JP3959359B2 - 二重反転式軸流送風機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気機器等の内部の冷却に用いる二重反転式軸流送風機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気機器が小さくなると、電気機器のケース内において空気が流れる空間は小さくなる。そのためケースの内部を冷却するために用いられる送風機としては、風量が多く且つ静圧が高い特性を有する送風機が求められている。このような特性を有する送風機として、最近、二重反転式軸流送風機と呼ばれる送風機が使用されるようになってきた。
【0003】
例えば、米国特許第6244818号公報または特開2000−257597(特許文献1)には、9枚の前方ブレードを備えた第1のインペラを具備する第1の単体軸流送風機と、9枚の後方ブレードを備えた第2のインペラを具備する第2の単体軸流送風機と、両単体軸流送風機の間に配置されて13枚の静止ブレードを備えたケースとを具備する送風機が示されている。このような送風機から、第1の単体軸流送風機の第1のインペラと第2の単体軸流送風機の第2のインペラとを相互に反対方向に回転させて、第1の単体軸流送風機が吸い込んだ空気を、第2の単体軸流送風機から吐き出す二重反転式軸流送風機を構成することができる。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−257597 (第7頁、図5及び図6)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、このような送風機では、第1の単体軸流送風機の第1のケースと静止ブレードを備えたケースと第2の単体軸流送風機の第2のケースとは、単純な結合構造を介して組み合わせられる。例えば、一方のケースに取り付けられたフックを他方のケースの嵌合溝に嵌合して、両ケースを相対的に回転させて、一方のケースのフックを他方のケースの嵌合溝の縁に係合させている。しかしながら、このような係合構造では、両者を結合させるための回転方向と逆の方向に力が加わると両者の結合が簡単に外れてしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、第1の単体軸流送風機の第1のケースと第2の単体軸流送風機の第2のケースとに両者を結合させるための方向と逆方向に力が加わっても両者の結合が外れ難い二重反転式軸流送風機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明が改良の対象とする二重反転式軸流送風機は、第1の単体軸流送風機と第2の単体軸流送風機とを具備している。第1の単体軸流送風機は、軸線方向の一方の側に吸い込み側開口部を有し軸線方向の他方の側に吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第1のケースと、吸い込み側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第1のインペラとを有している。第2の単体軸流送風機は、軸線方向の一方の側に吸い込み側開口部を有し軸線方向の他方の側に吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第2のケースと、吐き出し側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第2のインペラとを有している。そして、第1の単体軸流送風機の第1のケースと第2の単体軸流送風機の第2のケースとが結合構造を介して組み合わされている。本発明では、結合構造は、第1の単体軸流送風機の第1のケースにおける吐き出し側開口部の周囲を囲む端部に設けられた二種類の複数の被係合部と、第2の単体軸流送風機の第2のケースにおける吸い込み側開口部の周囲を囲む端部に設けられて二種類の複数の被係合部と係合する二種類の複数の係合部とから構成する。そして、二種類の複数の係合部と二種類の複数の被係合部は、第1の種類の係合構造を構成する第1の種類の複数の係合部及び第1の種類の複数の被係合部と、第2の種類の係合構造を構成する第2の種類の複数の係合部及び第2の種類の複数の被係合部とを含んでいる。第1の種類の係合構造は、結合状態にある第1のケースと第2のケースとを軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、引き離し動作に抵抗し、組み合わせ状態にある第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、第1の回転動作に抵抗する機能を発揮する。