JP3955084B1 - 金属光沢に優れた絶縁性転写フィルム、その製造方法、及びそれを使用した成形品 - Google Patents
金属光沢に優れた絶縁性転写フィルム、その製造方法、及びそれを使用した成形品 Download PDFInfo
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Abstract
プラスチックフィルム上に離型層、及び保護層を設け、その上に、模様状に水溶性塗料層を塗布した後に、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を順次設け、更に、前記金属酸化薄膜上に耐水性樹脂層を設けた後、水洗して、前記水溶性塗料層、及び前記水溶性塗料層上に積層された前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を除去するとともに、前記水溶性塗料層が存在しない部分の前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を残存させた後、接着層を設けることにより、スリキズや絶縁性金属薄膜の脱落を生ずることなく、外観および耐久性共に優れた、金属光沢に優れた図柄の転写を可能とする、非常に品質のよい転写フィルムを製造する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢に優れ、しかも絶縁性ある図柄を、安定して品質よく転写可能である転写フィルム、その製造方法、及びそれを使用した成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属光沢を有する絶縁性ある図柄を有する金属蒸着フィルムを得るため、基材フィルムに水溶性塗料層を部分的に設け、その上に金属蒸着層と、透明無機蒸着層(金属酸化薄膜)を積層して、水洗、乾燥するという方法が提案されている。そして、上記金属蒸着フィルムは包装材料等のほか転写箔(転写フィルム)としても使用されるものである。しかし、例えば上記金属蒸着フィルムが、金属蒸着層を極薄で不連続な絶縁性金属蒸着層(絶縁性金属薄膜)とした絶縁性転写箔(絶縁性転写フィルム)のとき、金属蒸着層上に単に透明無機蒸着層を積層しただけでは、水洗時に、絶縁性金属蒸着層の脱落が生じるという欠点があり、また、この絶縁性転写箔をインモールド成形に使用した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し、良好な外観を得難いばかりか、このクラック発生部分が高温高湿条件下で金属光沢が消失し、耐久性が悪いという欠点があった。
【特許文献1】
特許第3643904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述の如き、従来技術の欠点を解消し、スズ薄膜等の絶縁性金属薄膜を使用し、従来になく、金属光沢、及び絶縁性に優れた耐久性ある絶縁性転写フィルムを提供することを課題とするものであり、同時に、前記絶縁性転写フィルムの製造方法、及び該転写フィルムを使用した成形品の提供をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、絶縁性金属薄膜に、水蒸気、及び酸素バリア機能の高い金属酸化薄膜と耐水性樹脂層を積層することにより、上記課題を解決した。
【0005】
すなわち、本発明では、プラスチックフィルム上に離型層、及び保護層を設け、その上に、模様状に水溶性塗料を塗布して水溶性塗料層を設けた後に、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を順次設け、更に、前記金属酸化薄膜上に耐水性樹脂層を設けた後、水洗して、前記水溶性塗料層、及び前記水溶性塗料層上に積層された前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を除去するとともに、前記水溶性塗料層が存在しない部分の前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を残存させた後、接着層を設けることにより、絶縁性転写フィルムを製造することを特徴とする。
【0006】
このようにして得られる本発明の絶縁性転写フィルムは、プラスチックフィルムの離型層上に、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、耐水性樹脂層、及び接着層が順次設けられており、かつ絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄状に積層されている。ここで、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄状に積層されているとは、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄で、かつ絶縁性金属薄膜の真上に金属酸化薄膜が、金属酸化薄膜の真上に耐水性樹脂層が積層されていることをいう。
また、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層は単に積層されているのではなく、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が一体化されて積層されている。
このように、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されているため、その製造工程及び製造後のいずれにおいても、絶縁性金属薄膜の脱落を防止でき、また、絶縁性転写フィルムをインモールド成形に使用した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し難く、良好な外観が得られるばかりか、高温高湿条件下で金属光沢が消失しないので耐久性がよいなど、品質のよい絶縁性転写フィルムを得ることができる。
【0007】
なお、本発明の製造方法において、水溶性塗料層の除去を精度よく実施し、品質のよい絶縁性転写フィルムを得るには、保護層上に水溶性塗料層が存在する状態で、水溶性塗料層が存在しない部分の保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を積層一体化することが必要であり、そうするためには、a)絶縁性金属薄膜が島状構造であり、かつ金属酸化薄膜の厚さを3〜100nmの範囲とすること、及び、b)耐水性樹脂層に使用する樹脂塗料が保護層まで浸透するように、該樹脂塗料の粘度を低くしてコーティングするのが好ましく、そのため、耐水性樹脂層のコーティング法は、リバースコート法であるのが好ましい。
【0008】
更に、耐水性樹脂層の厚さは、水溶性塗料層の除去が困難な状態(ポーラスな水溶性塗料層の表面凹凸が平らに埋まるような状態)にならないように、水溶性塗料層の厚さの1/3以下、特に2〜20%とするのが好ましい。通常、この耐水性樹脂層の厚さは、0.01μmから0.4μm程度の厚さに設ければよく、特に0.2μm以下に設けるのがよい。
【0009】
かかる耐水性樹脂層を設けるための樹脂としては、通常コーティングに使用される耐水性ある樹脂、例えば、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などがいずれも使用できるが、インモールド成形などに適用する場合には、架橋型の樹脂、例えばイソシアネート結合により架橋するウレタン系樹脂やアクリル・ウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0010】
