JP3949761B2 - 飛行時間デ−タ収集システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量分析法に於けるイオンの検出に関するものであり、特に、1つ以上のイオンスペクトルの事前に選定した回数の間隔で、イオン発生量を判定するための操作方法と装置を含むデータ収集システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
質量分析法は、分析化学に於ける価値のあるツールであることが、実証されてきている。質量分析法は、試料の電気的に中性の分子は、帯電又はイオン化され、また、分子の動作は、電磁界によって制御されることが可能であるという事を前提にしている。電磁界に対する帯電分子の反応は、そのイオンの質量電荷比に影響されるので、特定の質量電荷比のイオンを、選択的に検出することができる。
【0003】
質量分析計は、主として、異なった質量電荷比を持つイオンを区別する方法の面で、異なっている。磁気セクタ質量分析計は、イオンが磁界中で反転するか、又は分散するので、イオンの運動量によって、等しいエネルギーのイオンを分離する。四重極質量分析計は、直流フィールドの下での高周波無線周波数フィールドに応じた加速度の比率に基づいて、イオンを分離する。イオンサイクロトロン/イオントラップ質量分析計は、交流フィールドの下での共振周波数又は共振次元により、イオンを判別する。飛行時間質量分析計は、固定距離での速度に基づいて、イオンを判別する。
【0004】
設計は比較的簡単であるが、飛行時間質量分析計は、高速度でデータを生成する。異なる質量電荷比を持つイオンが、1個の試料に存在する可能性があるので、イオンは、それらの速度又は運動エネルギーに応じて、異なる回数だけ検出器に衝突することになる。その検出器の出力信号は、非常に短い時間間隔、一般的にはマイクロ秒の10分の1以下に圧縮された、一連のイオン到着応答から構成されている。100マイクロ秒以内に、最も重いイオンを含めた全イオンが、飛行時間質量分析計の所定距離を走行して、検出器に到着し、この試料分子のスペクトラムを生成する。所与の試料の分析のために、百万個迄のスペクトラムが、生成される。さらに、これらのスペクトラムを、経過時間順に並べた組に分割する必要がある場合もある。時間の単位は、1ミリ秒のオーダーである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
所与の試料の分析で得られた、あるイオン化合物の全データを含んでいる小区画だけが、興味の対象のはずである。しかし、科学者たちは、従来、その試料で生成された全スペクトラムにわたるデータを、収集しなければならなかった。生成されるデータの削減のため、さらに、関心事であるイオン化合物に注目するために、選択した化合物の予想到着時間又はウィンドウの直前に、検出回路を起動することが、提案されている。このようなシステムの詳細については、本発明の出願人が所有する米国特許第5,367,162号で、公開されている。本発明も、従来技術を全般的に説明しており、その開示内容を参照により本書に組み込んでいる。しかし、過去の装置のいずれも、飛行時間スペクトラムの連続して、中断の無い検出、収集、及び処理の機能は持っていない。さらに具体的にいえば、従来技術による装置のいずれも、これ迄に達成されたものより、本質的に省電力で動作する小型システムを使用して、選択、合計、及び処理のために、アナログ信号をディジタル信号に連続的に変換してはいない。
【0006】
【問題を解決するための手段】
本発明の第一の様態によれば、飛行時間質量分析計で複数のイオンを検出し、関心事である選択イオンのみを表示する出力を提供するために、データ収集システムが提供される。さらに詳述すれば、データ収集システムは、試料中のイオンのスペクトラムを受け取り、その受け取ったイオンを表示するデータ信号を生成するための検出器又は変換器と、関心事の信号として、前記データ信号の特定の信号にタグを付け、その関心事のデータ信号を一時的に保存するためのデータ収集モジュールとから成っている。さらに、このシステムは、関心事のデータを集計し、それをメモリに保存することにより、そのデータを部分的に処理するための信号プロセッサも備えている。所定の条件下で、その信号プロセッサにあるデータは、さらに処理が行われる装置制御部に伝送される。
【0007】
本発明の別の様態によれば、複数のイオンを受け取り、前記イオンを示す連続的なディジタル出力をする回路と、関心事のデータを含む前記出力の中のある出力を識別するために、前記ディジタル出力に動作可能な状態で接続された回路と、タグの付いた信号を一時的に保存し、他の全てのデータを廃棄する記憶回路とから成るデータ収集システムが、飛行時間質量分析計用に提供される。
【0008】
方法としては、飛行時間質量分析計で、少なくとも1個のイオンを検出するための方法であって、飛行時間質量分析計の検出器で複数のイオンを受け取るステップと、時間の関数として、その検出器が受け取った前記イオンに応じた複数の出力信号を生成するステップと、保存されるべき信号と無視されるべき信号として、また、時間の関数として、前記複数の信号にマークを付けるステップと、時間の関数として保存されるべき前記信号を総計するステップとから成る方法が、提供される。
【0009】
本発明を実施するデータ収集システムやデータ収集方法から得られる利点は、従来の2倍以上の速度で、データを収集し、処理することができることである。さらに、従来より短い時間間隔で、さらに大きい区画のデータを収集するので、分解能が顕著に向上する。これにより、従来より鮮明で、さらに明確にされたデータ集合となり、従来検出不可能であったイオン種間の質量電荷比を判別することが可能になる。さらに、本発明を実施するデータ収集システムやデータ収集方法は、全データがディジタル化されて、一時的に保存されているので、関心事の全ての特定データを、確実に収集できるという利点も提供する。この様に、関心事のイオンが、既に部分的に検出された直後に、システム又はディジタル回路を起動する結果、データ損失は発生しない。本発明のこれら及び他の特徴、目的、及び利点は、添付の図面を参照しながら、本明細書と特許請求の範囲を読むことによって明白になるはずである。
【0010】
【実施例】
