JP3959164B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性樹脂の特色である耐熱性,機械的強度を保持し、しかも耐衝撃性の高い樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの熱硬化性樹脂は、高い耐熱性および機械的強度を有している反面、耐衝撃性が小さく脆い。そのため、柔軟な構造のモノマーで変性したり、軟質の熱可塑性物質(例えば、ゴム成分)を配合することにより、熱硬化性樹脂を改質している。しかし、熱硬化性樹脂と熱可塑性物質は、通常、互いに非相溶であり、相分離が生じる。そのため、マトリックスを熱硬化性樹脂で構成しても、耐熱性、機械的強度が低下し、熱硬化性樹脂の特性を有効に発現させることが困難である。
【0003】
特開平8−302217号公報には、疎水性化合物とビスオキサゾリン化合物とを、互いに非相溶の複数のポリマーを含む組成物に添加し、ポリマーアロイを製造する方法が開示されている。この文献には、疎水性化合物とビスオキサゾリン化合物との反応生成物を、熱可塑性樹脂で構成されたポリマーアロイの相溶化剤として用いることも記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱硬化性樹脂と熱可塑性物質とが互いに非相溶又は相溶性に乏しくても、熱硬化性樹脂の特性を有効に発現できる樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、マトリックスを熱硬化性樹脂、分散相を熱可塑性物質で構成しても相分離が生成するのを防止でき、耐熱性,機械的強度に加えて耐衝撃性の高い樹脂組成物(熱硬化性樹脂をマトリックスとするポリマーアロイなど)およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、ゴム成分,熱可塑性樹脂などの熱可塑性物質と熱硬化性樹脂とで構成された組成物に、ビスオキサゾリン化合物が共存すると、熱硬化性樹脂の特性を有効に発現できるとともに耐衝撃性も大きく改善できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、活性水素原子を含む官能基又は酸無水物基を有し、かつ分散相を構成する熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、マトリックスを構成する熱硬化性樹脂とで構成されており、前記熱可塑性物質の割合は、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部であり、前記熱可塑性物質は、C 10−30 炭化水素基を含む化合物、ゴム成分及び熱可塑性樹脂から選択された少なくとも一種であり、前記熱可塑性物質は、前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂で構成されている。この組成物において、熱可塑性物質は、ビスオキサゾリン化合物による処理生成物又はビスオキサゾリン化合物との反応生成物として使用してもよい。熱可塑性物質としては、通常、熱硬化性樹脂に対して非相溶の化合物が使用される。前記樹脂組成物は、前記熱可塑性物質と、前記ビスオキサゾリン化合物と、前記熱硬化性樹脂と、硬化剤とで構成してもよい。さらに、樹脂組成物は粉粒状又は繊維状無機物質を含んでいてもよい。
本発明には、前記熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物と前記熱硬化性樹脂とを、混合して樹脂組成物を製造する方法であって、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部の割合の前記熱可塑性物質を用いる製造方法も含まれる。この製造方法において、熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、熱硬化性樹脂とを溶融混練により混合してもよい。
【0006】
【発明の実施の形態】
[熱可塑性物質]
熱可塑性物質としては、通常、熱硬化性樹脂にない特性(耐衝撃性,柔軟性や強靭性など)を付与できる成分が使用でき、低分子量成分および高分子量成分(分子量が比較的小さなオリゴマー,ポリマー)のいずれであってもよい。熱可塑性物質は、通常、可撓性や靭性を有する場合が多い。また、本発明において、熱硬化性樹脂との複合化により有利な特性を発現させるため、通常、熱硬化性樹脂に対して非相溶の熱可塑性物質が使用される。さらに、熱可塑性物質は、親水性化合物であってもよいが、通常、主鎖又は側鎖が主に炭化水素基(脂肪族炭化水素基など)又は炭化水素基を含む繰返し単位で構成された疎水性化合物である。
【0007】
熱可塑性物質において、活性水素原子を含む官能基としては、例えば、フェノール性であってもよいヒドロキシル基,メルカプト基,カルボキシル基,酸無水物,アミノ基などが挙げられ、少なくとも1つの前記官能基を有していればよく、熱可塑性物質は、同一の官能基を有していてもよく、異なる複数の官能基を有していてもよい。好ましい官能基には、オキサゾリンに対する活性の高い官能基、例えば、カルボキシル基,酸無水物基及びアミノ基、特にカルボキシル基が含まれる。
【0008】
低分子量の熱可塑性物質としては、常温で液体または固体の化合物が使用でき、通常、分子量1000以下(好ましくは100〜750、さらに好ましくは150〜750程度)の化合物である。このような化合物は、通称、C6-30(好ましくはC8-26、さらに好ましくはC10-24)炭化水素基(特に脂肪族炭化水素基)で構成されている場合が多い。低分子量の熱可塑性物質は同種又は異種の化合物を組み合わせて使用してもよい。
【0009】
ヒドロキシル基を有する低分子化合物としては、例えば、C10-30脂肪族アルコール(例えば、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、オクタデシルアルコール、メリシルアルコール、オレイルアルコールなど)、フェノール性ヒドロキシル基を有する化合物(例えば、フェノール、アルキルフェノール(例えば、C4-20アルキル−フェノール、好ましくはC8-14アルキル−フェノール)など)などが挙げられる。
