JP3952244B2 - 油潤滑外輪回転の転がり軸受装置 - Google Patents

油潤滑外輪回転の転がり軸受装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、油潤滑の外輪回転で使用される軸受、例えば固定の車軸に取付られて車輪を回転自在に支持する軸受等に適用される転がり軸受装置、およびこの転がり軸受装置を装備した鉄道車両の車輪支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
油潤滑で使用される車輪支持用等の軸受において、内輪回転の軸受の場合は、軸受下部のみが油に浸る「跳ねかけ式」が主流である。
しかし、外輪回転の場合は、内輪回転の場合と運転時の油の状態は異なり、遠心力で外輪側全周に油がはりつくため、油溜まりの下面高さが外輪軌道面よりも低いと、外輪軌道面に油が供給されず、運転性能に影響を及ぼしてしまう。そのため、外輪回転の軸受では、油潤滑の採用が難しかった。
一方、車両の高速化に伴い、車輪をモータのロータに直結する駆動方式が採用されつつある。このような駆動方式の場合、車輪を支持する軸受は外輪回転となる。そのため、外輪回転の軸受において、簡単な構成で最適な油潤滑が確保できるものが強く要望される。
【0003】
この発明の目的は、油浴潤滑、外輪回転の場合でも、簡単な構成で適切な潤滑状態が確保できる転がり軸受装置を提供することである。
この発明の他の目的は、滑り接触となる内輪の鍔部やころ大端面にも適切な潤滑状態が確保できるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、非回転の車軸に、油潤滑の転がり軸受を介して車輪を設置した形式でありながら、簡単な構成で適切な潤滑状態が確保できる鉄道車両の車輪支持装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の油潤滑外輪回転の転がり軸受装置は、油潤滑,外輪回転で運転される転がり軸受であって内輪に鍔部を有する複列の円すいころ軸受である転がり軸受と、この転がり軸受の外輪に隣接して外輪と共に回転する外輪隣接部品とを備え、前記外輪の軌道面と前記外輪隣接部品により軸受両端面で油溜まりを形成し、前記各油溜まりの一部または全体が、外輪の軌道面と外輪隣接部品の円すい面状の内径面部とで断面V字状を成し、前記転がり軸受は略水平に配置されるものであり、前記外輪隣接部品の内径面に、軸受停止時に前記油溜まりの油が外部に零れることを防ぐ堰部を設けたものである。
このように、外輪の軌道面および外輪隣接部品で油溜まりを形成することにより、外輪回転の運転時に遠心力で油溜まりの外周に油がはりついても、外輪軌道面を十分に油に浸すことができ、適切な潤滑状態が確保される。
【0006】
記転がり軸受は、内輪に鍔部を有する複列の円すいころ軸受ある。
円すいころ軸受の場合、転動体であるころの大端面と内輪の鍔とは滑り接触となるため高い潤滑性が要求されるが、上記のように外輪軌道面および外輪隣接部品で油溜まりを形成することで、外輪回転の運転時に遠心力で油溜まりの外周に油がはりついても、ころ大端面に十分に油が供給される。
【0007】
円すいころ軸受を用いた場合に、前記油溜まりの一部または全体が、外輪の軌道面と外輪隣接部品の円すい面状の内径面部とで、断面V字状を成すようにしている。
このように断面V字状の油溜まりとすることで、運転時に外周に油がはりついても、外輪軌道面の全面を油に浸すことができ、外輪軌道面およびころ大端面に油が十分に供給される。
【0008】
また、前記転がり軸受は略水平に配置されるものであり、前記外輪隣接部品の内径面に、軸受停止時に前記油溜まりの油が外部に零れることを防ぐ堰部を設けている。
軸受運転時に油溜まりの全周にはり付いている油は、軸受停止時には下部に集まって溜まることになるが、このように外輪隣接部品の内径面に堰部を設けることで、停止時に油が外部に零れることが防止される。
【0009】
この発明の油潤滑外輪回転の転がり軸受装置は、前記転がり軸受の内輪および外輪が、各々非回転の車軸および車輪に取付けられたものであっても良い。
車輪を支持する軸受の場合、外輪回転において、簡単な構成で最適な油潤滑が確保できるものが強く要望される。この要望に対して、前記の外輪軌道面および外輪隣接部品で油溜まりを形成したことによる潤滑性向上効果、および構成簡易の効果が、有効に発揮される。
【0010】
この発明の鉄道車両の車輪支持装置は、台車に設置された非回転の車軸に、転がり軸受装置を介して車輪を設置し、前記転がり軸受装置は、内輪および外輪が、各々前記車軸および車輪に取付けられ油潤滑で運転される複列の円すいころ軸であって内輪に鍔部を有する複列の円すいころ軸受と、この複列の円すいころ軸受の外輪に隣接して外輪と共に回転する外輪隣接部品とを備え、前記外輪の軌道面と前記外輪隣接部品により軸受両端面で油溜まりを形成し、前記各油溜まりの一部または全体が、外輪の軌道面と外輪隣接部品の円すい面状の内径面部とで、断面V字状を成し、前記円すいころ軸受は略水平に配置されるものであり、前記外輪隣接部品の内径面に、軸受停止時に前記油溜まりの油が外部に零れることを防ぐ堰部を設けたものである。
