JP3962351B2 - 難燃性エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた難燃性を発現し、かつ、機械的強度、強靭性、耐熱性、誘電特性、絶縁性等の材料物性や環境対応性にも優れる難燃性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の電子機器には、高電圧がかかったり高温であるために発火源となり得る部分があり、それが原因となり火災に発展する可能性があるため、例えばコンピュータ等に用いられるエポキシ系樹脂等からなる絶縁基板材料にも、高い難燃性が求められている。
【0003】
一方、コンピュータ等の電子機器用途に用いられる高分子材料には、近年、廃プラスチックの処理問題から、環境に負荷をかけない材料であることが求められており、環境適応型材料への転換が望まれている。
【0004】
従来、これらの絶縁基板材料に最も多く用いられている難燃剤は、ハロゲン系難燃剤(含ハロゲン難燃剤)又はリン系難燃剤(含リン難燃剤)であった。
ハロゲン系難燃剤は、難燃化の効果が高いため、成形性の低下や成形品の機械的強度の低下を引き起こすことの少ない、比較的少量の添加でも充分な難燃性を発現することができる。しかし、ハロゲン系難燃剤を使用した場合、成形加工時や燃焼時にハロゲン化水素やダイオキシン等のハロゲン系ガスが多量に発生し、機器が腐食したり人体に好ましくない影響が及んだりする等の恐れがあるために、安全性の面からハロゲン系難燃剤を使用しない、いわゆるノンハロゲン難燃化処理方法(処理技術)の確立が強く望まれていた。
【0005】
これに対して、ハロゲン系難燃剤の代わりにリン系難燃剤を用いる例が報告されている。しかし、リン系難燃剤を用いた場合も、燃焼時にはホスフィン等の有毒ガスが発生したり、リン系難燃剤は耐水性が低いため廃棄時の土壌や水質等を汚染したりする可能性があるので、難燃剤としてリン系難燃剤を使用することは環境的に好ましくない。また、難燃化効果に関しても、燃焼時に局所的に被膜を形成するものの、強固な被膜を連続層として形成することは困難である。局所的な被膜の機械的強度は非常に弱く、燃焼時において脆い灰分が露出し、燃焼残渣が脱落していくために、断熱層としての機能を早期に失い、更に、材料が変形するために延焼をくい止めることができない場合がある。
【0006】
このため、近年、電子機器分野においても、環境対応型材料へ転換するために、ノンハロゲンやノンリンの難燃性樹脂を用いた絶縁基板材料が開発されている。ノンハロゲンやノンリン難燃化処理方法の一つとして、燃焼時に有毒なガスを発生しない、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属化合物を添加する方法がある。しかし、金属化合物のみを樹脂に添加した場合は、燃焼時において被膜層を形成することができず、脆い灰分が露出し、燃焼残渣が脱落していくので、断熱層としての機能を早期に失い、更に、材料が変形するために延焼をくい止めることができなかった。
【0007】
また、金属化合物の難燃化効果はハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤と比較すると低いことから、充分な難燃性を得るためには大量の金属化合物を添加することが必要であった。しかし、大量の金属化合物が添加された樹脂組成物は、材料として機械的強度が低くなって、実用に耐えられなくなる場合があった。更に、金属水酸化物を大量に添加すると、近年の電子材料に特に必要とされる誘電特性や絶縁性を損なうことがあった。
【0008】
近年、ハロゲンやリンを含有しておらず、広範囲なプラスチックに配合することができ、安全性が高い難燃剤としてシリコーン系難燃剤が注目されてきている。シリコーン系難燃剤は、燃焼時に樹脂表面に移行して不燃被膜を形成することによる酸素遮断効果を利用して難燃性を発現することが知られている。しかし、シリコーン系難燃剤のみを添加した場合には、酸素指数は大幅に向上するものの、実際の燃焼時には強固な不燃被膜を連続層として形成することができず、不燃被膜の裂け目から可燃性ガスが流出するため、延焼をくい止めることができないという問題があった。
【0009】
一方、エポキシ樹脂自体を改質して難燃性を付与する試みも行われている。例えば、特許文献1には、トリアジン骨格を有する高難燃性のエポキシ樹脂が開示されている。しかしながら、このエポキシ樹脂が充分な難燃性を発現するためには、大量の無機フィラーを添加する必要があることから、力学物性、成形性を大きく損なうという問題があった。また、特許文献2には、特定のエポキシ樹脂とリン原子含有化合物とからなる難燃性の高いエポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、このエポキシ樹脂組成物はリン原子を含有していることから、上記で述べたような有毒ガスの発生が懸念される。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−110954号公報
【特許文献2】
特開2001−11157号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、優れた難燃性を発現し、かつ、機械的強度、強靭性、耐熱性、誘電特性、絶縁性等の材料物性や環境対応性にも優れる難燃性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いたエポキシ系樹脂100重量部と層状珪酸塩1〜40重量部とを含有し、層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上、5nm以下であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散しており、ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m 2 以下であることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物である。
第2の発明は、トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いたエポキシ系樹脂100重量部と層状珪酸塩1〜40重量部とを含有し、層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上、5nm以下であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散しており、ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m 2 以下であり、ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼することにより得られた燃焼残渣を0.1cm/秒で圧縮した時の降伏点応力が4.9kPa以上であることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ系樹脂と層状珪酸塩とを含有する。
上記エポキシ系樹脂の主骨格成分は、少なくとも1個のオキシラン環を有する有機化合物である。上記エポキシ系樹脂中のエポキシ基の数は、1分子当たり1個以上であることが好ましく、1分子当たり2個以上であることがより好ましい。ここで、1分子当たりのエポキシ基の数は、エポキシ系樹脂中のエポキシ基の総数をエポキシ系樹脂中の分子の総数で除算して求められる。
