JPH0640597Y2 - 紡績装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、ドラフト装置によっ
てドラフトされた無撚の短繊維束に旋回気流を作用させ
て加撚することにより紡績糸を製造する装置に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】従来の空気式紡績装置として、以下に述
べる紡績装置が知られている（特開昭６３−８５１２３
号公報参照）。

【０００３】この装置は、ドラフト装置のフロントロー
ラから出た繊維束を通す通路を有し回転するスピンドル
と、スピンドルの入口近傍に旋回空気流を作用させて繊
維束から繊維端部を分離させる空気噴射ノズルとからな
り、その繊維端部を繊維束の周囲に巻回させるものであ
る。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上記した従来の紡績装
置によって製造される糸は、無撚又は甘撚の芯繊維の周
囲に他の繊維がらせん状に巻きついた性状をしており、
ほとんどの繊維が撚られた状態にあるリング糸に比べ、
外観も異なるし、糸強力も落ちるものである。

【０００５】この考案は、このような空気式紡績装置に
おいてリング糸と変わらない特性を有する糸を製造する
ことができる装置を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、この考案の紡績装置は、ドラフト装置を出た繊維束
に旋回気流を作用させるノズルを有するノズルブロック
と、繊維束通路を有する回転又は静止するスピンドル
と、下流に向けて内径が縮小するテーパー部とそれに続
く拡径部を形成した繊維束通路を有しノズルブロック内
に固定されたガイド部材支持体と、スピンドル入口へ先
端を向けて突出しガイド部材支持体に取り付けられたガ
イド部材とよりなるものである。

【０００７】

【作 用】上記のように構成された紡績装置において
は、ドラフト装置を出た繊維束は、ノズルからの噴出空
気流により、繊維束通路のテーパー部で回転の制約を受
けながら引き込まれ、そこを通過直後に拡散してオープ
ンエンド状態が助長され、スピンドル内に導かれる。そ
して、スピンドル入口近傍において旋回気流にさらされ
て少し仮撚される。このとき繊維束の全ての繊維は、ガ
イド部材の周囲に位置し、空気流に直接さらされ、繊維
束から分離する力を受けるが、スピンドルの入口位置に
ある繊維の先端は、仮撚を受けているため、容易に分離
しない。分離された繊維後端は、空気流の作用によりス
ピンドルの外周に巻き付きついて外側へ延び、繊維束の
走行に伴って、繊維束の周囲を旋回しながら徐々に引き
こまれ、ほとんどの繊維がらせん状に巻き付いて実撚状
の紡績糸となる。

【０００８】

【実施例】

【０００９】図１を参照して、この考案の紡績装置の実
施例を説明する。

【００１０】この紡績装置は、バックローラ、エプロン
を有するミドルローラ、フロントローラよりなるドラフ
トパートの次に配置されており、ケーシング１の内部に
配された、ノズル３を有するノズルブロック２と、その
内部に固定されガイド部材５を有するガイド部材支持体
４及び入口側がケーシング１内に挿入されたスピンドル
６よりなっている。

【００１１】スピンドル６は３つのローラー７（その内
の１つは、図１の手前側にあり、図示されていない）に
囲まれて外接軸受けされている。その内の１つは駆動ロ
ーラーであり、スピンドル６をベルトで直接回転させる
もの（３万ｒｐｍ）に比べて５万〜２０万ｒｐｍものは
るかに高速の回転を得ることができる。

【００１２】このようにスピンドル６を高速に回転させ
ると、後述する糸のより掛け効率が向上し、糸強力を上
げることができるし、１００〜２００ｍ／ｍｉｎもの高
速紡糸を達成することができる。紡出速度を若干落とせ
ば、ノズル３より噴出する空気の圧力を下げることがで
きる。

【００１３】スピンドル６の中心には繊維束通路８が貫
通形成してあり、この通路８の中心とケーシング１の各
中心は、共に繊維束の走行路と一致する同一直線上に位
置している。

【００１４】スピンドル６の入口６ａの外径は充分に小
さく、入口６ａに続く部分は、外径が下流側に向けて増
大する円錐状部６ｂとしている。

【００１５】ケーシング１のスピンドル６を覆う部分
は、スピンドル６の入口６ａ近傍をブッシュ９により小
径円筒状の中空室１０としており、この中空室１０に続
く部分を、大きな角度で開いた円錐状の中空室１１とし
ている。

