を挿入するという戦略は免疫抗原性の低い修飾されたVIII因子を生み出す。免疫抗原性の低いVIII因子は、血友病Aの患者の治療に天然の配列のVIII因子よりも好ましいVIII因子サプリメントとして有用である。免疫抗原性の低いVIII因子によって治療された患者は阻害的な抗体を生じにくく、したがって、生涯にわたる治療の効果の低さに苦しむことも少なくなりそうである。
【0239】
図1A〜1Hを合わせたものは、ヒト、ブタ、及びマウスのVIII因子アミノ酸配列を整列比較したものになっている。図1Aは、シグナルペプチド領域を比較している(ヒト、配列番号40;ブタ、配列番号37、アミノ酸1〜19;マウス、配列番号6、アミノ酸1〜19)。図1A〜1Hにおけるアミノ酸は成熟タンパク質の最初のアラニンをアミノ酸番号1として番号づけされており、シグナルペプチドのアミノ酸にはマイナスの番号が割り当てられているということに注意しよう。配列番号2におけるヒトのVIII因子配列も成熟タンパク質の最初のアラニンをアミノ酸番号1として始まっている。マウスVIII因子(配列番号6)及びブタVIII因子(配列番号37)のアミノ酸配列では、成熟タンパク質の最初のアミノ酸(アラニン)はアミノ酸番号20である。図1A〜1Hは、ヒト、マウス、及びブタのVIII因子の対応する配列を、最大のアミノ酸同一度の領域が並ぶように整列させて示している。図1A〜1Hのアミノ酸番号はヒトのVIII因子にしか適用されない。
【0240】
図1Bは、ヒト(配列番号2、アミノ酸1〜372)、ブタ(配列番号37、アミノ酸20〜391)及びマウス(配列番号6、アミノ酸20〜391)のA1ドメインのアミノ酸配列を与えている。図1Cは、ヒト(配列番号2、アミノ酸373〜740)、ブタ(配列番号37、アミノ酸392〜759)及びマウス(配列番号6、アミノ酸392〜759)のVIII因子A2ドメインのアミノ酸配列を与えている。図1Dは、ヒト(配列番号2、アミノ酸741−1648)、ブタ(配列番号37、アミノ酸760〜1449)、及びマウス(配列番号6、アミノ酸760〜1640)のVIII因子Bドメインのアミノ酸配列を与えている。
【0241】
図1Eは、ヒト、ブタ及びマウス(それぞれ、配列番号2、アミノ酸1649〜1689;配列番号37、アミノ酸1450〜1490;配列番号6、アミノ酸1641〜1678)のVIII因子のL鎖活性化ペプチドのアミノ酸配列を比較している。図1Fは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のA3ドメインの配列比較を行っている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸1690〜2019;配列番号37、アミノ酸1491〜1820;配列番号6、アミノ酸1679〜2006)。図1Gは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のC1ドメインのアミノ酸配列を与えている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸2020〜2172;配列番号37、アミノ酸1821〜1973;配列番号6、アミノ酸2007〜2159)。図1Hは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のC2ドメインの配列データを与えている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸2173〜2332;配列番号37、アミノ酸1974〜2133;配列番号6、アミノ酸2160〜2319)。
【0242】
ダイアモンドはチロシン硫酸化部位、IXa因子、リン脂質及びタンパク質Cに関して提案されている結合部位は二重に下線が引かれており、抗A2及び抗C2阻害的抗体の結合に関わる領域はイタリックになっている。星印は保存されるアミノ酸配列を強調している。配列番号36(ブタVIII因子cDNA)及び配列番号37(演繹されたブタVIII因子のアミノ酸配列)も参照。ヒトの番号づけシステムを基準として用いている(Wood et al. (1984) 前出)。A1、A2及びBドメインは、位置372と740のトロンビン開裂部位及び1648における未知のプロテアーゼ開裂部位によって、それぞれ、残基1〜372,373〜740及び741〜1648と定義される[Eaton, D.L. et al. (1986) Biochenistry 25: 8343-8347]。A3、C1及びC2ドメインは、それぞれ、残基1690〜2019、2020〜2172及び2173〜2332と定義される[Vehar et al. (1984) 前出]。トロンビン(IIa因子)、IXa因子、Xa因子及びAPCの開裂部位[Fay et al. (1991) 前出;Eaton, D. et al. (1986) Biochemistry 25: 505-512; Lamphear, B.J. et al. (1992) Blood 80: 3120-3128 ]は反応性のアルギニンの上に酵素ネームを付けて示している。