JP3956868B2 - フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延h形鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガスアーク溶接、エレクトロスラグ溶接およびサブマージアーク溶接等の多層盛り溶接が施される、建築、橋梁などに適用される圧延H形鋼であって、耐脆性破壊特性と溶接施工能率の観点からフィレット部靱性に優れ、かつ高いパス間温度での多層盛り溶接が可能な、梁端溶接構造部材として好適な圧延H形鋼およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
圧延H形鋼は、主として建築構造用材料としてインフラ整備に欠かせない鋼材であり、主として SN400およびSN490MPa級のH形鋼が、柱材や梁材に適用されている。JIS のSN規格では、建築構造部材として、耐震性と溶接性の観点から、降伏点および降伏比の上限が定められており、また炭素当量の上限も定められている。
【0003】
さらに近年、構造物の一層の安心安全性と施工能率向上の観点から、梁端溶接部に適用されるH形鋼に対しては、上記の項目に加えて、
(1) 溶接施工時の効率化の観点から、高いパス間温度での溶接が可能であること、
(2) 溶接部も含めた耐脆性破壊抑制の観点から、優れた靱性( VE0 ≧70J)を有すること、
(3) ウェブとフランジの交錯部(フィレット部)において優れた靱性( VE0 ≧70J)を有すること
などが要求されている。
【0004】
溶接方法の中で多層盛り溶接は最も汎用的な施工方法であるが、パス間温度については、主として溶接金属の強度と靱性確保の観点からその上限が定められている。例えば、JIS Z 3312に規定される溶接材料では、YGW 11においては250 ℃、YGW 18では 350℃というパス間温度の上限が定められている。
【0005】
例えば、梁端接合部や柱−柱溶接部では、主として炭酸ガスアーク溶接による多層盛り溶接が現場では適用されている。このような部位に往復連続溶接を行った場合、施工能率は1/3以下まで軽減されるといわれている。しかしながら、連続往復溶接を行うことにより、パス間温度は 500℃以上まで上昇する。特に梁下フランジ部では、溶接長がウェブの存在により上フランジの半分となるため、場合によっては 700℃以上までパス間温度は高温化する。
【0006】
パス間温度があまりに高くなると、溶接金属のみならず、母材とくに溶接熱影響部(HAZ)の強度や靱性の低下が懸念されるため、このような場合には、溶接部の温度が下がるのを待って溶接を再開するという溶接施工が行われている。そのため、溶接作業時間が増大し、作業効率が低下するという問題が生じていた。
【0007】
そこで、作業効率向上の観点から、パス間温度を高温化できるような溶接材料の開発が進められている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
しかしながら、上記の技術では、対象が性能のよい溶接金属を得ることに向けられており、溶接継手を構成するもう一方のメンバーである母材すなわちH形鋼自身の改良については着目されていない。
【0008】
すなわち、高温パス間溶接によって、母材側のH形鋼についても、その溶接熱影響部(HAZ)の靱性については依然として問題が残っていた。具体的には、梁端溶接部の CO2多層盛り溶接部や極厚H形鋼を柱材に用いた場合の現場における50パスを超えるような柱−柱溶接部については、高パス間温度を許容することによる施工能率の向上は極めて大きくなるものの、現状では、その溶融線近傍の HAZ靱性が十分に得られないという問題が残されている。
また、構造物の梁材としてH形鋼が適用される場合、そのH形鋼には、裏当て金を通すためにフランジとウェブの交錯するフィレット部近傍にスカラップをとることが一般に行われている。その結果、地震時にこのスカラップからの脆性破壊の可能性が指摘されており、溶接熱影響部と共にスカラップと近傍するH形鋼のフィレット部の高靱化についても求められている。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−230387号公報
【特許文献2】
特開平11−239892号公報
【特許文献3】
特開2000−288743号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、70%以下の低降伏比で、フィレット部においても0℃におけるシャルピー吸収エネルギー( VE0 )が70J以上を満足し、さらに高いパス間温度となっても溶接熱影響部の靱性( VE0 ):70Jを十分に確保できる、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明の解明経緯について説明する。
まず、発明者らは、フランジとウェブが交錯するフィレット部の靱性向上について鋭意検討を行った。
図1に、ユニバーサル圧延機によるH形鋼の圧延状況を示す。
同図に示されたとおり、左右のフランジ部は垂直ロールと水平ロールによって、またウェブ部は同時に垂直ロールによって熱間圧延される。そして、これらの部分については、熱間圧延時の圧下による組織細粒化効果が認められるが、フィレット部ではフランジおよびウェブの熱間圧延時の圧下効果が期待できず、またその温度はフランジ部やウェブ部と比較して高いという特徴がある。
その結果、フィレット部のミクロ組織は、素材の加熱時のオーステナイト(γ)粒が圧延による再結晶化をすることなしにそのまま維持され、粗大なγ粒から、(粗大なフェライト+パーライト)あるいは(粗大なフェライト+上部ベイナイト)といった最終ミクロ組織が形成される。このため、フィレット部のミクロ組織は粗大化し、フランジやウェブ部と比較して、十分な靱性が得られないことが判明した。