メルカプト基を有する低分子化合物としては、例えば、前記脂肪族アルコールに対応するチオアルコールが例示できる。
【0010】
カルボキシル基を有する低分子化合物としては、例えば、炭素数6以上のカルボン酸、例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスミチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ジオキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などのC6-30飽和脂肪酸、リンデル酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、エルカ酸などのC10-24 不飽和脂肪酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの炭素数6〜40程度の飽和多価カルボン酸、ダイマー酸などが例示される。
これらのカルボン酸のうち、炭素数が6以上のカルボン酸、特に脂肪族モノカルボン酸、中でも高級脂肪酸を使用する場合が多い。高級脂肪酸の炭素数は、例えば、炭素数10〜26程度、中でも炭素数12〜24程度であるのが好ましい。高級脂肪酸は、不飽和高級脂肪酸であってもよいが、飽和高級脂肪酸が有利に使用される。
【0011】
アミノ基を有する低分子化合物としては、例えば、カプリルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの第1級アミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミンなどの第2級アミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンなどが例示できる。好ましいアミン化合物には、炭素数10〜26、好ましくは炭素数12〜24(例えば、炭素数12〜18)程度の長鎖高級アミン、特に第1級アミンが含まれる。
【0012】
さらには、低分子化合物には、異種の官能基を有する化合物、例えば、カルボキシル基とアミノ基とを有する化合物、カルボキシル基とヒドロキシル基とを有する化合物なども含まれる。このような化合物には、例えば、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸などの炭素数6〜18程度のアミノカルボン酸などが挙げられる。
【0013】
高分子量の熱可塑性物質(熱可塑性樹脂)は、直鎖状または分岐鎖状であってもよく、例えば、ゴム成分(ポリブタジエン,ポリイソブチレン,ポリイソプレン,クロロプレンゴム,エチレン−プロピレン−ジエンゴム,スチレン−ブタジエン共重合体,アクリロニトリル−ブタジエン共重合体,アクリルゴム,ウレタンゴム,エチレン−酢酸ビニル共重合体,熱可塑性エラストマーなど)、オレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリ(4−メチル−ペンテン−1),エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−アクリル酸エチル共重合体,ポリブテンなどのC2-10オレフィンの単独又は共重合体)、酢酸ビニル系樹脂(ポリ酢酸ビニル,酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体など)、ビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール,エチレン−ビニルアルコール共重合体など)、ポリビニルホルマール(ポリビニルアセタールなど)、塩素含有樹脂(ポリ塩化ビニル,塩化ビニリデン系樹脂など),フッ素樹脂,スチレン系ポリマー(ポリスチレン,スチレン−メタクリル酸メチル共重合体,アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂),アクリロニトリル−ブタシエン−スチレンブロック(又はグラフト)共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系単量体の単独又は共重合体やこれらの水素添加物など)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチル,メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル共重合体など)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレートなどのホモポリエステルやコポリエステルなど)、ポリアミド樹脂(ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン610,ナイロン612など)、熱可塑性ポリウレタン樹脂,ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど),ポリアセタール,ポリフェニレンオキシド,ポリフェニレンスルフィド,ポリサルホン,ポリエーテルサルホン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリオキシベンジレン,ポリアミドイミドなどが挙げられる。
【0014】