以下の記述において、数点の異なる図面を参照するが、その中では、類似又は同様の構成要素が、同一のラベル又は参照番号によって識別されている。多重参照又は要素の識別は、ある頁のある回路を、別の頁の相手となる回路又は要素と接続する方法として、使用されている。特に、図を参照すると、図1は、本発明を実施している飛行時間質量分析計システム10を、一般的に示すブロック図である。光線分析器10は、ガスクロマトグラフ、グロー放電源、又は誘導性結合プラズマ源等の数個の供給源の内の任意の1個を使用して、直交あるいは軸上飛行管構成を含むが、これに限定はされない、飛行時間質量分析計12を備えている。例示だけの目的で、供給源14は、資料室15の一方の端に、飛行管16と直交して配置されている。飛行管16の一端に配置された検出器又は変換器42について、以下にさらに詳しく説明する。検出器42は、線24経由でアナログ出力を、データ収集システム20に供給し、そのシステム20は、センサ42によって生成されたデータを記録して、処理する。さらに、データ収集システム20は、飛行時間質量分析計12の動作を制御するために、23として全体的に表示されている1つ以上の線を経由して、1つ以上の出力を供給する。データ収集システム20は、データ線あるいはバス36を経由して、パーソナルコンピュータ又は他のインタフェース27に、動作可能な状態で接続されている。バス又は線36経由で、ユーザは、データ収集システム20が従っているデータ収集及び処理手順と共に、飛行時間質量分析計12の全ての動作パラメータを実質的に制御できる。
【0011】
図2には、例えば、飛行時間質量分析において、時間配列検出に使用されるデータ収集システム20のある実施例が示されている。一般に、データ収集システム20は、4つのモジュールで構成され、それらのモジュールは、イオン検出器42に接続されている前置増幅器40と、下記の前置増幅器40から線38でアナログ入力信号を受け取るために、動作可能な状態で接続されているデータ収集モジュール(DAM)22と、バス28と30経由で、DAM22からのディジタル入力信号を受け取るように、動作可能な状態で接続されている信号処理モジュール(SPM)26と、バス13経由でSPM26からのディジタル出力を受け取るように、構成されている計測器制御モジュール(ICM)32である。計測器制御モジュール32は、以下に詳しく述べるように、線13経由で22や26等の他のモジュールと、線23経由でシステム10の特定のモジュールと、さらに、データバス又は線36経由でパーソナルコンピュータ(PC)あるいは他のプロセッサと、相互接続されていることが望ましい。
【0012】
データ収集システム20は、飛行時間質量分析計の動作の制御及びシーケンスを行い、飛行時間質量分析計12に対する集中時間基準として動作し、イオン検出器42からのデータを収集し、さらに処理し、イオン検出器出力用前置増幅器のゲイン設定を制御し、一組の時間配列データを、PC又は他のプロセッサ27に供給するように設計されている。ここで説明しているシステムが提供する主な利点は、全てのアナログ入力信号24が、時間の関数として、各試料又は分析の過渡的データに対して、DAM22でディジタル信号に変換されることである。特定の瞬間又は時間間隔で収集された、関心事のディジタルデータには、以後の処理のために保存されるように、DAM22でラベル又はタグが付けられる。保存されないように、タグが付けられるか又は識別された(又は場合によってはラベルが付けられないか又は識別されない)ディジタル信号は、新しいデータをその廃棄データに上書きすることによって、廃棄される。タグの付けられたデータ信号は、バス28と30を経由して、そのデータが集計され事前処理されるSPM26に伝送される。DAM22とSPM26は、複数の専用レジスタとバスを備えているので、そのデータ信号は、低減デューティサイクルで分割されて、処理される。集計されたデータは、追加処理とPC27への伝送のために、バス13経由でICM32に伝送される。システム20を構成している各構成要素については、以下に詳述している。
【0013】
イオン検出器42(図1)は、飛行時間質量分析計12内のイオンを検出して、アナログ信号を入力線24に供給する。特に、検出器42は、前置増幅器40に接続された出力線24を有する従来型イオン検出器42である。イオン検出器42は、マイクロチャネルプレート検出器や二次電子倍増管検出器を含めた、多数の使用可能な検出器の内の任意の1台でよい。前置増幅器40は、下記のように、ここからの信号出力の振幅を選択的に制御するために、ゲイン制御回路127(図6)からの信号を受け取るためのゲイン制御入力線を有する可変減衰器、又は可変ゲイン段として動作する。前置増幅器40の出力は、データ収集モジュール22の入力線38に接続されている。
【0014】
図3は、DAM22の構成要素を示し、それらは、信号収集モジュール(SAM)60とシーケンス/保存制御モジュール(SSCM)62であり、両モジュールとも、レジスタ又はメモリモジュール64に、データと制御ビットを供給している。さらに具体的には、SAM60は、入力線24(図3と図4)からデータを受け取るために、前置増幅器40に接続されたアナログ・ディジタル(A/D)変換器66とイオンカウンタ68を備えている。好適な実施例において、A/D変換器66は、8ビット出力を有するが、最も望ましいのは、500MHzのオーダーの周波数で動作できる10ビット出力が可能なトラック/ホールドA/D変換器である。A/D変換器66も、下記でさらに明白になる理由のために、データがトグルされる2つの出力線70と72を備えている。図4で分かるように、一点鎖線で示した並列イオンカウンタ68は、ディジタル・アナログ(D/A)変換器80の出力線78に供給されるアナログしきい値又は基準信号だけではなく、入力線24から供給されるアナログ信号を、受け取るように構成された判別増幅器76を備えている。出力アナログ信号レベルは、信号プロセッサによって入力端子81に供給されるディジタル入力信号によって制御される。線24上の入力が、判別器増幅器76に印加される出力78のレベル以上であれば、カウンタ69に向けて、信号が74に出力されるが、そのカウンタは、信号しきい値が満足されたことを示すために、82(図3の202及び206)経由でパイプライン遅延回路84(図4)への出力を順番に生成する。そのしきい値を満足させられなかった線24上の判別増幅器76への各入力に対して、パイプライン遅延回路84に向けて、ゼロが82に出力される。しかし、SSCM62からの入力線86に印加された信号によって動作可能になったときにだけ、イオンカウンタ69は、82に出力する。
【0015】
