JP3958847B2 - 布入りゴムベローズの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム製のベローズ内に基布を埋め込んだ布入りゴムベローズの製造方法に係り、特に基布の装着手順を改良した布入りゴムベローズの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム製のベローズは、種々の目的で使用されており、高い耐圧性を付与する目的で基布と称される布をゴム内に埋め込んだ布入りのベローズが開発されている。また、例えば、精密測定装置の振動吸収部材等の使用目的において、応答性を向上させるためにゴムの厚みの薄い、いわゆる薄肉ベローズの要望が高まっている。
【0003】
ベローズの構造は、一般に、相対向する1組のリング状の端面部と、これら端面部の外周縁部を相互に連接するように設けられた蛇腹状の壁面部とを備えるものであり、壁面部には複数の山部が形成されている。このような構造のベローズを、布入りゴムベローズとして製造する場合、まず、加硫前のゴムを使用して金型でベローズのプレフォームを成形する。次いで、このプレフォームの外側に基布を巻きつけ、その後、金型内で加熱、加圧することにより加硫を行い、この際、一時的に軟化したゴム材が基布に浸透するので、加硫成形後のベローズは内部に基布が埋め込まれた構造となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の布入りゴムベローズの製造方法では、金型でベローズのゴムプレフォームを成形した後、その外側に基布を巻きつける作業を行っているために、基布をゴムプレフォームに巻きつける際に、装着される基布によってゴムの一部が削り取られるなどの不都合が生じていた。このような不都合が発生しないように極めて慎重な作業が要求され、作業効率は決して良いものとは言えないのが現状であった。また、十分に注意していたとしても、プレフォームを傷つけて不良品が発生する場合が多々あり、製品歩留の向上は極めて困難な状況であった。さらに、プレフォームの外側に基布を巻きつける際に金型を開放するため、金型の温度が変動し易く、最終的な製品の品質が一定しない要因ともなっていた。
【0005】
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、基布装着の作業効率および製品歩留を向上させることができ、金型温度の変動を防止して、最終的な製品の品質を一定に維持することができる布入りゴムベローズの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明の布入りゴムベローズの製造方法は、相対向するように配置された一対のリング状の対向面部と、該対向面部の外周縁部を相互に連接するように設けられた2以上の山部および1以上の谷部を有する蛇腹状壁面部と、前記対向面部および蛇腹状壁面部の中に一体的に埋め込まれた基布を備えてなる布入りゴムベローズの製造方法であって、金型キャビティを構成する金型の中子に基布を巻きつけた後、この基布を覆うように未加硫ゴム製のベローズプレフォームを金型にて成形し、しかる後、熱加硫を行って布入りゴムベローズ本体を作製し、最終的に、当該布入りゴムベローズ本体を裏返して完成させるように構成される。
【0008】
さらに、本発明の布入りゴムベローズの製造方法において、前記布入りゴムベローズに用いられるゴム材質には、引き裂き強度の小さいフッ素系またはシリコーン系のゴムを採用した場合に特に効果が顕著なものとなる。
【0009】
このような本発明では、金型キャビティを構成する金型の中子に基布を巻きつけた後、その金型内でこの基布を覆うように未加硫ゴム製のベローズプレフォームを成形するように構成したので、基布によってプレフォームが傷つけられるおそれがないので、基布の装着が容易になって作業効率が向上する。したがって、基布の装着作業に起因する不良品の発生もなく、製品歩留がが向上する。さらに、ゴム製ベローズのプレフォームを成形した後布入りベローズ本体が完成するまで、金型を開放する必要がないため、金型温度の変動が防止され、最終的な製品の品質を一定に維持することができるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明の布入りゴムベローズの製造方法を説明する前に、この製造方法により最終製品として製造される布入りゴムベローズの構造について説明する。
【0012】
図1は本発明の製造方法により製造される布入りゴムベローズの一例を示す斜視図であり、図2は図1に示される布入りゴムベローズの平面図であり、図3は図2に示される布入りゴムベローズのA−A矢視半片断面図である。図1乃至図3において、布入りゴムベローズ1は、相対向する1組のリング状のゴム製の対向面部2A,2Bと、対向面部2A,2Bの各外周縁部を相互に連接するように設けられたゴム製の蛇腹状壁面部3とを備えている。
