JP3955447B2 - 荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子ビームの軌道上に電場と磁場とを生成する極子を有した荷電粒子ビーム制御装置に係り、とくに、荷電粒子ビームの軌道を囲むように複数の極子を配置した多極子型の荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子等の荷電粒子のビームの軌道上に、直交する電場と磁場とを生成して所定の速度とエネルギーを有する荷電粒子のみ選択的に直進させるウィーンフィルタが知られている。ウィーンフィルタは、エネルギー分析用モノクロメータのエネルギーフィルタや、走査型電子顕微鏡ないしは写像型電子顕微鏡用のビームセパレーター等に用いられている。しかし、二重極成分のみからなる一様な電場と磁場とを生成するウィーンフィルタの場合、ビームが一方向にのみ集束されるため、近年では、多重極成分を有する非一様な電場と磁場を用いた非点収差の改善が図られている。
【0003】
図6は、荷電粒子ビームの軌道上に非一様な電場と磁場とを生成するウィーンフィルタの一例を示す図であって、ウィーンフィルタを荷電粒子ビームの進行方向から見た図である。図において、符号100,100…は、それぞれ軌道上に電場と磁場とを生成する極子である。極子100は、パーマロイ等の導電性を有した強磁性体からなる極子本体110に、励磁コイル120が外嵌されるようにして設けられた構成とされている。そして、極子本体110に電圧が印加されるとともに、励磁コイル120に電流が供給されて極子本体110内に磁束が生成され、電場と磁場とが一つの極子100によって同時に生成されるよう構成されている。このように、電場と磁場を同じ極子によって生成すると、電極と磁極を別々に位置合わせする必要がないことに加え、極子に必要なスペースを節約して装置を小さくしたり、極子の数を増やすことができる。
【0004】
図6に示すウィーンフィルタでは、主として電場と磁場の八重極成分まで現れるように、極子100が荷電粒子ビームの軌道の中心Oの周りに8個対称に配設されている。このように構成された非一様な電場と磁場とを生成するウィーンフィルタでは、収差を改善して一点から出たビームを再び一点に集束させることが可能となる。
【0005】
このように、荷電粒子ビームの軌道を囲むように複数の極子を配置した構成は、ウィーンフィルタに限られるものではなく、複数の極子によって生成される電場と磁場とが重畳された多重極場は、球面収差、軸上色収差の同時補正等を可能にすることも実験的に示されており、荷電粒子ビームの光学系の解像力改善のために広く一般に必要な荷電粒子ビーム制御装置を提供する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような多重極の電場と磁場を生成する複数の極子からなる荷電粒子ビーム制御装置は、極子に磁場を生成させる励磁コイルが通電とともに発熱し、極子を加熱してその温度を上昇させる。その一方で、電極としての極子は、熱伝導性の悪い絶縁体によって、接地された装置の他の部分から電気的にも熱的にも絶縁されている。しかも、極子は、荷電粒子ビームが通過する真空容器内に組み込まれており、極子の周囲に熱を奪い去る空気等の流体がほとんど存在しない状態に置かれている。この結果、極子は、励磁コイルから流入する熱を、絶縁体を介して逃げるわずかな熱以外に、放射によってしか外部に放出させることができない。したがって、鏡面状態に研磨された放射率の低い極子の表面から熱を放射し、励磁コイルから流入する熱との均衡を達成するまでに、極子の温度が極めて高くなってしまうという欠点を有していた。すなわち、極子の温度が上昇する結果、極子からのガスの放出、とりわけ接着剤等の有機物を多く含んだ励磁コイルからのガスの放出が真空容器内の真空度を悪化させたり、極子が熱変形をきたして予知しない不安定な高次の電場や磁場の多重極成分が混入し、光学的特性を変えてしまったり、また、熱による膨張と収縮によって装置が疲労をきたして耐久性に支障が生じたりするといった問題が存在していた。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、極子の温度上昇を抑えることのできる荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置を提供することにある。