図3及び図5乃至図7に示すSSCM62は、飛行時間質量分析計において変調、抽出、及び偏向パルスのタイミングを制御すると共に、A/D変換器66、又はイオンカウンタ68、あるいはその両方からのデータ収集を制御する。さらに、SSCM62は、入力線125(図2)にゲイン制御信号を供給することにより、前置増幅器40によって生成されるアナログ入力24のゲインを制御する。図5で分かるように、SSCM62は、それぞれICM32からのプログラミングデータを受け取るアドレスライン100と結合されている保存制御メモリ92、カウント制御メモリ94,パルス発生器制御メモリ96,及びゲイン制御メモリ98を含む数個のスタティックRAMモジュール90を備えている。各メモリモジュールが、約4000個のデータストリング(各データストリングが8ビット以上のデータビット)を保存できることが望ましい。その各メモリに保存されるデータの各ビットは、時間の2ナノ秒区分又は試料を表している。各メモリ94、96,および98のそれぞれの出力104、106、及び108は、それぞれ関連するパラレル入力/シリアル出力の8ビットレジスタ112、114、及び116に接続されている。各レジスタ112、114、及び116は、クロックパルス線118から、500MHzのタイミングパルスを受け取る。従って、各レジスタには、16ナノ秒ごとに8ビットの情報がロードされ、そのデータは2ナノ秒ごとに各レジスタからシリアルに伝送される。レジスタ110の出力120には、8ビットワードが含まれ、以下にさらに詳しく記述されているように、その各ビットが、200にある8台のレジスタの内の1台に送られる。これらのビットの各ビットは、保存又は廃棄信号を構成し、その信号は、保存され、さらに処理されるべきデータ、又は無視されるべきデータとして、その特定のレジスタでデータを識別する。
【0016】
スタティックRAMメモリ90にロードされるデータは、線36とICM32経由で、システム20とインタフェースしているコンピュータ27で、ユーザにより識別された関心事のイオンによって書き込まれる。関心事のイオンの特定の予測到達回数は、基準表によって決定され、その表は、どのデータの2ナノ秒のウィンドウが収集されるべきであるかを識別するために、使用される。関心事であり、後に処理のために保存されるデータとして、ディジタル信号を識別又はタグを付けるために、保存制御レジスタ110の出力120は、A/D変換器66の出力線70又は72上のデータ出力、及び下記の200中のあるレジスタの特定の入力への、イオンカウンタ68からの出力202及び206と、結合される。例えば、特定の8ビット長のデータが、関心事であるイオンが到着するはずの2ナノ秒のウィンドウに収集される場合、イオンカウント出力及びA/Dディジタル信号は、特定のレジスタに一時的に保存される。そのレジスタの出力は、このデータが関心事のデータであり、保存されるべきデータであるというフラグを立てるために、「1」を有している。その特定のレジスタ入力が、「偽」又はゼロの値を含んでいるデータは、保存されない。同様に、A/Dデータを収集して、保存するために、「真」の値又は「1」は、「真」又は「1」と同時に制御レジスタ112から122のカウント制御メモリ出力の同じビット位置を占有する。レジスタ112の出力は、以前に略記したように、入力86でイオンカウンタ68を動作可能にする。
【0017】
94に保存された値については、A/D変換器66のパイプライン遅延を念頭に置く必要がある。そのイオンカウンタ68のパイプライン遅延は、A/D変換器66のパイプライン遅延とも一致していることに、注意する必要がある。飛行時間質量分析計において変調、抽出、又は偏向パルスのタイミングと、前置増幅器40に対する前置増幅ゲインとを制御するために、同様な方法で、データが、それぞれパルス及びゲイン制御レジスタ114と116から出力される。
【0018】
SSCM62(図3)は、SPM26にあるどのプロセッサが、そのデータの処理を担当するかを指示するプロセッサ識別モジュール148と共に、所与の時間間隔にわたって前置増幅器40のゲインを制御するゲイン制御モジュール127(図6)を備えている。特に、ゲイン制御モジュール127は、上記のゲイン制御レジスタ116の出力線126からの入力を受け取るゲイン選択カウンタ128を備えている。出力線126からの入力は、ゲインメモリ132とコンパレータ134に並列に接続された130での出力を生成するために、ゲイン選択カウンタ128をトグルする。ゲインメモリ132は、システム20によって収集される各データ収集ウィンドウ毎に、ゲイン情報を保有している。メモリ132に保存されているゲイン情報は、分析された最初から数個目までのスペクトラムによって決定される。特定のウィンドウのゲインが、データのクリッピングを引き起こしたか、又は不十分であったか、あるいは低かった場合、そのゲインを適切なレベルに設定することにより、ゲインが補償される。その修正されたゲインのレベルは、ICM32に接続されている線135経由で、ゲインメモリ132にプログラムされる。ゲイン選択カウンタ128が、トグルされる度に、130での出力は、ゲインメモリ132に、次の、又は適切なデータウィンドウに対して、新しいゲイン値を選択させる。136での出力、又は新しいゲイン値は、ゲイン・パイプライン・レジスタ138とリードバック・バッファ140に、並列に接続されている。前置増幅器40に対する適切なゲイン値は、142に出力される。バッファ140で生成された144での出力は、診断のために線13経由でICM32に、線135を通じて接続される。データウィンドウの数に応じた特定数のゲイン設定の終了後、ゲイン選択カウンタ128は、リセットされる。ウィンドウカウント170は、ゲイン選択カウンタ128での入力数に応じるために、線13と145経由でICM32により、事前にプログラムされる。ウィンドウカウント170は、ゲイン選択カウンタ128からの出力130と比較される、収集されたデータウィンドウ数を表す信号を出力する。130での出力が172での出力に等しい場合、出力146は、ゲイン選択カウンタ128に、ゼロへのリセットを行わせ、カウントを再開させる。既に略記したように、SPM26のどのプロセッサが、システム20によって収集されたデータの処理を担当しているかを、プロセッサ識別モジュール148が、識別する。さらに、モジュール148は、データ試料が記録されたときのゲイン設定も記録する。
【0019】
