JP3956689B2 - 紡績装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、旋回気流を利用して、紡績糸を製造する紡績装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、旋回気流を発生させるノズルブロックと回転又は非回転の中空ガイド軸体等とからなる紡績部により紡績糸を製造する紡績装置が知られている。このような紡績装置においては、ノズルブロックに穿設された空気噴射孔から、中空ガイド軸体の先端部に向けて噴射される圧縮空気により、ノズルブロックと回転又は非回転の中空ガイド軸体との間に形成される紡績室内に旋回気流を発生させて、紡績室内に導入される繊維を加撚し、芯繊維と芯繊維の周囲に巻き付いた巻き付き繊維とからなる紡績糸を生成するとともに、生成された紡績糸を、中空ガイド軸体の中空通路を経て、パッケージに巻き取るように構成されている(例えば、特開2000−345438号公報等)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の紡績装置においては、ドラフト装置のフントローラーとニードルホルダーとの間隙については、何ら考慮がなされておらず、従って、生成される紡績糸の強力等の物性が低下したり、或いは、紡績性が悪くなる等の問題があった。
【0004】
本発明の目的は、上述した従来の紡績装置が有する課題を解決することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述した目的を達成するために、軸線方向に透孔が穿設され、該透孔に向かって開口するように空気噴射孔が穿設されたノズルブロックと、回転又は非回転の中空ガイド軸体とを有し、旋回気流を利用して、後端部が中空ガイド軸体の外周壁面に沿って屈曲した反転繊維を、巻き付き繊維として芯繊維に巻き付けて紡績糸を製造する紡績装置において、第1には、ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙が、前記繊維導入部材に導入される繊維束の走行が、前記フロントローラーを構成するボトムローラーの近傍に配置されたダストコレクターの吸引空気流の影響を受けないように調整可能としたものであり、第2には、ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙を調整することにより、前記フロントローラーと前記繊維導入部材とにより形成される空間部内に発生する随伴気流の前記間隙からの排出を調整可能としたものであり、第3には、ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙を、略0.3mm〜2.3mmの範囲としたものである。
【0006】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明の趣旨を越えない限り何ら、本実施例に限定されるものではない。
【0007】
先ず最初に、図1を用いて、一例としての紡績装置の全体構成について説明する。
【0008】
1は、ケンス2に収容されているドラフトされる前の繊維束であり、Dは、バックローラー3、サードローラー4、エプロンベルト5aが張設されたセカンドローラー5及びフロントローラー6からなる、一例としての4線式のドラフト装置である。Pは、後述する紡績部であり、7は、ニップローラー7aとデリベリーローラー7bとからなる糸送り部材であり、8は、糸継ぎ作業の際に、紡績が再開された紡績部Pから排出される糸を、一時的に貯留するためのスラックチューブであり、9は、ヤーンクリアラーである。10は、図示されていないボビンホルダーに支持されたボビン11に形成された巻き取りパッケージであり、巻き取りパッケージ10は、その表面に、フリクションローラー12が当接することにより、回転されるように構成されている。13は、図示されていない綾振り装置の綾振りガイドである。
【0009】
ケンス2から引き出された繊維束1は、ドラフト装置Dによりドラフトされた後、紡績部Pに入り、糸Yに生成され、生成された糸Yは、糸送り部材7を構成するニップローラー7aとデリベリーローラー7bとにより挟持されて、巻き取りパッケージ10方向に送られる。そして、綾振りガイド13により綾振りされながら、フリクションローラー12に当接し回転している巻き取りパッケージ10に巻き取られるように構成されている。
【0010】
上述したような、ドラフト装置D、紡績部P、糸送り部材7、スラックチューブ8、ヤーンクリアラー9及び巻き取りパッケージ10等により構成されている紡績ユニットが、図示されていない機台に沿って、多数、並設されて紡績装置が構成されている。
【0011】
次に、図2を用いて、紡績部Pについて説明する。
【0012】
14は、ドラフト装置Dによりドラフトされ、フロントローラー6から排出された繊維束Fが導入される繊維導入孔14aを有する繊維導入部材であるとともに、略繊維導入孔14aに沿って配設されたニードル14bを有するニードルホルダーである。15は、後程、詳細に説明するノズルブロックであり、ノズルブロック15には、複数の空気噴射孔15aが穿設されている。ニードルホルダー14とノズルブロック15とは、相対する面が当接するように配置されるとともに、ニードルホルダー14は、ノズルハウジング16に穿設されたフロントローラー6側の取り付け孔16aに嵌入されており、また、ノズルブロック15は、ノズルハウジング16に穿設された、フロントローラー6と反対側の取り付け孔16b及びメインハウジング17に穿設された取り付け孔17aに嵌入されている。なお、18は、ノズルハウジング16とメインハウジング17とにより挟持された板状パッキンである。ノズルハウジング16には、環状の空気溜め19及び空気溜め19に連通する連通孔20が形成されており、連通孔20は、図示されていないパイプを介して、圧縮空気供給源に連結されている。従って、圧縮空気供給源から供給される圧縮空気は、連通孔20から空気溜め19に入り、その後、ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aから噴出されることになる。