また、第2の種類の係合構造は、結合状態にある第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して前述の一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の回転動作に抵抗する機能を発揮する。本発明のように、第1の種類の係合構造と第2の種類の係合構造とから結合構造を構成すると、第1のケースを第2のケースに対して結合させるための第1の回転動作が行われたときに、第1の種類の係合構造が第1の回転動作に抵抗し、第1のケースを第2のケースに対して一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の種類の係合構造が第2の回転動作に抵抗する。そのため、第1の単体軸流送風機と第2の単体軸流送風機に両者を結合させるための方向(一方向)と逆方向(他方向)に力が加わっても、第2の種類の係合構造により両者の結合の外れを防ぐことができる。
【0008】
第1の種類の係合構造を構成する第1の種類の複数の係合部及び第1の種類の複数の被係合部と、第2の種類の係合構造を構成する第2の種類の複数の係合部及び第2の種類の複数の被係合部とは、第1のケースの端部と第2のケースの端部とを互いに近づける動作と、第1のケースを第2のケースに対して軸線を中心にして一方向に回転させる動作とを行うことによりそれぞれ係合状態になるように構成することができる。このようにすれば、第1の種類の係合構造を利用して第1のケースと第2のケースとを単純な動作で簡単に結合することができる。
【0009】
第1の種類の係合部は、結合状態にある第1のケースと第2のケースとを軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、第1の種類の被係合部の第1の被係合面と係合する第1の係合面と、結合状態にある前記第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、第1の種類の被係合部の第2の被係合面と係合する第2の係合面を有するフックから構成することができる。第2の種類の係合部は、結合状態にある第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の種類の被係合部の第3の被係合面と係合する第3の係合面を有する突起から構成することができる。第1の種類の被係合部は第1及び第2の被係合面を有する第1の嵌合溝から構成することができる。第2の種類の被係合部は第3の被係合面を有する第2の嵌合溝から構成することができる。このように各係合部及び各被係合部を形成すれば、樹脂射出成形等により単純な形状に第1及び第2の種類の係合構造を形成することができる。
【0010】
本発明の具体的な二重反転式軸流送風機は、第1のケース及び第2のケースのそれぞれの端部の輪郭形状は、ほぼ四角い形状を有しており、1つの第1の嵌合溝及び1つの第2の嵌合溝が、第1のケースの4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ形成されている。また、1つのフック及び1つの突起が、第2のケースの端部の4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ一体に設けられている。フックと第1の嵌合溝の形状は、それぞれ結合状態にある第1のケースと第2のケースとを軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、引き離し動作に抵抗し、組み合わせ状態にある第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、第1の回転動作に抵抗する機能を発揮する第1の種類の係合構造を構成するように定める。突起と第2の嵌合溝の形状は、それぞれ結合状態にある第1のケースと第2のケースに軸線を中心にして第1のケースを第2のケースに対して一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の回転動作に抵抗する機能を発揮する第2の種類の係合構造を構成するように定める。このようにすれば、各ケースの角部に結合構造が形成され、第1のケースと第2のケースとをバランスよく、しっかりと結合することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態の二重反転式軸流送風機の分解斜視図を示している。本図に示すように、本例の二重反転式軸流送風機は、第1の単体軸流送風機1と第2の単体軸流送風機3とが結合構造を介して組み合わされて構成されている。そして図2は、第1の単体軸流送風機1の斜視図を示しており、図3は第2の単体軸流送風機3の斜視図を示している。
【0012】