多くの高速A/D変換器は、「パイプライン」として知られている技術を使用している。この技術において、A/D変換器66は、ある時間間隔、例えば、2ナノ秒毎に試料を取り込む。しかし特定の試料が、A/D変換器66から出力される時間が、30ナノ秒程度であるが、蒸散する場合があり、また、出力時のゲインが異なる場合もある。適切なゲイン設定と、正規のデータ試料とが確実に組み合わされるために、入力線126とクロックパルス線118に接続されているパイプライン遅延部84は、そのA/D変換器66の固有値をその中に保存している。パイプライン遅延部の出力線149は、保存ゲイン/プロセッサ識別(PID)カウンタ150に接続され、そのカウンタ150は、出力線149にトグルされると、保存ゲイン/PIDメモリ154が受け取る出力152を生成する。保存ゲイン/PIDメモリ154は、上記のゲインメモリ132の内容と同じ情報を含んでいるが、保存ゲイン/PIDパイプライン・レジスタ160に接続されているその出力158は、A/D変換器66の固有ステッピング・インデックス又は遅延によって、142上の前置増幅器に設定されたゲイン変化から遅延させられる。158上の出力は、そのデータ試料を受け取って、さらに処理をするSPM26の中の特定のプロセッサも、識別する。ゲイン情報に付加されて、メモリ158から出力されるPIDタグも、SPM内のプロセッサ数と、タグを付加され、保存され、さらに処理されるデータ試料数に応じるICM32でのプログラミングによって、事前に割り当てられる。現在、本発明の好適な実施例により、コンピュータカードが、PCに簡単に取り付けられるのと同じように、ユーザは、記述された数のプロセッサに、スナップ嵌めすることができる。その信号のディジタルデータと共に、イオンカウントビット、保存/廃棄ビット、ゲイン情報、及びPID指示子が、収集された各試料のデータストリームに追加される。
【0020】
また、SSCM62の一部、さらに具体的には、パルス発生器制御メモリ96とレジスタ114の一部を構成するのは、飛行時間質量分析計のサイクルタイム又は期間を制御、あるいは調節するように構成された飛行時間質量分析計用期間カウンタモジュール180(図7)である。特に、12ビットであることが望ましいカウンタ182は、下記のクロック発生回路からのパルスクロック入力、又はPCLKを受け取る。カウンタ182の出力線184は、コンパレータ190と、下記のスタティックRAMモジュール90の各モジュールに、収集及び保存制御アドレスを提供する配線100とに、接続されている。各クロックパルスPCLKがカウンタ182をトグルするので、184での出力は、メモリ92、94、96、及び98に対して、1つずつ増加され、その結果、16ナノ秒毎にそれぞれに、各位置から8ビットワードを出力させる。しかし、飛行時間質量分析計が、20ミリ秒の期間を持つことが望ましい場合には、カウンタ182は、20ミリ秒の期間を満たすために、最大1250カウントまでカウントし、各カウントに対して、総計で10,000ビットに対するスタティックRAM90の各メモリの8ビット位置を特定する。各ビット位置は、時間の2ナノ秒区分に対応しているので、その総合計時間は、20ミリ秒を構成する。カウンタ182は、コンパレータ190に接続されている出力端子を持つ、終了レジスタ186に保存されている値によって、リセットされる。そのカウントと終了カウントが同一になったら、コンパレータの出力192は、カウンタ182をリセットする。
【0021】
再度、図3を参照すると、システム20は、A/D変換器66及びイオンカウンタ68によってディジタル化されたデータの全てと、SSCM62によって提供され、そのデータに付随しているラベルデータを受け取るように構成された、メモリモジュール64を備えている。特に、図3及び図8乃至図10を参照すると、メモリモジュール64は、エミッタ結合ロジック/トランジスタトランジスタロジック(ECL/TTL)であることが望ましい、複数のレジスタ200を備えている。図8で分かるように、8個のレジスタ200が使用され、それぞれREG0からREG7と命名され、さらに並列に配置されていることが望ましい。REG0からREG7迄のレジスタは、A/D変換器66の出力70及び72,イオンカウンタ68の出力202と206、及びレジスタ110と160(図5)の出力120と164に接続されている。これらの出力は、保存/廃棄ビット110、10ビットのA/D信号70と72、イオンカウントビット202と206、4ビットのゲイン信号164、及び下記の2ビットのPID信号164を供給する。
【0022】
メモリモジュールのデューティサイクルを削減して、飛行時間質量分析計の期間を増加するために、A/D変換器66とイオンカウンタ68からのデータが、多数のレジスタ間で分割され、並列に処理される場合に、本発明の目的が達成されることが判明した。つまり、出力202として図3に図示されているイオンカウンタ68からの偶数出力と共に、A/D変換器66の出力70を、REG0、REG2、REG4、及びREG6(図8)と命名されている偶数レジスタに接続されているバス204に、接続することが望ましい。また、このバスと、偶数レジスタの適切な入力に接続されているのは、保存/廃棄ビット、ゲインビット、及びPIDビットを含んでいるシーケンス/保存制御データである。同様に、A/D変換器66の出力72、イオンカウンタ68の出力206、及び関連するシーケンス/保存制御データを含む奇数出力は、REG1、REG3、REG5、及びREG7と命名されている奇数レジスタに内部接続されたバス208に、接続されている。さらに、レジスタ200の各レジスタは、専用のレジスタ出力、つまり、nをレジスタ番号として、REGCLKnと一般化して命名されている出力に接続されている。以前に略記されているように、8個のレジスタ200の1個に1つのデータ試料を保存すると、動作帯域幅要件を、レジスタ当たり500MHzから62.5MHzに削減できる。この点で、TTLロジック部品のさらに大きい利用度を考慮して、信号の特性をECLからTTLに変更することも望ましい。ECLロジックが全体的に使用されることも考えられるが、その動作を実現するために、ある種の部品をカスタム化することが必要になる場合がある。
【0023】
レジスタ200の出力に連結されているのは、TTLロジックFIFOメモリ210であり、各メモリは、レジスタREG0からREG7(図9及び図10)に、それぞれ占有されている。この件の説明のために、特定のレジスタ210が、名称FIFOnと命名され、ここで、nは、FIFOアドレスを表し、上記の8個のレジスタの1個に対応しているものとする。各FIFOnは、参照番号212として一般的に表示されている専用ハードウェアバス又はデータ線経由で、そのレジスタREGnの出力を受け取る。各FIFOnメモリは、256アドレス位置を有する18ビットレジスタを、備えていることが望ましい。各FIFOnが、データを受け取り始めると、各FIFOnからのデータが、FIFOアドレスに応じて、それぞれ偶数及び奇数バス214及び216上に、逐次的に読み出される。レジスタ218と220は、偶数及び奇数FIFOnの出力222と224を、それぞれ、出力線226と228経由で、偶数及び奇数データバス214と216に連結する。
