JP3962459B2 - 造血幹細胞の分化・増殖調節方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、造血幹細胞及び/または造血前駆細胞の分化および増殖を調節する方法、及びその方法に用いるベクター及び細胞に関する。造血幹細胞及び造血前駆細胞は、骨髄移植や臍帯血移植に代わる血液細胞移植、あるいは遺伝子治療に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
生体内を流れる成熟血液細胞は、短期間の寿命(ヒトでは赤血球で約120日、血小板で約7日)しかなく、成熟血液細胞は造血前駆細胞から毎日分化増殖することによって、末梢血の成熟血液細胞の恒常性を保っている。末梢血に供給される成熟血液細胞の数は、ヒトの場合赤血球で2000億個/日、好中球で700億個/日にもなる。これらの各分化系列の前駆細胞は、さらに未分化な造血幹細胞から分化しながら増殖することで恒常的に末梢血液細胞が枯渇しないようなシステムができている(須田年生、血液幹細胞の運命、羊土社、1992)。
【0003】
このような血液細胞の分化系については、マウスを用いた実験系においてその性質が明らかにされてきた。
末梢血を流れる種々の成熟血液細胞が、骨髄に存在する造血幹細胞に由来することが明らかにされたのは、TillとMcCullochの研究による(Till, J. E., Rad. Res., 14:213-222, 1961)。放射線を照射して骨髄の造血系を破壊したマウスに他のマウス由来の骨髄細胞を移植したところ、脾臓に血液細胞からなるコロニーの形成(CFU-S; colony-forming-unit spleen)が確認された。このコロニーの数は移植する骨髄細胞の数に比例すること、さらに一個の細胞に由来するコロニーの中に多くの血球系の細胞の存在が確認されることから、多くの血液細胞種に分化できる多分化能を持つ造血幹細胞(多能性幹細胞)が骨髄中に存在することが明らかにされたのである。
【0004】
その後、造血細胞の性質を解析する手段として放射線照射マウスを用いた移植実験系、さらには、in vitro(インビトロ)のコロニー形成法(Bradley, T.R., J. Exp. Med., 44: 287-299, 1966)が開発され、造血幹細胞および、造血前駆細胞の分化に関する知見が蓄積されてきた。
【0005】
放射線照射マウスを用いた移植実験系は、最も直接的に造血幹細胞の性質を解析する手法である。放射線照射し造血系に障害を与えたマウス(レシピエント)に、他のマウス(ドナー)から分離した骨髄細胞を移植すると、レシピエントマウス中にドナー由来の造血系を再構築することができる。造血細胞に発現される各種分化抗原(Spangrude, G.J., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., 87:7433-7437, 1990; Visser, J.M.W., 「Flow cytometry in hematology」, Academic Press, p9-29, 1992)を利用して、あるいは、造血細胞の大きさ(Jones, R.J., Nature, 347: 188-189, 1990)を利用して、あるいは、細胞の性質、状態によって染色性の異なる蛍光物質等(Rh123, Hoechst 33342) (Wolf, N.S., Exp. Hematol., 21:614-622, 1993)を用いて、骨髄細胞を分画し上記の移植実験を行うことで、骨髄細胞中の造血幹細胞を同定する試みがなされてきた。これまでの知見から、造血幹細胞は一個の細胞を移植しただけでも、リンパ球系の細胞にも骨髄球系の細胞にも分化することができ、かつ、長期にわたり移植先個体の中で造血系を構築することができることも明らかにされている (Osawa, M., Science, 273: 242-245, 1996)。造血幹細胞は、移植先の個体で長期間にわたり生着し、分化血球を供給することができるのである。一方、造血前駆細胞を用いた移植実験では、短期間に移植先個体から移植した細胞群が消失してゆき長期にわたり造血をになうことができない(Osawa, M., Science, 278: 242-245, 1996)。
【0006】
近年、種々のサイトカインが取得され、in vitroで形成されるコロニー形態から、血液細胞の性質を解析できるようになった(Ogawa, M., Blood, 81:2844-2853, 1993)。造血前駆細胞は、多くのサイトカインが存在しても、限られた分化系列の成熟血液細胞にしか分化することはできないが、移植マウスで長期の造血系を構築できる造血幹細胞は、多くの細胞分化系列に分化することが可能である。
【0007】
これらの結果から、造血幹細胞から末梢血を流れる成熟血液細胞までの分化は、以下のように解釈されている。造血幹細胞は、各種分化系列に分化可能な多分化能を有しており、かつ、この多分化能の性質(分化多能性)を保持したまま自己複製することが可能である。造血幹細胞は、自己複製するとともに一部は分化し、各種サイトカインの作用を受け、次第に分化できる細胞系列が狭まり、限られた細胞種へしか分化できない造血前駆細胞へと分化増殖し、最終的に成熟血液細胞になる(Hematopoietic Stem Cells, Levitt, D., Marcel Dekker, Inc., 1995)。
【0008】
骨髄移植療法、臍帯血移植療法は患者に造血細胞を移植する治療法であるが、移植後長期に治療効果が持続するかは、前述のように移植した造血幹細胞が移植先の患者に生着できるかに関わる。
【0009】
先天性の遺伝子疾患患者に対し、欠失あるいは、変異遺伝子を相補する遺伝子治療の試みがなされている(大橋十也、実験医学、12:333、1994)。このような遺伝子治療においては、造血幹細胞は、前述のように移植先個体で長期に生存しうることから、最適な標的として考えられている。すなわち、造血幹細胞の遺伝的な欠損を補完する遺伝子治療は、疾患の根本的な治療になると考えられている。
【0010】
このように、造血幹細胞の有用性が臨床的に認識されており、造血幹細胞をいかに未分化のままで増殖させるかが課題となっている。造血幹細胞をサイトカインや血液細胞刺激因子を用いて増殖させる試みがなされてきたが、効率的に造血幹細胞を増殖させることに成功するに至っていない(Trevisan, M.,Blood, 88:4149,1996)。これらの培養系では造血幹細胞が分化し、造血前駆細胞の増殖が優位になっている。そこで、造血幹細胞の分化を抑制することができれば、サイトカイン、造血細胞刺激因子の存在下で造血幹細胞を増殖させることも可能になると思われる。
【0011】
造血系の細胞の分化を人為的に調節しようとするとき、造血系以外の細胞の分化の制御様式を調べることも重要と考えられる( Morrison, S.J., Cell, 88:287, 1997)。近年、ショウジョウバエの発生分化の研究を通して、分化の調節を行う分子群が存在することが明らかにされてきた。Notch/Delta(ノッチ/デルタ)を介したシグナル伝達系はこれら分化調節をになうシグナル伝達系の1つである。