第1の単体軸流送風機1は、第1のケース5と、第1のケース5内に配置される第1のインペラ(前方側インペラ)7と、図2に示す第1のモータ25と、図2に示す3本のウエブ19,21,23とを有している。なお、図1においては、第1のインペラ(前方側インペラ)7は、大きさを誇張して描いている。第1のケース5は、図1及び図2に示すように、軸線Aが延びる方向(軸線方向)の一方側に環状の吸い込み側フランジ9を有し、軸線方向の他方側に環状の吐き出し側フランジ11を有している。また第1のケース5は、両フランジ9,11の間に筒部13を有している。フランジ9とフランジ11と筒部13の内部空間により、風洞が構成されている。
【0013】
ここで図2は、図1に示す二重反転式軸流送風機の第1の単体軸流送風機1と第2の単体軸流送風機3とを分離して、第1の単体軸流送風機1の第1のケース5を第2の単体軸流送風機3との結合部側から見た斜視図である。吸い込み側フランジ9は、ほぼ四角い輪郭形状を有しており、内部に八角形の吸い込み側開口部15を有している。また、吸い込み側フランジ9は、4つの角部に筒部13側に向く平坦面9aをそれぞれ有しており、この4つの角部には、取付用螺子が貫通する貫通孔9bがそれぞれ形成されている。
【0014】
吐き出し側フランジ11も、ほぼ四角い輪郭形状を有しており、内部に円形の吐き出し側開口部17を有している。そして吐き出し側開口部17内には、周方向に等間隔を隔てて配置され且つそれぞれ径方向に延びる(放射上に延びる)3本のウエブ19,21,23が設けられている。これら3本のウエブ19,21,23を用いて、第1のモータ25の固定子が固定されたモータケースが第1のケース5に対して固定されている。3本のウエブ19,21,23の内の1本のウエブ19は、第2の単体軸流送風機3側に開口する溝状の凹部19aを有している。そしてこの凹部19a内には、第1のモータ25の励磁巻線に接続される図示しない給電用配線が配置される。3本のウエブ19,21,23は、第2の単体軸流送風機3の後述する3本のウエブ43,45,47とそれぞれ組み合わされて、後述する3枚の静止ブレード61(図5)を構成する。
【0015】
第1のモータ25は、図1に示す第1のインペラ7が取り付けられる図示しない回転子と、この回転子を回転させるステータとから構成される。第1のモータ25は、第1のケース5の吸い込み側開口部15内で第1のインペラ7を図1に示した状態で反時計回り方向(図示の矢印R1の方向即ち一方の方向)に回転させる。第1のモータ25は、後述する第2のインペラ35の回転速度よりも速い速度で第1のインペラ7を回転させる。第1のインペラ7は、第1のモータ25の図示しない回転軸に固定される図示しないロータのカップ状部材に嵌合される環状部材27と、この環状部材27の環状の周壁27aの外周面に一体に設けられた5枚の前方ブレード28とを有している。
【0016】
吐き出し側フランジ11は、4つの角部12A〜12Dに対応する位置にあって、筒部13側に向いた平坦面11aをそれぞれ有している。4つの角部12A〜12Dには、図2に示すように、第1の種類の被係合部を構成する4つの第1の嵌合溝29がそれぞれ形成されている。これら第1の嵌合溝29は、吐き出し側フランジ11を貫通する貫通孔から構成されている。角部12Aに形成した第1の嵌合溝29についてその構造を説明する。第1の嵌合溝29は、フック通過孔29aとフック通過孔29aに連続するフック移動孔29bとを有している。フック通過孔29aは、半円弧状部分29a1を有しており、取付用螺子が貫通する貫通孔を兼ねている。フック移動孔29bは、円弧形状を呈している。またフック移動孔29bは、図4に示すように、第1のインペラ7が回転する一方の方向R1の端部29c側に後述するフック53と係合する第1の被係合面29dと第2の被係合面29eとを備えている。図4は第1の嵌合溝29と後述する第2の嵌合溝31とに沿って角部12Aを部分的に切断した断面図である。第1の係合面29dは、角部12Aに位置し且つフック移動孔29bの端部29cの近くに位置する平坦面11aの一部によって構成されている。そして第2の被係合面29eは、フック移動孔29bの一方の方向の端面によって構成されている。
【0017】
図示しない配線が配置されるウエブ19に隣接する角部12Bを除く3つの角部12A,12C,12Dには、第2の種類の被係合部を構成する第2の嵌合溝31がそれぞれ形成されている。図4に示すように、第2の嵌合溝31は、突起移動溝31aと突起移動溝31aに連続する係合溝31bとを有している。突起移動溝31aは、吐き出し側フランジ11の側面に開口する開口部31cを有している。突起移動溝31aの底面31dは、開口部31cから係合溝31bに向かうに従って第2の単体軸流送風機3に近づくように傾斜している。これにより、係合溝31bと突起移動溝31aとの間に段差が形成されることになる。係合溝31bの突起移動溝31a側に位置する内面が、第3の被係合面31eを構成している。
