JP3962670B2 - 旋動式破砕機の油圧回路およびその油圧回路の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋動式破砕機の油圧回路およびその油圧回路の制御方法の改善に関し、より詳しくは、鉄片等の異物を噛込みや、破砕室内の原料密度が上昇してパッキング状態になった際に、破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダ内に発生する異常圧を迅速に開放することができ、しかも油圧シリンダ内の作動油の圧力を迅速に所定圧力に戻すことができる旋動式破砕機の油圧回路およびその油圧回路の制御方法の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
岩石や鉱石等を破砕する破砕機の中に、破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダを備えた、ハイドロコーンクラッシャと呼ばれる旋動式破砕機がある。この旋動式破砕機の主軸を支持する油圧シリンダには油圧回路の主油圧ラインから作動油が供給されるが、作動油の圧力は岩石や鉱石等の破砕能力を最大限に発揮し得るよう制御される。そして、岩石や鉱石等の破砕中に、異物の噛込みにより破砕用コーン部の主軸に過大な負荷が作用して油圧シリンダ内の作動油の圧力が異常上昇すると、油圧シリンダ、油圧回路の配管や機器類の不具合、ならびに主軸に作用するスラスト力を支持するすべり軸受の油膜切れを起こす等の不具合が発生する。そのため、主油圧ラインにはアキュムレータが設けられており、油圧シリンダ内に発生した異常圧をアキュムレータにより吸収するように構成されている。
【0003】
主軸を支持する油圧シリンダに作動油を供給する主油圧ラインにアキュムレータが設けられてなる旋動式破砕機としては、クラッシングヘッド(破砕用コーン部の相当する)を駆動するメインモータの負荷電流を検出してコントローラに入力する。そして、入力された負荷電流が予め設定された設定電流値の範囲外になったときに、コントローラを介して油圧シリンダを上昇または下降させて出口隙間を変化させて、負荷率をほぼ一定にすることにより、破砕製品の粒度変化を少なくするようにしたものがある。
【0004】
より詳しくは、一定圧力まで昇圧させた油圧によるピストンの押上げ力と、岩石や鉱石等の破砕時に生じる破砕力のスラスト方向成分とを釣り合わせて破砕するものである。ところが、岩石や鉱石等の破砕中に鉄片等の異物を噛み込んだり、過粉砕により破砕室内の破砕物の密度が想定以上に大きくなったりすると、主軸に過大な破砕力に起因する負荷が作用し、旋動式破砕機全体に過大な荷重がかかる。このような過大な荷重がかかると、主軸のスラスト力を受けるすべり軸受の油膜の形成を困難にするばかりでなく、旋動式破砕機の損傷の原因となる。
そのため、過大な破砕力が発生した場合には、油圧回路内にアキュムレータとリリーフ弁を設けることにより、油圧回路の油圧配管内の衝撃を吸収したり、油圧を開放したりすることにより、旋動式破砕機本体を保護するようにしたものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、主軸を支持する油圧シリンダに作動油を供給する主油圧ラインにアキュムレータが設けられてなる旋動式破砕機であって、破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に制御するようにしたものがある。即ち、油圧シリンダと電磁式の開閉弁の間に設けた圧力センサにより、この油圧シリンダ内の作動油の圧力を監視し、油圧シリンダ内の作動油の圧力が設定圧力になるように主軸の昇降運転を行って破砕する。詳しくは、作動油の圧力低下時には主軸を上昇させて破砕製品の出口を狭くして負荷を大きくする一方、作動油の圧力上昇時には主軸を下降させて排出口を広くして負荷を下げるようにしたものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−272375号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】
