JP2003508019A - 修飾されたviii因子 - Google Patents

修飾されたviii因子

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Abstract

(57)【要約】 ヒトのVIII因子の特定アミノ酸の座が、VIII因子で治療された後に阻害的な抗体を生ずる血友病患者の抗体と相互作用する。A2ドメインの位置484〜508の1以上のアミノ酸で置換によってアミノ酸配列を変えて修飾されたVIII因子が開示される。修飾されたVIII因子は血友病者の凝固因子サプリメントとして有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出題に対するクロスリファレンス 本出願は、1999年5月20日付の米国特許出願第09/315,179号
からの優先権を請求するものである。
【0002】 連邦研究支援の承認 政府は、本発明に導く研究の資金を一部提供した国立衛生研究所助成金第42
46215号に基づき発生する本発明に対する権利を有する者である。
【0003】 発明の背景 本発明は一般に、ヒト及び動物のVIII因子アミノ酸配列をもつか又はヒト
VIII因子及び非VIII因子アミノ酸配列をもつハイブリッドVIII因子
、及びその調製及び使用方法に関する。
【0004】 血液凝固は、病巣部位において損傷を受けた血管の切断された壁に血小板が付
着した時に起こる。その後、酵素で調節される反応カスケードの中で、可溶性フ
ァブリノーゲン分子が、酵素トロンビンにより、血栓内で血小板をまとめて保持
するフィブリンの不溶性ストランドへと変換される。該カスケード内の各ステッ
プにおいて、タンパク質前駆物質は、系列内の次のタンパク質前駆物質を分割す
るプロテアーゼへと変換される。大部分のステップで補因子が必要となる。
【0005】 VIII因子は、フォン・ウィルブランド因子に対し非共有的にかつ密に結合
した血液中の不活性前駆物質として循環する。VIII因子は、トロンビン又は
Xa因子によってタンパク質分解的に活性化させられ、このトロンビン又はXa
因子がそれをフォン・ウィルブランド因子から解離させカスケード内のそのプロ
凝固性機能を活性化させる。その活性形態において、タンパク質VIIIa因子
は、X因子活性化に向かってのIXa因子の触媒効率を数ケタ分増大させる補因
子である。
【0006】 VIII因子での治療を受けていない、VIII因子又は対VIII因子抗体
欠損症を患う人は、関節内の炎症性反応から早期死亡に至るまでの一定範囲の重
大な症候をひき起こす可能性のある制御されていない内出血に苦しんでいる。米
国で約10000人にのぼる重症血友病素因者は、充分な頻度及び濃度で投与さ
れた場合に血液の正常な凝固能力を回復させることになるヒトVIII因子の輸
注による治療を受けることができる。事実、VIII因子は従来、血友病A患者
から誘導された血漿中の血液凝固欠陥を矯正する正常な血漿内に存在する物質と
して定義づけされている。
【0007】 VIII因子の活性を阻害する抗体(「阻害物質」又は「阻害性抗体」)の発
生は、血友病患者の管理における重大な合併症である。VIII因子の治療的輸
注に応答して、血友病A患者のほぼ20%において自己抗体が発生している。そ
れ以前には治療を受けておらずに阻害物質を発生させた患者では、通常1年未満
の治療期間内に阻害物質が発生する。さらに、それまで正常なVIII因子レベ
ルを有していた患者において、時としてVIII因子を不活性化させる自己抗体
が発生する。阻害物質の力価が充分に低い場合、VIII因子用量を増加させる
ことによって患者を管理することができる。しかしながら往々にして、阻害物質
力価は非常に高くそのためVIII因子によってそれに対抗することはできない
。代替的な1つの戦略は、第IX因子複合調製物[例えばKONYNE(登録商
標)、Proplex(登録商標)]又は組換え型ヒト第VIIa因子を用いて正常な止
血中にVIII因子に対する需要を迂回させることにある。さらに、ブタVII
I因子はヒトVIII因子に比べ阻害物質との反応性が通常実質的に低いことか
ら、部分的に精製されたブタVIII因子調製物[HYATE:C(登録商標)]
が使用される。ヒトVIII因子に対し阻害性抗体を発生させた数多くの患者は
ブタVIII因子での治療を受けて成功しており、かかる治療を長期間にわたり
寛容していた。しかしながら、単数又は複数回の輸注の後にブタVIII因子に
対して阻害物質が発生しうることから、ブタVIII因子の投与も完全な解決法
ではない。
【0008】 血友病Aの治療用として、さまざまな純度のヒト血漿由来のVIII因子のい
くつかの調製物が市販されている。これらには、ウイルスに対して加熱処理又は
洗剤処理されているものの有意なレベルで抗原性タンパク質を含有する、数多く
のドナーのプールされた血液から誘導された部分精製済みVIII因子;抗原性
不純物及びウイルス汚染のレベルがより低いモノクローナル抗体で精製されたV
III因子;及び現在その臨床試験が行なわれている組換え型ヒトVIII因子
が含まれる。残念なことに、ヒトVIII因子は、生理的濃度及びpHで不安定
であり、血中に極めて低濃度(血漿1mlあたり0.2μg)でしか存在せず、特
異的血液凝固活性が低い。
【0009】 血友病素因者は、出血及びその結果発生する変形性血友病関節症を防止するべ
くVIII因子を毎日交換することを必要とする。しかしながら供給は不適切で
あり、分離及び精製上の問題、免疫原性及びエイズ及び肝炎感染性のリスクを除
去する必要性に起因して、治療的使用には問題がある。組換え型ヒトVIII因
子又は部分的に精製されたブタVIII因子の使用によっても、全ての問題が解
決されるわけではない。
【0010】 一般に使用されている市販の血漿由来VIII因子に付随する問題は、より優
れたVIII因子製品の開発に対する多大な関心を刺激してきた。従って、1分
子あたりより多くの血液凝固活性単位を送達できるようにより高い効力をもつV
III因子分子; 選択されたpH及び生理的濃度で安定しているVIII因子
分子; 阻害性抗体の産生をひき起こす可能性がより低いVIII因子分子; そ
してヒトVIII因子に対する抗体をすでに獲得した患者における免疫検出を回
避するVIII因子分子に対するニーズが存在している。
【0011】 従って、本発明の目的は、VIII因子が欠損しているか又はVIII因子に
対する阻害物質を有する患者における血友病を矯正するVIII因子を提供する
ことにある。
【0012】 本発明のさらなる目的は、血友病素因者の治療方法を提供することにある。
【0013】 本発明のさらにその他の目的は、選択されたpH及び生理学的濃度で安定して
いるVIII因子を提供することにある。
【0014】 本発明のさらにその他の目的は、ヒトVIII因子よりも大きい凝固活性をも
つVIII因子を提供することにある。
【0015】 本発明のさらなる目的は、それに対し産生される抗体が比較的少ないVIII
因子を提供することにある。
【0016】 発明の要約 本発明は、ヒト及びブタ又はその他の非ヒト哺乳動物(本書ではまとめて「動
物」と呼ぶ)から誘導されたVIII因子アミノ酸配列をもつハイブリッドVI
II因子を内含するか又は第2の実施形態においては、好ましくはVIII因子
の抗原性及び/又は免疫原性領域内で置換されている、VIII因子に対する既
知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列(非VIII因子アミノ酸配列)及
びヒト又は動物又はその両方から誘導されたVIII因子アミノ酸配列を有する
ハイブリッド等価物のVIII因子を内含する、凝固活性をもつ分離され精製さ
れたハイブリッドVIII因子分子及びその断片を提供する。当業者であれば、
制限的な意味なく、ヒトVIII因子に比べて大きい凝固活性(「より優れた凝
固活性」)をもつヒト/動物VIII因子;非免疫原性ヒト/等価物VIII因
子;非抗原性ヒト/等価物又はヒト/動物VIII因子; より優れた凝固活性
をもつ非免疫原性ヒト/動物又はヒト/等価物VIII因子; より優れた凝固
活性をもつ非抗原性ヒト/動物又はヒト/動物/等価物VIII因子;非免疫原
性、非抗原性ヒト/等価物又はヒト/等価物/動物VIII因子;及びより優れ
た凝固活性をもつ非免疫原性、非抗原性ヒト/動物/等価物VIII因子を含め
た数多くのハイブリッドVIII因子構成体を調製できることを認識することだ
ろう。
【0017】 ハイブリッドVIII因子分子は、ヒト及び動物のVIII因子のサブユニッ
ト又はドメインの分離及び組換え或いはヒト及び動物のVIII因子遺伝子の遺
伝子工学処理により産生される。
【0018】 好ましい実施形態においては、ヒトVIII因子の対応する要素の代りに動物
のVIII因子の要素を用い、結果としてハイブリッドヒト/動物VIII因子
分子を得るために、組換え型DNA方法が使用される。第2の好ましい実施形態
においては、ヒト又は動物のVIII因子内又はハイブリッドヒト/動物VII
I因子内の単数又は複数のアミノ酸を、VIII因子との既知の配列同一性を全
くもたないアミノ酸、好ましくはVIII因子に対する自然に発生する阻害性抗
体との免疫反応性がヒトVIII因子に比べて低いアミノ酸配列(「非抗原性ア
ミノ酸配列」)及び/又はヒトVIII因子に比べてVIII因子に対する抗体
の産生を惹起する可能性の低いアミノ酸配列(「非免疫原性アミノ酸配列」)で
置換するために、組換え型DNA方法が使用される。免疫原性又は抗原性配列と
置換するのに使用できるアミノ酸配列の一例は、アラニン残基の配列である。
【0019】 その他の実施形態においては、VIII因子のサブユニットは、ヒト又は動物
の血漿から分離及び精製され、ハイブリッドヒト/動物VIII因子は、動物の
H鎖サブユニットとヒトL鎖サブユニットの混合又はヒトH鎖サブユニットと動
物のL鎖サブユニットの混合のいずれかにより産生され、かくしてヒトL鎖/動
物H鎖及びヒトH鎖/動物L鎖のハイブリッド分子が産生される。これらのハイ
ブリッド分子はイオン交換クロマトグラフィによって分離される。
【0020】 代替的には、VIII因子の単数又は複数のドメイン又は部分的ドメインが、
ヒト又は動物の血漿から分離され精製され、1つの種からのドメイン又は部分的
ドメインを第2の種のドメイン又は部分的ドメインと混合することにより、ハイ
ブリッドヒト/動物VIII因子が産生される。ハイブリッド分子は、イオン交
換クロマトグラフィにより分離できる。
【0021】 (a) 血漿由来のヒトVIII因子のサブユニットと血漿由来の動物VII
I因子のサブユニットの分離とそれに続くヒト及び動物のサブユニットの混合に
よる凝固活性の再構築、及びそれに続く、イオン交換クロマトグラフィによるハ
イブリッドヒト/動物VIII因子の分離;(b) 血漿由来のヒトVIII因
子のドメイン又は部分的ドメインと血漿由来の動物VIII因子のドメイン又は
部分的ドメインの分離、及びそれに続くヒト及び動物のドメインの混合による凝
固活性の両構築、及びそれに続くイオン交換クロマトグラフィによるハイブリッ
ドヒト/動物VIII因子の分離;(c) 組換え型DNA技術による動物のV
III因子のドメイン又は部分的ドメインの構築及び凝血活性をもつハイブリッ
ドヒト/動物VIII因子を産生するための動物及びヒトのVIII因子のドメ
インの組換え型交換;(d) 1つの種のVIII因子の特異的アミノ酸残基を
その他の種のVIII因子の対応するユニークアミノ酸残基と置き換えることに
よるハイブリッドヒト/動物VIII因子の創造;又は(e) VIII因子の
特異的アミノ酸残基が部位特異的突然変異誘発によりVIII因子に対する既知
の配列同一性を全くもたないアミノ酸残基と置き換えられている、ヒト又は動物
のアミノ酸配列又はその両方をもつハイブリッド等価物VIII因子分子の創造
、という段階を有する、高度に精製されたハイブリッドVIII因子を調製する
ための方法が記述されている。
【0022】 本書で記述されているブタVIII因子をコードする全DNA配列の決定によ
り、初めて、適切な宿主細胞内でブタVIII因子をコードするDNAを発現さ
せることによる全長ブタVIII因子の合成が可能となった。従って、精製され
た組換え型ブタVIII因子が、本発明の1つの態様である。ブタVIII因子
の各ドメインをコードするDNAならびにその任意の特定された断片を同様に、
独自でか又はヒトVIII因子をコードするDNAと組合わせた形で発現させて
、本書に記述するハイブリッドヒト/ブタVIII因子を作ることができる。さ
らに、Bドメインの全て又は一部が欠失したブタfvIII(Bドメイン無しの
ブタfvIII)は、Bドメインの単数又は複数のコドンの欠失を有するブタf
vIIIをコードするDNAの発現により、本発明の一部として利用可能となっ
ている。
【0023】 ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子の一部の実施形態は、ヒ
トVIII因子のものよりも大きくかつブタVIII因子に等しいかそれより大
きい特異的活性を有する。ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子
の一部の実施形態は、ヒト又はブタのVIII因子に比べて、ヒト又はブタにお
けるより低い免疫原性及び/又はVIII因子に対する阻害性抗体に等しいか又
はより低い免疫反応性を有する。
【0024】 同様に提供されているのは、医薬組成物及びハイブリッド又はハイブリッド等
価物のVIII因子を投与する段階を含むVIII因子欠損症患者の治療方法で
ある。
【0025】 (発明の詳細な説明) 相反する規定又は指示の無いかぎり、本書で使用される「VIII因子」とい
うのは、任意の動物、任意のハイブリッドVIII因子又は修飾されたVIII
因子からのあらゆる機能的VIII因子タンパク質分子を意味し、「ハイブリッ
ドVIII因子」又は「ハイブリッドタンパク質」というのは、ヒト、ブタ及び
/又は非ヒト、非ブタ哺乳動物種由来のVIII因子アミノ酸配列を含むあらゆ
る機能的VIII因子タンパク質分子又はその断片を意味する。かかる組合せに
は、(1)ヒト/ブタ;(2)ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物例えばヒト/マウ
ス;(3)ブタ/非ヒト、非ブタ哺乳動物、例えば、マウス/イヌといったハイ
ブリッドVIII因子分子又は断片のいずれか又は全てが包含されるが、これら
に制限されるわけではない。かかる組合せには同様に、VIII因子に対する既
知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列が置換されているハイブリッド、ヒ
ト、ブタ、又は非ヒト、非ブタ哺乳動物由来のVIII因子アミノ酸配列を含む
、さらに以下で定義するようなハイブリッドVIII因子等価分子又はその断片
も包含される。かかるハイブリッド組合せには同様に、VIII因子に対する既
知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列が置換されている2つ以上の種又は
ヒト/ブタ/マウスといった2つ以上の種から誘導されたハイブリッドVIII
因子アミノ配列も包含される。相反する指示のないかぎり、「ハイブリッドVI
II因子」には、研究目的のプローブとして又は診断用試薬として、1つの実施
例の中で以下に記述するように使用することのできる、ハイブリッドVIII因
子の断片も包含される。
【0026】 本書で使用される「哺乳動物VIII因子」には、相反する規定のないかぎり
、任意の非ヒト哺乳動物から誘導されたアミノ酸配列を伴うVIII因子が含ま
れる。本書で使用される[動物]というのは、ブタ及びその他の非ヒト哺乳動物を
示す。
【0027】 本書で使用される「融合タンパク質」又は「融合VIII因子又はその断片」
というのは、1つのタンパク質のためのコーディング配列が、例えば融合タンパ
ク質をコードするハイブリッド遺伝子を産生するために異なる遺伝子からの第2
のタンパク質のためのコーディング配列にその一部分を融合させることによって
広範に改変されているようなハイブリッド遺伝子の産物のことである。本書で使
用されているように、融合タンパク質は、本出願で記述されているハイブリッド
VIII因子タンパク質のサブセットである。
【0028】 本書で使用されているような、「対応する」核酸又はアミノ酸又はそのいずれ
かの「対応する」配列とは、核酸又はアミノ酸番号は同一でないかもしれないも
のの、その他の種のVIII因子分子内の1つの部位としての機能及び/又は構
造が同じである、VIII因子又はハイブリッドVIII因子分子又はその断片
内の一部位に存在するもののことである。その他のVIII因子配列「に対応す
る」配列は、実質的にかかる配列に対応し、ストリンジェント条件下で指定され
た配列番号の配列に対してハイブリッド形成する。その他のVIII因子配列「
に対応する」配列は同様に、VIII因子又は請求されているプロ凝固性ハイブ
リッドVIII因子又はその断片の発現を結果としてもたらし、遺伝子コードの
冗長性は別にして、指定された配列番号にハイブリッド形成することになる配列
も包含される。
【0029】 本書で使用するような「ユニーク」アミノ酸残基又は配列というのは、その他
の種のVIII因子分子内の相同な残基又は配列とは異なる1つの種のVIII
因子分子内のアミノ酸配列又は残基のことである。
【0030】 本書で使用する「特異的活性」というのは、ヒトVIII因子欠損性血漿の凝
固欠陥を矯正することになる活性のことである。特異的活性は、ヒトVIII因
子欠損性血漿の血液凝固時間を正常なヒトの血漿のものと比較する標準的検定に
おいて、合計VIII因子タンパク質1ミリグラムあたりの血液凝固活性の単位
で測定される。VIII因子活性の1単位は、正常なヒトの血漿1ミリリットル
中に存在する活性である。検定において、血塊形成のための時間が短かくなれば
なるほど、検定対象のVIII因子の活性は大きくなる。ハイブリッドヒト/ブ
タVIII因子は、ヒトVIII因子検定において、凝固活性を有する。この活
性は、その他のハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子分子又はそ
の断片のものと同様、血漿由来の又は組換え型のいずれかのヒトVIII因子の
ものよりも小さくても、同等であっても又は大きくてもよい。
【0031】 ヒトVIII因子のcDNAヌクレオチド及び予測されたアミノ酸配列は、そ
れぞれ配列番号1及び2に示されている。VIII因子は、「ドメイン」配列N
2−A1−A2−B−A3−C1−C2−COOHを定義する内部配列相同性
をもつ約300kDaの1本鎖タンパク質として合成される。VIII因子分子
において、本書で使用する「ドメイン」は、内部アミノ酸配列同一性及びトロン
ビンによるタンパク質分解性分割部位によって定義されるアミノ酸の連続的配列
のことである。相反する規定のないかぎり、VIII因子ドメインは、ヒトアミ
ノ酸配列(配列番号2)と整列させたとき以下のアミノ酸残基を包含する: A
1、残基Ala1−Arg372;A2、残基Ser373−Arg740;B、残基
Ser741−Arg1648;A3、残基Ser1690−Ile2032;C1、残
基Arg2033−Asn2172;C2、残基Ser2173−Tyr2332。A3
−C1−C2配列には、残基Ser1690−Tyr2332が含まれる。残りの配
列、残基Glu1649−Arg1689は通常、VIII因子L鎖活性化ペプチド
と呼ばれる。VIII因子は、フォン・ウィルブランド因子からそれを解離して
、プロ凝固性機能をもつVIIIa因子を形成するトロンビン又はXa因子によ
って、タンパク質分解により活性化される。VIIIa因子の生物学的機能は、
X因子に向かうIXa因子の触媒効率を数ケタ分増大させることにある。トロン
ビンで活性化されるVIIIa因子は、血小板又は単球の表面上でIXa因子及
びX因子と複合体を形成する160kDaのA1/A2/A3−C1−C2ヘテ
ロ三量体である。本書で使用されている「部分的ドメイン」というのは、1つの
ドメインの一部を成す連続するアミノ酸配列である。
【0032】 本書で使用されるヒト又は動物のVIII因子の「サブユニット」は、タンパ
ク質のH鎖及びL鎖である。VIII因子のH鎖は、3つのドメイン、A1、A
2及びBを含む。VIII因子のL鎖も、3つのドメイン、A3、C1及びC2
を含む。
【0033】 ハイブリッドVIII因子又はその断片は、(1)対応するヒトサブユニット
又は動物サブユニットに対する分離された血漿由来の動物のサブユニット又はヒ
トサブユニット(H鎖又はL鎖)の置換によって;(2)対応する動物のドメイ
ン又はヒトのドメインに対するヒトのドメイン又は動物のドメイン(A1、A2
、A3、B、C1及びC2)の置換によって; (3)動物のドメイン又はヒト
のドメインの一部分に対するヒトのドメイン又は動物のドメインの一部分の置換
によって; (4)対応する動物又はヒトのアミノ酸(単複)に対する単数又は
複数のユニークなヒト又は動物のアミノ酸を含む少なくとその他の特異的配列の
置換によって; 又は、(5)ヒト、動物又はハイブリッドのVIII因子又は
その断片の中の単数又は複数の特異的アミノ酸残基を含む少なくとその他の配列
に対する、VIII因子と既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸配列の置換
によって、作ることができる。本書で使用されている、「Bドメインの無い」ハ
イブリッドVIII因子、ハイブリッド等価物のVIII因子又はそのいずれか
の断片というのは、Bドメイン又はその一部が欠如している本書に記述されたハ
イブリッドVIII因子構成体のいずれか1つのことである。
【0034】 本書で使用される「エピトープ」、「抗原部位」及び「抗原決定基」という語
は、同義語として用いられ、1つの抗体によって特異的に認識されるヒト、動物
、ハイブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片の一部分と
して定義づけされる。これは、任意の数のアミノ酸残基で構成され得、タンパク
質の一次、二次又は三次構造により左右され得る。本開示に従うと、少なくとそ
の他のエピトープを包含するハイブリッドVIII因子、ハイブリッドVIII
因子等価物又はそのいずれかの断片を、以下で記述する診断検定における試薬と
して使用することができる。いくつかの実施形態においては、ハイブリッド又は
ハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片は、交叉反応性をもたないか又
は、ヒト又はブタのVIII因子に比べて全ての天然に発生する阻害性VIII
因子抗体との交叉反応性が低いものである。
【0035】 本書で用いられる「免疫原性部位」という語は、本書で記述する例えばELI
SAといった免疫決定法又はベセスダ検定といったような日常的プロトコルによ
って測定されるようなヒト又は動物におけるVIII因子、ハイブリッド、ハイ
ブリッド等価物又は断片に対する抗体の産生を特異的に惹起するヒト又は動物の
VIII因子、ハイブリッド又はハイブリッドの等価物のVIII因子の領域と
して定義づけされる。それは、任意のアミノ酸残基で構成され得、タンパク質の
一次、二次又は三次構造に左右され得る。いくつかの実施形態においては、ハイ
ブリッド又はハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片は、非免疫原性で
あるか又は、ヒト又はブタのVIII因子に比べ動物又はヒトにおける免疫原性
が低い。
【0036】 本書で使用されている「ハイブリッドVIII因子等価物分子又はその断片」
又は「ハイブリッド等価物のVIII因子又はその断片」というのは、ヒト、動
物又はハイブリッドのVIII因子又はその断片内の単数又は複数の特異的アミ
ノ酸残基を包含する少なくとその他の配列に対し置換されたヒト又は動物のVI
II因子配列と既知の同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基を包含
する少なくとその他の配列を含む活性VIII因子又はハイブリッドのVIII
因子分子又はその断片のことである。ヒト又は動物のVIII因子配列との既知
の同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基の配列は同様に本書では「
非VIII因子アミノ酸配列」と呼ばれている。好ましい実施形態においては、
VIII因子配列に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)は
、アラニン残基である。その他の好ましい実施形態においては、VIII因子配
列に対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)で置換される特異
的VIII因子配列には、結果として得られるハイブリッドVIII因子等価物
分子又はその断片のVIII因子阻害性抗体との免疫反応性が比較的低いか全く
無いような形で、天然のVIII因子阻害性抗体との免疫反応性のある抗原部位
が含まれる。さらにその他の好ましい実施形態においては、VIII因子配列に
対する既知の配列同一性を全くもたないアミノ酸(単複)で置換される特異的V
III因子配列には、結果として得られるハイブリッドVIII因子等価物分子
又はその断片の免疫原性が比較的低くなるような形で、動物又はヒトにおけるV
III因子阻害性抗体の形成を惹起する免疫原性部位が含まれる。
【0037】 本書で使用される「VIII因子欠損症」には、欠陥VIII因子の産生、V
III因子の不適切な産生又は無産生、又は阻害物質によるVIII因子の部分
的又は完全な阻害によってひき起こされる血液凝固活性の欠損症が包含される。
血友病Aは、X連鎖遺伝子の欠陥及びそれがコードするVIII因子タンパク質
の不在又は欠損の結果として起こる一つのタイプのVIII因子欠損症である。
【0038】 本書で使用されている「診断検定」には、医学的療法の選択を助けるためテス
ト標本内に存在する特定の抗体の量を検出しかつ/又は数量化するために、抗原
−抗体相互作用を一定のやり方で利用する検定が含まれる。当業者にとっては既
知のこのような検定が数多く存在している。しかしながら本書で使用されている
ように、ハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子DNA又はその断片
及びそこから発現されたタンパク質は、全体的に又は部分的に、別途既知の検定
において対応する試薬に代って置換させることができ、かくして、修正された検
定をVIII因子に対する抗体の検定及び/又は数量化に使用することが可能で
ある。ヒト又は動物のVIII因子又はハイブリッドのヒト/動物/VIII因
子に対する抗体の検出のための既知の検定の修正を可能にするのは、これらの試
薬、ハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子 DNA又はその断片又
はそこから発現されたタンパク質の使用である。かかる検定には、ELISA、
免疫拡散検定及び免疫ブロット法が含まれるが、これらに制限されるわけではな
い。これらの検定法のいずれかを実施するのに適した方法は、当業者にとっては
既知のものである。本書で使用されている、タンパク質の少なくとその他のエピ
トープを内含するハイブリッド又はハイブリッド等価物VIII因子又はその断
片は、診断試薬として使用することができる。ハイブリッド又はハイブリッド等
価物VIII因子又はその断片を使用できるその他の検定の例としては、ベセズ
ダ検定及び抗凝固検定が含まれる。
【0039】 ヒト又は動物のVIII因子又はヒト/動物ハイブリッドVIII因子又は修
飾されたVIII因子をコードするDNAの「発現産物」は、制限的な意味なく
グリコシル化、タンパク質分解分割などを含む基準となるDNAによりコードさ
れたタンパク質の翻訳前又は後の修飾のこのような特長を包含する、適切な宿主
細胞内での基準DNAの発現から得られる産物である。当該技術分野においては
、かかる修飾が発生可能であり、宿主細胞型及びその他の要因に応じて幾分か異
なるものであり得、かつ、プロ凝固性活性を保持しながら、産物の分子のイソ型
を結果としてもたらし得るということが知られている。例えば、本書に参考とし
て包含されているLind, P.et al., Eur. J. Biochem,232;1927(199
5)を参照のこと。
【0040】 「免疫反応性減少性」アミノ酸は、ここでは、抗体−抗原対の結合エネルギー
に対する貢献度が全くないわけではないが僅かであるようなアミノ酸として定義
される。免疫反応性減少性であるものとして知られているいくつかのアミノ酸の
制限的意味のない例には、アラニン、メチオニン、ロイシン、セリン及びグリシ
ンが包含されている。一定の与えられた抗原−抗体対内の一定の与えられたアミ
ノ酸置換によって達成可能な免疫反応性の減少は、同様に、タンパク質の立体配
座、エピトープアクセス可能性などに対し置換が及ぼす可能性のあるいずれかの
効果によって左右されるということがわかるだろう。
【0041】 方法の一般的記述 米国特許出願番号第07/864,004号は、ヒト又はブタのVIII因子
分子の要素がその他の種のVIII因子分子の対応する要素に置換させられてい
る、凝固活性をもつハイブリッドのヒト/ブタVIII因子分子の発見について
記述していた。米国特許出願第08/212,133号及びPCT/US94/
13200号は、1つの種のVIII因子分子の要素がその他の種のVIII因
子分子の対応する要素に置換させられている、プロ凝固性ハイブリッドヒト/動
物及びハイブリッド等価物VIII因子分子について記述している。
【0042】 本発明は、精製度の高いヒトVIII因子と比べて標準的クローニング検定に
おいてより大きい凝固活性をもち;かつ/又はヒト又はブタのVIII因子に比
べヒト又はブタのVIII因子に対する阻害性抗体に対する免疫反応性が低く;
かつ/又はヒト又はブタのVIII因子に比べてヒト又は動物における免疫原性
が低く;かつ/又はその他の治療上有用な特性をもつものを含めた、ハイブリッ
ドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子分子、修飾済みVIII