【0018】
第2の単体軸流送風機3は、第2のケース33と第2のケース33内に配置される図1に示す第2のインペラ(後方側インペラ)35と、図3に示す第2のモータ49と、図3に示す3本のウエブ43,45及び47とを有している。なお、図1においては、第2のインペラ(後方側インペラ)35は、大きさを誇張して描いている。第2のケース33は、図1及び図3に示すように、軸線Aが延びる方向(軸線方向)の一方側に吸い込み側フランジ37を有し、軸線方向Aの他方側に吐き出し側フランジ39を有している。また第2のケース33は、両フランジ37,39の間に筒部41を有している。そしてフランジ37とフランジ39と筒部41の内部空間により、風洞が構成されている。なお、図3は、図1に示す二重反転式軸流送風機の第1の単体軸流送風機1と第2の単体軸流送風機3とを分離して、第2の単体軸流送風機3の第2のケース33を第1の単体軸流送風機1との結合部側から見た斜視図である。
【0019】
吸い込み側フランジ37は、ほぼ四角い輪郭形状を有しており、内部に円形の吸い込み側開口部41を有している。吸い込み側開口部41内には、周方向に等間隔を隔てて配置されて且つそれぞれ径方向に伸びる3本のウエブ43,45,47が配置されている。これら3本のウエブ43,45,47によって、第2のモータ49が第2のケース33に対して固定されている。3本のウエブ43,45,47の内の1本のウエブ43は、第1の単体軸流送風機1側に開口する溝状の凹部43aを有しており、凹部43a内には、第2のモータ49の励磁巻線に接続される図示しない給電用配線が配置される。3本のウエブ43,45,47は、第1の単体軸流送風機1の3本のウエブ19,21,23とそれぞれ組み合わされて、後述する3枚の静止ブレード61…を構成する。
【0020】
第2のモータ49は、図1に示す第2のインペラ35が取り付けられる図示しない回転子と、この回転子を回転させるステータとから構成される。第2のモータ49は、第2のケース33の吐出し側開口部57内で第2のインペラ35を図1に示した状態で時計回り方向[図示の矢印R2の方向、即ち、第1のインペラ7の回転方向(矢印R1)と逆方向(他方の方向)]に第2のインペラ35を回転させる。前述したように、第2のインペラ35は、第1のインペラ7の回転速度よりも遅い速度で回転させられる。
【0021】
第2のインペラ35は、第2のモータ49の図示しない回転軸に固定される図示しないロータのカップ状部材に嵌合される環状部材50と、この環状部材50の環状の周壁50aの外周面に一体に設けられた4枚の後方ブレード51とを有している。
【0022】
吸い込み側フランジ37の4つの角部36A〜36Dには、図3に示すように、取付用螺子が貫通する貫通孔38がそれぞれ形成されている。また、4つの角部36A〜36Dには、第1の種類の係合部を構成するフック53が一体に設けられている。フック53は、第1のケース5側に突出している。角部36Aのフック53についてその構造を説明する。フック53は、角部から軸線Aに沿って立ち上がる胴部53aと、この胴部53aの先端に一体に取り付けられた頭部53bとを有している。頭部53bは、軸線Aから離れるように径方向外側に向かって胴部53aの先端部から突出している。これにより、頭部53bと胴部53aとの間に段差が形成され、この段差を形成する平面が前述の第1の被係合面29dと係合する第1の係合面53dを構成する。ウエブ43に隣接する角部36Bを除く3つの角部36A,36C,36Dには、フック53と貫通孔38を間に挟むように第2の種類の係合部を構成する突起55が一体に設けられている。突起55は、フック53と同様に、軸線Aに沿って第1のケース5側に突出している。突起55は、同じ角部に位置するフック53から離れるに従って第1のケース5に近づくように傾斜する傾斜面55aを有している。この傾斜面55aは図4に示す突起移動溝の底面31dを構成する傾斜面上を摺動する。また突起55は、傾斜面55aの先端部から第2のケース33側に向かって軸線方向に伸びる端面55bを有している。この端面55bは、係合溝31bの内面に形成された第3の被係合面31eと係合する第3の係合面を構成する。
【0023】
吐き出し側フランジ39は、ほぼ四角い輪郭形状を有しており、内部に八角形の吐き出し側開口部57(吐き出し側開口部は、図3の裏側に位置するため図3には便宜的に符号を付す)を有している。また、吐き出し側フランジ39は、筒部41側の4つの角部に平坦面39aをそれぞれ有しており、この4つの角部には、取付用螺子が貫通する貫通孔39bがそれぞれ形成されている。
