JP3953211B2 - 電子素子の放熱構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、中央演算処理装置(CPU)などの電子素子を冷却するための放熱構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近では、CPUなどの電子素子の高速化、大容量化によってその発熱量が多くなってきており、それに伴って温度上昇による誤動作や破損などを回避するために、より効果的に放熱・冷却することが求められるようになってきている。コンピュータやサーバーなどは、可及的に小型であることが要求されるので、電子素子の温度上昇を防ぐためには、冷却よりもむしろ放熱の手段が採用されている。例えばCPUなどの電子素子にヒートシンクを重ねて取り付け、更には空冷ファンを取り付けて熱放散を積極化している。
【0003】
後者の構造は、電力の消費や騒音などの問題があり、これに対して前者の自然空冷を行う構造ではそのような不都合が生じない。しかしながら最近では、その自然空冷による放熱量を超える発熱量の電子素子が使用されるようになってきている。そこで、各種の部品を取り付けるベースを兼ねる金属板にそれよりも厚い金属ブロックを取り付け、その金属ブロックに電子素子を密着させた構成の放熱構造が開発されている。
【0004】
その一例が第2807415号特許公報に記載されている。この公報に記載された構造は、ヒートパイプの一端部を、電子素子を取り付けた金属板ならびに金属ブロックの両方に沿わせて配置し、かつそのヒートパイプの他方の端部を金属板に密着させた構造である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
第2807415号特許公報に記載された構造では、電子素子から発生した熱が金属ブロックを介して金属板に伝達され、またその金属ブロックからヒートパイプを介して金属板に伝達され、その金属板から放熱するようになっている。したがってその金属板が周囲の空気に対する放熱部材になっているから、電子素子からその金属板に対する熱伝達を効率よく行う必要がある。
【0006】
しかしながら、上記の構造では、電子素子と金属板との間ならびに電子素子とヒートパイプとの間に、独立した構造の金属ブロックが介在するために、金属板と電子素子との間での熱抵抗ならびにヒートパイプと電子素子との間での熱抵抗がそれぞれ大きくなり、その結果、電子素子からの放熱効率が低くなる不都合があった。また第2807415号特許公報に記載された構造では、ネジおよび金属製の取付片によって金属ブロックとヒートパイプとを金属板に対して組み付けているから、部品点数および工程数が多く、それに伴って全体としての生産性に劣る不都合があった。
【0007】
この発明は、上記の事情を背景にしてなされたものであり、電子素子からの放熱効率がよく、かつ生産性に優れる構造を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、電子素子から発生する熱を放熱用金属板に伝達するとともに、この放熱用金属板から放散させる電子素子の放熱構造において、前記放熱用金属板と一体に該放熱用金属板の板厚方向に突出し、前記電子素子を取り付ける台座部と、その台座部から前記放熱用金属板の表面に沿って形成された溝部と、その溝部の内部に沿わされた状態で配置されたヒートパイプと、前記放熱用金属板の表面の台座部および溝部を除いた非機能部分と前記放熱用金属板の裏面とに、該放熱用金属板と一体に形成された多数の突起部とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
したがってこの発明によれば、電子素子を取り付けるための部材と、ヒートパイプを取り付けるための部材と、外部の媒体との間での熱交換面積を増大させるための部材とが一体に形成されているから、部品点数が減少して構成が簡素になる。またそれに伴って加工に要する工程も減少する。更にこの発明では、溝部が前述の構造を成していることによって、ヒートパイプがその全長に亘って放熱用金属板に対して密着した状態に固定され、したがって両者の組み付け強度が高く、また両者の間での熱抵抗が小さい。
【0010】
また更にこの発明によれば、放熱用金属板の表面に対して段差を有した状態で台座部を備えていることにより、電子素子の取付位置が明確になるとともに、例えば電子素子に台座部から突出した部分を設け、その突出した部分と放熱用金属板との間にビスやクランパーなどの固定部材を配置することにより、電子素子を台座部に対して確実かつ強固に密着させて固定できる。
【0011】
前述の通り、台座部が放熱用金属板と一体に形成されたものであるから、電子素子が放熱用金属板に対して直接取り付けられた構造となるので、電子素子から発した熱が放熱用金属板に対して直接伝達され、この放熱用金属板および多数の突起部から放熱されるので、電子素子と放熱用金属板との間の熱抵抗が小さくなって効率よく放熱することができる。
