JP3953946B2 - 切土のり面管理支援システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異常気象時において、土砂崩れ災害等を予防するために行う道路交通規制の時期決定を支援するためのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
異常気象時において、土砂崩れ災害等を予防するために行う道路交通規制の最大の課題は、道路利用者の安全を確保するために見逃し災害を極力避けることと道路の機能を最大限に発揮させるために通行止めの空振りを減らすことという、ある意味相反する2つの目的の接点を如何に調整するかにある。そして、この課題を解決するために、道路管理者は様々な現地条件と降雨指標を考慮して規制手法や規制基準値の見直しを行っているが、いずれの規制手法も過去の災害履歴分析に基づいて設定したある一定の基準値で管理する手法であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、地形・地質条件が複雑なわが国の国土においては、ある通行規制区間の範囲だけを見てもその地形や地質条件が多様となっている。そのため、区間単位で災害履歴を分析すると、多くの場合、降雨と崩壊発生の因果関係が不明瞭にならざるを得なかった。すなわち、降雨指標と崩壊発生の相関関係が必ずしも一対一となっておらず、交通規制の時期を決定することが困難であった。
【0004】
また、降雨によって発生する斜面の表層崩壊メカニズムの解明や崩壊発生予測に関する研究も多くの機関で実施されているが、崩壊発生予測に関し、降雨に伴って時々刻々変化する斜面の安全率を定量的に把握することは依然困難な課題となっている。そのため、現時点では、崩壊発生を完全に予測することはほぼ不可能となっている。
【0005】
交通規制においては、見逃し災害の防止と通行止めの空振り低減との調整を図る必要があるが、崩壊発生を完全に予測できない以上、見逃し災害を防止するためには通行止めの空振りがあることを前提とした交通規制の開始が必要となる。そのため、交通規制の解除時期をどのように決定することが現実の問題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、通行規制の時期決定、特に解除時期の決定を支援するための切土のり面管理支援システム及びそのシステムに使用する切土のり面崩壊危険度判定システムと土中水分状況計測方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる切土のり面管理支援システムは、切土のり面の安全率が降水量の影響を受けて相対的に変化することを利用したことを特徴とする。
【0008】
この管理支援システムによれば、相対的な切土のり面の安全率の変化を利用しているため、切土のり面の安全率を絶対的な数値として得ることなしに、斜面の安全性を予測して交通規制の時期、特に解除時期を決定することができる。これは、斜面の安定性は、降雨の減退或いは停止後に回復するという性質を有することによるものである。すなわち、降雨の減退或いは停止により切土のり面の安全率は回復傾向を示すため、この回復傾向を示す時期(切土のり面の安全率の変曲点)を把握することにより、交通規制の解除時期を的確に予測することができる。
【0009】
なお、本発明は、地質条件等が複雑な切土のり面の管理を支援することを目的としているが、条件がより単純な盛土のり面の管理支援にも当然に適用できる。従って、本発明において、切土のり面と表現されていても、それは特に切土のり面に適用できることを意味するものであり、盛土のり面をその対象から除外することを意図するものではなく、盛土のり面は当然に包含されている。以降も同様である。
【0010】
該切土のり面の安全率は、該切土のり面の断面2次飽和−不飽和浸透流解析により得られる土壌水分状況・地下水状況を反映し、かつ不飽和帯の水分量変化を考慮した円弧すべり法により求められたものであってもよい。
この場合、既存の解析手法を利用して、切土のり面の安全率を求めることができる。
【0011】
該切土のり面を降雨による崩壊の危険度に応じて区分し、該危険度が所定値以上となる該切土のり面に雨量計を設置し、該雨量計の計測値を該降水量として使用すると共に、該計測値を使用して降雨予測データを補正してもよい。
この場合、切土のり面の実況安全率(現時点での安全率)の算出においては、その基となる降雨量が管理する切土のり面での現実の値となるため、気象協会から提供される降雨データを使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。また、切土のり面の予測安全率(これからの推移予測値)の算出においては、その基となる降雨予測データを管理する切土のり面の実状を考慮したものにできるので、気象協会から提供される降雨予測データをそのまま使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。更に、危険度の高い切土のり面のみに適用することで、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。