【0024】
本例の送風機では、次のようにして、第1の単体軸流送風機1の第1のケース5と第2の単体軸流送風機3の第2のケース33とを組み合わせる。まず、第1のケース5の端部と第2のケース33の端部とを互いに近づけて、第2のケース33の4つのフック53の頭部53bを第1のケース5の4つの第1の嵌合溝29のフック通過孔29aにそれぞれ挿入する。このとき第2のケース33の3つの突起55が第1のケース5の3つの第2の嵌合溝31の開口部31c内に入る。次に図2及び図3に示すようにそれぞれ相手のケースに向かって時計方向となる一方向(矢印D1)に各ケース5,33を相対的に回転させる。この回転は両ケースを相互に回転させてもよく、一方のケースを他方のケースに対して回転させてもよい。この回転により、フック53の胴部53aが第1の嵌合溝29のフック移動孔29b内を移動して、フック53の頭部53bの第1の係合面53dと吐き出し側フランジ11の平坦面11a上の第1の被係合面29dとが当接し、胴部53aの第2の係合面53eと吐き出し側フランジ11の第2の被係合面29eとが当接してフック53の第1の嵌合溝29からの抜け止めが図られる。また、突起55は、第2の嵌合溝31の突起移動溝31a内を移動し、係合溝31b内に嵌合する。突起55の端面55bは、係合溝31bの内面に形成された第3の被係合面31eと係合する。
【0025】
本例では、フック53(第1の種類の係合部)と第1の嵌合溝29(第1の種類の被係合部)とにより第1の種類の係合構造が構成されており、突起55(第2の種類の係合部)と第2の嵌合溝31(第2の種類の被係合部)とにより第2の種類の係合構造が構成されている。これにより、結合状態にある第1のケース5と第2のケース33とを軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、フック53の頭部53bの第1の係合面53dと吐き出し側フランジ11の平坦面11a上の第1の被係合面29dとが係合して、第1の種類の係合構造が引き離し動作に抵抗する機能を発揮する。更に、組み合わせ状態にある第1のケース5と第2のケース33に軸線Aを中心にして矢印D1に示す一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、胴部53aの第2の係合面53eと吐き出し側フランジ11の第2の被係合面29eとが係合して、第1の種類の係合構造が第1の回転動作に抵抗する機能を発揮する。また、結合状態にある第1のケース5と第2のケース33に軸線Aを中心にして前述の一方向(矢印D1)とは反対の矢印D2に示す他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の嵌合溝31の係合溝31bの第3の被係合面31eと突起55の第3の係合面を構成する端面55bとが係合して、第2の種類の係合構造が第2の回転動作に抵抗する機能を発揮する。そのため、本例の送風機では、第1のケース5と第2のケース33との間に、一方向D1に向かう方向の力と逆の他方向D2に向かう力が加わっても、第1のケース5と第2のケース33の結合が外れるのを防ぐことができる。
【0026】
本例の送風機では、図1に示すように、第1のケース5と第2のケース33とが結合されてハウジング59が構成され、第1の単体軸流送風機1のウエブ19,21,23と第2の単体軸流送風機3のウエブ43,45,47とが組み合わされて、ハウジング59内の第1のインペラ7と第2のインペラ35との間の位置に静止状態で配置されて放射状に延びる3枚の静止ブレード61…(図5)が構成される。そして、第1のインペラ7が一方の方向R1に回転し、第2のインペラ35が他方の方向R2に回転すると、矢印Fに示すようにハウジング59の吸い込み側開口部15から吐き出し側開口部57側に送風される。図5は、第1のケース5と第2のケース33とを組み合せた状態で軸線方向と平行な方向に送風機を切断したときの前方ブレード28、後方ブレード51及び静止ブレード61の横断面形状を示している。図5に示す例では、静止ブレード61は、第1の単体軸流送風機1のウエブ23と第2の単体軸流送風機3のウエブ47とが組み合わされて構成されている。本図に示すように、前方ブレード28は、横断面形状が一方の方向R1に向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。また後方ブレード51は、横断面形状が他方の方向R2に向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。そして静止ブレード61は、横断面形状が他方の方向R2と後方ブレード51が位置する方向とに向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。
