JP3952521B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、摺動性、耐光性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS樹脂などのスチレン系樹脂は、成型品表面外観、成形加工性、機械的性質などが優れていることより、電機・電子分野、OA機器分野に広く使用されている。近年これらの製品において、耐薬品性、摺動性、耐光性への要求が増大している。耐薬品性を改良する為にABS樹脂と熱可塑性ポリエステル樹脂をアロイ化し改良することが従来行われている。又摺動性を改良する為にはポリテトラフルオロエチレンを添加することが従来行われている。同じく耐光性を改良する為に紫外線吸収剤の添加が従来行われている。しかしながら、従来の手法ではコストが大幅に増加し使用できる製品が限定されてしまう。又性能面でも要求品質の全てを満足できる材料とはなっていない。本発明は、前記従来技術の課題を背景になされたもので、耐薬品性、摺動性、耐光性に優れ広範囲の用途に使用しうる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】
本発明者らはかかる現状に鑑み、鋭意材料の開発について検討した結果、特定のグラフト共重合体と熱可塑性ポリエステル樹脂、特定の高密度ポリエチレン、及び変性ポリエチレンワックスを特定量使用することで上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)非ジエン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主成分とする単量体をグラフト重合して得られる熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、(B)熱可塑性ポリエステル樹脂0.1〜20重量部、(C)JISK6760に規定するメルトフローレートで3g/10min以上の値を有する高密度ポリエチレン0.5〜20重量部および(D)不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性したポリエチレンワックス0.01〜6重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物を提供するものである。
【0005】
本発明に用いられる(A)は非ジエン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主成分とする単量体をグラフト重合して得られる。あるいは前記単量体から選ばれる1種以上の単量体の重合体(E)を別に製造し、上記グラフト共重合体とブレンドして製造することもできる。本発明の非ジエン系ゴム質重合体としては例えばエチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−αオレフィン−非共役ジエン共重合体などのエチレン−αオレフィン系ゴム質重合体;スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物、アクリル−ブタジエン共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、ブタジエン共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体の水素添加物、などのジエン系重合体の水素添加物;シリコーン系ゴム;アクリル系ゴムが挙げられる。
【0006】
好ましい非ジエン系ゴム質重合体としては、エチレン−αオレフィン系ゴム質重合体、ジエン系重合体の水素添加物である。エチレン−αオレフィン系ゴム質重合体のαオレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンが挙げられ、好ましいαオレフィンとしてはプロピレン、1−ブテンである。非共役ジエンとしては、シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4ヘキサジエン、1,4シクロペンタジエンなどが挙げられる。エチレンとαオレフィンの好ましい重量比は90:10〜20:80、さらに好ましくは85:15〜30:70である。ジエン系重合体の水素添加物に用いるジエン系重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びスチレン−イソプレンブロック共重合体などがあげられ、これらにはAB型、ABA型、テーパ型、ラジアルテレブロック型の構造を有するものなど、種々のものが使用できる。更にジエン系重合体の水素添加物としては、上記ブロック共重合体の水素添加物の他にスチレンブロックとスチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素化物、ポリブタジエン中の1,2−ビニル結合含量が20重量%以下のブロックと1,2−ビニル結合含量が20重量%を越えるポリブタジエンブロックからなる重合体の水素化物などが含まれる。非ジエン系ゴム質重合体は、1種又は2種以上で使用することができる。
【0007】
グラフト重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては例えばスチレン、αメチルスチレンなどが用いられる。シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が用いられる。
上記グラフト重合体にはさらに必要に応じて、無水マレイン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドなどの不飽和ジカルボン酸のイミド化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルなどが用いられる。
【0008】
芳香族ビニル化合物の含有量は(A)成分中に好ましくは45〜90重量%、更に好ましくは45〜80重量%、特に好ましくは45〜70重量%である。シアン化ビニル成分の含有量は(A)成分中に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
非ジエン系ゴム質重合体成分の含有量は(A)成分中に好ましくは5〜70重量%、更に好ましくは10〜65重量%、特に好ましくは15〜60重量%である。