とくに、極子の温度上昇を抑えて真空容器内の真空度の向上を図ることのできる荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置を提供することにある。
また、極子の温度上昇を抑えて極子の熱変形を防ぐことのできる荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、この項に示す例では、理解の容易のため、本発明の発明特定事項に実施形態の図に示す代表的な参照符号を付して説明するが、本発明の構成又は各発明特定事項は、これら参照符号によって拘束されるものに限定されない。
上記課題を解決するために、本発明に係る荷電粒子ビーム制御装置(A)は、荷電粒子が通過する軌道上に電場を生成するとともに磁場を生成する荷電粒子ビーム制御装置(A)であって、前記荷電粒子の軌道を囲むように配置された電圧印加装置に接続された少なくとも4つの極子(12,13,14,15)を有し、前記各極子は、励磁コイル(12b,13b,14b,15b)と、極板部(12c,13c,14c,15c)から構成され、該極板部は、磁気的には前記励磁コイルと接続され、熱的、電気的には絶縁する物質から形成され、かつ、荷電粒子が通過する軌道側の面が導電性を有する物質によってコーティングされており、さらに前記極子は、所定のエネルギーを有した前記荷電粒子が電場から受ける力と磁場から受ける力とが互いに逆向きで平行、かつ、その大きさが等しくなるように、前記荷電粒子の軌道上に互いに直交する電場と磁場とを生成するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、励磁コイルによって発生する熱が熱絶縁部によって極子の荷電粒子の軌道側の部分まで伝わらない。したがって、少なくとも極子の荷電粒子の軌道側の部分は、熱変形をきたさない。この極子の荷電粒子の軌道側の部分は、軌道上に電場と磁場を生成する際にその形状が境界条件を決定する部分であって、熱変形によって電場や磁場に予知しない不安定な多重極場を発生させる部分であるから、少なくともこの部分の熱変形が抑えられることによって、ビームの光学的な特性の変化を抑えることができる。
【0012】
本発明においては、極板部は、フェライト等、磁気的には接続して、熱的、電気的には絶縁するような物質から形成され、さらに、軌道側の面が導電性を有する物質によってコーティングされるように構成したので、絶縁部(12e,13e,14e,15e)と極板部(12c,13c,14c,15c)とを一体に形成することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム制御装置及びそれを用いた荷電粒子ビーム光学装置、ならびに荷電粒子ビーム欠陥検査装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム制御装置としてのウィーンフィルタの構成を示す図である。
図1において、ウィーンフィルタAは、電子等の荷電粒子が内部を通過する真空チェンバー11(真空容器)と、中心軸Oの周りに対称に配置された4つの極子12,13,14,15から概略構成されている。極子12,13,14,15は、それぞれ真空チェンバー11の真空を保った状態で真空チェンバー11を貫通させて設けられた極子本体12a,13a,14a,15aと、真空チェンバー11の外側で極子本体12a,13a,14a,15aに外嵌されて設けられた励磁コイル12b,13b,14b,15bとを備えている。
【0026】
極子本体12a,13a,14a,15aは、それぞれ、荷電粒子ビームが通過する中心軸Oの側に、中心軸Oを中心とした円周上に位置するように、中心軸Oに直交する断面で見て円弧状、かつ、中心軸Oに沿って平行に設けられた極板部12c,13c,14c,15cと、励磁コイル12b,13b,14b,15bが設けられる側に、真空チェンバー11を貫通させて設けられた励磁部12d,13d,14d,15dと、これら、極板部12c,13c,14c,15cと励磁部12d,13d,14d,15dとの間に、真空チェンバー11内に位置させて介設された絶縁部12e,13e,14e,15e(熱絶縁部、電気絶縁部)とから構成されている。
【0027】