特公昭56−36981号公報(第3頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1または2に記載されている旋動式破砕機では、油圧シリンダ内にアキュムレータのブラダガス圧を上回る過大な油圧が発生すると、アキュムレータに作動油が流入し、主油圧ライン内圧力と、ブラダガス圧力がバランスするまで、主油圧ライン内の作動油の圧力が上昇する。また、急激に油圧シリンダ内の圧力が上昇した場合には、アキュムレータに作動油が流入し、作動油の圧力とブラダガス圧とがバランスするまでに時間がかかり(タイムラグがある)、バランスするまでの間中、油圧シリンダ内の圧力が上昇し続ける。そのため、旋動式破砕機全体に過負荷状態が継続し、主軸の下端面を支えるすべり軸受の油膜形成が妨げられるので、このすべり軸受が焼付くという問題が生じる。さらに、発生荷重の程度が極度に高い場合、過負荷状態での発生応力が設計強度を超え、旋動式破砕機全体が損傷するという問題が発生する。
【0008】
また、作動油の圧力をバランスさせる圧力は、アキュムレータの封入ガス圧により決定される。従って、温度差によるガス圧の変化や、経時的なガス圧の低下によりバランスする圧力が変化し、これにより主軸支持力が変化するため、旋動式破砕機の破砕性能が変化する。さらに、主油圧ラインの管径を大径にすることにより、アキュムレータの応答性がよくなるため、上記タイムラグに起因して発生する問題が多少改善される。しかしながら、主油圧ライン中の作動油量が多くなるため、作動油の体積弾性率の影響による油圧シリンダ内容積の変化により、ピストンが変動して不安定になり、破砕により発生する破砕力を確実に支持できなくなる。そのため、破砕室内の岩石や鉱石の密度を一定に保持することができず、破砕製品の粒度が安定しない。つまり、旋動式破砕機の破砕性能が安定せず、破砕製品の品質が低下するという問題が生じる。
【0009】
さらに、上記特許文献2に記載されている旋動式破砕機では、破砕室内の原料密度が上昇して、油圧シリンダ内の作動油の圧力が急激に変化した場合、油圧ポンプの引き込みによる主軸の下降速度が遅いため、油圧シリンダ内の作動油の圧力上昇を回避することができず、破砕室内がパッキング状態になる。このような状態になると、原料を噛込んだまま旋動式破砕機が停止することとなり、安定した連続操業ができないという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、主軸を支持する油圧シリンダ内に発生する異常圧を迅速に開放し、かつ油圧シリンダ内の作動油の圧力を迅速に所定圧に戻して安定操業を継続することができ、しかも破砕製品の品質の確保を可能ならしめる旋動式破砕機の油圧回路およびその油圧回路の制御方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って、上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る旋動式破砕機の油圧回路が採用した手段の特徴とするところは、破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダに作動油を供給すると共に、油圧シリンダ内の作動油の圧力を一定に保持する旋動式破砕機の油圧回路において、前記油圧シリンダにアキュムレータを介さずに連通し、油圧ポンプから吐出される作動油を前記油圧シリンダに供給する主油圧ラインと、パイロット圧を逃がすことにより前記油圧シリンダ内の作動油をリリーフさせるパイロットリリーフ弁と、このパイロットリリーフ弁にパイロット圧を供給するパイロット圧供給ラインと、このパイロット圧供給ラインのパイロット圧を逃がすパイロット圧開放ラインを備えたところにある。
【0012】