(A)成分のグラフト率は好ましくは5〜150重量%、更に好ましくは10〜120重量%である。(A)成分、(E)成分のメチルエチルケトン(MEK)可溶分の極限粘度(30℃、MEK)は、好ましくは0.2〜1.5、更に好ましくは0.3〜1である。
上記の(E)成分は予め(A)に配合しておいてもよく、又本発明の組成物を得る混合工程で添加してもよい。
【0009】
本発明の(A)成分には、必要に応じて、下記の(F)成分を添加してもよい。
(F)成分はジエン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主成分とする単量体をグラフト重合して得られる。あるいは前記単量体から選ばれる1種以上の単量体の重合体(E)を別に製造し、上記グラフト共重合体とブレンドして製造することもできる。グラフト重合方法は特に限定されるものではないが、通常の乳化重合、溶液重合、バルク重合、サスペンジョン重合などで製造できる。
ジエン系ゴム質重合体としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等が挙げられる。
グラフト重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては例えばスチレン、αメチルスチレン等が用いられる。シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が用いられる。グラフト重合にはさらに必要に応じて、無水マレイン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミドなどの不飽和ジカルボン酸のイミド化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルなどが用いられる。
【0010】
芳香族ビニル化合物の含有量は(F)成分中に好ましくは45〜93重量%、更に好ましくは45〜80重量%、特に好ましくは45〜70重量%である。
シアン化ビニル成分の含有量は(F)成分中に好ましくは5〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは5〜30重量%である。
ジエン系ゴム質重合体成分の含有量は(F)成分中に好ましくは2〜70重量%、さらに好ましくは5〜65重量%、特に好ましくは10〜60重量%である。
【0011】
本発明に用いられる(B)熱可塑性ポリエステルは、ジカルボン酸化合物とジオール化合物からなるポリエステル化合物であり、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートである。
(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜18重量部、さらに好ましくは1〜17重量部、特に好ましくは2〜15重量部である。0.1重量部未満では耐薬品性の改良効果が不十分であり、20重量部を超えると衝撃性が低下する。
【0012】
本発明に用いられる(C)高密度ポリエチレンは密度0.924g/cm3以上の高密度ポリエチレンである。JISK6760に規定するメルトフローレートは、3g/10min以上、好ましくは5g/10min以上、さらに好ましくは6〜30g/10minの値を有するポリエチレンである。なお、メルトフローレートの測定条件は190℃×2.16kgfである。メルトフローレートが3g/10min未満では十分な摺動性が得られない。
また、いわゆる低密度ポリエチレンでも十分な摺動性は得られない。
(C)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対し0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜18重量部、さらに好ましくは2〜15重量部である。
0.5重量%未満では摺動性の改良効果が不十分であり、特に摩耗量が増加する。また20重量%を超えると耐熱性が低下する。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の(B)成分と(C)成分の合計量は、(A)〜(D)の合計量に対し、好ましくは5〜40重量部、さらに好ましくは7〜35重量部、特に好ましくは10〜30重量部である。この範囲であると、一段と優れた本発明の目的のものが得られる。
【0014】
本発明に用いられる(D)不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性したポリエチレンワックスとしては、例えばポリエチレンを変性しカルボキシル基を導入したものが好ましい。変性方法としては、エチレンと不飽和カルボン酸および/またはその無水物などの官能基含有不飽和化合物との共重合による変性や、ポリエチレンもしくはポリエチレンの分解物を酸化する方法などが挙げられる。不飽和カルボン酸およびその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。カルボキシル基で変性したものとしては、例えばポリエチレンとカルボキシル基含有不飽和化合物との共重合、ポリエチレンの分解物を後酸化する方法等で得る事が出来る。ポリエチレンワックスの平均分子量としては500〜10000、好ましくは700〜7000、さらに好ましくは1000〜5000の範囲である。(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し0.01〜6重量部、好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部であり、0.01重量部未満では摺動性、特に動摩擦係数の改良が不十分であり、6重量部を越えると耐熱性が低下する。
【0015】
本発明の樹脂組成物にはガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、タルク、マイカ、カオリンなどの充填材や、公知のカップリング剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤やポリテトラフルオロエチレン、シリコンオイル等の摺動用添加剤を配合することができる。