【0012】
これに加えて、台座部に供給された熱の一部が直接的あるいは間接的にヒートパイプの一端部に伝達され、このヒートパイプによって台座部から離れた箇所の金属板の一部に熱を輸送するので、放熱用金属板における実質的な熱放散が積極化され、この点でも電子素子からの放熱用金属板を介した放熱効率を向上させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図面に示す具体例に基づいて説明する。図1において符号1は、アルミニウムもしくはその合金などの金属からなる熱拡散板1(この発明の金属板に相当する)を示し、この熱拡散板1は方形状もしくは矩形状の薄い板材である。
【0014】
この熱拡散板1の一縁部の近傍箇所には、図1での上面側に突出した台座部2が設けられている。一例として台座部2は、直方体に類似したブロック状であって、その側面部のうちの1つが傾斜面となっている。また台座部2の頂面3は、平坦な矩形状を成していて、ここにCPUなどの電子素子4が密着した状態で取り付けられている。なお台座部2と熱拡散板1とは、例えばダイカスト鋳造によって一体に形成される。
【0015】
台座部2の頂面3には、台座部2における最も傾斜の緩やかな斜面ならびに熱拡散板1の表面と繋がる取り付け溝5が形成されている。この取り付け溝5は、一例として開口端の幅と内部の幅とが等しい矩形の断面形状を成しており、その全長に亘って一定の深さとなっている。なお取り付け溝5は、一例としてダイカスト鋳造によって熱拡散板1に形成される。
【0016】
更に取り付け溝5の内部には、一例として楕円形断面あるいは扁平断面のヒートパイプ6が沿わされた状態で挿入されている。このヒートパイプ6における熱拡散板1の板厚方向での厚さは、取り付け溝5の深さと等しい設定となっていて、したがってヒートパイプ6のうち取り付け溝5から図1での上方側に露出した部分が熱拡散板1の表面ならびに台座部2とそれぞれ面一となっている。つまりヒートパイプ6において台座部2に配設された部分が、電子素子4の図1での下面に密着している。換言すれば、電子素子4は、台座部2およびヒートパイプ6とそれぞれ密着した状態で固定されている。
【0017】
なおヒートパイプ6と取り付け溝5との固定手段としては、熱伝導性の高いエポキシ系接着剤を用いた接着、あるいはヒートパイプ6のコンテナを機能に支障ない程度に変形させて溝部に圧入させることなどが挙げられる。そしてこれらのいずれの手段によっても、ヒートパイプ6がその全長に亘って熱拡散板1に対して組み付けられるから、高い固定強度が得れるばかりか、ヒートパイプ6と熱拡散板1との間での熱伝達が良好になる。
【0018】
なおヒートパイプ6は、両端部を気密状態に密閉したパイプの内部に、空気などの非凝縮性ガスを脱気した状態で水などの凝縮性の流体を作動流体として封入し、更に必要に応じて毛細管圧力を生じさせるウイックを内部に設けた熱伝導装置である。一例としてそのパイプには銅パイプが使用されており、したがってヒートパイプ6は、可撓性のある構造となっている。
【0019】
熱拡散板1の表面のうち取り付け溝5および台座部2を除いた部分には、一例として円錐状を成す多数の突起部7が設けられている。なお各突起部7の高さは、熱拡散板1に対する台座部2の突出量よりも小さく設定されている。これに対して、熱拡散板1における反対面(図2での下面)には、その全体に亘って円錐状を成す多数の突起部7が設けられている。これらの突起部7は、放熱フィンとして機能するものである。なお突起部7は、例えばダイカスト鋳造によって熱拡散板1と一体に形成される。
【0020】
ここで、台座部2に対して電子素子4を固定するための構造の一例について説明すると、図1に示すように、電子素子4に左右に突き出したフランジ部4aが形成されており、このフランジ部4aは、電子素子4を前記頂面3に載せた状態では台座部2の左右に突出しかつ突起部7に接触しない長さに設定されている。そしてこのフランジ部4aを貫通するビス(図示せず)を熱拡散板1に螺合させることにより、電子素子4が台座部2の頂面3に密着させて固定される。
【0021】
この場合、フランジ部4aと熱拡散板1との間に隙間があるから、ビスによる締め付け力に対して直接抵抗する応力を生じさせる部材が存在しないので、電子素子4を台座部2に確実かつ強固に固定することができる。なお固定手段すなわちファスナーは、ビスに替えて弾性のある適宜のクランパーを使用してもよい。
【0022】
