JP3957379B2 - 弁板装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダヘッドとシリンダブロックとを有する圧縮機に用いられる弁板装置に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来の弁板装置には、吸入室及び吐出室を有するシリンダヘッドと、シリンダボアを有するシリンダブロックとの間に介在し、前記吸入室と前記シリンダボアとを連通する吸入孔、及び前記シリンダボアと前記吐出室とを連通する吐出孔を有する弁板と、該弁板の前記シリンダブロックに対向する面に配置され、前記吸入孔を開閉する吸入弁と、前記弁板の前記シリンダヘッドに対向する面に配置され、前記吐出孔を開閉する吐出弁とを含む弁板装置が存在する。
【0003】
この弁板装置は、シリンダボア内に摺動自在に挿入されたピストンが吸入行程及び吐出行程にある時に、ガスが逆流しないようにするためのものである。更に具体的に説明すると、ピストンが吸入行程にある時に、吸入弁が弁板の吸入孔を開き、吐出弁が弁板の吐出孔を閉じ、ピストンが吐出行程にある時に、吸入弁が弁板の吸入孔を閉じ、吐出弁が弁板の吐出孔を開くことにより、ガスの逆流を防いでいる。
【0004】
従来の一般的な弁板装置の場合、弁板は、平坦であり、凹凸が無い。一方、圧縮機によって吸入・圧縮されるガスには、圧縮機を潤滑するための潤滑油が霧状に含まれている。このガスに含まれる霧状の潤滑油は、弁板に触れると、その一部が油膜と成って弁板に付着する。この弁板に付着した潤滑油は、弁板と吐出弁との間に入り込み、その表面張力、粘着力等により吐出弁を開き難くする。この結果、吐出弁の開くタイミングが遅くなって過圧縮が生じ、吐出弁が激しくバルブリテーナを叩くので、騒音、振動が発生した。
【0005】
この不都合を解消するために、実開平4−1473号に開示される弁板装置が考案された。この弁板装置は、弁板上の吐出孔の出口周囲における吐出弁との対向領域上に吐出弁に対する非接触領域を設けると共に、吐出孔の出口面積と、この出口周囲における吐出弁の接触面積との割合を15〜55%とし、この接触領域上の面粗度を10〜20μmRzとしたことを特徴とするものである。この弁板装置では、弁板の表面に研磨加工或いはローレット加工を施して、弁板の表面に微細な凹凸を形成して、弁板の表面に粗面を形成するように成っていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、過圧縮を防止した従来の弁板装置では、弁板の表面に微細な凹凸を形成して弁板に粗面を作り、この粗面によって潤滑油により吐出弁が弁板に密着しないように成っていた。しかしながら、この弁板に形成された微細な凸部は、圧縮機を運転して行くうちに、吐出弁によって次第に潰され、粗面が徐々に平坦面に成って行き、これと共に、吐出弁が弁板に密着することを防止する効果が次第に弱く成ると言う問題があった。
【0007】
それ故に、本発明の課題は、潤滑油の密着力により吐出弁が開き難く成ることによって生じる過圧縮を防止する効果に経時的な変化が無く、確実に過圧縮を防止することが可能な弁板装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明によれば、吸入室及び吐出室を有するシリンダヘッドと、シリンダボアを有するシリンダブロックとの間に介在する弁板装置であって、前記吸入室と前記シリンダボアとを連通する吸入孔、及び前記シリンダボアと前記吐出室とを連通する吐出孔を有する弁板と、該弁板の前記シリンダブロックに対向する面に配置され、前記吸入孔を開閉する吸入弁と、前記弁板の前記シリンダヘッドに対向する面に配置され、前記吐出孔を開閉する吐出弁とを含む弁板装置において、前記吐出弁と接触する前記弁板の部分の少なくとも一部に、前記吐出弁によって覆われるガス充填凹部が形成され、更に、前記弁板に、前記ガス充填凹部と前記シリンダボアとを連通させる連通孔が形成されていることを特徴とする弁板装置が得られる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記吐出孔の周囲に前記吐出弁と接触する環状弁座面が残るように、前記ガス充填凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の弁板装置が得られる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、前記吐出孔の周囲に前記吐出弁と接触する環状弁座面が残るように、前記吐出孔の周囲に環状溝が形成され、該環状溝は、前記ガス充填凹部から独立していることを特徴とする請求項1記載の弁板装置が得られる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の第1の実施形態による弁板装置を用いた斜板式圧縮機の要部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図、図2は図1に示す斜板式圧縮機の全体を示す縦断面図である。
【0012】
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態による弁板装置を、これを備えた斜板式圧縮機と共に説明する。