【0024】
FIFOnから偶数及び奇数バス214及び216へのデータの伝送は、図3でメモリモジュール64の上に示されている自律有限状態機械(FSM)240によって制御される。FSM240は、FIFOnのデータの存在を検出し、そのデータが、データバス214と216に読み出されるようにする。データが、全てのFIFOレジスタ210に存在する場合は、FMS240は、偶数及び奇数FIFOから、同時にデータを読み出す。偶数及び奇数FIFOの各グループに対しては、データは、各FIFOから、逐次的に読み出される。例えば、FIFO0の位置0、FIFO2の位置0、FIFO4の位置0等の順序である。同時に、FSM240は、奇数FIFOからも、逐次的にデータを読む;例えば、FIFO1の位置0、FIFO3の位置0、FIFO5の位置0等の順序である。このデータは、偶数FIFOからのデータと同時的に並行して、データバス216上に出力される。
【0025】
システム20内で発生する全ての動作のタイミングは、SSCM62で生成されるクロックパルスに基づいている。特に、SSCM62は、所定の周波数(図13及び図14参照)で動作する発振器252を有するクロックモジュール250を備えている。好適な実施例において、発振器252は、種々の構成要素向けに、254で500MHz信号出力を生成する。254での500MHz信号出力は、配線118を経由して、カウンタ122、パルス発生器124、及びゲイン制御レジスタ126と共に、A/D変換器66(図4)及びパイプライン遅延レジスタ84(図5)に接続されている。さらに、出力254は、同じ周波数で動作するジョンソン・カウンタ256と、分周器258に並列に接続されている。分周器258は、クロックパルスの1/8に等しい260での出力パルスか又は62.5MHzを生成する。出力260は、さらにクロック発生回路262に接続されている。それぞれのカウンタ256と262に対する、264及び266という一般名が付けられた出力は、適切なクロックパルスを、DAM22内の適切な素子に供給する。
【0026】
図1を参照すると、DAM22からのデータを受け取るために動作可能な状態で接続されているSPM26は、そのデータの初期処理を行って、バス13経由でICM32に、そのデータを出力する。さらに具体的には、図12により、SPM26は、ディジタル信号プロセッサ及び累算器カード(DSPAs)と一般名が付けられている1台以上のプロセッサを備えている。ある種の動作では、1台のDSPA270で十分であることが考えられるが、1台以上のDSPAが望ましく、さらに、上記のPIDモジュール148によって、各ディジタル信号に割り当てられたディジタルアドレスに応じて、DSPA0、DSPA1、DSPA2、及びDSPA3として、それぞれアドレス可能な4枚のカードが使用されることが望ましい。しかし、この説明と明瞭さのために、1台(枚)だけのDSPAが示されている。
【0027】
各DSPAは、A/D変換器66からのデータの第1段の処理を担当する。各データワード又は信号は、対応するDSPAに伝送されると、276に出力される前に、その偶数又は奇数の入力FIFO274のどちらかによって受け取られる。276でのデータ出力は、A/Dゲインデータとイオンカウンタ・ゲインデータに分割される。その2つのディジタル信号は、それ自体のタグ又はラベルを維持している各部分と共に、出力280に沿った別々の経路に送られる。イオンカウンタ68のデータが、下記の特定のパラメータを満足しない場合に、A/D変換器66からのデータが使用される。これは、イオンカウンタ68からの無効なデータの使用を、防ぐためである。イオン数/秒の数値が十分に低かったため、1個以上のイオンが、同時に検出器に衝突する可能性が低かったことを検証することによって、マイクロプロセッサ306で動作しているソフトウェアは、イオンカウンタのデータが、正規であるか否かを判定する。これにより、イオンカウンタが飽和していなかったことが確認される。
【0028】
本発明の好適な実施例において、A/D変換器66からのデータは、ゲイン値を使用して、282で調整される。そのデータのジャスティフィケーションにより、全ての試料が同一の基準で確実に等価される。ジャスティフィケーションは、そのデータが、参照表286を通過して、284での出力の後に、行われることが望ましい。A/D変換器66からの調整済みデータは、288でディジタル判別部290に出力され、そのデータは、プログラムされたしきい値と比較される。そのデータ値がしきい値より小さい場合、そのデータは廃棄される。その調整済みの値が、しきい値以上であれば、そのデータは、DSPAの累算部294に向けて292で出力される。DSPAの累算部は、出力292からの調整済みの値を受け取る加算器296を備えている。加算器296は、データ転送毎にインデックスされ、その調整済みの値は、300経由で加算器296に出力される、スタティックRAM(SRAM)298のこの位置に保存されている以前の値と、加算される。加算結果は、SRAM298に保存される。このように、多数のスペクトラムから収集された所与の検体の試料が、総合計される。この処理は、加算結果が、あふれ状態を引き起こすか、又は、十分な数の試料が収集されるまで、継続される。その「十分な数の試料」とは、オペレータによって設定される特定のプログラムパラメータによって、決定される。
【0029】
その累算部があふれそうになるか、又は命令によって、累算部294からのデータが出力されるとき、そのデータは、インタフェースモジュール310に接続されているバス302に向けて、300で出力される。累算部インタフェース310の目的は、DSPAカード上のマイクロプロセッサに、累算結果を伝送することである。この機能により、DAM22からの入力データが失われることなく、その伝送が実施される。ある種の累算器には、その結果を伝送するために、「不動作時間」が必要である。このために、その累算器が結果を伝送している間に、数個の試料を失うことになる。いったんそのデータが、プロセッサ306に伝送されると、プロセッサ306が実行中のソフトウェアは、累算処理を継続する。さらに、このソフトウェアは、A/Dデータとイオンカウンタ・データを検査し、上記のように、どちらが有効であるかを判定する。その累算器からのデータが、最初の試料である場合、DSPAで動作中のソフトウェアは、使用されるゲイン設定を決定し、さらにこの情報をICMに渡す。次に、このデータは廃棄される。そのゲイン設定が既に決定されていると、その累算器からのデータは、DSPAによって以前に収集されていたデータに、加算される。このデータは、時間順を維持するように合計される。いったんDSPが、必要なデータを全て収集すると、そのデータは、バス13経由でICMに伝送される。