【００１６】小径の中空室１０より前方は、ノズルブロ
ック２によって、スピンドル６の先端径よりも僅かに大
径の円筒状にしてあり、その円筒状部は繊維束のガイド
通路となるものである。円錐状の中空室１１の手前に
は、環状の中空室１２と、それに続く接線方向の空気逃
し孔１３が形成してある。この空気逃し孔１３には空気
吸引パイプが連結されている。

【００１７】ケーシング１の内部には、ノズルブロック
２との間に中空の空気溜１４を形成している。ノズルブ
ロック２には、空気溜１４に連通し、スピンドル６の入
口６ａから僅か離れた下流に向き、かつ中空室１０に対
して接線方向を向いた４つの空気噴射ノズル３が形成し
てあり、空気溜１４には、孔１５を介してエアホース１
６が接続してある。ノズル３の向きは、スピンドル６の
回転方向と同一に設定してある。

【００１８】ホース１６から供給される圧縮空気は、空
気溜１４に流入した後、ノズル３から中空室１０内に噴
出し、スピンドル入口６ａの近傍に高速の旋回気流を生
じさせる。

【００１９】この空気流は、中空室１０内部で旋回した
後、円錐状中空室１１内をゆるく旋回しながらが外方へ
拡散し、逃し孔１３方向へと導かれ、排出される。同時
に、この空気流は、フロントローラーのニップ点からケ
ーシング１の中空部内へと流入する吸引空気流を発生さ
せる。

【００２０】ガイド部材支持体４には、入口から次第に
内径が縮小する入口側テーパー部４ａと、ある位置から
再び内径が次第に拡大する出口側テーパー部４ｂとを有
する繊維束通路１７を形成している。この内径縮小部
は、そこを通る繊維束の回転を制約し、そこを通過した
直後に繊維束は拡散してオープンエンド状態が助長され
る。出口側テーパー部４ｂに代え、繊維束通路１７の内
径を急激に拡大するようにしてもよい。繊維ロスは、内
径縮小部を持たないものに比べて約半分に減少する。ま
た、その入口側テーパー部４ａの側壁に細孔を穿設し、
その細孔内にピン状のガイド部材５を挿通している。

【００２１】ガイド部材５は、途中から曲げ、繊維束通
路１７の中心に位置させるようにして先端をフリー状態
とし、スピンドル６の入口６ａに臨ませている。

【００２２】ガイド部材５は、スピンドル６の入口６ａ
の通路直径よりも小さい直径のものであり、先端を滑ら
かな曲線で形成している。

【００２３】ガイド部材５の先端は、図では、スピンド
ル６の入口６ａから通路８内部へ若干入った位置にある
場合を示しており、その状態が最も好ましく、製造され
る糸も、最もリング糸に近い外観を呈している。しかし
ながら、条件によっては入口６ａ端面から離反した位置
をとることも可能であり、リング糸に近い外観を有する
糸を製造することができる。これらの糸は、強力特性に
おいてもリング糸と比べて遜色がない。

【００２４】ガイド部材５は、後述する糸形成過程にお
ける撚の伝播の阻止し、あるいは中心繊維束の代わりを
一時的に果たす、いわゆる疑似芯の働きをなし、従来の
空気式結束紡績糸に顕著に現れる無撚の芯繊維束の形成
を阻止して事実上巻付繊維のみによって糸を形成する働
きをなすものである。

【００２５】次に、この実撚風糸製造装置による糸の製
造過程を説明する。

【００２６】ドラフト装置でドラフトされ、フロントロ
ーラから送り出された繊維束は、ガイド部材支持体４の
から吸引される空気流によって繊維束通路１７から装置
内に引き込まれるが、このフロントローラからの繊維束
の送出に先立って、図示しないサクションパイプ先端が
スピンドル６の出口に当接され、スピンドル６内へ吸引
する空気流が生じる。従って、この空気流により、繊維
束通路１７を進入してくる繊維束は、円滑にスピンドル
６内へ吸引される。

【００２７】スピンドル６内を通ってサクションパイプ
内へ吸引された糸は、サクションパイプの移動によって
糸継ぎ装置へと導入され、同様にサクションマウスによ
って導入されているパッケージ側の糸と糸継ぎされる。

【００２８】スピンドル６の出口下流側に設けてあるデ
リベリローラの周速は、フロントローラの周速よりも僅
かに大に設定してあり、紡績中にこの装置の中を通る繊
維束に対して、常時テンションが掛かるようにしてい
る。