【0012】
該危険度が所定値以上となる該切土のり面に、ADR土壌水分計、間隙水圧計及び地下水位計を設置し、該断面2次飽和−不飽和浸透流解析に使用するのり面モデルを随時補正してもよい。
この場合、解析に使用するのり面モデルの精度を高めることができ、また危険度の高い切土のり面のみに適用するため、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。なお、この手法は、初期段階でできるだけ精度の高いモデルを構築して、以降はそれに基づく解析を継続していく従来の解析手法に対し、更新可能なモデルを導入したものである。
【0013】
該危険度は、道路建設前の地形を確認して原地形としての集水地形を考慮して切土のり面の危険度を判定する、切土のり面崩壊危険度判定システムを使用して求めることができる。
【0014】
なお、前記切土のり面崩壊危険度判定システムの基本判定手法としては、ニューラルネットワークモデルを使用した手法が好適である。
【0015】
この場合、従来の切土のり面管理において考慮されていなかった原地形としての集水地形を考慮することにより、危険度の判定精度を向上させることができる。
【0016】
該危険度は、限界降雨量ランクとして表現されてもよい。
この場合、切土のり面の危険度が定量的に表現されるので、厳密な判断を行うことができる。また、実際の管理に使用されている降雨基準値を危険の度合いの指標としたことで、実際の管理に即導入することが可能となる。
【0017】
該ADR土壌水分計及び間隙水圧計は、例えば、以下に説明するような配置とすることが好ましい。
【0018】
すなわち、ADR土壌水分計の計測地点における設置深度と、間隙水圧計の該計測地点における設置深度を標準化して、切土のり面における降雨の表層からの浸透状況を経時的に把握できる配置とする。
【0019】
このような配置により計測を行えば、採土・炉乾法、中性子水分計による方法、テンシオメータ法などの従来の方法と比べ、メンテナンスが容易となり、また測定を容易かつ迅速に行うことができ、しかも十分に高い計測精度を得ることができる。なお、採土・炉乾法では、高い精度を有するものの連続的なモニタリングができないという問題があった。また、中性子水分計では中性子線源の取扱いに問題があった。更に、テンシオメータ法では、ヒステリシスの問題やメンテナンスが煩雑であるなど、原位置での長期的なモニタリング上問題があった。
【0020】
該ADR土壌水分計は該計測地点に3個設置し、該ADR土壌水分計の該設置深度は20cm、40cm及び80cmとし、該間隙水圧計の該設置深度は1mとすることが好ましく、その場合、実際に土中水分状況を的確に計測することができる。
【0021】
【発明実施の形態】
本発明にかかる切土のり面管理支援システムの具体例を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0022】
図2は、本発明にかかる切土のり面管理支援システムの具体例を示すフローチャート図である。この管理支援システムは、通行規制の時期決定、すなわち通行規制開始時期の決定(判断D1)及び通行規制解除時期の決定(判断D2)を得ることを目的とするものである。この判断D1、D2は、処理S16、S18又はS26、S28における切土のり面の安定性評価の結果得られるが、その評価には、切土のり面の安全率Qが降水量Rの影響を受けて相対的に変化することを利用している。図1に、切土のり面の安全率Qの経時変化をの具体例を示す。
【0023】
図1は、時間経過を横軸として、降水量R及び切土のり面の安全率Qの経時変化の関係を示すグラフである。切土のり面の安全率Qは左側の縦軸を基準とし、降水量Rは右側の縦軸を基準としている。なお、切土のり面の安全率Qについては、特定の時間におけるデータに基づいて算出された値を白丸とし、これら白丸を時系列に並べることによって経時変化を現している。また、降水量Rについては、所定時間内の降水量を時系列で並べた棒グラフによって経時変化を現している。
【0024】
この管理支援システムによれば、相対的な切土のり面の安全率Qの変化を利用しているため、切土のり面の安全率Qを絶対的な数値として得ることなしに、斜面の安全性を予測して交通規制の時期、特に解除時期を決定することができる。これは、斜面の安定性は、降雨の減退或いは停止後に回復するという性質を有することによるものである。すなわち、降雨の減退或いは停止により切土のり面の安全率Qは回復傾向を示すため、この回復傾向を示す時期(切土のり面の安全率Qの変曲点P)を把握することにより、交通規制の解除時期を的確に予測することができる。図1を参照しながら詳述すると、変曲点Pを過ぎた後の切土のり面の安全率Qは、変曲点Pにおける値よりも低くなることはないため、この変曲点P以降であれば通行規制を解除できるということである。なお、交通規制の開始は、少なくとも変曲点P以前の、切土のり面の安全率Qが低下傾向を示す時期に行う必要があるが、規定の降雨基準値を照査しながら適宜判断することになる。