【0013】
対向面部2A,2Bは、それぞれリング状の平板形状をなし、中心部に開口部4を備えるとともに、内周縁部の外側にビード部5、内側にビード部(糸ピード)6が形成されている。また、蛇腹状壁面部3は複数の山部3a(図示例では2つの山部)と、山部3a,3aの間に位置する谷部3bを有している。そして、この布入りベローズ1には、耐圧性を付与する目的で、対向面部2A,2Bおよび蛇腹状壁面部3に連続した基布と称される布10が埋め込まれている。図3に示されているように、基布10は、このベローズ1のゴム材の外側近傍に位置するように埋め込まれている。
【0014】
次に、図4乃至図8に基づいて、本発明の布入りゴムベローズの製造方法を説明する。
【0015】
この布入りゴムベローズの製造方法を実施するに際して、図4に示されているような成形金型21が準備される。この成形金型21は、上記の布入りゴムベローズ1をちょうど裏返した形で成形できるようにキャビティが設計されており、中子22、中型23、上型24および下型25の各部材から構成されている。
【0016】
中子22は、円盤形状であり、ベローズ本体の内周面形状を有する外周部22aを備え、ビード5形成用の凹部22bと余分なゴムを逃がすための溝部22cが上面および下面にそれそれリング状に形成されている。
【0017】
中型23は、ベローズ1の蛇腹状壁面部3の形状を有する内周部23aをもち、2以上に分割可能とされている。図示の例では、中型23の内周部23aの上下端部は、蛇腹状壁面部3を構成する2個の山部の頂点に、それぞれ一致している。
【0018】
上型24および下型25は、上記の中子22と中型23とが図示のように係合した状態で、中子22の外周部22aと中型23の内周部23aとの間に、蛇腹状壁面部3成形用の間隙(キャビティ)が形成されるように構成されている。また、上型24および下型25には、蛇腹状壁面部3の一部と対向面部2A,2Bを成形するための凹部24a,25aが形成されており、中子22との間に間隙(キャビティ)が形成されるように構成されている。
【0019】
この成形金型21では、中子22、中型23、上型24および下型25の各部材が図示のように係合した状態で形成されるベローズプレフォーム成形用の間隙の厚みが、例えば、0.1〜1.7mmの範囲で設定されている。
【0020】
このような成形金型21を使用して行われる本発明の布入りゴムベローズの製造方法は、まず、成形金型21のキャビティの最内部に基布10をインサート装着する。具体的には、図5に示されているように、中子22の外周部22a、その上下に位置する対向面部22A,22B、およびビード部22bを覆うように基布10が巻きつけられる。この基布10の巻きつけは、例えば、中子22の外周部22aの周方向に沿って基布10を引っ張りながら巻きつけることにより、この外周部22aの谷部に基布10を入り込ませることができる。また、基布10を中子22の対向面部22A,22B等に装着するときは、後述する未加硫のゴム材の小片を用いて接着することができる。このような基布10の被着が完了した後、余分な基布を除去し、さらに、基布10を中子22に押し付けて、しわが生じないようになじませる。
【0021】
本発明の布入りゴムベローズの製造方法に用いられる基布10としては、ポリアミド(6ナイロン、66ナイロン等)、アラミド、ポリエステル、綿等の糸を使用した布を平織、トリコット、メリヤス、カラミフ等に横糸の伸縮性を調整して織りあげ、これを接着剤等に浸漬し乾燥して形成された基布等を挙げることができる。また、基布10に付与した伸長性と巻きつけ性を効率よく発揮させるために、基布10のバイアス方向を中子22の周方向に一致させることが好ましい。
【0022】
次に、上述した成形金型21を組み立てて、基布10の周囲に未加硫ゴム製のべローズプレフォームを成形する。成形金型21を使用した未加硫ゴム製のべローズプレフォームの成形は、図6に示されているように、例えば、未加硫ゴムのシート状成形物を中子22に被着した基布10の周囲に巻きつけ、また、中子22の上面、および、下型25の凹部25a(図4)に未加硫ゴムのシート状成形物(小片)を複数載置した状態で、各金型部材を係合し加圧して行うことができる。この際、成形金型21の温度と圧力は未加硫ゴムの加硫が進行しない範囲で設定することが必要である。また、加圧は、例えば、数回のバンピングの後に3〜90秒間程度の範囲で行う。
【0023】
