JP3950242B2 - オフセットqpsk変調解析方式 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセットQPSK(OQPSK)方式で変調された信号を受信して送信機波形品質係数等の解析を行うオフセットQPSK変調解析方式に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDMA方式によるデジタルセルラシステムは通話品質の点で優れており、日本においても実用化されている。このデジタルセルラシステムでは、例えば基地局から移動局に対してデータを送信する下り回線ではQPSK変調方式が用いられ、反対に移動局から基地局に対してデータを送信する上り回線ではOQPSK変調方式が用いられている。このデジタルセルラシステムにおいて、良好な通話品質を維持するためには、実際に受信した信号に基づいて波形品質等を測定し、これを解析する必要がある。
【0003】
図8は、直交変調方式を用いた一般的な送受信システムにおける同期検波の概要を説明するための図である。送信側では、同相成分Iに対して所定周波数のローカル信号(搬送波信号)を乗算するとともに、直交成分Qに対してこのローカル信号の位相を90°シフトした信号を乗算し、これらの乗算結果である各信号を合成して送信する。また、受信側では、送信側と同じ周波数を有するローカル信号およびこのローカル信号の位相を90°シフトした信号を用いて受信信号に対して周波数変換を行い、周波数変換後の2種類の信号をローパスフィルタ(LPF)に通すことにより同相成分Iと直交成分Qとを分離している。
【0004】
上述した直交検波を用いて信号の送受を行った場合に、送信側と受信側のローカル信号の位相のずれ(この位相のずれを「初期位相」と称する)が存在する場合に、この初期位相を受信側で補正して、送信側と受信側とでローカル信号を同期させる必要がある。例えば、通信データ中に含まれる同期ワード等の既知のデータパターンを用いて、受信側においてローカル信号の位相を同期させることが一般に行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、QPSK変調解析を行う場合には、初期位相がわからない場合であっても、とりうる絶対位相が+45°、+135°、−45°、−135°の4通りであり、同相成分Iと直交成分Qにおけるシンボル位置がわかれば、強制的に先頭シンボル位置を上述した4つの絶対位相のいずれかに割り当てることにより初期位相を特定することができる。
【0006】
また、OQPSK変調方式を用いた場合であっても、何らかの方法で初期位相と周波数誤差を特定できれば、例えば直交成分Qのシンボル位置を1/2シンボルだけ強制的に戻すことにより、同相成分Iのシンボル位置と直交成分Qのシンボル位置を一致させることができるため、QPSK変調方式の場合と同様の手法を用いてクロックディレイの推定や補正を行うことが可能になり、実信号の波形品質等の解析を行うことができる。
【0007】
しかし、OQPSK変調方式の場合には、同相成分Iのシンボル位置と直交成分Qのシンボル位置との間に1/2シンボルだけ時間ずれが存在した状態では、QPSK変調方式で用いた手法によって初期位相を特定することができない。このため、直交成分Qのオフセット分を元に戻すことができず、クロックディレイを推定して実信号の波形品質等を解析するという従来から用いられている手法を用いることができなかった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、オフセットQPSK変調方式を用いた受信信号に含まれる初期位相の特定が可能であり、QPSK変調信号に戻してクロックディレイを推定することができるオフセットQPSK変調解析方式を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明のオフセットQPSK変調方式では、あらかじめ設定された初期位相の候補値を用いて実際に位相補正を行って得られた信号(実信号)と、この信号に対してオフセットQPSK復調と変調を繰り返すことによって生成された理想信号との相関係数を相関係数計算手段によって計算し、この計算された相関係数に基づいて、初期位相判定手段によって、初期位相の候補値が適切なものであるか否かが判定される。初期位相の候補値が真値に近いほど、実信号と理想信号のそれぞれの波形が類似し、これら2つの信号の相関係数が大きな値となるため、この相関係数を用いることにより初期位相の適切な推定が可能となる。
【0010】