因子分子及びその断片及びかかるハイブリッド及び修飾済みVIII因子分子を
コードする核酸配列を提供する。これらのハイブリッド及び/又は修飾済みのV
III因子分子は、以下のように構築することができる。
【0043】 本書では、少なくとも5つのタイプの活性ハイブリッドヒト/ブタ又はハイブ
リッド等価物のVIII因子分子又はその断片、これらのハイブリッドVIII
因子分子をコードする核酸配列及びそれらを調製する方法が開示されている:こ
れはすなわち、(1)対応するブタ又はヒトサブユニットに対しヒト又はブタ置
換(すなわちH鎖又はL鎖)を置換することにより;(2)対応するブタ又はヒ
トドメイン(単複)に対し単数又は複数のヒト又はブタドメイン(すなわちA1
、A2、A3、B、C1 及びC2)を置換することにより、;(3)単数又は複
数のブタ又はヒトドメインの対応する部分に対して単数又は複数のヒト又はブタ
ドメインの連続的部分を置換することにより;(4)対応するブタ又はヒト配列
に対しヒト又はブタのVIII因子内の単数又は複数のユニークなアミノ酸配列
を含む少なくとも1個の特異的配列を置換することにより、;及び(5)ヒト、
ブタ又はハイブリッドのヒト/ブタVIII因子内の単数又は複数のアミノ酸の
少なくとも1個の特異的配列に対して、VIII因子に対する既知の配列同一性
を全くもたない単数又は複数のアミノ酸残基(「非VIII因子アミノ酸配列」
)を包含する少なくとも1個の配列を置換することにより得られるものである。
修飾済みVIII因子分子は、特定された位置に単数又は複数のアミノ酸置換を
有する。
【0044】 同じ方法により、少なくとも5つのタイプの活性ハイブリッドヒト/非ヒト、
非ブタ哺乳動物又はハイブリッド等価物VIII因子分子又はその断片及びそれ
らをコードする核酸配列も調製可能である: すなわち、(1)対応する非ヒト
、非ブタ哺乳動物又はヒトのサブユニットに対してヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳
動物サブユニット(すなわちH鎖又はL鎖)を置換することにより;(2)対応
する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトのドメイン(単複)に対して、単数又は複
数のヒト又は非ヒト、非ブタ哺乳動物のドメイン(すなわちA1、A2、A3、
B、C1 及びC2)を置換することによって、;(3)単数又は複数の非ヒト、
非ブタ哺乳動物又はヒトのドメインの対応する部分に対して単数又は複数のヒト
又は非ヒト、非ブタ哺乳動物のドメインの連続する部分を置換することにより、
;(4)対応する非ヒト、非ブタ哺乳動物又はヒトの配列に対してヒト又は非ヒ
ト、非ブタ哺乳動物VIII因子内の単数又は複数のユニークなアミノ酸残基を
包含する少なくとも1個の特異的配列を置換することにより;及び(5)ヒト、
非ヒト、非ブタ哺乳動物又はハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVI
II因子の中の単数又は複数のアミノ酸の少なくとも1個の特異的配列に対して
、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ
酸残基(「非VIII因子アミノ酸配列」)を包含する少なくとも1個の配列を
置換することにより得られるものである。個々のアミノ酸置換は、コーディング
DNAの対応するセグメントの部位特異的突然変異誘発によって得ることができ
る。
【0045】 さらに、当業者であれば、ブタ/マウスといった2種以上の非ヒト哺乳動物か
らのVIII因子アミノ酸配列を含みさらには非VIII因子アミノ酸配列を含
む前出の2つのパラグラフの中のタイプ(1)〜(5)に対応する、少なくとも
5つのタイプの活性ハイブリッドVIII因子分子又はその断片を調製するため
に、同じ方法を使用できるということを容易に認識することだろう。
【0046】 以上にグループ(1)〜(3)の下で列挙したハイブリッドのヒト/動物、動
物/動物及び等価物のVIII因子タンパク質又はその断片は、血漿由来のVI
II因子のサブユニット、ドメイン又はドメインの連続的部分を分離しその後ひ
き続き再構築及び精製を行なうことによって作られる。以上の(3)〜(5)の
グループの下で記述されたハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物の
VIII因子タンパク質又はその断片は、組換え型DNA方法によって作られる
。ハイブリッド分子は、以下でさらに詳細に記述されているように、さまざまな
領域の起源に応じて、動物配列よりも多い又は少ない百分率でヒト配列を含有す
ることができる。
【0047】 現在の情報では、Bドメインがいかなる阻害性エピトープももたず、VIII
因子機能に対する既知の効果を全くもたないことから、一部の実施形態では、B
ドメインは、本書で記述された方法のいずれかにより調製された活性のハイブリ
ッド又はハイブリッド等価物のVIII因子分子又はその断片(「B(−)因子
VIII」)内で欠失している。
【0048】 実施例4では、ブタH鎖及びヒトL鎖を含みかつ上述の第1のタイプのハイブ
リッドに対応するハイブリッドヒト/ブタVIII因子が、ヒトVIII因子に
比べ標準的クローニング検定中でより大きい特異的凝固活性を有することが示さ
れている。凝固活性をもつハイブリッドヒト/動物又は等価物VIII因子は、
その活性がヒトVIII因子のものよりも高い、等しい又は低いのいずれである
かにかかわらず、阻害物質をもつ患者の治療において有用であり得るが、これは
、これらの阻害物質がヒト又はブタのいずれかのVIII因子との反応性よりも
低い反応性しかハイブリッドヒト/動物又は等価物のVIII因子に対してもち
得ないからである。
【0049】 再構築による分離されたヒト及び動物のVIII因子サブユニットからのハイ ブリッドVIII因子分子の調製 本発明は、サブユニット置換を伴うハイブリッドヒト/動物VIII因子分子
又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調製し分
離する方法、及びそのプロ凝固活性を特徴づけするための方法を提供する。Fay,
P. J. et al.(1990)J. Biol. Chem.265:6197;及びLollar. J.S
. et al.(1988)J. Biol. Chem.263:10451、により報告された手
順から修正された1つの方法には、ヒト及び動物のVIII因子のサブユニット
(H鎖及びL鎖)の分離とそれに続くヒトH鎖と動物L鎖の組換え又はヒトL鎖
と動物H鎖の組換えが関与している。
【0050】 ヒト及び動物の両方の個々のサブユニットの単離には、L鎖/H鎖2量体の解
離が関与する。これは、例えばエチレンジアミノ四酢酸(EDTA)でのカルシ
ウムのキレート化とそれに続くmonoS(商標)HPLC(Pharmacia-LKB,Pi
scataway, NJ)によって達成される。ハイブリッドのヒト/動物VIII因子分
子は、カルシウムの存在下で単離済みサブユニットから再構築される。Lollar,
J.S. et al.(1988)Blood 71:137−143によって記述されているよ
うなブタのVIII因子の単離手順により、mono S(商標)HPLCにより未
反応のH鎖から、ハイブリッドヒトL鎖/動物H鎖又は動物L鎖/ヒトH鎖のV
III因子が単離される。
【0051】 1つの実施形態において活性ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製する
ために使用され、以下の例で詳述されている、これらの方法は、ヒトVIII因
子のプロ凝固活性の6倍以上のプロ凝固活性をもつハイブリッドヒトL鎖/ブタ
H鎖分子を結果としてもたらす。
【0052】 同じ方法により、その他のハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVI
II因子分子を調製し、単離しかつ活性について特徴づけすることができる。当
業者であれば、これらの方法が同様に、その他の種のH鎖又はL鎖と組合わされ
た1つの種のL鎖又はH鎖を含む、ブタ/マウスといったようなハイブリッド動
物/動物/VIII因子を調製し、単離し活性について特徴づけするためにも使
用可能であることを容易に認識することだろう。
【0053】 再構築による分離されたヒト及び動物のVIII因子ドメインからのハイブリ ッドVIII因子分子の調製 本発明は、ドメイン置換を伴うハイブリッドヒト/動物VIII因子分子又は
その断片、それらをコードする核酸配列、それらを調製し単離する方法、及びそ
のプロ凝固活性を特徴づけするための方法を提供する。1つの方法には、ヒトの
VIII因子の単数又は複数のドメイン及び動物のVIII因子の単数又は複数
のドメインを単離することそしてそれに続いて、ハイブリッドヒト/ブタVII
I因子についてLollar. P et al.(1992年11月25日)J. Biol. Chem. 67(33) :23652−23657によって記述されているように凝固活性
をもつハイブリッドヒト/動物VIII因子を形成するべくヒト及び動物のドメ
インを組換えすることが関与している。
【0054】 特定的に提供されているのは、ドメイン置換されたハイブリッドヒト/非ヒト
、非ブタ哺乳動物のVIII因子を構築できる方法が実施形態により例示されて
いる、ヒトA2ドメインに対するブタA2ドメインの置換を伴うハイブリッドヒ
ト/ブタVIII因子である。血漿由来の非ヒト、非ブタ哺乳動物及びヒトのA
1/A3−C1−C2ニ量体が、VIII因子からのA2ドメインの解離によっ
て単離される。これは、例えばNaOHの存在下で達成され、その後、混合物は
希釈され、二量体はmonoS(商標)HPLC(Pharmacia−LKB,Piscataway,
NJ)を用いて溶出される。A2ドメインは、monoS(商標)HPLCにおい
て二次成分としてVIII因子から単離される。ハイブリッドヒト/動物VII
I因子分子は、1つの種のA2ドメインとその他の種のA1/A3−C1−C2
ニ量体を等量ずつ混合することにより再構築される。
【0055】 単数又は複数のドメイン置換を伴うハイブリッドのヒト/動物VIII因子又
はその断片は、Lollar, J.S. et al.(1988)Blood 71:137−143
によって記述されているように、ブタVIII因子の単離手順により、mono S
(商標)HPLCによって未反応のニ量体及びA2の混合物から単離される。そ
のうちの任意の単数又は複数のものをその他の種のVIII因子内の対応するド
メインに置換させることのできる、1つの種のVIII因子のA1、A3、C1
、C2及びBドメインを調製し単離するために、日常的方法を使用することも可
能である。当業者であれば、ブタ/マウスといったようなドメイン置換されたハ
イブリッドの動物/動物VIII因子を調製し単離し活性について特徴づけする
ためにこれらの方法を使用することもできるということを直ちに認識することだ
ろう。
【0056】 以下の例で詳述するこれらの方法は、プロ凝固活性をもつハイブリッドVII
I因子を結果としてもたらす。
【0057】 ヒト、動物及びハイブリッドのVIII因子サブユニット、ドメイン又はドメ インの一部分をコードする配列の組換え工学処理によるハイブリッドVIII因 子分子の調製 サブユニット、ドメイン、ドメインの連続的部分の置換 本発明は、サブユニット、ドメイン及びアミノ酸配列の置換を伴う活性の、組
換え型ハイブリッドヒト/動物及びハイブリッド等価物VIII因子分子及びそ
の断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、これらを調製し単離する
方法、そしてその凝固、免疫反応性及び免疫原性特性を特徴づけする方法を提供
している。
【0058】 ヒトVIII因子遺伝子は、Toole, J.J. et al.(1984)Nature 312
:342−347(Genetics Institute) ;Gitschier, J. et al.(1984
)Nature 312:326−330(Genentech):Wood, W.I.et al.(1984
)Nature 312:330−337(Genentech);Vehar, G.A. et al.(198
4)Nature 312:337−342(Genentech);WO 87/04187;
WO 88/08035;WO 88/03558;米国特許 第4,757,0
06号により報告されているとおり、哺乳動物の細胞において単離され発現され
、cDNAからアミノ酸配列が演繹された。Capon et al.に対する米国特許第4
,965,199号は、哺乳動物の宿主細胞内でVIII因子を産生するための組
換え型DNA方法及びヒトVIII因子の精製について開示している。CHO(
チャイニーズハムスタ卵巣)細胞及びBHKC(ベビーハムスター腎細胞)上で
のヒトVIII因子の発現が報告されてきた。Bドメインの一部又は全部を欠失
させるためにヒトVIII因子が修飾され(米国特許第4,868,112号)、
ヒト第V因子BドメインでのヒトVIII因子 Bドメインの置換が試みられて
きた(米国特許第5,004,803号)。ヒトVIII因子をコードするcDN
A配列及び予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び2に示されてい
る。配列番号1では、コーディング配列はヌクレオチド位置208で始まり、ト
リプレットGCCは、配列番号2で示されているようにアミノ酸番号1(Ala
)に対するコドンである。
【0059】 ブタVIII因子が血漿から単離され精製された〔Fass, D.N. et al.(198
2)Blood 59:594〕。セルロプラスミン及び凝固因子Vに対する相同性を
もち大幅に不適切に位置特定されたN末端L鎖配列の一部分に対応するブタVI
II因子の部分的アミノ酸配列が、Church et al.(1984)Proc. Natl. Acad.
Sci.USA 81:6934により記述された。Toole, J.J. et al.(1984
)Nature 312:342−347は、ブタVIII因子の4つのアミノ酸断片
のN末端の部分的配列決定について記述したが、VIII因子分子内でのその位
置に関して断片を特徴付けることはしなかった。ブタVIII因子のBドメイン
及びA2ドメインの一部分のアミノ酸配列は、Toole, J.J. et al.(1986)
Proc. Natl. Acad. Sci,USA 83:5939−5942によって報告された
。ブタVIII因子の完全なA2ドメインをコードするcDNA配列及び予測さ
れたアミノ酸配列、及び全てのドメイン、全てのサブユニット及び特異的アミノ
酸配列の置換をもつハイブリッドヒト/ブタVIII因子については、1994
年11月5日に米国特許第5,364,771号として発行されたJohn S. Lollar
及び Marschall S. Runge による1992年4月7日付けの「ハイブリッドヒ
ト/ブタVIII因子」という表題の米国特許出願第07/864、004号の
中及びWO93/20093の中で開示された。配列番号1で示されたような成
熟ヒトVIII因子内の残基373−740に対し配列同一性をもつブタVII
I因子のA2ドメインをコードするcDNA配列及び予測されたアミノ酸配列は
、それぞれ配列番号3及び4に示されている。より最近では、対応するヒトドメ
インに対し置換されたブタA1及び/又はA2ドメインを伴うキメラVIII因
子及びブタVIII因子のA1及びA2ドメインのヌクレオチド及び対応するア
ミノ酸配列が、WO94/11503号で報告された。完全なA1ドメイン、活
性化ペプチド、A3、C1及びC2ドメインならびにコードされたアミノ酸配列
を包含する、ブタのVIII因子をコードする全ヌクレオチド配列は、1999
年1月12日付で発行された米国特許第5,859,204号内で開示されている
【0060】 ブタ及びヒトのVIII因子は両方共、2サブユニットのタンパク質として血
漿から単離される。H鎖及びL鎖として知られているサブユニットは、カルシウ
ム又はその他の2価の金属イオンを必要とする非共有結合によりまとめて保持さ
れる。VIII因子のH鎖は共有結合でリンクされた3つのドメイン、A1、A
2及びBを含有する。VIII因子のL鎖は同様に、A3、C1及びC2と呼ば
れる3つのドメインをも含有する。Bドメインは、既知の生物学的機能を全くも
たず、タンパク質分解によってか又は組換え型DNA技術の方法により、VII
I因子のいずれの測定可能なパラメータにも有意な改変無く除去又は部分除去さ
れ得る。ヒト組換え型VIII因子は、哺乳動物の細胞内で発現されないかぎり
グリコシル化されないものの、血漿由来のVIII因子と類似の構造及び機能を
もつ。
【0061】 ヒト及びブタの活性化されたVIII因子(「VIIIa因子」)は、A1と
A2の両方ドメイン間のH鎖の分割に起因して3つのサブユニットを有する。こ
の構造は、A1/A2/A3−C1−C2と呼ばれる。ヒトVIII因子は、ブ
タのVIIIA因子を安定化させる条件下で安定していないが、これはおそらく
、ヒトのVIIIA因子のA2サブユニットの会合がより弱いものであるためと
思われる。ヒト及びブタのVIIIA因子のA2サブユニットの分離は、VII
IA因子分子内の活性の喪失と結びつけられる。Yakhyaev, A. et al.(199
7)Blood 90:Suppl.1、アブストラクト#126は、低密度リポタンパク質
受容体関連タンパク質によるA2ドメインの結合を報告し、かかる結合により媒
介されるA2の細胞取込みが、VIII因子活性をダウンレギュレートするよう
に作用することを示唆している。
【0062】 代表的態様として特定的に提供されているのは、置換されたA2ドメインをも
つ活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子、それをコードする核酸配
列及び調製、単離及びその活性の特徴づけ方法である。このハイブリッド構成体
の調製方法は同様に、サブユニット、ドメインの連続的部分又はA2以外のドメ
インの置換をもつ活性の組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子又はその
断片を調製するために使用することもできる。当業者であれば、これらの方法が
同様に、サブユニット、ドメイン又はドメインの連続的部分が置換されているそ
の他の組換え型ハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物又は動物/動物のハ
イブリッドVIII因子分子又はその断片をいかにして調製できるのかをも実証
しているということを認識することだろう。
【0063】 関連するVIII因子配列をコードするヒトcDNA〔Biogen, Inc.〕又はブ
タcDNA(本書に記述されているもの)から出発して、組換え型ハイブリッド
ヒト/ブタVIII因子が調製される。好ましい実施形態においては、cDNA
によりコードされたVIII因子は、ドメイン A1−A2−A3−C1−C2
を包含し、全Bドメインは欠如しており、Wood et al.(1984)Nature 31
:330−337の番号づけシステムに従って一本鎖ヒトVIII因子のアミ
ノ酸残基1−740及び1649〜2332(配列番号2参照)に対応する。
【0064】 ブタ又はヒトのVIII因子cDNAの個々のサブユニット、ドメイン又は連
続的部分は、確立された突然変異誘発技術によってクローニングされかつ対応す
るヒト又はブタのサブユニット、ドメイン又はドメインの一部分に代って置換す
ることができ、又そうされてきた。例えば、Lubin, IM. et al.(1994)J.Bio
l. Chem. 269(12):8639−8641は、適切な制限部位を用いてヒ
トドメインに対しブタA2ドメインを置換するための技術を記述している。その
他の種のVIII因子cDNAに対して1つの種のVIII因子cDNAのいず
れかの任意の領域を置換するためのその他の方法としては、Horton, R.M. et al
.(1993)Merh. Enzymol 217:270−279によって記述されているよ
うな、オーバーラップ拡張によるスプライシング(「SOE」)が含まれる。
【0065】 サブユニット、ドメイン又はドメインの一部分をコードするハイブリッドVI
II因子cDNA又は全ハイブリッドcDNA分子は、Selden, R.F.「哺乳動物
細胞内へのDNAの導入」 Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Au
subet et al., eds(1991)中により記述されているように、確立された技
術によって培養細胞内での活性ハイブリッド ヒト/ブタ VIII因子タンパク
質分子の究極の発現のため発現ベクター内にクローニングされる。
【0066】 好ましい実施形態においては、ブタの配列がA2ドメイン又は部分ドメインと
いったようなドメイン又は部分ドメインをコードしているVIII因子をコード
するハイブリッドのヒト/ブタcDNAが、ReNeoといったような哺乳動物
発現ベクター内に挿入されてハイブリッドのVIII因子構成体を形成する。ハ
イブリッドVIII因子の予備的特徴づけは、ReNeo 哺乳動物発現ベクタ
ー内にハイブリッドcDNAを挿入しCOS−7細胞内でハイブリッドタンパク
質を過渡的に発現することによって達成される。次に活性ハイブリッドタンパク
質が発現されているか否かの決定を行なうことができる。発現ベクター構成体は
さらに、リポゾーム媒介トランスフェクションといったような当該技術分野にお
いては日常的作業である方法を用いてベビーハムスターの腎臓細胞といったよう
な培養中の細胞を安定した形でトランスフェクションするために使用される(Li
pofectin(商標),Life Technologier, Inc.)。組換え型ハイブリッドVIII
因子タンパク質の発現は、配列決定、ノーザン及びウェスタンブロット法又はポ
リメラーゼ連鎖反応(PCR)により確認できる。タンパク質を安定した形で発
現するトランスフェクションを受けた細胞が中に維持される培地内のハイブリッ
ドVIII因子タンパク質は、適切な緩衝液中で沈降、ペレット化、洗浄及び再
懸濁することができ、組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質は、例えば
モノクローナル抗−A2−Sepharose(商標)を用いてイムノアフィニティクロ
マトグラフィを含む標準的技術により精製し得る。
【0067】 さらなる実施形態においては、サブユニット、ドメイン又はアミノ酸配列置換
を含むハイブリッドVIII因子は、例えば安定性、分泌、欠失、単離などを増
強するタンパク質又はペプチドをコードする配列がVIII因子コード配列に隣
接した場所に挿入されている組換え型分子から融合タンパク質として発現されて
いる。融合タンパク質の調製において例えばプロモータ、作働遺伝子及び調節遺
伝子を含む同種又は異種の発現制御配列を使用するための確立されたプロトコル
が、すでに知られており、当該技術分野において日常的に用いられている。 Cur rent Protocol in Molecular Biology (分子生物学における現行プロトコル)(
Ausubel. F.M., et al., eds),Wiley Interscience,N.Y. を参照のこと。発現
は、Bドメインの一部分を包含することにより増強される。特に、「SQ」と呼
ばれるBドメインの部分を包含することで〔Lind, P. et al.(1995)上述
〕、有利な発現がもたらされることになる。「SQ」構成体には、BドメインN
末端の5つのアミノ酸とBドメインC末端の9つのアミノ酸を除き、ヒトBドメ
インの全てが欠如している。
【0068】 精製されたハイブリッドVIII因子又はその断片は、精製された組換え型ヒ
トVIII因子を標準として用いて、例えば無血漿VIII因子検定、一段階式
血液凝固検定及び酵素結合免疫吸着検定法を含む標準的検定により、免疫反応性
及び凝固活性について検定し得る。
【0069】 プラスミド及び真核性ウイルスベクターの両方を包含するその他のベクターも
、有能な実務家の好み及び判断に応じて、真核細胞内で組換え型遺伝子構成体を
発現するのに使用することができる(例えば、Sambrook et al., 第16章参照
)。細胞、酵母及び昆虫細胞系を包含するその他のベクター及び発現系を使用す
ることもできるが、グリコシル化の差異又は欠如のため好まれない。
【0070】 組換え型ハイブリッドVIII因子タンパク質を、培養及び組換え型哺乳動物
タンパク質発現のために一般に使用されるさまざまな細胞の中で発現させること
が可能である。特に、数多くのげっ歯類細胞系統が、大型タンパク質の発現のた
めの特に有用な宿主であることが発見されている。American Type Culture Coll
ection(米国標準培養収集機関)Rockville, MD.から入手可能な好ましい細胞
系統としては、ベビーハムスター腎細胞、及び日常的手順及び培地を用いて培養
されるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がある。
【0071】 サブユニット、ドメイン又はアミノ酸配列置換をもつハイブリッドヒト/ブタ
VIII因子を調製するために利用されるのと同じ方法を、その他の組換え型ハ
イブリッドVIII因子タンパク質及びその断片及び、ヒト/非ヒト、非ブタ哺
乳動物又は動物/動物といったようなこれらのハイブリッドをコードする核酸配
列を調製するために使用することができる。既知のヒトDNA配列由来のプライ
マから始めて、マウスのVIII因子cDNA及びブタVIII因子cDNAの
一部がクローニングされた。ハイブリッドヒト/動物又は動物/動物VIII因
子分子を調製する上で使用するためのその他の種のVIII因子配列は、出発点
として既知のヒト及びブタDNA配列を用いて得ることができる。利用可能なそ
の他の技術には、動物の組織DNAを用いたPCR増幅、及びVIII因子配列
をクローニングして取り出すための動物由来のcDNAライブラリの使用、が含
まれる。
【0072】 1つの代表的態様として、ハイブリッドヒト/マウスVIII因子タンパク質
を以下のように作ることができる。ヒトVIII因子遺伝子のマウス相同体に対
応するDNAクローンが、単離され、配列決定され、マウス、ヒトのVIII因
子分子及びブタのVIII因子分子の一部の予測されたアミノ酸配列の比較を包
含するElder. G., et al(1993)Genomics 16(2);374−379の
中で記述されている通りに、マウスVIII因子タンパク質のアミノ酸配列が予
測された。マウスVIII因子cDNA配列及び予測されたアミノ酸配列は、そ
れぞれ配列番号5及び配列番号8の中に示されている。好ましい実施形態におい
ては、Sarkar, G et al.(1989)Science 244:331−334内に記述
された転写配列決定(transcript sequencing)(RAWTS)方法でのRNA増
幅を使用することができる。簡単に言うと、その段階としては、(1)オリゴ(
dT)又はmRNA特異的オリゴヌクレオチドプライマでのcDNA合成;(2
)増幅されるべき領域と相補的な配列に付着されたファージプロモータを1つの
又は両方のオリゴヌクレオチドが含んでいるポリメラーゼ連鎖反応(PCR);
(3)ファージプロモータでの転写;及び(4)ネストされた(内部)オリゴヌ
クレオチドでプライミングされる転写体の逆転写酵素媒介ジデオキシ配列決定、
がある。配列情報の明示に加えて、この方法は、適切なPCRプライマ内に翻訳
開始シグナルを取込むことによりin vitro翻訳産物を生成することができ、その
他の種からの新規mRNA配列情報を得るために使用可能である。
【0073】 アミノ酸(単複)の置換 本発明は、その他の種の対応するアミノ酸配列又はその断片に対し置換された
1つの種の単数又は複数のユニークなアミノ酸を内含する少なくとその他の配列
を含んで成る活性の組換え型ハイブリッドヒト/動物及び動物/動物VIII因
子分子又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、それらを調
製し単離するための方法及びそれらの凝固、免疫原性及び免疫反応性特性活性を
特徴づけする方法を提供している。
【0074】 A2ドメインは、VIII因子分子のプロ凝固活性のために必要である。研究
から、ブタのVIII因子がヒトのVIII因子よりも6倍大きいプロ凝固活性
を有すること(Lollar, P. et al.(1991)J.Biol.Chem.266:12481
−12486)及びヒト及びブタのVIII因子の間の凝固活性の差がヒトとブ
タのA2ドメイン内の単数又は複数の残基の間のアミノ酸配列の差異に基づくも
のと思われること(Lollar, P.et al.(1992)J.Biol.Chem.267:236
52−23657)が示されている。さらに、ヒトVIII因子分子内のA2及
びC2ドメイン及び場合によっては第3のL鎖領域は、全てとはいわないまでも
大部分の阻害性抗体がHoyer(1994)Semin. Hewatol. 31:1−5.に従っ
て反応するエピトープを宿すと考えられている。
【0075】 組換え型ハイブリッドヒト/動物、動物/動物又は等価物のVIII因子分子
又はその断片は、以下でより詳しく例示されるように2つの種の分子間でアミノ
酸配列が異なっている、その他の種の対応する配列に対する1つの種のVIII
因子のA2、C2及び/又はドメインからの単数又は複数のユニークアミノ酸が
包含する少なくとその他の特異的配列の置換によって作ることができる。本書で
記述されている好ましい実施例においては、本発明は、1つのエピトープを包含
する対応するヒトアミノ酸配列に対して置換させられたブタのアミノ酸配列を含
む活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子において、VIII因子に
対する阻害性抗体との免疫反応性が減少しているか又は全く無いハイブリッドV
III因子を提供する。さらなる実施形態においては、第3の種内の対応する配
