JP3962204B2 - インクジェット染色方法 - Google Patents
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Description
本発明は、顔料インクを用いてインクジェット方式により記録または染色する染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から布帛に対して色材を用いてインクジェット方式で記録または染色する技術が開発されてきている。
一般に色材として、染料や顔料を含有するインクが使用されているが、これらのインクを使用するインクジェット染色方法については、製品としての布帛の品質、品位を向上するための種々の改良が行われている。
しかし、染料や顔料を含有するインクを使用してインクジェット染色を行うと、布帛面に「滲み」現象が生じ、この「滲み」が製品として品質を低下させる大きな要因であった。
【0003】
布帛に対するインクジェット方式による記録または染色する方法において、上記「滲み」現象の防止をはじめ、堅牢度や鮮明度等の向上を目的とする数多くの技術が提案されてきている。
【0004】
しかし、平滑でかつ染色性も比較的良好な紙などの被染色物の場合とは異なり、布帛の場合は、布帛を構成する繊維素材として各種の化学的性質の異なるものが使用され、かつ繊維組織の有方向性や繊維間に空隙を有するために、十分にそれらの目的を達成することができない。
【0005】
このような従来技術の例として、繊維構造物(布帛)の表面に染料インクに対するゲル化剤を付与する方法(特開昭60−81379号公報)、特定の表面張力を有する染料インクと特定の撥水度の布帛を用いて染色する方法(特開昭60−99081号公報)、染料に対して高分子化合物等の非染着性の化合物を布帛に含有せしめる方法(特開昭61−55277号公報)、ポバールを添加したインクに対して該ポバールをゲル化せしめる薬剤を布帛に付与する方法(特開昭61−231287号公報)、水不溶性染料含有インクを用いて含窒素カチオン性物質等を付与せしめた布帛を染色する方法(特公昭62−45359号公報、特公平2−50234号公報、特開平7−119047号公報)、イオン性染料を含有するインクを用いて該染料と反対のイオン性を有する高分子物質等を付与した布帛を染色する方法(特開平7−214765号公報、特開平7−292581号公報)、布帛等の基材表面に、CaイオンまたはBaイオンを含有する、吸水性ポリウレタンおよびカチオン性基を有するアクリル系ポリマーからなるインク受容層を設けた記録媒体(特開平9−39372号公報)等を挙げることができる。
【0006】
上記先行技術は、主に染料インクにより染色する方法に関するものである。
染料インクを使用する場合、染料には各種の色合いの色素化合物があることから、色調の優れた鮮明な図柄を、布帛に現出することができるという利点を有する。
しかし、染色工程後に洗浄工程が必要であり、また廃液処理が不可欠である等の生産性の問題や環境汚染に対する考慮も必要となる。
また、上記のような高分子物質あるいはカチオン系化合物を含有する処理液で処理した布帛を使用する染色法の場合においては、高分子物質あるいはカチオン系化合物の種類によって印写物の耐水性にバラツキがあったり、風合いを損なうという問題がある。
【0007】
これに対し、顔料インクを使用する場合は、一般に染料インクを使用する場合に比べて色調や鮮明性などに劣るものの、顔料自体が耐光性、耐候性に優れている。
そのため、例えば、屋外で掲示される広告布帛、具体的には、懸垂幕、横断幕、あるいは布看板などの広告用シートのための色材として適している。
また、顔料インクにより染色する際に、顔料は通常、バインダーにより固定されるから、染色後の洗浄工程を必要としないという利点を有する。
このような理由から、顔料インクによるインクジェット染色法が近年注目されるようになってきた。
【0008】
しかし、顔料インクによるインクジェット記録媒体として、紙、シート等の基材上に、シリカ、アルミナ等の無機顔料粒子を含むインク受容層を形成させることが一般的になされているが、この技術を布帛に応用した場合、布帛の特徴である風合いを損ない、また、インク受容層の布帛に対する接着性が弱くなり、耐摩耗性、耐剥離性が劣ってしまう。
紙またはフィルムのように表面が平滑な記録材では、高濃度で滲みの少ない印写物を得ることは容易であるが、布帛は、それを構成する糸条自身に凹凸を有し、更に織り編み組織による空隙や凹凸もあって平滑でない。
【0009】
そのため、顔料インクの浸透バラツキが起こり易く、顔料が布帛に均一に付与されにくい。
結果的に、生地の不均染や、濃度のダウンが起こりやすくなり、また、乾燥時のマイグレーションにより顔料が凝集し、高濃度で滲みの少ない印写布を得ることは困難となる。