【0013】
21は、詳細に後述する回転又は非回転の中空ガイド軸体であり、中空ガイド軸体21は、メインハウジング17の開口部17bに装着される軸体支持ブロック22に穿設された取り付け孔22aに嵌入されている。23は、メインハウジング17と軸体支持ブロック22との間に形成された空気室であり、空気室23は、メインハウジング17に形成された吸引孔17cに連結されたパイプ17dを介して、図示されていない、弱い吸引圧で空気を吸引する空気吸引源に連結されており、紡績中は、ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aから噴出される空気の逃げ道空間として機能するとともに、紡績中に発生する浮遊繊維等を吸引除去する機能をするものである。
【0014】
次に、主として、図2及び図3を用いて、上述した紡績装置による糸の生成過程について概説する。
【0015】
ドラフト装置Dのフロントローラー6から送出されるドラフトされた繊維束Fは、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aに入り、その後、ノズルブロック15と回転又は非回転の中空ガイド軸体21の先端部との間に形成された紡績室p1内に入る。紡績室p1内には、ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aから噴出される空気により、旋回気流が形成されており、旋回気流は、中空ガイド軸体21に沿って旋回しながら下方に流れ、空気室23に入り、その後、吸引孔17cから、パイプ17dを経て排出されるように構成されている。ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aからの噴出空気の作用により、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近には、吸引空気流が発生しているので、フロントローラー6から送出されるドラフトされた繊維束Fは、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aに吸い込まれることになる。
【0016】
ニードルホルダー14の繊維導入孔14aから出た繊維束Fは、中空ガイド軸体21の中空通路21aの入口21a1に、その先端が接近して配置されているニードル14bに巻き付きつつ、中空ガイド軸体21の中空通路21aに導入される。そして、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aから出た繊維束Fを構成する繊維fの一部は、中空ガイド軸体21の中空通路21a内において生成されつつある紡績糸Y’に、その先端側が巻き込まれて中空ガイド軸体21の中空通路21aに導入され、また、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aから出た繊維束Fを構成する繊維fの一部は、その先端側が、中空ガイド軸体21の中空通路21a内において生成されつつある紡績糸Y’に巻き込まれるとともに、その後端部f1aが、紡績室p1内に発生している旋回気流により、中空ガイド軸体21の先端部に沿って周回しつつ、中空ガイド軸体21の外周壁面に沿って屈曲することになる(以下、先端部が、中空ガイド軸体21の中空通路21aに挿入され、後端部f1aが、中空ガイド軸体21の先端部の外周壁面に沿うように配置されて、屈曲されている繊維を、反転繊維といい、符号f1を付す。)。更に、生成過程にある紡績糸Y’の移動に伴って、反転繊維f1の後端部f1aが、中空ガイド軸体21の中空通路21aの入口21a1に近づくと、反転繊維f1の後端部f1aは、旋回気流によって、中空ガイド軸体21の中空通路21a内に位置する生成過程にある紡績糸Y’の周囲を振り回されながら、その外周に巻き付き、紡績糸Yが生成されることになる。このようにして、中空ガイド軸体21の中空通路21aに略直線状態で導入される繊維fにより構成される芯繊維と、芯繊維の周囲に巻き付いた反転繊維f1により構成される巻き付き繊維とからなる実撚り状の紡績糸Yが生成されることになる。なお、繊維束Fは、ニードル14bに、一旦、巻き付けられているので、旋回気流により掛けられた一部の撚りが、フロントローラー6方向へ伝播しようとしても、ニードル14bによってその伝播が阻止されるので、フロントローラー6から送りだされる繊維束Fが撚られるようなことはない。
【0017】
次に、主として、図4及び図5を用いて、ノズルブロック15と中空ガイド軸体21の詳細及びそれらの関係について説明する。
【0018】
ノズルブロック15には、その軸線方向に、透孔24が形成されており、透孔24は、透孔24のニードルホルダー14側(繊維束Fの導入側)に位置する透孔24の入口部を構成する、内径が一定な円柱状空間部24aと、円柱状空間部24aに連接された第1円錐台状空間部24bと、第1円錐台状空間部24bに連接された第2円錐台状空間部24cと、第2円錐台状空間部24cに連接された第3円錐台状空間部24dとから構成されている。第1円錐台状空間部24bを構成するノズルブロック15の内周壁面15bの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ1は、第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ2より大きく、また、第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ2は、第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ3より小さくなるように構成されている。即ち、、第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ3は、第1円錐台状空間部24bを構成するノズルブロック15の内周壁面15bの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ1より小さく、第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ2より大きくなるように形成されている。