熱可塑性樹脂は、それ自体、活性水素原子を含む前記官能基を有していてもよく、共重合,グラフト,高分子反応などの慣用の方法により熱可塑性樹脂に官能基を導入してもよい。例えば、ビニル系重合体においては、ヒドロキシル基含有単量体(アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど)、メルカプト基含有単量体、カルボキシル基又は酸無水物基含有単量体(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、10−ウンデシレン酸、ビニル安息香酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、無水マレイン酸など)、アミノ基含有単量体(アミノスチレン、ビニルアミン、アリルアミンなど)などの単量体の共重合やグラフト重合もしくは高分子反応などにより、前記官能基を導入してもよい。また、縮合系重合体においては、前記官能基を有する多官能性モノマーを共重合したり、高分子反応により官能基を導入できる。
【0015】
前記官能基が導入された高分子としては、例えば、変性オレフィン系樹脂(酸化ポリエチレン,酸化ポリプロピレン,無水マレイン酸変性ポリオレフィン,(メタ)アクリル酸変性ポリオレフィンなど)、変性ゴム(カルボキシル基変性ブタジエン系ゴム,無水マレイン酸変性ブタジエン系ゴム,無水マレイン酸変性SBRゴム,無水マレイン酸変性ABS樹脂など)、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体など),スチレン系樹脂(スチレン−無水マレイン酸共重合体,スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体,無水マレイン酸変性AS樹脂など)などが挙げられる。
高分子量の熱可塑性物質の分子量は特に制限されないが、例えば、重量平均分子量1000〜250000、好ましくは2000〜100000、さらに好ましくは5000〜25000程度である。
前記熱可塑性物質としては、可撓性,柔軟性,靭性を付与するため、軟質物質、特に、C6-30脂肪族炭化水素化合物(C6-30脂肪族カルボン酸など),ゴム成分(カルボキシル基,酸無水物基が導入されたゴム成分など),熱可塑性樹脂(変性ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド,ポリサルホン,ポリエーテルサルホンなど)などを用いる場合が多い。
【0016】
[ビスオキサゾリン化合物]
ビスオキサゾリン化合物としては、下記式(I)で表される化合物が使用できる。
【0017】
【化2】
(式中、Dは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、R1 ,R2 ,R3 およびR4 は、同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
前記式(I)で表されるビスオキサゾリン化合物において、Dのアルキレン基としては、例えば、C1-10アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン基など)が含まれ、シクロアルキレン基には、例えば、C5-10シクロアルキレン基(例えば、1,3−シクロペンチレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン基など)などが含まれる。アリーレン基には、C6-12アリーレン基(例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,5−ナフチレン、2,5−ナフチレン基など)などが含まれる。
前記アルキレン基、シクロアルキレン基やアリーレン基は、ハロゲン原子、C1-6 アルキル基、C1-6 アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
好ましいDには、置換基を有していてもよいアリール基、特に置換基を有していてもよいフェニレン基(例えば、1,3−フェニレン基または1,4−フェニレン基など)が含まれる。
【0018】
前記式(I)において、R1 ,R2 ,R3 およびR4 で表されるアルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-10アルキル基が例示される。好ましいアルキル基には、C1-6 アルキル基、特にC1-4 アルキル基が含まれる。
アリール基には、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル基などが含まれる。
【0019】
前記アルキル基やアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基を有するアルキル基には、例えば、ジクロロメチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチルなどのハロゲン化C1-4 アルキル基などが含まれる。置換基を有するアリール基には、例えば、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル基などのハロゲン原子を有するフェニル基、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−エチルフェニル基などのC1-4 アルキル−フェニル基、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニル、4−エトキシフェニル基などのC1-4 アルコキシ−フェニル基などが挙げられる。
【0020】
好ましいR1 ,R2 ,R3 およびR4 には、水素原子又はC1-4 アルキル基が含まれる。特に、R1 及びR2 の少くとも一方(特にR2 )は水素原子、R3 及びR4 の少くとも一方(特にR4 )は水素原子であるのが好ましい。さらに好ましくは、R1 ,R2 ,R3 およびR4 はいずれも水素原子である。
【0021】
好ましいビスオキサゾリン化合物には、下記式(Ia)で表される化合物が含まれる。
【0022】
【化3】
(式中、R1 ,R2 ,R3 及びR4 は、同一又は異なって、水素原子又はC1-4 アルキル基を示す)
前記式(Ia)で表される化合物として、R1 ,R2 ,R3 及びR4 が水素原子である化合物を用いる場合が多い。
【0023】