また、染料や顔料で染色された布帛の耐水性、耐摩耗性をあげるために、染色後にウレタン樹脂などを布帛にコーティング、或いは、パディングなどの方法により付与することが行われているが、風合いを損なうと共に、樹脂付与工程が必要となるなどの問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような技術的背景のもとで、それらの問題点を解決すべくなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、顔料インクを使ったインクジェット染色技術において、高濃度で優れた耐水性、耐摩耗性を有し、かつ風合いを損なわない印写が可能なインクジェット記録用布帛、その製造方法、その染色方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
しかして、本発明者等は、このような課題を解決するために鋭意研究した結果、インク受容層として特定の低分子化合物を含む酸性の処理液を使用することにより、上記の問題点を解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0017】
即ち、本発明は、(1)融点又は軟化点が40℃〜150℃の疎水性低分子化合物を含有する酸性のインク受容層が繊維布帛表面に形成されたインクジェット記録用布帛に対して顔料インクを用いてインクジェット方式により染色するインクジェット染色方法に存する。
【0018】
また、本発明は、(2)、疎水性低分子化合物が、低分子量アルキレン系化合物、脂肪酸アミド系化合物、多価アルコール脂肪酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる上記(1)記載のインクジェット染色方法に存する。
【0019】
また、本発明は、(3)、インク受容層に、さらに1%水溶液における電気伝導度が0.5mS/cm〜10.0mS/cmで、かつ数平均分子量が1000〜50000であるカチオン系樹脂を含有させてなる上記(1)又は(2)に記載のインクジェット染色方法に存する。
【0020】
また、本発明は、(4)、インク受容層のpHが2.0〜6.0である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のインクジェット染色方法に存する。
【0021】
また、本発明は、(5)、インクジェット方式により染色した後、疎水性低分子化合物の融点又は軟化点以上の温度で熱処理することにより、繊維表面に皮膜を形成させる上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のインクジェット染色方法に存する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明は、色材として顔料を使用し、インクジェット方式により印写する際に使用される高濃度で優れた耐水性、耐摩耗性を有し、かつ風合いを損なわない印写が可能なインクジェット記録用布帛である。
本発明では耐水性や耐摩耗性を向上させるために特定の低分子化合物を含む酸性の処理液で布帛の表面を前処理加工している。
このように処理液で前処理加工された布帛を乾燥することにより布帛の表面にはインク受容層が形成されてインクジェット染色に適した記録用布帛となる。
そして、その前処理加工によりインク受容層が形成された布帛に、顔料インクでインクジェット記録して染色するものである。
【0023】
すなわち、前処理加工に用いられる処理液に含まれる低分子化合物として、その融点または軟化点が40℃〜150℃、好ましくは50℃〜140℃の範囲のものとしている。
【0024】
顔料は均一に分散された状態で記録材に付与された場合には、顔料粒子径が小さく、顔料の表面積が大きくなり、濃度、滲み防止性とも向上する。
顔料が均一に分散されていないと、顔料分子が凝集して粒子径が大きい状態になり、濃度、滲み防止性ともに低下する。
【0025】
本発明の疎水性低分子化合物の分子量は、数平均分子量が10000以下、好ましくは5000以下、更に好ましくは、100〜2000の化合物が採用される。
平均分子量が10000以上であると融点又は軟化点が高くなり、又、乳化分散しにくくなるという問題がある。
あらかじめ、疎水性の低分子化合物で繊維布帛表面を処理することにより、繊維布帛表面を平滑にして繊維表面を均一に疎水性化することができるため、顔料インクは布帛表面に均一に付与される。
顔料を分散させている水成分も布帛内部に浸透することなく印写されたインク受容層の表層にとどまる。
乾燥時にもマイグレーションを起さず、インク受容層表層にとどまることができるから、顔料粒子をマイグレーションさせることなく繊維表面に均一に印写付与することができる。
このような作用に基づき、高濃度で滲みの少ない印写物を得ることが可能となる。
【0026】
印写後、低分子化合物の融点又は軟化点以上の温度で印写物の熱処理を行うことにより、低分子化合物が溶融して印写面を覆うような状態で固化するので、顔料を強固に固着し、耐水性、及び耐摩耗性等に優れた印写物を得ることができるのである。
【0027】
低分子化合物の融点または軟化点が40℃〜150℃の範囲のものを用いるのは、40℃未満の場合は加工安定性、製品の保管安定性に問題があり、150℃以上の場合は溶融させるための熱処理温度が高温になるため布帛の黄変、劣化等の問題が発生すると同時に風合いを損ねる場合があるからである。
以上に挙げた作用は、疎水性であって、かつある特定の範囲の融点又は軟化点を持つ低分子化合物を用いることによりなし得るものである。
【0028】