極板部12c,13c,14c,15cと励磁部12d,13d,14d,15dとは、いずれも、パーマロイ等の導電性を有する強磁性体から形成される一方、絶縁部12e,13e,14e,15eは、電気的な絶縁性を有するとともに、熱的な絶縁性を有するフェライト等の磁性体から形成されている。したがって、極板部12c,13c,14c,15cと、励磁部12d,13d,14d,15dとは、絶縁部12e,13e,14e,15eによって、互いに磁気的に接続されながら、電気的、熱的には絶縁されている。なお、フェライトとしては、Mg(0.5)Zn(0.5)Fe(204)、Mn(0.5)Zn(0.5)Fe(204)、Ni(0.3)Zn(0.7)Fe(204)等とされていることが好ましいがこれらの物質に限定されることはない。
【0028】
励磁部12d,13d,14d,15dの大気側に突出した後端には、それぞれ、励磁部12d,13d,14d,15dと略同じ断面積を有していて、パーマロイ等の導電性を有する強磁性体からなるヨーク12f,13f,14f,15f(放熱部)が着脱自在に接続され、さらに、これらのヨーク12f,13f,14f,15fが閉じた磁気回路を形成するように、真空チェンバー11を囲むように互いに接続され、接地されている。
【0029】
さらに、極子12,13,14,15には、それぞれ、極板部12c,13c,14c,15cに電圧を印加する電圧印加装置V1,V2,V3,V4が備えられているとともに、励磁コイル12b,13b,14b,15bに電流を供給する電流供給装置I1,I2,I3,I4が備えられており、極板部12c,13c,14c,15cで囲まれた領域に主として四重極成分まで含む電場と磁場が生成されるように構成されている。
【0030】
そして、ウィーンフィルタAは、電圧印加装置V1,V2,V3,V4、及び、電流供給装置I1,I2,I3,I4を制御するウィーンフィルタ制御部16によって、これらの極子12,13,14,15が生成する電場と磁場とを制御し、所定のエネルギーを有した荷電粒子が電場から受ける力と磁場から受ける力とが互いに逆向きで平行、かつ、その大きさが等しくなるように、極板部12c,13c,14c,15cで囲まれた領域を通過する荷電粒子の軌道上に互いに直交する電場と磁場とを生成するように構成されている。
【0031】
このように構成されたウィーンフィルタAでは、励磁コイル12b,13b,14b,15bが真空チェンバー11の外側に設けられ、これらの励磁コイル12b,13b,14b,15bが励磁されることによって極子本体12a,13a,14a,15aの中に磁束が生成され、真空チェンバー11を貫通させて設けられた極子本体12a,13a,14a,15aによって、真空チェンバー11内の荷電粒子の軌道上に磁場が生成される。このように励磁コイル12b,13b,14b,15bが真空チェンバー11の外側に設けられることによって、励磁コイル12b,13b,14b,15bの熱が大気を介して放熱され、極子12,13,14,15の温度上昇が抑えられる。また、励磁コイル12b,13b,14b,15bの発熱とともに励磁コイル12b,13b,14b,15bから発生するガスは、そのまま大気中に解放されるから、真空チェンバー11内の真空度が悪化することもない。
【0032】
さらに、励磁コイル12b,13b,14b,15bが大気側に設けられることによって、真空チェンバー11の真空を破ることなく励磁コイル12b,13b,14b,15bの着脱を行うことができるため、メインテナンスも容易になる。すなわち、ヨーク12f,13f,14f,15fを分解し、励磁部12d,13d,14d,15dから取り外してしまえば、励磁コイル12b,13b,14b,15bを励磁部12d,13d,14d,15dから取り外すことができる。このようなメインテナンス作業が真空を破ることなく容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、励磁コイル12b,13b,14b,15bによって発生する熱が絶縁部12e,13e,14e,15eに遮られて極子12,13,14,15の荷電粒子の軌道側の部分である極板部12c,13c,14c,15cまで伝わらない。したがって、極板部12c,13c,14c,15cが熱変形をきたさない。極板部12c,13c,14c,15cは、軌道上に電場と磁場を生成する際に、その形状が境界条件を決定する部分であって、熱変形によって電場や磁場に予知しない不安定な多重極場を発生させる部分であるから、この部分の熱変形が抑えられることによって、ビームの光学的な特性の変化を抑えることができる。