このような非回転の車軸に車輪を設置した構成の鉄道車両の車輪支持装置は、一般に高速回転のために適用されるものであり、しかも軸受が外輪回転となるため、簡単な構成で最適な油潤滑が確保できるものが強く要望される。この要望に対して、前記の外輪軌道面および外輪隣接部品で油溜まりを形成したことによる潤滑性向上効果、および構成簡易の効果が、有効に発揮される。また、前記断面V字状の油溜まりとすることで、運転時に外周に油がはりついても、外輪軌道面の全面を油に浸すことができ、外輪軌道面およびころ大端面に油が十分に供給される。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図1および図2と共に説明する。この転がり軸受装置は、油潤滑,外輪回転で運転される転がり軸受1と、この転がり軸受1の外輪3に隣接して外輪3と共に回転する外輪隣接部品9とを備え、前記外輪3の軌道面3aと外輪隣接部品9の外輪軌道面3aに続く内径面部9aとで、油溜まり6を形成したものである。
【0012】
転がり軸受1は、複列の円すい軸受であり、各ころ列毎に設けられた二つの内輪2,2と、両列に共通に設けられた外輪3と、各列毎に保持器5に保持されて内外輪2,3間に介在した転動体である円すいころ4とで構成される。各内輪2は、軸受幅方向の端部側および中央側に大鍔部2aおよび小鍔部2bを有している。
【0013】
内輪2は固定の軸7に取付けられ、外輪3は回転体8の内径面に取付けられる。回転体8は、車輪、ギヤ、またはプーリ等からなる。回転体8は、外輪3の片方の幅面を当接させる鍔部8aを有し、外輪3の他方の幅面は、止め環等となるリング部材8bに当接している。リング部材8bは、回転体8の本体に対してボルト等で固定されて回転体8の一部を構成する部品である。これら鍔部8aおよびリング部材8bの内径面は、外輪3の軌道面3aの最大径と略等しい径の円筒状面とされている。
回転体8には、軸受外輪の両側に延びるリング状の油溜まり形成部材10が設けられている。この油溜まり形成部材10と回転体8の鍔部8aとで、片方の外輪隣接部品9が構成され、油溜まり形成部材10とリング部材8bとでもう片方の外輪隣接部品9が構成される。
【0014】
油溜まり形成部材10は、外輪3の円すい面からなる軌道面3aと共に油溜まり6を形成する部品であり、そのテーパ状の内径面部分と外輪軌道面3aとでV字状断面形状(換言すればハ字状断面形状)の回転時油溜まり部6aを形成する。油溜まり形成部材10は、回転時油溜まり部6aから若干軸方向に離れた内径面部に鍔状の堰部10aを有している。油溜まり形成部材10は、具体的には、回転体8に接する外鍔部10bから、円すい状部10c、および円筒状部10dが続き、円筒状部10dの軸方向の中間に上記の堰部10aが突出したものである。円すい状部10cの内径面が、回転時油溜まり部6aを形成する前記テーパ状の内径面部分となる。堰部10aは、内輪隣接部品11の外径面に近接している。内輪隣接部品11は、内輪2に隣接して軸7に取付けられたリング状の部品である。
油溜まり形成部材10の円すい状部10cの内径面、つまり外輪隣接部品9の内径面9aにおけるテーパ状の内径面部分は、その最大径が、外輪3の軌道面3aの最大径と略同じ径とされ、その径で油溜まり6の円筒面状の内径面部分(すなわち円筒状部10dの内径面)が堰部10aまで延びている。
なお、油溜まり6の底面高さは、外輪軌道面3aの最大径となる高さに略等しく、回転体8の鍔部8aおよびリング部品8bの内径面の高さ位置となる。
油溜まり形成部材10の堰部10aよりも端部側の内径面と、内輪隣接部品11との間には、シール12が設けられている。シール12は、オイルシール等からなり、油溜まり形成部材10に取付けられた回転側シール部品と内輪隣接部品11に取付けられた内輪側シール部品とで接触シールとして構成されている。
【0015】
なお、回転体8は、外輪3の幅面に接する鍔部8aおよびリング部材8bを有しないものとし、油溜まり形成部材10を外輪3の幅面に直接に接触させても良い。その場合、油溜まり形成部材10が単独で外輪隣接部品9となり、また外輪3の回転体8に対する軸方向の固定は、油溜まり形成部材10と共に行われることになる。
【0016】
図3は、この実施形態にかかる転がり軸受装置を応用した鉄道車両の車輪支持装置の概略断面図を示す。台車21に設置された固定の車軸7Aに、転がり軸受装置Aを介して車輪8Aが支持されている。車軸7Aにはモータ22のステータ23が設けられ、モータ22のロータ24は、取付部材25を介して車輪8Aに直結されている。転がり軸受装置Aは、図1,図2に示したものであり、車輪8Aおよび車軸7Aは、図1,図2の転がり軸受装置における回転体8および軸7からなる。