【0030】
DSPA270は、さらに、バス302とマイクロプロセッサ306に動作可能な状態で接続されている、リードオンリーの不揮発性メモリ(ROM)モジュール304も備えている。マイクロプロセッサ306は、その中に保存されているプログラムに応じて、DSPA270と、ROM304に応答指令信号を送る。マイクロプロセッサ306により収集されたデータは、バス302にも接続されている第2のSRAM308に保存される。バス302は、両者ともデータ伝送を可能にしている累算器メモリインタフェース・モジュール310と、バスインタフェース312を経由して、累算器回路と、動作可能な状態で接続されるか、そうでない場合は、通信を行う。次に、バスインタフェース312は、インタフェース312経由で、マイクロプロセッサ306と双方向通信を可能にする回線318経由で、VMEバス等のバスインタフェースモジュール314と、共有メモリ316とに接続されている。また、バスインタフェース314は、従来の方法で、回線320経由で、VMEバス13に、双方向通信状態で接続されている。VMEバス313は、ICM32に動作可能な状態で接続され、そのICMは、本発明の実施例であるデータ収集システムを構成している種々のモジュールやシステムに、プログラミング指令や命令を与える。
【0031】
ICM32(図13)は、全てのデータ収集パラメータの設定を担当する。多くのパラメータは、それに接続されているPC内のプログラムに指令される。前置増幅器40のゲイン設定等の、それ以外のパラメータは、各分析の初めに、最初から数個までの試料が収集された後に、ICM32により確定される。収集システムの設定後に、ICM32は、分析を開始し、前置増幅器のゲイン設定の決定を監督し、DSPAカードにデータの処理と保存の開始を命令し、DSPAからデータを収集し、さらにそのデータの最終処理を実施する。要求があれば、そのデータをPCに送る。さらに、上記のタスクと同時に、ICM32は飛行時間質量分析計の全体的な動作を検分する責任もある。これらの機能は、本発明の出願人に譲渡された同時係属出願で、説明されている。
【0032】
ICM32は、図2に示すように、VMEバス13経由で、DSPA270とDAM22とにインタフェースしている。これにより、ICM32が、診断の目的でDSPA270とDAM22を検査し、データ収集のためにこれらの構成要素を組み合わせ、さらにデータ収集の終了後に、これらのモジュールから結果を収集することができる。また、VMEバスインタフェース13は、DSPA270によるICM32上の共有メモリ310Aへのアクセスを可能にする。共有メモリ310Aは、4から256メガバイトの間の容量を持つダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ34Aへのアクセスを制御するダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ・コントローラ312Aも備えている。さらに、VMEインタフェース311は、VMEバスインタフェース311の一組の専用レジスタ経由で、DSPA270とのプロセッサ間通信を可能にする。また、VMEインタフェース311と動作可能な状態で接続されているのは、バス36経由で、PC27(図1)に、ICM32により収集された結果を伝送するために備えられた、DMA及びデータ変換器316Aである。この専用ハードウェアは、共有メモリブロック310Aから、自律的にデータを読み出し、ディジタル信号プロセッサ形式からパーソナル・コンピュータ形式に、データの特定個所を変換し、さらにそれをHSLブロック318Aに送る。次に、HSL318Aは、PC27にその結果を送信するために、独占的な高速シリアル・インタフェース36を使用する。また、ICM32は、DSPインタフェース322経由でVMEバスインタフェース311に、バス321経由で動作可能な状態で接続されている、ディジタル信号プロセッサ320を備えている。さらに、バス321に動作可能な状態で接続されているのは、フラッシュメモリ324とスタティックRAM323であり、これらのRAMは、DSP320用のプログラム及びデータの記憶域となる。フラッシュメモリ324は、電気的にプログラム及び消去され、DSP320にプログラム情報を供給する、0.5メガバイト程度の記憶容量を有している、ファームウェアであることが望ましい。スタティックRAM323は、フラッシュメモリ324からダウンロードした追加の動作ソフトウェアを保存するだけでなく、DSPとの間の送受データに対するバッファスペースも提供する。
【0033】
8ビットの入出力(I/O)バス326に並列に接続されているのは、定数を保存するための不揮発性RAM328と、図1に示すように、飛行時間質量分析計用の供給源14からの信号の授受に使用されるRS−232Cトランシーバに、動作可能な状態で接続されている二重汎用非同期トランシーバ330である。また、バス326に接続されているのは、図1に示されている上記の線又はバス23経由で、飛行時間質量分析計の他の全てのモジュールと通信するように構成された、NIインタフェース332である。さらに、バス326に接続されているのは、パリティチェック中に発生したデータ、及びシステムの動作中のエラ−情報を、保持するために備えられた制御/状態レジスタである。8ビットI/Oバス326は、バス321へのローカルI/Oポート336と接続されているので、データは、DSP320、共有メモリ310、及びICM32の他のメモリ構成要素との間で交換され得ることに、注意する必要がある。また、8ビットI/Oバス326は、不揮発性RAM328、二重汎用非同期トランシーバ330、及びNI332の間のデータの直接伝送を可能にするために、バス338経由で、HSL318にも動作可能な状態で接続されていることに、注意する必要がある。
【0034】