特に、初期位相に対応する補正を行った後に、この信号の直交成分のオフセット分を元に戻してQPSK信号を生成することによりクロックディレイを推定し、この推定したクロックディレイに対応する補正がなされた信号を用いて相関係数の計算を行うことが好ましい。正しい初期位相と周波数誤差が推定され、補正がなされた信号に対しては、直交成分のオフセット分を元に戻すことができるため、クロックディレイの推定が可能になる。このクロックディレイ分の補正がなされた後の実信号と理想信号とを用いて、これら2つの信号の相関係数を求めることにより、初期位相の推定精度をさらに高めることができる。
【0011】
また、上述した初期位相判定手段は、複数の候補値のそれぞれに対応して計算される複数の相関係数の中から最大値を検索し、対応する候補値を初期位相として推定することが好ましい。上述した相関係数を用いることにより、複数の候補値の中で最適なものを抽出することができるため、容易に初期位相の推定を行うことができる。
【0012】
また、上述した初期位相判定手段による推定動作を複数段階に分けて行い、前段の推定結果に基づいて次段の推定動作に用いられる複数の候補値を設定することにより、後段に進むにしたがって推定精度を上げることが好ましい。複数段階に分けて推定動作を行うことにより、最初は粗く初期位相の推定を行い、次第に真値に近づくにしたがって推定精度を上げることにより、効率的な初期位相の推定動作を行うことができる。具体的には、後段に進むにしたがって推定精度を上げる方法としては、複数の候補値の間隔を狭くしたり、相関係数の計算対象となる信号の区間を広げるようにすればよい。これらの方法を用いることにより、誤差の少ない初期位相の推定が可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した一実施形態のOQPSK変調解析システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態のOQPSK変調解析システムの構成を示す図である。図1に示す本実施形態のOQPSK変調解析システムは、IF信号変換部100、ベースバンド信号変換部200、周波数誤差粗推定・補正部300、初期位相・周波数誤差推定・補正部400および詳細パラメータ推定部500を含んで構成されている。
【0015】
IF信号変換部100は、測定対象となるRF信号(高周波信号)を所定のIF信号(中間周波信号)に変換した後に標本化処理および量子化処理を行って、IF信号に対応するデジタルデータを出力する。また、ベースバンド信号変換部200は、IF信号変換部100から入力されるデータに基づいて、同相成分I1および直交成分Q1からなるベースバンド信号を生成する。周波数誤差粗推定・補正部300は、キャリア周波数の周波数誤差が大きい場合に、この周波数誤差の粗推定を行い、入力されるベースバンド信号に対して、必要に応じてこの推定した誤差分の補正を行う。周波数誤差が極端に大きいと初期位相等の推定が困難な場合があるため、初期位相の推定を行う前に周波数誤差の粗推定および補正が実施される。初期位相・周波数誤差推定・補正部400は、初期位相の値を可変してその都度クロックディレイ推定とクロックディレイ補正を行って実信号と理想信号との間の相関係数を計算し、この相関係数の値を用いて適正な初期位相および周波数誤差の推定を行い、この推定結果に基づく補正を実施する。詳細パラメータ推定部500は、推定された初期位相および周波数誤差に基づく補正がなされた後の信号を用いて、詳細なパラメータ推定を行う。例えば、波形品質、変調精度、マグニチュード・エラー、フェイズ・エラー、原点オフセット等の各種のパラメータの計算が行われる。以下、上述した各部の詳細について説明する。
【0016】
〔IF信号変換部〕
図2は、IF信号変換部100およびベースバンド信号変換部200の詳細構成を示す図である。図2に示すように、IF信号変換部100は、ローカル発振器102、周波数変換器104、バンドパスフィルタ(BPF)106、アナログ−デジタル(A/D)変換器108を含んで構成されている。入力されたRF信号(OQPSK信号)とローカル発振器102から出力された発振信号とが周波数変換器104によって混合されて、それらの差成分であるアナログのIF信号に変換される。このIF信号の周波数は、後段のA/D変換器108によってデジタルデータへの変換が可能な周波数であり、変調信号の変調帯域を含んでいる必要がある。周波数変換器104から出力されたIF信号は、バンドパスフィルタ106による帯域制限処理によってエリアシング成分が除去された後に、A/D変換器108によってデジタルデータに変換される。例えば、OQPSK信号のシンボル周波数の8倍の周波数でサンプリングおよび量子化が行われる。