【0019】
ノズルブロック15に穿設された複数の空気噴射孔15aは、その出口15a1の略半分が、円柱状空間部24aを構成するノズルブロック15の内周壁面15eに位置し、また、残りの略半分が、円柱状空間部24aを構成するノズルブロック15の内周壁面15eの下端から、下方に末広り状に拡大傾斜する、第1円錐台状空間部24bを構成するノズルブロック15の内周壁面15bに位置するように構成されている。
【0020】
中空ガイド軸体21は、その中心線L2が、ノズルブロック15に穿設された透孔24の中心線L1と一致するように配置されている。中空ガイド軸体21は、その先端部を構成する第1円錐台状部21bと、第1円錐台状部21bに連接されている第2円錐台状部21cと、第2円錐台状部21cに連接された円筒状部21dと、円筒状部21dに連接された第3円錐台状部21eとから構成されている。また、第2円錐台状部21cの母線と中空ガイド軸体21の中心線L2とのなす角度θ4は、第1円錐台状部21bの母線と中空ガイド軸体21の中心線L2とのなす角度θ5より、大きく形成されている。そして、中空ガイド軸体21は、その第1円錐台状部21bが、ノズルブロック15に穿設された透孔24内に位置するように配置されるとともに、空気噴射孔15aは、空気噴射孔15aから噴出された空気が、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの上端角部に形成されているアール部21b1の接線方向で、且つ、下方に噴出されるように、ノズルブロック15に穿設されている。
【0021】
ノズルブロック15の第1円錐台状空間部24bを構成する内周壁面15b、第2円錐台状空間部24cを構成する内周壁面15c及び第3円錐台状空間部24dを構成する内周壁面15dと、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2との間には、略筒状のスペースSが形成されている。このスペースSは、中空ガイド軸体21の中空通路21aに挿入された反転繊維f1の後端部f1aが、空気噴射孔15aから噴出された空気により形成される旋回気流により、中空ガイド軸体21の先端部の外周壁面に沿うように屈曲されるための空間であるとともに、空気噴射孔15aから噴出された空気の空気室23への逃げ空間としての機能を有している。
【0022】
第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ2が、第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ3より小さくなるように構成されているので、第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cと第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dとの境界部には、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2方向に突出した環状の突出部25が形成されており、この絞り部としての突出部25の位置で、ノズルブロック15の第2円錐台状空間部24cを構成する内周壁面15c及び第3円錐台状空間部24dを構成する内周壁面15dと、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2との間に形成されたスペースSが、最も絞られるように構成されている。
【0023】
第2円錐台状空間部24cを構成するノズルブロック15の内周壁面15cの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ2を、第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dの母線と透孔24の中心線L1とのなす角度θ3より小さくすることにより、上述した突出部25を、必ずしも、形成する必要はない。例えば、第3円錐台状空間部24dを形成することなく、ノズルブロック15の透孔24を、円柱状空間部24aと、円柱状空間部24aに連接された第1円錐台状空間部24bと、第1円錐台状空間部24bに連接された第2円錐台状空間部24cとにより形成するとともに、第2円錐台状空間部24cの内周壁面15cに環状の突出部を突出させることにより、上記と同様の突出部25を形成することもできる。
【0024】
ところで、上述したように、ノズルブロック15の空気噴射孔15aから噴出された空気は、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの上端角部に形成されているアール部21b1の接線方向で、且つ、下方に噴出され、中空ガイド軸体21の周囲を、螺旋状に下方に向かって流れる旋回気流となるが、この旋回気流は、反転繊維f1を、中空ガイド軸体21の先端部の外周壁面に沿って、周方向に周回させる旋回成分と、反転繊維f1を、中空ガイド軸体21の軸線方向に移動させる軸流成分とを有しており、この軸流成分は、反転繊維f1の後端部f1aを、中空ガイド軸体21の外周壁面に押し付ける作用を有するものでもある。旋回気流の旋回成分が大きいと、紡績糸を構成する芯繊維と巻き付き繊維のうち、巻き付き繊維の割合が増えることになり、また、旋回成分が小さいと、巻き付き繊維の割合が減ることになる。
【0025】
旋回気流の旋回成分と軸流成分の割合調整は、上述したノズルブロック15の内周壁面15b、15c、15dと、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2との間に形成されたスペースS内に突出するように形成された突出部25のスペースS内への突出量を変えることにより、換言すれば、突出部25におけるスペースSの断面積(ノズルブロック15の中心線(軸線)L1と直交する面の面積)を変えることにより行うことができる。