本発明の請求項2に係る旋動式破砕機の油圧回路の制御方法が採用した手段の特徴とするところは、破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダに主油圧ラインから作動油を供給すると共に、前記油圧シリンダ内の作動油の圧力と油量とを制御する旋動式破砕機の油圧回路の制御方法において、前記主油圧ライン内の作動油の圧力を圧力センサで検出し、この圧力センサで検出される圧力が所定範囲内になるように、前記主油圧ラインからアキュムレータを介さずに前記油圧シリンダに供給する作動油の圧力を制御し、前記圧力センサで検出される作動油の圧力が予め定めた所定圧力を超えたときには、パイロットリリーフ弁に供給するパイロット圧を逃がして前記油圧シリンダ内の作動油を排出させる一方、作動油の排出により異常が回避されたときには、前記パイロット圧を所定圧に戻し、前記油圧シリンダ内の作動油の圧力を自動的に所定圧力に復帰させるところにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の油圧回路の制御方法を実施する実施の形態1に係る旋動式破砕機の油圧回路を、添付図面を参照しながら説明する。図1は旋動式破砕機の油圧回路図であり、図2はパイロットリリーフ弁の断面図であり、図3は旋動式破砕機の運転状況説明図である。
【0014】
図1に示す符号10は、図示しない破砕用コーン部を備えてなる、旋動する旋動式破砕機の主軸20を上下位置調整自在に支持する、後述する油圧シリンダである。この油圧シリンダ10は、前記主軸20を支持するピストン11により仕切られた圧力室12を備えており、この圧力室12には、この圧力室12内の作動油の圧力を一定に保持する、後述する旋動式破砕機の油圧回路1から作動油が供給されるように構成されている。
【0015】
前記油圧回路1は、油圧シリンダ10の圧力室12にアキュムレータを介さずに連通し、油圧ポンプ2aから吐出される作動油を、電磁式の第1開閉弁2bを介して供給する主油圧ライン2を備えている。この主油圧ライン2内の作動油の圧力は、この主油圧ライン2の第1開閉弁2bと油圧シリンダ10との間から分岐した分岐管に取付けられてなる第1目視圧力計2c、および第1圧力センサ2dにより監視されている。そして、この第1圧力センサ2dにより検出される作動油の圧力は、後述するシーケンサ30に入力されるように構成されている。
なお、前記第1圧力センサ2dは主油圧ライン2内の作動油の圧力を検出するように構成されているが、油圧シリンダ10の圧力室12内の作動油の圧力を検出し得るように、油圧シリンダ10の油圧管を接続し、この油圧管の先端に前記第1圧力センサ2dを接続してもよい。
【0016】
前記油圧シリンダ10の底部を塞ぐシリンダカバー13には、圧力室12内の作動油をリリーフさせる、後述する構成になるパイロットリリーフ弁3が設けられている。このパイロットリリーフ弁3には、前記主油圧ライン2の油圧ポンプ2aと第1開閉弁2bとの間から分岐したパイロット圧供給ライン4が連通している。このパイロット圧供給ライン4には、電磁式の4ポート、3位置の切換弁4bが介装されており、この切換弁4bが中立位置にあるときには、前記油圧ポンプ2aから吐出された作動油が、オイルストレーナ7aが介装されてなる作動油戻しライン6から作動油タンク8に戻されるように構成されている。
【0017】
なお、下側から前記シリンダカバー13を油密可能に貫通し、ピストン11に設けられてなる穴に嵌挿されてなるものはストローク検出器9であって、このストローク検出器9により検出されるピストン11の移動ストローク(ピストン位置に相当する。)もシーケンサ30に入力されるように構成されている。
つまり、前記ストローク検出器9からの移動ストローク検出値が最高設定値になると主軸20が下降される一方、下降して最低設定値になると主軸20が上昇されるものである。
【0018】
前記切換弁4bの切換(L側のソレノイドを励磁)により前記パイロットリリーフ弁3に供給されるパイロット圧は、パイロット圧供給ライン4の切換弁4bとパイロットリリーフ弁3との間から分岐した分岐管に取付けられてなる第2目視圧力計4c、および第2圧力センサ4dにより監視されている。そして、この第2圧力センサ4dにより検出されるパイロット圧は、前記第1圧力センサ2dにより検出される作動油の圧力の場合と同様に、シーケンサ30に入力されるように構成されている。さらに、このパイロット圧供給ライン4の切換弁4bとパイロットリリーフ弁3との間から分岐した分岐管には、パイロット圧を補償する補償用のアキュムレータ(容量は1リットルである)4eが取付けられている。前記切換弁4bのR側のソレノイドが励磁されるのは、主油圧ライン2より油圧シリンダ10に作動油を供給するときである。