【００２９】繊維束は、ノズル３からの噴出空気流の作
用により、繊維束通路１７の入口側テーパー部４ａで回
転の制約を受けながら引き込まれ、そこを通過直後に拡
散してオープンエンド状態が助長され、スピンドル６の
入口６ａ内に導かれる。そして、スピンドル入口６ａ近
傍において旋回する圧縮空気流の作用を受け、同方向に
少し仮撚される。このとき繊維束は、ガイド部材５が存
在することによって、このガイド部材５の占める空間内
に位置することが不可能である。従って、全ての繊維が
ガイド部材５の周囲に位置することになり、空気流に直
接さらされ、全外周のいたる所から分離され、その内側
に位置する繊維も空気流にさらされて繊維束から分離す
る力を受ける。しかしながら、繊維の先端がスピンドル
６の入口６ａ位置にあるとき、その先端は上記したよう
に仮撚を受けているため、容易に分離しない。またその
繊維の後端は、フロントローラにニップされているか又
はノズル３から遠い位置にあって空気の作用をあまり受
けないため、未だ分離していない。繊維の後端は、フロ
ントローラから離脱してノズル３からの空気流を強く受
ける位置にやってきて、はじめて繊維束から分離する。
分離された繊維後端は、空気流の作用によりスピンドル
６の入口６ａ部に１回又は複数回巻き付き、続いてスピ
ンドル６の円錐状部６ｂに少し巻きついて外側へ延び
る。

【００３０】更に繊維束は下流側へと走行し続け、一
方、スピンドル６が回転しているため、繊維後端は、繊
維束の周囲を旋回しながら徐々に引き出され、繊維は繊
維束の周囲にらせん状に巻き付き、繊維束は紡績糸とな
って繊維束通路８を通過する。

【００３１】巻付繊維の巻付方向は、ノズル３の方向及
びスピンドル６の回転方向によって定まる。ノズル３に
よる空気流の旋回方向は、巻付繊維の巻付方向を乱さ
ず、また繊維先端が分離することのないよう、スピンド
ル６の回転方向と同一方向に設定することが好ましい。

【００３２】上述のごとく、本実施例の装置によれば、
スピンドル６からフロントローラ側へ伝播しようとする
仮撚が、ガイド部材５によってその伝播を阻止され、フ
ロントローラを出た繊維束が仮撚によって撚りこまれる
ということもなく、ほとんどの繊維が巻付き繊維とな
る。このことは、ガイド部材５を設置しない場合に、フ
ロントローラから送り出される偏平状繊維束のローラ巾
方向中央付近に走行方向の筋状部分が生じることによっ
て確認することができる。

【００３３】なお、この実施例では、スピンドルにより
撚りを掛けるタイプの装置について説明したが、他の紡
績装置、例えば、２ノズルタイプの結束紡績糸製造装置
の第１ノズル入口にガイド部材を設けたり、ノズルとニ
ップ式ツイスターによる紡績装置、１ノズルタイプの紡
績装置への適用も条件によっては可能である。また、ス
ピンドル６は糸に撚を掛ける補助をするものであって、
これが回転しなくても糸によっては製造可能であるの
で、スピンドル６は必ずしも回転するものである必要は
ない。

【００３４】

【考案の効果】この考案は、以上説明したように構成さ
れているので、以下に記載するような効果を奏する。

【００３５】即ち、巻付繊維量が極めて多く、外観、強
力特性共にリング糸に遜色のない実撚の糸を製造するこ
とができる。

【００３６】また、ノズルブロックの繊維束通路に、下
流に向けて内径が縮小するテーパー部とそれに続く拡径
部を形成したので、繊維ロスを大幅に減らすことがで
き、製造される糸はより実撚化が進んで形態の美しいも
のとなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の紡績装置の実施例を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

２ ノズルブロック ３ ノズル ４ ガイド部材支持体 ４ａ ガイド部材支持体の繊維束通路の入口側テーパー
部 ４ｂ ガイド部材支持体の繊維束通路の拡径部としての
出口テーパー部 ５ ガイド部材 ６ スピンドル ６ａ スピンドル入口 １７ ガイド部材支持体の繊維束通路

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ドラフト装置を出た繊維束に旋回気流を作
   用させるノズルを有するノズルブロックと、繊維束通路
   を有する回転又は静止するスピンドルと、下流に向けて
   内径が縮小するテーパー部とそれに続く拡径部を形成し
   た繊維束通路を有しノズルブロック内に固定されたガイ
   ド部材支持体と、スピンドル入口へ先端を向けて突出し
   ガイド部材支持体に取り付けられたガイド部材とよりな
   る紡績装置。