列に対し置換された複数の種からのアミノ酸配列を含む活性組換え型ハイブリッ
ドVIII因子分子も同様に作ることができる。同様に、以下でさらに詳述する
ように、VIII因子に対する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数の
アミノ酸を内含する少なくとその他の配列を内含するヒト、動物又はハイブリッ
ドのVIII因子を含んで成る組換え型ハイブリッド等価物分子も作ることがで
きる。
【0076】 記述されたような特異的アミノ酸置換をもつあらゆるハイブリッドVIII因
子構成体を、増強された凝固活性及び/又は減少した抗体免疫反応性をもつハイ
ブリッドVIII因子分子の同定のためVIII因子に対する阻害性抗体との反
応性について及び凝固活性についての標準的手順によって検定することが可能で
ある。同様に、ヒト又はブタのVIII因子に比べて減少した凝固活性のみなら
ず低下した抗体反応性をも有するハイブリッド分子を同定することもできる。当
業者であれば、ヒト又はブタのVIII因子に比べて少ない、等しい又は大きい
凝固活性をもつハイブリッドVIII因子分子又はその断片が、VIII因子欠
損症患者の治療に有用であることを認識するだろう。特異的アミノ酸の置換を伴
う活性組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を調製するための本書に記
述された方法を用いて、活性の組換え型ヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物のVII
I因子タンパク質、ハイブリッドの動物−1/動物−2 VIII因子及び、ハ
イブリッドの等価物VIII因子又はその断片Iを調製することが可能である。
【0077】 改変された凝固活性をもつハイブリッドのVIII因子分子 本発明は、本書で記述されているような確立した部位特異的突然変異誘発技術
を用いて、その他の種のVIII因子の対応するアミノ酸配列に対して置換され
た1つの種のVIII因子内のプロ凝固活性をもつ単数又は複数のユニークなア
ミノ酸を包含する少なくとその他の特異的配列を含んで成る、プロ凝固組換え型
ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、又は等価物VIII因子分子又はその断
片を提供する。置換において使用されるべき特異的配列は、以下のように選択さ
れハイブリッド構成体が調製され凝血活性について検定される。好ましい例示的
実施形態として特定的に提供されるのは、A2ドメイン内にアミノ酸配列Bを含
むハイブリッドヒト/ブタVIII因子である。当業者であれば、改変された凝
固活性つまり好ましくはヒトVIII因子に比べて増大した凝固活性をもつその
他のハイブリッドのヒト/動物、動物/動物及び等価物のVIII因子分子又は
その断片を調製するためにこれらの方法を使用できるということがわかる。
【0078】 ブタVIII因子内のより大きな凝固活性の根拠は、Lollar, P. et al.(19
90)J. Biol. Chem.265;1688−1692:Lollar, P. et al.(199
2)J. Biol. Chem.267:23652−23657;Fay, P.J. et al.(199
2)J. Biol. Chem.267:13246−13250によると、活性の喪失を導
くブタVIII因子よりも急速なヒトVIII因子のA2サブユニットの自発的
解離にあると思われる。
【0079】 ヒト及びブタのVIII因子 A2ドメインのアミノ酸配列のアラインメント
の比較(残基番号づけは、ヒトVIII因子の全長アミノ酸配列、配列番号2と
の関係において位置373で始まる)が、図1Cに示されている。改変された凝
固活性をもつハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子の調製のために、ヒトA
2ドメイン内でのヒト及びブタのA2アミノ酸配列(それぞれ配列番号2及び6
)の比較に基づいて顕示された突然変異誘発の初期標的候補が、表Iに示されて
いる。 ──────────────────────────────── 表I 突然変異誘発のヒトアミノ酸配列標的候補(配列番号2) 配列 残基 ミスマッチ 電荷変化 398-403 6 4 1 434-444 10 4 3 484-496 13 7 3 598-603 6 4 2 536-541 6 4 0 713-722 10 6 2 727-737 11 6 2 ──────────────────────────────── 表1及び図1A〜1Bは、A2ドメインの17%しか構成しないもののヒト及
びブタのA2ドメイン間の配列差の70%を包含するヒト及びブタのA2ドメイ
ンアミノ酸配列(それぞれ配列番号2及び6)内の7つの配列を例示している。
【0080】 ヒトVIII因子のA2ドメイン(Ser373〜Arg740)内のアミノ酸配列
Ser373〜Glu604が相同のブタ配列で置換された、組換え型ハイブリッドヒ
ト/ブタ構成体が記述されている。この構成体は、A2阻害物質と反応せず、ヒ
トB(−)VIII因子と同じ凝固活性をもつ。ヒトVIII因子に比べて増大
した凝固活性をもつヒトVIII因子内の完全なブタA2ドメイン置換を含む血
漿由来のハイブリッド分子が記述されている。これらの構成体を比較すると、残
基Asp605とArg740の間の領域がヒト及びブタのVIII因子間の活性差
の原因であることが明らかになる。この領域は、例えば、A2のNH2末端領域
内にブタの置換を含むハイブリッドのVIII因子分子を作るために広く用いら
れてきた「オーバーラップ拡張によるスプライシング」(SOE)方法といった
ような確立された部位特異的突然変異誘発技術を用いることによって、Asp60
5とArg740の間の領域内にブタの置換を伴う組換え型ハイブリッドヒト/ブ
タVIII因子分子を系統的に作ることによって、さらに特定的に定義し得る。
これらの分子は、上述のとおり、COS−7細胞及びベビーハムスター腎細胞の
中で発現させることができる。これらは、ヘパリシ−Sepharose(商標)及び免
疫親和性クロマトグラフィといったような当該技術分野において既知の方法を用
いて均質性に至るまで精製可能である。タンパク質濃度は、A280での紫外線吸
光により推定でき、構成体の比活性は、A280で(単一段階の血液凝固検定によ
り1mlあたりのユニット数で測定された)凝固活性を除することで決定できる。
ヒトVIII因子は約3000〜4000U/A280の比活性をもち、一方ブタ
のVIII因子は約20000U/A280の比活性をもつ。好ましい実施形態に
おいては、プロ凝固性の組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子は、20
000U/A280の比活性をもち、A2ドメイン内に最少量のブタ置換を含む。
【0081】 本書で記述するように、ヒトVIII因子に比べて増強されていても、等しく
ても又は低減されていてもよいが好ましくは増強されているハイブリッド タン
パク質を同定するために部位特異的突然変異誘発が使用される。ハイブリッドヒ
ト/ブタの実施形態においては、Ho. S. N, et al. 77Gene 51−59(19
94)によって及び例7及び8内で記述されているように、好ましくはオーバラ
ップ拡張によるスプライシング(SOE)方法を用いて、特異的ヒト配列がブタ
配列で置換される。ヒトA2ドメインの一部分についてアミノ酸配列をループア
ウトするのに行なわれたように(例7参照)、オリゴヌクレオチド特異的突然変
異誘発も使用することができる。ハイブリッドの機能的分析は、凝固活性を明ら
かにすることから、配列をさらに吟味し、標準的な点突然変異分析技術によりプ
ロ凝固性配列についてマッピングすることができる。
【0082】 本発明は、ハイブリッドVIII因子cDNA及びタンパク質を、DNA配列
決定、凝固活性検定、ELISA及び精製済みハイブリッドVIII因子の28
0nmでのUV吸光度による質量、凝固比活性(U/mg)、精製済みハイブリッ
ドVIII因子のSDS−PAGEなどといった、確立され日常的なものである
方法によって、特徴づけしうる、ということを考慮している。アミノ酸、炭水化
物、硫酸塩又は金属イオン分析といった、臨床的有効性についてのその他の既知
のテスト方法が必要とされる。
【0083】 ヒトVIII因子に比較してより優れた凝固活性をもつ組換え型ハイブリッド
VIII因子は、血漿由来のVIII因子よりも作るのに費用がかからず、VI
II因子欠損症の有効な治療に必要とされるVIII因子の量を減少させること
ができる。
【0084】 低減した免疫反応性をもつハイブリッドVIII因子分子 VIII因子の凝固活性を阻害する抗体(「阻害物質」又は「阻害性抗体」)
と免疫反応性をもつエピトープが、VIII因子内の既知の構造−機能関係に基
づいて特徴づけされてきた。恐らく、阻害物質は、VIII因子のドメイン構造
と結びつけられた巨大分子相互作用又は、フォン・ウィルブランド因子、トロン
ビン、Xa因子、IXa因子又はX因子とのその会合のいずれかを分断すること
によって作用することができると思われる。しかしながら、Fulcher et al.(1
985)Proc. Natl. Acad. Sci USA 82:7728−7732;及びScandell
a et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6152−6156
により記述されているように、ヒトVIII因子に対する阻害性抗体の90%以
上は、VIII因子の40kDaのA2ドメイン又は20kDaのC2ドメイン
内にあるエピトープに結合して、これらのドメインと結びつけられた特定の機能
を崩壊することによって作用する。A2及びC2エピトープに加えて、Scandell
a et al.(1993)Blood 82:1767−1775に従うと、VIII因子
のL鎖のA3及びC1 ドメイン内に第3のエピトープが存在する可能性がある
。この推定上の第3のエピトープの意義は未知であるが、VIII因子内のエピ
トープ反応性の一部分を説明しているように思われる。
【0085】 Lollar et al.(1994)J. Clin. Invest. 93:2497−2504.に
より示されているように、抗A2抗体は、第X因子の活性化を遮断する。Ware e
t al.(1992)Blood Coagul. Fibrinolysis :703−716、により記
述された欠失突然変異誘発による以前のマッピング研究は、A2エピトープが、
40kDaのA2ドメインのNH2末端の20kDa領域内にあるものと位置特
定した。競合的免疫ラジオメトリック検定は、A2阻害物質が、Scandella et a
l.(1992)Throm. Haemostas 67:665−671.により記述され例8
で実証されるように、共通のエピトープ又は狭くクラスタ化したエピトープのい
ずれかを認識するということを示した。
【0086】 本発明は、活性組換え型ハイブリッド及びハイブリッド等価物のVIII因子
分子又はその断片、これらのハイブリッドをコードする核酸配列、これらを調製
し単離する方法及びこれらを特徴づけする方法を提供している。これらのハイブ
リッドは、その他の種のVIII因子の対応するアミノ酸配列に対して置換され
た1つの種のVIII因子の単数又は複数のユニークなアミノ酸を包含する少な
くとも1個の特異的アミノ酸配列をさらに含むヒト/動物、動物/動物又は等価
物のハイブリッドVIII因子分子を含むか;又は、ヒト、動物又はハイブリッ
ドのVIII因子内の特異的アミノ酸配列に対し置換された、VIII因子に対
する既知の配列同一性を全くもたない単数又は複数のアミノ酸を包含する少なく
とも1個の配列を含む。結果として得られるハイブリッドのVIII因子は、ヒ
ト又はブタのVIII因子に比べてVIII因子阻害性抗体に対する免疫反応性
が低いか反応性を全くもたない。
【0087】 VIII因子分子内のアミノ酸の置換について以上の節で記述したアプローチ
を用いると、阻害性抗体が向けられているA2、C2又はその他のいずれかのド
メイン内の単数又は複数の重要域を包含する、ハイブリッド等価物VIII因子
分子のアミノ酸配列又は好ましくはヒトであるその他の種のVIII因子内の単
数又は複数のアミノ酸を包含する少なくとも1個の配列に対して置換させられて
いる、好ましくはブタである1つの種の対応するVIII因子アミノ酸配列を選
択するために、突然変異分析が利用される。これらの方法については以下でさら
に詳細に記述されている。結果として得られるプロ凝固性組換え型ハイブリッド
構成体は、標準的検定を用いてヒトVIII因子に比べた場合、阻害性抗体に対
する免疫反応性が低いか、又は反応性を全くもたない。以下で記述するように、
増々小さくなるアミノ酸配列の系統的置換とそれにつづく免疫反応性についての
ハイブリッド構成体の検定を通して、VIII因子分子のあらゆるドメイン内の
エピトープは、より低い免疫反応性しかもたないか又はこれを全くもたないアミ
ノ酸配列により置換された状態でマッピングされ、ハイブリッドVIII因子が
調製される。
【0088】 当業者であれば、阻害性抗体が向けられているA2、C2及び/又はその他の
ドメイン内にエピトープを含む単数又は複数のアミノ酸を包含する少なくとも1
個の配列を同定し置換し、かつ、ヒト又はブタのVIII因子に比べて低い免疫
反応性しかもたないか又は全く反応性をもたないプロ凝固性組換え型ハイブリッ
ドヒト/動物、動物/動物又は等価物のVIII因子又はその断片を構築するた
めに、エピトープマッピング、ハイブリッドVIII因子分子の構築及び構成体
の突然変異分析を組合わせたこのアプローチを使用することができる、というこ
とがわかる。このアプローチは、例8に記述されているように、実施例と同様抗
VIII因子抗体に対する抗原性を全くもたず、ヒトA2ドメイン内にブタのア
ミノ酸置換を有する組換え型プロ凝固性ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を
調製するために使用される。
【0089】 通常、ブタVIII因子は、ヒトVIII因子に対する阻害性抗体と、限定的
にか又は全く反応しない。以下のように、A2以外のドメイン内での置換及びそ
の他の種のVIII因子を用いていかにしてハイブリッドVIII因子を調製で
きるかの一例として、ADドメイン内のアミノ酸置換に基づく阻害性抗体との反
応性が減少した又は全くない組換え型ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子
が調製される。ブタA2ドメインは、例6、7及び8及び以上で記述されたよう
な標準的クローニング技術によってクローニングされ、次に、cDNAを切断す
るための制限部位の使用又はオーバーラップ拡張によるスプライシング(SOE
)といったような日常的手順を用いてA2ドメイン内で切断されスプライスされ
る。結果として得られたブタのアミノ酸配列は、ヒトのA2ドメイン内へと置換
されてハイブリッドVIII因子構成体を形成し、この構成体は、好ましくはRe
Neoである。哺乳動物の発現ベクター内に挿入され、好ましくはベビーハムスタ
ー腎細胞である培養細胞内に安定した形で移入され、上述のとおり発現される。
ハイブリッドVIII因子は、例えば日常的なベセズダ検定又は無血漿色素産生
基質検定により、抗A2抗体を用いて免疫反応性について検定される。ベセズダ
単位(BU)は、阻害物質力価を測定するための標準的な方法である。ベセズダ
力価をハイブリッド内で測定できない場合には(<0.7 Bu/mgIgG)置換
された対応するブタ配列の領域内で、ヒトA2エピトープが除去されたのである
。エピトープは漸進的に狭められ、かくして、可能なかぎりわずかなブタ配列し
か伴わないハイブリッドヒト/ブタ分子を産生するために、特異的A2エピトー
プを決定することができる。本書で記述するように、阻害的免疫反応性にとって
きわめて重要であるアミノ酸 Arg484−Ile508に対応する25残基の配
列が同定され、ヒトのA2ドメイン内で置換される。この配列内には、ヒトとブ
タのVIII因子の間にはわずか9つの差しかない。この領域をさらに分析し置
換することが可能である。
【0090】 A2ドメインに置換を有するかまたは有さずに、C1、C2または他のドメインにお
けるアミノ酸配列の置換に基づいて、阻害抗体との低下した反応性を有するかま
たは反応性を有していない、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子をまた製
造することができる。C2エピトープは例えば、部位特異的変異誘発と合わせた相
同走査アプローチを用いて位置決定することができる。より詳細には、その手法
は、A2ドメインにおけるアミノ酸置換について本明細書に記載したのと同じかま
たは同様であることができ、例えば、RT-PCRを用いるかまたは、ヒトC2または他
のドメインDNAを用いてブタ肝臓cDNAライブラリーを調べることによる、ブタC2
または他のドメインをクローン化すること;C2または他のドメインにおけるエピ
トープを位置決定し、かつ同時に置換するための制限部位技術および/または連
続SOE;B(-)VIII因子におけるヒトC2または他のドメインの置換;発現ベク
ター、例えばpBluescriptへの挿入;培養した細胞における発現;ならびに免疫
反応性についての通常のアッセイを含む。アッセイのために、C2ハイブリッドV
III因子とC2-特異的阻害剤との反応性、MR[スカンデラ(Scandella)ら、(199
2) Thomb. Haemostasis 67:665-671およびルビン(Lubin)ら、(1994)]および/
または親和性クロマトグラフィーにより製造される他のC2特異的抗体を成し遂げ
ることができる。
【0091】 C2ドメインは、アミノ酸残基2173-2332(配列番号2)からなる。シマ(Shima), M
.ら、Thromb. Haemostas 69:240-246によれば、この154のアミノ酸領域内で、阻
害剤活性は、残基2248-2312間の65のアミノ酸領域に特異的であると思われる。
ヒトおよびブタVIII因子のC2配列がこの領域において約85%同一であるなら
、それは、VIII因子の機能的に活性な領域のどこか他の場所であるので、ヒ
トおよびブタのVIII因子 C2アミノ酸配列間に約10個の差異があり、これは
、置換されたC2配列を用いてハイブリッドを構成するために最初の標的として使
用することができる。
【0092】 臨床的に重要なVIII因子エピトープは、A2およびC2ドメインに限られるよ
うである。しかしながら、VIII因子の他の領域(A1、A3、BまたはC1ドメイン
)に対する抗体が同定されるなら、非抗原性ハイブリッドヒト/ブタVIII因
子分子について本明細書に記載したアプローチを用いて、エピトープを位置決定
し、除去することができる。
【0093】 より詳細には、推定の第2のL鎖エピトープおよび/または任意の他の動物ま
たはヒトのVIII因子ドメインにおける任意の他のエピトープの位置決定をま
た達成することができる。初めに、A3またはC1ドメインにおける第3の阻害剤エ
ピトープの存在の決定を以下のように行うことができる。ヒト(「H」)およびブ
タ(「p」)VIII因子アミノ酸配列をモデルとして用いて、A1p-A2p-A3p-C1H-C
2pおよびA1p-A2p-A3H-C1p-C2pのB-ドメイン欠如(domainless)ハイブリッドが構
築される。ブタVIII因子に対して低い力価を有するかまたは力価が検出でき
ない約20人の患者血漿(ドクター ドロテア スカンデラ(Dr. Dorothea Scande
lla)、アメリカン赤十字(American Red Cross)から)からの阻害剤IgGが、ハイ
ブリッドに対して試験される。第3のエピトープがA3ドメインにあるなら、阻害
IgGはA1p-A2p-A3H-C1p-C2pと反応するが、A1p-A2p-A3p-C1H-C2pとは反応しない
ことが予想される。逆に、第3のエピトープがC1ドメインにあるなら、阻害IgG
はA1p-A2p-A3p-C1H-C2pと反応するが、A1p-A2p-A3H-C1p-C2pとは反応しないこと
が予想される。第3のエピトープが同定されるなら、それは、A2およびC2エピト
ープについて本明細書において記載した手順によって特性決定される。
【0094】 例えば、C1またはA3ドメインエピトープに特異的な抗体は、A1p-A2p-A3H-C1p-
C2pおよびA1p-A2p-A3p-C1H-C2pハイブリッドを用いる親和性クロマトグラフィー
によって、および、組換えVIII因子 C2-Sepharaose(商標)を通すことに
よるC2特異的抗体の除去によって、全患者IgGから分離することができる。推定
の第3のエピトープはSOE構築体によって同定され、ここでは、好ましい実施態
様においては、ヒトVIII因子 A3またはC1ドメインの一部が系統的にブタ配
列で置きかえれられている。
【0095】 減じられた免疫原性を有するハイブリッドVIII因子分子: 分子は、ヒトまたは動物において抗体の生成を誘発することができるとき、免
疫原性である。本発明は、他の種のVIII因子の免疫原活性を有する対応する
アミノ酸配列が置換された1つの種のVIII因子の1つ以上のユニークアミノ
酸を含む少なくとも1つの特異的アミノ酸配列;または、ヒト、動物もしくはハ
イブリッドの因子のアミノ酸配列が置換されているVIII因子に対する公知の
同一性を有していない1つ以上のアミノ酸を含む少なくとも1つのアミノ酸配列
を含む、ヒトまたは動物における野生型ヒトブタVIII因子より免疫原性が低
い、プロ凝固性(procoagulant)組換えハイブリッドヒト/動物または動物/動物
VIII因子分子、ハイブリッドVIII因子等価分子またはいずれかの断片を
提供する。このハイブリッドは、動物またはヒトにおいて阻害剤展開の発生率を
低下させるために、かつVIII因子欠乏症を治療するために使用することがで
き、予め治療されていない血友病患者を治療するのに使用するのが好ましい。好
ましい実施態様においては、修飾されたVIII因子は、ヒトVIII因子アミ
ノ酸配列を含み、免疫原活性を有するヒトアミノ酸配列が置換された1つ以上の
アラニン残基をさらに含み、ヒトまたは動物において減じられた免疫原性を有す
るかまたは免疫原性がないプロ凝固性組換えハイブリッド等価分子またはその断
片を生じる。
【0096】 ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を用いた、VIII因子分子における非
抗原アミノ酸配列の置換と合わせた、エピトープ位置決定および変異分析につい
て本明細書で記載したプロセスは、低い抗原性を有するハイブリッド分子を生じ
る。このモデルおよび関連方法を用いて、本明細書で記載した任意のハイブリッ
ド構築体を、部位特異的変異誘発技術によって変えて、できるだけ多くの任意の
機能性エピトープを除去して、ハイブリッドVIII因子を認識する免疫系の能
力を最小にし、それによって免疫原性を減らすことができる。
【0097】 抗原性をさらに減らし、より小さい免疫原性のハイブリッドVIII因子を構
築するために使用することができる1つの方法は、ヒト、動物またはハイブリッ
ドの等価VIII因子における選択された特異的アミノ酸配列のアラニン走査変
異誘発(alanine scanning mutagenesis)(カニンガム(Cunningham)、B.C.ら、(
1989)、Science 244:1081-1085により記載された)である。アラニン走査変異
誘発においては、推定でエピトープに関係するアミノ酸側鎖が、部位特異的変異
誘発を用いて、アラニン残基で置換される。アラニン変異体の野生型タンパク質
への抗体結合を比較することによって、個々の側鎖の結合相互作用への相対的寄
与を決定することができる。アラニン置換は特に有用であると思われる。という
のは、抗体結合への側鎖の寄与は、β炭素以外は除去されるが、グリシン置換と
違って、主鎖の配座は通常変えられないからである。アラニン置換は、タンパク
質-タンパク質相互作用を支配する主要な立体的な疎水的または静電気的作用を
賦課することはない。
【0098】 タンパク質の抗原-抗体相互作用においては、通常約15〜20の、抗体と接触す
る抗原側鎖がある。主鎖相互作用とは反対であるように、側鎖相互作用はタンパ
ク質-タンパク質相互作用を支配する。最近の研究では、わずかだけ(約3〜5)
のこれらの側鎖相互作用が結合エネルギーのほとんどに寄与することが示唆され
た。クラックソン(Clackson), T.ら、(1995) Science 267:383-386参照。幾つか
のネズミモノクローナル抗体について成長ホルモンエピトープの広範囲の分析は
、結合エネルギーへの側鎖の寄与について以下の階層を示し:Arg>Pro>Glu-As
p-Phe-Ile、Trp、Ala、GlyおよびCysは試験されていない[ジン(Jin), L.ら、(1
992) J. Mol. Biol. 226:851-865]。本明細書に記載されたA2エピトープについ
ての結果はこれと一致する。というのは、484〜508のA2セグメント中の25個の残
基のうちの12個が、これらの側鎖を含むからである(図1C)。
【0099】 ある種のアミノ酸残基が抗体によって特によく認識されるという発見は、公知
のエピトープからのこれらの残基の除去がこれらのエピトープを認識する免疫系
の能力を低下させる、すなわち、分子をより小さい免疫原性にすることができる
ことを示す。A2エピトープの場合には、免疫原性の残基は、VIII因子凝固活
性の喪失なしに置き換えることができる。例えば、HP9においては、Arg484をSer
で置換し、Pro485をAlaで置換し、Arg489をGlyで置換し、Pro492をLeuで置換し
、Phe501をMetで置換する。さらに、実施例8に記載された、ハイブリッドヒト
/ブタVIII因子構築体における免疫反応性を試験するために使用した患者血
漿からの結果は、異なる患者からの抗体が、A2ドメインにおいて同じかまたは非
常に類似の構造領域を認識すること、および、A2阻害剤の結合に関係するA2ドメ
インにおける残基がほとんど変更を示さないと思われることを示す。かくして、
ヒトVIII因子残基484〜508に含まれるA2エピトープは、VIII因子の他の
構造領域よりよくヒト免疫系により認識されることにおいて、免疫優性なエピト
ープである。完全なプロ凝固性活性を維持しながら、この構造を、別の種からの
非抗原性VIII因子配列または非VIII因子アミノ酸配列で置換すると、免
疫系によるハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子の認識を変える
ことが予想される。
【0100】 エピトープを支配する傾向があるかさ高いおよび/または帯電した残基を小さ
い天然の側鎖(例えばアラニン)で置換する部位特異的変異誘発は、より少ない
免疫原性領域を生じ得ることが予期される。それぞれの重要な阻害剤エピトープ
にこれらの幾つかの置換基を含む分子は、免疫系が、抗原-抗体相互作用の典型
である鍵-鍵穴機構により適合するのが困難であろうと予想される。その低い抗
原性の故に、そのようなハイブリッド分子は、阻害剤でVIII因子欠乏症患者
を治療するのに有用であり得る。そして、その低い免疫原性の故に、予め治療さ
れていない血友病A患者を治療するのに有用であり得る。
【0101】 一般的結果は、少しの鍵となる残基のうちの1つの変異は、幾つかの次数の大
きさだけ与えられたタンパク質-タンパク質相互作用のための結合定数を減らす
のに十分であることである。かくして、すべてのVIII因子エピトープは、限
られた数の、阻害剤の展開に不可欠のアミノ酸を含むと思われる。VIII因子
の各エピトープのために、免疫原活性を有する1つ以上の特定のアミノ酸を含む
少なくとも1つの配列をアラニンで置換することは、野生型VIII因子より免
疫原性が少ない活性分子を生じ得る。好ましい実施態様においては、ハイブリッ
ドVIII因子はB-ドメイン欠失である。
【0102】 免疫原活性を有するVIII因子におけるアミノ酸配列を、ほとんどまたは全
く免疫原活性を有さないアミノ酸配列で置換して、活性な組換えハイブリッドま
たはハイブリッド等価なVIII因子を製造する方法は、典型的実施態様として
、A2ドメインにアミノ酸置換を有するハイブリッドヒト/ブタVIII因子を用
いて、以下のようである。ヒトVIII因子領域484〜508には25個の残基がある
。部位特異的変異誘発を使用して、全部で475個の変異体について、任意のこれ
らの残基が任意の他の19個のアミノ酸で置換されている、単一の変異体を作るこ
とができる。さらに、1つより多い変異を有するハイブリッド分子を構築するこ
とができる。
【0103】 ハイブリッド構築体は、フリゲット(Friguet), B.ら、(1985) J. Immunol. Me
thods 77:305-319(1985)に記載されているように、阻害剤抗体についての結合定
数を測定することによって、抗原性についてアッセイすることができる。好まし
い実施態様においては、結合定数は、少なくとも3次数の大きさだけ減らされ、
これは、ベセスダ(bethesda)力価を臨床的に重大でないレベルまで下げる。例え
ば、A2抗体による阻害のIC50(結合定数の粗い尺度)は、実施例8において記載
された、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子構築体HP2、HP4、HP5、HP7および
HP9で減少され、このことは、ベセスダ(bethesda)力価を測定不能なレベルに下
げることと関連した。例えば、ヒトVIII因子の2重または3重変異体(例え
ば、ヒトVIII因子 Arg484->Ala、Arg489->Ala、Phe501->Ala3重変異体
)は、治療上の使用のために十分に低い抗原性を有する分子を生じることが予想
される。同様の変異を、C2エピトープおよび推定の第3のエピトープにおいて行
うことができる。好ましい実施態様は、2つまたは3つのVIII因子エピトー
プへの2個または3個のアラニン置換を含む。これらの領域への他の置換をまた
行うことができる。
【0104】 好ましい実施態様においては、ヒトまたはブタVIII因子より、ヒトおよび