本発明における絶縁性金属薄膜とは金属光沢と絶縁性を兼ね備えた金属薄膜のことで、従来技術に従って蒸着法で設けることができる。通常、島のサイズが10Å〜2μm(1nm〜2μm)で、島の間隔が20Å〜5000Å(2nm〜500nm)である島状構造となるような薄膜とするのがよく、絶縁性金属薄膜を設けるための金属としては、スズ、インジューム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、珪素、ゲルマニューム又はこれらの合金からなる群から選ばれるものが使用できる。特にスズ又はインジュームであるのが好ましい。
【0011】
絶縁性金属薄膜を上記の島状構造とするには、プラスチックフィルム/離型層/保護層/模様状の水溶性塗料層/絶縁性金属薄膜からなる積層体の水溶性塗料層が存在しない部分の全光線透過率を10〜50%とするのがよい。また、ここに絶縁性とは、絶縁破壊電圧が1000V以上であることをいう。
【0012】
本発明の絶縁性転写フィルムは、プラスチックフィルムと離型層の間に下塗層を設けたものであってもよい。
【0013】
更に、本発明の絶縁性転写フィルムでは、プラスチックフィルムの離型層上に、着色印刷層を設けた上に前記保護層を設けてもよく、そうすることによって、着色印刷模様を表面に有する金属光沢に優れた図柄を安定して転写できる絶縁性転写フィルムの製造が可能となる。
【0014】
次に、絶縁性金属薄膜に積層される金属酸化薄膜は、絶縁性金属薄膜の金属光沢と絶縁性を維持し、耐腐食性を向上すると共に、絶縁性金属薄膜のキズ発生を防止するためのものであり、例えば酸化アルミニューム薄膜や酸化珪素薄膜等によるのが有用である。金属酸化薄膜の厚さは、通常、100nm以下程度の厚さに設ければよく、酸化珪素薄膜は8〜60nm程度であるのが好ましく、酸化アルミニューム薄膜は3〜30nm程度の厚さで十分な効果を得ることができる。しかし、金属酸化薄膜上に形成される耐水性樹脂層が保護層、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜と積層一体化して、安定した品質のよい絶縁性転写フィルムの製造を可能とするためには、3〜100nm程度の厚さであるのが好ましい。なお、厚さが3nm未満であると耐腐食性が悪くなり、100nmを超えると、特に転写時に金属酸化薄膜にクラックを生じ易くなり、結果的に耐腐食性も低下する。
【0015】
絶縁性金属薄膜を図柄状に形成するため、本発明の方法では、保護層上に水溶性塗料を模様状(図柄の陰型)に塗布して水溶性塗料層を設け、その上から全面に絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を設けた上に、さらに耐水性樹脂層を設けた後、水洗して水溶性塗料層を溶解除去するものであるので、水溶性塗料層上の絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層は、水溶性塗料層の溶解に伴って、模様状に除去されるが、水溶性塗料層の存在しない部分では、耐水性樹脂層の樹脂が、保護層表面まで浸透し、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化するため、水溶性塗料層が存在しない部分では、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化した状態で、かつ絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が所望の図柄に、精度よく残存し、金属光沢ある図柄を形成するのである。
【0016】
本発明の絶縁性転写フィルムにおけるプラスチックフィルムとしては、通常の転写フィルムに使用されるものがいずれも使用でき、また、離型層、保護層、接着層、及び下塗層としても、従来の転写フィルムと同様のものがいずれも適用可能である。
【0017】
プラスチックフィルムとしては、一般に合成樹脂フィルムを使用するのが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリブチルアクリレートフィルムなどを例示することができる。
【0018】
また、離型層としては、エーテル系、エステル系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ワックス系等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましい。更に、ハードコート性を要求される用途には、離型層を紫外線硬化型アクリル樹脂等のいわゆるハードコート性を有する樹脂で形成しておくことが好ましい。
【0019】
保護層としては、エーテル系、エステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましく、接着層としては、エーテル系、エステル系、アクリル系、塩化ビニル、酢酸ビニル等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましい。
【0020】
なお、水溶性塗料層に使用する水溶性塗料は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン等の水溶性物質からなる塗料が使用できる。また、水溶性塗料層には、体質顔料等を混入してもよい。
【0021】
本発明の絶縁性転写フィルムを使用してインモールド成形により、表面に金属光沢を有する絶縁性ある成形品を得ることも可能である。この場合、プラスチックフィルムと離型層との離型性を向上し、転写時にプラスチックフィルムの剥離不良や破れの発生を防止する目的で、プラスチックフィルムと離型層との間に、下塗層を形成するのが好ましく、該下塗層の形成により、金属光沢ある、複雑な形状の成形品を安定して得ることが可能となる。下塗層に使用する樹脂は、メラミン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂やワックス等が使用できるが、特にメラミン系樹脂やアクリル・メラミン系樹脂が好ましい。
【0022】
なお、本発明の絶縁性転写フィルムをプラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に、接着層、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、保護層、及び離型層が順次設けられており、かつ耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、及び絶縁性金属薄膜が同一の図柄状に積層された成形品を得ることができる。
このようにして得た本発明の成形品は、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、及び保護層が積層一体化されているので、本発明の絶縁性転写フィルムを使用してインモールド成形で成形品を製造した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し難く、良好な外観が得られるばかりか、高温高湿条件下で金属光沢が消失しないので耐久性がよく、品質のよい成形品となる。