【0017】
上記構成の作用を説明する。図2に示すように、軸受停止時は、油溜まり6の油20は、外輪隣接部品9の堰部10aから零れない程度のレベルLまで溜まっている。軸受の運転状態では、この油20は、外輪3および外輪隣接部品9の回転に伴い、遠心力によって油溜まり6の全周にはりつく。このとき、油20は、同図に図示のように、油溜まり6のV字状断面形状を成す部分(回転時油溜まり部6a)の全体に溜まる程度のレベルとなり、外輪3の軌道面3aの全面が油20に浸った状態となる。このため、外輪軌道面3a、ころ4の大端面、および内輪大鍔部2aの内面の全てに油が供給される。このように、油浴潤滑・外輪回転の場合でも、最適な潤滑状態が確保される。
油溜まり6の形状は、このように片面が外輪軌道面3aで形成されるV字状断面形状を成す溝状部分と、この溝状部分から堰部10aまで続く円筒面状の底面形状部分とで構成されるため、運転時に外輪軌道面3aを油20に浸して良好を潤滑すると共に、軸受停止時に下部に集まる油20を大容量の円筒面状底面部分に溜めておくことができる。
【0018】
なお、前記実施形態では、外輪隣接部品9の内径面部分で油溜まり6を形成したが、外輪隣接部品9の幅面で油溜まり6を形成しても良い。例えば、油溜まり形成部品10の回転体8に接する幅面を、外輪軌道面3aの最大径まで平面状に延びるものとし、この幅面と外輪軌道面3aとで油溜まりを形成しても良い。
【0019】
【発明の効果】
この発明の油潤滑外輪回転の転がり軸受装置は、油潤滑,外輪回転で運転される転がり軸受と、この転がり軸受の外輪に隣接して外輪と共に回転する外輪隣接部品とを備え、前記外輪の軌道面と前記外輪隣接部品により油溜まりを形成したものであるため、油浴潤滑、外輪回転の場合でも、簡単な構成で適切な潤滑状態が確保できる。
転がり軸受が、内輪に鍔部を有する複列の円すいころである場合は、内輪の鍔部やこの大端面の潤滑も良好に行える。さらに、油溜まりが、外輪の軌道面と軸受隣接部品の円すい面状の内径面部とで断面V字状を成す場合は、外輪軌道面や内輪鍔部、ころ大端面等の潤滑に、最適な状態が確保できる。
転がり軸受の内輪および外輪が、各々非回転の車軸および車輪に取付けられたものである場合は、外輪軌道面および外輪隣接部品で油溜まりを形成したことによる潤滑性向上効果、および構成簡易の効果が、有効に発揮される。
この発明の鉄道車両の車輪支持装置は、台車に設置された非回転の車軸に、油潤滑の転がり軸受装置を介して車輪を設置したものにおいて、外輪の軌道面と外輪隣接部品により油溜まりを形成したため、油浴潤滑、外輪回転でありながら、簡単な構成で適切な潤滑状態が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる転がり軸受装置の断面図である。
【図2】その作用説明図である。
【図3】同転がり軸受装置を応用した鉄道車両の車輪支持装置の概略断面図である。
【符号の説明】
1…転がり軸受
2…内輪
3…外輪
4…ころ
6…油溜まり
7…軸
8…回転体
8A…車輪
9…外輪隣接部品
10…油溜まり形成部品
10a…堰部
12…シール
20…油

Claims (3)

  1. 油潤滑,外輪回転で運転される転がり軸受であって内輪に鍔部を有する複列の円すいころ軸受である転がり軸受と、この転がり軸受の外輪に隣接して外輪と共に回転する外輪隣接部品とを備え、前記外輪の軌道面と前記外輪隣接部品により軸受両端面で油溜まりを形成し、前記各油溜まりの一部または全体が、外輪の軌道面と外輪隣接部品の円すい面状の内径面部とで断面V字状を成し、前記転がり軸受は略水平に配置されるものであり、前記外輪隣接部品の内径面に、軸受停止時に前記油溜まりの油が外部に零れることを防ぐ堰部を設けた油潤滑外輪回転の転がり軸受装置。
  2. 前記転がり軸受の内輪および外輪が、各々非回転の車軸および車輪に取付けられたものである請求項1に記載の油潤滑外輪回転の転がり軸受装置。
  3. 台車に設置された非回転の車軸に、転がり軸受装置を介して車輪を設置し、前記転がり軸受装置は、内輪および外輪が、各々前記車軸および車輪に取付けられ油潤滑で運転される複列の円すいころ軸であって内輪に鍔部を有する複列の円すいころ軸受と、この複列の円すいころ軸受の外輪に隣接して外輪と共に回転する外輪隣接部品とを備え、前記外輪の軌道面と前記外輪隣接部品により軸受両端面で油溜まりを形成し、前記各油溜まりの一部または全体が、外輪の軌道面と外輪隣接部品の円すい面状の内径面部とで、断面V字状を成し、前記円すいころ軸受は略水平に配置されるものであり、前記外輪隣接部品の内径面に、軸受停止時に前記油溜まりの油が外部に零れることを防ぐ堰部を設けた鉄道車両の車輪支持装置。
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