インクジェット方式で使用する顔料インクは該顔料の分散効果をあげるためにイオン性のある高分子を配合し電気的な反発によりその分散効果を高めており、一般に顔料インクはpHが中性から弱アルカリ性にして安定化されているので、本願発明の水性処理液は酸性液とすることにより、顔料とインク受容層との定着性を高めることができる。
【0029】
本発明に用いられる特定の疎水性低分子化合物の種類としては、特に限定は
なく、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の低分子量アルキレン系化合物、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックスなどの石油化学系合成ワックス類、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウなどの植物性ワックス類、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、エチレンビスステアリンアミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、メチロールステアリンアミド等の脂肪酸アミド系化合物、エトキシルセチルアルコール、エトキシルステアリルアルコール等の高級アルコール系化合物、グリセリンオレイン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコールステアリン酸エステル、エチレングリコールステアリン酸エステル等のグリコール脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル系化合物、12―ヒドロキシステアリン酸エステル、12―ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12―ヒドロキシステアリン酸アミド等の12―ヒドロキシステアリン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物のなかから、布帛を形成する繊維の性質、顔料インクの性質、加工条件、要求物性にあったものを適宜選択して使用するとよい。
【0030】
本発明において、低分子量アルキレン系化合物は、数平均分子量が10000以下、好ましくは5000以下、更に好ましくは100〜2000の化合物を意味する。
また、高級アルコール系化合物は、炭素数が12以上、好ましくは16以上のアルコール系化合物を意味する。
【0031】
以上の疎水性低分子化合物のうち、布帛との接着、被覆性を考慮すると、低分子量アルキレン系化合物、脂肪酸アミド系化合物、多価アルコール脂肪酸エステル系化合物が好ましい。
これら低分子化合物の内2種類以上を混合して用いる場合には乳化分散を容易に行うことができるので、更に好ましい。
【0032】
特定の低分子化合物の布帛への付与量は用いる繊維布帛素材によっても異なるが、布帛に対して0.5〜20重量%が好ましい。
付与量が0.5重量%以下ではインクを布帛表層に留めて、インクの浸透防止効果や、濃度を向上させる効果が期待できないばかりでなく、熱処理後の耐水性、耐摩耗性の効果が十分でない。
また、20重量%以上では耐水性や耐摩耗性の大きな向上が期待できないばかりでなく、滲みや均染性の不良が起こる虞がある。
そのようなインクの浸透防止効果、濃度の向上、耐水性、耐摩耗性の効果等を図る上から、インク受容層の厚さは、0.25〜20μmの範囲とすることが好ましい。
【0033】
インクの分散状態を壊し、顔料を定着させるには、布帛に形成されるインク受容層を酸性にすると効果がある。
その為に、インク受容層を形成させるための処理液のpHを2.0〜6.0、好ましくはpH2.5〜5.0にし、この処理液を用いて繊維布帛を前処理加工することが好ましい。
処理液のpHが2.0以下の場合は加工機械等の腐食及び布帛の劣化等が懸念され、pHが6.0以上ではインクの分散状態を壊す作用が小さくなる。
用いられるpH調整剤としては、リン酸、ホウ酸、ケイ酸、酢酸、炭酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸などが挙げられる。
インク受容層が酸性であるか否かは、インク受容層が形成された布帛から、5.0±0.1gの試験片を採取しガラス栓付の200mlフラスコに50ml蒸留水を入れ、フラスコを振とうし、pH測定器で抽出液のpHを測定することにより判断できる。
【0034】
インクと処理液のイオン性の違いを利用して顔料を定着させるには、布帛に塗布する処理液が1種類以上のカチオン系の樹脂を含んでいると効果がある。
用いられるカチオン系の樹脂としては、電気伝導度が1%水溶液の状態で0.5mS/cm〜10mS/cm、及び分子量が1000〜50000であるカチオン系樹脂を少なくとも1種類以上含んでいることが好ましい。
耐水性をあげるために、末端に架橋基を有するカチオン系樹脂、もしくは、分子量が数万のカチオン系の樹脂を併用しても問題はない。
【0035】
ここで電気伝導度が0.5mS/cmより小さい場合は、顔料と結合できる布帛上のイオン性成分が不足するため布帛上の未固着顔料が増え耐水性がダウンする。
また、顔料の凝集が小さく止まり鮮明度や濃度が上がらなくなる。
