JP3961034B2 - 色分解光学系 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
撮影レンズを介して入射する光を、色分解プリズムによって3色の光に分解する色分解光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カメラ等に備えられる色分解光学系では、入射光を青色光、赤色光及び緑色光に分解する手法の1つのとして、色分解プリズムが用いられている。この色分解プリズムは、図6に示すように、プリズム101の射出面に青色光反射用のダイクロイックフィルタ111を備え、2つのプリズム102、103の接合面に赤色光反射用のダイクロイックフィルタ112を備えて構成している。
【0003】
このように、分光用として、誘電体多層薄膜の干渉を利用したダイクロイックフィルタが使用されているが、このダイクロイックフィルタは、光の入射角度によって分光透過特性が変化する性質を有している。例えば、図6における光線cは、図7で実線(参照符号c)で示す透過率となるが、ダイクロイックフィルタに対する入射角が光線cとは異なる、光線a、bでは、図7で点線(参照符号a)、破線(参照符号b)で示すような透過率となり、光線cの透過率と相異することが分かる。一般に、入射角度が大きくなるほど、分光透過特性は短波長側に移動する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
色分解プリズムの入射側に位置するレンズ系120から光が入射する際、入射する光束は瞳位置から出射されるため、画面の上端aと下端bとに向かう光線では、ダイクロイックフィルタ111、112への入射角度が互いに異なる。このため、分光透過特性が双方変化し、画面の上端aではマゼンタ、下端bでは緑色のシェーディングが生じる結果となる。従来では、このように生じたシェーディングを、カメラ側で電気的に補正することでシェーディング補正を実施していた。
【0005】
しかし、レンズ系120を別構成のレンズ系に交換した場合、或はレンズ系の倍率を変化させた場合などには、そのシェーディングの補正値も変化するため、カメラ側で想定されていないレンズ系等が使用された場合には、電気的にシェーディング補正を行うことが実質的に不可能であるという欠点があった。
【0006】
そこで本発明は、このような課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、このようなシェーディングを電気的に補正するのではなく、光学的に補正し得る機構を備えた色分解光学系を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる色分解光学系は、レンズ系と、分光透過特性の異なる2種のダイクロイックフィルタを介し、レンズ系を介して入射する光を、青色光、赤色光及び緑色光に分解する色分解プリズムとを備えて構成しており、さらに、レンズ系と色分解プリズムとの間の光路中に、緑色光と青色光との境界域の光、或は、緑色光と赤色光との境界域の光のうち、少なくともいずれか一方の光の透過量を低減させる狭帯域フィルターを備えることを特徴とする。
【0008】
また、この色分解光学系は、レンズ系と色分解プリズムとの間の光路中に、狭帯域フィルターを選択的に配置するフィルター保持部材をさらに備えて構成することもできる。また、このレンズ系を、撮影レンズで構成することもできる。
【0009】
【作用】
緑色光と青色光との境界域の光、或は、緑色光と赤色光との境界域の光は、シェーディングの発生原因となっており、これらの波長を有する光が色分解プリズムへ入射する前に、狭帯域フィルタによって低減させる。
【0010】
また、フィルタ保持部材を用いて、狭帯域フィルタが必要か否かに応じ、狭帯域フィルタを光路中にセットしたり、或は光路外に移動させる。また、フィルタ保持部材に複数種の狭帯域フィルタを保持させておくことで、好適な狭帯域フィルタを適宜選択して使用し得る。
【0011】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1に本実施例にかかる色分解光学系を示す。この色分解光学系は、撮影レンズで構成するレンズ系10、このレンズ系10を介して入射する光を、青色光、赤色光及び緑色光の3色の光に分解する色分解プリズム20、及び、レンズ系10と色分解プリズム20との間に配設したフィルタ保持体30を備えて構成する。
【0013】
色分解プリズム20は、射出面に青色光反射用のダイクロイックフィルタ24を備えるプリスム21と、2つのプリズム22、23の接合面に赤色光反射用のダイクロイックフィルタ25を備えた接合プリズム26とで構成しており、プリスム21と接合プリズム26とを、僅かな空隙を隔てて配置している。
【0014】
レンズ系10を介して色分解プリズム20に入射する光のうち、ダイクロイックフィルタ24において青色光となる波長域の光が反射され、プリズム21のプリズム面で全反射された後、チャンネルBへ向けて出射される。ダイクロイックフィルタ24を透過した光のうち、赤色光となる波長域の光がダイクロイックフィルタ25で反射され、プリズム22のプリズム面で全反射された後、チャンネルRへ向かって出射される。緑色光となる波長域の光はそのまま透過され、チャンネルGへ向けて出射される。
【0015】
ここで、図2にフィルタ保持体30を拡大して示す。このフィルタ保持体30は、円盤状の基盤31に、合計3枚のノッチフィルタF1〜F3を備えると共に、1つの開口部Oを備え、この開口部Oには、ノッチフィルタF1〜F3と同じ光学パスの透明なガラスが装着されている。
【0016】
ノッチフィルタF1〜F3は、カラーシェーディングを補正するための狭帯域フィルタである。ノッチフィルタF1は、チャンネルBとチャンネルGとが重なり合う範囲の波長域の光を低減するBGフィルタであり(クロスポイント、図7参照)、このノッチフィルタF1の分光透過特性は図3に示すとおりである。
【0017】
ノッチフィルタF2は、チャンネルGとチャンネルRとが重なり合う範囲の波長域の光を低減するGRフィルタであり(クロスポイント、図7参照)、このノッチフィルタF2の分光透過特性は図4に示すとおりである。