さらに、本発明の樹脂組成物には、要求される性能に応じて他の重合体、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミドエラストマーなどを適宜ブレンドすることができる。
本発明の樹脂組成物は、各種押し出し機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどを用い、各成分混練りすることによって得られる。また各成分を混練りするに際して、各成分を一括して混練りしてもよく、多段添加方式で混練りしてもよい。
このようにして得られる本発明の樹脂組成物は、射出成形、シート押し出し、真空成形、発泡成形などにより各種成型品に成形することができる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、実施例中、部および%は特に断らない限り重量基準である。
また、実施例中の各種評価は、次のようにして測定した。
耐熱性
ASTMD−648に定められた熱変形温度を測定した。
衝撃性
島津製作所製高速衝撃試験機サーボパルサEHF−2H−20Lを用い50×80×2.4mm厚みの試験片の破壊エネルギーを下記条件で測定した。
試験片受け台径30φ、打撃棒先端は12.7R、打撃速度3.1m/s
耐薬品性
35×180×1.8mm厚みの試験片を成形し、1/4楕円の金属治具に試験片を固定し試験片に連続的な歪みを与えた状態でジオクチルフタレートを試験片に塗布し24時間後の薬品によるクラックの発生しない最大歪量を測定した。 摺動性
鈴木式摺動試験機を使用し、相手材としてS45Cをもちいた。試験片は外径25.6mm、内径20.0mmの中空円筒状のものを用い、相手材も同形状のものを用いた。
摩耗量の測定条件は23℃、湿度50%で荷重0.5kg、走行速度50cm/秒で測定した。
動摩擦係数は次式により計算した。
μ=[3×F×R×(r2 2−r1 2)]/[P×(r2 3−r1 3)]
(式中、μは動摩擦係数、Fはロードセルに与える力、Pは荷重、Rはロードセルまでのアーム長、r1は内径、r2は外径を表す)
耐光性
キセノンランプ耐光試験機を用い300時間試験片を暴露し、暴露後の色調変化△Eを測定した。
【0017】
エチレン−プロピレン系ゴム質重合体の調製
本発明の(A)に用いられるエチレン−プロピレン系ゴム質重合体を表1に示した。比較の為にブタジエン系ゴム質重合体も調製した。
【0018】
【表1】
【0019】
熱可塑性樹脂(A)の調製
ゴム質重合体(a)−1〜2の存在下に、スチレンとアクリロニトリル単量体成分を重合した樹脂、及びスチレンとアクリロニトリル単量体成分だけで重合した樹脂を得た。
これらの樹脂組成を表2に示した。
【0020】
【表2】
【0021】
熱可塑性ポリエステル(B)の調製
(B)−1としてポリブチレンフタレートであるポリプラスチック社製ジュラネックス2002を用いた。
(B)−2としてポリエチレンテレフタレートである日本ユニペット社製ユニペットRT580を用いた。
【0022】
高密度ポリエチレン(C)の調製
(C)−1として高密度ポリエチレンである三菱化学社製HJ390を用いた。 (メルトフローレートは28g/10minである。)
(C)−2として高密度ポリエチレンである三菱化学社製HJ560を用いた。 (メルトフローレートは7g/10minである。)
比較の為に
(C)−3として高密度ポリエチレンである三菱化学社製HJ340を用いた。 (メルトフローレートは1.5g/10minである。)
(C)−4として低密度ポリエチレンである三菱化学社製LF660Hを用いた。(メルトフローレートは7g/10minである。)
【0023】
変性ポリエチレンワックス(D)の調製
(D)−1として数平均分子量2000、酸化度20を用いた。
(D)−2として数平均分子量3000、酸化度20を用いた。
【0024】
実施例1〜6及び比較例1〜6
表3に示す配合により、ミキサーで3分間混合し、50mm押し出し機でシリンダー温度180〜210℃で溶融押し出ししペレットを得た。このペレットをシリンダー温度200℃、金型温度50℃で射出成形し、各種評価用試験片を得た。これらの試験片での評価結果も表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表3の実施例1〜6より明らかなように本発明の樹脂組成物は、耐薬品性、摺動性、耐光性が優れている。
比較例1は(D)成分が本発明の範囲外で少ない場合であるが、耐薬品性、摺動性に劣る。
比較例2は(B)成分が本発明の範囲外で多い場合であるが、衝撃性に劣る。比較例3は(C)成分及び(D)成分が本発明の範囲外で多い場合であるが、耐熱性が劣る。
比較例4は(A)成分が本発明の範囲外でABSの場合であるが衝撃性、耐薬品性、摺動性、耐光性が劣る。
比較例5は(C)成分が本発明の範囲外でメルトフローレート1.5の場合であるが、摺動性が劣る。
比較例6は(C)成分が本発明の範囲外で低密度ポリエチレンの場合であるが、摺動性が劣る。
【0027】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐薬品性、摺動性及び耐光性に優れ、広範囲の用途に有用である。
Claims (1)
- (A)非ジエン系ゴム質重合体に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主成分とする単量体をグラフト重合して得られる熱可塑性樹脂組成物100重量部
(B)熱可塑性ポリエステル樹脂0.1〜20重量部
(C)JISK6760に規定するメルトフローレートで3g/10min以上の値を有する高密度ポリエチレン0.5〜20重量部および
(D)不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性したポリエチレンワックス0.01〜6重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
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JPH09310004A JPH09310004A (ja) | 1997-12-02 |
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