【0025】
切土のり面の安全率Qは、その切土のり面の断面2次飽和−不飽和浸透流解析により得られる土壌水分状況・地下水状況を反映し、かつ不飽和帯の水分量変化を考慮した円弧すべり法によって求められている。
こうすると、既存の解析手法を利用して、安全率を求めることができる。
【0026】
なお、この支援管理システムにおいて、断面2次飽和−不飽和浸透流解析はAFIMEX(製品名:富士通FIP社)を使用して行われる。その基礎式を数式1に示す。
【数1】
Figure 0003953946
【0027】
一方、円弧すべり法による安全率の算出は、COSTANA(製品名:富士通FIP社製)を用いて行われる。その基礎式を数式2に示す。
【数2】
Figure 0003953946
【0028】
ただし、通常のCOSTANAでは、不飽和帯の質量変化が考慮されていないため、不飽和領域の体積含水率分布に応じた土壌の重量変化を考慮し改良したものが使用されている。
【0029】
また、不飽和領域の浸透特性をあらわす透水係数と体積含水率との関係及びせん断抵抗角と体積含水率との関係については、これまで種々の経験式が提案されているが、この管理支援システムにおける解析では、透水係数と体積含水率との関係としてIrmayの式、せん断抵抗角と体積含水率との関係としてVanGenuchtenの式が採用されている。これらの関係式を数式3に示す。
【数3】
Figure 0003953946
【0030】
数式3における形状関数には、一般的な値として提案されている表1に示す値の中間値を用いている。
【表1】
Figure 0003953946
【0031】
また、この管理支援システムでは、切土のり面を降雨による崩壊の危険度に応じて区分し、危険度が所定値以上となる切土のり面に雨量計を設置し、該雨量計の計測値を該降水量として使用すると共に、該計測値を使用して降雨予測データを補正している。
こうすると、切土のり面の実況安全率(現時点での安全率)の算出においては、その基となる降雨量が管理する切土のり面での現実の値となるため、気象協会から提供される降雨データを使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。また、切土のり面の予測安全率(これからの推移予測値)の算出においては、その基となる降雨予測データを管理する切土のり面の実状を考慮したものにできるので、気象協会から提供される降雨予測データをそのまま使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。更に、危険度の高い切土のり面のみに適用することで、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。
【0032】
更に、危険度が所定値以上となる切土のり面には、ADR土壌水分計、間隙水圧計及び地下水位計を設置し、該断面2次飽和−不飽和浸透流解析に使用するのり面モデルを随時補正している。
こうすると、解析に使用するのり面モデルの精度を高めることができる。また、危険度の高い切土のり面のみに適用するため、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。
【0033】
次に、この管理支援システムで行われる処理を、図2を参照しながら説明する。
まず、管理対象となる切土のり面の危険度を処理S1において判定する。そして、判定危険度が所定値以上であれば、実測斜面モデルによる管理を行うこととし、それ以外は単元化斜面モデルによる管理を行うこととする。
【0034】
実測斜面モデルとは、上記断面2次飽和−不飽和浸透流解析に使用されるのり面モデルであって、その切土のり面現場に設置されたADR土壌水分計、間隙水圧計及び地下水位計の実測値により随時補正されるものをいう。そして、このモデルを使用した管理においては、処理S10において得られたADR土壌水分計、間隙水圧計及び地下水位計の実測値をのり面モデルに入力し、処理S11で実測斜面のモデル化を行う。また、実測値は、現場の監視用としても使用される。そして、処理S12で飽和度変化の判定がなされ、急激な変化が無い場合には、そのままモデルの補正が繰り返される。そして、急激な変化があった場合に、次の処理S15に進み浸透流解析及び安定性解析が行われる。この際、解析に必要な降雨量データとして、気象協会から提供されている実況降雨データ及び超短時間降雨予測情報データの取り込みが開始され(処理S13、S14)、以降解析を行う場合には必要に応じて参照されることになる。現地降雨データは、上記処理S10においてその他の実測値とともに取り込みが開始され、以降同様に解析の際参照されることになる。なお、ここにいう浸透流解析は上記AFIMEXを使用した解析をさし、また安定性解析は上記COSTANAの改良型を使用した解析をさすものとし、以後も同様に表現するものとする。