【0013】
この斜板式圧縮機1は、ハウジング3と、シリンダブロック4と、駆動軸5と、斜板6と、揺動板7と、ピストン8と、弁板装置9とを含んで構成されている。
【0014】
ハウジング3は、ハウジング本体31と、フロントハウジング32と、シリンダヘッド33とで構成されている。このハウジング本体31は、略円筒状であり、その一端は開口し、その他端部にシリンダブロック4を一体に有している。フロントハウジング32は、略漏斗状であり、この中心部内には、軸シール部材10及びラジアルニードルベアリング11が備えられている。また、フロントハウジング32のシリンダブロック4に対向する面には、スラストベアリング12が設けられている。このフロントハウジング32は、ハウジング本体31の一端部を閉塞している。これにより、ハウジング本体31のフロントハウジング32からシリンダブロック4に掛けての部分に、クランク室31aが構成されている。シリンダヘッド33は、吸入室33aと、吐出室33bとを有している。このシリンダヘッド33は、弁板装置9を介在させて、ボルト34によってシリンダブロック4に固定されている。
【0015】
シリンダブロック4は、上述のように、ハウジング本体31に一体に形成されており、また、その中心部に中心孔41が形成され、更に、この中心孔41を取り囲むように、等間隔にシリンダボア42が形成されている。中心孔41には、フィックスドギア13が備えられている。このフィックスドギア13は、軸部131と、傘歯車部132とから成る。軸部131は、その軸方向で移動自在に中心孔41内に挿入され、また、キー14によって回転を阻止されている。また、軸部131は、バネ収容孔131aを有し、このバネ収容孔131a内には、コイルスプリング15が配置されている。このコイルスプリング15は、フィックスドギア13を揺動板7の方へ付勢している。傘歯車部132は、軸部131の一端に連設されている。
【0016】
駆動軸5は、ラジアルニードルベアリング11を介してフロントハウジング32によって回転自在に支持されており、その一端部は、フロントハウジング32を通じてハウジング3の外部へと突出しており、他端部は、クランク室31a内に突出している。駆動軸5とフロントハウジング32との間は、軸シール部材10によってシールされている。
【0017】
斜板6は、駆動軸5のクランク室31a内に突出した部分に固定されており、駆動軸5と共に回転する。この斜板6のスラスト方向の力は、スラストベアリング12を介してフロントハウジング32によって受け止められる。
【0018】
揺動板7は、スラストベアリング16を介在させて、斜板6に回転自在に取り付けられている。揺動板7は、傘歯車部71を有しており、この傘歯車部71は、ボール17を介在させて、フィックスドギア13の傘歯車部132に噛み合わされている。これにより、揺動板7の回転(自転)が阻止されている。この結果、揺動板7は、斜板6の回転運動により、揺動運動を行うように成る。
【0019】
ピストン8は、シリンダボア42内に摺動自在に挿入されている。このピストン8は、ロッド18によって揺動板7に連結されている。これにより、揺動板7が揺動運動を行うと、ピストン8は、シリンダボア42内で往復直線運動を行い、この結果、ガスの吸入・圧縮が行われる。
【0020】
弁板装置9は、弁板91と、吸入弁92と、吐出弁93と、バルブリテーナ94とを含んで構成されている。
【0021】
弁板91は、円板状であり、各シリンダボア42に対応させて形成された吸入孔91a及び吐出孔91bを有している。吸入孔91aは、吸入室33aとシリンダボア42とを連通している。吐出孔91bは、シリンダボア42と吐出室33bとを連通している。
【0022】
吸入弁92は、弁板91のシリンダブロック4に対向する面に配置されている。この吸入弁92は、円板状の固定部92aと、各吸入孔91aに対応させて、固定部92aから放射状に延びた舌片状のリード部92bとを有している。リード部92bは、吸入孔91aを開閉する部分である。また、このリード部92bには、吐出孔91bを塞がないようにするための孔92cが形成されている。
【0023】
吐出弁93は、弁板91のシリンダヘッド33に対向する面に配置されている。この吐出弁93は、円板状の固定部93aと、各吐出孔91bに対応させて、固定部93aから放射状に延びた舌片状のリード部93bとを有している。リード部93bは、吐出孔91bを開閉する部分である。
【0024】
バルブリテーナ94は、吐出弁93を介在させて、弁板91に固定され、吐出弁93のリード部93bのリフト量を制限している。
【0025】
上述の吸入弁92、吐出弁93、及びバルブリテーナ94は、ボルト95、ナット96、及びワッシャ97によって、弁板91に一体的に固定されている。
【0026】
上述の弁板91の部分の内で、吐出弁93のリード部93bと接触する部分の一部に、ガス充填凹部91cが形成されている。このガス充填凹部91cは、リード部93bが吐出孔91bを塞いでいる時に、このリード部93bによって覆われるように成っている。また、このガス充填凹部91cは、吐出孔91bの周囲に環状弁座91dが残るように形成されている。この環状弁座91dとリード部93bとが密着することにより、吐出孔91bを塞ぐように成っている。弁板91には、更に、連通孔91eが形成されている。この連通孔91eは、シリンダボア42とガス充填凹部91cとを連通するものである。また、この連通孔91eを塞がないようにするために、吸入弁92には、孔92dが形成されている。