【0027】
次に、前方ブレード、静止ブレード及び後方ブレードの枚数が異なり、その他は本例と同様の構造の種々の送風機を作り、各送風機の第2のインペラ及び第1のインペラをそれぞれ同じ速度で回転させて各送風機の風量と静圧との関係を調べた。なお、各送風機の第2のインペラは、第1のインペラの67%の速度で回転させた。図6はその測定結果を示している。図6において、●は前方ブレード、静止ブレード及び後方ブレードの枚数が5枚,3枚,4枚の本例の送風機の結果を示しており、△は各ブレードの枚数が5枚,3枚,3枚の送風機の結果を示しており、+は各ブレードの枚数が5枚,3枚,5枚の送風機の結果を示しており、×は各ブレードの枚数が5枚,4枚,3枚の送風機の結果を示している。また、図6において、風量及び静圧は、本例の送風機(5−3−4)の値をQ及びHとしたときの比較値を示している。図6より、前方ブレード、静止ブレード及び後方ブレードの枚数が5枚,3枚,4枚の本例の送風機は、他の送風機に比べて風量を多くして静圧を高めることができるのが分かる。
【0028】
また、表1は、図6の試験と同様に第2のインペラを第1のインペラの67%の速度で回転させた際の各送風機の吸い込み騒音[dB(A)]と消費電力とを示している。表1において、ブレード枚数は、前方ブレード、静止ブレード及び後方ブレードの各枚数を順番に示しており、吸い込み騒音[dB(A)]及び消費電力は、本例の送風機(5−3−4)の値をLp及びPとしたときの比較値を示している。
【0029】
【表1】
次に静止ブレードの横断面形状が異なり、その他は本例(実施例)と同様の構造の種々の送風機を作り、各送風機の電流値、最大風量、最大静圧及び吸い込み騒音を調べた。表2は、その測定結果を示している。表2において比較例1〜6の送風機の静止ブレードの横断面は、図7(A)〜(F)に示す形状を有している。即ち、比較例1の静止ブレード[図7(A)]は凹部を有しておらず、軸線方向に延びている。比較例2の静止ブレード[図7(B)]は横断面形状が一方の方向R1と前方ブレード28が位置する方向とに向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。比較例3の静止ブレード[図7(C)]は横断面形状が他方の方向R2と前方ブレード28が位置する方向とに向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。比較例4の静止ブレード[図7(D)]は横断面形状が一方の方向R1と後方ブレード51が位置する方向とに向かって凹部が開口する湾曲形状を有している。比較例5の静止ブレード[図7(E)]は凹部を有しておらず、他方の方向R2に向かうに従って後方ブレード51に近づくように傾斜している。比較例6の静止ブレード[図7(F)]は凹部を有しておらず、他方の方向R2に向かうに従って前方ブレード28に近づくように傾斜している。また、表2において、第1のインペラの回転速度、第2のインペラの回転速度、電流値、最大風量、最大静圧及び吸い込み騒音[dB(A)]は、本実施例の送風機の値をそれぞれN1,N2、I,Q,H,Lpとしたときの比較値を示している。
【0030】
【表2】
表2より、本例(実施例)の静止ブレードの横断面形状を有する送風機は、回転速度を適宜に調整することにより、比較例1〜6の静止ブレードの横断面形状を有する送風機に比べて、最大風量を大きくして最大静圧を高めることができ、しかも吸い込み騒音を低減できるのが分かる。
【0031】
また、図8は前述の実施例及び比較例1〜6の送風機を表2の試験と同じ条件で回転した場合の各送風機の風量と静圧との関係を示している。なお、図8において、風量及び静圧は、本例の送風機(5−3−4)の値をQ及びHとしたときの比較値を示している。図8より、実施例の送風機は、比較例1〜6の送風機に比べて風量を多くして静圧を高められるのが分かる。
【0032】
表3は、前述の実施例及び比較例1〜6の送風機の第2のインペラ及び第1のインペラをそれぞれ同じ速度で回転させた際の各送風機の電流値、最大風量、最大静圧及び吸い込み騒音を示している。また、図9は実施例及び比較例1〜6の送風機を表3の試験と同じ条件で回転した場合の各送風機の風量と静圧との関係を示している。
【0033】
【表3】