【0034】
また、励磁部12d,13d,14d,15dに取り付けられたパーマロイ等の導電性を有する強磁性体から形成されたヨーク12f,13f,14f,15fは、漏れ磁場の発生を押さえ、荷電粒子ビームへの漏れ磁場による影響を防ぐとともに、極板部12c,13c,14c,15cによって生成される磁場を強める上でも有効であるが、これ以外に、熱伝導性が良く、大気中に広い表面積を有していることから放熱板としての役割をも担っている。これによって、励磁部12d,13d,14d,15dの熱を素早く大気中に逃がすことが可能となる。
【0035】
ここで、ヨーク12f,13f,14f,15fは、磁気的な閉回路を形成するように互いに連結されているが、絶縁部12e,13e,14e,15eに用いられているフェライトが比抵抗にして10〜104Ω・mと、純鉄の8桁以上もの高い値を有しており、電圧の印加される極板部12c,13c,14c,15cと、励磁部12d,13d,14d,15dとの間を電気的に絶縁して、極板部12c,13c,14c,15c同士の間に短絡が発生しない。しかも、ヨーク12f,13f,14f,15fを接地することができて帯電を防止することが可能である。
このように励磁部12d,13d,14d,15dが接地されると、励磁コイル12b,13b,14b,15b、ならびに電流供給装置I1,I2,I3,I4全体をアースレベルから浮かせる必要がなくなり、安全性を高める上でも好ましい。
【0036】
このように、本実施形態のウィーンフィルタAによれば、極子12,13,14,15の温度上昇を抑え、真空チェンバー11内の真空度の向上と、極子12,13,14,15の熱変形の防止を図って安定な光学的特性を得ることができる。
【0037】
図2は、上記のような構成とされたウィーンフィルタAが備えられた、本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の構成を示す図である。なお、以下の説明においては、図2中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。図2に示したXYZ直交座標系では、試料の物体面内にXY平面を設定し、試料の物体面の法線方向をZ軸方向に設定してある。図2中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直下方向に設定される。
【0038】
本実施形態の荷電粒子ビーム欠陥検査装置は、主として電子ビーム(荷電粒子ビーム)を一次ビームB1として試料M(物体)に導くための一次コラムC1と、電子ビームを試料Mに照射した際に得られる二次電子を二次ビームB2として検出装置30の検出面31に集束させるための二次コラムC2と、観測対象である試料Mを収容するチャンバーC3とから構成されている。一次コラムC1の光軸は、Z軸に対して斜方向に設定され、二次コラムC2の光軸はZ軸とほぼ平行に設定される。よって、一次コラムC1から二次コラムC2へは、一次ビームB1が斜方向から入射する。一次コラムC1、二次コラムC2、及びチャンバーC3には、真空排気系(図示省略)が繋げられ、真空排気系が備えるターボポンプ等の真空ポンプにより排気されており、これらの内部は、真空状態に維持されるようになっている。ここで、一次コラムC1と二次コラムC2の外壁が一つの真空チェンバ11を形成している。
【0039】
一次コラムC1内には、荷電粒子源としての熱電子放出型の電子銃Sが設けられており、この電子銃Sから照射される電子ビームの光軸上に一次光学系10が配置されている。一次光学系10は、視野絞り、照射レンズ、アライナ、アパーチャ等で構成されている。ここで、照射レンズは、円形レンズ、4極子レンズ、8極子レンズ等の電子レンズであり、一次ビームB1に対する収束特性は、これらに印加する電圧値により変化する。なお、照射レンズは、ユニポテンシャルレンズ、またはアインツェルレンズと称される回転軸対称型のレンズであってもよい。
【0040】