【0012】
Notch/Deltaは、ショウジョウバエの胚発生時の神経、翅などの種々の器官の形成に関わっていることが遺伝学的な解析により明らかにされてきた(Artavanis-Tsakonas, S., Science, 268:225, 1995)。リガンドであるDelta(デルタ)蛋白質は受容体であるNotch(ノッチ)蛋白質と結合し、Notchを通して分化を抑制するようなシグナルを伝達する。また、哺乳類においても、Notch/Delta遺伝子ファミリーの相同遺伝子が知られている( Blaumueller, C. M., Perspectives on Developmental Neurobiology, 4:325, 1997)。さらには、Notch/Deltaのシグナル伝達を細胞内で担う分子についても、ショウジョウバエの相同遺伝子が哺乳類においても見出されており(Artavanis-Tsakonas, S., Science, 268: 225, 1995)、Notch/Delta系の分化調節機構は、基本的には昆虫から哺乳類までほぼ似通った経路で行われるものと考えられる。
【0013】
神経細胞分化におけるNotchシグナル伝達系による分化制御は、以下のように考えられている(Artavanis-Tsakonas, S., Science, 268: 225, 1995; Simpson, P.,Perspectives on Developmental Neurobiology, 4:297, 1997)。胚発生時に背腹軸、前後軸が決定されてくると、外胚葉に神経芽細胞、及び表皮細胞に分化が可能な細胞集塊(proneural cluster)が出現する。この細胞集塊の中から神経細胞に分化可能な細胞が選別される際に、Notch/Delta系のシグナル伝達系が重要な役割を果たす。この細胞集塊に存在する細胞は等しくNotchを発現しているが、一部の細胞がNotchリガンドを発現するようになり、その細胞は隣接する細胞が神経細胞に分化することを抑制する(側方抑制)。Notchリガンドを発現する細胞は、神経芽細胞へと分化し、さらに種々の刺激を受けて分化を続けることで機能的な神経細胞へ終末分化を遂げる。一方、Notchリガンドと結合することでNotch/Deltaシグナル伝達系が活性化された細胞は、神経細胞に分化することができず、表皮細胞へと分化していく。
【0014】
Notch/Deltaシグナル伝達系が機能できない変異を持つ個体では、神経細胞への分化が抑制されないため、神経細胞が過形成されることになる。逆に、細胞外領域がほとんど欠失している、あるいは細胞領域内のみがタンパクとして発現するようになった活性化型Notch/Deltaを発現する個体では神経細胞への分化が抑制されている(Artavanis-Tsakonas, S., Science, 268: 225, 1995)。
【0015】
さらに、細胞内におけるNotch/Delta系のシグナル伝達については以下のように考えられている。Notchは、Deltaと結合することで活性化され、Notchの細胞内領域を介して、核移行タンパクであるRBP-Jκ(CBF-1、KBF-2ともいう)と相互作用する(Honjo, T., Genes to Cells, 1:1, 1996)。RBP-Jκは、Notch活性化にしたがい核内へ移行し、HLH(ヘリックス−ループ−ヘリックス)転写因子であるHES-1(影山 龍一郎、生化学、67:1093、1995)の発現を誘導する。HLH 型の転写因子は、3つのドメイン構造からなる転写因子で、つまり、1)ヘリックス−ループ−ヘリックスの立体構造を形成する部分で自身との結合あるいは他のHLH型の転写因子との結合により、ホモダイマーあるいはヘテロダイマーを形成するための結合部分、2)塩基性のDNAとの結合能を有する部分、3)転写促進活性を有する部分、よりなる。HLH型転写因子の特徴は、DNA結合能がヘテロダイマーを形成する相手によって調節されることにある。
【0016】
一方、神経細胞の分化を正に調節するHLH型転写因子として、Mash-1、MATHが知られている。これらMash-1、MATHはともにHLH型の転写因子で、普遍的に存在するHLH型転写因子E12/E47とヘテロダイマーを形成し、特異な塩基配列を認識して神経細胞の分化を促進する遺伝子群を活性化する(Johnson, J.E., Proc. Natl.Acad. Sci. U.S.A., 89:3596, 1992)。HES-1は、E12/E47と拮抗的にMash-1、MATHと結合しそのDNA結合活性を抑制することで、神経細胞への分化を促進する遺伝子の発現を阻害することによって、神経細胞への分化を抑制するものと考えられている(Sasai, Y., Genes Dev., 6:2620, 1992)。
【0017】
上記のように、HES-1は、Notch/Delta系の分化調節において最終段階で分化を正の方向に調節する転写因子の活性を阻害するという重要な役割を果たしている。HES-1類似遺伝子であるHES-3、HES-5にも同様な調節機構が類推されている。(影山 龍一郎、生化学、67:1093、1995)
一方、骨格筋系の分化ではNotch/Delta系による分化の調節がなされているが、HES-1遺伝子を骨格筋芽細胞に直接導入し発現させても、骨格筋細胞への分化は抑制されず、RBP-JκからHESファミリー遺伝子へのシグナル伝達系とは異なった分化調節機構が推測されている(Shawber, C., Development, 122:3765, 1996)。つまり、全ての細胞種において、HES-1を介して分化制御が行われているのではない。
【0018】
血液細胞におけるNotch遺伝子の機能の解析は、Notch-1遺伝子の転座により細胞外領域のほとんどが欠失したNotch-1遺伝子(TAN-1ともいう)がT細胞の白血病化を引き起こすことが明らかとなったことに始まる(Ellison, L.W., Cell, 66:649, 1991; Reynolds, T. C., Cell, 50:107, 1987)。そして、活性化型のNotchを導入されたトランスジェニックマウスでは、未熟なT細胞の性質を持つ白血病が生じることから、T細胞の増殖制御に関与することが報告されている(Pear, W. S., J. Exp. Med.,183:2283, 1996)。その後T細胞の分化の過程で、実際にNotchがCD4+CD8-、CD4-CD8+の表現形を持つ成熟T細胞の分化決定に関わることも明らかにされた(Robey, E., Cell, 87:483, 1996)。さらに、前骨髄球細胞株の分化をNotchシグナル伝達系が阻害することが報告されている(Milner, L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:13014, 1997)。
【0019】
一方、造血幹細胞では、Notch遺伝子が造血幹細胞で発現されていることは報告されているが(Milner, L. A., Blood, 83:2057, 1994)、造血幹細胞から各種の分化細胞に分化する過程でのNotch/Deltaの機能については今まで報告はない。