動物における抗原性が小さいか、および/または免疫原性が小さい、ハイブリッ
ド等価VIII因子分子が同定される。そのようなハイブリッド等価構築体は、
それらの減少した抗原性および/または免疫原性について、動物において試験す
ることができる。例えば、対照ならびに、VIII因子欠乏症のウサギ、ブタ、
イヌ、マウス、霊長類および他の哺乳動物を、動物モデルとして使用することが
できる。1つの実験プロトコールにおいては、ハイブリッドまたはハイブリッド
等価なVIII因子を計画的に6ヶ月〜1年の期間にわたって動物に、好ましく
は静脈内注入によって、5〜50単位/kg体重、好ましくは10〜50単位/kg体重、
最も好ましくは40単位/kg体重の投与量範囲で、投与することができる。決まっ
た方法(免疫アッセイおよびベセスダ(bethesda)検定を含む)により、試験期間
中にわたる注入後間隔をあけて採取した血漿試料中で、抗体を測定することがで
きる。決まった手順(1段階凝固検定を含む)を用いて、試料中の凝固活性がま
た測定できる。
【0105】 ハイブリッド等価なVIII因子分子を、ヒトにおいて、少なくとも2つのタ
イプの臨床的試みにおいて、減ぜられた抗原性および/または免疫原性について
試験することができる。ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が
阻害抗体と免疫反応性であるかどうかを決定するように設計された、1つのタイ
プの試みにおいては、ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が、
好ましくは静脈内注入により、治療上のヒトまたはブタVIII因子の凝固活性
を阻害するVIII因子に対する抗体を有する、VIII因子欠乏症の約25人の
患者に投与される。ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子の投与
量は、5〜50単位/kg体重、好ましくは10〜50単位/kg体重、最も好ましくは40
単位/kg体重の範囲にある。各投与の約1時間後、血液試料からのVIII因子
の回収率を、1段階凝固検定において測定する。注入の約5時間後に試料を再び
採取し、回収率を測定する。全回収率および試料からの因子VIIの消失速度は、
抗体力価および阻害活性の予測である。抗体力価が高いなら、VIII因子回収
率は通常測定することができない。回収率結果を、血漿由来ヒトVIII因子、
組換えヒトVIII因子、ブタVIII因子および他の普通に使用される治療形
態のVIII因子またはVIII因子置換物を用いて治療した患者における回収
率結果の回収率と比較する。
【0106】 ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が免疫原性であるかどう
か、すなわち、患者が阻害抗体を展開するかどうかを決定するように設計された
、第2のタイプの臨床上の試みにおいては、先の段落において記載したように、
ハイブリッドまたはハイブリッド等価なVIII因子が、約100人の予め治療さ
れていない、VIII因子に対する抗体を展開しなかった血友病患者に投与され
る。治療は、6ヶ月〜1年の期間にわたってほぼ2週間ごとに行われる。この期
間中1〜3ヶ月の間隔で、血液試料を取り、ベセスダ(bethesda)検定または他の
抗体検定を行って、阻害抗体の存在を決定する。上記したようにして、各注入後
に回収検定をまた行うことができる。結果を、血漿由来ヒトVIII因子、組換
えヒトVIII因子、ブタVIII因子または他の普通に使用される治療形態の
VIII因子またはVIII因子置換物を受けた血友病患者と比較する。
【0107】 ヒトおよび非ブタ、非ヒト哺乳動物VIII因子アミノ酸配列を用いた、ハイ ブリッドVIII因子分子の製造 特定のアミノ酸の置換を用いる、ハイブリッドヒト/ブタVIII因子を製造
するために使用される方法は、A2、C2および/または他のドメインにおける1個
以上のアミノ酸の置換に基づいて、ヒトまたはブタVIII因子と比べて変えら
れているかまたは同じ凝固活性および/または等しいかまたは減らされた免疫反
応性および/または免疫原性を有する、組換えハイブリッドヒト/非ヒト、非ブ
タ哺乳動物または動物/動物VIII因子タンパク質を製造するために使用する
ことができる。
【0108】 アミノ酸配列同一性の同様の比較を、ヒトおよび非ヒト、非ブタ哺乳動物VI
II因子タンパク質の間で行って、プロ凝固活性、抗-A2および抗-C2免疫反応性
および/または免疫原性または、他のドメインにおける免疫反応性および/また
は免疫原性が存在する、アミノ酸配列を決定することができる。次に、同様の方
法を使用して、ハイブリッドヒト/非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子分子を
製造することができる。上記したように、各ハイブリッドの機能分析は、阻害抗
体に対する減じられた反応性および/または減らされた免疫原性、および/また
は増加された凝固活性を明らかにし、その配列は、点変異分析によってさらに詳
細に分析することができる。
【0109】 例えば、ハイブリッドヒト/マウスVIII因子分子を、上記したようにして
製造することができる。ヒト(配列番号2)およびマウス(配列番号6)のA2ドメ
インのアミノ酸配列アラインメント(alignment)は、図1Cに示されている。エル
ダー(Elder)らによって報告されたように、マウスcDNA(配列番号5)によりコー
ドされるVIII因子タンパク質は、全体的にヒト配列(配列番号2)への74%
配列同一性(Bドメインが比較から除かれるときには87%同一性)にて、2319個
のアミノ酸を有し、ヒトVIII因子より32個アミノ酸が短い。マウスAおよびC
ドメインにおけるアミノ酸配列(配列番号6)は非常によく保存され、ヒト配列
(配列番号2)に対して84-93%配列同一であり、一方、Bおよび2つの短い酸性
ドメインは42〜70%配列同一性を有する。詳細には、A1、A2およびA3マウスアミ
ノ酸配列(配列番号6)は、対応するヒトアミノ酸配列(配列番号2)に対して85
、85および90%同一である。C1およびC2マウスアミノ酸配列は、対応するヒトア
ミノ酸配列に対して93および84%同一である。予想されるマウスVIII因子ア
ミノ酸配列(配列番号6)においては、番号付けの目的のためのアミノ酸配列同
一性を用いて、A1、A2およびA3ドメインは、ヒトVIII因子アミノ酸1〜372、
373〜740および1690〜2032にそれぞれ相同である。
【0110】 トロンビン/Xa因子および1つを除くすべての活性化されたタンパク質C開裂
部位は、マウスVIII因子において保存される。フォン ウィルブランド(von
Willebrand)因子結合のためのチロシン残基がまた保存される。
【0111】 エルダー(Elder)らによれば、マウスVIII因子のヌクレオチド配列(配列
番号5)は7519個の塩基を含み、ヒトヌクレオチド配列(配列番号1)との全体的
に67%同一性を有する。ネズミコード配列の6957個の塩基対は、ヒトVIII因
子におけるコード配列の7053個の塩基対との82%配列同一性を有する。Bドメイ
ンが比較に含まれないときには、88%ヌクレオチド配列同一性がある。
【0112】 エルダー(Elder)らは、ヒトおよびマウスVIII因子分子は全体的に74%同
一であること、ならびに、変更されるときに血友病へと至る95%のヒト残基がマ
ウスにおいて同一であることを報告する。これらのデータは、ブタVIII因子
分子において凝固活性および/または抗体に対する免疫反応性を有するアミノ酸
配列を同定するのに使用される同じ技術をマウスまたは他の動物のVIII因子
へ適用して、同様のアミノ酸配列を同定し、かつハイブリッド分子を製造するこ
とを支持する。
【0113】 ヒトおよび非ヒト、非ブタ哺乳動物VIII因子アミノ酸配列および非VII I因子アミノ酸配列を用いた、減じられた交差反応性を有するハイブリッドVI II因子分子の製造 ブタVIII因子は、ヒトVIII因子に対する阻害抗体を有するVIII因
子欠乏症患者を治療するために臨床的に使用される。ヒト血漿がブタVIII因
子と反応する交差反応性を、ハイブリッドブタ/非ヒト、非ブタ哺乳動物または
ハイブリッド等価VIII因子の製造によって減らすことができる。好ましい実
施態様においては、決まったベセスダ(bethesda)検定および標準として特定の他
の哺乳動物血漿を使用して、ヒトA2、C2または他のドメイン特異的阻害剤が非ヒ
ト、非ブタ哺乳動物(「他の哺乳動物」)VIII因子と反応するかどうかの決
定がなされる。通常、阻害剤力価を血漿中で測定するので、精製した他の哺乳動
物VIII因子は必要ではない。阻害剤が他の哺乳動物VIII因子、例えばそ
の配列が公知であるネズミVIII因子と反応しないなら、ヒト/ブタハイブリ
ッドを用いて同定されるように、対応する他の哺乳動物配列はブタエピトープ領
域中へと置換することができる。動物の配列が知られたなら、部位特異的変異誘
発技術、例えばクンケル(Kunkel), T.A.ら、(1991) Meth. Enzymol. 204: 125-1
39により記載されたオリゴヌクレオチド仲介変異誘発を使用して、ハイブリッド
ブタ/動物VIII因子分子を製造することができる。他の動物血漿が、ネズミ
またはブタVIII因子より、A2、C2または他のVIII因子阻害剤との反応性
が小さいなら、ブタエピトープに対応する動物の配列を、決まった方法、例えば
RT-PCRならびに、部位特異的変異誘発によって構築されたハイブリッドヒト/動
物またはブタ/動物VIII因子によって決定することができる。また、ブタV
III因子に比べて減じられたヒト血漿との交差反応性を有するハイブリッドヒ
ト/動物またはブタ/非ブタ哺乳動物VIII因子を製造することができ、これ
は、1つ以上の他の動物からの対応するアミノ酸配列置換を有する。さらなる実
施態様においては、VIII因子アミノ酸配列との公知の同一性を有していない
アミノ酸配列、好ましくは、ブタエピトープ配列のための、アラニン走査変異誘
発技術を用いたアラニン残基の置換によって、交差反応性を減じることができる
【0114】 臨床的に重要なエピトープの同定後、阻害剤血漿の広い調査に対して、イン
ビトロ(in vitro)で試験されるときに、ブタVIII因子と比べて小さいかまた
は等しい交差反応性を有する組換えハイブリッドVIII因子分子が発現される
。好ましくは、これらの分子は、これらのドメインにおける免疫反応性アミノ酸
配列が他の哺乳動物の配列で置き換えられた、結合されたA2/C2ハイブリッドで
ある。これらの領域におけるさらなる変異誘発を行って、交差反応性を減じるこ
とができる。望ましくはあるが、減じられた交差反応性は、存在するブタVII
I因子濃縮物よりも利点を有し得る生成物を製造するために必要ではなく、これ
は、汚染ブタタンパク質による副作用を生じ、ブタVIII因子配列の免疫原性
による厄介な作用を生じ得る。ハイブリッドヒト/他の哺乳動物またはブタ/他
の哺乳動物VIII因子分子は、外来のブタタンパク質を含まない。その上、ブ
タA2ドメインにおいて行った広範なエピトープ位置決定は、95%より多い治療上
のハイブリッドヒト/ブタVIII因子配列がヒトであることを示す。
【0115】 ハイブリッドVIII因子等価物の製造 上記し、実施例に記載したVIII因子分子におけるアミノ酸置換の方法をま
た使用して、ヒト、動物またはハイブリッドのVIII因子に抗原性および/ま
たは免疫原性部位を含む少なくとも1つの特定のアミノ酸配列が置換された、V
III因子に対する公知のアミノ酸配列同一性を有していない1つ以上のアミノ
酸を包含する少なくとも1つのアミノ酸配列(非VIII因子配列)を含む、プ
ロ凝固性組換えハイブリッドVIII因子等価分子またはその断片を製造するこ
とができる。得られる活性ハイブリッドVIII因子等価分子は、VIII因子
阻害抗体との等しいかまたは少ない反応性および/または、未置換のヒト、動物
またはハイブリッドのVIII因子より少ないヒトおよび動物における免疫原性
を有する。
【0116】 ヒトまたは動物VIII因子またはハイブリッドヒト/動物VIII因子にお
ける凝固活性および/または抗原活性および/または免疫原活性に不可欠のアミ
ノ酸のこれらの配列を置換して、ハイブリッドの等価VIII因子分子を製造す
ることができる適当なアミノ酸残基は、凝固活性、抗原活性または免疫原活性を
有する動物またはヒトVIII因子アミノ酸配列に対して公知の配列同一性を有
していない任意のアミノ酸を包含する。好ましい実施態様においては、置換する
ことができるアミノ酸は、アラニン変異誘発技術を用いたアラニン残基を包含す
る。
【0117】 本明細書に記載されたハイブリッドVIII因子等価分子はまた、動物VII
I因子配列に対する公知の同一性を有していないアミノ酸残基が、凝固活性、抗
原活性または免疫原活性に不可欠でないアミノ酸残基の代わりに用いられた分子
を包含する。
【0118】 上記したように、ハイブリッドVIII因子等価分子の1つの実施態様におい
ては、分子は、阻害剤血漿との減じられた交差反応性を有する。交差反応性VI
II因子における1つ以上のエピトープが、上記したように同定されており、よ
って、非VIII因子アミノ酸配列、好ましくは、例えばアラニン走査変異誘発
法を用いてアラニン残基で置換されている。
【0119】 好ましい実施態様においては、VIII因子に対する公知の配列同一性を有し
ていない1つ以上のアミノ酸、好ましくはアラニン残基(好ましくはヒトVII
I因子において、エピトープを含む1つ以上のアミノ酸を含む少なくとも1つの
配列が置換されているか、および/または免疫原性部位を含む1つ以上のアミノ
酸を含む少なくとも1つの配列が置換されている)を包含する少なくとも1つの
配列を含むプロ凝固性組換えハイブリッドVIII因子等価分子が製造される。
得られるハイブリッド等価VIII因子分子またはその断片は、VIII因子に
対して阻害抗体との減じられた免疫反応性を有するかまたは免疫反応性を有さず
、および/またはヒトまたは動物において減じられた免疫原性を有するかまたは
免疫原性を有しない。非抗原性のブタユニークアミノ酸配列による置換のために
ヒトVIII因子のA2ドメインにおいて特定の抗原性アミノ酸配列を同定する方
法は、実施例7および8に記載されており、ヒトおよび動物のVIII因子のA2
および他のドメインにおける抗原性配列を同定するための、および、非VIII
因子アミノ酸配列を置換するための部位特異的変異誘発法、例えばアラニン走査
変異誘発を使用するための例である。
【0120】 ヒトA2エピトープは実施例8に記載のように25またはそれ以下のアミノ酸
に狭められたため、ヒトアミノ酸配列を有する限られた数のハイブリッドVII
I因子構築体にアラニンスキャニング突然変異誘発を施し、どれがプロ凝固性で
あり、非免疫活性であり、そして/またはA2アミノ酸置換に基づく非免疫原性
ハイブリッドVIII因子構築体であるかを決定することができる。A2ドメイ
ンでは、ハイブリッド構築体において、抗原性と免疫原性両方の低下を達成する
、アラニン置換のための最も可能性の高い候補は、Arg484、Pro485、Tyr487、Se
r488、Arg489、Pro492、Val495、Phe501、およびIle508である。これらの突然変
異体の各々を含むハイブリッド構築体の、mAb413に対する結合親和性およ
びA2特異的患者のIgGのパネルはELISAにより決定されるであろう。活
性であり、且つ、A2インヒビターに対する結合親和性が2桁以上低下する突然
変異体は、いずれもA2置換されたVIII因子分子の候補である。エピトープ
が変化すればするほど免疫原性は低くなるという仮定に基づき、1以上の突然変
異を有する構築体が選択されるであろう。ヒトとブタの両方のVIII因子に共
通するエピトープのための重要残基があるかも知れないことから、Arg484〜Ile5
08間の領域には、その他の候補残基があることもあり得る。例えば、蛋白−蛋白
相互作用にはしばしば荷電残基が関与しているが、事実、Arg490に対するアラニ
ン置換基は、ヒトVIII因子のインヒビターに対して僅か0.2%の反応性を
有するに過ぎない、プロ凝固性VIII因子を生成する(表VI)。同様に、Lys4
93に対するアラニン置換もまた可能な候補である。
【0121】 この方法は、ハイブリッド等価VIII因子構築体を作製するための、C2エ
ピトープおよび、A3またはC1ドメインにあると思われる推定第三エピトープ
、ならびにVIII因子中に同定されるその他任意のエピトープで実施すること
ができる。
【0122】 診断検定 ハイブリッドヒト/動物、動物/動物、または等価VIII因子 cDNAお
よび/またはここから発現される蛋白は、その全体または一部を、例えば人間の
VIII因子欠損患者の血清および体液の試料を包含する基質中の、ヒトまたは
動物のVIII因子またはハイブリッドヒト/動物因子または等価なVIII因
子に対する阻害抗体の検出のための診断試薬として、検定に使用することができ
る。これらの抗体検定は、例えばELISA検定、免疫ブロット、ラジオイムノ
アッセイ、免疫拡散検定、およびVIII因子生物活性の検定(例えば、凝固検
定による)を包含する。これらの試薬の製造技術およびそれらの使用方法は当業
者に知悉されている。例えば、患者の血清試料中の阻害抗体の検出のためのイム
ノアッセイは、少なくとも1個の抗原部位を含む充分量のハイブリッドヒト/動
物VIII因子を被検試料と反応させることを含むことができる[ここで、この
量は、試料中の阻害抗体と、検出可能な複合体を形成するのに充分である]。
【0123】 核酸およびアミノ酸プローブは、ハイブリッドヒト/ブタ、ヒト/非ヒト非ブ
タ哺乳動物、動物/動物、もしくは等価なVIII因子 cDNAまたは蛋白分
子もしくはそのフラグメントの配列に基づいて作製することができる。幾つかの
態様において、これらは、市販の色素または酵素的、蛍光、化学ルミネセンスも
しくは放射性標識を用いて標識することができる。このアミノ酸プローブは、例
えば、ヒト、動物、またはハイブリッドヒト/動物VIII因子の存在が疑われ
る血清またはその他の体液をスクリーニングするために使用することができる。
インヒビターのレベルを患者で定量して健康な対照と比較し、これを例えばVI
II因子欠損患者をハイブリッドヒト/動物またはハイブリッド等価VIII因
子で治療できるかどうかを決定するために使用することができる。このcDNA
プローブは、例えばDNAライブラリーのスクリーニングにおいて研究目的に使
用することができる。
【0124】 医薬組成物 ハイブリッドヒト/動物、ブタ/非ヒト非ブタ哺乳動物、動物1/動物2,ま
たは等価VIII因子を含有する医薬組成物は、単独または適当な薬学的安定化
化合物、デリバリー媒質、および/または担体媒質と組み合わせて、Remington
のPharmaceutical Sciences(E.W.Martin)に記載のような既知の方法に従って
製造する。
【0125】 一つの好ましい態様では、静脈内注入のための好ましい担体またはデリバリー
媒質は、生理食塩水または燐酸緩衝化食塩水である。
【0126】 別の好ましい態様では、好適な安定化化合物、デリバリー媒質、および担体媒
質は、他のヒトまたは動物蛋白、例えばアルブミンを包含するが、これに限定さ
れる訳ではない。
【0127】 燐脂質ベシクルまたはリポソーム懸濁液もまた、薬学上許容し得る担体または
デリバリー媒質として好ましい。これらは当業者の知悉する方法に従って製造で
き、例えば、ホスファチジルセリン/ホスファチジルコリンまたはその他の燐脂
質の組成物、または、VIII因子は負に荷電した燐脂質膜に結合することから
、表面に負の電荷を与える洗浄剤を含み得る。リポソームは、適当な脂質(例え
ばステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジル
コリン、アラカドイルホスファチジルコリン、およびコレステロール)を無機溶
媒に溶解し、次いでこれを蒸発させて容器表面に乾燥脂質の薄膜を残すことによ
って製造できる。次にVIII因子の水溶液をこの容器に導入する。次いで容器
を手で円運動させて脂質を容器側面から遊離させて脂質凝集物を分散させ、それ
によりリポソーム懸濁液を形成させる。
【0128】 ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子は、ビタミンK依存性凝固
因子、組織因子、およびフォン・ヴィルブランド因子(vWf)またはVIII
因子結合部位を含むvWf、およびシュクロースのような多糖類を包含する、そ
の他の適当な安定化化合物、デリバリー媒質、および/または担体媒質と組み合
わせることができる。
【0129】 ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子はさらに、ヒトVIII因
子を到達させるのと同じ方法で、レトロウイルスベクターのようなデリバリー手
段を用いて、遺伝子治療によって到達させることができる。この方法は、VII
I因子cDNAを人間の細胞中に取り込ませ、これをVIII因子欠損患者に直
接移植するか、または、これを、VIII因子分子を透過するが細胞は透過しな
い移植可能装置に入れ、次いでそれを移植することから成る。好ましい方法はレ
トロウイルス仲介遺伝子転移であろう。この方法では、修飾したレトロウイルス
のゲノム中に外因性遺伝子(例えばVIII因子cDNA)をクローニングする
。この遺伝子はウイルス手段によって宿主細胞のゲノムに挿入され、そこで当該
細胞により発現される。レトロウイルスベクターは、それがウイルスを産生せず
、宿主のウイルス感染を防止するよう修飾する。この種の治療の一般的原則は当
業者に知悉されており、文献に論じられている[例えば、Kohn,D.B.等、(1989)
Transufusion 29:812-820]。
【0130】 ハイブリッドVIII因子はハイブリッド分子の半減期および保存期間を増大
させるためvWfに結合させて保存することができる。さらに、VIII因子の
凍結乾燥は、vWf存在下での活性分子の収率を改善することができる。商業的
供給者により用いられているヒトおよび動物VIII因子の現行保存法を、ハイ
ブリッドVIII因子の保存に利用することができる。これらの方法には、(1
)部分精製状態でのVIII因子の凍結乾燥(さらなる精製なしに注入されるV
III因子「濃縮物」として);(2)チンマーマン法によるVIII因子の免
疫親和精製およびVIII因子を安定化するアルブミンの存在下での凍結乾燥;
(3)アルブミン存在下での組換えVIII因子の凍結乾燥、が包含される。
【0131】 加えて、ハイブリッドVIII因子は、0.6M NaCl、20mM MES、
および5mM CaCl2(pH6.0)中、4℃で無期限に安定であり、また、これ
らの緩衝液中で凍結保存でき、且つ殆ど活性を失わずに融解させることができる
【0132】 治療の方法 ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子を使用して、阻害抗体を持
つおよび持たない血友病患者において、そして阻害抗体の発現に起因する後天的
VIII因子欠損の患者において、VIII因子欠損に起因する制御不能の出血
(例えば、動脈内、頭蓋内、または胃腸管出血)を治療する。活性物質は好まし
くは静脈内投与する。
【0133】 さらに、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子は、当該ハイブリ
ッドを産生するよう遺伝学的に作り替えられた細胞の移植によって、または、上
記のように係る細胞を含む装置の埋め込みによって投与することができる。
【0134】 好ましい態様において、単独または安定剤、デリバリー媒質、および/または
担体と組み合わせたハイブリッドもしくはハイブリッド等価VIII因子の医薬
組成物は、ヒトまたは動物VIII因子の注入のために用いられるのと同じ方法
に従って、患者に静脈内注入する。
【0135】 治療を必要とする患者に投与しなければならないハイブリッドまたはハイブリ
ッド等価VIII因子組成物の治療用量は、VIII因子欠損の重篤度に応じて
変わるであろう。一般に、用量レベルは、頻度、作用持続時間、ならびにそれぞ
れの患者の出血エピソードの重篤度および持続時間と調和した単位で調節する。
したがって、ハイブリッドVIII因子は、標準的凝固検定で測定される、出血
を止めるための治療的有効量の該ハイブリッドを患者に到達させるに充分な量の
、薬学上許容し得る担体、デリバリー媒質、または安定剤中に含有させる。
【0136】 VIII因子は、古典的には、血友病Aの人間に由来する血漿における凝固不
全を是正する、正常血漿中に存在する物質として定義される。精製および部分精
製型のVIII因子のインビトロ凝固活性は、人間の患者でのVIII因子の注
入用量を算出するために使用され、そしてこれは、患者血漿から回収される活性
の、およびインビボ出血異常是正の、信頼し得る指標である。Lusher,J.M.等、3
28 New Engl.J.Med. 328:453-459;Pittman,D.D.等、(1992)Blood 79:389-397;
およびBrinkhous等、(1985) Proc.Natl.Acad.Sci. 82:8752-8755によると、新規
なVIII因子分子のインビトロ標準検定と、イヌの注入モデルまたは人間の患
者でのそれらの挙動との間に食い違いは報告されていない。
【0137】 通常、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子の投与により患者に
おいて達成されるべき血漿VIII因子の所望レベルは、正常の30〜100%
の範囲である。ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子の好ましい投
与方法において、この組成物は、約5ないし50単位/kg体重の範囲、より好ま
しくは10〜50単位/kg体重の範囲の好ましい用量で、そして最も好ましくは
20〜40単位/kg体重の用量で静脈内投与され;投与間隔は約8〜24時間の
範囲であり(重症の血友病患者の場合);そして治療期間は、日数にして1〜1
0日間、または出血エピソードが解消するまでである。例えば、Roberts,H.R.お
よびM.R.Jones、「血友病および関連病態−プロトロンビンの先天性欠損症(第I
I因子、第V因子、および第VIIないしXII因子)」、Ch.153、1453-1474、1460、H
ematology、Williams,W.J.等編(1990)を参照されたい。インヒビターを有する患
者は、より多くのハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子を必要とす
るかも知れず、または、ヒトVIII因子より高い比活性、もしくは低下した抗
体反応性もしくは免疫原性の故に、患者は、より少ないハイブリッドまたはハイ
ブリッド等価VIII因子を必要とするかも知れない。ヒトまたはブタVIII
因子による治療において、注入されるハイブリッドまたはハイブリッド等価VI
II因子の量は一段階VIII因子凝固検定によって定められ、また、選ばれた
例においては、注入後に患者の血漿中のVIII因子を測定することによりイン
ビボ回復が決定される。いかなる特定の対象に対しても、個体の必要性および該
組成物を投与しまたはその投与を管理する人間の専門的判断に従い、時間経過に
伴う個別的用量計画が決定されるべきであり、また、本明細書に開示される濃度
範囲は例示に過ぎず、特許請求される当該組成物の範囲または実施の限定を意図
するものではないということが理解されるべきである。
【0138】 治療は、必要に応じて、該組成物の静脈内1回投与、または長期間にわたる定
期的もしくは連続投与の形を取り得る。別法として、ハイブリッドまたはハイブ
リッド等価VIII因子は、リポソームによって1回または様々な時間間隔で数
回、皮下または経口投与することができる。
【0139】 ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子はさらに、ヒトVIII因
子に対する抗体を発現した血友病患者においてVIII因子欠損に起因する制御
不能な出血を治療するために使用することもできる。この場合、単独のヒトまた
は動物VIII因子に優る凝固活性は必要ない。ヒトVIII因子に劣る凝固活
性(即ち、3000単位/mg未満)は、もしこれが患者血漿中の抗体により中和
されないならば、有用であろう。
【0140】 ハイブリッドVIII因子および修飾されたVIII因子は、ヒトVIII因
子とは比活性の点で相違し得るということが本明細書で立証された。ヒトVII
I因子より大きなプロ凝固活性を有する、ハイブリッド、ハイブリッド等価およ
び修飾VIII因子蛋白は、患者のVIII因子欠損を是正するために要する用
量がより低いため、血友病の治療に有用である。ヒトVIII因子より低いプロ
凝固活性を有するハイブリッド、ハイブリッド等価および修飾VIII因子は、
さらに、正常なヒトVIII因子に比して少なくとも1%の比活性を有するなら
ば、治療用途にとって好適である。故に、プロ凝固活性を有する本発明に係るハ
イブリッド、ハイブリッド等価または修飾VIII因子は、ヒトVIII因子の
少なくとも1%の比活性を有すると定義される。
【0141】 上記で一般的に記載した、ハイブリッドまたはハイブリッド等価VIII因子
分子およびそれを単離し、特性決定し、作製し、そして使用する方法は、以下の
非限定的実施例を参照することによりさらに理解されるであろう。
【0142】 実施例1:ブタVIII因子およびハイブリッドヒト/ブタVIII因子の検
定 ブタVIII因子は、当該分子の比活性に基づくと、ヒトVIII因子より凝
固活性が高い。これらの結果は実施例4の表IIIに示す。この結論は、ヒトブタ
VIII因子を公正に比較できる適当な標準曲線の使用に基づくものである。凝
固検定は、血友病A患者から誘導された血漿の凝固時間を短縮する、VIII因
子の能力に基づくものである。2種類の検定を使用した:一段階および二段階検
定である。
【0143】 一段階検定においては、血友病Aの血漿0.1mL(George King Biomedical,In
c.)を、活性化部分トロンボプラスチン試薬(APTT)(Organon Teknika)0.