二次コラムC2内には、二次光学系20が配置されている。二次光学系20は、試料Mに一次ビームB1を照射した際に生じる二次電子を二次ビームB2として導き、検出装置30の検出面31に集束させるためのものであり、試料M側から−Z方向へ順に、第1前段レンズ21、開口絞りAS、第2前段レンズ22、ウィーンフィルタAを有し、さらに、スチグメータ、結像レンズ、アライナ、視野絞り等からなる後段光学系23が配置されて構成されている。ここで、二次光学系20の第1前段レンズ21、第2前段レンズ22、結像レンズは、電子レンズであり、例えば円形レンズ、4極子レンズ、8極子レンズ等が用いられる。なお、第1前段レンズ21、第2前段レンズ22、結像レンズは、ユニポテンシャルレンズ、またはアインツェルレンズと称される回転軸対称型のレンズであってもよい。
【0041】
これら一次光学系10、二次光学系20の各部に供給される電圧、電流値等の値は、主制御系C5によって制御されるようになっている。すなわち、主制御系C5は、一次光学系制御部51、二次光学系制御部52、及びウィーンフィルタ制御部16のそれぞれに制御信号を出力し、一次光学系10と二次光学系20の光学特性の制御、及び、ウィーンフィルタAの電磁界制御等を行うものとされている。
【0042】
上述してきたように、荷電粒子ビーム欠陥検査装置は、荷電粒子源からの荷電粒子ビームを導く光学系を備えた一つの荷電粒子ビーム光学装置として構成されている。
【0043】
二次光学系20によって検出面31上に結像された二次ビームB2を検出する検出装置30は、検出された電子が増幅されたのち蛍光板に照射されて光に変換され、この変換された光の信号が例えばTDIセンサを搭載したカメラ32に入射するように構成されている。また、カメラ32には、主制御系C5に制御され、カメラ32から画像信号を読み出し、順次主制御系C5へ出力するコントロールユニット33が接続されている。主制御系C5は、こうしてコントロールユニット33から出力される画像信号に対して、例えばテンプレートマッチング等の画像処理を行って試料Mの欠陥の有無を判断するように設けられている。
【0044】
また、チャンバーC3の内部には、試料Mを載置した状態でXY平面内で移動自在に構成されたXYステージ38が配置されている。XYステージ38上の一端には、L字型の移動鏡39が取り付けられ、移動鏡39の鏡面に対向した位置にレーザ干渉計40が配置されている。レーザ干渉計40は、 移動鏡39からのレーザーの反射光を用いて、XYステージ38のX座標とY座標、ならびに、XY平面内における回転角を計測するように構成されており、この計測結果は、主制御系C5に出力され、主制御系C5は、この計測結果に基づいて駆動装置41に対して制御信号を出力し、XYステージ38のXY平面内における位置を制御する。主制御系C5は、さらに、送光系37a及び受光系37bからなるZセンサに制御信号を出力し、試料MのZ軸方向における位置座標を計測する。図示は省略しているが、Z軸方向における位置座標を計測に基づきXYステージ38以外に試料MのZ軸方向の位置を変化させるZステージや、試料Mの物体面のXY平面に対する傾斜を制御するチルトステージを設けることが好ましい。
【0045】
また、図において42は、試料Mに対して負の電圧を設定する可変電源であり、試料Mの設定電圧は、主制御系C5によって制御される。ここで、試料Mを負の電圧に設定するのは、一次ビームB1を試料Mに照射したときに放出される二次電子を二次ビームB2として第1前段レンズ21の方向、つまり、−Z方向へ加速させるためである。
【0046】
本実施の形態によるビーム偏向装置Aを備えた荷電粒子ビーム欠陥検査装置は、上述の構成を備えており、次に荷電粒子ビーム欠陥検査装置による試料Mの欠陥検査の方法を一次ビームB1と二次ビームB2の軌道、及びウィーンフィルタAによる一次ビームB1と二次ビームB2の軌道の切換とについて述べながら詳述する。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の一次ビームB1の軌道を示す図である。ここで、図では理解を容易にするため、一次光学系10が備える部材の図示を省略している。電子銃Sから放出された一次ビームB1は、一次光学系10内の照射レンズによって形成された電場の影響を受けて集束、あるいは発散され(一次光学系10内でのビームのエンベロープは省略されている)、平行なビームとされて、斜め方向からウィーンフィルタAに入射する。一次ビームB1がウィーンフィルタAに入射すると、その光路がZ軸に対して略平行な方向に偏向される。ウィーンフィルタAによって偏向された一次ビームB1は、第2前段レンズ22によって集束されて開口絞りASに達し、この位置で電子銃10の像を形成する。開口絞りASを通過した一次ビームB1は、第1前段レンズ21によるレンズ作用を受けて、試料Mをケーラー照明する。