【0014】
上記エポキシ系樹脂としては特に限定されず従来公知の各種エポキシ樹脂を用いることができ、例えば、以下に示したエポキシ樹脂(1)〜エポキシ樹脂(11)等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】
エポキシ樹脂(1)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂並びにこれらの水素添加物や臭素化物等が挙げられる。
【0016】
エポキシ樹脂(2)としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等の脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。かかるエポキシ樹脂(2)のうち市販されているものとしては、例えば、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)が挙げられる。
【0017】
エポキシ樹脂(3)としては、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9個(好ましくは2〜4個)のアルキレン基を含むポリオキシアルキレングリコールやポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
エポキシ樹脂(4)としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。
【0019】
エポキシ樹脂(5)としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂及びこれらの水添化物等が挙げられる。
【0020】
エポキシ樹脂(6)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0021】
エポキシ樹脂(7)としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。
【0022】
エポキシ樹脂(8)としては、例えば、エポキシ化SBS等のような、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック」と「共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロック」とを同一分子内にもつブロック共重合体の、共役ジエン化合物の不飽和炭素の二重結合をエポキシ化したもの等が挙げられる。
【0023】
エポキシ樹脂(9)としては、例えば、1分子当たり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0024】
エポキシ樹脂(10)としては、例えば、上記各種エポキシ樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0025】
エポキシ樹脂(11)としては、例えば、上記各種エポキシ樹脂にNBR、CTBN、ポリブタジエン、アクリルゴム等のゴム成分を含有させたゴム変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ系樹脂においては、トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いる。
なお、本明細書でトリアジン骨格とは、トリアジン化合物に起因するトリアジン構造部位を、フェノール骨格とは、フェノール類に起因するフェノール構造部位を意味する。
【0027】
上記トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表されるトリアジン化合物とフェノール類とを反応させてなるもの等が挙げられる。
【0028】
【化1】
Figure 0003962351
【0029】
式中、R1、R2、R3は、アミノ基、アルキル基、フェニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシルアルキル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、酸基、不飽和基のいずれかを表す。
【0030】
上記一般式(1)で表されるトリアジン化合物のなかでも、反応性、難燃性に優れる点からR1、R2、R3のうちのいずれか2つ又は3つがアミノ基であるメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のアミノ基含有トリアジン化合物が好ましい。
【0031】
上記フェノール類としては特に限定されず、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールA、レゾルシン、カテコール等の多価フェノール類;モノヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類;フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。なかでも、アミノ基含有トリアジン化合物との反応性および難燃性に優れる点からフェノールが好適である。これらのフェノール類は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
上記トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いてなるエポキシ樹脂は、窒素原子含有率の高いトリアジン骨格の難燃効果と、燃焼残渣形成能があり、それ自体高難燃性であることが知られるフェノール骨格の難燃効果とにより、優れた難燃性を発現する。
【0033】
また、上記エポキシ系樹脂の硬化剤としては、上記トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物に加えて、従来公知の各種エポキシ系樹脂用硬化剤を用いることができる。上記エポキシ系樹脂用硬化剤としては特に限定されず、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成されるポリアミノアミド化合物等の化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、ジシアンジアミド及びその誘導体、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合触媒等が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂用硬化剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
上記アミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等の鎖状脂肪族アミン及びその誘導体;メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の環状脂肪族アミン及びその誘導体;m−キシレンジアミン、α一(m/p−アミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