【0012】
次に、高いパス間温度で多層盛り溶接を行った場合の溶接熱影響部の脆化原因についても鋭意検討を行った。
その結果、高パス間温度となった場合の問題点は、溶融線近傍に加熱された部分の冷却速度が遅くなり、オーステナイトが粗大化するところに原因があることが判明した。
このように、圧延H形鋼のフィレット部の靱性および高パス間温度で多層盛り溶接を行った場合の脆化の問題はいずれも、オーステナイト粒の粗大化が主原因である。従って、このオーステナイト粒の粗大化を抑制することができれば、上記の2つの問題点は克服されることになる。
【0013】
そこで、発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、鋼材の成分組成を、910 ℃以上の温度域においてオーステナイト相(γ相)とフェライト相(α相)の2相である温度域幅が25℃以上で、しかもこの2相域の低温側にγ単相域が存在するような組成とすることにより、γ粒の粗大化を効果的に抑制できることの知見を得た。
また、十分な耐震性能(梁材の塑性化による地震エネルギ−の吸収)を達成する手段として、第2相組織に着目し、鋼組織を(フェライト+ベイナイト)組織、(フェライト+マルテンサイト)組織あるいは(フェライト+ベイナイト+マルテンサイト)組織とすることによって、70%以下の低い降伏比を達成できることも併せて見出した。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0014】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.01〜0.20%、
Si:0.05〜1.0 %、
Mn:0.1 〜3.0 %、
Al:0.05〜1.6 %、
P:0.030 %以下および
S:0.030 %以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつCおよびAl量が、次式(1), (2)
(%Al)≦ 0.8の場合
0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1)
(%Al)> 0.8の場合
−0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2)
ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)
の関係を満足するH形鋼であって、フェライトを主相組織とし、第2相組織がベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織であることを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼。
【0015】
2.上記1において、鋼材が、質量%でさらに
Nb:0.1 %以下、
V:0.1 %以下、
Ti:0.1 %以下、
Cu:3.0 %以下、
Ni:5.0 %以下、
Cr:1.0 %以下、
Mo:1.0 %以下、
B:0.0040%以下、
N:0.010 %以下、
Ca:0.0050%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005 %以下および
Zr:0.005 %以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼。
【0016】
3.上記1または2に記載の成分組成になる鋼素材を、1000〜1350℃に加熱後、700 ℃以上で熱間圧延を終了し、該圧延終了後直ちに、3℃/s以上の冷却速度で500 ℃以下まで加速冷却することを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼の製造方法。
【0017】
以下、この発明を具体的に説明する。
フィレット部の靱性を向上させると共に、高パス間温度での多層盛り溶接における脆化を抑制するには、オーステナイト粒の微細化を図ることが技術的なポイントである。
このためには、910 ℃以上の温度域においてオーステナイト相(γ相)とフエライト相(α相)の2相である温度域幅が25℃以上あり、かつその2相域の低温側にオーステナイト単層である温度域をが存在するように、鋼成分を調整することが重要である。
【0018】
そのために必要な鋼材の成分組成は次のとおりである。
なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.01〜0.20%
Cは、建築構造用圧延H形鋼として必要な強度を得るのに有効な元素であるが、含有量が0.01%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.20%を超えると低温割れ感受性が増大するので、Cは0.01〜0.20%の範囲に限定した。なお、溶接部靱性の観点からは、上限を0.16%とすることが好ましい。
【0019】
Si:0.05〜1.0 %
Siは、製鋼上、少なくとも0.05%を必要とし、一方 1.0%を超えると母材の靱性を劣化させるので、Siは0.05〜1.0 %の範囲に限定した。好ましい上限値は、0.6 %である。
【0020】
Mn:0.1 〜3.0 %
Mnは、母材の強度を確保するために0.1 %以上は必要であるが、3.0 %を超えると低温割れ感受性が増大するので、Mnは 0.1〜3.0 %の範囲に限定した。なお、溶接部靱性の観点からは、上限を 1.6%とすることが望ましい。
【0021】
Al:0.05〜1.6 %