1mLおよび試料または標準(希釈したクエン酸塩添加正常ヒト血漿より成る)0
.01mLと共に水浴中37℃で5分間インキュベートした。インキュベーション
の後、20mMCaCl20.1mLを添加し、フィブリン凝塊の生成に要する時間を
目視により決定した。
【0144】 VIII因子の単位は、クエン酸塩添加正常ヒト血漿1mL中に存在する量とし
て定義する。ブタおよびヒトVIII因子活性を、標準としてのヒト血漿と直接
比較した。血漿標準または精製蛋白の希釈は0.15M NaCl、0.02M HE
PES(pH7.4)中に行った。最高希釈を1/50とし、3または4希釈の血漿に
基づく標準曲線を作製し、log10凝固時間をlog10血漿濃度に対してプロットする
と、直線状のプロットが得られる。未知試料中のVIII因子の単位はこの標準
曲線からの内挿によって決定した。
【0145】 一段階検定は、血友病A血漿中に形成されるアクティベーターによるVIII
因子の内因性活性化に依拠し、一方、二段階検定は、プレ活性化VIII因子の
プロ凝固活性を測定するものである。二段階検定においては、トロンビンと反応
させておいたVIII因子を含有する試料を、前もって37℃で5分間インキュ
ベートしておいた活性化部分トロンボプラスチンとヒト血友病A血漿の混合物に
加えた。次に、得られた凝固時間を上記の同じヒト標準曲線に基づき、単位/mL
に変換した。二段階検定での相対活性は、VIII因子をプレ活性化しておいた
が故に一段階検定での活性より高かった。
【0146】 実施例2:ヒトおよびブタVIII因子間の機能的相違の特性決定 ブタおよびヒトの血漿由来VIII因子とヒト組換えVIII因子の単離は、
Fulcher,C.A.等、(1982) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1648-1652;Toole等、(19
84) Nature 312:342-347(Genetics Institute);Gitschier等、(1984) Nature 3
12:326-330(Genentech);Wood等、(1984) Nature 312:330-337(Genentech);Veh
ar等、312 Nature 312:337-342(Genentech);Fass等、(1982) Blood 59:594;To
ole等、(1986) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5939-5942の文献に記載されている
。これは幾つかの方法で達成できる。これらの調製物は、ヒトとブタのVIII
因子の間に安定性の機能的相違があるものの、全てサブユニットの組成の点で類
似している。
【0147】 ヒト組換えおよびブタVIII因子の比較のため、高度精製ヒト組換えVII
I因子(Cutter Laboratories、バークレイ、CA)およびブタVIII因子[F
ass等、(1982) Blood 59:594の記載に従い免疫精製した]の調製物をMono Q(商
標)(Pharmacia-LKB、ピスカタウェイ、NJ)アニオン交換樹脂(Pharmacia,Inc.
)上の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に付した。このMono Q(商標)H
PLC工程の目的は、比較目的のためヒトおよびブタVIII因子を共通の緩衝
液への交換の少量の不純物を取り除くことであった。VIII因子1000〜2
000単位を入れたバイアルをH2O 5mLで再構成した。次いでHepes(2M、p
H7.4)を加え最終濃度を0.02Mとした。0.15M NaCl、0.02M H
epes、5mM CaCl2、pH7.4(緩衝液Aに0.15M NaClを添加)で平
衡化したMono Q(商標)HR5/5カラムにVIII因子を適用し;10mLの緩
衝液A+0.15M NaClで洗浄し;緩衝液A中の0.15M〜0.90M N
aClの直線勾配20mL、1mL/分の流速で溶出させた。
【0148】 ヒト血漿由来VIII因子(Mono Q(商標)HPLCにより精製)およびブタV
III因子の比較のため、免疫親和精製した血漿由来ブタVIII因子を0.0
4M Hepes、5mM CaCl2、0.01%Tween-80、pH7.4で1:4に希釈し、
ヒトVIII因子について前段落に記載したのと同じ条件下にMono Q(商標)HP
LCに付した。ヒトおよびブタのVIII因子の単離のためのこれらの方法は、
当業者にとって標準的なものである。
【0149】 カラム画分を一段階凝固検定によりVIII因子活性について検定した。材料
のA280による活性の単位で表されたこの検定の平均結果を表IIに示すが、これ
は、一段階検定を用いた場合、ブタVIII因子がヒトVIII因子の少なくと
も6倍の活性を有することを示している。
【0150】 ───────────────────────── 表II ヒトおよびブタVIII因子凝固活性の比較 活性(U/A280) ブタ 21,300 ヒト血漿由来 3,600 ヒト組換え 2,400 ───────────────────────── 実施例3:ヒトおよびブタVIII因子の安定性の比較 VIII因子のための一段階検定の結果は、試料中のVIII因子からVII
Ia因子への活性化と、生成したVIIIa因子活性の喪失の可能性を反映してい
る。ヒトおよびブタVIII因子の安定性の直接比較を行った。Mono Q(商標)H
PLC(Pharmacia,Inc.、ピスカタウェイ、NJ)からの試料を同じ濃度および
緩衝液組成に希釈し、トロンビンと反応させた。様々な時間に試料を二段階凝固
検定用に採取した。典型的には、ピーク活性(2分において)はブタVIIIa
因子がヒトVIIIa因子の10倍高く、ブタおよびヒトVIIIa因子の両活性
はその後低下したが、ヒトVIIIa因子活性はより速やかに低下した。
【0151】 一般に、安定なヒトVIIIa因子を単離する試みは、安定なブタVIIIa因
子を生成する条件を使用しても成功しない。これを立証するため、Lollar等、(1
989) Biochemistry 28:666に記載のように、Mono Q(商標)HPLC精製したヒト
VIII因子をトロンビンで活性化し、安定なブタVIIIa因子を生成する条
件の下でMono S(商標)カチオン交換(Pharmacia,Inc.)HPLCに付した。
【0152】 0.2M NaCl、0.01M Hepes、2.5mM CaCl2(pH7.4)に入れ
たヒトVIII因子43μg/mL(0.2μM)(総体積10mL)をトロンビン(0.
036μM)と10分間反応させ、この時点でトロンビンを不可逆的に不活性化
するため、FPR−CH2Cl D−フェニル−プロリル−アルギニル−クロロメ
チルケトンを0.2μM濃度となるまで加えた。次にこの混合物を40mM 2−(
N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、5mMCaCl2(pH6.0)で1
:1に希釈し、5mM MES、5mMCaCl2(pH6.0)(緩衝液B)に0.1M
NaClを添加したもので平衡化したMono S(商標)HR5/5HPLCカラム(
Pharmacia,Inc.)に2mL/分でロードした。VIIIa因子は、1mL/分の、緩
衝液B中の0.1M NaClから0.9M NaClに至る勾配20mLによりカラ
ム洗浄無しに溶出した。
【0153】 二段階検定で凝固活性を有する画分は、これらの条件下に単一ピークとして溶
出した。ピーク画分の比活性はおよそ7500U/A280であった。Mono S(商標
)VIIIa因子のピークをドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動(SDS−PAGE)に付し、その後蛋白を銀染色すると、VIII因子
のヘテロ二量体(A3−C1−C2/A1)誘導体に相当する2つのバンドが現
れた。A2断片は低濃度のためこれらの条件での銀染色では同定されなかったが
125I標識により微量成分として同定された。
【0154】 ヒトVIII因子の結果とは対照的に、Mono S(商標)HPLCにより同一条件
下で単離されたブタVIIIa因子は1.6x106U/A280の比活性を持ってい
た。SDS−PAGEによるブタVIIIa因子の分析は、A1、A2、および
A3−C1−C2サブユニットに相当する3個の断片を示し、ブタVIIIa因
子が3個のサブユニットを有することを証明した。
【0155】 pH6.0でのヒトトロンビン活性化VIII因子調製物のMono S(商標)HPL
Cの結果は、ヒトVIIIa因子安定なブタVIIIa因子を産生する条件下では
不安定であることを示している。しかしながら、ピーク画分中に微量のA2フラ
グメントが同定されたものの、凝固活性が少量のヘテロ三量体VIIIa因子か
らもたらされるのか、比活性の低いヘテロ二量体VIIIa因子からもたらされ
るのかの決定は、この方法のみからではできなかった。
【0156】 この問題を解決するためには、ヒトVIIIa因子を、それがA2サブユニッ
トを失う前に単離する方法が望ましい。この目的のため、Mono S(商標)緩衝液の
pHをpH5に低下させることを含む方法で単離を遂行した。Mono Q(商標)精製した
ヒトVIII因子(0.5mg)をH2Oで、0.25M NaCl、0.01MHepes
、2.5mMCaCl2、0.005%Tween-80、pH7.4中0.25mg/mL(1μm)
のVIII因子という最終組成となるまで希釈した(総体積7.0mL)。トロン
ビンを最終濃度0.072μmとなるまで加え、3分間反応させた。次いでFP
R−CH2Cl(0.2μm)でトロンビンを不活性化した。次にこの混合物を4
0mM酢酸ナトリウム、5mMCaCl2、0.01%Tween-80、pH5.0で1:1に
希釈し、0.01M酢酸ナトリウム、5mMCaCl2、0.01%Tween-80、pH5.
0に0.1M NaClを添加したもので平衡化したMono S(商標)HR5/5HP
LCカラムに2mL/分でロードした。VIIIa因子は、1mL/分の、同緩衝液
中の0.1M NaClから1.0M NaClに至る勾配20mLによりカラム洗浄
無しに溶出した。これは、SDS−PAGEおよび銀染色により示される検出可
能量のA2断片を含むピークにおける凝固活性の回収をもたらした。ピーク画分
の比活性は、pH6.0で回収された活性の10倍高かった(75000U/A280 対7500U/A280)。しかしながら、4℃において無期限に安定である、pH
6.0で単離されたブタVIIIa因子とは対照的に、ヒトVIIIa因子の活性
はMono S(商標)からの溶出後数時間にわたり着実に低下した。さらに、pH5.0
で精製し直ちに検定したVIIIa因子の比活性は、ブタVIIIa因子のわずか
5%であり、これは、検定前に実質的な解離が起こったことを示すものである。
【0157】 これらの結果は、ヒトおよびブタ両者のVIIIa因子が3つのサブユニット(A
1、A2、およびA3−C1−C2)から構成されることを実証する。サブユニ
ットA2の解離は、生理的イオン強度、pH、および濃度などの幾つかの条件下
におけるヒトおよびブタ両者のVIIIa因子の活性低下の原因である。幾つかの条
件下におけるブタVIIIa因子の相対的安定性は、サブユニットA2のより強い解
離のためである。
【0158】 実施例4:サブユニットを再構成することによるハイブリッドヒト/ブタVIII
因子の調製 ブタのVIII因子L鎖およびVIII因子H鎖を下記のように単離した。EDTAの
0.5M溶液、pH7.4をMono Q(商標)で精製したブタのVIII因子に加えて最終濃度0
.05Mとし、室温で18〜24時間そのまま放置した。等量の10mMヒスチジン−Cl、
10mMEDTA、および0.2% v/v Tween 80(pH6.0)(緩衝液B)を加え、この溶
液を前もって緩衝液Aプラス0.25M NaCl中で平衡化したMono S(商標)HR 5/5カ
ラムに1 ml/分で注入した。VIII因子H鎖は、SDS-RAGEによって判定されるよう
に樹脂に結合しなかった。VIII因子L鎖は緩衝液Aに溶かした0.1〜0.7M NaCl 2
0mlの直線的勾配により1 ml/分で溶出され、SDS-RAGEによれば均一であった。V
III因子H鎖は下記の方法でMono Q(商標)HPLC(Pharmacia, Inc., Piscataway
, N.J.)によって単離した。VIII因子H鎖は、VIII因子L鎖の精製中Mono S(商
標)に吸着しない。VIII因子H鎖を含有する通過した材料に0.5M Hepes緩衝液(
pH7.4)を加えることによりpH7.2に調整し、0.1M NaCl、0.02M Hepes、および0.
01% Tween 80(pH7.4)中で平衡化したMono Q(商標)HR 5/5 HPLCカラム(Phar
macia, Inc.)に注入した。カラムをこの緩衝液10mlで洗浄し、VIII因子H鎖を
この緩衝液に溶かした0.1〜1.0M NaCl 20mlの勾配で溶出した。ヒトのL鎖およ
びH鎖を同じ方法で単離した。
【0159】 ヒトおよびブタのLおよびH鎖を下記のステップに従って再構成した。ヒトま
たはブタのVIIIa因子L鎖10μl、100μg / mlを、1M NaCl、0.02M Heprs、5mM C
aCl2、および0.01% Tween 80(pH7.4)中において、(1)同じ緩衝液に溶かし
た異種のH鎖25μl、60μg / ml、(2)0.02M Hepes 10μlおよび0.01% Tween
80(pH7.4)、および(3)0.6M CaCl2 5μlと、室温で14時間混合した。混合
物を、0.02M MES、0.01% Tween 80、および5mM CaCl2(pH6)で1/4に希釈し
、0.1M NaCl、0.02M MES、0.01% Tween 80、および5mM CaCl2(pH6)中で平衡化
したMono S(商標)HR 5/5へ注入した。同一の緩衝液に溶かした0.1〜1.0M NaCl
20mlの勾配を1 ml/分で通し、フラクション0.5mlを回収した。各フラクション
の280nmの吸光度を読み取り、各フラクションを一段階血餅形成検定によりVIII
因子活性に対する吸光度で検定した。H鎖は過剰に存在し、遊離のL鎖(H鎖と
対合していない)もまたMono S(商標)に結合するため、その過剰のH鎖は遊離
のL鎖が調製物の一部でないことを保証する。再構成実験に続いてMono S(商標
)HPLC精製を、鎖の全ての4つの可能な組合わせ、すなわちヒトのL鎖/ヒトの
H鎖、ヒトのL鎖/ブタのH鎖、ブタのL鎖/ブタのH鎖、およびブタのL鎖/
ヒトのH鎖について行なった。表IIIにヒトのL鎖/ブタのH鎖のVIII因子が天
然のブタのVIII因子(表II)に匹敵する活性を有することを示し、またブタのH
鎖中の構造要素がヒトVIII因子と比べてブタVIII因子の凝固剤活性を増加させる
原因であることを示している。 ──────────────────────────────────── 表III ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の凝固剤活性とヒトおよびブタVIII因子の凝 固剤活性の比較 活性(U / A280) ブタのL鎖/ブタのH鎖 30,600 ヒトのL鎖/ブタのH鎖 44,100 ブタのL鎖/ヒトのH鎖 1,100 ヒトのL鎖/ヒトのH鎖 1,000 ──────────────────────────────────── 実施例5:ドメインを再構成することによる活性なハイブリッドヒト/ブタVI
II因子の調製 ブタのA1/A3−C1−C2二量体、ブタのA2ドメイン、ヒトのA1/A
3−C1−C2二量体、およびヒトのA2ドメインを、Lollar等の論文J. Biol.
Chem. 267 (33) :23652−23657 (1992) に従ってそれぞれブタまたはヒトの血
液から単離した。例えば、ブタのA1/A3−C1−C2二量体を単離するため
に、ブタのVIII因子(140μg)、pH6.0を、30分間5N NaOHを加えることにより
pH8.0まで上昇させ、A2ドメインの解離および血餅形成検定による95%不活
性化を生じさせた。混合物を緩衝液B(20mM Hepes、5mM CaCl2、および0.01% T
ween 80(pH7.4))で1:8に希釈し、緩衝液B中で平衡化したMono S(商標)
カラムへ注入した。A1/A3−C1−C2二量体を、緩衝液Bに溶かした0.1
〜1.0M NaClの勾配を用いることによって約0.4M NaClにおける単一のシャープな
ピークとして溶出した。ブタのA2ドメインを単離するには、ブタのVIII因子を
VIII因子 0.64mgから出発してLollar等の論文Biochem. 28:666−674 (1989) の
方法に従って作成した。遊離のA2ドメインを、Mono S(商標)クロマトグラム
中の0.3M NaClにおける二次成分(50μg)として単離した。
【0160】 ハイブリッドヒト/ブタVIII因子分子を二量体およびドメインから下記のよう
に再構成した。精製した成分の濃度および緩衝液条件は下記のとおりである。す
なわち、緩衝液A(5mM MES、5mM CaCl2、および0.01% Tween 80(pH6.0))プ
ラス0.3M NaClに溶かした0.63μMのブタA2;緩衝液Bプラス0.4M NaCl(pH7.4
)に溶かした0.27μMのブタA1/A3−C1−C2;0.3M NaCl、10mMヒスチジ
ン−HCl、5mM CaCl2、および0.01% Tween 20(pH6.0)に溶かした1μMのヒト
A2;0.5M NaCl、10mMヒスチジン−HCl、2.5mM CaCl2、および0.1% Tween 2
0(pH6.0)に溶かした0.18μMのヒトA1/A3−C1−C2。再構成実験は、
等体積のA2ドメインおよびA1/A3−C1−C2二量体を混合することによ
って行なった。ブタA1/A3−C1−C2二量体との混合実験においては、0.
5M MES、pH6.0の添加によってpHを6.0まで下げて70mMとした。
【0161】 可能な全ての4つのハイブリッドVIII a因子分子、〔pA2/(hA1/A3
−C1−C2)〕、〔hA2/(pA1/A3−C1−C2)〕、〔pA2/(
pA1/pA3−C1−C2)〕、および〔hA2/(hA1/A3−C1−C
2)〕の凝固活性を、二段階血餅形成検定によりいろいろな回数で得た。
【0162】 A2ドメインとA3−C1−C2二量体の混合後の活性の発生は、1時間のう
ちにほぼ完了し、37℃で少なくとも24時間安定であった。表IVは、1時間で
検定したときの再構成されたハイブリッドVIIIa因子分子の活性を示す。VIIIa因
子分子の特異的活性を得る二段階検定は一段階検定とは異なり、その値は一段階
検定によって得られたVIII因子分子の活性値と比較することはできない。 ──────────────────────────────────── 表IV ドメインを置換したハイブリッドヒト/ブタVIIIa因子の凝固剤活性の比較 ハイブリッドfVVIIIa 特異的活性(U/mg) ブタA2+ヒトA1/A3−C1−C2 140,000 ブタA2+ブタA1/A3−C1−C2 70,000 ヒトA2+ブタA1/A3−C1−C2 40,000 ヒトA2+ヒトA1/A3−C1−C2 40,000 ──────────────────────────────────── 表IVは、最大の活性がブタA2ドメイン/ヒトA1/A3−C1−C2、次い
でブタA2ドメイン/ブタA1/A3−C1−C2二量体によって呈示されるこ
とを示している。したがって、ブタVIIIa因子のA2ドメインをヒトVIIIa因子の
A1/A3−C1−C2二量体と混合した場合に凝固剤活性が得られた。さらに
、ヒトVIIIa因子のA2ドメインをブタVIIIa因子のA1/A3−C1−C2二量
体と混合した場合に凝固剤活性が得られた。単独ではA2、A1、およびA3−
C1−C2領域は何の凝固剤活性も持たない。
【0163】 実施例6:ブタVIII因子のA2ドメインの単離および配列決定 ブタVIII因子のBドメインとA2ドメインの一部とをコード化するヌクレオチ
ド配列のみが以前に配列決定されている(Toole等の論文Proc. Natl. Acad. Sci
. USA 83:5939−5942 (1986))。全ブタVIII因子A2ドメインに対するcDNA
および予想されるアミノ酸配列(それぞれ配列番号:3 および4)を本明細書に開
示する。
【0164】 ブタVIII因子A2ドメインをブタ脾臓のRNA全体の逆転写およびPCR増幅
によってクローン化した。既知のヒトVIII因子cDNA配列に基づく縮重プライ
マーおよびブタVIII因子配列の一部に基づく正確なブタのプライマーが用いられ
た。PCRの産物1kbを単離し、Bluescript(商標)(Stratagene)ファージミ
ドベクター中に挿入することによって増幅した。
【0165】 ブタA2ドメインをジデオキシ配列決定法によって完全配列決定した。cDN
Aおよび予想されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:3および4で記述される
ようなものである。
【0166】 実施例7:組換えハイブリッドヒト/動物VIII因子の調製 ヒトVIII因子のヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列(それぞれ配列番
号:1および2)は文献に記載されている(Toole等の論文Nature 312:342−347 (1
984) (Genetics Institute)、Gitschier等の論文Nature 312:326−330 (1984)
(Genentech)、Wood等の論文Nature 312:330−337 (1984) (Genentech)、Vehar等
の論文Nature 312:337−342 (1984) (Genentech) )。
【0167】 組換えハイブリッドヒト/動物VIII因子を作成するには、ヒトVIII因子cDN
A(Biogen Corp.)の領域を除去し、配列アイデンティティーを有する動物cD
NA配列を挿入することを必要とする。続いて、ハイブリッドcDNAを適切な
発現系中で発現させる。一例として、対応するヒトA2配列を、一部または全て
のブタA2ドメインで置換した、ハイブリッドVIII因子のcDNAをクローン化
した。最初にヒトVIII因子のA2ドメインに対応する全cDNA配列、次いでA
2ドメインのより小さな部分を、当業者には一般に知られている方法であるオリ
ゴヌクレオチドの仲介する変異誘発によってループアウトした(例えば、Sambro
ok, J.、 E. F. FritschおよびT. Maniatisの著書「Molecular Cloning: A Labo
ratory Manual」, Chapter 15, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbo
r (1989)を参照されたい)。ステップは下記のとおりである。
【0168】 材料 メトキシカルボニル−D−シクロヘキシルグリシル−グリシル−アルギニン−
p−ニトロアニリド(Spectrozyme(商標)Xa)ならびに抗VIII因子モノクロー
ナル抗体ESH4およびESH8は、American Diagnostica(Greenwich, CT)
から購入した。単層ホスファチジルコリン/ホスファチジルセリン(75/25、w/w
)の小胞は、Barenholtz, Y.等の論文Biochemistry 16:2806−2810 (1977) の方
法に従って調製した。組換えデスルファトヒルジンは、Dr. R. B. Wallis, Ciba
-Geigy Pharmaceuticals(Cerritos, CA)から得た。ブタ因子IXa、X、Xa、およ
びトロンビンは、Lollar等の論文Blood 63:1303−1306 (1984) およびDuffy E.