使用するゴム材としては、従来公知の合成ゴムおよび天然ゴムでよく、特に制限はない。本発明で使用可能な合成ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エーテル−チオエーテルゴム、多硫化系ゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等を挙げることができるが、特に引き裂き強度の小さいフッ素系またはシリコン系のゴムを採用することが好ましい。引き裂き強度の小さいゴムを使用すればするほど、本発明の効果が特に顕著に発現する。
【0024】
このようなゴム材は、必要に応じて後述するような加硫剤、加硫促進剤等の添加剤を加えた後、混練機により混練され、得られたゴム混合物はロールによって予めシート状に成形される。
【0025】
加硫剤としては、硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、芳香族ニトロ化合物、有機過酸化物等から使用するゴムに対応して適宜選定することができる。
【0026】
また、加硫促進剤として、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)等のチアゾール系化合物、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾルスルフェンアミド(CZ)等のスルフェンアミド系化合物、2−メルカプトチアゾリン等のチアゾリン系化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)等のチウラム系化合物、ジメチルジチオカルバミン酸等のジチオカルバメート系化合物、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒドアミン系化合物、ジフェニルグアニジン等のグアニジン系化合物、N,N−ジエチルカルバモイル−2−ベンゾチアジルスルフィド等のチアゾール系化合物等を使用することができる。
【0027】
また、本発明の布入りゴムベローズの製造方法では、必要に応じて老化防止剤、ステアリン酸等の有機脂肪酸、カーボンブラック等の充填剤を含有させるようにしてもよい。このような添加剤は、ゴム100重量部に対して1〜150重量部の範囲で含有させることが好ましい。
【0028】
このようなプレフォーム成形工程で成形された未加硫ゴム製のべローズプレフォーム11は、図6に示されるように、相対向する1組のリング状平板の対向面部12A,12Bと、対向面部12A,12Bの外周縁部を相互に連接するように設けられた2つの山部13aおよび1つの谷部13bからなる蛇腹状壁面部13と、対向面部12A,12Bの内外周縁部にビード部15,16を備えている。対向面部および蛇腹状壁面部の厚みは、例えば、0.1〜1.7mm程度の範囲とされる。
【0029】
なお、成形したべローズプレフォーム11にバリが存在する場合には、このバリを除去する。また、このベローズプレフォーム11の対向面部12A,12B等にゴム厚みの不足がある場合には、該当箇所に上述のような未加硫ゴムのシート状成形物(小片)を付け足してもよい。
【0030】
しかる後、基布10が内装されたべローズプレフォーム11の加硫を行う。加硫成形用の金型41は、図7に示されているように、中子22、中型43、上型44および下型45の各部材から構成されている。
【0031】
中子22は、上述のプレフォーム成形用の金型21を構成する中子22と共用するものである。
【0032】
中型43は、ベローズ1の蛇腹状壁面部3の形状を有する内周部43aをもち、2以上に分割可能とされている。図示例では、中型43の内周部43aの上下端部は、蛇腹状壁面部3を構成する2個の山部の頂点に一致している。
【0033】
上型44および下型45は、上記の中子22と中型43とが図示のように係合した状態で、中子22の外周部22aと中型43の内周部43aとの間に、蛇腹状壁面部3成形用の間隙が形成されるように構成されている。
【0034】
このような加硫成形用の金型41では、中子22、中型43、上型44および下型45の各部材が図示のように係合され、この状態で形成されるベローズ1の加硫成形用の間隙の厚みは、例えば、0.15〜1.8mm程度の範囲で設定される。間隙の厚みは、同一であってもよく、あるいは、異なる厚みに設定してもよい。このような加硫成形用の金型41を使用したベローズ1の成形は、上述のように基布10が内装されたべローズプレフォーム11を周囲に装着した中子22と、中型43、上型44および下型45の各部材を係合し加圧、加熱して行う。加圧は、例えば、数回のバンピングの後に行うことができ、加硫時の温度、時間は使用するゴム材等に応じて適宜設定することができる。
【0035】