電気伝導度が10.0mS/cmより大きい場合は、顔料分子と樹脂の結合力はアップし濃度は高くなるが、布帛表面上に未反応の樹脂が残留し結果的に耐水性がダウンし、更に色相に悪影響を与える。
用いられるカチオン系樹脂の具体例としては、エチレンアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレントリアミン、アリルアミン、ジアリルアミン、エピクロヒドリン・ジメチルアミン等のアミン類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、ジシアンアミド、ジシアンジアミド、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン等のジシアン類のポリマー及びオリゴマー等の物質が挙げられる。
【0036】
一般に、カチオン系樹脂の性能を決める指標としてカチオン化度が採用されているが、カチオン化度はコロイド滴定の終点判定によって決められるため誤差が生じやすく、必ずしも顔料インクの定着性との間に相関関係が見出されない。
しかし、本願発明のようなカチオン系樹脂の電気伝導度及び分子量を採用すると顔料インクの定着性との間に顕著な相関関係が生じ、カチオン系樹脂が極めて有効に作用する。
【0037】
なお、電気伝導度の測定については、次の方法に従って行なわれる。
即ち、純水にカチオン系樹脂を溶解させて1%の水溶液を作成した後、この水溶液を電導度計CM−20S(東亜電波工業株式会社製)を用いて測定する。
カチオン系樹脂からなる処理液には、微分散を維持させながら顔料を凝集させるために、2価以上の金属が混入されていると、尚一層の効果が見られて好ましい。
【0038】
2価の金属としてはCu、Zn、Ca、Sn、Ba等が、3価の金属としてはAl、Fe等が挙げられる。
【0039】
必要であれば上記処理液に、バインダー、架橋剤、粘度調整剤、浸透剤等を併用することもできる。
これらの薬剤は従来公知のものを用いることができるが、熱処理後に気化するものの他、熱処理後に不溶化するもので、インクジェット記録用布帛の耐水性を損なわないものが好ましい。
【0040】
本発明の処理液を付与する方法としては、布帛に直接塗布する方法、また上記の処理液をフイルム状に形成し積層する方法等が挙げられる。
直接塗布する方法としては、グラビア法、コーテイング法、マングルパッド法等が挙げられる。
さらには、布帛表面にインクジェット方式で印写することも可能である。
【0041】
インクジェット用の記録布帛としては、織物、編物、不織布を問わずあらゆる布帛組織が含まれるが、好ましくは織編物が採用される。
【0042】
また、布帛の素材としては、綿、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成繊維、そしてそれらの内の一つ以上を混紡、交織の形で使用する物も含まれるが、顔料インク受容層のpHが酸性サイドであるので、酸性状態においても脆化のおこりにくい繊維が好ましい。
【0043】
顔料インクのインクジェット記録方法としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ステメ方式(2液室型)、パルスジェット方式(1液室型)、バブルジェット方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式などいずれも採用可能である。
【0044】
インクジェット方法により印写が行われた後は、顔料を固定するために熱処理が行われる。
ここでの熱処理は、乾熱あるいは湿熱のいずれも採用可能であるが、用いられる疎水性低分子の融点又は軟化点以上の温度で処理することが好ましい。
このように熱処理することによって、該化合物が溶融して、印写面を覆うことにより印写されたものの耐久性がより向上する。
【0045】
【実施例】
以下実施例について述べるが、本発明は必ずしも実施例に限定されるものではない。
評価方法は次の通りである。
【0046】
〈濃度〉
ブラックのインクをベタ印写した部分を、反射濃度計(マクベスRD918:マクベス社製)を用いて測定した。数値が高いほど濃度が高く良好である。
【0047】
〈耐水性〉
フルカラー画像を印写した布帛を水中に10分間浸漬した後、色の泣き出しを目視で判定した。
○:色の泣き出し無し
△:色の泣き出し有り
×:色の泣き出し有り、更に濃度低下も認められる
【0048】
〈滲み〉
フルカラー画像を印写し柄際を目視で判定し、その程度により等級をつけた。
○:画質が良好
△:画質がやや不良
×:画質が不良
【0049】
〈耐摩耗性〉
JIS L―0849により摩擦試験を行い、試験布の摩耗性を判定し、その程度により等級をつけた。
○:摩耗性が良好
△:摩耗性がやや不良
×:摩耗性が不良
【0050】
〈テープ剥離〉
セロハンテープを印字面に貼り付けた後、テープを生地からはがした。はがした時の画像の剥離を観察した。
○:剥離なし
△:若干剥離有り
×:剥離有り
【0051】
〈風合い〉
印字物の風合いを、触手で判定した。
○:風合い良好
△:風合いやや不良
×:風合い不良
【0052】
〔実施例1〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:( pH4.2)