したがって上記の構造では、電子素子4が動作することにより生じた熱の一部は、台座部2に伝達され、ここから熱拡散板1の全体に熱伝導し、更に多数の突起部7から周囲の空気に対して放散される。その場合、突起部7と熱拡散板1との間での熱抵抗がきわめて小さいため、全体としての放熱効率に優れている。また同時に、台座部2の頂面3と面一に配設されているヒートパイプ6の一端部に熱が伝達され、それに伴ってヒートパイプ6の一端部の温度が他端部の温度に対して高くなるので、ヒートパイプ6が動作する。
【0023】
すなわち内部に封入してある作動流体が蒸発し、その蒸気が温度の低い他端部に流動して放熱し、熱拡散板1および周囲の空気に対して熱を伝達する。このようにして電子素子4で発生した熱が、熱拡散板1と各突起部7とヒートパイプ6とを介して拡散かつ放散されるので、電子素子4の温度上昇が抑制もしくは防止される。
【0024】
そして上記の構造では、電子素子4を取り付ける台座部2が、熱拡散板1と一体に形成され、実質的に熱拡散板1の一部となっているので、電子素子4から熱拡散板1に対して熱を伝達する際の熱抵抗がきわめて小さくなり、その結果、熱拡散板1を介した放熱特性が良好になる。
【0025】
また電子素子4が台座部2のみならずヒートパイプ6の一端部に対しても直接密着しているから、電子素子4からヒートパイプ6に対して熱を伝達する際の熱抵抗が小さくなり、したがってヒートパイプ6によっても電子素子4から効率よく熱を運び去り、電子素子4の温度上昇を抑制もしくは防止することができる。
【0026】
また更に上記の構造によれば、ヒートパイプ6を固定するための溝部を備えた熱拡散板1に、放熱フィンとして機能する突起部7と電子素子4を固定するための台座部2とが一体に形成されているから、部品点数が少ない利点があり、また当然、これらの部材を組み付ける加工が不要であるから、生産効率の向上を図ることができる。更に上記の構造では、電子素子4を取り付ける台座部2が、熱拡散板1の一部を表面側に突出させて形成されたものであるから、電子素子4の取付位置が明確化されるうえに、電子素子4を確実かつ強固に固定することが可能になる利点も生じる。
【0027】
なお上述した具体例では、電子素子を熱拡散板1に直接取り付けるように構成したが、この発明における「直接」とは、いわゆるサーマルジョイントなどの熱伝達を媒介する充填材を介在させてもよいことも含むのであり、従来一般に行われているこの種の介在物の存在を排除するものではない。またこの発明で対象とする電子素子は、CPUに限定されないのであって、通電して動作することにより発熱する広く一般の電子部品を含む。更にこの発明で使用することのできる金属部品は、アルミニウムあるいはその合金に限られないのであり、銅やマグネシウム合金などの他の金属であってもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、放熱用金属板と一体にその板厚方向に突出し電子素子を取り付ける台座部と、その台座部から放熱用金属板の表面に沿って形成された溝部と、その溝部の内部に沿わされた状態で配置されたヒートパイプと、放熱用金属板における非機能部分に放熱用金属板と一体に形成された多数の突起部とを備えていて、これらの部材を一体に組み付ける加工が不要であるから、生産性の向上を図ることができる。また台座部と放熱用金属体との間での熱抵抗、ヒートパイプと放熱用金属板との間での熱抵抗、放熱用金属板と各突起部との間での熱抵抗がそれぞれ小さいから、全体としての放熱能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一例を概略的に示す斜視図である。
【図2】 台座部と電子素子との組み付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1…熱拡散板、 2…台座部、 3…頂面、 4…電子素子、 5…取り付け溝、 6…ヒートパイプ、 7…突起部。
Claims (1)
- 電子素子から発生する熱を放熱用金属板に伝達するとともに、この放熱用金属板から放散させる電子素子の放熱構造において、
前記放熱用金属板と一体に該放熱用金属板の板厚方向に突出し、前記電子素子を取り付ける台座部と、その台座部から前記放熱用金属板の表面に沿って形成された溝部と、その溝部の内部に沿わされた状態で配置されたヒートパイプと、前記放熱用金属板の表面の台座部および溝部を除いた非機能部分と前記放熱用金属板の裏面とに、該放熱用金属板と一体に形成された多数の突起部とを備えていることを特徴とする電子素子の放熱構造。
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-
1998
- 1998-11-19 JP JP32999398A patent/JP3953211B2/ja not_active Expired - Lifetime
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