【0017】
〔ベースバンド信号変換部〕
また、図2に示すように、ベースバンド信号変換部200は、ローカル発振器202、乗算器204、206、移相器208、ローパスフィルタ(LPF)210、212を含んで構成されている。IF信号変換部100内のA/D変換器108から出力されたデジタルのIF信号に対して、2つの乗算器204、206によって互いに位相が90°ずれたローカル信号が乗算される。そして、それぞれの乗算結果をローパスフィルタ210、212に通すことにより、同相成分I1と直交成分Q1とからなるベースバンド信号が得られる。
【0018】
〔周波数誤差粗推定・補正部〕
図3は、周波数誤差粗推定・補正部300の詳細な構成を示す図である。図3に示すように、周波数誤差粗推定・補正部300は、周波数誤差粗推定部302および周波数誤差補正部304を含んで構成されている。周波数誤差粗推定部302は、ベースバンド信号変換部200から入力されるベースバンド信号を4逓倍((I+jQ)4 )した信号列に対して高速フーリエ変換(FFT)を行い、そのピークの周波数fpeakを検出することにより、周波数誤差の粗推定を行う。4逓倍することにより、OQPSK変調の各シンボルに対応したベースバンド信号のそれぞれの位相が2πの整数倍となるため、位相を縮退させることができる。これにより、周波数誤差成分は、4逓倍した位置に大きなピークを有することになり、このピークの周波数fpeakを4で割ることにより、周波数誤差Δfの粗い推定が可能になる。このような手法を用いて周波数誤差を推定することにより、FFT演算の分解能の4倍の分解能で周波数誤差を求めることができる。
【0019】
周波数誤差補正部304は、周波数誤差粗推定部302によって推定された周波数誤差Δfを用いてexp(−j2πΔft)を計算し、入力されたベースバンド信号(I+jQ)に対してこの複素数を乗算することにより、ベースバンド信号に対して周波数誤差の補正を行う。そして、周波数誤差の補正がなされた後のベースバンド信号が次段の初期位相・周波数誤差推定・補正部400に入力される。
【0020】
〔初期位相・周波数誤差推定・補正部〕
図4は、初期位相・周波数誤差推定・補正部400の詳細構成を示す図である。図4に示すように、初期位相・周波数誤差推定・補正部400は、3つの初期位相・周波数誤差推定部410、414、418と、2つの初期位相・周波数誤差補正部412、416と、初期位相・周波数誤差・クロックディレイ補正部420とを含んで構成されている。
【0021】
初期位相・周波数誤差推定部410は、周波数誤差粗推定・補正部300から入力されたベースバンド信号に対して、あらかじめ用意された初期位相の複数の候補値のそれぞれを用いて位相補正を行った後の実信号と理想信号とを計算し、これら2つの信号の相関係数を用いて上述した複数の候補値の中から最も真値に近いものを抽出する。ここで、理想信号とは、着目しているベースバンド信号に対してOQPSK復調処理およびOQPSK変調処理を行った信号であって、伝送系で生じる波形歪み等が含まれない信号をいう。
【0022】
また、初期位相・周波数誤差推定部410は、入力されたベースバンド信号に対して、この抽出した初期位相の値を用いて位相補正を行った後に、クロックディレイ推定およびこの推定値を用いたクロックディレイ補正を行い、さらに周波数誤差推定を行う。
【0023】
図5は、初期位相・周波数誤差推定部410の詳細構成を示す図である。なお、他の2つの初期位相・周波数誤差推定部414、418も同様の構成を有している。図5に示すように、初期位相・周波数誤差推定部410は、初期位相のn個の候補値のそれぞれに対応する相関係数を計算するためにn組の位相補正部430、遅延部432、クロックディレイ推定部434、クロックディレイ補正部436、復調部438、理想信号作成部440、相関係数計算部442と、計算されたn個の相関係数に基づいて初期位相のn個の候補値の中から最も真値に近いものを判定する最適初期位相判定部450とを備えている。上述した位相補正部430が第1の補正手段に、復調部438および理想信号作成部440が理想信号作成手段に、相関係数計算部442が相関係数計算手段に、最適初期位相判定部450が初期位相判定手段に、クロックディレイ推定部434が推定手段に、クロックディレイ補正部436が第2の補正手段にそれぞれ対応している。
【0024】