前記式(I)で表される化合物のうち好ましい化合物の具体例としては、例えば、1,6−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)ヘキサン、1,8−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)オクタン、1,10−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)デカン、1,3−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)シクロヘキサン、1,4−ビス(1,3−オキサゾリ−2−イル)シクロヘキサン、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,2−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,2−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチルフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−メチルフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(4−クロロフェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−(1,4−フェニレン)−ビス(4−クロロフェニル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。
前記式(I)で表されるビスオキサゾリン化合物は一種または二種以上使用できる。
なお、ビスオキサゾリン化合物は、慣用の方法、例えば、脂肪酸又はそのメチルエステルとエタノールアミンとを触媒の存在下で反応させ、複素5員環化合物を生成させる方法(「プラスチック エージ」, 114頁, Mar. 1995)に準じて、前記式(I)においてXに対応するジカルボン酸又はその低級アルキルエステルとエタノールアミン又はその誘導体とを反応させ、複素5員環化合物を生成させることにより得ることができる。
【0024】
さらに、オキサゾリン化合物は、反応性基を有する粉粒状又は繊維状物質(担体)と組合わせて(特に、オキサゾリン化合物と、必要により反応性基を有する表面処理剤で処理した物質(担体)との反応により生成する、オキサゾリン基を有する担体として)使用してもよい。例えば、(1)表面処理剤で処理することなく反応性基を備えた担体(A)(例えば、カーボンブラックなど)と、前記反応性基を利用してビスオキサゾリン化合物を反応させる方法、(2)反応性基を導入するための表面処理剤(B)で不活性な担体(A)を処理し、生成した反応性基を利用してビスオキサゾリン化合物と反応させる方法、(3)官能基を有する担体(A)を表面処理剤(B)で表面処理し、反応性基を導入した担体(A)と、オキサゾリン化合物とを反応させる方法などにより得られるオキサゾリン基含有担体も使用できる。
【0025】
担体(A)には、熱硬化性樹脂の特性を低下させないかぎり有機又は無機物質のいずれも使用できるが、熱硬化性樹脂の利点を向上させるため、通常、耐熱性や補強性などの点で有利な無機物質(無機担体)が使用される。
【0026】
無機物質には、例えば、炭素,ケイ砂,シリカ,二酸化ケイ素,ガラス,マイカ,タルク,クレー,ケイソウ土,炭酸塩(炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムなど),金属硫酸塩(硫酸バリウムなど),金属酸化物(酸化ケイ素,酸化アルミニウム(アルミナ),酸化チタン,酸化銅,酸化銀,酸化鉄Fe2O3,Fe3O4,酸化亜鉛,酸化ジルコニウム,酸化マグネシウムなど),金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど),金属硫化物(硫化カドミウム,硫化亜鉛など),非酸化物系セラミックス(炭化ケイ素,炭化ホウ素などの炭化物,窒化チタン,窒化ホウ素,窒化アルミニウム,窒化ケイ素などの窒化物,ケイ化物,ホウ化物など),チタン酸カリウム,ホウ酸アルミニウム,二硫化モリブデン,金属(アルミニウム,銅,ニッケル,タングステン,金,銀、白金、カドミウム、亜鉛、鉛など)などが例示できる。
【0027】
担体(A)の形状は特に制限されないが、高い補強性を付与するため、担体は粉粒状又は繊維状であるのが有利である。このような担体の具体例としては、無機粉粒体(シリカ,ケイ砂,二酸化ケイ素,炭酸カルシウム,酸化チタン,酸化アルミニウム,カーボンブラックなど),無機繊維(ガラス繊維,炭素繊維,岩綿,シリカ繊維,アルミナ繊維,チタン酸カリウム繊維,炭化ケイ素繊維,ホイスカーなど)が例示できる。
粉粒体の平均粒子径は、例えば、1nm〜50μm、好ましくは5nm〜30μm、とくに10nm〜20μm程度である。繊維の平均径は、例えば、0.1〜150μm、好ましくは1〜100μm、特に5〜50μm程度、平均繊維長は、例えば、10μm〜5mm、好ましくは50μm〜3mm、特に100μm〜2mm程度の範囲から選択できる。
【0028】
担体(A)を処理して反応性基を導入するための表面処理剤(B)としては、カップリング剤が利用できる。カップリング剤としては、加水分解性有機基を有する有機金属化合物、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などが挙げられる。好ましいカップリング剤には、シランカップリング剤などの有機ケイ素化合物、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、モノ又はジC1-4 アルキルアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基から選択された少くとも一種の官能基と、加水分解性基(アルコキシ基)やシリル基とを有するケイ素化合物が含まれる。シランカップリング剤は、単独又は二種以上の反応性基を有していてもよい。