また、本発明の絶縁性転写フィルムを使用して得た成形品である携帯電話用筐体は、上記成形品と同様品質がよいことはもちろん、携帯電話の電波(周波数:800MHz帯、1.5GHz帯、1.9GHz帯、2GHz帯など)を透過するので、アンテナが内臓されているタイプの携帯電話用筐体に本発明の絶縁性転写フィルムを使用する場合であっても、アンテナ内蔵部分にも金属光沢を付与することが可能であり、電波透過性を確保するためにアンテナが内臓されている部分を透明にするなどの方法を採用する必要がないという利点がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の絶縁性転写フィルム、及び該絶縁性転写フィルムを使用して得る本発明の成形品は、下記の効果を有する。
本発明の絶縁性転写フィルムは、前記の通り、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されているため、
1)絶縁性金属薄膜が島状構造のため、絶縁性金属薄膜表面にキズが入り易いが、絶縁性転写フィルム製造時の水洗工程において、絶縁性金属薄膜が脱落したり、こすれによるスリキズを生じることがないので、金属光沢ある所望の図柄を精度よく転写できる絶縁性転写フィルムを提供できる。
2) 保護層と絶縁性金属薄膜の間の密着性が向上するので、保護層に使用する樹脂の種類の選定範囲が広がるとともに、製造条件(コーティング機械の種類、乾燥温度等)の制約が少なくなった。
3)絶縁性金属薄膜の腐食が生じにくいため、耐水性樹脂層を設けた後、すぐに水洗工程及び接着工程を行う必要がなく、水洗工程あるいは接着工程まで長期保存が可能となり、納期対応が容易になった。
4)インモールド成形により成形品を製造する場合にも、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されていることに加え、耐水性樹脂層がインモールド成形時に絶縁性転写フィルムに生じる張力やゲート部から流れ込む樹脂の熱や圧力による応力を緩衝する作用があるため、成形品の曲面部やゲート部で絶縁性金属薄膜にクラックが発生し難くい。特に、耐水性樹脂層に使用する樹脂をイソシアネート結合により架橋するウレタン系樹脂やアクリル・ウレタン系樹脂としておけば、より耐熱性が向上するので、曲面部やゲート部の位置がエッジ部の場合はもちろん、ゲート部の位置がより耐熱性が要求される中央部の場合であっても、ゲート部にクラックが発生し難く、成形品の形状やプラスチック基材の種類の選択幅が広がる。
5)インモールド成形時にゲート部から樹脂が流れ込む際に、ゲート部近傍の接着層が溶解、剥離することがないので、本発明の成形品の接着層とプラスチック基材間との密着性が良好である。
6)本発明の成形品は、65℃×95%×24時間及び60℃×80%×96時間という携帯電話やオーディオ製品に要求される高温高湿試験でも、全光線透過率が60%を越えず、腐食により絶縁性金属薄膜が消失することがないので、非常に広範な用途に使用可能である。
7)また、耐水性樹脂層を設けることにより、いずれも樹脂からなる耐水性樹脂層と接着層とが直接接することになるので、接着層に使用する樹脂の種類の選定範囲が広がり、それにより転写できるプラスチック基材の種類も多くなる。その結果、絶縁性転写フィルムの用途が広がるとともに生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<実施例1>−絶縁性転写フィルムの製造−
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアクリル・メラミン系樹脂よりなる厚さ0.5μmの下塗層/アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの離型層/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる厚さ1μmの保護層/ポリビニルアルコールと体質顔料よりなる厚さ1μmの模様状(所望図柄の陰型)の水溶性塗料層/島状構造で絶縁性を備えた厚さ20nmのスズ薄膜(水溶性塗料層の存在しない部分の、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜の全光線透過率:25%)/透明性を有した厚さ5nmの酸化アルミニューム薄膜を順次設けて、積層フィルム(A)を得た。
次いで、この積層フィルム(A)の酸化アルミニューム薄膜上に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる塗料をリバースコート法にて塗布して厚さ0.1μmの耐水性樹脂層を設けた。その後水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムにスズ薄膜の脱落は全く無かった。得られたシートフィルムの耐水性樹脂層側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる耐水性樹脂層/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化された本発明の絶縁性転写フィルムを得た。
【0025】
<実施例2>−絶縁性転写フィルムの製造−
実施例1で得た積層フィルム(A)の酸化アルミニューム薄膜上に、アクリル・ウレタン系樹脂よりなる塗料をリバースコート法にて塗布して厚さ0.1μmの耐水性樹脂層を設けた。その後水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムにスズ薄膜の脱落は全く無かった。得られたシートフィルムの耐水性樹脂層側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる耐水性樹脂層/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化された本発明の絶縁性転写フィルムを得た。
【0026】
<比較例1>−絶縁性転写フィルムの製造−
実施例1で得た積層フィルム(A)を水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムは、水溶性塗料層が存在しない部分、つまりは本来スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を残存させなければならない部分において、酸化アルミニューム薄膜とともにスズ薄膜が一部脱落した不適部分があった。得られたシートフィルムの酸化アルミニューム薄膜側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層されてはいるものの該図柄が一部脱落した不適部分がある絶縁性転写フィルムを得た。不適部分は後に切り落とし、歩留まり10%と低い値であった。
【0027】
実施例1、2の本発明の絶縁性転写フィルム、及び比較例1の絶縁性転写フィルムについて水洗加工適性を比較した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示されるように、比較例1の絶縁性転写フィルムでは、スズ薄膜上に酸化アルミニューム薄膜を設けることにより、水洗工程における表面スリキズは防止できたが、保護層からスズ薄膜が脱落するのを防止できなかった。
これは、絶縁性金属薄膜に使用する金属がスズのように、比較的柔らかく、樹脂に対する付着力が弱い金属である場合は、スズ薄膜と保護層との密着力を強くする必要があり、特に水溶性塗料層による図柄が細かい場合、水洗工程で使用される水圧洗浄の水圧を強める必要があるため、より高い密着力が必要となる。
しかし、比較例1の絶縁性転写フィルムは、保護層とスズ薄膜との密着力が弱いため、保護層からスズ薄膜が脱落するのを防止できなかったのである。