Alは、この発明において重要な合金成分であり、0.05%以上の添加が不可欠であるが、1.6 %を超えると鋼自体の靱性を劣化させるので、Alは0.05〜1.6 %の範囲に限定した。好ましくは 0.2〜1.0 %の範囲である。
【0022】
P:0.030 %以下、S:0.030 %以下
Pは、含有量が 0.030%を超えると溶接部の靱性が低下するので、0.030 %以下に抑制するものとした。
同様に、Sも、0.030 %を超えて含有されると母材および溶接部の靱性が低下するので、0.030 %以下に抑制するものとした。
【0023】
以上、基本成分の適正組成範囲について説明したが、この発明では各成分が上記の組成範囲を単に満足しているだけでは不十分で、 910℃以上の温度域においてオーステナイト相とフェライト相の2相である温度域幅が25℃以上であり、かつその2相域の低温側にオーステナイト単相域が存在するように、鋼成分を調整することが、オーステナイト粒の微細化の観点から重要である。
そのためには、次式(1), (2)
(%Al)≦ 0.8の場合
0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1)
(%Al)> 0.8の場合
−0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2)
ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)
の関係を満足させることが重要である。
【0024】
以上、基本成分について説明したが、この発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Nb:0.1 %以下、V:0.1 %以下、Ti:0.1 %以下
Nb, VおよびTiはいずれも、H形鋼の強度を高めるのに有効な元素であるが、含有量が 0.1%を超えると靱性を低下させるので、いずれも 0.1%以下で含有させるものとした。
【0025】
Cu:3.0 %以下、Ni:5.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Mo:1.0 %以下
Cu,Ni,CrおよびMoはいずれも、H形鋼の強度向上に有用であり、耐候性や高温強度の向上に有効に寄与するが、Cuは含有量が 3.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状を劣化させ、Niは高価であり、CrおよびMoは 1.0%を超えると低温割れを促進させると共に溶接部の靱性を低下させるので、いずれの元素も上記範囲で含有させるものとした。
【0026】
B:0.0040%以下、N:0.010 %以下、Ca:0.0050%以下、REM :0.02%以下、Mg:0.005 %以下、Zr:0.005 %以下
Bは、微量添加で高強度化を達成できる有用元素であるが、0.0040%を超えて添加してもその効果は飽和するので、Bは0.0040%以下で含有させることとする。
Nは、不可避的不純物として鋼中に混入する元素であるが、含有量が 0.010%を超えると鋼材の靱性を劣化させるので、Nは 0.010%以下で含有させるものとする。
Caは、Sの固定による靱性向上に有効な元素であるが、含有量が0.0050%を超えるとその効果は飽和するので、Caは0.0050%以下で含有させることとした。
REM は、Caと同様、Sの固定による靱性向上に有効な元素であるが、含有量が0.02%を超えるとその効果は飽和するので、REM は0.02%以下で含有させることとした。
Mg, Zrはそれぞれ、結晶粒の微細化に有用な元素であるが、含有量が 0.005%を超えるとその効果は飽和に達するので、いずれも上限を 0.005%とした。
【0027】
次に、ミクロ組織制御について説明する。
本発明では、Alを多量に含有させているためフェライト形成能が極めて高く、フェライト+パーライト組織となり易い。しかしながら、フェライト+パーライト組織では、H形鋼としての必要な耐震性能(低降伏比)を十分発揮することができない。
そこで、本発明では、ミクロ組織を、(フェライト+ベイナイト)組織、(フェライト+マルテンサイト)組織あるいは(フェライト+ベイナイト+マルテンサイト)組織にするものとし、かかる組織とすることにより、降伏比が70%以下の優れた耐震性能を得ることができる。
なお、第2相であるベイナイト組織およびマルテンサイト組織の好適組織分率はそれぞれ、10〜50 vol%、10〜50 vol%である。
【0028】
次に、上記したミクロ組織とするための製造プロセスについて説明する。
・素材加熱温度:1000〜1350℃
H形鋼の熱間圧延に際しては、成形性を確保するために少なくとも1000℃以上の加熱温度が必要であるが、1350℃を超えての加熱は、表面性状の低下やスケールロスの増加を招くので、素材加熱温度は1000〜1350℃の範囲とする。
【0029】
・圧延仕上温度:700 ℃以上
1000〜1350℃の温度に加熱された鋼素材を、熱間圧延によりH形鋼に成形するが、仕上圧延終了温度が 700℃を下回ると、低降伏比化を達成するために必要な(フェライト+ベイナイト)組織、(フェライト+マルテンサイト)組織あるいは(フェライト+ベイナイト+マルテンサイト)組織を得ることが困難となるので、圧延仕上温度は 700℃以上に限定した。好ましくは 750℃以上である。
【0030】
圧延終了後直ちに、3℃/s以上の冷却速度で 500℃以下まで加速冷却する
・加速冷却速度:3℃/s以上
第2相をベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織とするためには、3℃/s以上の冷却速度が必要である。