【0029】
シランカップリング剤のアルコキシ基には、例えば、C1-4 アルコキシ基、特にメトキシ基又はエトキシ基が含まれる。シランカップリング剤において前記アルコキシ基の数は1〜3(特に2又は3)程度である。
また、担体(A)が金属である場合、表面処理剤(B)としては、少なくとも金属と配位結合可能な官能基を有する化合物(配位性化合物)、例えば、メルカプトアルコール(メルカプトエタノールなど)、硫黄又は窒素含有化合物(システィン、ヒスチジンなど)、メルカプト基含有シランカップリング剤(メルカプトプロピルトリメトキシシランなど)などが利用できる。例えば、メルカプトエタノールの場合、メルカプト基が前記例示の金属(金,白金など)と配位結合を形成するので、残余のヒドロキシル基をオキサゾリン化合物との反応に利用できる。
【0030】
担体(A)100重量部に対する表面処理剤(B)の使用量は、0〜100重量部(例えば、0.1〜75重量部)、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜25重量部程度の範囲から選択できる。
【0031】
熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物との割合は、例えば、熱可塑性物質の活性水素原子を有する官能基1モルに対して、ビスオキサゾリン化合物0.1〜5モル、好ましくは0.5〜3モル、さらに好ましくは0.7〜2モル程度の範囲から選択できる。通常、活性水素原子を有する官能基に対してオキサゾリン基が過剰となる量、例えば、熱可塑性物質の活性水素原子を有する官能基1モルに対して、ビスオキサゾリン化合物0.7〜1.5モル、好ましくは0.8〜1.3モル(例えば、0.9〜1.2モル)程度である場合が多い。
【0032】
熱可塑性物質とオキサゾリン基含有担体との割合は、例えば、熱可塑性物質の活性水素原子を有する官能基1モルに対して、担体のビスオキサゾリン基0.05〜2.5モル、好ましくは0.25〜1.5モル、さらに好ましくは0.3〜1モル程度の範囲から選択できる。
【0033】
前記熱可塑性物質とオキサゾリン化合物は、それぞれ単独で使用してもよく、熱可塑性物質をオキサゾリン化合物で処理した処理物、又は熱可塑性物質とオキサゾリン化合物との反応生成物として使用してもよい。前記処理物や反応生成物は相溶化剤としての機能も高い。さらに、前記熱可塑性物質とオキサゾリン化合物と担体は、それぞれ単独で使用してもよく、熱可塑性物質をオキサゾリン含有担体で処理した処理物、又は熱可塑性物質とオキサゾリン含有担体との反応生成物として使用してもよい。すなわち、熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物と無機物質は、無機物質の表面に、直接又は間接的(表面処理剤の残基を介して)に、ビスオキサゾリン化合物の残基を介して熱可塑性物質が結合した担体(相溶化剤)で構成してもよい。
【0034】
オキサゾリン化合物又はオキサゾリン含有担体による熱可塑性物質の処理、熱可塑性物質とオキサゾリン化合物又はオキサゾリン含有担体との反応は、反応に不活性な溶媒の存在下又は非存在下、適当な温度(例えば、30〜350℃程度)で乾式又は湿式混合により行うことができるが、混練、特に溶融混練などの溶融混合により行う場合が多い。このような処理物や反応生成物は、遊離のオキサゾリン基を有していてもよい。
【0035】
[熱硬化性樹脂]
前記熱可塑性物質と熱硬化性樹脂とで構成された樹脂系に、前記ビスオキサゾリン化合物を共存させたり、熱硬化性樹脂と前記処理物や反応生成物とを共存させると、熱可塑性物質と熱硬化性樹脂との相分離を抑制し、有効にアロイ化できる。そのため、熱硬化性樹脂の特色である優れた耐熱性および機械的強度を保持しつつ、熱硬化性樹脂にない特性(耐衝撃性,靭性など)を有する樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
熱硬化性樹脂としては、種々の樹脂、例えば、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂など),フェノール樹脂,アミノ樹脂(尿素樹脂,メラミン樹脂など),フラン樹脂,シリコーン樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリイミド樹脂,ビニルエステル樹脂(エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物など),不飽和ポリエステル樹脂,ジアリルフタレート樹脂などが例示できる。これらの熱硬化性樹脂は単独で又は二種以上組み合わせてしようできる。
【0037】
熱可塑性物質の割合は、熱硬化性樹脂がマトリックスを構成し、かつ熱硬化性樹脂の特性が有効に発現する範囲合から選択でき、例えば、熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは10〜30重量部程度である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、種々の添加剤,例えば、硬化剤,硬化促進剤,架橋剤,安定剤(酸化防止剤,紫外線吸収剤など),補強剤(粉粒状補強剤や繊維状補強剤),難燃剤,帯電防止剤,離型剤,充填剤,着色剤などを含有していてもよい。
【0039】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物は、前記熱可塑性物質とオキサゾリン化合物(又はオキサゾリン基含有担体)と熱硬化性樹脂とを混合することにより製造できる。その際、前記のように、熱可塑性物質およびオキサゾリン化合物(又はオキサゾリン基含有担体)は、ビスオキサゾリン化合物(又はオキサゾリン基含有担体)による熱可塑性物質の処理物や反応生成物として用い、熱硬化性樹脂と混合してもよい。特に、本発明の樹脂組成物は、溶融混合などの簡単なポリマーブレンド操作で、互いに非相溶の熱硬化性樹脂と熱可塑性物質とを相溶化させてアロイ化することにより調製できる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の慣用の成形法、例えば、射出成形法、積層成形法,注型成形法などにより所定の形状に成形できる。