実施例1、及び2の本発明の絶縁性転写フィルムはいずれも、スリキズおよびスズ薄膜の脱落のない、非常に品質のよい絶縁性転写フィルムとなった。これは、耐水性樹脂層の樹脂が保護層まで浸透し、保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化している結果、保護層とスズ薄膜の密着力が強くなったためである。
【0030】
<実施例3>−成形品の製造−
実施例1の本発明の絶縁性転写フィルムを使用して、透明アクリル樹脂を用いてインモールド成形し、携帯電話用筐体を製造した。
なお、インモールド成形としては、樹脂を流し込むためのゲート部の位置を、(1)筐体中央に設けた場合(転写フィルムの耐熱性がより要求される)と(2)筐体のエッジ部に設けた場合の二種の方法で、それぞれ携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化された本発明の携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。また、(1)のゲート部の位置が中央の場合には筐体の曲面部にはクラックは生じないが、ゲート部はクラックが少し生じ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験で金属光沢がやや消失した(該部分の全光線透過率は30%)。(2)のゲート部の位置がエッジの場合には筐体の曲面部及びゲート部ともにクラックも見られず、65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験でも外観変化なく、美麗な金属光沢図柄を保持する実用性あるものとなった。
【0031】
<実施例4>−成形品の製造−
実施例2の本発明の絶縁性転写フィルムを用いて、実施例3と同様の方法で二種の携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化された本発明の携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。また、(1)のゲート部の位置が中央の場合、及び(2)のゲート部の位置がエッジの場合、いずれも、筐体の曲面部とゲート部にクラックは見られず、65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験による外観の変化もなく、美麗な金属光沢図柄を保持する実用性あるものとなった。
【0032】
<比較例2>−成形品の製造−
比較例1の絶縁性転写フィルムを用いて、実施例3と同様の方法で、二種の携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層された携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。しかし、(1)のゲート部の位置が中央の場合、及び(2)のゲート部の位置がエッジの場合、いずれも、筐体の曲面部とゲート部にクラックが見られ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験により、金属光沢が消失し(該部分の全光線透過率65%)、実用性あるものとはならなかった。
【0033】
実施例3、4の本発明の携帯電話用筐体、及び比較例2の携帯電話用筐体のインモールド成形時のクラックの発生、及び耐久性(高温高湿試験)の試験結果を比較して表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
絶縁性転写フィルムには、インモールド成形時において、目的とする成形品の形状による程度の差はあるものの、樹脂を流し込むゲート部では高熱と流速による応力が、また、曲面部では張力がかかる。
酸化アルミニューム薄膜のような堅く脆い金属酸化薄膜は、通常上記の応力や張力がかかるとクラックが発生し、その結果外観不良や耐久性の低下が生じる。
しかし、実施例1、及び2の本発明の絶縁性転写フィルムを使用して得た実施例3、及び4の携帯電話用筐体では、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化されているため、インモールド成形時に絶縁性転写フィルムにかかる張力でも曲面部にクラックが発生しなかった。さらに、耐水性樹脂層の樹脂がアクリル・ウレタン系樹脂よりなる実施例4の携帯電話用筐体では、耐水性樹脂層の耐熱性がより向上するので、曲面部やゲート部の位置がエッジ部の場合はもちろん、ゲート部の位置がより耐熱性が要求される中央部の場合であっても、ゲート部にクラックが発生しなかった。
しかし、耐水性樹脂層が存在しない比較例1の絶縁性転写フィルムを使用した比較例2の携帯電話用筐体では、筐体の曲面部とゲート部のいずれにもクラックが見られ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験により、金属光沢が消失し(該部分の全光線透過率65%)、実用性あるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の絶縁性転写フィルムは、金属光沢及び絶縁性に優れ、耐久性もある図柄を、各種プラスチック基材の表面に、確実に転写することができるので、携帯電話用筺体、オーディオ製品の筺体、その他従来転写フィルムが使用されている用途に広く使用できる。
【0001】
本発明は、金属光沢に優れ、しかも絶縁性ある図柄を、安定して品質よく転写可能である転写フィルム、その製造方法、及びそれを使用した成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属光沢を有する絶縁性ある図柄を有する金属蒸着フィルムを得るため、基材フィルムに水溶性塗料層を部分的に設け、その上に金属蒸着層と、透明無機蒸着層(金属酸化薄膜)を積層して、水洗、乾燥するという方法が提案されている。そして、上記金属蒸着フィルムは包装材料等のほか転写箔(転写フィルム)としても使用されるものである。しかし、例えば上記金属蒸着フィルムが、金属蒸着層を極薄で不連続な絶縁性金属蒸着層(絶縁性金属薄膜)とした絶縁性転写箔(絶縁性転写フィルム)のとき、金属蒸着層上に単に透明無機蒸着層を積層しただけでは、水洗時に、絶縁性金属蒸着層の脱落が生じるという欠点があり、また、この絶縁性転写箔をインモールド成形に使用した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し、良好な外観を得難いばかりか、このクラック発生部分が高温高湿条件下で金属光沢が消失し、耐久性が悪いという欠点があった。
【特許文献1】
特許第3643904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述の如き、従来技術の欠点を解消し、スズ薄膜等の絶縁性金属薄膜を使用し、従来になく、金属光沢、及び絶縁性に優れた耐久性ある絶縁性転写フィルムを提供することを課題とするものであり、同時に、前記絶縁性転写フィルムの製造方法、及び該転写フィルムを使用した成形品の提供をも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、絶縁性金属薄膜に、水蒸気、及び酸素バリア機能の高い金属酸化薄膜と耐水性樹脂層を積層することにより、上記課題を解決した。
【0005】