【0026】
突出部25のスペースS内への突出量を大きくして、突出部25におけるスペースSの断面積を小さくすると、換言すれば、スペースSの絞り量を大きくすると、旋回気流の旋回成分が増えて、軸流成分が減ることになり、従って、紡績糸を構成する巻き付き繊維の割合が増えることになる。
【0027】
突出部25のスペースS内への突出量が大きすぎて、突出部25部分でのスペースSの断面積が小さすぎると、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、旋回気流の軸流成分が極端に低下したり、ひいては、旋回気流が逆流することになる。このように、旋回気流が逆流すると、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流が弱くなり、従って、この吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が低下することになり、生成される紡績糸の強力が低下したり、紡績糸の生成が不可能になる。また、突出部25のスペースS内への突出量が大きすぎると、旋回気流に乱流が発生して、反転繊維f1の後端部f1aが乱され、生成される紡績糸の物性や外観が悪くなる。突出部25におけるスペースSの絞り量を大きして、換言すれば、突出部25におけるスペースSの断面積を小さくして、旋回気流の旋回成分を増やすことにより、紡績糸を構成する巻き付き繊維の割合を増やすことができるが、軸流成分による反転繊維f1の後端部f1aを、中空ガイド軸体21の外周壁面21b2に押し付ける作用が低下するため、その反作用となる、巻き付き繊維の巻き付き力も低下し、生成された紡績糸の強力が低下したり、或いは、上記のように、軸流成分が極端に低下したり、旋回気流が逆流することになるので、突出部25におけるスペースSの断面積を、適宜、設定する必要がある。
【0028】
突出部25のスペースS内への突出量を小さくして、突出部25におけるスペースSの断面積を大きくすると、旋回気流の軸流成分が増えて、旋回成分が減ることになり、従って、紡績糸を構成する巻き付き繊維の割合が減ることになる。また、旋回気流の軸流成分が増えると、反転繊維f1が、中空ガイド軸体21の中空通路21a内に引き込まれる際の抵抗力が大きくなり、従って、反転繊維f1の紡績糸を構成する芯繊維への巻き付き力が強まり、締まった、且つ、強力の増加した紡績糸を製造することができる。
【0029】
しかしながら、突出部25のスペースS内への突出量が小さすぎて、突出部25におけるスペースSの断面積が大きすぎると、旋回気流の軸流成分が大きくなりすぎて、旋回気流の下方への流れが強すぎることになり、従って、繊維束Fを構成する繊維が、繊維束Fから分離して、浮遊繊維、所謂、ファイバーロスが増加することになる。このようなファイバーロスが増加すると、当然のことながら、生成される紡績糸を構成する繊維の量が減ることになるので、紡績糸の強力が低下することになる。また、旋回気流の軸流成分が大きくなりすぎると、芯繊維に巻き付く巻き付き繊維が少なくなり、紡績糸の強力が低下することになる。
【0030】
図6には、生成される紡績糸の強力(グラム/テックス(gr/tex))と突出部25におけるスペースSの断面積(mm2 )との関係に関する実験結果が示されている。
【0031】
より広範囲な用途にて、実用的な紡績糸の強力(gr/tex)である8gr/tex以上の紡績糸を生成するためには、突出部25におけるスペースSの断面積(mm2 )は、略6mm2 〜15mm2 とする必要がある。また、特に、広範囲の用途にて、より好ましい紡績糸の強力(gr/tex)である10gr/tex以上の紡績糸を生成するためには、突出部25におけるスペースSの断面積(mm2 )は、略7mm2 〜12mm2 となる。
【0032】
また、上述した突出部25の配置位置も、紡績糸の物性や紡績性に影響するので、突出部25の中空ガイド軸体21の上端面(中空通路21aの入口21a1を含め、中空ガイド軸体21の中心線L2に対して垂直な上端面)21fからの距離H1を、適宜、調整する必要がある。
【0033】
突出部25と中空ガイド軸体21の上端面21fとの距離H1が短すぎて、反転繊維f1が、突出部25に当接し、繊維の反転が阻害されるようなことになると、紡績糸を構成する巻き付き繊維の割合が減り、巻き付き繊維が少なく、芯繊維の多い紡績糸が生成されることになり、紡績糸の強力が低下することになる。また、反転繊維f1が、突出部25に当接すると、反転繊維f1の後端部f1aが屈曲される場合があり、従って、紡績糸の強力が低下したり、外観が悪くなる。
【0034】
突出部25と中空ガイド軸体21の上端面21fとの距離H1が長すぎると、ノズルブロック15の第3円錐台状空間部24dを構成するノズルブロック15の内周壁面15dの端部15d1と、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2の端部との間隙が狭くなり、この狭くなった間隙に、繊維束F中に含まれ、飛ばされた夾雑物等が詰まり、所謂、チョークが発生し易くなる。このようなチョークが発生すると、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、軸流成分が極端に低下し、ひいては、旋回気流が逆流することになり、紡績糸の強力が低下したり、紡績糸の生成が不可能になり、紡績性が阻害されることになる。
【0035】
中空ガイド軸体21を構成する第2円錐台状部21cが、ノズルブロック15に穿設された透孔24内に位置しないように構成することが好ましい。即ち、ノズルブロック15に穿設された透孔24内には、第1円錐台状部21bのみが位置することが好ましい。第2円錐台状部21cの中心線L2に対する母線の角度θ4は、第1円錐台状部21bの母線の中心線L2に対する母線の角度θ5より大きいので、換言すれば、第2円錐台状部21cの外周面は、第1円錐台状部21bの外周面より、より外側に拡がっているので、第2円錐台状部21cが、ノズルブロック15に穿設された透孔24内に位置すると、スペースSの出口部s1において、スペースSが絞られてしまい、従って、上述した突出部25を、スペースS内に形成した作用効果が損なわれることになる。