【0020】
Deltaの哺乳類の相同遺伝子にはDll-1(Chitnis, A., Nature, 375: 761, 1995)、Dll-3(Dunwoodie, S.L., Development, 124: 3065, 1997)ならびにJagged-1(Lindsell, C.E., Cell, 80: 909, 1995)、Jagged-2(Shauber, C., Dev. Biolo., 180: 370, 1996)が報告されているが、その造血幹細胞に対する作用の報告はない。一方、Deltaに低いながら相同性を有する分子として、Delta-like protein;DLK(SCP-1、Pref-1ともいう)(Laborda, J., Jounal of Biological Chemistry, 268:3817, 1993)が造血系の細胞に作用するという報告がある(Moore, K. A., Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A., 94:4011, 1997; WO97/31647)。DLKを造血細胞を支持するストローマ細胞に発現させ、造血幹細胞分画と共培養を行なうと、造血前駆細胞の増殖を支持する活性が確認されている。しかし、膜タンパクであるDLKを可溶化型にして、DLKを直接造血幹細胞に作用させても活性は認められない。したがって、DLKが造血前駆細胞に直接作用して分化を抑制する活性を発揮しているのかは明らかでない。さらに、DLKはDeltaとの相同性が低いことから、DLKがNotchを介してシグナル伝達を行なうのかについても、今のところ不明である。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたものであり、造血幹細胞及び/または造血前駆細胞の分化を抑制する方法、ならびに分化を抑制した状態で生存させ、好ましくはさらに増殖させる方法及びこれらの方法に用いる手段を提供することを課題とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、造血幹細胞の分化制御にNotch/Delta系の分子を利用できないかと考え、まず、実際に造血幹細胞を含む造血細胞でNotch-1、 Notch-2、 Notch-3、 Notch-4及び、HES-1、HES-3、HES-5が発現しているかを詳細に調べた。その結果、Notch、HES遺伝子が、種々の分化段階における造血細胞で広汎に発現していることを世界で初めて確認した。そして、この発現状況からNotch/Delta系のシグナル伝達系が造血幹細胞からの細胞分化にも重要な役割を果たしていると推測した。そこで、HES-1遺伝子を造血幹細胞に導入することで造血幹細胞を未分化な状態に留めて置くことも可能と考え、造血幹細胞の分化調節にHES-1を利用することを検討した。その結果、HES-1を造血幹細胞に強制発現させることで造血幹細胞の分化を抑制することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0023】
すなわち本発明は、哺乳動物の造血幹細胞中で分化抑制遺伝子の発現を強化すると共に、血液細胞刺激因子を作用させることにより、前記造血幹細胞及び/または前記造血幹細胞から分化した造血前駆細胞の分化および増殖を調節する方法である。
【0024】
本発明はまた、分化抑制遺伝子がウイルスベクターに組込まれた、遺伝子導入ベクターを提供する。
本発明はさらに、分化抑制遺伝子の発現が強化された哺乳類の造血幹細胞を提供する。
【0025】
また本発明は、分化抑制遺伝子の発現が強化された哺乳類の造血幹細胞又はこの造血幹細胞から分化した造血前駆細胞を、血液細胞刺激因子を作用させつつ培養することを特徴とする造血幹細胞及び/または造血前駆細胞の生産方法を提供する。
【0026】
本明細書において用いる用語につき、以下の通り定義する。
【0027】
造血幹細胞とは、血球の全ての分化系列に分化し得る多分化能を有する細胞であり、かつ、その多分化能を維持したまま自己複製ができる細胞である。造血幹細胞の評価系では、in vitroのアッセイ系で赤血球を含む複数の分化系統の細胞種を含むコロニー(CFU-Emix)を形成し得る細胞として識別される。これらの細胞は生体内で自己複製し、長期にわたり生存する細胞を含むと考えられる。
【0028】
造血前駆細胞とは、造血幹細胞よりやや分化した血液細胞であり、単一あるいは、2種類の分化系列に分化する能力を持つ。
分化抑制遺伝子とは、分化能を持つ細胞内において発現させた時に、その細胞の分化を抑制する活性を持つ転写因子をコードする遺伝子をいう。
【0029】
血液細胞刺激因子とは、いわゆるサイトカイン、インターロイキン、増殖刺激因子、インターフェロン、ケモカインなど造血細胞に対し増殖能、サイトカイン産生能、分化能、遊走能などの生物学的活性の変化をもたらす刺激因子のことを指す。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる造血幹細胞の採取源としては、ヒト及びマウス等の哺乳動物の臍帯血、胎児肝臓、骨髄、胎児骨髄、末梢血、サイトカインおよび/または抗癌剤の投与によって幹細胞を動員した末梢血、及び末梢血由来の細胞群等が挙げられ、造血幹細胞を含む組織であればいずれであってもよい。これらの組織からの造血幹細胞の取得は、Herzenberg, L.A. 「Weir's Handbook of Experimental Immunology, 5th edition」, Blackwell Science Inc. 1997に従い実施することができる。すなわち、抗CD34抗体、抗CD33抗体、抗CD38抗体などを用いて免疫学的に染色し、セルソーターを用いてこれらの抗体の染色性により分離することができる。
【0031】
本発明に用いる分化抑制遺伝子として、具体的にはHES-1遺伝子、HES-3遺伝子、HES-5遺伝子等が挙げられる。後述の実施例に示されるように、造血幹細胞中でHES-1遺伝子の発現を強化することによって、この造血幹細胞及びこの造血幹細胞から分化した造血前駆細胞の分化および増殖を調節することができる。造血幹細胞におけるHES-1遺伝子発現の効果は、同様にHES-1類似の蛋白質であるHES-3(影山 龍一郎、生化学、67:1093、1995)、HES−5(影山 龍一郎、生化学、67:1093、1995)をコードする遺伝子を発現させることによっても得られると推測される。
【0032】
HES-1遺伝子(ヒト由来のものはHRYともいう)、HES-3遺伝子及びHES-5遺伝子はいずれも公知の遺伝子であり、Sasaiら(Genes Dev., 6: 2620, 1992;マウス由来HES-1とHES-3)、Akazawaら(J. Biol. Chem., 267:21879, 1992;マウス由来HES-5)およびFederら(Genomics, 20: 56, 1994;ヒト由来HES-1)に開示されている配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドを用いたPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)により各遺伝子を含むDNA断片を増幅することによって、取得することができる。