リポオイルNT−15 3部
(日華化学株式会社製 グリセリン脂肪酸エステル系化合物、低分子量アルキレン系化合物:融点60℃)
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
ユーラミンT―566 1部
(三井化学株式会社製 メラミン系架橋剤)
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
酢酸 2部
水 83部
【0053】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド方式でピックアップ率80%になるように付与し、100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いてインクジェット方式で印写を行った。
顔料としては以下のものを用した。
【0054】
(3) インク処方
・顔料
C.I.Pigment Yellow 151(P.Y.151)
C.I.Pigment Red 122(P.R.122)
C.I.Pigment Blue 15:3(P.B.15:3)
C.I.Pigment Blue Black 7(P.Bl.7)
・添加剤
界面活性剤、防腐剤、バインダー、湿潤剤、消泡剤
・溶媒
水
インクジェット方式の印写条件は以下のとおりとした。
【0055】
(4) 印写条件
ノズル径:100μm
駆動電圧:100V
周波数 :5KHz
解像度 :360dpi
続いて、150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0056】
〔参考例1〕
(1) 生地:PET100%の天竺編物
(2) 処理液:(pH3.8)
リポオイルNT−6 5部
(日華化学株式会社製 多価アルコール脂肪酸エステル系化合物:融点 70℃)
酢酸 2部
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
水
【0057】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド方式でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写後は、150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例2〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH4.5)
EMUSTAR―0413 3部
(日本精鑞株式会社製 植物性ワックス類:融点80℃)
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
パテラコールIJ―150 30部
(大日本インキ化学株式会社製 水溶性ウレタン系樹脂 )
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
水
【0059】
処理液(2)を生地(1)にグラビア方式で塗布量が40g/m2 になるように付与し、100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、実施例1と同様の顔料及び印写条件にてインクジェット方式で印写した。
印写後は150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例3〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH5.0)
Poligen WE1 3部
(BASF株式会社製 低分子量アルキレン系化合物:融点120℃)
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
ユーラミンT―566 1部
(三井化学株式会社製 メラミン系架橋剤)
酢酸 1部
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
水
【0061】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド方式でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写後は150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0062】
〔比較例1〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:( pH4.2)
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂)
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
ユーラミンT―566 1部
(三井化学株式会社製 メラミン系架橋剤)
イソプロピルアルコール 1部
酢酸 2部
水 86部
【0063】
実施例1と同様の顔料及び印写条件にてインクジェット方式で印写した。