初期位相の真値は0〜360°の範囲内にあるが、OQPSK信号には4つのシンボル点が含まれているため、0〜90°の範囲で位相を補正することにより、補正後のベースバンド信号に含まれるシンボル位置を正しいシンボル位置に一致させることができる。例えばn=9として、初期位相の9個の候補値φi=(i−1)×10°(i=1,2,…,8,9)を考えるものとする。
【0025】
位相補正部430−1は、初期位相φ1(=0°)を用いてexp(jφ1)を計算し、入力されたベースバンド信号に対してこの複素数を乗算することにより、ベースバンド信号に対して初期位相φ1に対応する位相補正を行う。
【0026】
クロックディレイ推定部434−1は、位相補正部430−1によって位相補正がなされたベースバンド信号の同相成分を遅延部432−1に通してオフセット分を元に戻した信号(QPSK信号)に対してクロックディレイ推定を行う。
【0027】
クロックディレイ補正部436−1は、位相補正部430−1によって位相補正がなされたベースバンド信号に対して、クロックディレイ推定部434−1によって推定されたクロックディレイの補正を行う。ベースバンド信号の同相成分と直交成分に対応する離散的なデジタルデータが入力されると、クロックディレイ補正部436−1は、これらのデジタルデータを用いたディレイ補正を行って、サンプリング位置からクロックディレイ分だけずれた位置に対応する同相成分と直交成分の値を計算により求める。
【0028】
復調部438−1は、クロックディレイ分の補正がなされた後のベースバンド信号に対してOQPSK復調処理を行い、変調前のデータを復元する。また、理想信号生成部440−1は、この復調されたデータに対して再度OQPSK変調処理を行い、波形歪み等が含まれない理想的なベースバンド信号を作成する。本明細書においては、この理想的なベースバンド信号を理想信号と称している。
【0029】
相関係数計算部442−1は、理想信号作成部440−1から出力される理想信号とクロックディレイ補正部436−1から出力されるベースバンド信号とが入力されており、これら2種類の信号波形の相互相関係数ρの実部ρ’を計算する。この相互相関係数ρは、2つの信号波形の類似の度合いを示すものであり、送信信号がどれだけ理想信号に近いかを示す波形品質係数を示している。以下に、相互相関係数ρとその実部ρ’の計算式を示す。
【0030】
【数1】
Figure 0003950242
【0031】
【数2】
Figure 0003950242
【0032】
ここで、Zk はクロックディレイ補正部436−1から出力されるベースバンド信号を、Rk は理想信号作成部440−1から出力される理想信号を、Mは1/2シンボルごとの測定区間をそれぞれ示している。また、「*」は共役の複素数を、「Re[Rk k *]」はRk k *の実部を示している。
【0033】
図6は、上述した相互相関係数ρとその実部ρ’を比較した図であり、例えば初期位相φが40°近傍のときに相互相関係数が最大となる場合が示されている。図6に示すように、上述した相互相関係数ρは、初期位相φの真値である40°近傍で最大となるが、その前後の比較的広い範囲でこの最大値を維持する。これに対し、相互相関係数ρの計算式の分子に含まれる実部を用いて計算した相互相関係数ρ’は、初期位相の真値近傍のみで最大値となる。したがって、最適な初期位相を抽出するためには、実部のみを用いた相互相関係数ρ’を用いることが好ましい。
【0034】
このようにして初期位相をφ1とした場合の相互相関係数ρ’が相関係数計算部442−1によって計算される。同様にして、相関係数計算部442−2〜442−nのそれぞれによって、初期位相をφ2〜φnとした場合の相互相関係数ρ’が計算される。
【0035】
最適初期位相判定部450は、上述したn個の相関係数計算部442−1〜442−nのそれぞれによって計算されたn個の相互相関係数ρ’を比較判定し、その最大値に対応する最適な初期位相θを抽出する。さらに、数1のρの分子部分において、2乗する以前の複素数の総和(ΣRkk * )からRk とZk *の位相差を計算して、初期位相θに反映させてもよい。
【0036】