J. 等の論文J. Biol. Che. 207:7621−7827 (1992) の方法に従って単離した。
アルブミンを含まない純粋な組換えヒトVIII因子は、Baxter-Biotech(Deerfiel
d, IL)から得た。
【0169】 ブタVIII因子A2ドメインのクローン化 ブタA2ドメインをコード化するcDNAは、Chomczyneki等の論文Anal. Bio
chem. 162:156−159 (1987) の記述に従って単離した逆転写ブタ脾臓mRNAの
PCR後に得られた。cDNAは、プライマーとしてランダム六量体を備えた第
一鎖cDNA合成キット(Pharmacia, Piscataway, N.J.)を用いて調製した。
PCRは、既知の制限ブタA2のアミノ酸配列に基づく5′末端の縮重プライマ
ー、5′AARCAYCCNAARACNTGGG3′(配列番号: 11)、およ
びブタA2ドメインの3′に直接隣接する既知のブタDNA配列に基づく3′末
端の正確なプライマー、5′GCTCGCACTAGGGGGTCTTGAAT
TC3′(配列番号: 12)を用いて行なった。これらのオリゴヌクレオチドは、
ヒト配列(配列番号: 1)中のヌクレオチド1186〜1203および2289〜2313番に対
応する。増幅は、Taq DNAポリメラーゼ(Promega Corp.,Madison, WI)を
用いて35サイクル(94℃で1分、50℃で2分、72℃で2分)行なった。
増幅した断片1.1kbを、Murchuk, D等の論文Nucl. Acads. Res. 19:1154 (1991)
の記述に従ってTベクター手順を用いてpBlueScript II KS(Stratagene)のEco
RV部位にクローニングした。Escherichia coli XL1-Blue受容能のある細胞を形
質転換し、プラスミドDNAを単離した。配列決定は、Sequenase(商標)バー
ジョン2.0(U.S. Biochemical Corp.; Amersham LifeScience, Inc., Arling
ton Hts, ILの一事業部)を用いて両方向で行なった。この配列は、同一のブタ
(CircumVent(商標), New England Biolabs, Beverly, MA)由来の脾臓DNA
の独立した逆転写で得たPCR産物の直接配列決定により得られたものと全く同
じ配列によって確認した。自己抗体RCに対するエピトープを含有する領域は、
ヒトVIII因子(配列番号: 2)中の373〜536番として同定された。
【0170】 ハイブリッドヒト/ブタVIII因子のcDNAの構築および発現 アミノ酸残基741〜1648番(配列番号: 2)をコード化する配列を欠く、Bドメ
インのないヒトVIII因子(HB-、Biogen, Inc., Cambridge, MAから入手)を、
ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築用出発材料として用いた。HB-を発現
ベクターReNeo中へクローニングした。操作を容易にするためにVIII因子に
対するcDNAを、ReNeoからXhoI /HpaI 断片として単離し、XhoI /Hpa
I RVで消化したpBlueScript II KS中へクローニングした。オリゴヌクレオチド
、5′CCTTCCTTTATCCAAATACGTAGATCAAGAGGA
AATTGAC3′(配列番号: 7)を、Kunkel, T.A.等の論文Merh. Enzymol. 204: 125〜139 (1991) の記述によるウラシル含有ファージDNAを用いる部位特
異的変異誘発反応に使用して、同時にヒトA2配列(SEQ 配列番号:1中のヌクレ
オチド1169〜2304番)をループアウトし、SnaBI制限部位を導入した。プラスミ
ドを含有する、A2ドメインのないヒトVIII因子をSnaBIで消化し、続いてClaI
リンカーを加えた。次いでブタA2ドメインを、それぞれホスホリル化した5′
プライマーすなわち5′GTAGCGTTGCCAAGAAGCACCCTAA
GACG3′( 配列番号: 8)、および3′プライマーすなわち5′GAAGA
GTAGTACGAGTTATTTCTCTGGGTTCAATGAC3′(配
列番号: 9)を用いてPCRによって増幅した。ClaIリンカーをPCR産物に加
え、続いて結合させてヒトVIII因子含有ベクターにした。5′および3′末端の
接合を修正するためにそれぞれ配列番号: 8中に示されたオリゴヌクレオチドお
よびヌクレオチド1〜22番(配列番号: 9中の5′GAA‐‐‐TTC)を用いる
部位特異的変異誘発により、A1/A2およびA2/A3接合を修正して正しい
トロンビンの開裂およびフランキング配列を回復した。HP1と呼ばれる得られ
た構築物において、ヒトA2ドメインはブタA2ドメインで正しく置換された。
前置産物は、ブタA2ドメインのPCR増幅の結果としてA1‐A2接合に不要
のチミンを含有した。この単独塩基を、変異原性オリゴヌクレオチド、5′CC
TTTATCCAAATACGTAGCGTTTGCCAAGAAG3′(配列
番号:10)を用いてループアウトした。得られたハイブリッドヌクレオチド配列
は、ヒトA1、ブタA2、ならびにヒトA3、C1,およびC2ドメインを有す
る活性なVIII因子をコード化した。
【0171】 ヒトVIII因子を含有するpBlueScriptプラスミドとヒト/ブタA2VIII因子c
DNAの間でSpeI/BamHI断片を交換することにより、BドメインのないcDN
Aの相同ヒト配列を、推定のA2エピトープを包含するブタのNH2末端A2ド
メインの63%を含有する領域で置換した。配列は、A2ドメインおよびスプライ
ス部位を配列決定することによって確かめられた。最後に、HB-中の対応する
配列の代わりに全A2配列を含有するSpeI/ApaI断片で置換し、HP2構築物を
産出した。
【0172】 DEAE−デキストランが仲介するDNA移入後、「Current Protocols in M
olecular Biology」(Ausubel, F.M.等編)中のSeldon, R.F.の記述、pp.9.21-9
.26, Wiley Interscience, N.Y. に従って、COS−7細胞中のHB-およびH
P2の予備的発現を試験した。活性なVIII因子の発現を確認し、予備的な抗体阻
害調査を行った後、次いでリポソームが仲介する移入(Lipofectin Life Techno
logies, Inc., Gaithersburg, MD)を用いてHB-およびHP2のDNAを生ま
れたばかりのハムスターの腎臓細胞中にしっかりと移入した。プラスミド含有ク
ローンを、ダルベッコの修正イーグル培地−F12、すなわちG418を400μg
/ml含有する10%ウシ胎児血清(DMEM-F12/10%ウシ胎児血清)中の耐G418性
に関して選択し、続いてG418を100μg/ml含有するDMEM-F12/10%ウシ胎児血
清中で保持した。HB-およびHP2VIII因子活性の最大の発現を示すコロニー
をリングクローニングによって選択し、さらに特徴を調べるために増やした。
【0173】 血漿を含まないVIII因子検定、一段階血餅形成検定、および酵素免疫吸着測定
により、HB-およびHP2VIII因子の発現を基準として精製した組換えヒトVII
I因子を用いて比較した。HB-およびHP2に対してそれぞれ2600および2580単
位/mgの特異的凝固剤活性が得られた。HB-およびHP2は、それぞれ細胞107 個当たり、48時間当たり1.2および1.4単位/mlを産生した。これは野生型構築
物のもの(2600±200単位/mg)と同じである。HB-およびHP2の特異活性は
、血漿を含まないVIII因子検定においては見分けがつかなかった。
【0174】 A1、A2、A3、C1、および/またはC2ドメイン置換による組換えハイ
ブリッドヒト/動物およびこれと同等のVIII因子の生物学的活性は、COS細胞
哺乳類の一過性発現系の使用により最初に評価することができる。ハイブリッド
ヒト/動物およびこれと同等のcDNAはCOS細胞中に移入することができ、
上清は上述のように一段階および二段階凝固検定を使用することによりVIII因子
活性を分析することができる。加えてVIII因子活性は、より高感度であり、より
多数の試料の分析を可能にする色素産生基質検定法を使用することによって測定
することもできる。類似の検定法がVIII因子活性の検定において標準になってい
る(Wood等の論文Nature 312:330−337 (1984)、Toole等の論文Nature 312:342
−347 (1984))。COS細胞中の組換えVIII因子の発現もまた標準手順である(
Toole等の論文Nature 312:342−347 (1984)、Pittman等の論文Proc. Natl. Acad
. Sci. USA 85:2429−2433 (1988))。
【0175】 本明細書に記載した組換え分子用の出発材料として用いられるヒトVIII因子c
DNAを、生物学的活性を有する産物を生み出すCOS細胞中で発現させた。上
述のようにこの材料は、ハイブリッドヒト/動物のVIII因子分子を比較するため
に基準として用いることができる。検定における活性は、ハイブリッド分子の適
切な比較のための特定の活性に変換される。このためには細胞によって産生され
たVIII因子の質量の測定が必要であり、これは基準として精製したヒトおよび/
または動物のVIII因子による免疫検定によって行なうことができる。VIII因子に
対する免疫検定は、当業者にとっては定型化されている(例えば、Lollar等の論
文Blood 71:137−143 (1988) を参照されたい)。
【0176】 実施例8:ハイブリッドヒト/動物およびこれと同等のVIII因子における阻害
活性の決定 多分エピトープとして(すなわち、VIII因子と反応する阻害抗体の認識部位と
して)関わっているヒトおよび動物のVIII因子の配列は、定型化された手順を用
いて、例えば下記に示したようにオーバーラップ拡張によるスプライシング法(
SOE)などの部位特異的変異誘発技術と組み合わせて、VIII因子に対する抗体
による検定の使用を通して決定することができる。対応する抗原性のヒトVIII因
子配列と比較して抗原性でない動物の配列を同定することができ、標準の組換え
DNA法に従って置換を行なって動物配列を挿入し、ヒト配列を欠失させること
ができる。VIII因子に対して何も既知の配列アイデンティティーを持たないアラ
ニン残基などのアミノ酸の配列もまた、標準の組換えDNA法により、またはア
ラニン走査変異誘発により置換することができる。ブタのVIII因子は幾つかの阻
害抗体と反応するがヒトのVIII因子より反応性は低く、これはインヒビターによ
る患者の最新治療に対して基盤を与える。組換えハイブリッド形成を行なった後
、それらをBethesdaのインヒビター検定法を含む定型化された検定法によりイン
ビトロで反応性を試験することができる。天然のヒトVIII因子および天然の動物
VIII因子よりも反応性の低いこれら構築物は、置換治療の候補である。
【0177】 ヒトのVIII因子と反応する全部ではないとしても大部分の阻害抗体が向けられ
るエピトープは、アミノ酸2332個のヒトVIII因子分子中の2つの領域、すなわち
A2ドメイン(アミノ酸残基373〜740番)およびC2ドメイン(アミノ酸残基21
73〜2332番、両配列とも配列番号:2中に示される)に存在すると考えられる。A
2エピトープは、ヒトA2ドメインの一部が置換されたヒトアミノ酸配列に対す
る配列アイデンティティーを有するブタ配列によって置換される組換えハイブリ
ッドヒト−ブタVIII因子分子を作成することによって削除された。これは、実施
例7に記載したように標準の分子生物学の技術によりブタA2ドメインをクロー
ン化し、次いで制限部位を用いてA2ドメイン内でカッティングおよびスプライ
シングを行なうことによって達成された。HP2と呼ばれる得られた構築物にお
いて、ブタVIII因子の残基373〜604番(配列番号:4)は置換されてヒトA2ドメ
イン中に入る。HP2は、下記の方法を用いて抗ヒトVIII因子抗体との免疫活性
が検定された。
【0178】 VIII因子の酵素免疫吸着検定法 ミクロタイタープレートウェルを、ESH4すなわちヒトVIII因子L鎖抗体6
μg/mlの0.15mlで被覆し、一夜インキュベートした。プレートをH2Oで3回洗
浄した後、ウェルを0.15M NaCl、10mMリン酸ナトリウム、0.05% Tween 20、0.05
% 脱脂粉乳、および0.05%アジ化ナトリウム(pH7.4)で1時間遮断した。感度を
上げるためにVIII因子を含有する試料を、30nMトロンビンで15分間活性化させ
た。次いでトロンビンを阻害するために組換えデスルファトヒルジンを100nMで
加えた。プレートを再度洗浄し、試料または基準として用いる純粋な組換えヒト
VIII因子(10〜600ng/ml)0.1mlを加えた。2時間インキュベートした後、プレ
ートを洗浄し、ビオチニル化したESH8、すなわち別のVIII因子L鎖抗体0.1m
lを各ウェルに加えた。ESH8は、Pierceのヘキサン酸スルホスクシンイミジ
ル−6−(ビオチンアミド)のビオチン化キットを用いてビオチン化した。1時
間インキュベートした後、プレートを洗浄し、ストレパビジンアルカリ性ホスフ
ァターゼ0.1mlを各ウェルに加えた。プレートをBio-Radのアルカリ性ホスファタ
ーゼ基質試薬キットを用いて現像させ、各ウェルに対して405nmで得られる吸光
度をVmaxミクロタイタープレートリーダー(Molecular Devices, Inc., Sun
nyville, CA)を用いて決定した。未知のVIII因子濃度は、VIII因子標準曲線の
直線部分から決定した。
【0179】 VIII因子検定 HB-およびHP2VIII因子を一段階血餅形成検定法で測定した。これは上記
の記述(Bowie, E.J.W.およびC.A.Owenの「Disorders of Hemostasis 」 (Ramof
fおよびFobes編) 中の記述、pp.43−72, Grunn & Stratton, Inc., Orlando,FL
(1984))、または下記のように血漿を含まない検定により行なった。HB-また
はHP2のVIII因子を、0.15M NaCl、20nM Hepes、5mM CaCl2、および0.01% Twe
en 80(pH7.4)中で、10nM IXa因子、425nM X因子、および50μM単層ホスファチ
ジルセリン/ホスファチジルコリン(25/75、w/w)の小胞の存在下で、40nMトロ
ンビンによって活性化した。5分後、0.05M EDTAおよび100nM組換えデスルファ
トヒルジンにより反応を停止し、得られたXa因子をHill-Eubanksの論文J. Biol.
Chem. 265:17854−17858 (1990) の方法に従って色素産生基質検定法により測
定した。これらの条件下において、形成されるXa因子の量は、基準として精製し
た組換えヒトVIII因子(Baxter Biotech, Deerfield, IL)を用いることによっ
て判定されるように、出発VIII因子の濃度に直線的に比例した。
【0180】 血餅形成検定に先立ってHB-およびHP2のVIII因子を、ヘパリン−Sepharo
se(商標)クロマトグラフィにより、48時間順化培地から10〜15単位/mlまで
濃縮した。HB-およびHP2のVIII因子を、血友病Aの血漿(George King Bio
medical)に最終濃度1単位/mlになるまで加えた。RCまたはMR血漿あるいは
mAbの原液413IgG (4μM) 中のインヒビターの力価を、Kasper, C.K.等の論文
Thromb. Diath. Haemorrh. 34:869−872 (1975) の記述に従ってBethesdaの検定
法によって測定した。インヒビターIgGは、Leyte, A. 等の論文J. Biol. Chem. 266 :740−746 (1991) の記述に従って調製した。
【0181】 HP2は抗A2抗体と反応しない。したがって残基373〜603番は、抗A2抗体
に対するエピトープを含有しなければならない。
【0182】 ハイブリッドヒト−ブタVIII因子の調製およびオーバーラップ拡張によるスプ ライシングによる検定(SOE) A2エピトープをさらにしぼり込むために、ヒトA2領域にブタのアミノ酸置
換を有するさらに幾つかのプロ凝固性組換えハイブリッドヒト/ブタVIII B因子
ドメインを持たない分子を調製した。制限部位技術に加えて、Ho等の論文Gene 7 7 :51−59 (1989) に記載の「オーバーラップ拡張によるスプライシング」法(S
OE)を用いてブタVIII因子cDNAのいずれか任意の領域を置換した。SOE
においてはスプライス部位は、所望のcDNAを産生するようにPCRによって
増幅することができるオリゴヌクレオチドをオーバーラップさせることによって
画定される。通称HP4からHP13までの10種類のcDNAを作成した。そ
れらをReNeo発現ベクター中に挿入し、生まれたばかりのハムスターの腎臓
細胞中にしっかり移入し、実施例7に記載のように高レベル(24時間当たり、
細胞107個当たり0.5〜1μg(約3〜6単位))まで発現させた。VIII因子凝固剤活
性を、A2ドメインすなわちmAb413に対して特異的なモデルマウスのモノ
クローナル阻害抗体の存在および不在下で決定した。インヒビターの不在下で全
ての構築物は、B(‐)ヒトVIII因子と見分けがつかない特異な凝固剤活性を有
していた。
【0183】 ハイブリッドヒト/ブタVIII因子構築物を、Bethesdaの検定法を用いて抗A2
インヒビターmAb413との反応性を検定した(Kasper, C.K.等の論文Thromb
. Diath. Haemorrh. 34:869−872 (1975))。Bethesda単位(BU)は、インヒビ
ターの力価を測定するための標準的な方法である。結果を表Vに示し、組換えヒ
トVIII因子と比較する。 ──────────────────────────────────── 表V アミノ酸を置換したハイブリッドヒト/ブタVIII因子の免疫反応性の比較 構築物 ブタによる置換 阻害、mAb413(BU/mg IgG) ヒトB(‐)fVIII なし 1470 HP4 373−540 <0.7 HP5 373−508 <0.7 HP6 373−444 1450 HP7 445−508 <0.7 HP8 373−483 1250 HP9 484−508 <0.7 HP10 373−403 1170 HP11 404−508 <0.7 HP12 489−508 <0.7 HP13 484−488 <0.7 ──────────────────────────────────── ブタの置換の境界は、挿入のNH2−末端及びC−末端におけるヒトとブタの
VIII因子の間で異なる最初のアミノ酸によって定められる。表Vに示されて
いるように、ベセスダ価が測定できない場合(<0.7 BU/mg IgG)、A2エピト
ープは置換されたブタ配列の領域にある。エピトープは、mAb413とHP9
との非反応性に見られるように、わずか25の残基から成る残基484〜509
(配列番号2)まで漸次狭められた。構築体HP4〜HP11までのうちで、H
P9が阻害因子と反応しなかった最も「ヒト化」された構築体であった。これは
、A2エピトープの重要な領域が配列Arg484〜Ile508の内部にある
ことを示している。
【0184】 この重要な領域におけるヒトとブタVIII因子の間のアミノ酸配列の比較に
基づいて、さらに二つの構築体、HP12とHP13、が作られた。そこでは、
それぞれ、ヒトのアミノ酸配列489〜508及び484〜488に対して対応
するブタのアミノ酸配列が置換された。どちらもmAb413と反応しなかった
。このことは、Arg484〜Ser489結合のそれぞれの側の残基がA2阻
害因子との反応に重要であるということを示している。HP12では、わずか5
残基だけが非ヒト残基であり、HP13では、わずか4残基だけが非ヒト残基で
ある。484〜508、484〜488及び489〜508がブタで置換された
ハイブリッドは、4人の患者血漿からのA2阻害因子による阻害の減少を示し、
A2エピトープの構造には阻害因子ポピュレーション応答による変化はほとんど
ないことを示唆した。
【0185】 阻害因子血漿から調製された二つの抗A2IgG5試料と、最もヒト化された
構築体、HP9、HP12及びHP13の反応性が測定された。mAb413と
同様に、これらの抗体もHP9、HP12及びHP13と反応しなかったが、対
照の構築体、HP(−)及びHP8とは反応した。
【0186】 決定的なA2エピトープを最終的に同定するために484〜508の間の領域
を同じ手順を用いてさらに分析することができる。
【0187】 実施例7及び8で記述した方法を用いて、ヒトA2又はその他のドメインでア
ミノ酸置換された他のハイブリッドヒト/非ブタ哺乳類VIII因子、何らかの
ドメインでアミノ酸置換されたハイブリッドヒト/動物又は動物/動物VIII
因子、又はハイブリッドVII因子等価分子又はそれらの断片、例えば抗VIII
因子抗体に対する免疫反応性が弱い又は無いハイブリッドVIII因子など、を
調製することができる。
【0188】 実施例9. 部位指向的突然変異誘発によるヒトVIII因子A2阻
害因子反応性の除去 実施例8は、残基484及び508を境界とするブタの配列をヒトのVIII
因子A2ドメインに挿入することによってA2特異的なVIII因子阻害因子の
パネルに対して反応性が顕著に低下した分子が得られることを示した[Healey e
t al., (1995) J. Biol. Chem. 270:14505-14509 も参照]。 この領域では、ヒ
トとブタのVIII因子の間に9つのアミノ酸の差異がある。ヒトB−ドメイン
欠如VIII因子におけるこれら9つの残基、R484、P485、Y487、
P488、R489、P492、V495、F501及びI508(一文字のア
ミノ酸コードを用いる)が、部位指向的突然変異誘発によって個別にアラニンに
変えられた。さらに、クローニングを容易にするために、A2エピトープに対す
る5’及び3’部位でVIII因子cDNAにMlu1及びSac2制限部位が
それらの部位に対応するアミノ酸を変えることなく設けられた。9つの変異体は
ベビーハムスター腎細胞に安定に移植され、高いレベルで発現された。9つの細
胞が全て生物的に活性なVIII因子を産生した。それらは部分的に精製され、
Healey et al. が記述しているようにヘパリン−Sepharoseクロマトグラフィー
によって濃縮された。
【0189】 変異体の特性が、実施例7におけると同様に、マウスのモノクローナル阻害因
子MAb413との反応性によって調べられた。この阻害因子は、これまで調べ
られた全てのヒト阻害因子と同じ又は非常に近いクラスターのA2ドメインのエ
ピトープを認識する。阻害因子の反応性はベセスダ分析法を用いて測定された。
簡単に言うと、ある阻害因子のベセスダ価とは、標準的な一段階VIII因子凝
固分析においてVIII因子を50%阻害するような阻害因子の希釈度である。
例えば、抗体の溶液を1/420に希釈して、それが組み換えVIII因子テス
ト・サンプルを50%阻害した場合、ベセスダ価は420Uになる。MAb41
3のように純粋なモノクローナルの場合、抗体の質量は知られているので、結果
はMAb413のmg当たりのベセスダ価(BU)で表される。50%阻害点を
見出すために、一連のMAb413希釈溶液が作成され、50%阻害点は曲線適
合手順によって見出された。結果は次の通りである: *表VI 変異 MAb413価(BU/mg) 反応性% * 野生型、B(−)fVIII 9400 −− R484→A 160 1.7 P485→A 4000 42 Y487→A 50 0.53 S488→A 3500 37 R489→A 1.6 0.015 R490→A −− 〈0.5〉 P492→A 630 6.7 V495→A 10700 113 F501→A 11900 126 I508→A 5620 60 *野生型に対して これらの結果は、モデルA2阻害因子に対するVIII因子の抗原性を、位置
484、487、489及び492でアラニン置換を行うことによって因子10
以上減少させることが可能であるということを示している。反応性はR489→
Aでほとんど4けたも減少する。これらのアラニン置換体はいずれもVIII因
子の抗原性及び免疫抗原性を低下させるために治療的に役に立つ可能性がある。
【0190】 この結果はアラニン走査性突然変異誘発の有効性を裏付け、さらに阻害的な抗
体に反応するエピトープ内でアミノ酸配列が変化しても生物的活性が保たれるこ
とを示している。ヒトとブタの配列が異なっている9つの部位のうち、5つはま
た、ヒトとマウスの配列が異なっている部位でもある。したがって、これらの位
置でアラニン置換されたVIII因子は、現在知られている哺乳類のVIII因
子で同定される配列が何も知られていない配列を有するハイブリッドVIII因
子等価分子の例である。
【0191】 これ以上の修飾、例えば二つのアラニン置換を組み合わせることによる修飾、
によってより広範な患者に対して抗原性を大きく減少させることができる。患者
によって異なるポリクローナル変異抗体がVIII因子A2エピトープの変異体
と反応する可能性があるからである。さらに、免疫抗原性(抗体を誘発する能力
)は、一つより多くのアミノ酸置換を組み込むことによってさらに減少する。そ
のような置換は、アラニン、ブタ特異的なアミノ酸、又は免疫抗原性が低いこと
が知られている他のアミノ酸も含む。位置490、495及び501における置
換は免疫抗原性を低下させるのに役立つと思われる。さらに、これらの置換は、
ある種の患者抗体に対する反応性を低下させそうである。
【0192】 アラニンの他に、抗原性を低下させる別のアミノ酸置換が可能であるが、抗原
−抗体結合エネルギーへの主要な寄与因子とされているもの、又はかさばった側
鎖又は荷電を有する側鎖をもつものを避けるように注意を払うことが必要である
。あるエピトープ内での置換がその抗原的な反応性を減少させるアミノ酸は、本
明細書において「免疫反応性を減少させる」アミノ酸と呼ばれる。アラニン以外
に、免疫反応性を減少させる他のアミノ酸としては、限定するものではないが、
メチオニン、ロイシン、セリン、及びグリシンなどがある。あるアミノ酸で達成
できる免疫反応性の減少は、また、置換がタンパク質のコンフォーメーション、
エピトープのアクセスし易さなどに及ぼす影響にも依存することは理解されるで
あろう。
【0193】 ヒトとブタの配列の間で異なっている部位以外のA2エピトープ(アミノ酸4
84〜508)内部の他の部位におけるアミノ酸置換によって、さらに、阻害的
な抗体に対する反応性を減少させることができる。アラニン走査性突然変異誘発
を用いてA2エピトープ内のどんなアミノ酸に対してもアラニン置換体を得るこ
とができる。こうして得られた各修飾VIII因子のプロ凝固活性及び阻害的な
抗体によるその活性の阻害を分析することができる。アラニン以外の免疫反応性
を減少させる他のアミノ酸を置換することによって、得られる修飾VIII因子
の抗原性を減少させることができる。アミノ酸代替を単一のVIII因子分子で
組み合わせてそのような置換によって所望の性質が最も大きく得られるようにす
ることができる。
【0194】 抗体−VIII因子相互作用の結合エネルギーに最も大きく寄与するアミノ酸
の置換が最も好ましい。それは、例えば位置493、496、499、500、
502、503、505及び507のいずれかにおける免疫反応性を減少させる
アミノ酸の置換である。位置484、485、499、490、492、501
及び508におけるこのタイプの置き換えに関するデータは、この置換によって
プロ凝固活性は保たれ、阻害的な抗体による阻害され易さは減少するということ
を示している。(表VI)ヒスチジン置換が天然の配列で見られる。例えば、位置
504でマウスVIII因子のヒスチジンが、ブタとヒトのVIII因子の両方
ではロイシンによって置き換えられている。ブタとマウスのVIII因子は両方
共位置487にヒスチジンを有するが、ヒトではそこがチロシンになっている。
位置487でチロシンをアラニンに置き換えると、プロ凝固活性があって抗原性
が実質的に減少したものが得られる(表VI)。アナロジーによって、位置497
でヒスチジンを免疫反応性を減少させるアミノ酸で置換しても、プロ凝固活性を
保ちながら阻害的な抗体による阻害を減少させることができる。免疫反応性を減
少させるアミノ酸は、また、位置486、488、491、494、498、5
04及び506に置換することができる。これらの位置に現在あるアミノ酸は抗
体の結合にあまり寄与しそうには思われないが、これらの部位に免疫反応性を減
少させるアミノ酸を置換すると、例えばS488A、プロ凝固活性の抗体による
阻害の減少に寄与するということが示された(表VI)。
【0195】 A2エピトープ内でのヒト、ブタ、マウス(図1A〜1H)及びイヌ(Camero
n, C. et al., (1998) Thromb. Haemost. 79:317-322)の配列の比較から、この
領域が相当な量の配列の変動を許容するということが明らかである。4つの種全
部で保存されている遺伝子座は12しかない。それらはどれもプロ凝固活性にと
って不可欠のものとは考えられない。実際、位置490で保存されているアルギ
ニンをアラニンで置換した結果は、阻害因子の抗体に対する反応性が低下した活
性の修飾VIII因子である(R490→A、表VI)。1以上のアミノ酸置換を
行っても、プロ凝固活性に実質的に影響しない。例えば、抗体の結合に関わる二
つのアミノ酸を置換すると、どちらか一つだけのときに比べて抗体による阻害を
大きく減少させることができる。また、多数の置換は、単一アミノ酸の置換に比
べてより広範な患者抗体に対して、得られた修飾VIII因子の反応性を減少さ
せることができる。
【0196】 個々のアミノ酸置換を、抗原性の減少という性質ならびにVIII因子の他の
機能的属性に関して評価することができる。個々のアミノ酸置換によって得られ
る性質を評価することによって、アミノ酸484〜508の領域に関する限り最
適な性質を有する修飾VIII因子を得るために望ましい二つ以上のアミノ酸置
換の組み合わせを同定することができる。
【0197】 部位指向的突然変異誘発を用いてアミノ酸484〜508をコードする領域に
おけるVIII因子DNAを修飾し、所望のアミノ酸置換を有する修飾されたV
III因子をコードする塩基配列を得ることができる。ヒトのVIII因子DN
A塩基配列の適当な部位で、既存のアミノ酸をコードするトリプレットを部位指
向的突然変異誘発によって変えて所望のアミノ酸をコードすることができる。所
望のアミノ酸をコードするトリプレットは、遺伝コードによって定められている
既知のトリプレットのどれであってもよい。単一のアミノ酸置換をコードするた
めに天然の配列を変更することは、しばしば一つの塩基変化によって、場合によ
ってはもっと多くの、最大で3つの塩基変化によって、遂行できる。部位指向的
突然変異誘発を用いることによって、既存のコーディングを所望のアミノ酸置換
をコードするために必要なものに変えるように全ての必要な塩基置換を直ちに実
行することができる。特定のアミノ酸置換に導く塩基変化のいくつかの例を下に