【0041】
本発明の樹脂組成物から得られた成形体は、熱硬化性樹脂と熱可塑性物質との相分離がなく、均一系又は超微分酸系を形成でき、透明性が高い。また、両者の界面での接着強度が高いため、熱硬化性樹脂の高い耐熱性および機械的強度を維持しつつ、熱可塑性物質による可撓性,強靭性,耐衝撃性などを付与できる。また、熱可塑性物質として軟質ポリマーや靭性ポリマーを用いると、制振性,遮音性などの特性も付与できる。そのため、高い性能が要求される種々の成形体を製造するのに有用である。
【0042】
【発明の効果】
本発明では、熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物と熱硬化性樹脂とを組合わせているので、熱硬化性樹脂と熱可塑性物質とが互いに非相溶又は相溶性に乏しくても、熱硬化性樹脂の特性を有効に発現できる。特にマトリックスを熱硬化性樹脂、分散相を熱可塑性物質で構成しても相分離が生成するのを防止でき、耐熱性,機械的強度に加えて耐衝撃性を改善でき、熱硬化性樹脂をマトリックスとするポリマーアロイを得ることができる。
【0043】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
比較例1(エポキシ樹脂単体)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0044】
得られた成形品について、曲げ試験をJIS K−7113に準拠して行い、アイゾット衝撃試験をJIS K−7113に準拠して行ったところ、表に示す結果を得た。表に示されるように、成形品は衝撃強度が低い値であり、強靭性に乏しく脆性である。
【0045】
比較例2(エポキシ樹脂+ゴム成分)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、カルボキシ末端ブタジエン−アクリロニトリルゴム(宇部興産(株)製,HYCAR CTポリマーCTBN1300×31,分子量約3500)10g、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0046】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、ゴム成分の析出が認められ、相溶性に劣ることが分かった。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、エポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて衝撃強度が向上したものの、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて低下した。
【0047】
実施例1(エポキシ樹脂+ゴム成分×オキサゾリン)
カルボキシ末端ブタジエン−アクリロニトリルゴム(宇部興産(株)製,HYCAR CTポリマーCTBN1300×31,分子量約3500)100gと、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)5gを、80℃で30分間撹拌混合して反応生成物を得た。
【0048】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、上記反応生成物10g、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0049】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、均一かつ透明であり、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)と同等であり、エポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて衝撃強度が向上し、強靭化できた。
【0050】
比較例3(エポキシ樹脂+長鎖脂肪酸)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、ラウリン酸((株)ナカライテスク製)10g、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
得られた成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、アイゾット衝撃強度が低下し、強靭性に乏しく脆性であった。
【0051】
参考例1(エポキシ樹脂+長鎖脂肪酸×オキサゾリン)
ラウリン酸((株)ナカライテスク製)100gと、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)100gとを、150℃で30分間撹拌混合して反応生成物を得た。
【0052】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、上記反応生成物10g、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0053】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、均一かつ透明であり、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)と同等であり、衝撃強度はエポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて向上し、強靭化できた。
【0054】