動作に関して、図14及び図15を参照すると、記録されて、収集される特定のデータパラメータは、PCからICM32に出力されるソフトウェア指令によって、データ収集システム20に事前にプログラムされ、ICM32は、これらの指令を、システム20を構成している対応構成要素又はモジュールに、順番に、伝送する。飛行時間質量分析計に加速して投下され、検出器42に受け取られる最初の数個の過渡的イオンパルスの受け取りの際、そこから生成されるアナログ信号のゲインは、ゲイン制御モジュール127(図7)により、自動的に調節されて、ゲイン制御メモリ98に保存される。つまり、そのゲインは、特定の範囲又はしきい値を満足させるために、実質的に自律的調節を行う。
【0035】
プログラムされたしきい値とゲイン制御モジュール127により決定されたゲインの自己較正に続いて、検出器42により生成された各アナログ信号は、A/D変換器66でディジタル信号に、又はイオンカウンタ68(図4)でイオンカウント信号あるいはその両方に変換される。既に略記したように、イオンカウント信号は、判別器76と基準80によって決定されたように、登録されるだけの十分な強度が必要である。二つの信号、A/D信号及びイオンカウント信号は、ディジタル収集モジュール22に渡され、モジュール22において、それらの信号は、1個以上の特定の2ナノ秒の時間ウィンドウに発生するディジタルデータとして、識別され、タグを付けられ、又はラベルを付けられる。各2ナノ秒のウィンドウは、500MHzクロックパルスの1サイクルで計算される(図14参照)。
【0036】
各2ナノ秒サイクル発生に関して、時間線DATA_AとDATA_B上に識別されている交互になった有効ボックスによって示されるように、A/D変換器66は、250MHzの周波数で、バス70と72上に交互データ出力の向きを転換する。SSCM62により設けられた保存/制御ビットだけでなく、A/D変換器66とイオンカウンタ68からのデータ出力は、特定のレジスタREGn(図8)の動作により指令されたレジスタ上に、一時的に保存される。好適な数のレジスタREGnに関して、nが8であることが望ましいが、16ナノ秒の時間間隔後に、全レジスタが充足される。レジスタREGnにおいては、データは、特性の変更を受けるが、それは、ECL信号(高レベルは−0.8Vで、低レベルは−1.6V)から、本質的に、データ信号における増幅とシフトに等しいTTL信号(高レベルは2.5Vで、低レベルは0.0V)に変更されることが望ましい。全レジスタREGnが、いったん充足されると、データは、専用バス212経由で、それぞれのFIFOnに並列に伝送される。FIFOnにデータを保存して、それをSPM26に渡すか、又は次のサイクルでREGnに上書きされることを許すことによって、そのデータを廃棄するように、保存/廃棄ビット又はラベルが発行されたのは、この点にある。その保存/廃棄ビットnは、FIFOnの「書き込み許可」に直接的に接続されているので、所与のデータ試料の保存を直接的に制御できる。
【0037】
並列バス214と216に向かう偶数と奇数の番号を付けられたFIFOから、DAM26のSSCM62により、データパッケージに割り当てられたアドレス又はPIDによって指令されたDSPA270の所定の1台に対して、FIFO210からのデータ出力が、並列に出力される。この処理は、実質的にFSM240に制御され、FMS240は、連続的にデータ入力を各FIFOに読み込み、さらにSPM26への送信のために、FIFOから読み出されるデータを指示する。各DSPAは、ジャスティフィケーションと呼ぶ、データを基本ゲイン値に調整することを含めて、データを前処理し、さらに合計することもある。次に、そのデータは、保存されて、指令の通りにICM32に出力され、また、動作させられ、制御されているソフトウェアに関連付けられる。ICMに出力後、そのデータは、PCに伝送される。
【0038】
上記のデータ収集システム20は、ICM32及びDSPA270に多重マイクロプロセッサ、又は多重ディジタル信号プロセッサを有していた。多重ディジタル信号プロセッサは、ソフトウェア・セマフォにアクセスするために使用される不可分のリード−モディファイ−ライト動作に対するハードウェア・サポートを提供する。これらのソフトウェア・セマフォは、共有ハードウェアやソフトウェアへの排他的アクセスを保証するために使用される。例えば、DSPAカード270上のディジタル信号プロセッサ306は、累算器部271と272から伝送されたデータを、同時的に処理し、その間、同じ部分がデータの累算処理を継続する。同時に、ディジタル信号プロセッサ320とICM32(図13)は、そのデータを処理して、PCとインタフェースするが、DMAとデータ変換部316によって制御されているHSL318及び36経由で送信する前に、共有メモリ310に保存されたデータを、時には変換することもある。
【0039】
【発明の効果】
本発明を実施しているデータ収集システム及び方法によって提供されるか、又はその使用の結果得られる利点は、従来技術の約2倍の速度で、データを収集し、処理を行う能力を備えていることである。また、分解能は、従来のものよりさらに短い時間間隔で、より大きな区画のデータを収集する結果として、顕著に改善されている。これにより、従来よりさらに鮮明で、さらに明確なデータの集合となり、その結果、以前には検出できなかった部類の質量電荷比を持つイオン試料間の判別が、可能となった。さらに、本発明を実施しているデータ収集システム及び方法は、全てのデータがディジタル化されて、一時的に保存されているので、関心事である全ての特定データが、確実に収集されるという利点も提供する。このように、関心事であるイオンが既に部分的に検出された後に、システム、又はディジタル化回路を立ち上げることにより、データは失われない。
【0040】
上記の説明は、好適な実施例の説明のみが考慮されている。本発明の変更は、当業者及び本発明を制作して使用する人々には容易である。従って、図示され、記述された実施例は、単に説明のためであり、本発明の範囲を制限する意図はなく、本発明の範囲は、「特許請求の範囲」によって規定されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である飛行時間質量分析計を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例であるデータ収集システムの主要構成要素を、一般的に示すブロック図である。
【図3】図2に示すデータ収集モジュールの詳細なブロック形式の電気回路図である。
【図4】本発明のシステムに採用されている信号収集回路のブロック形式の電気回路図である。