【0036】
ノズルブロック15の空気噴射孔15aの出口15a1が位置する円柱状空間部24aの内径W1の大きさは、紡績糸の物性や紡績性に影響するので、この内径W1を、適当な大きさにする必要がある。
【0037】
円柱状空間部24aの内径W1が小さいと、旋回気流が旋回する円周の長さが短くなり、旋回気流の旋回成分の気流の速さが増えることになる。従って、反転繊維f1の旋回力が大きく、芯繊維に強い巻き付き力で巻き付くことになり、締まりの良い、強力の増加した紡績糸が生成されることになる。しかしながら、円柱状空間部24aの内径W1が小さすぎると、繊維の反転スペースが狭くなり、繊維が反転しにくくなり、従って、反転繊維f1からなる巻き付き繊維の割合が低下し、芯繊維の割合が増加するために、紡績糸の強力が低下することになる。また、円柱状空間部24aの内径W1が小さすぎると、旋回気流の旋回成分の気流の速さが増えすぎることになり、従って、軸流成分による反転繊維f1の後端部f1aを、中空ガイド軸体21の外周壁面21b2に押し付ける作用が低下するため、その反作用となる、巻き付き繊維の巻き付き力も低下し、紡績糸の強力が低下することになる。
【0038】
円柱状空間部24aの内径W1が大きすぎると、旋回気流が旋回する円周の長さが長くなりすぎて、旋回気流の旋回成分の気流の速さが小さくなる。従って、反転繊維f1の旋回力が小さく、反転繊維f1の芯繊維に巻き付く力が弱くなり、締まりの悪い紡績糸が生成されることになり、紡績糸の強力が低下する。また、円柱状空間部24aの内径W1が大きすぎると、旋回気流の旋回成分の気流の速さが小さくなりすぎ、従って、旋回気流の軸流成分が大きくなりすぎて、芯繊維が多く、巻き付き繊維が少ない紡績糸が生成され、紡績糸の強力が低下することになる。
【0039】
上述した円柱状空間部24aの内径W1は、略4mm〜6mmの範囲とすることが好ましい。円柱状空間部24aの内径W1が、4mm未満であると、円柱状空間部24aの内径W1が小さすぎて、上述したように、繊維の反転スペースが狭くなり、繊維が反転しにくくなり、従って、反転繊維f1からなる巻き付き繊維の割合が低下し、芯繊維の割合が増加するために、紡績糸の強力が低下することになる。また、円柱状空間部24aの内径W1が、6mm越えると、円柱状空間部24aの内径W1が大きくなりすぎて、上述したように、反転繊維f1の旋回力が小さく、反転繊維f1の芯繊維に巻き付く力が弱くなり、締まりの悪い紡績糸が生成されることになり、紡績糸の強力が低下することになる。
【0040】
中空ガイド軸体21の先端の外径W2の大きさも、紡績糸の物性や紡績性に影響するので、この外径W2を、適当な大きさにする必要がある。なお、中空ガイド軸体21の先端の外径W2とは、第1円錐台状部21bの外周壁面21b2の相対する一対の母線の延長線L3、L3と、中空ガイド軸体21の上端面21fとが交差する一対の交点X1、X1間の距離をいう。
【0041】
中空ガイド軸体21の先端の外径W2が小さいと、ノズルブロック15の空気噴射孔15aの出口15a1から中空ガイド軸体21のアール部21b1までの距離が長くなり、従って、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が大きく、ノズルブロック15の空気噴射孔15aの出口15a1から中空ガイド軸体21のアール部21b1までの距離が短い場合に比べて、中空ガイド軸体21の先端における旋回気流の旋回成分の繊維fへの作用が小さく、反転繊維f1の芯繊維への強い巻き付き力が小さくなり、従って、締まりの悪い、強力の低下した紡績糸が生成されることになる。また、旋回気流の旋回成分の繊維fへの作用が小さいと、芯繊維が多く、巻き付き繊維が少ない紡績糸が生成され、紡績糸の強力が低下することになる。
【0042】
また、中空ガイド軸体21の先端の外径W2の大小は、芯繊維に巻き付く反転繊維f1の巻き付き角度(紡績糸の長手方向に対する巻き付き繊維の傾斜角度)に影響する。即ち、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が小さい場合には、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が大きい場合に比べて、反転繊維f1からなる巻き付き繊維の巻き付き角度が大きくなる。即ち、紡績糸の長手方向に対する巻き付き繊維の傾斜角度が、より水平線(紡績糸の長手方向に対して垂直な方向)方向に近づくことになる。そして、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が小さすぎて、巻き付き繊維の巻き付き角度が大きくなりすぎると、生成される紡績糸の強度が低下することになり、また、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が大きすぎて、巻き付き繊維の巻き付き角度が小さすぎる場合にも、同様に、生成される紡績糸の強度が低下することになる。
【0043】
更に、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が小さすぎると、ノズルブロック15の空気噴射孔15aから噴出される空気が、中空ガイド軸体21の上端角部に形成されているアール部21b1に当たらずに、外れ易くなり、従って、十分な旋回気流が発生せず、強力の低下した紡績糸が生成されることになる。
【0044】