示す。これらは例示的なものであって、全部を尽くすものではない: R484→G CGT→ GGT P485→A CCT→ GCT L486→S TTG→ TCG Y487→L TAT→ CTT S488→L TCA→ TTA R489→S AGG→ AGT R490→G AGA→ GGA L491→S TTA→ TCA P492→L CCA→ CTA K493→A AAA→ GCA G494→S GGT→ AGT V495→A GTA→ GCA K496→M AAA→ ATG H497→L CAT→ CTT L498→S TTG→ TCG K499→M AAG→ ATG D500→A GAT→ GCT F501→S TTT→ TCT P502→L CCA→ CTA I503→M ATT→ ATG L504→M CTG→ ATG P505→A CCA→ GCA G506→A GGA→ GCA E507→G GAA→ GGA I508→M ATA→ ATG 前記の例は、多くの免疫反応性を減少させるアミノ酸の置換が単一のヌクレオ
チドの変更によって遂行できることを示している。所望する他の置換も同様な仕
方で、遺伝コードを参照して意図するアミノ酸置換体をコードするヌクレオチド
・トリプレットを選択し、部位指向的突然変異誘発によって必要なヌクレオチド
の変更を導入して意図するトリプレットを生成するという仕方で遂行できる。多
重に置換された修飾VIII因子は、上述のようなヌクレオチド変更の単純な組
み合わせによって作ることができる。例えば、R489→A及びP492→Lの
ようにA2ドメインの二つのアミノ酸が置換された修飾VIII因子は、該当す
る部位にAGG→GCG及びCCA→CTAという3つのヌクレオチドの変更を
導入することによって作ることができる。所望する他の変更又は変更の組み合わ
せも、本質的には上で述べたようにして設計して実行することができる。上述の
部位指向的突然変異誘発によって得られる修飾VIII因子のDNAの塩基配列
は、天然のヒトの塩基配列又は本明細書の他のところで述べる別の仕方で修飾さ
れた塩基配列とは、定められた部位で定められたヌクレオチド置換(単数又は複
数)を有するという点だけが異なっている。プロ凝固活性が前述のように(実施
例1及び8)1段階又は2段階分析によって分析される。阻害価の測定は、上述
のKasper, C. K. et al., 前出、実施例8によるベセスダ分析である。
【0198】 実施例10 Klenow 断片、リン酸化Cla1リンカー、Not1リンカー、T4リガーゼ
、及びTaqDNAポリメラーゼはPromega (Madison, Wisconsin)から購入した
。ポリヌクレオチド・キナーゼはLife Technologies, Inc., Gaithersburg, Mar
yland から購入した。γ32P−ATP(Redivue, >5000 Ci/mmol)はAmersham
から購入した。pBluescript II KS-及びE. coli Epicurean XL1 Blue 細胞はStr
atagene (La Jolla, California)から購入した。合成オリゴヌクレオチドはLife
Technologies Inc.又はCruachem, Inc. から購入した。クローニングのために
PCR産物を生成するときは、5’リン酸化プライマーを用いた。ブタVIII
因子cDNA又はゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅のための
プライマーとして用いられるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド(nt)番号づ
けにはヒトVIII因子cDNAを基準として用いる(Wood et al., (1984) 前
出)。
【0199】 ブタ脾臓全RNAが、酸グアニジューム・チオシアネート−フェノール−クロ
ロフォルム抽出法によって単離された[Chomczynski et al., (1987) Anal. Bio
chem. 162: 156-159]。全脾臓RNAからブタのcDNAが、別に断らない限り
、Moloney マウス白血病ウイルス逆転写酵素(RT)及び反応を開始させるため
にランダム・ヘキサマーを用いて調製された(First-Strand cDNA 合成キット、
Pharmacia Biotech)。RT反応は45mM Tris−Cl、pH8.3,6
8mM KCl、15mM DTT、9mM MgCl2、0.08mg/ml
のウシ血清アルブミン及び1.8mM デオキシヌクレオチド・トリフォスフェ
ート(dNTP)を含んでいた。ブタのゲノムDNAが脾臓から、標準的な手順
(Strauss, W. M. (1995) 分子生物学における現行のプロトコル、F.M. Ausubel
et al. 編、John Wiley & Sons, pp. 2.2.1-2.2.3)を用いて単離された。アガ
ロース・ゲルからのDNAの単離はGeneclean II(Bio 101)又はQuiex II ゲル
抽出キット(qiagen)を用いて行われた。
【0200】 PCR反応は、Hybaid OmmGene サーモサイクラーを用いて行われた。Taq
DNAポリメラーゼを用いたPCR反応では、反応物には0.6mM MgCl 2 、0.2mM dNTP、0.5μM オリゴヌクレオチド・プライマー、5
0U/mlポリメラーゼ及び0.1体積の第一ストランドcDNA反応ミックス
が含まれていた。別に断らない限り、PCR産物はゲル精製され、Klenow 断片
によってブラント末端化し、エタノールで沈澱させ、脱リン酸化pBluescript II
KS- のEcoRV部位に結紮するか又はT4リガーゼを用いてリン酸化ClaIリン
カーに結合し、ClaIによって消化し、Sephacryl S400 クロマトグラフィー
によって精製し、ClaIカット脱リン酸化pBluescript II KS- に結合した。
別に断らない限り、結合はT4DNAリガーゼを用いて行われた(Rapid DNA li
gation Kit, Boehringer Mannheim)。インサートを含むpBluescript II KS-プ
ラスミドを用いてE. coli Epicurean XL1-Blue 細胞を形質転換した。
【0201】 プラスミドDNAの塩基配列決定は、Applied Biosystems 373a 自動DNAシ
ーケンサー及びPRISMダイ・ターミネーター・キットを用いて、又はSequen
ase v. 2.0 シーケンシング・キット(Amersham Corporation)を用いて手動で
行った。PCR産物の直接塩基配列決定は、オリゴヌクレオチドの32P-末端の
ラベリングを含めて、サイクル塩基配列プロトコルを用いて行われた(dsDN
Aサイクル・シーケンシング・システム、Life Technologies)。
【0202】 5’UTRシーケンス、シグナルペプチド、及びA1ドメイン・コドンを含 むブタVIII因子cDNAクローンの単離 A2ドメインへのブタVIII因子cDNA5’は、雌ブタ脾臓全RNAのネ
スティッド(nested)RT−PCRによりcDNA末端の5’迅速増幅(5’−
RACE)プロトコルを用いて増幅された(Marathon cDNA増幅、Clontech,
Version PR55453)。これは、ロックドッキング・オリゴ(dT)プライマーを
用いる第一ストランドcDNA合成[Borson, N.D. et al., (1992) PCR Method
s Appl. 2: 144-148]、E. coli DNAポリメラーゼIを用いる第二ストランド
cDNA合成、及び5’拡張二本鎖アダプター、配列番号13 5’−CTA
ATA CGA CTC ACT ATA GGG CTC GAG CGG
CCG CCC GGG CAG GT−3 3’−H2N−CCCGTCCA−PO4−5’ による結合が含まれ、この短い鎖は非特異的なPCRプライミングを減らすため
にアミノ基で3’末端がブロックされており、それは3’末端の8つのヌクレオ
チドと相補的であった(Siebert, P. D., et al., (1995) Nucleic. Acids. Res
. 23: 1087-1088)。PCRの第一ラウンドは、アダプター特異的なオリゴヌク
レオチド、配列番号14 5’−CCA TCC TAA TAC GAC T
CA CTA TAG GGC−3’(AP1と呼ばれる)をセンス・プライマ
ーとして用い、ブタVIII因子A2ドメイン特異的オリゴヌクレオチド、配列
番号15 5’−CCA TTG ACA TGA AGA CCG TTT
CTC−3’(nt2081〜2104)をアンチセンス・プライマーとして用
いて行われた。PCRの第二ラウンドは、ネスティッド(nested)、アダプター
特異的なオリゴヌクレオチド、配列番号16 5’−ACT CAC TAT
AGG GCT CGA GCG GC−3’(AP2と呼ばれる)をセンス・
プライマーとして用い、ネスティッド(nested)、ブタA2ドメイン特異的オリ
ゴヌクレオチド、配列番号17 5’−GGG TGC AAA GCG CT
G ACA TCA GTG−3’(nt1497〜1520)をアンチセンス
・プライマーとして用いて行われた。PCRは, 抗体で媒介されるホット・スタ
ート手順を採用した市販のキット(Advantage cDNA PCR core kit )を
用いて行われた[Kellog, D. E. et al., (1994) BioTechniques 16: 1134-1137
]。PCR条件は、94℃で60秒間の変性、続いて30サイクル(第一のPC
R)又は25サイクル(第二のPCR)の94℃での30秒間の変性、30秒間
60℃でのアニーリング、そしてチューブ温度を制御して4分間68℃での伸長
であった。この手順で、プロミネント(prominent)=1.6kbの産物が得ら
れたが、これは、5’UTRへ150bp延びている断片の増幅と矛盾しない。
PCR産物は、ClaIリンカーを用いてpBluescript にクローニングされた。
4つのクローンのインサートが両方向で配列決定された。
【0203】 これらのクローンの配列には、137bpの5’UTR、シグナルペプチド、
A1ドメイン及びA2ドメインの一部が含まれていた。4部位の少なくとも3つ
で一致に達していた。しかし、クローンは平均して4つのPCRで発生したと見
られる突然変異を含んでおり、これは、複数のラウンドのPCRがクローニング
可能な産物を生成するために必要とされたためであると思われる。従って、我々
は、配列を確認するための別のPCR産物の合成のために、そしてクローニング
して発現ベクターにするために、シグナルペプチド領域から得られた配列を用い
てセンス鎖リン酸化PCRプライマー、配列番号18
【0204】
【化1】
【0205】 、RENEOPIGSPと呼ばれるもの、を設計した。太字の配列は開始コドン
を表している。これへの配列5’は、VIII因子の発現に用いられる哺乳類発
現ベクターReNeoへの挿入部位の5’と同一の配列である(Lubin et al.,
(1994) 前出)。この部位はXhol開裂部位を含んでいる(下線)。RENE
OPIGSPとnt1497〜1520オリゴヌクレオチドを用いて、雌ブタ脾
臓cDNAをテンプレートとして用いるTaqDNAポリメラーゼに媒介される
PCR反応を開始させた。他のいくつかのメーカーからのDNAポリメラーゼは
検出できるほどの産物を生成できなかった。PCR条件は、94℃で4分間の変
性、続いて94℃で1分間の変性を35サイクル、55℃で2分間のアニーリン
グ、及び72℃で2分間の伸長、その後72℃で5分間の最終伸長ステップ、で
あった。PCR産物は、ClaIリンカーを用いてpBluescript にクローニング
された。これらのクローンの二つのインサートが両方向で配列決定され、一致配
列と突き合わせられた。
【0206】 A3、C1及びC2ドメイン・コドンの5’半部を含むブタVIII因子c DNAクローンの単離 最初、B−A3ドメイン断片(nt4519〜5571)とC1−C2ドメイ
ン断片(nt6405〜6990)に対応する二つのブタ脾臓RT−PCR産物
がクローニングされた。得られたC2ドメインの3’末端は、VIII因子の終
端エクソンであるエクソン26領域にまで延びていた。B−A3産物は、ブタ特
異的なBドメイン・プライマー、配列番号19 5’CGC GCG GCC
GCG CAT CTG GCA AAG CTG AGT T 3’を用いて
作られた。ここで下線の領域は、ブタのVIII因子においてヒトのVIII因
子のnt4519〜4530と並ぶ領域に対応する。オリゴヌクレオチドの5’
領域は、元来クローニングのためであったNotI部位を含んでいる。B−A3
産物を生成するのに用いられるアンチセンス・プライマー、配列番号20 5’
−GAA ATA AGC CCA GGC TTT GCA GTC RAA
−3’、はヒトVIII因子cDNAのnt5545〜5571での配列の逆コ
ンプリメントに基づいていた。PCR反応は、50mM KCl、10mM T
ris−Cl、pH9.0,0.1%Triton X−100、1.5mM
MgCl2、2.5mMdNTPs、20μMプライマー、25単位/mlTa
qDNAポリメラーゼ、及び1/20体積のRT反応ミックスを含んでいた。P
CR条件は、94℃で3分間の変性、続いて94℃で1分間の変性を30サイク
ル、50℃で2分間のアニーリング、そして72℃で2分間の伸長であった。P
CR産物は、T4DNAキナーゼを用いてリン酸化され、NotIリンカーが加
えられた。NotIでカットされた後、PCR断片はBlueScript II KS- のNo
tI部位にクローニングされ、XL1−Blue細胞に形質転換された。
【0207】 C1−C2産物は、知られているヒトcDNA配列を用いてセンス及びアンチ
センス・プライマー、それぞれ、配列番号21 5’−AGG AAA TTC
CAC TGG AAC CTT N−3’(nt6405〜6426)及び
配列番号22 5’−CTG GGG GTG AAT TCG AAG GT
A GCG N−3’(nt6966〜6990の逆コンプリメント)、を合成
して作られた。PCR条件はB−A2産物を生成するのに用いられた条件と同一
であった。得られた断片は、Prime PCR Cloner Cloning System (5 Prime-3Pri
me, Inc., Boulder, Colorado)を用いてpNOTクローニング・ベクターに結
紮され、IM109細胞で育成された。
【0208】 B−A3及びC1−C2プラスミドを部分的に配列決定して、ブタ特異的なセ
ンス及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、それぞれ、配列番号23 5’−
GAG TTC ATC GGG AAG ACC TGT TG−3’(nt
4551〜4573)及び配列番号24 5’−ACA GCC CAT CA
A CTC CAT GCG AAG−3’(nt6541〜6564)を作っ
た。これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、Clontech Advantage
cDNA PCRキットを用いて2013bpのRT−PCR産物を生成した
。この産物はヒトのnt4551〜6564に対応し、L鎖活性化ペプチド(n
t5002〜5124)、A3ドメイン(nt5125〜6114)及びC1ド
メイン(nt6115〜6573)の大部分に対応する領域を含んでいる。C1
−C2クローンの配列から、ヒトとブタのcDNAがnt6565からC1ドメ
インの3’末端まで同一であるということが確立されていた。PCR産物はpBlu
escript II KS-のEcoRV部位にクローニングされた。4つのクローンの配列
が両方向で完全に決定された。4部位のうち少なくとも3つで一致に達した。
【0209】 C2ドメイン・コドンの3’半部を含むブタVIII因子cDNAクローン の単離 ヒトのVIII因子のC2ドメイン(ヌクレオチド6574〜7053)は、
エクソン24〜26の内部に含まれる[Gitschier J. et al., (1984) Nature 3
12: 326-330]。ヒトのエクソン26は、ヌクレオチド6901〜8858に対
応する1958bpを含んでいる。これには1478bpの翻訳されない3’配
列が含まれる。C2ドメインの3’末端及び3’UTRに対応するエクソン26
cDNAをクローニングする試みは、3’RACEによるもの[Siebert et al.
, (1995) 前出]、逆PCRによるもの[Ochman, H. et al., (1990) Biotechno
logy (N.Y) 8: 759-760]、制限部位PCRによるもの[Sarkar, G. et al. (19
93) PCR Meth. Appl. 2: 318-322]、「予測できない開始の」PCRによるもの
[Dominguez, O. et al. (1994) Nucleic. Acids Res. 22: 3247-3248]及びブ
タ肝臓cDNAライブラリーのスクリーニングによるものも失敗した。3’RA
CEは、ブタのVIII因子cDNAの5’末端をクローニングするのに用いて
成功した同じアダプター結合された二本鎖cDNAライブラリーを用いて試みら
れた。従って、この方法の失敗はエクソン26に対応するcDNAが存在しない
ためではない。
【0210】 C2ドメインの3’半部をクローニングするために標的遺伝子ウオーキングP
CR法[Parker, J.D. et al. (1991) Nucleic Acids Res. 19: 3055-3060]が
用いられた。ブタ特異的なセンス・プライマー、配列番号25 5’−TCAG
GGCAATCAGGACTCC−3’(nt6904〜6924)が最初のC
2ドメイン配列に基づいて合成され、実験室で得られるオリゴヌクレオチドから
選択される非特異的な「ウオーキング」プライマーによるPCR反応に用いられ
た。次に、32P末端標識されたブタ特異的な内部プライマー、配列番号26 5
’−CCGTGGTGAACGCTCTGGACC−3’(nt6932〜69
52)を用いて、PCR産物をプライマー延長分析の標的にした[Parker et al
. (1991) BioTechniques 10: 94-101]。興味深いことに、テストされた40の
非特異的プライマーのうち、二つだけがプライマー延長分析でポジティブな産物
を与え、この二つはC2ドメインの3’末端におけるヒトの正確な配列及び縮重
配列:配列番号27 5’−GTAGAGGTCCTGTGCCTCGCAGC
C−3’(nt7030〜7053)及び配列番号28 5’−GTAGAGS
TSCTGKGCCTCRCAKCCYAG−3’(nt7027〜7053)
に対応していた。これらのプライマーは、最初に通常のRT−PCRによって産
物を得ようとして設計されたが臭化エチジューム色素結合によって目に見えるよ
うにできるほど十分な産物を得られなかったものである。しかし、PCR産物は
より敏感なプライマー延長法によって同定することができた。この産物をゲル精
製して直接配列を決定した。これによってブタVIII因子3’の配列がnt7
026まで延長された。
【0211】 前述の5’−RACEプロトコルで用いられたアダプター結合された二本鎖c
DNAライブラリーを用いて生成されたネスティッドPCR産物のプライマー延
長分析によって別の配列が得られた。第一ラウンドの反応では、ブタの正確なプ
ライマー 配列番号29 5’−CTTCGCATGGAGTTGATGGGC
TGT−3’(nt6541〜6564)及びAP1プライマーが用いられた。
第二ラウンドの反応では、配列番号30 5’−AATCAGGACTCCTC
CACCCCCG−3’(nt6913〜6934)及びAP2プライマーが用
いられた。直接のPCR配列決定によって配列3’がC2ドメインの終わり(n
t7053)まで延長された。C2ドメインの配列はC2ドメインの3’末端の
近くのnt7045を除きユニークであった。反復されたPCR反応の分析から
この部位ではA、G、又はA/Gの二重の読みが生じた。
【0212】 二つの追加プライマー、配列番号31 5’−GGA TCC ACC CC
A CGA GCT GG−3’(nt6977〜6996)及び配列番号32
5’−CGC CCT GAG GCT CGA GGT TCT AGG−
3’(nt7008〜7031)を用いて配列決定が3’UTRにまで延長され
た。ほぼ15bpの3’UTR配列が得られたが、配列はいくつかの部位で明瞭
でなかった。次に、3’未翻訳配列についての最良の推定に基づいていくつかの
アンチセンス・プライマーが合成された。これらのプライマーはその3’末端に
TGA停止コドンの逆コンプリメントを含んでいた。ある特定センス・プライマ
ー配列番号33 5’−AAT CAG GAC TCC TCC ACC C
CC G−3’(nt6913〜6934)と3’UTRアンチセンス・プライ
マー、配列番号34 5’−CCTTGCAGGAATTCGATTCA−3’
を用いて、アガロースゲル電気泳動と臭化エチジューム染色によって目に見える
PCR産物がブタ脾臓ゲノムDNAとブタ脾臓cDNAの両方から得られた。ク
ローニングのために十分な量の物質を得るために、第二ラウンドのPCRがネス
ティッドセンス・プライマー、配列番号35 5’−CCGTGGTGAACG
CTCTGGACC−3’(nt6932〜6952)と同じアンチセンス・プ
ライマーを用いて行われた。141bpのPCR産物はEcoRV−カットpBlu
escript II KS-にクローニングされた。ゲノムDNAから得られた3つのクロー
ン及びcDNAから得られた3つのクローンの配列が両方向で得られた。nt7
045を除いて配列は曖昧さがなく明瞭であったが、nt7045ではゲノムD
NAは常にAであり、cDNAは常にGであった。
【0213】 ヒト、ブタ、及びマウスVIII因子の多数DNA配列の比較整列(図1A 〜1H) シグナルペプチド、A1、A2、A3、C1及びC2領域の比較整列が、CL
USTALWプログラム[Thompson, J.D. et al. (1994) Nucleic. Acids. Res
. 22: 4673-4680]を用いて行われた。ギャップ・オープン及びギャップ・イク
ステンションのペナルティーは、それぞれ、10及び0.05であった。ヒト、
マウス及びブタBドメインの比較整列については前に述べた[Elder et al. (19
93) 前出]。ヒトA2配列は、配列番号2におけるアミノ酸373〜740に対
応する。ブタのA2アミノ酸配列は配列番号4に与えられており、マウスA2ド
メイン・アミノ酸配列は配列番号6、アミノ酸392〜759に与えられている
【0214】 実施例11. 活性な、組み換えB−ドメインレス・ブタVIII因子(
PB-材料 クエン酸塩添加血友病A及び正常なプールされたヒト血漿はGeorge King Biom
edical, Inc. から購入した。胎仔うし血清、ジェネティシン(geneticin)、ペ
ニシリン、ストレプトマイシン、DMEM/F12培地及びAIM−V培地はLi
fe Technologies, Inc. から購入した。TaqDNAポリメラーゼはPromegaか
ら購入した。VentDNAポリメラーゼはNew England Biolabsから購入した
。 PfuDNAポリメラーゼとファージミド(phagemid)pBlueScript II KS-
はStratageneから購入した。合成オリゴヌクレオチドはLife Technologies又はC
ruachem, Inc. から購入した。制限酵素はNew England Biolabs又はPromegaから
購入した。クローニングのためにPCR産物を生成するときには、5’リン酸化
プライマーを用いた。ブタVIII因子cDNA又はゲノムDNAのポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)増幅のプライマーとして用いるオリゴヌクレオチドのヌク
レオチド(nt)番号付けではヒトVIII因子cDNAを基準として用いる[
Wood et al. (1984) Nature 312: 330-337]。VIII因子発現ベクター(HB - /ReNeoと呼ばれる)は、Biogen, Inc.から入手した。HB-/ReNeo
は、アンピシリン(ampicillin)及びジェネティシン(geneticin)耐性遺伝子
及びトロンビンで生成されたSer741〜Arg1648開裂断片と定義され
る、Bドメイン全体を欠いたヒトVIII因子cDNAを含んでいる。ReNe
oのVIII因子インサートの3’末端にあるVIII因子C2ドメインcDN
Aの突然変異誘発を簡単にするために、NotI部位がHB-/ReNeoの停
止コドンに対して2塩基3’に、オーバラップスプライシング延長(SOE)突
然変異誘発によって導入された[Horton, R.M. et al. (1993) Methods Enzymol
. 217: 270-279]。この構築体はHB-Neo/NotIと呼ばれる。
【0215】 全RNAは、酸グアニジウム・チオシアネート−フェノール−クロロフォルム
抽出によって単離された[Chomczynski, P. et al. (1987) Anal. Biochem. 162
: 156-159]。cDNAはmRNAからMoloneyマウス白血病ウイルス逆トランス
クリプターゼ(RT)とランダム・ヘキサマーをメーカー(First-Strand cD
NA合成キット、Pharmacia Biotech)からの指示に従って用いて合成された。
プラスミドDNAは、Qiagen Plasmid Maxi Kit (Qiagen, Inc.)を用いて精製
された。PCR反応は、Hybaid OmniGene サーモサイクラーを用い、Taq、V
ent又はPfuDNAポリメラーゼを用いて行われた。PCR産物は、ゲル精
製され、エタノールで沈澱され、T4DNAリガーゼを用いてプラスミドDNA
に結合された(迅速DNA結紮キット、Boehringer Mannheim)。インサートを
含むプラスミドを用いて、E.coliEpicurean XL1-Blue細胞を形質転換させ
た。PCRによって生成された全ての新しいVIII因子DNA配列は、Applie
d Biosystems 373a 自動DNAシーケンサーとPRISM色素ターミネーター・
キットを用いるジデオキシ配列決定法によって確認された。
【0216】 ブタC2ドメインを含むハイブリッドVIII因子発現ベクターHP20の 構築 C1ドメインの3’末端及びC2ドメインの全部に対応するブタVIII因子
cDNAが、既知のブタVIII因子cDNA配列に基づくプライマーを用いて
脾臓全RNAからRT−PCRによってpBluescriptにクローニングされた[Hea
ly, J.F. et al. (1996) Blood 88: 4209-4214]。この構築体及びHB-/Re
Neoをテンプレートとして用いて、SOE突然変異誘発によってヒトC1−ブ
タC2融合生成物をpBlueScriptに構築した。このプラスミドのC1−C2断片
がApaI及びNotIによって取り出され、ApaI/NotIカットHB-
/ReNeo/NotIに結合され、HP20/ReNeo/NotI が生成
された。
【0217】 ブタ軽鎖を含むBドメイン削除ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築 (HP18)− ヒトVIII因子L鎖はアミノ酸残基Asp1649〜Tyr2332から成
る。ブタVIII因子cDNAの対応する残基がHB-のこの領域に置換されて
、HP18と呼ばれるハイブリッドヒト/ブタVIII因子cDNA分子が生成
された。これは、ブタのA2領域、A3ドメイン、C1ドメイン、及びC2ドメ
インの一部に対応するPCR産物をHP20の対応する領域に置換することによ
って行われた。構築を容易にするために、同義的なAvrII部位が、SOE突然
変異誘発によってHP20のA2及びA3ドメインの接合部のnt2273に導
入された。
【0218】 ブタシグナルペプチド、A1ドメイン、及びA2ドメインを含むBドメイン 削除ハイブリッドヒト/ブタVIII因子の構築(HP22)− ヒトVIII因子シグナルペプチド、A1ドメイン及びA2ドメインは、アミ
ノ酸残基Met(−19)〜Arg740から成る。ブタVIII因子cDNA
の対応する残基がHB-のこの領域に置換されて、HP18と呼ばれる分子が生
成された。さらに、同義的なAvrII部位が、SOE突然変異誘発によってHP
22のA2及びA3ドメインの接合部のnt2273に導入された。HP22は
ブタシグナルペプチド−A1−部分A2断片をpBlueScript[Healy et al. (199
6) 前出]で、HP1と呼ばれるブタA2ドメインを含むB−ドメイン欠如ハイ
ブリッドヒト/ブタVIII因子[Lubin et al. (1994) 前出]と融合させるこ
とによって構築された。
【0219】 ブタBドメイン欠如VIII因子の構築(PB- HP18/BS(+AvrII)のSpeI/NotI断片がAvrII/Not
Iで消化され、AvrII/NotI消化されたHP22/BS(+AvrII)に
結合されて、Bドメイン全体を欠くブタVIII因子である構築体PB-/BS
(+AvrII)が生成された。PB−/BS(+AvrII)のXba/NotI
断片をHP22/ReNeo/NotI(+AvrII)に結合することによって
PB−がReNeoにクローニングされた。
【0220】 組み換えVIII因子分子の発現 PB-/ReNeo/NotI(+AvrII)及びHP22/ReNeo/N
otI(+AvrII)が前に述べたように[Lubin,I.M. et al. (1994) J. Biol
. Chem. 269: 8639-8641]、COS細胞に一時的に形質移入され、発現された。
HB-/ReNeo/NotI及びnoDNA(疑似)が対照として移入された
【0221】 PB-、HP22,及びHB-のVIII因子活性が次のように色素産生分析に
よって測定された。COS細胞培養上澄みのサンプルが、0.15M NaCl
、20mM HEPES、5mM cAC12、0.01%Tween−80,
pH7.4の中で10nMのIXa因子、425nM X因子及び50μM単層ホ
スファチジルセリン−ホスファチジルコリン(25/75w/w)小胞の存在下
で40nMトロンビンによって活性化された。5分後、0.05M EDTAと
100nM組み換えデスルファトヒルジンによって反応を停止させ、得られたX
a因子を色素産生基質分析によって測定した。色素産生基質分析では、0.4m
M Spectrozyme Xaを加えて、パラ−ニトロアニリド放出の速さを405nmで
の溶液の吸光度を測定することによって測定した。
【0222】 独立に形質移入された重複細胞培養上清の結果(405nmでの毎分の吸光度
) HB- : 13.9 PB- :139 HP22:100 疑似:<0.2 これらの結果は、ブタBドメイン欠如VIII因子およびブタA1及びA2サ
ブユニットから成るBドメインレスVIII因子が活性を有することを示してお
り、ヒトBドメインレスVIII因子よりも高い活性を有することを示唆してい
る。
【0223】 PB- が、ヘパリン−セファロース・クロマトグラフィーによって、増殖培地
から部分的に精製され濃縮された。ヘパリン−セファロース(10ml)を0.