また、図5に示した初期位相・周波数誤差推定部410は、最適初期位相判定部450によって抽出された初期位相を補正した後に周波数誤差の推定を行うために、位相補正部460、遅延部462、クロックディレイ推定部464、クロックディレイ補正部466、復調部468、理想信号作成部470、周波数誤差推定部472を備えている。上述した相互相関係数ρ’を求めた場合と同様にして、最適初期位相判定部450によって抽出された最適な初期位相θに対応した位相補正、クロックディレイ推定および補正、理想信号の作成が行われ、クロックディレイ補正部466から出力されたベースバンド信号と理想信号作成部470から出力された理想信号とが周波数誤差推定部472に入力される。周波数誤差推定部472は、これら2つの信号に基づいて周波数誤差を推定する。
【0037】
初期位相・周波数誤差推定部410によって10°ごとに設定されたn個の初期位相候補の中から最も真値に近い値と、これに対応する周波数誤差とが推定されると、次に、初期位相・周波数誤差補正部412は、この推定された初期位相および周波数誤差に対応する位相補正および周波数補正を行う。
【0038】
同様にして、2段目の初期位相・周波数誤差推定部414は、少し精度を上げた初期位相の推定とこれに対応する周波数誤差の推定を行う。例えば、初期位相・周波数誤差推定部414において、初期位相・周波数誤差推定部410において推定された初期位相を中心に±4°の範囲で2°おきに初期位相の5個の候補値が設定され(φ1=θ−4°、φ2=θ−2°、φ3=θ、φ4=θ+2°、φ5=θ+4°)、その中から最も真値に近いものが抽出される。そして、初期位相・周波数誤差補正部416は、入力されたベースバンド信号に対してこれらの推定値を用いた位相補正および周波数補正を行う。
【0039】
また、3段目の初期位相・周波数誤差推定部418は、さらに精度を上げた初期位相の推定とこれに対応する周波数誤差の推定を行う。例えば、初期位相・周波数誤差推定部418において、初期位相・周波数誤差推定部414において推定した初期位相を中心に±1°の範囲で1°おきに初期位相の3個の候補値が設定され(φ1=θ−1°、φ2=θ、φ3=θ+1°)、その中から最も真値に近いものが抽出される。そして、初期位相・周波数誤差・クロックディレイ補正部420は、入力されたベースバンド信号に対してこれらの推定値を用いた位相補正および周波数補正を行うとともに、初期位相・周波数誤差推定部418に含まれるクロックディレイ推定部464によって推定されたクロックディレイの補正を行う。
【0040】
なお、3つの初期位相・周波数誤差推定部410、414、418は、後段に進むほど初期位相の推定誤差が少なくなり周波数誤差の推定誤差も少なくなるため、評価シンボル数を多くしても復調誤りが生じにくくなる。したがって、後段に接続されたものほど評価シンボル数を多くして、周波数誤差の推定精度をさらに上げることが好ましい。
【0041】
このように、3段階に分けて初期位相の推定範囲を次第に狭くしていくことにより、効率よく、しかも高い精度で短時間に初期位相の値を求めることができる。
【0042】
〔詳細パラメータ推定部〕
図7は、詳細パラメータ推定部500の詳細構成を示す図である。図7に示すように、詳細パラメータ推定部500は、振幅誤差・原点オフセット推定部510、518、振幅誤差・原点オフセット補正部512、520、詳細周波数誤差推定部514、周波数誤差補正部516、測定項目計算部522を含んで構成されている。詳細パラメータ推定部500に入力されるベースバンド信号については、既に前段の初期位相・周波数誤差推定・補正部400において初期位相、周波数誤差、クロックディレイのそれぞれの補正がなされており、詳細パラメータ推定部500は、振幅誤差および原点オフセットの推定および補正と、詳細な周波数誤差の推定および補正を行った後に、最終的な各種の測定項目の計算を行う。
【0043】
まず、振幅誤差・原点オフセット推定部510および振幅誤差・原点オフセット補正部512によって、入力されるベースバンド信号に対して1回目の振幅誤差と原点オフセットの推定および補正が行われる。このようにして原点オフセット等が補正された後のベースバンド信号(同相成分I’、直交成分Q’)を用いることにより詳細な周波数誤差の推定が可能であり、次に詳細周波数誤差推定部514および周波数誤差補正部516によって、1回目の振幅誤差等の補正がなされた後のベースバンド信号を用いて詳細な周波数誤差の推定および補正が行われる。
【0044】
ところで、振幅誤差・原点オフセット推定部510によって行われる1回目の振幅誤差等の推定は、周波数誤差が含まれているベースバンド信号を用いて行われているため、周波数誤差に対応した誤差を含んでいる。このため、誤差の少ない振幅誤差と原点オフセットを求めるために、振幅誤差・原点オフセット推定部518および振幅誤差・原点オフセット補正部520によって、詳細な周波数誤差の補正が終了したベースバンド信号(同相成分I’’、直交成分Q’’)に対して2回目の振幅誤差と原点オフセットの推定および補正が行われる。