上記アミン化合物から合成される化合物としては特に限定されず、例えば、上記の各種アミン化合物とコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等のカルボン酸化合物とから合成されるポリアミノアミド化合物及びその誘導体;上記の各種アミン化合物とジアミノジフェニルメタンビスマレイミド等のマレイミド化合物とから合成されるポリアミノイミド化合物及びその誘導体;上記の各種アミン化合物とケトン化合物とから合成されるケチミン化合物及びその誘導体;上記の各種アミン化合物とエポキシ化合物、尿素、チオ尿素、アルデヒド化合物、フェノール化合物、アクリル系化合物等の化合物とから合成されるポリアミノ化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらのアミン化合物から合成される化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
上記3級アミン化合物としては特に限定されず、例えば、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1等の3級アミン化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらの3級アミン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
上記イミダゾール化合物としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらのイミダゾール化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
上記ヒドラジド化合物としては特に限定されず、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン2酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらのヒドラジド化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0039】
上記メラミン化合物としては特に限定されず、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン等のメラミン化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらのメラミン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
上記酸無水物としては特に限定されず、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルへキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル−無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物等の酸無水物及びその誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0041】
上記フェノール化合物としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール等のフェノール化合物及びその誘導体等が挙げられる。これらのフェノール化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0042】
上記熱潜在性カチオン重合触媒としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を対アニオンとした、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等のイオン性熱潜在性カチオン重合触媒;N−ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等の非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒等が挙げられる。これらの熱潜在性カチオン重合触媒は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0043】
上記光潜在性カチオン重合触媒としては特に限定されず、例えば、6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フツ化ホウ素等を対アニオンとした、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等のイオン性光潜在性カチオン重合触媒;ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスホナート等の非イオン性光潜在性カチオン重合触媒等が挙げられる。これらの光潜在性カチオン重合触媒は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0044】
上記エポキシ系樹脂には、適宜樹脂改質のために、例えば、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム(エラストマー)類、無機フィラー、その他の化合物等の改質剤が添加されても良い。
【0045】
改質剤に用いる熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、各種のフェノール系樹脂、多官能マレイミド系樹脂、多官能(メタ)アクリレート系樹脂、ジアリルフタレートやトリアルケニルイソシアヌレート等のポリアルケニル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0046】
また、改質剤に用いる熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ポリスチレン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルスルフォン、ポリアセタール、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0047】
また、改質剤に用いるゴム(エラストマー)類としては特に限定されず、例えば、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合ゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム等が挙げられる。これらのゴム(エラストマー)類は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0048】
更に、改質剤に用いる無機フィラーとしては特に限定されず、例えば、タルク、粉砕型アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミウィスカ、チタン酸バリウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。
【0049】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、層状珪酸塩を含有する。本明細書において層状珪酸塩とは、結晶層間に交換性カチオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。なかでも、モンモリロナイト、ヘクトライト及び膨潤性マイカからなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。上記層状珪酸塩は天然物又は合成物のいずれであっても良い。また、これらの層状珪酸塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0050】