酸性ペプチドはVIII因子L鎖からトロンビン又はXa因子によって位置1689で開裂される。IXa因子[Fay,P.J. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269: 20522-20527; Lenting, P.J. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:7150-7155]、リン脂質[Foster, P.A. et al. (1990) Blood 75: 1999-2004]及びタンパク質C[Walker, F.J. et al. (1990) J. Biol. Chem. 265: 1484-1489)]に関して提案されている結合部位は二重の下線が付けられている。抗A2の結合に関わる領域[Lubin et al. (1994) 前出; Healey et al. (1995) 前出];及び抗C2阻害的抗体について以前に提案された領域はイタリックになっている。ここで同定されたC2阻害因子エピトープ(ヒト・アミノ酸2181−2243)は図1Hに一本の下線で示されている。チロシン硫酸化部位[Pittman et al. (1992) 前出; Michnjck et al. (1994) 前出]は ◆で示されている。
【0243】
Bドメインを欠くVIII因子タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配列番号38で与えられ、対応する演繹されたアミノ酸配列は配列番号39で与えられている。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1Aは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1B】 図1Bは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1C】 図1Cは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1D】 図1Dは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1E】 図1Eは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1F】 図1Fは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1G】 図1Gは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【図1H】 図1Hは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較を提供している。
【配列表】
Claims (5)
- 配列番号2の490に対応する位置でのアミノ酸置換を含む修飾されたヒトVIII因子であって、前記置換は天然のアミノ酸に対して免疫反応性を減少させるアミノ酸を挿入するものであり、前記修飾されたVIII因子がプロ凝固活性を有することを特徴とする修飾されたVIII因子。
- 該修飾されたVIII因子は修飾されないVIII因子に比べて阻害的抗体に対する反応性が減少していることを特徴とする請求項1に記載の修飾されたVIII因子。
- 修飾されたヒトVIII因子A2ドメインをコードするDNAであって、前記DNAは配列番号2の490に対応する位置でコード変化を生ずる1以上のヌクレオチド置換を有し、前記変化は選ばれた位置において免疫反応性を減少させるアミノ酸をコードすることを特徴とするDNA。
- ヒト又はヒト/哺乳類ハイブリッドのVIII因子をコードするDNAの発現産物であって、前記DNAは修飾されたA2ドメインをコードするDNAを含み、該DNAは配列番号2の490に対応する位置でコード変化を生ずる1以上のヌクレオチド置換を有し、前記変化は選ばれた位置において免疫反応性を減少させるアミノ酸をコードすることを特徴とするDNAの発現産物。
- 修飾されたヒトVIII因子A2ドメインを作製する方法であって、
ヒトVIII因子の490に対応する位置でアミノ酸をコードする1以上のコドンで該ドメインをコードするDNAを突然変異させるステップ、
それによってアミノ酸をコードする1以上の突然変異したコドンが対応する天然に生ずるコドンに対して置換され、かつ前記突然変異は選ばれた位置において免疫反応性を減少させるアミノ酸をコードし、及び
該突然変異したコドンを含むDNAを、独立に又はVIII因子の別のドメインをコードするDNAとの隣接する翻訳可能な配列として、宿主細胞で発現させて修飾されたVIII因子A2ドメインを作製するステップ、
を含む、前記方法。
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