【0018】
また、ノッチフィルタF3は、透明基盤の一方の面にノッチフィルタF1を配し、他方の面にノッチフィルタF2を配した重合フィルタであり、その分光透過特性も図3と図4で示した特性を重ね合せた特性となっている。
【0019】
このように構成するフィルタ保持体30は、基盤31がベアリング32を介し支持軸33によって回転自在に支持されており、この支持軸33は、カメラ本体40側に支持されている。従って基盤31を回転させることで、ノッチフィルタF1〜F3及び開口部Oのうち、いずれか1つを光路中にセットすることができる。
【0020】
一例として、ノッチフィルタF3を用いた場合の分光透過特性を図5に示す。前述した図7のグラフと比較すると、ノッチフィルタF3を介すことで、チャンネルBとチャンネルGとが重なり合う波長域と、チャンネルGとチャンネルRとが重なり合う波長域との双方で、入射光の透過率がいづれも低減されていることが分かる。低減されたこれらの光は、カラーシェーディングの原因となる波長域の光であり、これにより、カラーシェーデイングの発生を充分に抑えることができる。
【0021】
また、撮影状況に応じ、チャンネルBとチャンネルGとのクロスポイントのみを低減させたい場合には、基盤31を回転させてノッチフィルタF1を光路中に配置させ、チャンネルGとチャンネルRとのクロスポイントのみを低減させたい場合には、基盤31を回転させてノッチフィルタF2を光路中に配置すればよい。また、ノッチフィルタが不要な場合、或は色再現性を重視する場合等には、光路中に開口部Oを配置すればよく、このように撮影状況に応じて、各種ノッチフィルタF1〜F3或は開口部Oを適宜選択して使用することができる。
【0022】
本実施例では、レンズ系10と色分解プリズム20との間に、フィルタ保持体30を配置する例を示したが、原理的には、レンズ系10の前面、或は各チャンネルの射出面に、ノッチフィルタを配設することもできる。しかし、例えば、レンズ系10に広角レンズを用いた場合には、ノッチフィルタに対する入射光の入射角度が大きくなってしまい、また、各チャンネルの射出面にノッチフィルタを配置した場合には、ノッチフィルタの交換が困難である等の欠点がある。このため、ノッチフィルタに対する入射角度の変動が少なく、交換も容易な位置、すなわち、本実施例で示した位置にノッチフィルタを配置することが最も望ましい。
【0023】
また、本実施例では、フィルタ保持体30を1枚の基盤31上に形成する例を示したが、複数の基盤で構成することもでき、各基盤上のノッチフィルタを組合わせて使用することもできる。さらに、基盤31を円盤状に形成し回転させることで、ノッチフィルタを交換する例を示したが、この形態に限定するものではなく、個々のノッチフィルタを、光路中にセットできればよい。
【0024】
なお、特定の撮影条件でのみ使用される色分解光学系であれば、必要となるノッチフィルタの特性も一定であるため、交換も不要である。このため、レンズ系10と色分解プリズム20との間に、予め固定した状態で好適なノッチフィルタを配置して、色分解光学系を構成することも可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1にかかる色分解光学系は、レンズ系と色分解プリズムとの間に、緑色光と青色光との境界域の光、及び、緑色光と赤色光との境界域の光のうち、少なくともいずれか一方の光を低減させる狭帯域フィルターを備えて構成した。従って、シェーディングの発生原因となっていた波長域の光を低減させることができ、光学的にカラーシェーディング補正を実施することができる。また、この位置に狭帯域フィルターを配設することで、この狭帯域フィルターに入射する光の角度変動を小さく抑えることができ、フィルター交換も容易に行うことができる。
【0026】
請求項2にかかる色分解光学系は、光路中に帯域フィルターを選択的に配置するフィルター保持部材を備えて構成したので、狭帯域フィルタが必要か否かに応じて、狭帯域フィルタを光路中にセットし、或は光路外に移動させることができる。また、フィルタ保持部材に複数種の狭帯域フィルタを保持させておくことで、好適な狭帯域フィルタを適宜選択して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例にかかる色分解光学系を示す概略構成図である。
【図2】フィルタ保持体を示す平面図である。
【図3】ノッチフィルタF1の分光透過特性を示すグラフである。
【図4】ノッチフィルタF2の分光透過特性を示すグラフである。
【図5】ノッチフィルタF3を用いた場合における、入射角による分光特性変化を示すグラフである。
【図6】従来の色分解光学系を示す概略構成図である。
【図7】図6の色分解光学系について、入射角による分光特性変化を示すグラフである。
【符号の説明】
10…レンズ系、20…色分解プリズム、21、22、23…プリズム、
24、25…ダイクロイックフィルタ、30…フィルタ保持体、
F1、F2、F3…ノッチフィルタ、O…開口部。
Claims (3)
- レンズ系と、
分光透過特性の異なる2種のダイクロイックフィルタを介し、前記レンズ系を介して入射する光を、青色光、赤色光及び緑色光に分解する色分解プリズムと、
を備える色分解光学系において、
前記レンズ系と前記色分解プリズムとの間の光路中に、緑色光と青色光との境界域の光、及び、緑色光と赤色光との境界域の光のうち、少なくともいずれか一方の光の透過量を低減させる狭帯域フィルターを備えることを特徴とする色分解光学系。 - 前記色分解光学系は、
前記レンズ系と前記色分解プリズムとの間の光路中に、前記狭帯域フィルターを選択的に配置するフィルター保持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の色分解光学系。 - 前記レンズ系は、撮影レンズで構成されることを特徴とする請求項1または2記載の色分解光学系。
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