【0033】
本発明において、造血幹細胞中で分化抑制遺伝子の発現を強化するとは、造血幹細胞中の分化抑制遺伝子の発現量を、少なくとも一定期間、通常の発現量よりも高くなるように造血幹細胞を操作することをいう。尚、分化抑制遺伝子の発現量は常に高い必要はなく、本発明により造血幹細胞および造血前駆細胞の分化および増殖を調節する際に高くすることができればよい。
【0034】
造血幹細胞中で分化抑制遺伝子の発現を強化する方法として具体的には、哺乳動物細胞用のベクターに発現可能な形態で分化抑制遺伝子を組み込み、得られる組換えベクターを造血幹細胞に導入する方法が挙げられる。発現可能な形態の分化抑制遺伝子は、プロモーター等の発現調節因子を分化抑制遺伝子のコード配列の上流に連結することにより得られる。分化抑制遺伝子の発現は、調節可能であることが好ましい。すなわち、本発明を利用して増殖された造血幹細胞又は造血前駆細胞を移植に用いる場合には、分化抑制遺伝子は培養時にのみ発現し、生体に細胞を移植してからも発現することは好ましくないため、必要に応じて発現を調節できることが好ましい。そのような発現調節としては、テトラサイクリンによる発現調節系(Gossen, M., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:5547, 1992)、昆虫ホルモン・エクダイソンを用いる発現調節系(No, D., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 93:3346, 1996)、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を用いる発現調節系(Biard, D.S., Biochem. Biophys. Acta., 1130:68, 1992)等が挙げられる。
【0035】
上記ベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター(Neering, S.J., Blood, 88:1147, 1996)、ヘルペスウイルスベクター(Dilloo, D., Blood, 89:119, 1997)、HIVベクターが挙げられる。このようなベクターに分化抑制遺伝子を組み込むことにより、本発明の遺伝子導入ベクターが得られる。特にアデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターは、移入された遺伝子は染色体外に存在し、一過性に遺伝子の発現を行なった後消失してゆく。このような一過性発現ベクターを用いることは、分化抑制遺伝子を培養時にのみ発現させることができる点で、優位性がある。
【0036】
また、造血幹細胞中で分化抑制遺伝子の発現を強化するには、造血幹細胞の染色体DNA上の分化抑制遺伝子の発現量を増加させてもよい。例えば、造血幹細胞の染色体DNA上の分化抑制遺伝子固有のプロモーター等の発現調節配列を、これよりも強力な発現調節配列で置換することによって、あるいは強力な発現調節配列を分化抑制遺伝子の上流に挿入することによって、該遺伝子の発現量を増加させることができる。発現調節配列の置換、挿入は、相同組換え等によって行うことができる。
【0037】
上記のようにして造血幹細胞中で分化抑制遺伝子の発現を強化すると共に、血液細胞刺激因子を作用させることにより、前記造血幹細胞及び/または前記造血幹細胞から分化した造血前駆細胞の分化および増殖を調節することができる。例えば、分化抑制遺伝子の発現が強化された造血幹細胞又はこの造血幹細胞から分化した造血前駆細胞を、血液細胞刺激因子を作用させつつ培養することにより、造血幹細胞及び/または造血前駆細胞を増殖させることができる。
【0038】
血液細胞刺激因子は、造血幹細胞の増殖を促進するために培地に添加されるものであり、いわゆるサイトカイン、インターロイキン、増殖刺激因子、インターフェロン、ケモカイン、発生関連遺伝子産物などが挙げられる(サイトカインについては、The Cytokine Factsbook, Callard, R.E., Academic Press, 1994 参照)。血液細胞刺激因子として具体的には、SCF(幹細胞成長因子(stem cell factor))、IL-3(インターロイキン−3)、IL-6(インターロイキン−6)、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)、TPO(スロンボポエチン)、EPO(エリスロポエチン)、Wnt(Thimoth, A. W., Blood, 89:3624-3635, 1997)やNotch/Delta系の遺伝子産物であるDll-1、Dll-3、Jagged-1、Jagged-2、およびDLKなどが挙げられる。
【0039】
上記血液細胞刺激因子を培地に添加する際に、その濃度を調節することで、造血幹細胞の生育に良い培養条件をさらに有効なものに改善できる。さらに、造血幹細胞を維持できるストローマ細胞の培養上清を添加して培養してもよい。
【0040】
造血幹細胞または造血前駆細胞を培養するにあたっては、いわゆる培養用のシャーレ、フラスコを用いた培養法が可能であるが、培地組成、pHなどを機械的に制御し、高密度での培養が可能なバイオリアクターによって、その培養系を改善することもできる(Schwartz, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,88:6760,1991; Koller, M.R., Bio/Technology, 11:358, 1993; Koller, M.R.,Blood, 82: 378, 1993; Palsson, B.O., Bio/Technology, 11:368, 1993)。
【0041】
培養に用いる培地としては、造血幹細胞または造血前駆細胞の増殖、生存が害されない限り特に制限されないが、例えばMEM-α培地(GIBCO BRL)、SF-02培地(三光純薬)、Opti-MEM培地(GIBCO BRL)、IMDM培地(GIBCO BRL)、PRMI1640培地(GIBCO BRL)、が好ましいものとして挙げられる。培養温度は、通常25〜39℃、好ましくは33〜39℃である。また、培地に添加する物質としては、ウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清、インシュリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、2−メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、CO2は、通常、4〜6%であり、5%が好ましい。
【0042】