更にまた、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が大きすぎると、繊維の反転スペースが狭くなり、繊維が反転しにくくなり、従って、反転繊維f1からなる巻き付き繊維の割合が低下し、芯繊維の割合が増加するために、紡績糸の強力が低下することになる。また、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が大きすぎると、ノズルブロック15の空気噴射孔15aの出口15a1から中空ガイド軸体21のアール部21b1までの距離が短くなりすぎて、旋回気流の空気室23への排気が少なくなり、従って、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、軸流成分が極端に低下したり、或いは、旋回気流が逆流することになり、従って、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が低下することになり、紡績糸の強力が低下したり、極端な場合には、紡績糸の生成が不可能になる。
【0045】
従って、上述したようなことを勘案して、中空ガイド軸体21の先端の外径W2を適当な径に設定する。
【0046】
図7には、生成される紡績糸の強力(gr/tex))と中空ガイド軸体21の先端の外径W2(mm)との関係に関する実験結果が示されている。
【0047】
より広範囲な用途にて、実用的な紡績糸の強力(gr/tex)である10gr/tex以上の紡績糸を生成するためには、中空ガイド軸体21の先端の外径W2(mm)は、略2.4mm〜3.9mmが好ましい。
【0048】
中空ガイド軸体21の先端の外径W2が、2.4mm未満であると、上述したように、旋回気流の旋回成分の繊維fへの作用が小さすぎて、巻き付き繊維が少なく、芯繊維の多い強力の低下した紡績糸が生成されたり、或いは、ノズルブロック15の空気噴射孔15aから噴出される空気が、中空ガイド軸体21の上端角部に形成されているアール部21b1に当たらずに、外れ易くなり、従って、十分に旋回気流が作用せず、強力の低下した紡績糸が生成されることになる。また、中空ガイド軸体21の先端の外径W2が、3.9mmを越えると、上述したように、反転繊維f1からなる巻き付き繊維の割合が低下し、芯繊維の割合が増加するために、紡績糸の強力が低下することになるとともに、ノズルブロック15の空気噴射孔15aの出口15a1から中空ガイド軸体21のアール部21b1までの距離が短くなりすぎて、旋回気流の空気室23への排気が抑制され、従って、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、軸流成分が極端に低下したり、或いは、旋回気流が逆流することになり、従って、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が低下することになり、紡績糸の強力が低下したり、極端な場合には、紡績糸の生成が不可能になる。
【0049】
ノズルブロック15の第1円錐台状空間部24bを構成する内周壁面15b、第2円錐台状空間部24cを構成する内周壁面15c及び第3円錐台状空間部24dを構成する内周壁面15dと、中空ガイド軸体21の第1円錐台状部21bの外周壁面21b2との間に形成されたスペースSから、空気室23へ排出される旋回気流の出口面積も、紡績糸の物性や紡績性に影響するので、出口部s1におけるスペースSの出口面積を、適当な大きさにする必要がある。
【0050】
上述した出口面積が小さい場合には、この出口面積が大きい場合に比べて、旋回気流の旋回成分が増えて、軸流成分が減少することになり、従って、紡績糸の巻き付き繊維の割合が増え、芯繊維の割合が減ることになる。また、出口面積が小さい場合には、この出口面積が大きい場合に比べて、旋回気流の空気室23への排気が抑制され、従って、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られることになる。
【0051】
上述した出口面積が小さすぎると、旋回気流の空気室23への排気が抑制され、従って、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、軸流成分が極端に低下したり、或いは、旋回気流が逆流することになる。このように、旋回気流の軸流成分が極端に低下したり、或いは、旋回気流が逆流すると、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流が弱くなり、従って、この吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が低下することになり、生成される紡績糸の強力が低下したり、極端な場合には、紡績糸の生成が不可能になる。また、旋回気流の旋回成分が強すぎるので、軸流成分による反転繊維f1の後端部f1aを、中空ガイド軸体21の外周壁面21b2に押し付ける作用が低下するため、その反作用となる、巻き付き繊維の巻き付き力も低下し、強力の低下した紡績糸が生成されることになる。
【0052】
また、上述した出口面積が大きすぎると、旋回気流の軸流成分が大きくなりすぎて、旋回気流の下方への流れが強くなり、繊維束Fを構成する繊維が、繊維束Fから分離して、浮遊繊維が増加する、所謂、ファイバーロスが増加することになる。このようなファイバーロスが増加すると、当然のことながら、生成される紡績糸を構成する繊維の量が減ることになるので、紡績糸の強力が低下することになる。更に、旋回気流の軸流成分が強すぎるので、芯繊維が多く、巻き付き繊維の少ない強力の低下した紡績糸が生成されることになる。
【0053】
図8には、生成される紡績糸の強力(gr/tex))と上述した出口面積(mm2 )との関係に関する実験結果が示されている。
【0054】