075M NaCl、10mM HEPES、2.5mM CaCl2、0.005
%Tween−80、0.02%窒化ナトリウム、pH7.40と平衡させた。
発現する細胞からの培地(100〜200ml)をヘパリン−セファロースに加
え、それを30mlの窒化ナトリウムを含まない平衡緩衝液で洗浄した。PB-
は、0.65M NaCl、20mM HEPES、5mM CaCl2、0.01
%Tween−80、pH7.40で溶出させ、−80℃で貯蔵した。VIII
因子凝固活性の収率は普通50−75%であった。
【0224】 ブタBドメイン欠如VIII因子(PB-)の安定な発現 形質移入された細胞ラインは、10%胎仔ウシ血清、50U/mlペニシリン
、50μg/mlストレプトマイシンを含むダルベッコの修正イーグル培地−F
12で維持された。胎仔ウシ血清は、使用する前に50℃で1時間加熱して不活
性化された。HB-/ReNeo及びPB-/ReNeo/NotI(+AvrII
)はBHK細胞に安定に形質移入され、発現する細胞は600μg/mlのジェ
ネティシンを含む増殖培地で維持されることを除き前に述べた一般的なプロトコ
ル[Lubin et al. (1994) Biol. Chem. 269: 8639-8641]を用いてジェネティシ
ン耐性に関して選抜された。集密まで増殖させたコーニングT−75フラスコか
らの細胞を、Nuncトリプル・フラスコの600μg/mlのジェネティシン
を含む培地に移し、集密まで増殖させた。培地を除去し、血清を含まない、ジェ
ネティシンを含まないAIM−V培地(Life Technologies, Inc.)に代えた。
VIII因子の発現が一段VIII因子凝固活性(上記参照)によってモニター
され、100〜150mlの培地が一日一回、4乃至5日間集められた。HB-
及びPB-の培地での最大発現レベルは、VIII因子凝固活性で、それぞれ、
1mlあたり102単位及び1mlあたり10〜12単位であった。
【0225】 PB-の精製 60%飽和硫酸アンモニウムによって培養上澄みからPB-を沈澱させ、次に
、血漿由来ブタVIII因子の精製に関して前に述べたように[Lollar et al.
(1993) VIII因子/VIIIa因子. Methods Enzymol. 222: 128-143]W3
−3インムノアフィニティー・クロマトグラフィー及びモノQ高圧液体クロマト
グラフィーによって精製した。PB-の 特異的凝固活性は一段凝固分析[Lolla
r et al. (1993) 前出]によって測定されたが、血漿由来のブタVIII因子と
同様であった。
【0226】 SDS−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動で分析すると、PB-調製物は見
かけの分子質量が160kDa、82kDa、及び76kDaという3つのバン
ドを含んでいた。82kDa及び76kDaのバンドは、前にA1−A2及びa
p−A3−C1−C2ドメインを含むヘテロダイマーとして記述されている(こ
こでapは活性化ペプチドを指す)[Toole et al. (1984) Nature 312: 342-34
7]。160kDaのバンドは、フッ化ポリビニリデン膜に移され、NH2−末端
の配列決定が行われ、単一鎖VIII因子のNH2末端配列であるArg−Il
e−Xx−Xx−Tyr(ここでXxは未決定を表す)が得られた[Toole et a
l. (1984) 前出]。すなわち、PB-は部分的にA2及びA3ドメインの間の開
裂によって、二つの形態、単一鎖A1−A2−ap−A3−C1−C2タンパク
質とA1−A2/ap−A3−C1−C2ヘテロダイマー、から成るように処理
される。組み換えHB- の同様な処理が報告されている[Lind et al. (1995) E
ur. J. Biochem. 232: 19-27]。
【0227】 ブタVIII因子の特性決定 我々は、5’UTRの137bp、シグナルペプチド・コーディング領域(5
7bp)、及びA1(1119bp)、A3(990bp)、C1(456bp
)、及びC2(483bp)ドメインに対応するブタVIII因子のcDNA配
列を決定した。以前に発表したBドメイン及び軽鎖活性化ペプチド領域[Toole
et al. (1986) 前出]及びA2ドメイン[Lubin et al. (1994), 前出]の配列
と合わせて、ここで報告される配列は翻訳された生成物に対応するブタVIII
因子cDNAの決定を完成する。5’UTR領域、シグナルペプチド及びA1ド
メインcDNAを含む断片が、5’−RACE RT−PCRプロトコルを用い
てクローニングされた。ヒトC2配列に基づくプライマーは、A3,C1,及び
C2ドメインの5’半部のクローニングに導くRT−PCR産物を生成すること
に成功した。C2ドメインの3’半部に対応するcDNA及び3’UTRcDN
Aはクローニングすることが難しいことが分かった。残りのC2ドメインは、結
局、標的遺伝子ウオーキングPCR手順によってクローニングされた[Parker e
t al. (1991) 前出]。
【0228】 ここで報告される配列配列番号36は、C2ドメインの3’末端の近くのnt
7045を除けば曖昧さがなく、このnt7045は上述のようにA又はGであ
る。対応するコドンは、それぞれ、GAC(Asp)及びAAC(Asn)であ
る。ヒト及びマウスコドンは、それぞれ、GAC及びCAG(Gln)である。
これがポリモルフィズム(多形性)を表しているのか、それとも再現性があるP
CRのアーチファクトであるのか、分かっていない。GAC及びAACの両方の
コドンに対応するブタC2ドメイン置換を含む組み換えハイブリッドヒト/ブタ
B−ドメインレスVIII因子cDNAは安定して発現され、プロ凝固活性に何
も検出できる差異はない。このことは、これら二つのC2ドメインの変型には何
も機能的な差異はないということを示している。
【0229】 ブタVIII因子全長の予測されるアミノ酸配列配列番号37と、発表されて
いるヒト[Wood et al. (1984) 前出]及びマウス[Elder et al. (1993) 前出
]の配列との比較整列(アラインメントalignment)が図1A〜1Hに、翻訳後
の変更、タンパク質分解開裂、及び他の巨大分子による認識の部位と合わせて示
されている。整列させた配列の同一度が表VII に示されている。前に述べたよう
に、これらの種のBドメインは、AドメインやCドメインよりも開きが大きい。
これは、大きなサイズにも関わらずBドメインには知られている機能が何もない
という所見[Elder et al. (1993) 前出;Toole et al. (1986) 前出]と矛盾し
ない。本発明の結果は、ブタVIII因子のBドメインは活性にとって必要ない
ということを裏付けている。本明細書に示された配列データに基づいて、ブタB
ドメインのコドンの全部又は一部を削除されたブタVIII因子をコードするD
NAを発現させることによって、Bドメインの全部又は一部を削除されたブタV
III因子を合成することができる。A1ドメインAPC/IXa因子開裂ペプチ
ド(残基337〜372)及びL鎖活性化ペプチドに対応する配列にも大きな開
きがある(表VII )。この337〜372ペプチドを生成するための位置336
におけるトロンビン開裂部位は、マウスではこの残基がアルギニンではなくグル
タミンであるため明らかに失われている[Elder et al. (1993) 前出]。トロン
ビン開裂ペプチド(又はマウスVIII因子では、痕跡である可能性がある33
7〜372活性化ペプチド)の比較的急速な開きはフィブリノペプチドについて
以前に注意されている[Creighton, T.E. (1993) タンパク質:構造及び分子的
性質、W.H. Freeman, New York, pp. 105-138、の中で]。開裂した後のこれら
のペプチドが機能を欠いていることが急速な開きの理由かもしれないと言われて
きた。ヒトVIII因子におけるArg562は、VIII因子及びVIIIa
因子の不活性化の際の活性化されたタンパク質Cの重要な開裂部位であると提唱
されている[Fay, P.J. (1991) J. Biol. Chem. 266: 20139-20145]。この部位
はヒト、ブタ、及びマウスのVIII因子で保存されている。
【0230】 可能なN−結合グリコシル化部位(NXS/T、ここでXはプロリンでない)
が図1A〜1Hに見られる。保存されているN−結合グリコシル化部位は8つあ
る:1つはA1ドメインに、1つはA2ドメインに、4つはBドメインに、1つ
はA3ドメインに、そして1つはC1ドメインにある。A及びCドメインの19
のシステインは保存されているが、Bドメインのシステインでは開きがある。V
III因子における7つのジスルフィド結合のうち6つはV因子およびセルロプ
ラスミンの相同部位にあり、両方のCドメインのジスルフィド結合はV因子に見
られる[McMullen, B.A. (1995) Protein Sci. 4: 740-746]。ヒトVIII因
子は硫酸化チロシンを位置346、718、719、723、1664及び16
80に含んでいる[Pittman, D.D. et al. (1992) Biochemistry 31: 3315-3325
; Michnick, D.A. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:20095-20102]。これら
の残基はマウスVIII因子及びブタVIII因子で保存されるが(図1)、C
LUSTALWプログラムはヒトVIII因子におけるTyr346に対応する
マウスのチロシンを整列させることができなかった。
【0231】 マウス及びブタの血漿は、ヒト血友病A血漿の凝固欠陥を矯正することができ
、これはこれらの種のA及びCドメインにおける残基の保存レベルと合致する。
ブタVIII因子のプロ凝固活性はヒトVIII因子の活性よりも高い[Lollar
, P. et al. (1992) J. Biol. Chem. 267: 23652-23657]。ここで述べたように
発現され精製される組み換えブタVIII因子(Bドメインを削除したもの)も
また、ヒトVIII因子よりも大きな比(specific)プロ凝固活性を示し、血漿
から得られるブタVIII因子と同程度である。これは、活性A1/A2/A3
−C1−C2VIIIa因子ヘテロトリマーからのA2サブユニットの自発解離
率の減少によるものかもしれない。プロ凝固活性のこの差異が種の適応の一例と
しての機能の進化的変化を反映しているかどうか[Perutz, M.F. (1996) Adv. P
rotein Chem. 36: 213-244]はまだ分からない。今や翻訳される産物に対応する
ブタVIII因子cDNA配列は完全であるから、相同体スキャンニング突然変
異誘発[Cunningham, B.C., et al. (1989) Science 243: 1330-1336]が、ヒト
とブタのVIII因子の間に、後者の優れた活性の原因となっている構造的な差
異を同定する手段を提供するかもしれない。
【0232】 普通、ブタVIII因子は、VIII因子を移入された血友病患者で生ずる、
又は一般人において自己抗体として生ずる阻害的な抗体とあまり反応しない。こ
れが、阻害的な抗体を有する患者の管理でブタVIII因子濃縮物を用いる根拠
である[Hay and Lozier (1995) 前出]。たいていの阻害因子はA2ドメイン又
はC2ドメインにあるエピトープに向けられている[Fulcher, C.A. et al. (19
85) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7728-7732; Scandella, D. et al. (1988
) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 6152-6156; Scandella, D. et al. (1989)
Blood 74: 1618-1626]。さらに、A3又はC1ドメインにある重要性が不明の
エピトープが同定されている[Scandella et al. (1989) 前出;Scandella, D.
et al. (1989) Blood 82: 1767-1775; Nakai, H. et al. (1994) Blood 84: 224
a]。相同体走査突然変異誘発によってA2エピトープが残基484〜508に
マップされている[Healey et al. (1995) 前出]。この25残基のセグメント
では、同一配列の比率が比較的低い(16/25又は64%)。この領域は、そ
れに対する抗体が阻害的であるという事実に基づくと機能的に重要であると思わ
れるが、それが明らかに比較的急速に遺伝的にドリフトしてきたということは興
味深い。ブタA2ドメイン及びA3ドメインの比較整列は、A2エピトープがA
3ドメインの対応する領域と検出できるほどの相同性を有していないことを示し
ている。
【0233】 削除マッピングによって、ヒトVIII因子のC2阻害因子エピトープを残基
2248〜2312の内部に位置づけることが提案されている[Scandella, D.
et al. (1995) Blood 86: 1811-1819]。この65残基のセグメントではヒトと
ブタのVIII因子は83%同一である。しかし、C2エピトープを調べるため
のこの領域の相同体走査突然変異誘発から、C2エピトープの主要な決定因子は
予想外にもヒトのアミノ酸2181〜2243(配列番号2)及び図1Hに対応
する領域にあったことを明らかにした。
【0234】 ヒトVIII因子のC2ドメインのいろいろな部分がブタVIII因子の対応
する部分で置き換えられたヒト−ブタ・ハイブリッドVIII因子タンパク質が
、本明細書で述べた戦略を用いて作られた(実施例8)。いろいろなC2−ハイ
ブリッドVIII因子の合成は、配列番号37に与えられているブタC2領域を
コードするヌクレオチド配列を用いてハイブリッドをコードするDNAを構築す
ることによって遂行された。各ハイブリッドDNAは、形質移入された細胞で、
ハイブリッドVIII因子を成長培地から部分的に精製できるほどに発現された
。阻害因子がないときの活性が一段凝固分析によって測定された。
【0235】 5つのヒト阻害因子の組を用いて各ハイブリッドVIII因子をテストした。
抗VIII因子抗体を含む阻害血漿は、組み換えヒトC2ドメインがその阻害を
中和できることに基づいてヒトC2ドメインに向けられたものであることが以前
に示されていた。全てのテスト血漿において、阻害価はC2ドメイン又はL鎖に
よって79%より大きく中和されたが、ヒト組み換えA2ドメインによっては1
0%未満しか中和されなかった。さらに、C2−ハイブリッドVIII因子は、
C2ドメインと結合するマウスのモノクローナル抗体に対してテストされ、ヒト
C2阻害因子抗体と同様に、それはVIII因子のリン脂質及びフォン・ビレブ
ランド因子との結合を阻害した。
【0236】 抗体阻害価をC2−ハイブリッドVIII因子と比較することによって、ヒト
C2阻害因子エピトープの主要な決定因子は残基2181〜2243の領域(配
列番号2、図1Hも参照)であることが示された。OOOH末端から残基225
3までの領域に向けられた抗C2抗体は、5つの患者血清のうち4つで同定され
なかった。ヒトのアミノ酸残基番号2181〜2199及び2207〜2243
に対応するブタの配列を比較すると、二つの領域が抗体結合に寄与していること
は明らかであった。ヒトの残基2181〜2243に対応するブタのアミノ酸配
列は配列番号37において1982〜2044という番号になっている。198
2〜2044という番号のブタアミノ酸をコードするブタの配列は、配列番号3
5において5944〜6132という番号のヌクレオチドである。
【0237】 図1Hを参照すると、領域2181〜2243にはヒトとブタの配列に16の
アミノ酸の差異があることが分かる。差異は、残基2181、2182、218
8、2195〜2197、2199、2207、2216、2222、2224
〜2227、2234、2238及び2243に見られる。これらの番号の残基
の1以上でアミノ酸の置換を行って、ヒトの抗C2阻害因子抗体に反応しない修
飾されたヒトVIII因子を作ることができる。アラニン走査的突然変異誘発は
、前述のように、天然に見られる残基に対するアラニン置換を生成するのに便利
な方法である。本明細書で述べているように、アラニン以外のアミノ酸で置換す
ることもできる。個々のアミノ酸、特にヒト/ブタ又はヒト/マウスの間で同一
でないもの、又は抗体結合に最も寄与しそうなもの、のアラニン置換によって、
阻害的な抗体に対する反応性が低い修飾されたVIII因子を生み出すことがで
きる。
【0238】 さらに、残基2181〜2243という定められた領域に免疫抗原的である可
能性が低いアミノ酸を挿入するという戦略は免疫抗原性の低い修飾されたVII
I因子を生み出す。免疫抗原性の低いVIII因子は、血友病Aの患者の治療に
天然の配列のVIII因子よりも好ましいVIII因子サプリメントとして有用
である。免疫抗原性の低いVIII因子によって治療された患者は阻害的な抗体
を生じにくく、したがって、生涯にわたる治療の効果の低さに苦しむことも少な
くなりそうである。
【0239】 図1A〜1Hを合わせたものは、ヒト、ブタ、及びマウスのVIII因子アミ
ノ酸配列を整列比較したものになっている。図1Aは、シグナルペプチド領域を
比較している(ヒト、配列番号40;ブタ、配列番号37、アミノ酸1〜19;
マウス、配列番号6、アミノ酸1〜19)。図1A〜1Hにおけるアミノ酸は成
熟タンパク質の最初のアラニンをアミノ酸番号1として番号づけされており、シ
グナルペプチドのアミノ酸にはマイナスの番号が割り当てられているということ
に注意しよう。配列番号2におけるヒトのVIII因子配列も成熟タンパク質の
最初のアラニンをアミノ酸番号1として始まっている。マウスVIII因子(配
列番号6)及びブタVIII因子(配列番号37)のアミノ酸配列では、成熟タ
ンパク質の最初のアミノ酸(アラニン)はアミノ酸番号20である。図1A〜1
Hは、ヒト、マウス、及びブタのVIII因子の対応する配列を、最大のアミノ
酸同一度の領域が並ぶように整列させて示している。図1A〜1Hのアミノ酸番
号はヒトのVIII因子にしか適用されない。
【0240】 図1Bは、ヒト(配列番号2、アミノ酸1〜372)、ブタ(配列番号37、
アミノ酸20〜391)及びマウス(配列番号6、アミノ酸20〜391)のA
1ドメインのアミノ酸配列を与えている。図1Cは、ヒト(配列番号2、アミノ
酸373〜740)、ブタ(配列番号37、アミノ酸392〜759)及びマウ
ス(配列番号6、アミノ酸392〜759)のVIII因子A2ドメインのアミ
ノ酸配列を与えている。図1Dは、ヒト(配列番号2、アミノ酸741−164
8)、ブタ(配列番号37、アミノ酸760〜1449)、及びマウス(配列番
号6、アミノ酸760〜1640)のVIII因子Bドメインのアミノ酸配列を
与えている。
【0241】 図1Eは、ヒト、ブタ及びマウス(それぞれ、配列番号2、アミノ酸1649
〜1689;配列番号37、アミノ酸1450〜1490;配列番号6、アミノ
酸1641〜1678)のVIII因子のL鎖活性化ペプチドのアミノ酸配列を
比較している。図1Fは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のA3ドメイン
の配列比較を行っている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸1690〜2019
;配列番号37、アミノ酸1491〜1820;配列番号6、アミノ酸1679
〜2006)。図1Gは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のC1ドメイン
のアミノ酸配列を与えている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸2020〜21
72;配列番号37、アミノ酸1821〜1973;配列番号6、アミノ酸20
07〜2159)。図1Hは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子のC2ドメ
インの配列データを与えている(それぞれ、配列番号2、アミノ酸2173〜2
332;配列番号37、アミノ酸1974〜2133;配列番号6、アミノ酸2
160〜2319)。
【0242】 ダイアモンドはチロシン硫酸化部位、IXa因子、リン脂質及びタンパク質Cに
関して提案されている結合部位は二重に下線が引かれており、抗A2及び抗C2
阻害的抗体の結合に関わる領域はイタリックになっている。星印は保存されるア
ミノ酸配列を強調している。配列番号36(ブタVIII因子cDNA)及び配
列番号37(演繹されたブタVIII因子のアミノ酸配列)も参照。ヒトの番号
づけシステムを基準として用いている(Wood et al. (1984) 前出)。A1、A
2及びBドメインは、位置372と740のトロンビン開裂部位及び1648に
おける未知のプロテアーゼ開裂部位によって、それぞれ、残基1〜372,37
3〜740及び741〜1648と定義される[Eaton, D.L. et al. (1986) Bi
ochenistry 25: 8343-8347]。A3、C1及びC2ドメインは、それぞれ、残基
1690〜2019、2020〜2172及び2173〜2332と定義される
[Vehar et al. (1984) 前出]。トロンビン(IIa因子)、IXa因子、Xa因子
及びAPCの開裂部位[Fay et al. (1991) 前出;Eaton, D. et al. (1986) Bi
ochemistry 25: 505-512; Lamphear, B.J. et al. (1992) Blood 80: 3120-3128 ]は反応性のアルギニンの上に酵素ネームを付けて示している。酸性ペプチド
はVIII因子L鎖からトロンビン又はXa因子によって位置1689で開裂さ
れる。IXa因子[Fay,P.J. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269: 20522-20527;
Lenting, P.J. et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:7150-7155]、リン脂質[Fo
ster, P.A. et al. (1990) Blood 75: 1999-2004]及びタンパク質C[Walker,
F.J. et al. (1990) J. Biol. Chem. 265: 1484-1489)]に関して提案されてい
る結合部位は二重の下線が付けられている。抗A2の結合に関わる領域[Lubin
et al. (1994) 前出; Healey et al. (1995) 前出];及び抗C2阻害的抗体に
ついて以前に提案された領域はイタリックになっている。ここで同定されたC2
阻害因子エピトープ(ヒト・アミノ酸2181−2243)は図1Hに一本の下
線で示されている。チロシン硫酸化部位[Pittman et al. (1992) 前出; Michnj
ck et al. (1994) 前出]は ◆で示されている。
【0243】 Bドメインを欠くVIII因子タンパク質をコードするヌクレオチド配列は配
列番号38で与えられ、対応する演繹されたアミノ酸配列は配列番号39で与え
られている。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1Aは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1B】 図1Bは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1C】 図1Cは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1D】 図1Dは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1E】 図1Eは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1F】 図1Fは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1G】 図1Gは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【図1H】 図1Hは、ヒト、ブタ及びマウスのVIII因子酸配列の整列させた配列比較
を提供している。
【手続補正書】
【提出日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1D(続き)】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【手続補正書】
【提出日】平成14年7月30日(2002.7.30)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1D
【補正方法】変更
【補正の内容】
【図1D】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1D(続き)
【補正方法】変更
【補正の内容】
【図1D(続き)】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1E
【補正方法】変更
【補正の内容】
【図1E】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1F
【補正方法】変更
【補正の内容】
【図1F】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 19/00 C12N 15/00 ZNAA C12N 15/01 A61K 37/48 C12P 21/02 C12N 15/00 X Fターム(参考) 4B024 AA01 BA80 CA04 CA07 DA02 EA04 FA01 GA11 GA25 HA01 HA03 4B064 AG01 CA10 CA19 CC24 DA01 4C084 AA06 AA07 AA13 CA53 CA56 CA59 DC15 MA66 NA06 NA14 ZA531 4H045 AA10 AA20 AA30 BA10 BA41 CA40 DA66 EA24 FA72 FA74 GA26

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列番号2の位置484〜508の1以上におけるアミノ酸
    置換を含む修飾されたヒトVIII因子であって、前記置換は天然のアミノ酸に
    対して免疫反応性を減少させるアミノ酸を挿入するものであり、前記修飾された
    VIII因子がプロ凝固活性を有することを特徴とする修飾されたVIII因子
  2. 【請求項2】 該修飾されたVIII因子は修飾されないVIII因子に比
    べて阻害的抗体に対する反応性が減少していることを特徴とする請求項1に記載
    の修飾されたVIII因子。
  3. 【請求項3】 該アミノ酸の置換が、490、493、496、499、5
    00、502、503、505及び507から成る群から選択される1以上の位
    置でなされることを特徴とする請求項1に記載の修飾されたVIII因子。
  4. 【請求項4】 該アミノ酸の置換が、486、491、494、498、5
    04及び506から成る群から選択される1以上の位置でなされることを特徴と
    する請求項1に記載の修飾されたVIII因子。
  5. 【請求項5】 該アミノ酸の置換が位置497でなされることを特徴とする
    請求項1に記載の修飾されたVIII因子。
  6. 【請求項6】 該アミノ酸の置換が位置490でなされることを特徴とする
    請求項1に記載の修飾されたVIII因子。
  7. 【請求項7】 修飾されたヒトVIII因子A2ドメインをコードするDN
    Aであって、前記DNAは配列番号2の位置484〜508から選ばれる1以上
    のアミノ酸位置でコード変化を生ずる1以上のヌクレオチド置換を有し、前記変
    化は選ばれた位置において免疫反応性を減少させるアミノ酸をコードすることを
    特徴とするDNA。
  8. 【請求項8】 該選ばれるアミノ酸位置が490、493、496、499
    、500、502、503、505及び507から成る群から選択されることを
    特徴とする請求項7に記載のDNA。
  9. 【請求項9】 該選ばれるアミノ酸位置が486、491、494、498
    、504及び506から成る群から選択されることを特徴とする請求項7に記載
    のDNA。
  10. 【請求項10】 該選ばれるアミノ酸位置がアミノ酸位置497であること
    を特徴とする請求項7に記載のDNA。
  11. 【請求項11】 該選ばれるアミノ酸位置がアミノ酸位置490であること
    を特徴とする請求項7に記載のDNA。
  12. 【請求項12】 ヒト又はヒト/哺乳類ハイブリッドのVIII因子をコー
    ドするDNAの発現産物であって、前記DNAは修飾されたA2ドメインをコー
    ドするDNAを含み、該DNAは配列番号2の位置484〜508から選ばれる
    1以上のアミノ酸位置でコード変化を生ずる1以上のヌクレオチド置換を有し、前
    記変化は選ばれた位置において免疫反応性を減少させるアミノ酸をコードするこ
    とを特徴とするDNAの発現産物。
  13. 【請求項13】 該修飾されたA2ドメインをコードするDNAは、490
    、493、496、499、500、502、503、505及び507から成
    る群から選択される1以上のアミノ酸位置におけるアミノ酸置換をコードしてい
    ることを特徴とする請求項12に記載の発現産物。
  14. 【請求項14】 該修飾されたA2ドメインをコードするDNAは、486
    、491、494、498、504及び506から成る群から選択される1以上
    のアミノ酸位置におけるアミノ酸置換をコードしていることを特徴とする請求項
    12に記載の発現物。
  15. 【請求項15】 該修飾されたA2ドメインをコードするDNAは、位置4
    97におけるアミノ酸置換をコードしていることを特徴とする請求項12に記載
    の発現産物。
  16. 【請求項16】 該修飾されたA2ドメインをコードするDNAは、位置4
    90におけるアミノ酸置換をコードしていることを特徴とする請求項12に記載
    の発現産物。
  17. 【請求項17】 修飾された哺乳類VIII因子A2ドメインを作成する方
    法であって、 ヒトVIII因子の484〜508に対応する位置でアミノ酸をコードする1
    以上のコドンで該ドメインをコードするDNAを突然変異させるステップ、それ
    によってアミノ酸をコードする1以上の突然変異したコドンが対応する天然に生
    ずるコドンに対して置換される、及び 該突然変異したコドンを含むDNAを、独立に又はVIII因子の別のドメイ
    ンをコードするDNAとの隣接する翻訳可能な配列として、宿主細胞で発現させ
    て修飾されたVIII因子A2ドメインを作成するステップ、 を含む方法。
  18. 【請求項18】 該突然変異させるDNAがヒトのDNAであることを特徴
    とする請求項17に記載の方法。
  19. 【請求項19】 該突然変異させるDNAがブタのDNAであることを特徴
    とする請求項17に記載の方法。
  20. 【請求項20】 該突然変異させるDNAがマウスのDNAであることを特
    徴とする請求項17に記載の方法。
  21. 【請求項21】 突然変異したコドンが免疫反応性を減少させるアミノ酸を
    コードすることを特徴とする請求項17に記載の方法。
  22. 【請求項22】 突然変異したコドンが490、493、496、499、
    500、502、503、505及び507から成る群から選択される位置にお
    けるアミノ酸をコードすることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  23. 【請求項23】 突然変異したコドンが486、491、494、498、
    504及び506から成る群から選択される位置におけるアミノ酸をコードする
    ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
  24. 【請求項24】 突然変異したコドンが位置497におけるアミノ酸をコー
    ドすることを特徴とする請求項21に記載の方法。
  25. 【請求項25】 突然変異したコドンが位置490におけるアミノ酸をコー
    ドすることを特徴とする請求項21に記載の方法。
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