このような金型41を用いた加硫成形を行った後、金型41から布入りゴムベローズ本体31を取り出し、バリが存在する場合には、このバリを除去することにより、布入りゴムベローズ本体31の成形が完了する。
【0036】
上述の本発明の布入りゴムベローズの製造方法では、プレフォーム成形用の金型21の中子22は、加硫成形用の金型41の中子22と共用するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレフォーム成形工程で成形された基布10を内装したべローズプレフォーム11を金型41専用の中子に装着するようにしてもよい。また、プレフォーム成形工程と加硫工程とを同一の成形金型内で行えるように、成形金型21を構成してもよい。
【0037】
この加硫工程により成形された布入りゴムベローズ本体31は、図8に示されているような構造を有している。すなわち、布入りゴムベローズ本体31は、相対向する1組のリング状平板の対向面部2A,2Bと、対向面部2A,2Bの外周縁部を相互に連接するように設けられた2つの山部3aおよび1つの谷部3bからなる蛇腹状壁面部3と、対向面部2A,2Bの内周縁部の内側にビード部5を、外側に糸ビード6を備えている。
【0038】
本発明の布入りゴムベローズの製造方法では、最終工程として、この布入りゴムベローズ本体31の裏返し作業を行って完成品とする。すなわち、完成された布入りゴムベローズ3は、図1乃至図3に示すように、相対向する1組のリング状平板の対向面部2A,2Bと、対向面部2A,2Bの外周縁部を相互に連接するように設けられた2つの山部3aおよび1つの谷部3bからなる蛇腹状壁面部3と、対向面部2A,2Bの内周縁部の外側にビード部5、内側に糸ビード6を備えている。このように裏返し工程を行うことにより、図3に示されているように、基布10は、このベローズ1のゴム材の外側近傍に位置するように埋め込まれた状態になる。
【0039】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、金型キャビティの最内部に基布を装着した後、この基布を覆うように未加硫ゴム製のベローズプレフォームを金型にて成形するようにしたので、基布を容易に装着することができ、その作業効率を向上させることができる。また、基布の装着作業に起因する不良品の発生がないので、製品歩留を向上させることができる。さらに、金型温度の変動を防止して、最終的な製品の品質を一定に維持することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製造される布入りゴムベローズの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示される布入りゴムベローズの平面図である。
【図3】図2のA−A矢視半片断面図である。
【図4】本発明の布入りゴムベローズの製造方法において使用する金型の例を示す半片断面図である。
【図5】本発明の布入りゴムベローズの製造方法における基布装着工程を示す半片断面図である。
【図6】本発明の布入りゴムベローズの製造方法におけるプレフォーム工程を示す半片断面図である。
【図7】本発明の布入りゴムベローズの製造方法における加硫工程を示す半片断面図である。
【図8】本発明の布入りゴムベローズの製造方法における裏返し工程を示す半片断面図である。
【符号の説明】
1…布入りゴムベローズ
2A,2B…対向面部
3…蛇腹状壁面部
3a…山部
3b…谷部
4…開口部
5,6…ビード部
10…基布
11…べローズプレフォーム
21,31,41…金型
22,32…中子
23,33,43…中型
24,34,44…上型
25,35,45…下型
31…布入りゴムベローズ本体
Claims (2)
- 相対向するように配置された一対のリング状の対向面部と、該対向面部の外周縁部を相互に連接するように設けられた2以上の山部および1以上の谷部を有する蛇腹状壁面部と、前記対向面部および蛇腹状壁面部の中に一体的に埋め込まれた基布を備えてなる布入りゴムベローズの製造方法であって、
金型キャビティを構成する金型の中子に基布を巻きつけた後、この基布を覆うように未加硫ゴム製のベローズプレフォームを金型にて成形し、しかる後、熱加硫を行って布入りゴムベローズ本体を作製し、最終的に、当該布入りゴムベローズ本体を裏返して完成させるようにしたことを特徴とする布入りゴムベローズの製造方法。 - 前記布入りゴムベローズに用いられるゴム材質には、引き裂き強度の小さいフッ素系またはシリコン系のゴムを採用する請求項1に記載の布入りゴムベローズの製造方法。
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