図9より、実施例の送風機は、比較例1〜5の送風機に比べて風量を多くして静圧を高められるのが分かる。また、実施例の送風機は、比較例6の送風機と風量及び静圧がほぼ等しいが、表3に示すように、比較例6の送風機では、実施例の送風機に比べて、電流値が大きくなり、吸い込み騒音が大きくなってしまうのが分かる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、第1のケースを第2のケースに対して結合させるための第1の回転動作が行われたときに、第1の種類の係合構造が第1の回転動作に抵抗し、第1のケースを第2のケースに対して一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、第2の種類の係合構造が第2の回転動作に抵抗する。そのため、第1の単体軸流送風機と第2の単体軸流送風機に両者を結合させるための方向と逆方向に力が加わっても、第2の種類の係合構造により両者の結合の外れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の二重反転式軸流送風機の分解斜視図である。
【図2】図1に示す二重反転式軸流送風機の第1の単体軸流送風機の第1のケースの斜視図である。
【図3】図1に示す二重反転式軸流送風機の第2の単体軸流送風機の第2のケースの斜視図である。
【図4】 図1に示す二重反転式軸流送風機の結合構造を説明するための拡大断面図である。
【図5】図1に示す二重反転式軸流送風機を軸線方向と平行な方向に切断したときの前方ブレード、後方ブレード及び静止ブレードの横断面形状を示す図である。
【図6】試験に用いた二重反転式軸流送風機の風量と静圧との関係を示す図である。
【図7】(A)〜(F)は、試験に用いた比較例1〜6の二重反転式軸流送風機の静止ブレードの横断面図である。
【図8】試験に用いた二重反転式軸流送風機の風量と静圧との関係を示す図である。
【図9】試験に用いた二重反転式軸流送風機の風量と静圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 第1の単体軸流送風機
3 第2の単体軸流送風機
5 第1のケース
7 第1のインペラ
28 前方ブレード
29 第1の嵌合溝(第1の種類の被係合部)
31 第2の嵌合溝(第2の種類の被係合部)
33 第2のケース
35 第2のインペラ
51 後方ブレード
61 静止ブレード
53 フック(第1の種類の係合部)
55 突起(第2の種類の係合部)
D1 一方向
D2 他方向
Claims (5)
- 軸線方向の一方の側に吸い込み側開口部を有し前記軸線方向の他方の側に吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第1のケースと、前記吸い込み側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第1のインペラとを有する第1の単体軸流送風機と、
前記軸線方向の一方の側に吸い込み側開口部を有し前記軸線方向の他方の側に吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第2のケースと、前記吐き出し側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第2のインペラとを有する第2の単体軸流送風機とを具備し、
前記第1の単体軸流送風機の前記第1のケースと前記第2の単体軸流送風機の前記第2のケースとが結合構造を介して組み合わされてなる二重反転式軸流送風機であって、
前記結合構造は、前記第1の単体軸流送風機の前記第1のケースにおける前記吐き出し側開口部の周囲を囲む端部に設けられた二種類の複数の被係合部と、前記第2の単体軸流送風機の前記第2のケースにおける前記吸い込み側開口部の周囲を囲む端部に設けられて前記二種類の複数の被係合部と係合する二種類の複数の係合部とからなり、
前記二種類の複数の係合部と前記二種類の複数の被係合部は、
結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースとを前記軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、前記引き離し動作に抵抗し、組み合わせ状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、前記第1の回転動作に抵抗する機能を発揮する第1の種類の係合構造を構成する第1の種類の前記複数の係合部及び第1の種類の前記複数の被係合部と、
結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに前記軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して前記一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、前記第2の回転動作に抵抗する機能を発揮する第2の種類の係合構造を構成する第2の種類の前記複数の係合部及び第2の種類の前記複数の被係合部とを含んでいることを特徴とする二重反転式軸流送風機。 - 前記第1の種類の係合構造を構成する前記第1の種類の複数の係合部及び前記第1の種類の複数の被係合部と、前記第2の種類の係合構造を構成する前記第2の種類の複数の係合部及び前記第2の種類の複数の被係合部とは、前記第1のケースの前記端部と第2のケースの前記端部とを互いに近づける動作と、前記第1のケースを前記第2のケースに対して前記軸線を中心にして前記一方向に回転させる動作とを行うことによりそれぞれ係合状態になるように構成されている請求項1に記載の二重反転式軸流送風機。