上記層状珪酸塩としては、下式により定義される形状異方性効果が大きいスメクタイト系粘土鉱物や膨潤性マイカを用いることが、難燃性エポキシ樹脂組成物の機械的強度向上やガスバリア性向上の点から好ましい。
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶表面(B)の面積
なお、式中、結晶表面(A)は層表面を意味し、結晶表面(D)は層側面を意味する。
【0051】
上記層状珪酸塩の結晶層間に存在する交換性カチオンとは、結晶表面上に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンのことであり、これらの金属イオンは、カチオン性物質とカチオン交換性を有するので、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の結晶層間に捕捉(インターカレート)することができる。
【0052】
上記層状珪酸塩のカチオン交換容量としては特に限定されないが、好ましい下限は50ミリ等量/100g、上限は200ミリ等量/100gである。50ミリ等量/100g未満であると、カチオン交換により結晶層間に捕捉できるカチオン性物質の量が少なくなるので、結晶層間が充分に非極性化されないことがあり、200ミリ等量/100gを超えると、層状珪酸塩の結晶層間の結合力が強固となり、結晶薄片が剥離し難くなることがある。
【0053】
本発明においては、予め層状珪酸塩の結晶層間をカチオン性界面活性剤やヒンダードアミン系化合物でカチオン交換し、疎水化しておくことが好ましい。予め層状珪酸塩の結晶層間を疎水化しておくことにより、層状珪酸塩とエポキシ系樹脂との親和性が高まり、層状珪酸塩をエポキシ系樹脂中により均一に微分散させることができる。
【0054】
上記カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、炭素数6以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩(アルキルアンモニウムイオン)は、層状珪酸塩の結晶層間を充分に非極性化し得るので好適に用いられる。
【0055】
上記4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、ポリオキシプロピレン(25)メチルジエチルアンモニウム塩、ジポリオキシエチレン(15)ヤシ油アルキルメチルアンモニウム塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ヤシ油アルキルメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C14〜18)ジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0056】
また、上記4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、トリオクチルメチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩、ポリオキシプロピレン(25)メチルジエチルホスホニウム塩、ジポリオキシエチレン(15)ヤシ油アルキルメチルホスホニウム塩、ビス(2−ヒドロキシエチル)ヤシ油アルキルメチルホスホニウム塩、ジアルキル(c14〜18)ジメチルホスホニウム塩等が挙げられる。これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0057】
上記ヒンダードアミン系化合物とは、下記一般式(2)で表されるように、ピペリジンの2位及び6位の炭素上の全ての水素原子がメチル基で置換された構造を有するものである。
【0058】
【化2】
Figure 0003962351
【0059】
式中、R、R’は、それぞれ独立して、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アリル基、置換アリル基、水素原子、ハロゲン原子を表し、又は、R、R’からなる組み合わせのうち少なくとも1つは結合した炭化水素基、又は、上記炭化水素基の一部の炭素原子が窒素原子、硫黄原子、酸素原子又は珪素原子で置換された官能基を示す。
【0060】
上記ヒンダードアミン系化合物としては特に限定されず、公知の各種ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。これらのヒンダードアミン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
上記ヒンダードアミン系化合物は、ラジカル捕捉剤として機能し、非燃焼時においては難燃熱硬化性樹脂組成物に優れた耐光性を付与するとともに、燃焼時においては燃焼過程で生成する活性なラジカルを捕捉し、安定化することができる。したがって、上記ヒンダードアミン系化合物としては、分解温度が高い等の高温安定性に優れるものを用いることが好ましい。このような高温安定性に優れるヒンダードアミン系化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(3)で表されるN−アルコキシヒンダードアミンが挙げられる。
【0061】
【化3】
Figure 0003962351
【0062】
式中、Rは、下記式(4)で表される構造を示す。
【0063】
【化4】
Figure 0003962351
【0064】
上記ヒンダードアミン系化合物のうち市販されているものとしては、例えば、三共社製の商品名「Sanol」シリーズ、旭電化工業社製の商品名「アデカスタブ」シリーズ、住友化学工業社製の商品名「スミソープ」シリーズ、共同薬品社製の商品名「バイオソープ」シリーズ、CibaSpecialities社製の商品名「Chimassorb」シリーズや商品名「Tinuvin」シリーズ、Goodrich社製の商品名「Goodrite」シリーズ、BASF社製の商品名「ユビナール」シリーズ等が挙げられる。これらの市販のヒンダードアミン系化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0065】
本発明で用いられる層状珪酸塩は、上述のように化学処理によって、本発明で用いられるエポキシ樹脂中への分散性を向上させることができる。
上記化学処理は、カチオン性界面活性剤やヒンダードアミン系化合物によるカチオン交換法(以下、化学修飾(1)法ともいう)に限定されるものではなく、例えば、以下に示す化学修飾(2)〜化学修飾(6)法の各種化学処理法によっても実施することができる。これらの化学修飾法は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、化学修飾(1)法を含め、以下に示す各種化学処理法によって熱可塑性樹脂中及び/又は熱硬化性樹脂中への分散性を向上させた層状珪酸塩を、以下、「有機化層状珪酸塩」ともいう。
【0066】
化学修飾(2)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0067】
化学修飾(3)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基及び反応性官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0068】