すなわち、本発明では、プラスチックフィルム上に離型層、及び保護層を設け、その上に、模様状に水溶性塗料を塗布して水溶性塗料層を設けた後に、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を順次設け、更に、前記金属酸化薄膜上に耐水性樹脂層を設けた後、水洗して、前記水溶性塗料層、及び前記水溶性塗料層上に積層された前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を除去するとともに、前記水溶性塗料層が存在しない部分の前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を残存させた後、接着層を設けることにより、絶縁性転写フィルムを製造することを特徴とする。
【0006】
このようにして得られる本発明の絶縁性転写フィルムは、プラスチックフィルムの離型層上に、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、耐水性樹脂層、及び接着層が順次設けられており、かつ絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄状に積層されている。ここで、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄状に積層されているとは、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄で、かつ絶縁性金属薄膜の真上に金属酸化薄膜が、金属酸化薄膜の真上に耐水性樹脂層が積層されていることをいう。
また、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層は単に積層されているのではなく、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が一体化されて積層されている。
このように、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されているため、その製造工程及び製造後のいずれにおいても、絶縁性金属薄膜の脱落を防止でき、また、絶縁性転写フィルムをインモールド成形に使用した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し難く、良好な外観が得られるばかりか、高温高湿条件下で金属光沢が消失しないので耐久性がよいなど、品質のよい絶縁性転写フィルムを得ることができる。
【0007】
なお、本発明の製造方法において、水溶性塗料層の除去を精度よく実施し、品質のよい絶縁性転写フィルムを得るには、保護層上に水溶性塗料層が存在する状態で、水溶性塗料層が存在しない部分の保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を積層一体化することが必要であり、そうするためには、a)絶縁性金属薄膜が島状構造であり、かつ金属酸化薄膜の厚さを3〜100nmの範囲とすること、及び、b)耐水性樹脂層に使用する樹脂塗料が保護層まで浸透するように、該樹脂塗料の粘度を低くしてコーティングするのが好ましく、そのため、耐水性樹脂層のコーティング法は、リバースコート法であるのが好ましい。
【0008】
更に、耐水性樹脂層の厚さは、水溶性塗料層の除去が困難な状態(ポーラスな水溶性塗料層の表面凹凸が平らに埋まるような状態)にならないように、水溶性塗料層の厚さの1/3以下、特に2〜20%とするのが好ましい。通常、この耐水性樹脂層の厚さは、0.01μmから0.4μm程度の厚さに設ければよく、特に0.2μm以下に設けるのがよい。
【0009】
かかる耐水性樹脂層を設けるための樹脂としては、通常コーティングに使用される耐水性ある樹脂、例えば、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などがいずれも使用できるが、インモールド成形などに適用する場合には、架橋型の樹脂、例えばイソシアネート結合により架橋するウレタン系樹脂やアクリル・ウレタン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0010】
本発明における絶縁性金属薄膜とは金属光沢と絶縁性を兼ね備えた金属薄膜のことで、従来技術に従って蒸着法で設けることができる。通常、島のサイズが10Å〜2μm(1nm〜2μm)で、島の間隔が20Å〜5000Å(2nm〜500nm)である島状構造となるような薄膜とするのがよく、絶縁性金属薄膜を設けるための金属としては、スズ、インジューム、鉛、亜鉛、ビスマス、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、珪素、ゲルマニューム又はこれらの合金からなる群から選ばれるものが使用できる。特にスズ又はインジュームであるのが好ましい。
【0011】
絶縁性金属薄膜を上記の島状構造とするには、プラスチックフィルム/離型層/保護層/模様状の水溶性塗料層/絶縁性金属薄膜からなる積層体の水溶性塗料層が存在しない部分の全光線透過率を10〜50%とするのがよい。また、ここに絶縁性とは、絶縁破壊電圧が1000V以上であることをいう。
【0012】
本発明の絶縁性転写フィルムは、プラスチックフィルムと離型層の間に下塗層を設けたものであってもよい。
【0013】
更に、本発明の絶縁性転写フィルムでは、プラスチックフィルムの離型層上に、着色印刷層を設けた上に前記保護層を設けてもよく、そうすることによって、着色印刷模様を表面に有する金属光沢に優れた図柄を安定して転写できる絶縁性転写フィルムの製造が可能となる。
【0014】
次に、絶縁性金属薄膜に積層される金属酸化薄膜は、絶縁性金属薄膜の金属光沢と絶縁性を維持し、耐腐食性を向上すると共に、絶縁性金属薄膜のキズ発生を防止するためのものであり、例えば酸化アルミニューム薄膜や酸化珪素薄膜等によるのが有用である。金属酸化薄膜の厚さは、通常、100nm以下程度の厚さに設ければよく、酸化珪素薄膜は8〜60nm程度であるのが好ましく、酸化アルミニューム薄膜は3〜30nm程度の厚さで十分な効果を得ることができる。しかし、金属酸化薄膜上に形成される耐水性樹脂層が保護層、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜と積層一体化して、安定した品質のよい絶縁性転写フィルムの製造を可能とするためには、3〜100nm程度の厚さであるのが好ましい。なお、厚さが3nm未満であると耐腐食性が悪くなり、100nmを超えると、特に転写時に金属酸化薄膜にクラックを生じ易くなり、結果的に耐腐食性も低下する。
【0015】
絶縁性金属薄膜を図柄状に形成するため、本発明の方法では、保護層上に水溶性塗料を模様状(図柄の陰型)に塗布して水溶性塗料層を設け、その上から全面に絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を設けた上に、さらに耐水性樹脂層を設けた後、水洗して水溶性塗料層を溶解除去するものであるので、水溶性塗料層上の絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層は、水溶性塗料層の溶解に伴って、模様状に除去されるが、水溶性塗料層の存在しない部分では、耐水性樹脂層の樹脂が、保護層表面まで浸透し、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化するため、水溶性塗料層が存在しない部分では、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化した状態で、かつ絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が所望の図柄に、精度よく残存し、金属光沢ある図柄を形成するのである。
【0016】