【0048】
ここで、ウィーンフィルタAは、荷電粒子の進行方向によって、荷電粒子を偏向させるか直進させるかするビームセパレータ(軌道切換装置)としての荷電粒子ビーム制御装置である。図4は、ウィーンフィルタAの構成及び動作原理を説明するための図であって、図4(a)は、ウィーンフィルタAの構成を示す概略斜視図である。図において図1にそれぞれ対応する部分には同一の符号を付している。図に示すように、一次光学系10から入射される一次ビームB1は、ウィーンフィルタAによって偏向される。これは、図4(b)に示すように、生成された互いに直交する電界Eと磁界Bの中を、一次ビームB1の荷電qの電子が+Z軸方向に速度vで進む際、互いに平行な、+Y方向に働く電界による力FE(=qE)と磁界による力FB(=qvB)との合力を受けるためである。一方、試料Mから発生した二次ビームB2は、ウィーンフィルタAの中を直進する。これは、図4(c)に示すように、二次ビームB2の荷電qの電子が−Z軸方向に速度vで進む際、互いに平行な、+Y方向に働く電界による力FE(=qE)と−Y方向に働く磁界による力FB(=−qvB)との合力を受け、本実施形態では、速度vで進行する所定のエネルギーを有した電子に対してE=vBの条件を満たすように直交する電場と磁場が生成されているため、互いに平行で大きさの等しいFEとFBにおいて、合力FE+FBがゼロになるためである。このように、ウィーンフィルタAは、内部を通過する電子ビームの光路を選択する、いわゆる電磁プリズムとしての機能を有する。
【0049】
一次ビームB1の照射により試料Mから得られる二次電子を二次ビームB2として検出装置30の検出面に集束させる工程を以下に述べる。まず、試料Mに一次ビームB1が照射されると、試料Mから、試料Mの表面形状、材質分布、電位の変化等に応じた分布の二次電子が得られる。この二次電子を二次ビームB2として試料Mの表面状態の検査を行う。図5は、本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の二次ビームB2の軌道を示す図である。ここで、図では、理解を容易にするため、二次光学系20が備える部材の一部の図示を省略している。試料Mから発生した二次電子のエネルギーは低く、0.5〜2eV程度である。この二次電子を二次ビームB2として第1前段レンズ21で加速しながら集束する。二次ビームB2は、続いて開口絞りASを通過する。開口絞りASを通過した二次ビームB2は、第2前段レンズ22によって中間結像面がウィーンフィルタAの中心に設定されるように集束される。ウィーンフィルタAに一次ビームB1とは逆の方向から入射された二次ビームB2は、ウィーンフィルタAによって電子銃Sに至る方向とは異なる方向に導かれ、直進させられ、後段光学系23によって検出装置30の検出面31に試料Mの物体面の拡大像となって結像される。
【0050】
このような構成とされた荷電粒子ビーム欠陥検査装置は、極子12,13,14,15の温度上昇が抑えられるため、真空チェンバー11内の真空度が向上し、極子12,13,14,15の熱変形が抑えられて安定な光学的特性が実現されるように構成されている。
【0051】
また、組み立て誤差、エネルギー分散に起因するウィーンフィルタAで発生する収差を低減するため、ウィーンフィルタAに中間結像面が設定されるように構成されており、加えて、ウィーンフィルタAが非一様な多重極成分の電場と磁場によって非点収差を改善するように構成されているので、装置全体の解像度を向上させることができる。
【0052】
また、ウィーンフィルタAの極板部12c,13c,14c,15cに同じ電圧を追加して印加すれば、ウィーンフィルタAに静電レンズとしての機能を与えることもでき、ウィーンフィルタAに中間結像面を設定することにより生じる後段光学系23への負担を軽減させることができる。
【0053】
なお、上記の実施形態では、ウィーンフィルタAは四つの極子を備える構成とされたが、極子の数は、それ以上とされていてもよい。これにより、高次の電場と磁場とを得ることができ、また、組み立て誤差に伴う電場や磁場の誤差の補正も容易になる。