化学修飾(4)法は、化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面を、アニオン性界面活性を有する化合物で化学処理する方法である。
【0069】
化学修飾(5)法は、化学修飾(4)法において、アニオン性界面活性を有する化合物の分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物で化学処理する方法である。
【0070】
化学修飾(6)法は、上記化学修飾(1)法〜化学修飾(5)法のいずれかの方法で化学処理された有機化層状珪酸塩に、更に、例えば、無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル系樹脂のような層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する樹脂を添加した組成物を用いる方法である。
【0071】
上記化学修飾(2)法における、水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基としては特に限定されず、例えば、アルコキシ基、グリシジル基、カルボキシル基(二塩基性酸無水物も包含する)、水酸基、イソシアネート基、アルデヒド基等の官能基や、水酸基との化学的親和性が高いその他の官能基等が挙げられる。また、上記水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記に例示した官能基を有するシラン化合物、チタネート化合物、グリシジル化合物、カルボン酸類、アルコール類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0072】
上記シラン化合物としては特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0073】
化学修飾(4)法及び化学修飾(5)法における、アニオン性界面活性を有する化合物、アニオン性界面活性を有し分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物としては、イオン相互作用により層状珪酸塩を化学処理できるものであれば特に限定されず、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、不飽和アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0074】
上記層状珪酸塩は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上、5nm以下であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散している。
なお、本明細書において層状珪酸塩の平均層間距離とは、層状珪酸塩の微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離を意味し、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影、即ち、広角X線回折測定法により算出することができる。
【0075】
層状珪酸塩の平均層間距離が3nm以上であるということは、層状珪酸塩の層間が3nm以上に開裂していることを意味しており、また、層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散しているということは、層状珪酸塩の積層体の一部又は全部が分散していることを意味する。これらはいずれも層状珪酸塩の層間の相互作用が弱まっていることを意味する。
【0076】
層状珪酸塩の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散していると、層状珪酸塩をエポキシ系樹脂中に分散させて得られる本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、優れた難燃性、力学的物性、高温物性、耐熱性、寸法安定性等の諸性能を発現するものとなる。平均層間距離が3nm未満であると層状珪酸塩のナノメートルスケールでの分散による効果が充分に得られず、力学物性、難燃性の改善は通常の無機充填材を複合した場合と同じ範囲に留まる。平均層間距離が5nmを超えると、層状珪酸塩の結晶薄片が層毎に分離し、層状珪酸塩の相互作用が無視できるほど弱まるので、燃焼時の被膜形成速度が遅くなり、難燃性の向上が充分に得られないことがある。
【0077】
層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散しているということは、具体的には、層状珪酸塩の10%以上が5層以下に分散している状態にあることが好ましいことを意味し、より好ましくは層状珪酸塩の20%以上が5層以下に分散している状態である。
なお、層状珪酸塩の分散状態は、透過型電子顕微鏡を用いて5万〜10万倍で観察して、一定面積中において観察できる層状珪酸塩の積層集合体の全層数(X)のうち5層以下で分散している積層集合体の層数(Y)を計測し下記式により算出することができる。
5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(%)=(Y/X)×100
【0078】
層状珪酸塩の積層数は、5層以下に分層しており、そのことにより、上記効果を得ることができるが、より好ましくは3層以下に分層していることであり、特に好ましくは単層状に薄片化していることである。
【0079】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物において、層状珪酸塩の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散している状態、即ち、エポキシ系樹脂中に層状珪酸塩が高分散している状態であれば、エポキシ系樹脂と層状珪酸塩との界面面積が増大し、層状珪酸塩の結晶薄片間の平均距離が小さくなる。
【0080】
エポキシ系樹脂と層状珪酸塩との界面面積が増大すると、層状珪酸塩の表面におけるエポキシ系樹脂の拘束の度合いが高まり、弾性率等の力学的物性が向上する。また、層状珪酸塩の表面におけるエポキシ系樹脂の拘束の度合いが高まると、溶融粘度が高まり、成形性も向上する。更に、ポリマー中では無機物に比べてガス分子の方がはるかに拡散しやすいので、エポキシ系樹脂中をガス分子が拡散する際には、無機物を迂回しながら拡散するため、ガスバリア性の発現も可能となる。
【0081】
更に詳しくは、層状珪酸塩の表面におけるエポキシ系樹脂の拘束の度合いが高まると、常温から高温までの広い温度領域で力学物性が向上する。驚くべき事には、樹脂のガラス転移点、融点以上の高温領域でも力学物性を保持することができる。このことにより、高温時の線膨張率も低く抑えることができる。かかる理由は明らかではないが、ガラス転移点又は融点以上の領域においても、微分散状態の層状珪酸塩が一種の疑似架橋点として作用しているためにこれら物性が発現していると考えられる。
【0082】
また、ガスバリア性に関しては、耐溶剤性、吸湿性、吸水性が向上するばかりか、ガス分子以外の物質のバリア性も発現する。例えば、エポキシ系樹脂の用途の一つである多層プリント配線板では、銅回路からの銅のマイグレーションが問題となることがあるが、これも抑制される。更に、これら材料では、材料に添加された微量添加物が表面にブリードアウトすることで、メッキ不良等の不具合を発生することがあるが、このような添加物のブリードアウトも起こりにくい。