本発明の絶縁性転写フィルムにおけるプラスチックフィルムとしては、通常の転写フィルムに使用されるものがいずれも使用でき、また、離型層、保護層、接着層、及び下塗層としても、従来の転写フィルムと同様のものがいずれも適用可能である。
【0017】
プラスチックフィルムとしては、一般に合成樹脂フィルムを使用するのが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリブチルアクリレートフィルムなどを例示することができる。
【0018】
また、離型層としては、エーテル系、エステル系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ワックス系等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましい。更に、ハードコート性を要求される用途には、離型層を紫外線硬化型アクリル樹脂等のいわゆるハードコート性を有する樹脂で形成しておくことが好ましい。
【0019】
保護層としては、エーテル系、エステル系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましく、接着層としては、エーテル系、エステル系、アクリル系、塩化ビニル、酢酸ビニル等の樹脂、及び共重合体を一種又は二種以上使用するのが好ましい。
【0020】
なお、水溶性塗料層に使用する水溶性塗料は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、デンプン等の水溶性物質からなる塗料が使用できる。また、水溶性塗料層には、体質顔料等を混入してもよい。
【0021】
本発明の絶縁性転写フィルムを使用してインモールド成形により、表面に金属光沢を有する絶縁性ある成形品を得ることも可能である。この場合、プラスチックフィルムと離型層との離型性を向上し、転写時にプラスチックフィルムの剥離不良や破れの発生を防止する目的で、プラスチックフィルムと離型層との間に、下塗層を形成するのが好ましく、該下塗層の形成により、金属光沢ある、複雑な形状の成形品を安定して得ることが可能となる。下塗層に使用する樹脂は、メラミン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂やワックス等が使用できるが、特にメラミン系樹脂やアクリル・メラミン系樹脂が好ましい。
【0022】
なお、本発明の絶縁性転写フィルムをプラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に、接着層、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、保護層、及び離型層が順次設けられており、かつ耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、及び絶縁性金属薄膜が同一の図柄状に積層された成形品を得ることができる。
このようにして得た本発明の成形品は、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、及び保護層が積層一体化されているので、本発明の絶縁性転写フィルムを使用してインモールド成形で成形品を製造した場合、成形品のゲート部及び曲面部にクラックが発生し難く、良好な外観が得られるばかりか、高温高湿条件下で金属光沢が消失しないので耐久性がよく、品質のよい成形品となる。
また、本発明の絶縁性転写フィルムを使用して得た成形品である携帯電話用筐体は、上記成形品と同様品質がよいことはもちろん、携帯電話の電波(周波数:800MHz帯、1.5GHz帯、1.9GHz帯、2GHz帯など)を透過するので、アンテナが内臓されているタイプの携帯電話用筐体に本発明の絶縁性転写フィルムを使用する場合であっても、アンテナ内蔵部分にも金属光沢を付与することが可能であり、電波透過性を確保するためにアンテナが内臓されている部分を透明にするなどの方法を採用する必要がないという利点がある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の絶縁性転写フィルム、及び該絶縁性転写フィルムを使用して得る本発明の成形品は、下記の効果を有する。
本発明の絶縁性転写フィルムは、前記の通り、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されているため、
1)絶縁性金属薄膜が島状構造のため、絶縁性金属薄膜表面にキズが入り易いが、絶縁性転写フィルム製造時の水洗工程において、絶縁性金属薄膜が脱落したり、こすれによるスリキズを生じることがないので、金属光沢ある所望の図柄を精度よく転写できる絶縁性転写フィルムを提供できる。
2) 保護層と絶縁性金属薄膜の間の密着性が向上するので、保護層に使用する樹脂の種類の選定範囲が広がるとともに、製造条件(コーティング機械の種類、乾燥温度等)の制約が少なくなった。
3)絶縁性金属薄膜の腐食が生じにくいため、耐水性樹脂層を設けた後、すぐに水洗工程及び接着工程を行う必要がなく、水洗工程あるいは接着工程まで長期保存が可能となり、納期対応が容易になった。
4)インモールド成形により成形品を製造する場合にも、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が積層一体化されていることに加え、耐水性樹脂層がインモールド成形時に絶縁性転写フィルムに生じる張力やゲート部から流れ込む樹脂の熱や圧力による応力を緩衝する作用があるため、成形品の曲面部やゲート部で絶縁性金属薄膜にクラックが発生し難くい。特に、耐水性樹脂層に使用する樹脂をイソシアネート結合により架橋するウレタン系樹脂やアクリル・ウレタン系樹脂としておけば、より耐熱性が向上するので、曲面部やゲート部の位置がエッジ部の場合はもちろん、ゲート部の位置がより耐熱性が要求される中央部の場合であっても、ゲート部にクラックが発生し難く、成形品の形状やプラスチック基材の種類の選択幅が広がる。
5)インモールド成形時にゲート部から樹脂が流れ込む際に、ゲート部近傍の接着層が溶解、剥離することがないので、本発明の成形品の接着層とプラスチック基材間との密着性が良好である。
6)本発明の成形品は、65℃×95%×24時間及び60℃×80%×96時間という携帯電話やオーディオ製品に要求される高温高湿試験でも、全光線透過率が60%を越えず、腐食により絶縁性金属薄膜が消失することがないので、非常に広範な用途に使用可能である。
7)また、耐水性樹脂層を設けることにより、いずれも樹脂からなる耐水性樹脂層と接着層とが直接接することになるので、接着層に使用する樹脂の種類の選定範囲が広がり、それにより転写できるプラスチック基材の種類も多くなる。その結果、絶縁性転写フィルムの用途が広がるとともに生産性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<実施例1>−絶縁性転写フィルムの製造−
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にアクリル・メラミン系樹脂よりなる厚さ0.5μmの下塗層/アクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの離型層/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる厚さ1μmの保護層/ポリビニルアルコールと体質顔料よりなる厚さ1μmの模様状(所望図柄の陰型)の水溶性塗料層/島状構造で絶縁性を備えた厚さ20nmのスズ薄膜(水溶性塗料層の存在しない部分の、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜の全光線透過率:25%)/透明性を有した厚さ5nmの酸化アルミニューム薄膜を順次設けて、積層フィルム(A)を得た。