【0019】
なお、前記パイロット圧供給ライン4の作動油戻しライン6への接続側に介装されてなるものは、作動油の圧力を調圧するリリーフ弁3gである。図1からよく理解されるように、このリリーフ弁3gによりパイロット圧供給ライン4に供給されるパイロット圧と、前記主油圧ライン2に供給される作動油の圧力とが調圧される。
【0020】
前記パイロット圧供給ライン4の切換弁4bの出口付近から、電磁式の第2開閉弁5aが介装されたパイロット圧開放ライン5が分岐している。そして、前記第2開閉弁5aの開弁により開放されたパイロット圧はオイルストレーナ7aが介装されてなる作動油戻しライン6から作動油タンク8に戻されるように構成されている。また、前記第2開閉弁5aの開弁によるパイロット圧の開放により、パイロットリリーフ弁3からリリーフする前記圧力室12内の作動油は、リリーフ油流出ライン7、前記作動油戻しライン6を介して作動油タンク8に戻されるように構成されている。
【0021】
前記シーケンサ30は、第1圧力センサ2dによって検出される主油圧ライン2内の作動油の圧力、つまり油圧シリンダ10の圧力室12内の作動油の圧力が、鉄片等の噛込みにより予め設定された設定圧力値を超えると、パイロット圧開放ライン5に介装されてなる第2開閉弁5aのソレノイドを励磁して、この第2開閉弁5aを開弁させる働きをするものである。なお、シーケンサ30が接続されてなるものは、図示しない制御盤に取り込んだ信号の入力状態(信号のON,OFF状態や温度、圧力の入力状態)を表示させたり、旋動式破砕機の運転操作を行ったりするためのタッチパネル31である。
【0022】
前記パイロットリリーフ弁3は、図2に示すように、下側に末広がりのシート座を有するシート金具3aと、このシート金具3aのシート座の方向にコイルばね3cにより付勢されてなるコニカルスプール3bを備えている。このパイロットリリーフ弁3によれば、パイロット圧ポート3dに供給されるパイロット圧によるコニカルスプール3bの押上げ力が、作動油流出ポート3fから作用する圧力室12内の作動油の圧力による押下げ力より大きいときにはコニカルスプール3bが下降しないので閉弁状態が継続される。一方、パイロット圧がパイロット圧開放ライン5から開放されると、コニカルスプール3bの押上げ力が、作動油流出ポート3fから作用する圧力室12内の作動油の圧力による押下げ力より小さくなるため、コニカルスプール3bが下降して、圧力室12内の作動油がリリーフする。リリーフによりタンクポート3eに流出する圧力室12内の作動油はリリーフ油流出ライン7から作動油タンク8に戻されることとなる。
【0023】
以下、上記構成になる油圧回路1の作用態様を説明する。先ず、運転制御の種類を挙げると、主軸上昇運転制御、主軸下降運転制御、通常運転制御、パイロット圧増圧制御、およびパイロット減圧制御(パイロットリリーフ弁からリリーフさせる)の5種類がある。そして、各制御における油圧ポンプ2aの運転、第1開閉弁2b、切換弁4b、第2開閉弁5a、およびパイロットリリーフ弁3の開閉は下記表1に示すように行われる。
【表1】
パイロットリリーフ弁3が閉弁された状態で、旋動式破砕機の通常運転制御、主軸上昇、下降運転制御(引用文献2に記載されているような主軸の上昇、下降の繰返し運転も含まれる。)が行われるものである。なお、上記表1において、ONは弁のソレノイドを励磁(開弁)することを示し、またOFFは弁のソレノイドの励磁を停止(閉弁)することを示すものである。
【0024】
ここで、上記表1に示す通常運転中に、鉄片等の異物の噛込み等により油圧シリンダ10内に異常圧が発生した場合における制御を具体的に説明する。
(1)主油圧ライン2内の作動油の圧力を検出する第1圧力センサ2dにより設定圧力値以上の圧力が検出された。
(2)パイロット圧開放ライン5に介装されている第2開閉弁5aのソレノイドを励磁して、第2開閉弁5aを開弁する。
(3)パイロット圧の開放によるパイロットリリーフ弁3の開弁により、油圧シリンダ10内の作動油がリリーフするので、油圧シリンダ10内の作動油の圧力が低下する。これにより、主軸20が下降し、排出口が広くなるため、圧力上昇の原因となった鉄片等の異物等が排出される。