- 前記第1の種類の係合部は、結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースとを前記軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、前記第1の種類の被係合部の第1の被係合面と係合する第1の係合面と、結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して前記一方向に回転させようとする前記第1の回転動作が行われたときに、前記第1の種類の被係合部の第2の被係合面と係合する第2の係合面を有するフックからなり、
前記第2の種類の係合部は、結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して前記他方向に回転させようとする前記第2の回転動作が行われたときに、前記第2の種類の被係合部の第3の被係合面と係合する第3の係合面を有する突起からなり、
前記第1の種類の被係合部は前記第1及び第2の被係合面を有する第1の嵌合溝からなり、前記第2の種類の被係合部は前記第3の被係合面を有する第2の嵌合溝からなる請求項2に記載の二重反転式軸流送風機。 - 前記第1のケース及び前記第2のケースのそれぞれの前記端部の輪郭形状は、ほぼ四角い形状を有しており、
1つの前記フック及び1つの前記突起が、前記第1のケースの前記端部の4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ一体に設けられており、
1つの前記第1の嵌合溝及び1つの前記第2の嵌合溝が、前記第2のケースの4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ形成されている請求項3に記載の二重反転式軸流送風機。 - 軸線方向の両側に吸い込み側開口部及び吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第1のケースと、前記吸い込み側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第1のインペラとを有する第1の単体軸流送風機と、
前記軸線方向の両側に吸い込み側開口部及び吐き出し側開口部を有する風洞を備えた第2のケースと、前記吐き出し側開口部内において回転する複数枚のブレードを備えた第2のインペラとを有する第2の単体軸流送風機とを具備し、
前記第1の単体軸流送風機の前記第1のケースと前記第2の単体軸流送風機の前記第2のケースとが結合構造を介して組み合わされてなる二重反転式軸流送風機であって、
前記第1のケース及び前記第2のケースのそれぞれの前記端部の輪郭形状は、ほぼ四角い形状を有しており、
1つの第1の嵌合溝及び1つの第2の嵌合溝が、前記第1のケースの4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ形成されており、
1つのフック及び1つの突起が、前記第2のケースの前記端部の4つの角部の少なくとも3つにそれぞれ一体に設けられており、
前記フックと前記第1の嵌合溝の形状は、それぞれ結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースとを前記軸線方向に引き離そうとする引き離し動作が行われたときに、前記引き離し動作に抵抗し、組み合わせ状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して一方向に回転させようとする第1の回転動作が行われたときに、前記第1の回転動作に抵抗する機能を発揮する第1の種類の係合構造を構成するように定められており、
前記突起と前記第2の嵌合溝の形状は、それぞれ結合状態にある前記第1のケースと前記第2のケースに前記軸線を中心にして前記第1のケースを前記第2のケースに対して前記一方向とは反対の他方向に回転させようとする第2の回転動作が行われたときに、前記第2の回転動作に抵抗する機能を発揮する第2の種類の係合構造を構成するように定められていることを特徴とする二重反転式軸流送風機。
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