なお、上記の加速冷却は、仕上圧延終了後直ちに行う必要がある。というのは仕上圧延終了後、加速冷却を開始するまでにタイムラグがあると、フェライトが粗大化し、靱性を低下させるからである。
【0031】
・冷却停止温度:500 ℃以下
フェライトと第2相に強度差をもたせ、低降伏比とするためには、500 ℃以下まで冷却する必要がある。
【0032】
なお、本発明鋼に施される溶接方法としては、炭酸ガスアーク溶接、エレクトロスラグ溶接およびサブマージアーク溶接等が考えられるが、本発明は上記した全ての溶接方法に適合する。
また、具体的な溶接施工条件についても特に制限はなく、最近、施工能率を向上させるために実施されつつある、入熱量が 100 kJ/cm以上の大入熱溶接に際しても、この発明は有利に適合する。
そして、上記した成分組成および鋼組織になる発明鋼材を用いることにより、350 ℃以上の高いパス間温度での溶接が可能となり、また母材は勿論のこと、フィレット部においても VE0 ≧70Jという優れた靱性を得ることができる。
【0033】
【実施例】
表1に示す種々の成分組成に調整した鋼素材を、表2に示す条件で熱間圧延し、フランジ厚:36mmの圧延H形鋼を製造した。
得られたH形鋼のフランジ幅1/4 部からJIS 4 号引張試験片を採取し、引張試験を行って母材の降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)および降伏し(YR) を求めた。また同じくフランジ幅1/4 部−1/4t部およびフランジ幅1/2 −4/4t部(フィレット下部)のそれぞれからJIS 4 号シャルピー衛撃試験片を採取し、シャルピー試験を行って母材およびフィレット部の0℃における吸収エネルギー( VE0 )を求めた。
また、各H形鋼から熱サイクル試験片を採取し、入熱:40 kJ/cmで、溶接長さ:100 mmで CO2多層盛り溶接を、待機することなしに往復連続溶接した場合(パス間温度:700 ℃相当)における、最終溶接部CGHAZ に相当する熱サイクルを付与させたのち、JIS 4 号シャルピー衝撃試験片を採取し、0℃でシャルピー衝撃試験を行って、再現HAZ 靱性を調査した。
得られた結果を整理して表2に併記する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示したとおり、発明例はいずれも、フィレット部の靱性も含めて VE0が 100J以上の優れた靱性を有している。また、降伏比も70%以下となっていることが判る。さらに、高いパス間温度で多層盛り溶接しても 100J以上の優れた靱性が得られており、耐脆性破壊特性と溶接施工能率の観点からフィレット部靱性に優れる高いパス間温度で多層盛り溶接可能な梁端溶接構造部材に適した圧延H形鋼が得られている。
これに対し、ミクロ組織が(フェライト+パーライト)組織の場合には、降伏比が70%超と高く、また成分組成範囲が逸脱している鋼は、フィレット部および高温パス間溶接時の靱性が70J未満と低かった。
【0037】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、70%以下の低降伏比で、フランジ部やウェブ部は勿論のことフィレット部についても VE0 ≧70Jという優れた靱性を得ることができ、さらに高いパス間温度下で多層盛り溶接を行った場合であっても靱性の劣化がない圧延H形鋼を、安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ユニバーサル圧延機によるH形鋼の圧延状況を示した図である。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.01〜0.20%、
Si:0.05〜1.0 %、
Mn:0.1 〜3.0 %、
Al:0.05〜1.6 %、
P:0.030 %以下および
S:0.030 %以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつCおよびAl量が、次式(1), (2)
(%Al)≦ 0.8の場合
0.1− 0.125×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (1)
(%Al)> 0.8の場合
−0.20+0.25×(%Al)≦(%C)≦0.09+0.13×(%Al) --- (2)
ここで、(%M)はM元素の含有量(質量%)
の関係を満足するH形鋼であって、フェライトを主相組織とし、第2相組織がベイナイト組織および/またはマルテンサイト組織であることを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼。 - 請求項1において、鋼材が、質量%でさらに
Nb:0.1 %以下、
V:0.1 %以下、
Ti:0.1 %以下、
Cu:3.0 %以下、
Ni:5.0 %以下、
Cr:1.0 %以下、
Mo:1.0 %以下、
B:0.0040%以下、
N:0.010 %以下、
Ca:0.0050%以下、
REM:0.02%以下、
Mg:0.005 %以下および
Zr:0.005 %以下
のうちから選んだ1種または2種以上を含有する組成になることを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼。 - 請求項1または2に記載の成分組成になる鋼素材を、1000〜1350℃に加熱後、700 ℃以上で熱間圧延を終了し、該圧延終了後直ちに、3℃/s以上の冷却速度で 500℃以下まで加速冷却することを特徴とする、フィレット部の靱性に優れ、かつ多層盛り溶接時のパス間温度に制約のない圧延H形鋼の製造方法。
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