【0083】
一方、層状珪酸塩の結晶薄片間の平均距離が小さくなると、燃焼時において、層状珪酸塩の結晶薄片の移動による焼結体を形成し易くなる。即ち、平均層間距離が3nm以上となるように層状珪酸塩が分散した本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物では、層状珪酸塩の結晶薄片間の平均距離が小さくなり、難燃被膜となり得る焼結体を形成し易くなる。この焼結体は、燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスをも遮断することができ、したがって本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は優れた難燃性を発現する。
【0084】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物における上記層状珪酸塩の配合量の下限は、上記エポキシ系樹脂100重量部に対して1重量部、上限は40重量部である。1重量部未満であると、難燃被膜となり得る焼結体を形成し難くなって、難燃効果が小さいものとなり、40重量部を超えると、得られる難燃性エポキシ樹脂組成物の密度(比重)が高くなったり、屈曲に対する柔軟性が欠如したりするため、実用性が失われる。好ましい下限は2重量部、上限は20重量部である。
【0085】
エポキシ系樹脂中に層状珪酸塩を分散させる手段としては特に限定されず、例えば、上記有機化層状珪酸塩を用いる方法、エポキシ系樹脂と層状珪酸塩とを常法によって混合した後に発泡させる方法、ブロック共重合体を分散剤として用いる方法等が挙げられる。これらの分散方法を用いることにより、層状珪酸塩をエポキシ系樹脂中により均一かつ微細に分散することができる。
【0086】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、更に、非ハロゲン系難燃剤を含有することが好ましい。
上記非ハロゲン系難燃剤としては、エポキシ系樹脂に難燃性を付与することができるものであれば特に限定されず、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、水酸化カルシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。なかでも、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムが好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。2種類以上の金属水酸化物を併用すると、各々の金属水酸化物が異なる温度で吸熱脱水反応(分解脱水反応)を開始するので、より高い難燃効果が得られる。
【0087】
上記金属水酸化物は、各種の表面処理剤により表面処理が施されているものであっても良い。上記表面処理剤としては特に限定されず、例えば、脂肪酸系表面処理剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等が挙げられる。低吸水性の難燃性エポキシ樹脂組成物を得るためには、なかでも、脂肪酸系表面処理剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、エポキシ系表面処理剤が好適である。なかでも、脂肪酸系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤がより好適である。
【0088】
上記金属水酸化物は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こすことにより、吸熱し、かつ、水分子を放出することにより燃焼場の温度を低下させ、消火する効果がある。本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物においては、層状珪酸塩が高分散されていることにより、上記金属水酸化物による難燃効果が増大される。これは、層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃効果と、金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃効果とが協奏的に起こり、それぞれの効果が助長されることによると考えられる。
【0089】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物において、エポキシ系樹脂100重量部に対する非ハロゲン系難燃剤の配合量の好ましい下限は5重量部、上限は100重量部である。5重量部未満であると、充分な難燃効果を発揮しにくいことがあり、100重量部を超えると、難燃効果は発現するものの、密度(比重)の増大、柔軟性の欠如、吸水率の増大、誘電特性や絶縁性の低下等のデメリットが発生することがある。より好ましい下限は20重量部、上限は60重量部である。この範囲内であると機械的強度や電気的特性等の材料物性に問題となる領域ではなく、難燃熱硬化性樹脂組成物を絶縁基板材料として好適に用いることができる。
【0090】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、更に難燃助剤を含有することが好ましい。
上記難燃助剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、フッ素樹脂、シリコーンオイル、ハイドロタルサイト類化合物、金属酸化物、シリコーンーアクリル複合ゴム等が挙げられる。これらの難燃助剤を用いることによりエポキシ系樹脂の分解を防ぎ、最大発熱速度を抑制することができる
これらの難燃助剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0091】
上記ヒンダードアミン系化合物は、上述のように、上記一般式(2)で表される構造を有する化合物である。上記ヒンダードアミン系化合物は、ラジカル捕捉剤として機能し、非燃焼時においては難燃性エポキシ樹脂組成物に優れた耐光性を付与するとともに、燃焼時においては燃焼過程で生成する活性なラジカルを捕捉し、安定化することができる。したがって、上記ヒンダードアミン系化合物としては、分解温度が高い等高温安定性に優れるものを用いることが好ましい。かかる高温安定性に優れるヒンダードアミン系化合物としては、例えば、上記一般式(3)で表されるN−アルコキシヒンダードアミンが挙げられる。
【0092】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物においては、上記層状珪酸塩が高分散されていることにより、ヒンダードアミン系化合物による難燃効果が増大される。これは、層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃効果と、ヒンダードアミン系化合物のラジカル安定化反応による難燃効果とが協奏的に起こり、それぞれの効果が助長されることによると考えられる。また、非ハロゲン系難燃剤として用いられる水酸化マグネシウム等の金属水酸化物と併用される場合も、金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃効果と、ヒンダードアミン系化合物のラジカル安定化反応による難燃効果との相乗的な効果が大きいので好ましい。