本発明において、「造血幹細胞及び前記造血幹細胞から分化した造血前駆細胞の分化および増殖を調節する」とは、具体的には例えば、造血幹細胞及び/又はこの造血幹細胞から分化した造血前駆細胞を、少なくとも一部が多分化能を維持したまま生存、好ましくは増殖させることをいう。多分化能を維持したまま増殖させることにより、造血幹細胞又は造血前駆細胞を生産することができる。さらに、これら造血幹細胞又は造血前駆細胞の分化を誘導することにより、各種血液細胞を生産することができる。
【0043】
上記のようにして産生される造血幹細胞または造血前駆細胞は、従来の骨髄移植や臍帯血移植に代わる血液細胞移植用の移植片として用いることができる。造血幹細胞の移植は、移植片が半永久的に生着させられることから、従来の血液細胞移植治療を改善することができる。
【0044】
造血幹細胞の移植は、白血病に対する全身X線療法や高度化学療法を行う際に、これらの治療と組み合わせる他、種々の疾患に用いることができる。例えば、固形癌患者の化学療法、放射線療法等の骨髄抑制が副作用として生じる治療を実施する際に、施術前に骨髄を採取しておき、造血幹細胞、造血前駆細胞を試験管内で増幅し、施術後に患者に戻すことで、副作用による造血系の障害から早期に回復させることができ、より強力な化学療法を行えるようになり、化学療法の治療効果を改善する事ができる。また、本発明により得られる造血幹細胞ならびに造血前駆細胞を各種血液細胞に分化させ、それらを患者の体内に移入することにより、各種血液細胞の低形成により不全な状況を呈している患者の改善を図ることができる。また、再生不良性貧血などの貧血を呈する骨髄低形成に起因する造血不全症を改善することができる。その他、本発明の方法による造血幹細胞の移植が有効な疾患としては、慢性肉芽腫症、重複免疫不全症候群、無ガンマグロブリン血症、Wiskott-Aldrich症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)等の免疫不全症候群、サラセミア、酵素欠損による溶血性貧血、鎌状赤血球症等の先天性貧血、Gaucher病、ムコ多糖症等のリソゾーム蓄積症、副腎白質変性症、各種の癌または腫瘍等が挙げられる。
【0045】
造血幹細胞の移植は、用いる細胞以外は、従来行われている骨髄移植や臍帯血移植と同様に行えばよい。
上記のような造血幹細胞移植に用いられる可能性のある造血幹細胞の由来は、骨髄に限られず、前述したような胎児肝臓、胎児骨髄、末梢血、サイトカインおよび/または抗癌剤の投与によって幹細胞を動員した末梢血、及び臍帯血等を用いることができる。
【0046】
移植片は、本発明の方法によって産生した造血幹細胞及び造血前駆細胞の他に、緩衝液等を含む組成物としてもよい。
また、本発明により産生される造血幹細胞または造血前駆細胞は、ex vivoの遺伝子治療に用いることができる。この遺伝子治療には、造血幹細胞または造血前駆細胞に外来遺伝子(治療用遺伝子)を導入し、得られる遺伝子導入細胞を用いて行われる。導入される外来遺伝子は、疾患によって適宜選択される。血液細胞を標的細胞とする遺伝子治療の対象となる疾患としては、慢性肉芽腫症、重複免疫不全症候群、無ガンマグロブリン血症、Wiskott-Aldrich症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)等の免疫不全症候群、サラセミア、酵素欠損による溶血性貧血、鎌状赤血球症等の先天性貧血、Gaucher病、ムコ多糖症等のリソゾーム蓄積症、副腎白質変性症、各種の癌または腫瘍等が挙げられる。
【0047】
造血幹細胞または造血前駆細胞に治療用遺伝子を導入するには、通常動物細胞の遺伝子導入に用いられる方法、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、HIVベクター等のウイルス由来の遺伝子治療に用いられる動物細胞用ベクター(遺伝子治療用ベクターについては、Verma, I.M., Nature, 389:239, 1997 参照)を用いる方法、リン酸カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法等を用いることができる。これらの中では、標的細胞の染色体DNAに組み込まれて恒久的に遺伝子の発現が期待できるという点から、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはHIVベクターが好ましい。
【0048】
例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、次のようにして作製することができる。まず、野生型アデノ随伴ウイルスDNAの両端のITR(inverted terminal repeat)の間に治療用遺伝子を挿入したベクタープラスミドと、ウイルスタンパク質を補うためのヘルパープラスミドを293細胞にトランスフェクションする。続いてヘルパーウイルスのアデノウイルスを感染させると、AAVベクターを含むウイルス粒子が産生される。あるいは、アデノウイルスの代わりに、ヘルパー機能を担うアデノウイルス遺伝子を発現するプラスミドをトランスフェクションしてもよい。次に、得られるウイルス粒子を造血幹細胞または造血前駆細胞に感染させる。ベクターDNA中において、目的遺伝子の上流には、適当なプロモーター及びエンハンサーを挿入し、これらによって遺伝子の発現を調節することが好ましい。さらに、治療用遺伝子に加えて薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子を用いると、治療用遺伝子が導入された細胞の選択が容易となる。治療用遺伝子は、センス遺伝子であってもアンチセンス遺伝子であってもよい。
【0049】
遺伝子治療用組成物は、本発明の方法によって産生された造血幹細胞及び造血前駆細胞の他に、緩衝液、新規の活性物質等を含む組成物としてもよい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、以下の実施例において、細胞分離に用いた抗体は全てPharmingen社より購入した。遺伝子組み換えに用いた制限酵素は、全てベーリンガーマンハイム社より購入した。また、各血球細胞の分離は、おおむね、Herzenberg, L.A. 「Weir's Handbook of Experimental Immunology, 5th edition」, Blackwell Science Inc. 1997 に従い実施した。
【0051】
【実施例1】
Notch/Delta関連遺伝子の造血細胞における発現
造血細胞におけるNotch/Delta関連遺伝子の果たす役割を知る目的で、RT-PCR法によりNotch、HES遺伝子の造血細胞における発現を確認した。
【0052】
<1>造血細胞の分離
6-8週齢のC57Bl/6マウス(日本チャールスリバー株式会社より購入)より骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞をそれぞれ分離し、セルソーターを用いて単核球、顆粒球、成熟T細胞、未熟T細胞、成熟B細胞、造血前駆細胞、および造血幹細胞を選別した。
【0053】
(1)単核球、顆粒球細胞の分離法