次いで、この積層フィルム(A)の酸化アルミニューム薄膜上に、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる塗料をリバースコート法にて塗布して厚さ0.1μmの耐水性樹脂層を設けた。その後水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムにスズ薄膜の脱落は全く無かった。得られたシートフィルムの耐水性樹脂層側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる耐水性樹脂層/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化された本発明の絶縁性転写フィルムを得た。
【0025】
<実施例2>−絶縁性転写フィルムの製造−
実施例1で得た積層フィルム(A)の酸化アルミニューム薄膜上に、アクリル・ウレタン系樹脂よりなる塗料をリバースコート法にて塗布して厚さ0.1μmの耐水性樹脂層を設けた。その後水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムにスズ薄膜の脱落は全く無かった。得られたシートフィルムの耐水性樹脂層側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる耐水性樹脂層/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化された本発明の絶縁性転写フィルムを得た。
【0026】
<比較例1>−絶縁性転写フィルムの製造−
実施例1で得た積層フィルム(A)を水洗して、水溶性塗料層、及び水溶性塗料層上のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を除去するとともに、水溶性塗料層が存在しない部分のスズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を残存させたシートフィルムを得た。得られたシートフィルムは、水溶性塗料層が存在しない部分、つまりは本来スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜を残存させなければならない部分において、酸化アルミニューム薄膜とともにスズ薄膜が一部脱落した不適部分があった。得られたシートフィルムの酸化アルミニューム薄膜側にアクリル系樹脂よりなる厚さ1μmの接着層を設け、ポリエチレンテレフタレートフィルム/下塗層/離型層/保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/接着層からなり、スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層されてはいるものの該図柄が一部脱落した不適部分がある絶縁性転写フィルムを得た。不適部分は後に切り落とし、歩留まり10%と低い値であった。
【0027】
実施例1、2の本発明の絶縁性転写フィルム、及び比較例1の絶縁性転写フィルムについて水洗加工適性を比較した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示されるように、比較例1の絶縁性転写フィルムでは、スズ薄膜上に酸化アルミニューム薄膜を設けることにより、水洗工程における表面スリキズは防止できたが、保護層からスズ薄膜が脱落するのを防止できなかった。
これは、絶縁性金属薄膜に使用する金属がスズのように、比較的柔らかく、樹脂に対する付着力が弱い金属である場合は、スズ薄膜と保護層との密着力を強くする必要があり、特に水溶性塗料層による図柄が細かい場合、水洗工程で使用される水圧洗浄の水圧を強める必要があるため、より高い密着力が必要となる。
しかし、比較例1の絶縁性転写フィルムは、保護層とスズ薄膜との密着力が弱いため、保護層からスズ薄膜が脱落するのを防止できなかったのである。
実施例1、及び2の本発明の絶縁性転写フィルムはいずれも、スリキズおよびスズ薄膜の脱落のない、非常に品質のよい絶縁性転写フィルムとなった。これは、耐水性樹脂層の樹脂が保護層まで浸透し、保護層/スズ薄膜/酸化アルミニューム薄膜/耐水性樹脂層が積層一体化している結果、保護層とスズ薄膜の密着力が強くなったためである。
【0030】
<実施例3>−成形品の製造−
実施例1の本発明の絶縁性転写フィルムを使用して、透明アクリル樹脂を用いてインモールド成形し、携帯電話用筐体を製造した。
なお、インモールド成形としては、樹脂を流し込むためのゲート部の位置を、(1)筐体中央に設けた場合(転写フィルムの耐熱性がより要求される)と(2)筐体のエッジ部に設けた場合の二種の方法で、それぞれ携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体よりなる耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化された本発明の携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。また、(1)のゲート部の位置が中央の場合には筐体の曲面部にはクラックは生じないが、ゲート部はクラックが少し生じ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験で金属光沢がやや消失した(該部分の全光線透過率は30%)。(2)のゲート部の位置がエッジの場合には筐体の曲面部及びゲート部ともにクラックも見られず、65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験でも外観変化なく、美麗な金属光沢図柄を保持する実用性あるものとなった。
【0031】
<実施例4>−成形品の製造−
実施例2の本発明の絶縁性転写フィルムを用いて、実施例3と同様の方法で二種の携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/アクリル・ウレタン系樹脂よりなる耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層され、かつ耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化された本発明の携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。また、(1)のゲート部の位置が中央の場合、及び(2)のゲート部の位置がエッジの場合、いずれも、筐体の曲面部とゲート部にクラックは見られず、65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験による外観の変化もなく、美麗な金属光沢図柄を保持する実用性あるものとなった。
【0032】
<比較例2>−成形品の製造−
比較例1の絶縁性転写フィルムを用いて、実施例3と同様の方法で、二種の携帯電話用筐体を製造した。
その結果、透明アクリル基材/接着層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層/離型層が順次設けられており、酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜が金属光沢を有する同一の図柄状に積層された携帯電話用筐体を得た。