【0093】
上記フッ素樹脂は、燃焼時において溶融した難燃性エポキシ樹脂組成物中でフッ素樹脂が溶融粘度を向上させることにより、溶融樹脂が落下(ドリップ)するのを効果的に抑制し、延焼防止効果を付与できる。
更に、これにより燃焼時に層状珪酸塩による焼結被膜の形成が阻害されないので、難燃性が向上する。
フッ素樹脂はフッ素置換量が多いほど、分子構造上剛直になることにより凝集し難くなる。又、フッ素樹脂は延伸により繊維状構造をとり、より剛直になることが知られている。
【0094】
上記シリコーンオイルやシリコーンーアクリル複合ゴムは、活性基を有する高分子と燃焼時に反応してチヤー化を促進したり、又は、ガラス状の無機化合物の被膜が形成される時には、保護材として強固なものとなり、エポキシ系樹脂の熱分解を更に抑制する。
【0095】
本発明の難燃性エポキシ樹脂において、エポキシ系樹脂100重量部に対する難燃助剤の配合量の好ましい下限は0.1重量部、上限は20重量部である。0.1重量部未満であると、良好な難燃性を発現することが難しくなり、20重量部を超えると、機械的強度が低下したり、屈曲に対する柔軟性が欠如したりする等のデメリットを生じることがある。より好ましい下限は0.5重量部、上限は15重量部である。
【0096】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、更に、必要に応じて適宜添加剤が添加されても良い。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0097】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂、層状珪酸塩、非ハロゲン系難燃剤、難燃助剤の各所定配合量を直接配合して混合する方法や、エポキシ系樹脂に所定配合量以上の層状珪酸塩及び難燃助剤を配合、混合してマスターバッチを調製した後、調製されたマスターバッチに、所定の配合量となるようにエポキシ系樹脂と非ハロゲン系難燃剤とを加えて希釈する所謂マスターバッチ法等が挙げられる。
【0098】
上記難燃性エポキシ樹脂組成物を製造する際の混合方法としては特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば、エポキシ系樹脂、層状珪酸塩、非ハロゲン系難燃剤及び難燃助剤を、押出機、二本ロール、バンパリーミキサー等で溶融混練する方法や、エポキシ系樹脂、層状珪酸塩、非ハロゲン系難燃剤及び難燃助剤をこれらが溶解もしくは分散する有機溶媒中で混合する方法等が挙げられる。
【0099】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、ASTME1354に準拠して、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m2以下であり、より好ましくは、300kW/m2以下である。上記最大発熱量が350kW/m2を超えると、充分な難燃性を発現できないことがある。また、この条件を満たす難燃性エポキシ樹脂組成物は、多くの場合UL94に規定されている燃焼試験法においてV−0の認定水準を満たすことができる。
【0100】
また、本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、ASTME1354に準拠して、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼することにより得られた燃焼残渣を0.1cm/秒で圧縮した時の降伏点応力が4.9kPa以上であることが好ましい。上記降伏点応力が4.9kPa未満であると、僅かな衝撃により燃焼残渣が簡単に崩壊し、火災時に部品の破損等により高電圧部からの再発火等の危険性が生じることがある。
【0101】
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いたエポキシ系樹脂と層状珪酸塩とを含有することにより、トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物による難燃効果と、層状珪酸塩が高分散することによる難燃効果、延焼防止効果とがあいまって、極めて優れた難燃性を発現する。また、金属水酸化物等の難燃剤や難燃助剤を併用することにより、より優れた難燃性を発現することができるが、この場合であっても、加工性や機械的性質を損なうほどの大量の難燃剤を添加しなくとも、充分な難燃性が得られる。
本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物は、コンピュータ等の電子機器に用いられる絶縁基板材料に適している。本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物を用いることにより、高い難燃性を有し、廃棄時に有害物質を排出せず環境に負荷をかけない絶縁基板材料を得ることができる。
【0102】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、EPICLON850)60重量部、アミノトリアジン骨格を有するフェノールノボラック樹脂(大日本インキ社製、フェノライトLA−7054)40重量部からなるエポキシ樹脂組成物100重量部と、層状珪酸塩としてトリオクチルメチルアンモニウム塩で有機化処理が施された合成ヘクトライト(コープケミカル社製、ルーセンタイトSTN)20重量部と、有機溶剤としてメチルエチルケトン(和光純薬社製、特級)333重量部とをビーカーに加え、撹拌機にて4時間撹拌した後、脱泡し、樹脂/層状珪酸塩溶液を得た。
次いで、得られた樹脂/層状珪酸塩溶液を鋳型に入れた状態又はポリエチレンテレフタレートのシート上に塗布した状態で溶媒を除去した後、110℃で3時間加熱し、更に170℃で30分間加熱して硬化させ、板状物に成形して、評価用サンプルを得た。
【0104】
(実施例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、EPICLON850)56.18重量部、アミノトリアジン骨格を有するフェノールノボラック樹脂(大日本インキ社製、フェノライトLA−1356)43.82重量部からなるエポキシ樹脂組成物100重量部と、層状珪酸塩としてジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理した膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフMAE−100)5重量部と、有機溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製、特級)333重量部とをビーカーに加え、撹拌機にて4時間撹拌した後、脱泡し、樹脂/層状珪酸塩溶液を得た。
次いで、得られた樹脂/層状珪酸塩溶液を鋳型に入れた状態又はポリエチレンテレフタレートのシート上に塗布した状態で溶媒を除去した後、110℃で3時間加熱し、更に170℃で30分間加熱して硬化させ、板状物に成形して、評価用サンプルを得た。
【0105】
参考
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ社製、EPICLONN770)72.12重量部、アミノトリアジン骨格を有するフェノールノボラック樹脂(大日本インキ社製、フェノライトLA−7054)27.88重量部からなるエポキシ樹脂組成物100重量部と、層状珪酸塩としてトリオクチルメチルアンモニウム塩で有機化処理が施された合成ヘクトライト(コープケミカル社製、ルーセンタイトSTN)30重量部と、有機溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬社製、特級)333重量部とをビーカーに加え、撹拌機にて4時間撹拌した後、脱泡し、樹脂/層状珪酸塩溶液を得た。