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド方式でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写後は150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0064】
〔比較例2〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH7.6)
リポオイルNT−15 5部
(日華化学株式会社製 グリセリン脂肪酸エステル系化合物、低分子量
アルキレン系化合物:融点60℃)
ネオフイックス SS 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度1.1mS/cm、分子量1500)
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
ユーラミンT―566 1部
(三井化学株式会社製 メラミン系架橋剤)
水 83部
【0065】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド法でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写布を150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0066】
〔比較例3〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH3.8)
CLA―530(共栄社化学株式会社製 :シリカ水和物) 10部
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
ネオステッカーCB (日華化学株式会社製 アクリル系樹脂) 10部
酢酸 2部
水 60部
【0067】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド法でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写布を150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0068】
〔比較例4〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH3.8)
マルキード3002 5部
(荒川化学工業株式会社製 マレイン酸系樹脂:融点170℃〕
ネオフイックス E−117 10部
(日華化学株式会社製 ポリエチレンポリアミン系樹脂
:電気伝導度2.2mS/cm、分子量2500)
イソプロピルアルコール(浸透剤) 1部
酢酸 2部
水 82部
【0069】
処理液(2)を生地(1) にマングルパッド法でピックアップ率が80%になるように付与し100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印写布を150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0070】
〔比較例5〕
(1) 生地:ポリエステル100%の平織物
(2) 処理液:(pH7)
ネオステッカーPB−3 80部
(日華化学株式会社製 アクリル系ポリマー)
水 20部
【0071】
処理液(2)を生地(1) にコーティング方式で塗布し100℃で1分間の乾燥を行った。
上記の方法によって作成されたインクジェット記録用布帛に、顔料を含んだインクを用いて実施例1と同様にインクジェット方式で印写を行った。
印捺布を150℃で2分間の乾燥を行った。
その結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
Claims (5)
- 融点又は軟化点が40℃〜150℃の疎水性低分子化合物を含有する酸性のインク受容層が繊維布帛表面に形成されたインクジェット記録用布帛に対して顔料インクを用いてインクジェット方式により染色するインクジェット染色方法。
- 疎水性低分子化合物が、低分子量アルキレン系化合物、脂肪酸アミド系化合物、多価アルコール脂肪酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなることを特徴とする請求項1記載のインクジェット染色方法。
- インク受容層に、さらに1%水溶液における電気伝導度が0.5mS/cm〜10.0mS/cmで、かつ数平均分子量が1000〜50000であるカチオン系樹脂を含有させてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット染色方法。
- インク受容層のpHが2.0〜6.0であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット染色方法。
- インクジェット方式により染色した後、疎水性低分子化合物の融点又は軟化点以上の温度で熱処理することにより、繊維表面に被膜を形成させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット染色方法。
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