【0025】
(4)主油圧ライン2内の作動油の圧力を検出する第1圧力センサ2dにより設定圧力値以下の圧力が検出された。
(5)パイロット圧開放ライン5に介装されている第2開閉弁5aのソレノイドの励磁を停止して、第2開閉弁5aを閉弁する。
(6)油圧ポンプ2aを正回転させる。
(7)パイロット圧供給ライン4に介装されている切換弁4bのL側のソレノイドを励磁し、パイロット圧を通常の破砕運転時に生じる油圧シリンダ10内の作動油の圧力値(運転状態に応じて予め決定されている)以上に上昇させる。
(8)切換弁4bのL側のソレノイドの励磁を停止し、パイロット圧供給ライン4を閉塞する。この場合、パイロットリリーフ弁3からの作動油の自然漏洩があるが、パイロット圧は、アキュムレータ4eの働きにより、例えば10分程度必要以上の圧力を維持し続けることができる。
(9)主油圧ライン2に介装されている第1開閉弁2bのソレノイドを励磁して、油圧シリンダ10に作動油を供給し、主軸20を上昇させる。
(10)油圧シリンダ10内の作動油の圧力が一定の圧力に到達したことが第1圧力センサ2dにより検出されると、旋動式破砕機は通常運転状態に復帰したとして、第1開閉弁2bのソレノイドの励磁、ならび油圧ポンプ2aの運転を停止する。
【0026】
以上では、上記表1に示す旋動式破砕機の通常運転中に、鉄片等の異物の噛込みにより油圧シリンダ10内に異常圧が発生した場合の具体例を説明したが、このような通常運転だけに限らない。例えば、図3に示すように、主軸の昇降を繰り返す運転の場合にもほぼ同様の油圧制御が行われるものである。なお、図3に示す旋動式破砕機の運転は、旋動式破砕機が駆動され、油圧ポンプを駆動する電動機がタイマーにより正回転、逆回転の繰り返し運転、つまり主軸の上昇、下降を行って、原料供給装置から供給される原料を破砕する場合である。
【0027】
即ち、本実施の形態1に係る油圧回路1によれば、旋動式破砕機の運転中において、鉄片等の噛込みによりコーン部を介して主軸20に過大な押下げ力が作用し、油圧シリンダ10に過大な圧力上昇が生じると、第1圧力センサ2dから圧力検出値が入力される前記シーケンサ30によりパイロット圧開放ライン5に介装されてなる第2開閉弁5aのソレノイドが励磁されて、この第2開閉弁5aが開弁される。これにより、パイロット圧が作動油タンク8に逃げ、パイロットリリーフ弁3のコニカルスプール3bの押上げ力が小さくなって開弁するため、作動油がリリーフして油圧シリンダ10内の内圧が低下するから、旋動式破砕機に過大な負荷が作用するのを回避することができる。また、主軸20が下降して排出口の幅が広くなるため、過大な負荷発生の原因になった鉄片等の異物が破砕室から容易に排出される。
【0028】
そして、第1圧力センサ2dにより設定圧力値以下の圧力が検出されると、切換弁4bのL側のソレノイドの励磁によりパイロット圧上昇されると共に、第1開閉弁2bのソレノイドが励磁されて油圧ポンプ2aから作動油の圧力が所定の圧力になるまで油圧シリンダ10に作動油が供給され、旋動式破砕機は、鉄片等の異物噛込み前の正常な運転状態に復帰することとなる。
【0029】
本実施の形態1に係る油圧回路1によれば、油圧シリンダ10内の作動油をパイロットリリーフ弁3からリリーフさせてこの油圧シリンダ10内の異常圧を低下させるものであるから、上記特許文献1または2に記載されている旋動式破砕機のように主油圧ライン2にアキュムレータを設ける必要がない。従って、上記特許文献1または2に記載されている発明よりも遥かに迅速に油圧シリンダ内の異常圧を低下させることができるから、主軸20の下端面を支えるすべり軸受の油膜形成が妨げられるような恐れがなく、このすべり軸受が焼付くというような問題が生じる恐れがない。さらに、発生荷重の程度が極度に高い場合であっても、設計強度を超えるような過負荷状態が直ちに解消されるから、旋動式破砕機全体が損傷するというような恐れもない。
【0030】