実施例2(エポキシ樹脂+変性ポリオレフィン×オキサゾリン)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成(株)製,ユーメックス1010)50gと、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)10gとを、2軸スクリュー押し出し機により200℃で溶融混練し反応生成物を得た。
【0055】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、上記反応生成物10gを加えて150℃で溶融混合した。この混合物に、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0056】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、均一であり、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)と同等であり、衝撃強度はエポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて向上し、強靭化できた。なお、オキサゾリン化合物で変性することなく、無水マレイン酸変性ポリプロピレンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを150℃で溶融混合しても、均一に混合できなかった。
【0057】
比較例4(エポキシ樹脂)
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート1009,エポキシ当量2400〜3300,軟化点144℃)100gに、硬化剤[ジアミノフェニルメタン(住友化学工業(株)製,融点89℃)]5gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
得られた成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、アイゾット衝撃強度が低下し、強靭性に乏しく脆性であった。
【0058】
実施例3(エポキシ樹脂+ポリアミド×オキサゾリン)
ポリアミド6(東洋紡績(株)製,T−800)100gと、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)5gとを、2軸スクリュー押し出し機により240℃で溶融混練し反応生成物を得た。
【0059】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート1009,エポキシ当量2400〜3300,軟化点144℃)100gに、上記反応生成物10gを加えて2軸スクリュー押し出し機により200℃で溶融混練し混合物を得た。この混合物を粉砕した後、粉砕物に、硬化剤[ジアミノフェニルメタン(住友化学工業(株)製,融点89℃)]5gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、均一であり、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例4)よりも優れ、衝撃強度もエポキシ樹脂単体(比較例4)に比べて向上し、強靭化できた。なお、オキサゾリン化合物で変性することなく、ポリアミド6とエポキシ樹脂とを溶融混合しても、均一に混合できなかった。
【0060】
比較例5(エポキシ樹脂+ポリサルフォン)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gとポリサルフォン(テイジンアモコエンジニアリングプラスチックス(株)製,UDEL P-1700)10gを、テトラヒドロフラン300ml中に溶解混合した。エバポレータを用いて、この混合物からテトラヒドロフランを除去したところ、白色の液状物が得られた。
【0061】
この液状物50gに硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0062】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、50μm程度のポリサルフォン粒子の析出が認められ、エポキシ樹脂のマトリックスとの界面での接着も認められなかった。
得られた成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)よりも優れていたが、衝撃強度はエポキシ樹脂単体(比較例1)と同等であり、強靭化できず脆性であった。
【0063】
実施例4(エポキシ樹脂+ポリサルフォン×オキサゾリン)
ポリサルフォン(テイジンアモコエンジニアリングプラスチックス(株)製,UDEL P-1700 )100gと、2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)5gとを、2軸スクリュー押し出し機により320℃で溶融混練し反応生成物を得た。
【0064】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gと上記反応生成物10gとをテトラヒドロフラン300ml中に溶解混合した。エバポレータを用いて、この混合物からテトラヒドロフランを除去したところ、透明な液状物が得られた。
【0065】
この液状物50gに硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、ポリサルフォン粒子が5μm程度に微細化しており、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)よりも優れ、衝撃強度もエポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて向上し、強靭化できた。
【0066】
実施例5(エポキシ樹脂+ラウリン酸+シリカ+オキサゾリン化合物)