より広範囲の用途にて、実用的な紡績糸の強力(gr/tex)である10gr/tex以上の紡績糸を生成するためには、スペースSの出口面積(mm2 )は、略10mm2 〜42mm2 が好ましい。出口面積が、10mm2 未満であると、上述したように、旋回気流の空気室23方向への流れが遮られて、軸流成分が極端に低下したり、或いは、旋回気流が逆流することになり、従って、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が低下することになり、紡績糸の強力が低下したり、紡績糸の生成が不可能になったり、或いは、旋回気流の旋回成分が強すぎて、強力の低下した紡績糸が生成されることになる。また、出口面積が、42mm2 を越えると、上述したように、旋回気流の軸流成分が大きくなりすぎて、旋回気流の下方への流れが強くなり、ファイバーロスが増加し、紡績糸の強力が低下したり、或いは、旋回気流の軸流成分が強すぎて、芯繊維が多く、巻き付き繊維の少ない強力の低下した紡績糸が生成されることになる。
【0055】
中空ガイド軸体21を構成する第2円錐台状部21cが、ノズルブロック15に穿設された透孔24内に位置しないようにすることが好ましい。即ち、ノズルブロック15に穿設された透孔24内には、第1円錐台状部21bのみが位置することが好ましい。第2円錐台状部21cの中心線L2に対する母線の角度θ4は、第1円錐台状部21bの母線の中心線L2に対する母線の角度θ5より大きいので、換言すれば、第2円錐台状部21cの外周面は、第1円錐台状部21bの外周面より、より外側に拡がっているので、第2円錐台状部21cが、ノズルブロック15に穿設された透孔24内に位置すると、スペースSの出口面積が小さくなりすぎることになる。
【0056】
フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間の間隙W3は、紡績糸の物性や紡績性に影響するので、この間隙W3を、適当な大きさにする必要がある。フロントローラー6を構成するトップローラー6aとボトムローラー6bとニードルホルダー14とにより形成される略三角柱状の空間部26内には、フロントローラー6を構成するトップローラー6aとボトムローラー6bの回転に伴う随伴気流が生じているが、この随伴気流は、上記の空間部26に閉じ込められることなく、フロントローラー6を構成するトップローラー6aとニードルホルダー14との間隙W3から、適宜、排出されることが必要である。
【0057】
フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3が少なすぎると、トップローラー6aとボトムローラー6bとの回転に伴う随伴気流が、空間部26に閉じ込められて、随伴気流に乱れが生じ、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aに導入される繊維束Fが乱れて、生成される紡績糸の均斉度や強力や外観が低下することになる。また、フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3が少なすぎると、この間隙W3に、フロントローラー6から排出された繊維束Fを構成する繊維fや夾雑物等が詰まり、随伴気流の逃げ場が塞がれてしまったり、逃げ場が塞がれたことにより、後から入ってくる夾雑物等が、紡績室p1内等に入り込んで、上記と同様の問題が発生することになる。
【0058】
また、フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3が大きすぎると、フロントローラー6を構成するトップローラー6aとボトムローラー6bとのニップ点27と中空ガイド軸体21の中空通路21aの入口21a1までの距離が長くなるので、ニップ点27に把持され、且つ、中空ガイド軸体21の中空通路21aの入口21a1に到達し、繊維の両端が、共に、拘束されている拘束繊維が減少し、繊維の両端が拘束されていないフリーの繊維が増えることになる。このフリーの繊維は、繊維の両端が拘束されていないので、上述した随伴気流の影響を受け易く、生成される紡績糸の物性、特に、強度が低下するとともに、外観も悪くなる。また、フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3が大きすぎると、フロントローラー6から排出された繊維束Fを構成する繊維fが、フロントローラー6を構成するボトムローラー6bの近傍に配置されたダストコレクターCの吸引口c1の吸引空気流の影響を受け易くなり、繊維束Fの走行に影響を与え、繊維束Fの紡績部P内への導入に悪影響を及ぼす。従って、生成される紡績糸の物性、特に、強度が低下するとともに、外観も悪くなる。
【0059】
図9には、生成される紡績糸の強力(gr/tex))とフロントローラー6を構成するトップローラー6a及びトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3との関係に関する実験結果が示されている。
【0060】
より広範囲の用途にて、好ましい紡績糸の強力(gr/tex)である10gr/tex以上の紡績糸を生成するためには、フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3は、略2.3mm以下であることが好ましい。
【0061】
フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3は、略0.3mm〜2.3mmの範囲とすることがより好ましい。フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bとニードルホルダー14との間隙W3が、0.3mm未満であると、上述したように、トップローラー6aとボトムローラー6bとの回転に伴う随伴気流が、空間部26に閉じ込められて、随伴気流に乱れが生じ、ニードルホルダー14の繊維導入孔14aに導入される繊維束Fが乱れて、生成される紡績糸の均斉度や強力や外観が低下することとともに、この間隙W3に繊維や夾雑物等が詰まり、随伴気流の逃げ場が塞がれてしまい、上記と同様の問題が発生することになる。また、フロントローラー6を構成するトップローラー6a及びボトムローラー6bと、ニードルホルダー14との間隙W3が、2.3mmを越えると、上述したように、随伴気流の影響を受け易いフリーの繊維が増加し、生成される紡績糸の物性、特に、強度が低下するとともに、外観も悪くなり、更には、繊維束Fを構成する繊維fが、フロントローラー6を構成するボトムローラー6bの近傍に配置されたダストコレクターCの吸引空気流の影響を受け易くなり、従って、上記と同様に、生成される紡績糸の物性、特に、強度が低下するとともに、外観も悪くなる。