次いで、得られた樹脂/層状珪酸塩溶液を鋳型に入れた状態又はポリエチレンテレフタレートのシート上に塗布した状態で溶媒を除去した後、110℃で3時間加熱し、更に170℃で30分間加熱して硬化させ、板状物に成形して、評価用サンプルを得た。
【0106】
(比較例1)
トリオクチルメチルアンモニウム塩で有機化処理が施された合成ヘクトライトを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、液状の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造し、評価用サンプルを作製した。
【0107】
(比較例2)
ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理した膨潤性フッ素マイカを配合しなかったこと以外は実施例2と同様にして、液状の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造し、評価用サンプルを作製した。
【0108】
(比較例3)
トリオクチルメチルアンモニウム塩で有機化処理が施された合成ヘクトライトを配合しなかったこと以外は参考と同様にして、液状の難燃性エポキシ樹脂組成物を製造し、評価用サンプルを作製した。
【0109】
実施例1,2、参考例1及び比較例1〜3で得られた評価用サンプルについて、(1)層状珪酸塩の平均層間距離、(2)層状珪酸塩の層の剥離状態、(3)酸素指数、(4)最大発熱速度、(5)燃焼残渣の降伏点応力、(6)耐ドリップ性を下記の方法により評価した。
結果を表1に示した。
【0110】
(1)層状珪酸塩の平均層間距離の測定
X線回折測定装置(リガク社製、商品名「RINT1100」)を用いて、評価用サンプル中の層状珪酸塩の積層面の回折より得られる回折ピークの2βを測定し、下記のブラッグの回折式により、層状珪酸塩の(001)面間隔(d)を算出し、得られたdを平均層間距離(nm)とした。
λ=2dsinθ
式中、dは層状珪酸塩の面間隔を表し、θは回折角を表し、λは0.154である。
【0111】
(2)層状珪酸塩の層の剥離状態の評価
透過型電子顕微鏡(日本電子社製、商品名「JEM−1200EXII」)を用いて写真撮影を行い、得られた写真により、評価用サンプル中の層状珪酸塩の層の剥離状態を観察し、下記判定基準により評価した。
◎:層状珪酸塩の数の20%以上が5層以下で存在していた。
○:5層以下で存在しているものを含んで分散していた。
×:全てが5層を超える状態で存在していた。
【0112】
(3)酸素指数の測定
燃焼試験ASTM D 2863「酸素指数によるプラスチックの燃焼性標準試験方法」に準拠して、評価用サンプルからなる試験片(長さ170mm×幅6mm厚さ3mm)を自立させて燃焼試験を行った。試験片が燃焼を縦続するのに必要な酸素と窒素との混合気体中の容量%で表される最低酸素濃度の数値を酸素指数と呼び、所定の酸素濃度で試験片を燃焼させた時に、3分間以上燃焼し続けたか、又は、3分間以内に50mm以上燃焼した場合を燃焼を継続できると判断し、その時の酸素濃度を試験片の酸素指数とした。即ち、酸素指数未満の酸素濃度では自己消火することを意味する。
【0113】
(4)最大発熱速度の測定
(5)燃焼残渣の降伏点応力の測定
燃焼試験ASTM E1354「建築材料の燃焼性試験方法」に準拠して、評価用サンプルからなる試験片(100mm×100mm×厚さ3mm)にコーンカロリーメーターによって50kW/m2の熱線を照射して燃焼させた。このとき、試験片の最大発熱速度(kW/m2)を測定した。上記最大発熱速度が速いほど、初期着火時間が短く、着火し易いことになる。
また、ハンディー圧縮試験機(カトーテック社製、商品名「KES−G5」)を用いて、試験片の燃焼残渣を0.1cm/秒で圧縮し、燃焼残渣の降伏点応力(kPa)を測定した。
なお、燃焼残渣が形成されなかったか、又は、燃焼残渣が微力で崩壊してしまい降伏点応力の測定ができなかった場合は「測定不可」とした。
【0114】
(6)耐ドリップ性の評価
評価用サンプルからなる試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ0.8mm)の上部をクランプで固定し、試験片の下部底面に着火し、燃焼試験片が形状を維持できずに、その一部が脱落しないかを観察した。すなわち、試験片の真下20cmの所に外科用綿を置き、試験中に燃焼試験片からの燃焼脱落物によって外科用綿が着火するか否かを目視で観察し、下記判定基準により耐ドリップ性を評価した。
○:外科用綿が着火しなかった。
×:外科用綿が着火した。
【0115】
【表1】
Figure 0003962351
【0116】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた難燃性を発現し、かつ、機械的強度、強靭性、耐熱性、誘電特性、絶縁性等の材料物性や環境対応性にも優れる難燃性エポキシ樹脂組成物を提供できる。

Claims (3)

  1. トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いたエポキシ系樹脂100重量部と層状珪酸塩1〜40重量部とを含有し、
    層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上、5nm以下であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散しており、
    ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m 2 以下であることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物。
  2. トリアジン骨格とフェノール骨格とを有する化合物を硬化剤として用いたエポキシ系樹脂100重量部と層状珪酸塩1〜40重量部とを含有し、
    層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上、5nm以下であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散しており、
    ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼した時の最大発熱速度が350kW/m 2 以下であり、
    ASTM E 1354に準拠して、50kW/m 2 の輻射加熱条件下で30分間加熱し燃焼することにより得られた燃焼残渣を0.1cm/秒で圧縮した時の降伏点応力が4.9kPa以上であることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂組成物。
  3. 層状珪酸塩は、モンモリロナイト、ヘクトライト及び膨潤性マイカからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性エポキシ樹脂組成物。
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