【0027】
以上のように、弁板91には、ガス充填凹部91cが形成されているので、吐出弁93のリード部93bは、実際には環状弁座91dの部分だけにしか接触しないので、潤滑油の密着力により吐出弁93が弁板91に張り付き難い。また、ガス充填凹部91cは、連通孔91eを通じてシリンダボア42に連通しているので、ピストン8が吐出行程にある時、シリンダボア42内のガスが連通孔91eによってガス充填凹部91cに供給されるように成っている。従って、吐出行程の時には、ガス充填凹部91c内のガスの圧力が背圧として吐出弁93のリード部93bに掛かるので、この作用によっても吐出弁93が弁板91に張り付き難く成っている。以上の結果、潤滑油の密着力により吐出弁93が開き難く成ることによって生じる過圧縮が確実に防止される。
【0028】
図3は本発明の第2の実施形態による弁板装置を用いた圧縮機の要部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。本実施形態の弁板装置は、第1の実施形態と略同構成であるので、構成の同じ部分については、第1の実施形態と同じ参照番号を付してその説明を省略し、構成の異なる部分についてのみ説明する。
【0029】
本実施形態の弁板装置も第1の実施形態と同様に斜板式圧縮機に用いられているものである。本実施形態の場合、ガス充填凹部91cは、弁板91の中央部側と吐出孔91bとの間に形成されており、吐出孔91bを取り囲んでいない。このガス充填凹部91cとは別に、吐出孔91bの周囲には、吐出弁93と接触する環状弁座面91fが残るように、環状溝91gが形成されている。ガス充填凹部91cと環状溝91gとは、互いに独立しており、連通していない。また、この環状溝91gは、吐出弁93によって、完全には塞がれないように成っている。本実施形態の作用効果は、第1の実施形態と同様のものである。
【0030】
尚、上述の実施形態の弁板装置は、斜板式圧縮機用のものであるが、これに限らず、スクロール型圧縮機等、シリンダブロックとシリンダヘッドとを有する圧縮機一般に適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明の弁板装置は、潤滑油の密着力により吐出弁が開き難く成ることによって生じる過圧縮を確実に防止することができ、しかも、その効果が、圧縮機の運転時間の経過と共に低下するようなことは無く、常に安定した効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態による弁板装置を用いた斜板式圧縮機の要部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図2】図1に示す斜板式圧縮機の全体を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態による弁板装置を用いた圧縮機の要部を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B断面図である。
【符号の説明】
1 斜板式圧縮機
3 ハウジング
31 ハウジング本体
32 フロントハウジング
33 シリンダヘッド
33a 吸入室
33b 吐出室
4 シリンダブロック
42 シリンダボア
5 駆動軸
6 斜板
7 揺動板
8 ピストン
9 弁板装置
91 弁板
91a 吸入孔
91b 吐出孔
91c ガス充填凹部
91d 環状弁座面
91e 連通孔
91f 環状弁座面
91g 環状溝
92 吸入弁
92a 固定部
92b リード部
92c 孔
92d 孔
93 吐出弁
93a 固定部
93b リード部
94 バルブリテーナ
95 ボルト
96 ナット
97 ワッシャ

Claims (3)

  1. 吸入室及び吐出室を有するシリンダヘッドと、シリンダボアを有するシリンダブロックとの間に介在する弁板装置であって、前記吸入室と前記シリンダボアとを連通する吸入孔、及び前記シリンダボアと前記吐出室とを連通する吐出孔を有する弁板と、該弁板の前記シリンダブロックに対向する面に配置され、前記吸入孔を開閉する吸入弁と、前記弁板の前記シリンダヘッドに対向する面に配置され、前記吐出孔を開閉する吐出弁とを含む弁板装置において、
    前記吐出弁と接触する前記弁板の部分の少なくとも一部に、前記吐出弁によって覆われるガス充填凹部が形成され、更に、前記弁板に、前記ガス充填凹部と前記シリンダボアとを連通させる連通孔が形成されていることを特徴とする弁板装置。
  2. 前記吐出孔の周囲に前記吐出弁と接触する環状弁座面が残るように、前記ガス充填凹部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の弁板装置。
  3. 前記吐出孔の周囲に前記吐出弁と接触する環状弁座面が残るように、前記吐出孔の周囲に環状溝が形成され、該環状溝は、前記ガス充填凹部から独立していることを特徴とする請求項1記載の弁板装置。
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