【0062】
上述したように、ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aの出口15a1の略半分が、円柱状空間部24aを構成するノズルブロック15の内周壁面15eに位置し、また、残りの略半分が、円柱状空間部24aを構成するノズルブロック15の内周壁面15eの下端から、末広り状に拡大傾斜する、第1円錐台状空間部24bを構成するノズルブロック15の内周壁面15bに位置するように構成されている。そして、ノズルブロック15に穿設された空気噴射孔15aから噴出される空気は、下方に位置し近接する壁側に偏向されるという空気流の特性により、空気噴射孔15aから噴出される空気は、円柱状空間部24aを構成するノズルブロック15の内周壁面15eの下端から、末広り状に拡大傾斜する、第1円錐台状空間部24bを構成するノズルブロック15の内周壁面15bに沿って流れるので、旋回気流の軸流成分が増加することになる。従って、ニードルホルダー14のフロントローラー6側の繊維導入孔14aの入口付近に発生する吸引空気流が強くなり、この吸引空気流による繊維束Fのニードルホルダー14の繊維導入孔14aへの引き込み力が大きくなり、フロントローラー6から排出された繊維束Fの繊維導入孔14aへの導入が効果的に行われるので、ファイバーロスが減少し、生成される紡績糸の強力が大きくなるとともに、紡績性が向上することになる。
【0063】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した構成を有しているので、以下に記載する効果を奏するものである。
【0064】
フロントローラーと繊維導入部材間の間隙を、繊維導入孔に導入される繊維束の走行が、ダストコレクターの吸引口付近の吸引空気流の影響を受けないように構成されているので、生成される紡績糸の強度が増加するとともに、外観が向上する。
【0065】
フロントローラーと繊維導入部材間に、フロントローラーの随伴気流の逃げ場を形成するような間隙を形成したので、随伴気流に乱れが生じ、繊維導入部材の繊維導入孔に導入される繊維束が乱れて、生成される紡績糸の均斉度や強力や外観が低下するようなことを防止することができる。
【0066】
フロントローラーの、繊維導入部材に最も接近した位置の間隙を、略0.3mm〜2.3mmの範囲としたので、フロントローラーの回転に伴う随伴気流が乱れようなことがなく、従って、繊維導入部材の繊維導入孔に導入される繊維束が乱れて、生成される紡績糸の均斉度や強力や外観が低下するようなことを、より効果的に防止することができるととともに、この間隙に繊維や夾雑物等が詰まり、随伴気流の逃げ場が塞がれるようなことを、より効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の紡績装置を構成する紡績ユニットの概略斜視図である。
【図2】図2は本発明の紡績装置を構成する紡績部等の側断面図である。
【図3】図3は本発明の紡績装置を構成する紡績部の要部の側断面図である。
【図4】図4は本発明の紡績装置の紡績部を構成するノズルブロックの側断面図である。
【図5】図5は本発明の紡績装置の紡績部を構成するノズルブロック及び中空ガイド軸体の側断面図である。
【図6】図6は生成される紡績糸の強力と突出部部分でのスペースの断面積との関係に関するグラフである。
【図7】図7は生成される紡績糸の強力と中空ガイド軸体の先端の外径との関係に関するグラフである。
【図8】図8は生成される紡績糸の強力とスペースの出口面積との関係に関するグラフである。
【図9】図9は生成される紡績糸の強力とフロントローラー及びニードルホルダー間の間隙との関係に関するグラフである。
【符号の説明】
6・・・・・・・・・・・・・・・フロントローラー
14・・・・・・・・・・・・・・ニードルホルダー
15・・・・・・・・・・・・・・ノズルブロック
15a・・・・・・・・・・・・・空気噴射孔
21・・・・・・・・・・・・・・中空ガイド軸体
25・・・・・・・・・・・・・・突出部

Claims (3)

  1. 軸線方向に透孔が穿設され、該透孔に向かって開口するように空気噴射孔が穿設されたノズルブロックと、回転又は非回転の中空ガイド軸体とを有し、旋回気流を利用して、後端部が中空ガイド軸体の外周壁面に沿って屈曲した反転繊維を、巻き付き繊維として芯繊維に巻き付けて紡績糸を製造する紡績装置において、ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙が、前記繊維導入部材に導入される繊維束の走行が、前記フロントローラーを構成するボトムローラーの近傍に配置されたダストコレクターの吸引空気流の影響を受けないように調整可能に構成されていることを特徴とする紡績装置。
  2. 軸線方向に透孔が穿設され、該透孔に向かって開口するように空気噴射孔が穿設されたノズルブロックと、回転又は非回転の中空ガイド軸体とを有し、旋回気流を利用して、後端部が中空ガイド軸体の外周壁面に沿って屈曲した反転繊維を、巻き付き繊維として芯繊維に巻き付けて紡績糸を製造する紡績装置において、ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙を調整することにより、前記フロントローラーと前記繊維導入部材とにより形成される空間部内に発生する随伴気流の前記間隙からの排出が調整可能に構成されていることを特徴とする紡績装置。
  3. ドラフト装置のフロントローラーと該フロントローラーから排出される繊維束が導入される繊維導入部材との間の間隙が、略0.3mm〜2.3mmの範囲であること特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紡績装置。
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