マウス大腿骨骨髄より取り出した骨髄細胞に対し、抗CD32抗体を添加し氷中にて10分放置した後、FITC標識抗Mac-1抗体、PE標識抗Gr-1抗体を加え、氷中にて30分間反応させた。反応後、染色バッファー(PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、5% FCS(ウシ胎児血清)、0.05% NaN3)で2回洗い、染色バッファーに懸濁した後、セルソーター(FACS Vantage, Becton Dickinson社)により単核球(Mac-1陽性・Gr-1陰性細胞)、および顆粒球(Mac-1陽性・Gr-1陽性細胞)を分離した。
【0054】
(2)T細胞の分離法
胸腺細胞の懸濁液を、細胞分離用高密度溶液(Nycomed社、Lymphoprep)に重層し、1500 rpm、25℃、30分間遠心し、懸濁液とLymphoprepとの界面に集まった細胞を回収した。細胞を染色バッファーで2回洗浄した後、抗CD32抗体、FITC標識抗CD4抗体、PE標識抗CD8抗体を加え、氷中にて30分間反応させた。反応後、染色バッファーで2回洗い、染色バッファーに懸濁した後、セルソーターにより未熟T細胞(CD4陰性・CD8陰性細胞およびCD4陽性・CD8陽性細胞)、および成熟T細胞(CD4陽性・CD8陰性細胞およびCD4陰性・CD8陽性細胞)を分離した。
【0055】
(3)B細胞の分離法
脾臓細胞の懸濁液をLymphoprep(Nycomed社)に重層し、1500 rpm、25℃、30分間遠心し、界面に集まった細胞を回収した。細胞を染色バッファーで2回洗浄し、抗CD32抗体を添加し氷中にて10分放置した後、FITC標識抗B220抗体、PE標識抗マウスIgM抗体を加え、氷中にて30分間反応させた。反応後、染色バッファーで2回洗い、染色バッファーに懸濁した後、セルソーターにより成熟B細胞(B220陽性・IgM陽性細胞)を分離した。
【0056】
(4)造血前駆細胞、および造血幹細胞の分離法
骨髄細胞の懸濁液をLymphoprep(Nycomed社)に重層し、1500 rpm、25℃、30分間遠心し、界面に集まった細胞を回収した。細胞を染色バッファーで2回洗浄した後、細胞をPBSで2回洗浄し、染色バッファーに懸濁した。細胞懸濁液にビオチン化した分化抗原マーカーに対する抗体、つまり抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗B220抗体、抗Gr-1抗体、抗Ter119抗体を添加し、氷中に30分間放置した。その後、染色バッファーで2回洗浄の後、アビジンをコートした磁性体ビーズ(アビジンマグネットビーズ、Perseptive社)を添加し、氷中で30分放置した。再度染色バッファーで2回洗浄の後、磁石を用いてアビジンマグネットビーズを集めて、分化抗原を提示している細胞群を除去し、分化抗原陰性細胞(Lin-)を取得した。分化抗原陰性細胞溶液に、FITC標識抗CD34抗体、PE標識抗Sca-1抗体、テキサスレッド標識アビジン、APC標識抗c-Kit抗体を添加し、氷中30分放置した。2回染色バッファーで洗浄の後、セルソーターにて造血前駆細胞(Sca-1陰性・c-kit陽性細胞およびCD34陽性・Sca-1陽性・c-kit陽性細胞)および造血幹細胞(CD34陰性〜弱陽性・Sca-1陽性・c-kit陽性細胞)を選別した。
【0057】
<2>cDNA合成とPCRによる発現の検出
上記で得られた細胞を遠心し、ペレットとした後、RNAを抽出するためRNA抽出用試薬(アイソジェン、日本ジーン社)を添加し、試薬の使用説明書に従いRNAを取得した。これに対し、5ユニットのDNaseI(RNase free, GIBCO-BRL社)を加え37℃で30分間保温し、混在するゲノムDNAを消化分解させ、再びアイソジェン(日本ジーン)を添加し、純粋なRNAを取得した。このRNAから、オリゴ dTをプライマーとしてcDNAを合成した。つまり、105 個の細胞にあたるRNAが20マイクロリットル反応液に相当するように反応液を調製した。反応液の組成は、逆転写酵素(SuperscriptII、GIBCO-BRL社)の使用説明書に推奨されているものを使用した。反応は、42℃で60分間実施し、その後72℃10分の保温により逆転写酵素の活性を失活させた。
【0058】
PCR反応に使用した各種プライマーの配列、アニーリング温度は以下の通りである。
【0059】
【表1】
【0060】
PCR反応は、TaqポリメラーゼとしてExTaq(宝酒造(株))を使用し、鋳型cDNAには上記にて作製した各種血球cDNAを2マイクロリットルずつ使用し、緩衝液、核酸の組成は添付の使用説明書に推薦される条件で全量25マイクロリットルで実施した。反応は、94℃で2分インキュベートした後、94℃、30秒;表1に記載の各プライマー毎に設定されたアニーリング温度、30秒;72℃、1分のサイクルを35回行い、さらに72℃で7分インキュベートすることにより行った。PCR反応産物10マイクロリットルを、1.2%アガロースゲル電気泳動に供しエチジウムブロマイド染色により増幅バンドを確認した。
【0061】
<3>結果
上記の増幅バンドの濃さにより、発現量を評価した結果を表2に示す。表中の記号は、次のとおりである。
【0062】
− : 発現が認められない
+ : 発現が認められる
++ : 強く発現している
± : 発現が認められないか、弱く発現している
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示すように、Notch-1、Notch-2は調べた造血細胞の全てで発現していた。Notch-3は、未熟T細胞、成熟T細胞、及びB細胞に細胞種特異的な発現が確認される。Notch-4は造血系の細胞には発現が認められなかった。一方、Notch/Deltaのシグナル伝達系の下流に存在しているHES-1、HES-3は、調べた全ての細胞で発現が認められた。HES-5は、造血幹細胞、造血前駆細胞以外の細胞で細胞種特異的に発現が認められた。
【0065】
以上の結果は、Notchのシグナル伝達系がこれら造血系の細胞中で実際に機能していることを示している。前述のようにNotch/Deltaのシグナル伝達系は神経系や筋肉形成の分化制御に重要な役割を果たしていることが分かっている。これらのことより、 Notch/Deltaのシグナル伝達系は血液細胞の分化調節についても密接に関与していると推測できる。
【0066】
【実施例2】
造血幹細胞でのHES-1の強制発現
<1>EGFP-HES-1発現ベクターの構築
(1)レトロウイルスで遺伝子移入した細胞内で、HES-1の発現及び局在をモニターすることを可能にするため、 HES-1と蛍光発光タンパクであるEGFP(Enhanced green fluorescent fluorescence protein、Kodak社)が融合タンパクとして発現するようにベクターを構築した(図1〜4参照)。
【0067】