また、上記のとおり、主油圧ライン2にアキュムレータが設けられておらず、温度差や経時変化による油圧シリンダ10内の作動油の圧力の変化が少ないから、主軸支持力が変化することが少なく、旋動式破砕機の破砕性能が変化するようなことがない。さらに、主油圧ライン2の管径を大径にする必要がなく、主油圧ライン2中の作動油量を少なくすることができるから、ピストン11が不安定になるようなことがなく、破砕により発生する破砕力を確実に支持することができる。従って、破砕製品の粒度が安定し、また破砕室内の岩石や鉱石の密度を一定に保持することができるから、旋動式破砕機の破砕性能が低下することがなく、破砕製品の品質を一定レベルに維持することができる。
【0031】
また、本実施の形態1に係る油圧回路1によれば、破砕室内の原料密度が上昇して、油圧シリンダ10内の作動油の圧力が急激に変化した場合、上記特許文献2に記載されている旋動式破砕機の場合のように、油圧ポンプの引き込みにより主軸を下降させるのではなく、油圧シリンダ10内の作動油をパイロットリリーフ弁3からリリーフさせてこの油圧シリンダ10内の異常圧を迅速に低下させるものである。従って、上記特許文献2に記載の旋動式破砕機と異なり、油圧シリンダ10内の作動油の圧力が上昇せず、破砕室内がパッキング状態にならないから、旋動式破砕機が原料を噛込んだまま停止するようなことがなく、安定した連続操業を行うことができる。
【0032】
次に、本発明の制御方法を実施する実施の形態2に係る油圧回路を、油圧回路図の図4を参照しながら説明する。但し、本実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、パイロット圧供給ラインのパイロット圧供給手段の相違にあり、それ以外は全く同構成であるから、同一のものに同一符号を付して、その相違する点について説明する。
【0033】
本実施の形態2の油圧回路1は、図4と上記実施の形態1に係る図1との比較において良く理解されるように、油圧ポンプ4aによりパイロット圧供給ライン4にパイロット圧を供給するように構成したものである。
【0034】
従って、本実施の形態2に係る油圧回路1によれば、上記実施の形態1の場合と同様の制御を行うことができるので同等の効果がある。但し、主油圧ライン2とパイロット圧供給ライン4とには個別の油圧ポンプを備えている関係上、一つの油圧ポンプで主油圧ライン2とパイロット圧供給ライン4とに作動油を供給する上記実施の形態1の場合よりも制御が簡単である。また、油圧シリンダ10内の作動油の圧力低下後の昇圧を、パイロット圧の昇圧と、油圧シリンダ10への作動油の供給とを平行して行うことができる。従って、緊急リリーフ後の復帰速度を速めることができ、性能低下時間が短縮されるから、破砕製品の生産効率が向上するという効果が得られる。
【0035】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1に係る旋動式破砕機の油圧回路、および請求項2に係る旋動式破砕機の油圧回路の制御方法によれば、油圧シリンダ内の作動油をパイロットリリーフ弁からリリーフさせてこの油圧シリンダ内の異常圧を低下させるのであるから、上記特許文献1または2に記載されている旋動式破砕機のように主油圧ラインにアキュムレータを設ける必要がなく、上記特許文献1または2に記載されている発明よりも遥かに迅速に油圧シリンダ内の異常圧を低下させることができる。従って、主軸の下端面を支えるすべり軸受の油膜形成が妨げられるような恐れがなく、このすべり軸受が焼付くというような問題が生じる恐れがない。さらに、発生荷重の程度が極度に高い場合であっても、設計強度を超えるような過負荷状態が直ちに解消されるから、旋動式破砕機全体が損傷するというような恐れもない。
【0036】
また、本発明の請求項1に係る旋動式破砕機の油圧回路および、請求項2に係る旋動式破砕機の油圧回路の制御方法によれば、上記のとおり、主油圧ラインにアキュムレータが設けられておらず、温度差や経時変化による油圧シリンダ内の作動油の圧力の変化が少ないから、主軸支持力の変化による旋動式破砕機の破砕性能の変化が少なくなる。さらに、応答性確保のために主油圧ラインの管径を大径にする必要がなく、主油圧ライン中の作動油量を少なく保てることにより、ピストンが不安定になるようなことがなく、破砕により発生する破砕力を確実に支持することができる。従って、破砕室内の岩石や鉱石の密度を一定に保持することができるようになり、破砕製品の粒度が安定する。つまり、旋動式破砕機の破砕性能が安定することにより、破砕製品の品質を一定レベルに維持することができる。
