JP3959511B2 - カルボキシメチルセルロース塩の水溶液、及びこのための配合組成物 - Google Patents
カルボキシメチルセルロース塩の水溶液、及びこのための配合組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品用、医薬用、化粧品用、その他一般工業用などに広く用いられているカルボキシメチルセルロース塩(以降CMCと略称する)の水溶液、及びこのための配合組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
CMCの水溶液は、より低いズリ速度において、より高い粘度を示すといった、特徴的な粘度特性及び流動挙動を示す。このような特性は、合成水溶性高分子では通常得られないものである。
【0003】
CMCは、特徴的な水溶液特性を示すとともに、生体に対する安全性が高いため、食品用、医薬用、及び、化粧品用その他に広く用いられている。
【0004】
粘度がズリ速度に依存するという性質は、チクソトロピー性または構造粘性と呼ばれており、揺変性と呼ばれることもある。ここで、チクソトロピーの語は、引き続きずり変形が加えられた場合の、構造変化や劣化を伴わない経時的な粘度変化に対して用いられることもある。本明細書では、ややクラシカルな揺変性という用語を用いることにする。溶液の揺変性は、一般に、その粘度が大きいほど大きく現れる。
【0005】
CMC水溶液の揺変性は、水溶液の粘度がほぼ一定の粘度に調整されている場合、CMCが高粘度タイプであるほど、すなわち、その1%濃度における水溶液粘度が大きいものであるほど、大きくなる傾向にある。また、CMC水溶液の揺変性は、CMCのエーテル化度(グルコース残基の3個の水酸基のうち平均何個がエーテル化されているかを表す値)が小さくなるほど、大きくなる傾向にある。
【0006】
食品添加剤に用いられるCMCにあっては、多くの場合、水溶液の揺変性が特に大きいものが好ましい。ところが、水溶液の揺変性をさらに増大させようとして高粘度タイプのCMCを用いるとすると、粘度が過大になって食品の食感を損なってしまう。一方、エーテル化度の極端に低いCMCを用いた場合には、水溶液の透明性が低下してしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、他の特性を損なわずに揺変性を増大させるために、CMCを製造する反応プロセス自体を工夫することが考えられる。
【0008】
CMC水溶液が揺変性その他の特徴的な粘度特性及び流動挙動を示すのは、その溶液構造の不均一性によるものであり、溶液構造の不均一性は、エーテル化反応の不均一性の程度に左右されるものであるからである。
【0009】
しかし、このような反応プロセスでの工夫を行う場合には、生産コストの上昇や生産効率の低下を招くといった問題があった。
【0010】
一方、CMC水溶液を使用する際に、揺変性が不足する等、CMC水溶液の粘度特性及び流動挙動が充分でないことが明らかになった場合には、別のCMC製品を準備して、これより水溶液を調製する作業をやり直す必要があった。そのため、迅速な対応がとれず、時間及びコストのロスを招くという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、CMC水溶液、及びこのための配合組成物において、製造コストをほとんど増大させることなく、揺変性等の粘度特性及び流動特性を、簡単かつ効果的に向上または調整することのできるものを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係るカルボキシメチルセルロース塩の水溶液は、HLBが10以上の乳化剤を含むことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、製造コストをほとんど増大させることなく、粘度特性及び流動特性を容易に調整することができる。特に、比較的置換度の低いカルボキシメチルセルロース塩からなる水溶液について、粘度のずり速度依存性を、効果的かつ簡便に向上させることができる。
【0014】
また、前記乳化剤の配合量が、カルボキシメチルセルロース塩100重量部に対して、0.1〜2重量部であることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1のカルボキシメチルセルロース塩の水溶液において、前記乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルより選択されることを特徴とする。
【0016】
上記構成により、乳化剤を添加しても、生体に対する安全性が高く、食品用、医薬用、及び、化粧品用に好適に用いることができる。
【0017】
請求項3の発明に係るカルボキシメチルセルロース塩の配合組成物は、HLBが10以上の乳化剤が、カルボキシメチルセルロース塩100重量部に対して、0.1〜2重量部配合されたことを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のCMCは、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩その他の水溶性塩である。
【0019】
本発明に用いる乳化剤は、HLBが10以上のものである。種類には特に制限がないが、好ましいものとして非イオン性のものが挙げられる。非イオン性のものであると、CMCの電解質特性に影響を与えず、また影響を受けない。
【0020】
特に好ましい乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは、生体に対する安全性が高く、食品添加物等として認められているものである。
【0021】
HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、親水性親油性比)は、通常、界面活性剤または乳化剤を構成する親水性基の寄与と親油性基の寄与とを化学構造より推算して、親水性と親油性との均衡がいずれかにどれだけ傾いているかを表す簡便な指標である。HLBの算出式が種々提案されているが、Griffinの式は、計算が単純であって、かつ充分に実用的であるため最も広く用いられている。本明細書においても、HLBは、Griffinの式によるものとする。
【0022】
添加する乳化剤のHLBが10未満では、水溶性が不十分であるため、好ましくない。
【0023】
乳化剤の添加量は、CMC100重量部(絶乾重量)に対する乳化剤の添加重量部(水などを除く正味重量)が0.1〜2.0であるのが好ましい。CMC100重量部に対する添加重量部(phr, part per hundred ratio)が0.1未満では、揺変性等の特性を向上させる効果が充分でない。一方、添加量が2.0phrを越える場合には、水溶液の起泡性が強く、またコスト上昇にもつながるため、好ましくない。
【0024】
以下に、本発明の内容を実施例により説明する。
【0025】
<水溶液の調製、及び粘度のズリ速度依存性の測定>
CMCの市販品A〜E(下記表1中に示すもの)を適量秤りとり、水及び所定量の乳化剤を加えて、10,000±500mPa・s(下記粘度測定を20rpmで行った値)の水溶液を調製した。この際、CMCの粉末と水とを良くかき混ぜてから容器にラップを被せ、一昼夜、25℃の恒温槽中に放置した後、さらにガラス棒で適宜かき混ぜることにより、肉眼上均一な溶液を得た。
【0026】
粘度の測定は、BH型粘度計にて行った。No.5のローターを用い、同一のCMC溶液について、20rpm及び2rpmの回転数でそれぞれ測定を行い、次の「20rpm/2rpm粘度比」を算出した。
【0027】
20rpm/2rpm粘度比=(20rpmにおける粘度)÷(2rpmにおける粘度)
「20rpm/2rpm粘度比」の値が小さいほど、粘度のズリ速度依存性、すなわち揺変性が大きい。
【0028】
<測定結果>
測定結果を表1にまとめて示す。
【0029】
【表1】
表1に示すように、種々の品種のCMCに適当な乳化剤を0.1〜2.0重量%配合することにより、水溶液についての20rpm/2rpm粘度比が顕著に低下した。すなわち、粘度のずり速度依存性を大きいものとすることができた。
【0030】
1%水溶液粘度が12,000mPa・sと非常に高粘度のタイプのCMC(A)であっても、1%水溶液粘度が10mPa・sと非常に低粘度のタイプのCMC(D)であっても、同様に、20rpm/2rpm粘度比を低下させることができた。例えば、HLB11のショ糖脂肪酸エステルを2.0phr加えた場合には、それぞれ、19.6%及び17.3%の低下が見られた。
【0031】
また、置換度が1.4と比較的高置換度のCMC(E)についても、20rpm/2rpm粘度比を低下させることができた。例えば、HLB11のショ糖脂肪酸エステルを2.0phr加えた場合には、11.3%の低下が見られた。
【0032】
表1の結果から知られるように、20rpm/2rpm粘度比を低下させる効果は、低置換度のCMC(B)で大きく、比較的高置換度のCMC(E)では小さかった。例えば、HLB11のショ糖脂肪酸エステルを2.0phr加えた場合に、低置換度のCMC(B)では31.7%の低下が見られたのに対し、比較的高置換度のCMC(E)では11.3%のみの低下が見られた。
【0033】
また、無添加時の20rpm/2rpm粘度比が比較的小さいCMC市販品A及びBを用いた場合には、2.0phrの添加で、0.4〜0.42という極めて低い粘度比の値が得られた。また、これら水溶液は充分な透明性を備え、強く攪拌した場合に泡立ちが生じる他には水溶液性能が全く損なわれていない。
【0034】
同様の溶液特性をもつCMC水溶液を、CMC製造の反応条件の工夫により得ることは不可能ではないが、CMCの製造が非常に困難かまたはコストのかかるものである。
【0035】
親水性の乳化剤の添加によってCMC水溶液の揺変性が向上する理由は明らかでない。しかし、CMC水溶液中において、CMC分子鎖同士が形成する一時的なネットワーク状構造の中に乳化剤が取り込まれた場合に、溶解性の低い分子鎖の溶解や分散が促されることで、より緻密なネットワーク状構造が形成されるためであると推測される。
【0036】
なお、表には示さないが、乳化剤の添加量が2.0phrを大きく越えた場合には、CMCを溶解する際に泡立ちが生じ、泡抜きも多少困難であった。そのため、粘度の正確な測定に支障を来し、20rpm/2rpm粘度比を精密に求めることができなかった。
【0037】
【発明の効果】
CMC水溶液、及びこのための配合組成物において、製造コストをほとんど増大させることなく、揺変性等の粘度特性及び流動特性を、簡単かつ効果的に向上または調整することができる。
【0038】
特に、通常の反応条件により製造したCMCの水溶液では充分な揺変性が得られなかった場合において、水溶液の揺変性を簡単かつ効果的に向上することができる。
Claims (4)
- HLBが10以上の乳化剤が、カルボキシメチルセルロース塩100重量部に対して、0.1〜2重量部配合されたことを特徴とする、カルボキシメチルセルロース塩の水溶液。
- 請求項1のカルボキシメチルセルロース塩の水溶液において、
前記乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルより選択されることを特徴とする、カルボキシメチルセルロース塩の水溶液。 - HLBが10以上の乳化剤が、カルボキシメチルセルロース塩100重量部に対して、0.1〜2重量部配合されたことを特徴とする、カルボキシメチルセルロース塩の配合組成物。
- 請求項3のカルボキシメチルセルロース塩の配合組成物において、
前記乳化剤が、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルより選択されることを特徴とする、カルボキシメチルセルロース塩の配合組成物。
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