二酸化ケイ素の粉体[(株)ナカライテスク製,平均粒子径5μm]100gをエチルアルコール[(株)ナカライテスク製]1000mlに撹拌分散し、分散液にカルボキシメチルトリエトキシシラン[チッソ(株)製,SIC2264.5]0.255gを添加し、還流下で8時間反応させた。反応混合液を冷却した後、粉体粒子を濾別し、テトラヒドロフランで十分に洗浄し、減圧乾燥した。乾燥した処理粉体に対して2,2′−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)(武田薬品工業(株)製,1,3−BPO)0.131gを添加し、200℃で30分間反応させた後、ラウリン酸(日本油脂(株)製,NAA−122)0.06gを添加し、200℃で30分間反応させることにより、表面にオキサゾリン基と長鎖アルキル基とを有する粉末を得た。なお、ラウリン酸との上記反応をFT−IR(日本分光(株)製)により追跡したところ、オキサゾリン環の1650cm−1近傍の吸収とカルボン酸の1720cm−1近傍の吸収が減少し、両者の反応によるアミド基の1550cm−1近傍の吸収が増加した。
【0067】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製,エピコート828,エポキシ当量188〜194)50gに、上記粉末10g、硬化剤[酸無水物系硬化剤(油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアYH−306,アミン窒素含有量117g)]49g、硬化触媒[油化シェルエポキシ(株)製,エピキュアEMI−24,2−エチル−4−メチルイミダゾール]1gを混合し、120℃で4時間、その後150℃で2時間硬化させた。
【0068】
得られた成形品の断面を電子顕微鏡で観察したところ、シリカ粒子が均一に分散し、透明であり、高い相溶性が認められた。成形品を比較例1と同様の試験に供したところ、曲げ強度および曲げ弾性率はエポキシ樹脂単体(比較例1)と同等以上であり、エポキシ樹脂単体(比較例1)に比べて衝撃強度が向上し、強靭化できた。
【0069】
実施例6(エポキシ樹脂+変性ポリオレフィン+シリカ+オキサゾリン)
ラウリン酸に代えて実施例2の無水マレイン酸変性ポリプロピレン0.3gを用いる以外、実施例5と同様にして成形品を得た。
【0070】
結果を表に示す。
【0071】
【表1】
Claims (12)
- 活性水素原子を含む官能基又は酸無水物基を有し、かつ分散相を構成する熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、マトリックスを構成する熱硬化性樹脂とで構成されている樹脂組成物であって、前記熱可塑性物質の割合が、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部であり、前記熱可塑性物質が、C 10−30 炭化水素基を含む化合物、ゴム成分及び熱可塑性樹脂から選択された少なくとも一種であり、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂で構成されている樹脂組成物。
- 熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物が、ビスオキサゾリン化合物による熱可塑性物質の処理物、又は熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物との反応生成物で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
- 活性水素原子を含む官能基が、ヒドロキシル基,メルカプト基,カルボキシル基,およびアミノ基から選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性物質が、熱硬化性樹脂に対して非相溶であり、かつC 10−30 脂肪族炭化水素化合物,ゴム成分,熱可塑性樹脂から選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
- ビスオキサゾリン化合物の割合が、熱可塑性物質の活性水素原子を含む官能基又は酸無水物基1モルに対して0.1〜5モルである請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、熱硬化性樹脂と、硬化剤とで構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
- さらに、粉粒状又は繊維状無機物質を含む請求項1記載の樹脂組成物。
- 熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物と無機物質とが、無機物質の表面に、直接又は間接的に、ビスオキサゾリン化合物の残基を介して熱可塑性物質が結合した相溶化剤で構成されている請求項8記載の樹脂組成物。
- 活性水素原子を含む官能基又は酸無水物基を有し、かつ分散相を構成する熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、マトリックスを構成する熱硬化性樹脂とを混合する樹脂組成物の製造方法であって、前記熱可塑性物質が、C 10−30 炭化水素基を含む化合物、ゴム成分及び熱可塑性樹脂から選択された少なくとも一種であり、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂で構成されており、前記熱硬化性樹脂100重量部に対して1〜50重量部の割合の前記熱可塑性物質を用いる樹脂組成物の製造方法。
- 熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物とを、ビスオキサゾリン化合物による熱可塑性物質の処理物、又は熱可塑性物質とビスオキサゾリン化合物との反応生成物の形態で、熱硬化性樹脂と混合する請求項10記載の樹脂組成物の製造方法。
- 熱可塑性物質と、ビスオキサゾリン化合物と、熱硬化性樹脂とを溶融混練により混合する請求項10記載の樹脂組成物の製造方法。
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