【0037】
また、本発明の請求項1に係る旋動式破砕機の油圧回路、および請求項2に係る旋動式破砕機の油圧回路の制御方法によれば、破砕室内の原料密度が上昇して、油圧シリンダ内の作動油の圧力が急激に変化した場合には、上記特許文献2に記載されている旋動式破砕機の場合のように、油圧ポンプの引き込みにより主軸を下降させるのではなく、油圧シリンダ内の作動油をパイロットリリーフ弁からリリーフさせて、この油圧シリンダ内の異常圧を迅速に低下させるのである。
従って、上記特許文献2に記載の旋動式破砕機と異なり、油圧シリンダ内の作動油の圧力が上昇せず、破砕室内がパッキング状態にならないから、旋動式破砕機が原料を噛込んだまま停止するようなことがなく、安定した連続操業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る旋動式破砕機の油圧回路図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係り、パイロットリリーフ弁の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係り、旋動式破砕機の運転状況説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る旋動式破砕機の運転状況説明図である。
【符号の説明】
1…油圧回路
2…主油圧ライン、2a…油圧ポンプ、2b…第1開閉弁、2c…第1目視圧力計、2d…第1圧力センサ
3…パイロットリリーフ弁、3a…シート金具、3b…コニカルスプール、3c…コイルばね、3d…パイロットポート、3e…タンクポート、3f…作動油流出ポート、3g…リリーフ弁(圧力調整用)
4…パイロット圧供給ライン、4a…油圧ポンプ、4b…切換弁、4c…第2目視圧力計、4d…第2圧力センサ、4e…アキュムレータ
5…パイロット圧開放ライン、5a…第2開閉弁
6…作動油戻しライン、6a…オイルストレーナ
7…リリーフ油流出ライン
8…作動油タンク
9…ストローク検出器
10…油圧シリンダ、11…ピストン、12…圧力室、13…シリンダカバー
20…主軸
30…シーケンサ
31…タッチパネル
Claims (2)
- 破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダに作動油を供給すると共に、油圧シリンダ内の作動油の圧力を一定に保持する旋動式破砕機の油圧回路において、前記油圧シリンダにアキュムレータを介さずに連通し、油圧ポンプから吐出される作動油を前記油圧シリンダに供給する主油圧ラインと、パイロット圧を逃がすことにより前記油圧シリンダ内の作動油をリリーフさせるパイロットリリーフ弁と、このパイロットリリーフ弁にパイロット圧を供給するパイロット圧供給ラインと、このパイロット圧供給ラインのパイロット圧を逃がすパイロット圧開放ラインを備えたことを特徴とする旋動式破砕機の油圧回路。
- 破砕用コーン部を備えた旋動する主軸を上下位置調整自在に支持する油圧シリンダに主油圧ラインから作動油を供給すると共に、前記油圧シリンダ内の作動油の圧力と油量とを制御する旋動式破砕機の油圧回路の制御方法において、前記主油圧ライン内の作動油の圧力を圧力センサで検出し、この圧力センサで検出される圧力が所定範囲内になるように、前記主油圧ラインからアキュムレータを介さずに前記油圧シリンダに供給する作動油の圧力を制御し、前記圧力センサで検出される作動油の圧力が予め定めた所定圧力を超えたときには、パイロットリリーフ弁に供給するパイロット圧を逃がして前記油圧シリンダ内の作動油を排出させる一方、作動油の排出により異常が回避されたときには、前記パイロット圧を所定圧に戻し、前記油圧シリンダ内の作動油の圧力を自動的に所定圧力に復帰させることを特徴とする旋動式破砕機の油圧回路の制御方法。
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