【0045】
測定項目計算部522は、このようにして周波数誤差、振幅誤差、原点オフセットの補正が終了したベースバンド信号(同相成分I’’’、直交成分Q’’’)を用いて、最終的な各種の測定項目を計算する。測定項目として、例えば波形品質ρ、変調精度、マグニチュード・エラー(magnitude error )、フェイズ・エラー(phase error )等が計算され、詳細周波数誤差推定部514において既に計算されている周波数誤差と振幅誤差・原点オフセット推定部518において既に計算されている原点オフセットとともに詳細パラメータ推定部500による推定結果(解析結果)として出力される。なお、測定項目の一つである波形品質ρは、原点オフセットが補正される前のベースバンド信号(同相成分I3、直交成分Q3)を用いて計算される。
【0046】
このように、本実施形態のOQPSK変調解析システムでは、初期位相・周波数誤差推定・補正部400によって、実信号と理想信号との相互相関係数ρ’を用いることにより、OQPSK変調された受信信号の初期位相を推定することができるため、受信信号に含まれるクロックディレイを推定し、補正することが可能になる。特に、受信信号に含まれるクロックディレイを補正することができれば、QPSK変調解析において従来から行われている手法を用いて位相補正、周波数補正、振幅誤差補正等を行った後に波形品質や変調精度等を計算することができ、汎用的な手法による解析が可能になる。
【0047】
また、初期位相・周波数誤差推定・補正部400によって初期位相を推定する際に、この推定動作を複数段階に分けて行い、前段の推定結果に基づいて次段の推定動作に用いられる初期位相の複数の候補値を設定しており、後段に進むにしたがって推定精度を上げることにより、効率的な初期位相の推定を行うことができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、初期位相・周波数誤差推定・補正部400によって初期位相を推定する際に、3つの初期位相・周波数誤差推定部310、314、318によって3段階に分けて次第に推定精度を高めたが、2段以下あるいは4段以上に分けて初期位相の推定を行うようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、初期位相・周波数誤差推定・補正部400において、初期位相のn個の候補値φ1〜φnのそれぞれに対応する位相補正から相関係数計算までの各動作を並行して行ったが、これらの一連の動作を順番に実行するようにしてもよい。例えば、最初に初期位相のn個の候補値φ1〜φnの中からφ1を選択し、この候補値φ1に対応する位相補正等の一連の処理を行って相互相関係数ρ’を計算する。次に、2番目の候補値φ2に対応する位相補正等の一連の処理を行って相互相関係数ρ’を計算する。このようにして、n番目の候補値φnに対応する位相補正等の一連の処理を行って相互相関係数ρ’を計算する。この場合に、計算された相互相関係数ρ’の中から最も値が大きなものを抽出する方法については、n個の相互相関係数ρ’の計算が全て終了した時点で行う場合の他に、相互相関係数ρ’が計算された時点で逐次判断する場合が考えられる。
【0050】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、あらかじめ設定された初期位相の候補値を用いて実際に位相補正を行って得られた信号(実信号)と、この信号に対してオフセットQPSK復調と変調を繰り返すことによって生成された理想信号との相関係数を計算しており、初期位相の候補値が真値に近いほど相関係数が大きな値となるという性質を用いて初期位相の候補値が適切なものであるか否かを判定することができ、初期位相の適切な推定が可能となる。
【0051】
特に、初期位相に対応する補正を行った後に、この信号の直交成分または同相成分のオフセット分を元に戻してQPSK信号を生成することによりクロックディレイを推定し、この推定したクロックディレイに対応する補正がなされた信号を用いて相関係数の計算を行うことが好ましい。正しい初期位相と周波数誤差が推定され、補正がなされた信号に対しては、直交成分のオフセット分を元に戻すことができるため、クロックディレイの推定が可能になる。このクロックディレイ分の補正がなされた後の実信号と理想信号とを用いて、これら2つの信号の相関係数を求めることにより、初期位相の推定精度をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態の変調解析システムの構成を示す図である。