金属光沢を有する図柄部分の全光線透過率は15%、絶縁破壊電圧12000Vで絶縁性は良好であった。しかし、(1)のゲート部の位置が中央の場合、及び(2)のゲート部の位置がエッジの場合、いずれも、筐体の曲面部とゲート部にクラックが見られ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験により、金属光沢が消失し(該部分の全光線透過率65%)、実用性あるものとはならなかった。
【0033】
実施例3、4の本発明の携帯電話用筐体、及び比較例2の携帯電話用筐体のインモールド成形時のクラックの発生、及び耐久性(高温高湿試験)の試験結果を比較して表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
絶縁性転写フィルムには、インモールド成形時において、目的とする成形品の形状による程度の差はあるものの、樹脂を流し込むゲート部では高熱と流速による応力が、また、曲面部では張力がかかる。
酸化アルミニューム薄膜のような堅く脆い金属酸化薄膜は、通常上記の応力や張力がかかるとクラックが発生し、その結果外観不良や耐久性の低下が生じる。
しかし、実施例1、及び2の本発明の絶縁性転写フィルムを使用して得た実施例3、及び4の携帯電話用筐体では、耐水性樹脂層/酸化アルミニューム薄膜/スズ薄膜/保護層が積層一体化されているため、インモールド成形時に絶縁性転写フィルムにかかる張力でも曲面部にクラックが発生しなかった。さらに、耐水性樹脂層の樹脂がアクリル・ウレタン系樹脂よりなる実施例4の携帯電話用筐体では、耐水性樹脂層の耐熱性がより向上するので、曲面部やゲート部の位置がエッジ部の場合はもちろん、ゲート部の位置がより耐熱性が要求される中央部の場合であっても、ゲート部にクラックが発生しなかった。
しかし、耐水性樹脂層が存在しない比較例1の絶縁性転写フィルムを使用した比較例2の携帯電話用筐体では、筐体の曲面部とゲート部のいずれにもクラックが見られ、クラック発生部分は65℃×95%×24時間と60℃×80%×96時間の高温高湿試験により、金属光沢が消失し(該部分の全光線透過率65%)、実用性あるものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の絶縁性転写フィルムは、金属光沢及び絶縁性に優れ、耐久性もある図柄を、各種プラスチック基材の表面に、確実に転写することができるので、携帯電話用筺体、オーディオ製品の筺体、その他従来転写フィルムが使用されている用途に広く使用できる。
Claims (11)
- プラスチックフィルム上に離型層、及び保護層を設け、その上に、模様状に水溶性塗料を塗布して水溶性塗料層を設けた後に、絶縁性金属薄膜、及び金属酸化薄膜を順次設け、更に、前記金属酸化薄膜上に耐水性樹脂層を設けた後、水洗して、前記水溶性塗料層、及び前記水溶性塗料層上に積層された前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を除去するとともに、前記水溶性塗料層が存在しない部分の前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層を残存させた後、接着層を設けること、並びに前記絶縁性金属薄膜を島状構造とし、前記金属酸化薄膜の厚さを3〜100nmの範囲とし、かつ前記耐水性樹脂層をリバースコート法で樹脂塗料が前記保護層まで浸透するように適用し、前記保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜及び耐水性樹脂層を一体化して積層することを特徴とする絶縁性転写フィルムの製造方法。
- 前記離型層上に着色印刷層を設けた上に、前記保護層を設ける請求項1に記載の製造方法。
- プラスチックフィルム上に離型層、保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び接着層が順次設けられている転写フィルムであって、前記絶縁性金属薄膜が島状構造をなすものであり、前記金属酸化薄膜の厚さが3〜100nmの範囲であること、前記金属酸化薄膜と前記接着層の間に耐水性樹脂層が設けられていること、前記絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜、及び耐水性樹脂層が同一の図柄状に積層されていること、並びに、前記耐水性樹脂層の樹脂が前記保護層表面まで浸透し、前記保護層、絶縁性金属薄膜、金属酸化薄膜及び耐水性樹脂層が一体化されて積層されていることを特徴とする絶縁性転写フィルム。
- 前記金属酸化薄膜が酸化アルミニューム薄膜又は酸化珪素薄膜である請求項3に記載の絶縁性転写フィルム。
- 前記金属酸化薄膜が厚さ3〜30nmの酸化アルミニューム薄膜で、前記絶縁性金属薄膜が島のサイズ10Å〜2μm、島の間隔20Å〜5000Åである島状構造をなすものである請求項3又は4に記載の絶縁性転写フィルム。
- 前記絶縁性金属薄膜が、スズ薄膜又はインジューム薄膜である請求項3〜5いずれか1項に記載の絶縁性転写フィルム。
- 前記耐水性樹脂層が、ウレタン系樹脂又はアクリル・ウレタン系樹脂からなるものである請求項3〜6いずれか1項に記載の絶縁性転写フィルム。
- 前記離型層上に着色印刷層を設けた上に、前記保護層が設けられている請求項3〜7いずれか1項に記載の絶縁性転写フィルム。
- 請求項3〜7いずれか1項に記載の絶縁性転写フィルムをプラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に接着層、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、保護層、及び離型層が順次設けられており、前記耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、及び絶縁性金属薄膜が同一の図柄状に積層されていることを特徴とする成形品。
- 請求項8に記載の絶縁性転写フィルムをプラスチック基材上に転写して、プラスチック基材上に、接着層、耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、絶縁性金属薄膜、保護層、着色印刷層、及び離型層が順次設けられており、前記耐水性樹脂層、金属酸化薄膜、及び絶縁性金属薄膜が同一の図柄状に積層されていることを特徴とする成形品。
- 前記成形品が携帯電話用筐体である請求項9又は10に記載の成形品。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2005/022657 WO2007066410A1 (ja) | 2005-12-09 | 2005-12-09 | 金属光沢に優れた絶縁性転写フィルム、その製造方法、及びそれを使用した成形品 |
Publications (3)
Publication Number | Publication Date |
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JP3955084B1 true JP3955084B1 (ja) | 2007-08-08 |
JP3955084B2 JP3955084B2 (ja) | 2007-08-08 |
JPWO2007066410A1 JPWO2007066410A1 (ja) | 2009-05-14 |
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