【0035】
一方、単元化斜面モデルとは、典型的な斜面崩壊パターンを整理し、単純化した斜面モデルのことである。降雨条件による斜面安定性を定量化するための解析では、斜面長、斜面層厚、斜面角度、斜面土層(透水性)、集水面積及びのり面保護工パターンの6つをパラメータとし、更に斜面の安定性を損なわせた既往降雨パターンを入力し、2次元の単元化斜面における水分状況(飽和度分布)を求める浸透解析を行う。そして、この飽和度分布を安定性解析の入力条件とする。このモデルを使用した管理においては、処理S21で現地斜面の単元化を行った後、特別な判定を行うことなく処理S25の浸透流解析及び安定性解析が行われることになる。この際、解析に必要な降雨量として、気象協会から提供されている実況降雨データ及び超短時間降雨予測情報データの取り込みが開始され、(処理S23、S24)以降解析を行う場合には必要に応じて参照されることになる。
【0036】
浸透流解析及び安定性解析(処理S15又はS25)以降の処理は、どちらのモデルを使用した場合の管理においてもほぼ同じあるため、以後両管理に共通する内容として説明する。
【0037】
処理S15又はS25の安定解析により、その時点での切土のり面の安全率Qの経時変化を得ることができたら、その結果に基づいて切土のり面の安定性評価を行う。(処理S16又はS26)得られた切土のり面の安全率Qが低下傾向を示すかどうかを把握し、低下する場合には、規定の降雨基準値を照査しながら危険であると評価する。そして、危険であると評価された場合は通行規制を行う。(判断D1)一方、切土のり面の安全率Qが低下傾向を示さない場合は、安全であると判断し、危険であると評価されるまで解析を繰り返す。
【0038】
通行規制を行ったら、再び同様の解析を行う。(処理S17又はS27)そして、処理S17又はS27の安定解析により、切土のり面の安全率Qの経時変化を得ることができたら、その結果に基づいて斜面安定性評価を行う。(処理S18又はS28)切土のり面の安全率Qが回復傾向を示す時期(切土のり面の安全率Qの変曲点P)を把握し、変曲点Pに達しておらず危険な状態が続くと判断された場合には同様の解析を繰り返す。一方、変曲点Pを過ぎその切土のり面の安全率Qが回復に向かい、安全と判断された場合には通行規制解除時期の決定を行い(判断D2)全ての処理が終了する。
【0039】
処理S1における危険度の判定には、切土のり面崩壊危険度判定システムが使用されている。図3は、同判定システムのブロック図である。
【0040】
この切土のり面崩壊危険度判定システムは、道路建設前の地形を確認して原地形としての集水地形を考慮して切土のり面の危険度を判定している。
【0041】
なお、この判定システムは、基本判定手法としてニューラルネットワークモデルを使用した手法が採用されている。そして、データ11を入力するための入力層12と、データ11を処理する第1ニューロン群13で構成される中間層14と、中間層14から引き渡された処理済値を更に処理する第2ニューロン群15で構成される出力層16とからなっている。
【0042】
入力層12から入力されるデータ11は、日本道路公団において平成8年に実施された道路防災総点検における安定度調査表の要因の各項目(地形、土質・地質・構造、表層の状況、形状、変状)の評点区分及びその他の追加素因からなっている。追加素因として、切土のり面上方の状況(のり面上方の土地利用、のり面上方の地形)、地質(地質年代等)及びその他形状素因(のり面延長、のり面の全直高、のり面の形)が入力されるようになっている。そして、道路建設前の地形を確認して原地形としての集水地形を考慮して切土のり面の危険度を判定するようになっている。
【0043】
この判定システムによれば、従来の切土のり面管理において考慮されていなかった原地形としての集水地形を考慮することにより、危険度の判定精度を向上させることができる。
【0044】
中間層を構成する第1ニューロン群13の各ニューロンでは、データ11の各項目要素に結合係数Wiを乗じて重み付けを行い、これらを足し合わせた後しきい値biを引き去り、更にそこで得られた値をシグモイド関数に通す処理が行われる。なお、第1ニューロン群13の数は20となっている。
【0045】
出力層16において出力される危険度17は、限界降雨量ランクとして表現されるようになっている。また、限界降雨量ランクは、限界降雨量が100mm以下となるランクを最も危険度の高いランクとし、危険度の低くなる方向へ限界降雨量が100mm刻みで増加するよう8つに区分けされている。そして、最も危険度の低いランクにおける限界降雨量は701mm以上となっている。