【図2】IF信号変換部およびベースバンド信号変換部の詳細構成を示す図である。
【図3】周波数誤差粗推定・補正部の詳細な構成を示す図である。
【図4】初期位相・周波数誤差推定・補正部の詳細構成を示す図である。
【図5】初期位相・周波数誤差推定部の詳細構成を示す図である。
【図6】相互相関係数とその実部を比較した図である。
【図7】詳細パラメータ推定部の詳細構成を示す図である。
【図8】直交変調方式を用いた一般的な送受信システムにおける同期検波の概要を説明するための図である。
【符号の説明】
100 IF信号変換部
200 ベースバンド信号変換部
300 周波数誤差粗推定・補正部
400 初期位相・周波数誤差推定・補正部
410、414、418 初期位相・周波数誤差推定部
412、416 初期位相・周波数誤差補正部
420 初期位相・周波数誤差・クロックディレイ補正部
430−1〜430−n、460 位相補正部
432−1〜432−n、462 遅延部
434−1〜434−n、464 クロックディレイ推定部
436−1〜436−n、466 クロックディレイ補正部
438−1〜438−n、468 復調部
440−1〜440−n、470 理想信号作成部
442−1〜442−n 相関係数計算部
450 最適初期位相判定部
472 周波数誤差推定部
500 詳細パラメータ推定部

Claims (6)

  1. 初期位相に対応する所定の候補値が設定され、オフセットQPSK変調された信号を直交検波して得られたベースバンド信号に対して、前記候補値に対応する位相シフトを行う第1の補正手段と、
    前記第1の補正手段によって補正がなされた信号に対してオフセットQPSK復調処理を行った後に再度オフセットQPSK変調処理を行うことにより、前記第1の補正手段によって補正がなされた信号に対する理想信号を作成する理想信号作成手段と、
    前記第1の補正手段によって補正がなされた信号と前記理想信号との相関係数を計算する相関係数計算手段と、
    前記相関係数計算手段によって計算された前記相関係数に基づいて、前記初期位相として設定された前記候補値の適否を判断する初期位相判定手段と、
    を備えることを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
  2. 請求項1において、
    前記第1の補正手段によって補正がなされた信号の直交成分または同相成分のオフセット分を元に戻してQPSK信号を生成し、このQPSK信号を用いてクロックディレイを推定する推定手段と、
    前記第1の補正手段によって補正がなされた信号に対して、前記推定手段によって推定されたクロックディレイに対応する補正を行う第2の補正手段と、
    を備え、前記第2の補正手段によって補正がなされた信号を用いて前記相関係数計算手段による前記相関係数の計算を行うことを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
  3. 請求項1または2において、
    前記初期位相判定手段は、複数の前記候補値に対応して前記相関係数計算手段によって計算される複数の前記相関係数の中から最大値を検索し、対応する前記候補値を前記初期位相として推定することを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
  4. 請求項3において、
    前記初期位相判定手段による推定動作を複数段階に分けて行い、前段の推定結果に基づいて次段の推定動作に用いられる前記複数の候補値を設定し、後段に進むにしたがって推定精度を上げることを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
  5. 請求項4において、
    前記初期位相判定手段による前記複数段階の推定動作は、後段に進むにしたがって前記複数の候補値の間隔を狭くして行うことを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
  6. 請求項4または5において、
    前記初期位相判定手段による前記複数段階の推定動作は、後段に進むにしたがって、前記相関係数計算手段による計算の対象となる信号の区間を広げることを特徴とするオフセットQPSK変調解析方式。
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