詳しくは、pSV2CMVHES-1(京都大学、影山龍一郎博士より分与、Sasai, Y., Genes Dev., 6:2620, 1992 参照)をEcoRI消化し、pFLAG-CMV2ベクター(Kodak社)のEcoRIサイトに、FLAGの転写方向と同一方向になるようにサブクローニングしたpFLAG-CMV2-HES-1.1(図1)を作成した。一方で、HES-1の翻訳開始コドンを変更し、EGFPとHES-1が融合タンパクとして発現するようにHES- 1の翻訳開始コドンを改変し、BglIIサイトに変更した。つまり、翻訳開始点ATGをBglIIに変更するような配列を有する合成オリゴヌクレオチド(配列番号15)と、HES-1遺伝子の中に存在するPstIサイトより下流に位置する部位のアンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号16)をプライマーに用いて、pSV2CMVHES-1を鋳型として、PCRを行った。このPCR産物を、BglIIとPstIで消化して得られるHES-1遺伝子を含む断片を、上記に記載のpFLAG-CMV2-HES-1.1のBglIIとPst-Iサイトにクローニングした。このプラスミドをpFLAG-CMV2-HES-1.2(図2)とした。
【0068】
pFLAG-CMV2-HES-1.2を、BglIIとEcoRIで消化して得られるHES-1を含む断片を、pEGFP-CI(Clontech社)のBglII/EcoRIサイトにクローニングし、pEGFP-CI-HES-1と名づけた(図3)。これにより、EGFPとHES-1が一つの転写単位に乗った遺伝子が構築できた。さらに、pEGFP-CI-HES-1をEco47IIIとSalIで消化して得られるHES-1を含む断片を、HpaIとXhoIで消化したpMSCV2.1ベクター(トロント大学、R.Hawley博士より入手、Hawley, R.G., Gene Ther., 1:136, 1994 参照)にクローン化した。このベクターをpMSCV-EH(図4)とした。以後、このプラスミドをHES-1感染用のレトロウイルス産生用に用いた。
【0069】
(2)ネガティブコントロールとして、EGFP遺伝子のみを移入するレトロウイルスベクターを構築した。pEGFP-CIをEco47IIIとSalIで消化して得られるEGFPを含む断片を、HpaIとXhoIで消化したpMSCV2.1ベクターに挿入した。このベクターをpMSCV-Eとした。
【0070】
<2>GP+E86細胞への遺伝子導入
上記方法により調製したpMSCV-EHならびにpMSCV-Eを制限酵素ScaIで消化し、線状DNAとした。線状pMSCV-EHをリポフェクション法(TransIT LT-1、宝酒造(株))を用いてGP+E86細胞(レトロウイルス産生細胞株、筑波大学 中内啓光教授より入手、Markowits, D., J. Virol., 62:1120, 1994 参照)にトランスフェクトした。TransITによる導入は、添付の使用説明書に従い行なった。8時間のトランスフェクションの後、10% FCSを添加したMEM-α培地を添加し、そのまま2日間培養を継続した。その後、 GP+E86細胞をトリプシンにて剥離し、G418(1mg/ml)を含む10% FCSを添加したMEM-α培地中にて再度培養し増殖してくる、G418耐性GP+E86細胞を選別した。これを再度トリプシンにより培養皿より剥離し、PBSに懸濁し、フローサイトメーター(FACS Vantage, Becton Dickinson)に供した。EGFPの発現状況を検出し、EGFPの発現の高い株を選別し、分取した。
【0071】
このようにして得られたEGFP高発現細胞を10% FCSを添加したMEM-α培地中にて培養して得た培養上清を、感染ウイルス溶液として使用した。
【0072】
<3>造血幹細胞へのHES−1遺伝子移入
(1)マウス胎児肝臓由来造血幹細胞の選別
妊娠C57Bl/6マウスは、日本チャールスリバー株式会社より購入した。妊娠14日目のマウスを開腹し、胎児を無菌的に摘出した。胎児肝臓を他の組織が混入しないように慎重に分離した後、21ゲージの注射針をつけたシリンジで細胞を分散させ、Lymphoprep( Nycomed社)に重層した。これを1500rpm、25℃、30分遠心し界面に集まった細胞を回収した。細胞をPBSで2回洗浄した後、染色バッファー(PBS、5% FCS、0.05% NaN3)に懸濁した。
【0073】
以後の細胞分画法の基本的な手技は、おおむね、Herzenberg, L.A. 「Weir's Handbook of Experimental Immunology, 5th edition」, Blackwell Science Inc. 1997 にしたがって行なった。抗CD32抗体を添加し氷中に10分放置した後、細胞懸濁液にビオチン化した分化抗原マーカー、つまり抗CD8抗体、抗B220抗体、抗Gr-1抗体、抗Ter119抗体を添加し、氷中に30分間放置した。その後、染色バッファーで2回洗浄の後アビジンマグネットビーズを添加し、氷中30分放置した。再度2回染色バッファーで洗浄の後、磁石を用いて分化抗原を提示している細胞群を除去し、分化抗原陰性細胞(Lin-)を取得した。分化抗原陰性細胞溶液にFITC標識抗CD34抗体、PE標識抗Sca-1抗体、テキサスレッド標識アビジン、APC標識抗c-kit抗体を添加し、氷中30分放置した。2回染色バッファーで洗浄の後、セルソーターにてLin-Sca-1+c-kit+細胞を選別した。
【0074】
(2)HES-1遺伝子発現レトロウイルスの造血幹細胞への感染
レトロネクチン(宝酒造(株))をコートした24穴プレートに、pMSCV-EHをトランスフェクトした0.5mlのGP+E86上清、さらにSCF(10ng/ml)、IL-6(10ng/ml)を含むMEM-α、10% FCSを0.5ml添加した。ここへ、Lin-c-KIT+Sca-1+ 造血幹細胞を添加し、1週間培養した。その後、細胞を回収し、コロニー形成能について検討した。コロニー形成能は、MEM-α培地に0.9%メチルセルロース、30% FCS、0.1%ウシ血清アルブミン、及び10ng/mlずつのSCF、IL-3、IL-6、EPO、TPO、さらに、0.5mg/mlG418の存在下で実施した。14日間の培養の後、出現してくるコロニーの形態、ならびに数を検出した。尚、上記で用いた各種造血因子は、いずれもリコンビナント体であり、純粋なものである。
【0075】
<4>結果
上記条件における実施結果を表3に示す。表中の数字は、感染させた造血幹細胞2,000個あたりのコロニー数である。
【0076】
【表3】
【0077】
表に示したコロニー数はG418に抵抗性のコロニーであり、EGFP遺伝子のみ、あるいはEGFP-HES-1の融合遺伝子が導入された細胞のみを示す。さらに、これらのコロニーにおいて目的の遺伝子の発現は、蛍光顕微鏡下でEGFPの発現を観察することでも確認した。EGFP遺伝子のみを移入した細胞では、細胞質全体が蛍光を発しており核内での局在は確認されなかった。一方、EGFP-HES-1の融合遺伝子が導入された株では、核が特異的蛍光を発していることが蛍光顕微鏡による観察から確かめられ、このHES-1が正常に発現され核内で機能するものと推測された。
【0078】