こうすると、切土のり面の危険度17が定量的に表現されるので、厳密な判断を行うことができる。また、実際の管理に使用されている降雨基準値を危険の度合いの指標としたことで、実際の管理に即導入することが可能となる。特に、上記一連の処理はノートパソコン程度のコンピュータで処理可能であることから、従来の研究レベルの安定性判定手法と異なり、実際の管理に即導入可能であることを想定した動作環境を実現することが可能となる。
【0046】
なお、保護工の定性的評価結果から、のり面にコンクリート吹付けやのり枠工が施工されている場合、耐雨効果が100mm以上期待できることがわかったので、その場合は限界降雨量ランクを1ランク上位に設定することとしている。例えば、植生主体の場合に最大経験降雨量が365mmであれば限界降雨量ランクは4になるところ、保護工がある場合は最大経験降雨量が365mmであれば限界降雨量ランクは5になる。
【0047】
この判定システムにより判定される危険度の妥当性を検証するため、実データによる学習と判別を実施した。実データとして、日本道路公団八王子管理事務所と大月管理事務所管内の全切土のり面データ(のり面数:216)を使用した。
【0048】
検証を行うにあたり、まず使用するデータを、崩壊履歴のあるもの(崩壊履歴群)と未崩壊のもの(未崩壊群)とに分類する。更に、各群のデータを地質と限界降雨量ランク区分に分類した後、各群のデータを2つの組みに分けた。地質毎と限界降雨量ランク区分毎に分類した理由は、(1)地質によって切土のり面の特徴が異なることが考えられるため、地質の偏りを無くすことと、(2)限界降雨量ランク1〜8を有する切土のり面の特徴を偏り無くシステムに学習させるためである。
【0049】
次に、上記2つの組みのうち、どちらか一方を学習用データとし、この切土のり面崩壊危険度判定システムに記憶させた。そして、他方の組みに属する切土のり面を判定対象とし、そのデータを判定用とし、各切土のり面の危険度について学習用データを参照しながらその判定を行った。その判定結果を図4に示す。図4はこの判定システムによって判定された各切土のり面の限界降雨量と実際の限界降雨量との差(ランク差)の頻度分布である。たとえば、限界降雨量ランク2である切土のり面がこの判定システムによる判定で2となった場合はランク差0であり、両者が一致していることを示す。したがって、ランク差0の頻度が大きいほど、同判定システムの判別能力が優れていることになる。ここでは、未崩壊のり面の限界降雨量ランクは経験降雨で近似されている値なので、ランク差が1まで許容範囲(判別が一致)と考える。ランク差1までの累積頻度から的中率(判別が一致した数/データの総数)を求めると、学習データで100%、判別データで平均84%となった。
【0050】
S10の現地観測に使用される、ADR土壌水分計及び間隙水圧計は、次のように設置されている。すなわち、ADR土壌水分計の計測地点における設置深度と、間隙水圧計の計測地点における設置深度が標準化されており、切土のり面における降雨の表層からの浸透状況を経時的に把握することができるような配置になっている。
【0051】
この計測方法によれば、従来の方法と比べ、メンテナンスが容易となり、また測定を容易かつ迅速に行うことができ、しかも十分に高い計測精度を得ることができる。
【0052】
図5に示すように、ADR土壌水分計は計測地点における土中の設置位置A、B及びCに3個設置され、その設置深度は20cm、40cm及び80cmとされている。一方、間隙水圧計は土中の設置位置Dに設置され、その設置深度は1mとされている。
こうすると、実際に土中水分状況を的確に計測を行うことができる。
【0053】
この計測方法により観測を行った結果を、図6及び図7に示す。この観測により、切土のり面の水分状態をリアルタイムでモニタリングできることが確認された。
【0054】
また、この計測方法の確認に加え、以下のことが判明した。
1)土質の違いによって、同じ降雨でも飽和度の変動パターンに違いがある。2)同じ土質でも、切土のり面の植生の繁茂状態によって飽和度の変動パターンに違いがある。(図8参照)すなわち、植生が繁茂した斜面を中心に降雨時にのみ飽和度が急激に上昇する現象が確認され、これは植生の根茎等が土の構造に影響を与えてマクロポーラス的な間隙が発生していることによる。
3)降雨の浸透現象に関しては、開放型のり枠工斜面と自然植生斜面とを同等に扱うことができる。
4)10分間隔の計測を行うことで、雨の振り方によっては地表から切土のり面内部への浸透速度を把握できる。本発明にかかる切土のり面管理支援システムは、切土のり面の不安定化の判定よりもむしろ降雨停止後の切土のり面の安定側への推移を把握することを主眼としているが、不安定化判定にも寄与できる可能性を示している。