【0054】
また、極板部は、フェライト等、磁気的には接続して、熱的、電気的には絶縁するような物質から形成され、さらに、軌道側の面が導電性を有する物質によってコーティングされるように構成されていてもよい。これにより、絶縁部と極板部とを一体に形成することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0055】
また、複数の極子を備えてなる荷電粒子ビーム制御装置であれば、本発明はウィーンフィルタに限られないことはいうまでもない。
【0056】
【発明の効果】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明の荷電粒子ビーム制御装置によれば、荷電粒子の軌道上に電場と磁場との両方を生成できる極子は、内部を荷電粒子が通過する真空容器を貫通させて設けられた極子本体に、この真空容器の外側で設けられた励磁コイルを備えているので、極子の温度上昇を抑えて真空容器内の真空度の向上を図ることができる。
【0057】
また、本発明の荷電粒子ビーム制御装置によれば、極子は、荷電粒子の軌道側と励磁コイルとの間に、熱絶縁部を有しているので、極子の温度上昇を抑えて極子の熱変形を防ぐことができ、光学的特性の変化を防ぐことができる。
【0058】
また、本発明の荷電粒子ビーム制御装置によれば、極子には、励磁コイルによって発生する熱を大気中に放熱する放熱部が取り付けられているので、極子の温度上昇を抑えることができる。
また、本発明の荷電粒子ビーム制御装置によれば、極板部は、フェライト等、磁気的には接続して、熱的、電気的には絶縁するような物質から形成され、さらに、軌道側の面が導電性を有する物質によってコーティングされるように構成したので、絶縁部(12e,13e,14e,15e)と極板部(12c,13c,14c,15c)とを一体に形成することが可能となり、部品点数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム制御装置としてのウィーンフィルタの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の一次ビームの軌道を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置が備えるウィーンフィルタの動作原理を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態による荷電粒子ビーム欠陥検査装置の二次ビームの軌道を示す図である。
【図6】従来の荷電粒子ビーム制御装置としてのウィーンフィルタの一例を示す図である。
【符号の説明】
10・・・一次光学系(光学系)
20・・・二次光学系(光学系)
11・・・真空チェンバー(真空容器)
12,13,14,15・・・極子
12a,13a,14a,15a・・・極子本体
12b,13b,14b,15b・・・励磁コイル
12e,13e,14e,15e・・・絶縁部(熱絶縁部、電気絶縁部)
12f,13f,14f,15f・・・ヨーク(放熱部)
31・・・検出面
A・・・ウィーンフィルタ(荷電粒子ビーム制御装置、軌道切換装置)
B1・・・一次ビーム
B2・・・二次ビーム
S・・・電子銃(荷電粒子源)
M・・・試料(物体)
Claims (1)
- 荷電粒子が通過する軌道上に電場を生成するとともに磁場を生成する荷電粒子ビーム制御装置であって、
前記荷電粒子の軌道を囲むように配置された電圧印加装置に接続された少なくとも4つの極子を有し、前記各極子は、励磁コイルと、極板部から構成され、該極板部は、磁気的には前記励磁コイルと接続され、熱的、電気的には絶縁する物質から形成され、かつ、荷電粒子が通過する軌道側の面が導電性を有する物質によってコーティングされており、
さらに前記極子は、所定のエネルギーを有した前記荷電粒子が電場から受ける力と磁場から受ける力とが互いに逆向きで平行、かつ、その大きさが等しくなるように、前記荷電粒子の軌道上に互いに直交する電場と磁場とを生成するように構成されていることを特徴とする荷電粒子ビーム制御装置。
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-
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