EGFP遺伝子のみを遺伝子移入したものでは、未分化な造血細胞であるlarge E-mixコロニーの形成は見られない。一方、HES-1を遺伝子移入した細胞群ではlarge E-mixコロニーの出現が観察されている。これらのコロニーは非常に巨大なコロニーを形成しており、造血幹細胞の分化が抑制されていたことを物語っている。さらにEGFP遺伝子とEGFP-HES-1の融合遺伝子の遺伝子移入用のレトロウイルスの感染効率について評価していないので、全コロニー数についての比較はできないが、EGFP遺伝子のみを移入した細胞群の方が、全コロニー数が多いにも関わらずlarge E-mixコロニーは全く出現していない。これらの結果をまとめると、HES-1を強制発現していない培養系では、造血幹細胞は分化し、造血前駆細胞であるGM-CFC、G-CFC、M-CFCのみが出現してくるが、HES-1を高発現させた培養系では未分化な造血細胞が維持されており、造血幹細胞の分化をHES-1の遺伝子移入により調節することに成功した。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、造血幹細胞及び/または造血前駆細胞を、分化を抑制した状態で生存させ、増殖させることができる。
【0080】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
GGGGCGGAGC TTCTTGAGTG G 21
【0081】
配列番号:2
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
CTGGTGGCTG GGGGTGTTGT C 21
【0082】
配列番号:3
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
CAGGAGAGGG GAGCAGTGTA T 21
【0083】
配列番号:4
配列の長さ:20
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
GGTGGGGGCT GTGTAGAGTT 20
【0084】
配列番号:5
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
CATTCCCCTT CCTCACTTCA C 21
【0085】
配列番号:6
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
CCCACCTTCT GCCCTGTATT T 21
【0086】
配列番号:7
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
ATAGGGCAGC TTCAAGAGGA C 21
【0087】
配列番号:8
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
TGGGCCACTG GTTACTTACT G 21
【0088】
配列番号:9
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
CGAAAATGCC AGCTGATATA A 21
【0089】
配列番号:10
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
ACACGCTCGG GTCTGTGCTG A 21
【0090】
配列番号:11
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
ACTGGCTTTG AGCAACCACA G 21
【0091】
配列番号:12
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
TCTTCTCCAT CAGAGGCTTG G 21
【0092】
配列番号:13
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
CGCTCCGCTC CGCTCGCTAA T 21
【0093】
配列番号:14
配列の長さ:21
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
GCTCTATGCT GCTGTTGATG C 21
【0094】
配列番号:15
配列の長さ:33
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:NO
配列
GGAAGATCTC CAGCTGATAT AATGGAGAAA AAT 33
【0095】
配列番号:16
配列の長さ:30
配列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成DNA
アンチセンス:YES
配列
AGCGGCGGTC ATCTGCGCCC GCTGCAGGTT 30
【図面の簡単な説明】
【図1】 pFLAG-CMV2-HES-1.1の構築手順を示す図。
【図2】 pFLAG-CMV2-HES-1.2の構築手順を示す図。
【図3】 pEGFP-CI-HES-1の構築手順を示す図。
【図4】 pMSCV-EHの構築手順を示す図。
Claims (9)
- 哺乳動物の造血幹細胞中で、HES−1遺伝子、HES−3遺伝子及びHES−5遺伝子から選ばれる分化抑制遺伝子の発現を強化すると共に、SCF、IL−3、IL−6、GM−CSF、TPO及びEPOから選ばれる血液細胞刺激因子を作用させることにより、前記造血幹細胞及び/または前記造血幹細胞から分化した造血前駆細胞を増殖させる方法。
- 哺乳動物がヒトであり、分化抑制遺伝子及び血液細胞刺激因子がヒト由来である請求項1記載の方法。
- 造血幹細胞が、臍帯血、胎児肝臓、骨髄、胎児骨髄、または末梢血から得られるものである請求項1または2記載の方法。
- 分化抑制遺伝子の発現を、ウイルスベクターに組込まれた分化抑制遺伝子を造血幹細胞に導入することにより強化する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、HIVベクターから選ばれる請求項4記載の方法。
- 分化抑制遺伝子が、発現調節を受けるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 分化抑制遺伝子の発現調節が、テトラサイクリンによる調節、エクダイソンによる調節、IPTGによる調節から選ばれる請求項6記載の方法。
- HES−1遺伝子、HES−3遺伝子及びHES−5遺伝子から選ばれる分化抑制遺伝子の発現が強化された哺乳類の造血幹細胞。
- HES−1遺伝子、HES−3遺伝子及びHES−5遺伝子から選ばれる分化抑制遺伝子の発現が強化された哺乳類の造血幹細胞又はこの造血幹細胞から分化した造血前駆細胞を、SCF、IL−3、IL−6、GM−CSF、TPO及びEPOから選ばれる血液細胞刺激因子を作用させつつ培養することを特徴とする造血幹細胞及び/または造血前駆細胞の生産方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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