5)降雨停止後の飽和度の低下傾向は、砂質度で明瞭であるが粘性土では不明瞭(緩やか)である。しかしながら、間隙水圧計の観測データはいずれの土質においても降雨の停止に伴って明瞭に低下することが明らかとなった。(図7参照)すなわち、降雨停止後の飽和度低下が不明瞭(緩やか)な粘性土からなる切土のり面においては、ADR土壌水分計と間隙水圧計を併用することが、降雨停止後の切土のり面の安定側への推移を把握する上で有効である。
【0055】
【発明の効果】
本発明にかかる切土のり面管理支援システムによれば、切土のり面の安全率を絶対的な数値として得ることなしに、斜面の安全性を予測して交通規制の時期、特に解除時期を決定することができる。
【0056】
また、切土のり面の実況安全率(現時点での安全率)の算出においては、その基となる降雨量が管理する切土のり面での現実の値となるため、気象協会から提供される降雨データを使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。また、切土のり面の予測安全率(これからの推移予測値)の算出においては、その基となる降雨予測データを管理する切土のり面の実状を考慮したものにできるので、気象協会から提供される降雨予測データをそのまま使用する場合と比較し、算出精度を向上させることができる。更に、危険度の高い切土のり面のみに適用することで、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。
【0057】
更に、解析に使用するのり面モデルの精度を高めることができ、また危険度の高い切土のり面のみに適用するため、システム全体に不必要な負荷がかかることを防止できる。
【0058】
請求項2によれば、既存の解析手法を利用して、安全率を求めることができる。
【0059】
請求項3によれば、従来の切土のり面管理において考慮されていなかった原地形としての集水地形を考慮することにより、危険度の判定精度を向上させることができる。そして、その判別率はかなり高いことが確認された。
【0060】
請求項によれば、切土のり面の危険度が定量的に表現されるので、厳密な判断を行うことができる。また、実際の管理に使用されている降雨基準値を危険の度合いの指標としたことで、実際の管理に即導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】時間経過を横軸として、降水量及び切土のり面の安全率の経時変化の関係を示すグラフである。
【図2】本発明にかかる切土のり面管理支援システムの具体例を示すフローチャート図である。
【図3】本発明にかかる切土のり面崩壊危険度判定システムの具体例を示すブロック図である。
【図4】同判定システムによって判定された各切土のり面の限界降雨量と実際の限界降雨量との差(ランク差)の頻度分布である。
【図5】本発明にかかる土中水分状況計測方法に適した、ADR土壌水分計及び間隙水圧計の設置状態を示す図である。
【図6】同計測方法を使用することにより得られた、降雨による飽和度の深度別変化の傾向を示す図である。
【図7】同計測方法を使用することにより得られた、粘性土地盤における降雨停止後の飽和度と間隙水圧の変化傾向を示す図である。
【図8】同計測方法を使用することにより得られた、切土のり面植生の繁茂状態の違いによる飽和度変動パターンの違いを示す図である。
【符号の説明】
Q 切土のり面の安全率
R 降雨量

Claims (4)

  1. 切土のり面の安全率(Q)が降水量(R)の影響を受けて相対的に変化することを利用し
    該切土のり面を降雨による崩壊の危険度に応じて区分し、該危険度が所定値以上となる該切土のり面に雨量計を設置し、該雨量計の計測値を該降水量として使用すると共に、該計測値を使用して降雨予測データを補正し、
    該危険度が所定値以上となる該切土のり面に、ADR(Amplitude−Domain Reflectometry)土壌水分計、間隙水圧計及び地下水位計を設置し、該断面2次飽和−不飽和浸透流解析に使用するのり面モデルを随時補正することを特徴とする切土のり面管理支援システム。
  2. 該切土のり面の安全率(Q)は、該切土のり面の断面2次飽和−不飽和浸透流解析により得られる土壌水分状況・地下水状況を反映し、かつ不飽和帯の水分量変化を考慮した円弧すべり法により求められている請求項1に記載の切土のり面管理支援システム。
  3. 危険度は、道路建設前の地形を確認して原地形としての集水地形を考慮して判定される請求項1又は2に記載の切土のり面管理支援システム。
  4. 該危険度は、限界降雨量ランクとして表現される請求項1、2又は3に記載の切土のり面管理支援システム。
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