【図5】図2に示すデータ収集システムに採用されているシーケンス/メモリ時間基準回路を、一般的に示すブロック形式の電気回路図である。
【図6】シーケンス/メモリ時間基準回路に採用されている前置増幅器ゲイン調節/プロセッサ識別回路を、一般的に示すブロック形式の電気回路図である。
【図7】シーケンス/メモリ時間基準回路に採用されている飛行時間質量分析計用周期カウンタを、一般的に示すブロック形式の電気回路図である。
【図8】本発明に採用されているメモリ回路を、一般的に示すブロック図である。
【図9】本発明に採用されているメモリ回路を、一般的に示すブロック図である。
【図10】本発明に採用されているメモリ回路を、一般的に示すブロック図である。
【図11】シーケンス/メモリ時間基準回路に採用されているクロックパルス発生回路を、一般的に示すブロック形式の電気回路図である。
【図12】図2に示すデータ収集システムに採用されているディジタル信号処理/累算回路を、一般的に示すブロック形式の電気回路図である。
【図13】計測器制御モジュール回路を示すブロック形式の電気回路図である。
【図14】好適な実施例のタイミングチャートである。
【図15】図4に示す信号収集回路のゲインを制御するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
13 VMEバスインタフェース
20 データ収集システム
22 ディジタル収集モジュール
23 バス
24 アナログ入力線
26 信号処理モジュール
28 バス
30 バス
32 計測器制御モジュール
36 バス又は回線
38 入力線
40 前置増幅器
125 入力線

Claims (26)

  1. 飛行時間質量分析計で、関心事であるイオンを検出するためのシステムにおいて、前記イオンを検出して、それを示す出力信号を生成するための信号収集回路と、保存されるべき前記出力信号の中の幾つかの信号にタグを付けるためのシーケンス/保存制御回路と、前記シーケンス/保存制御回路によってタグを付けられた前記出力信号を保存するためのバッファ回路と、前記タグ付きデータを処理するため、前記バッファ回路から、前記タグ付き信号を受け取り、前記タグ付き信号からの出力スペクトラムを生成するためのディジタル信号プロセッサ回路とを具備し、前記シーケンス/保存制御回路は前記出力信号の全てにまでタグを付けるものではなく、そしてタグの付けられない前記保存されるべき出力信号は廃棄されることを特徴とするシステム。
  2. さらに、前記シーケンス/保存制御回路を制御し、タグを付ける出力信号を識別するための計測器制御モジュールを具備していることを特徴とする請求項1記載のデータ収集システム。
  3. 前記信号収集回路が、アナログ信号をディジタル出力信号に変換するためのA/D変換器回路と、イオンカウンタ回路と、飛行時間質量分析計の内部に配置され、前記A/D変換器回路の入力と前記イオンカウンタ回路の入力とが並列に接続された出力を有し、アナログ信号を提供するためのイオン検出器とを具備し、前記A/D変換器回路は前記イオン検出器からのアナログ信号をディジタル出力信号に変換し、そして前記イオンカウンタ回路は前記アナログ信号を受け取り、前記イオン検出器により受け取られたイオンを識別し、カウントすることを特徴とする請求項2記載のデータ収集システム。
  4. 前記A/D変換器回路が、単体のA/D変換器で構成されていることを特徴とする請求項3記載のデータ収集システム。
  5. 前記A/D変換器回路が、2つの順次クロック型A/D変換器出力を含むことを特徴とする請求項3記載のデータ収集システム。
  6. 前記シーケンス/保存制御回路が、プログラムされた時刻に、前記イオンカウンタ回路を動作可能にするカウンタ制御回路と、前記プログラムされた時刻に、前記出力信号にタグを付けるための保存制御メモリとを、具備していることを特徴とする請求項3記載のデータ収集システム。
  7. 前記ディジタル信号プロセッサ回路が、前記プログラムされた時刻にわたって前記タグ付き信号を継続的に合計するための回路と、前記スペクトラムを生成するために、合計されたタグ付き信号を保存するためのメモリとを、具備していることを特徴とする請求項6記載のデータ収集システム。
  8. 前記イオンカウンタ回路が、信号のしきい値レベルを確定するための判別器回路を、具備していることを特徴とする請求項7記載のデータ収集システム。
  9. 前記信号収集回路が、前記イオン検出器と、前記イオンカウンタ回路および前記A/D変換器回路との間に配置されている増幅回路と、前記イオン検出器から受け取ったアナログ信号の振幅を調節するための前記イオンカウンタ回路とを、具備していることを特徴とする請求項8記載のデータ収集システム。
  10. 前記信号収集回路が、変換され、タグを付けられる各信号のために、前記増幅回路のゲイン設定を制御して、関心事である各イオンに、異なるゲイン設定を持たせることを特徴とする請求項9記載のデータ収集システム。
  11. 飛行時間質量分析計の内部で、少なくとも1つのイオンを検出するための方法において、イオン検出器で受け取った複数のイオンを検出するステップと、時間の関数として前記イオン検出器によって受け取られた前記イオンに対応して、複数の出力信号を生成するステップと、時間の関数として、保存されるべき信号及び無視されるべき信号として、前記複数の信号に標識を付けるステップと、無視されるべき信号を無視する一方で、時間の関数として、保存されるべき前記信号を合計するステップとを、含んでいることを特徴とする方法。
  12. イオンの質量電荷比の関数として、どの信号が保存されるべきで、どの信号が無視されるべきかを判定するステップを、さらに含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. 第1のメモリに前記複数の標識付き出力信号を保存して、新しい信号で上書きすることによって、無視されるべき前記出力信号を廃棄するステップと、保存されるべき前記複数の出力信号を、前記第1のメモリから第2のメモリに転送するステップとを、さらに含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  14. 複数の出力信号を生成するステップが、前記イオン検出器によって受け取られたイオンに応じて、時間の関数として前記イオン検出器からのアナログ出力信号を生成するステップと、前記アナログ出力信号を、保存すべきデジタル信号と無視すべきデジタル信号に変換するステップとを、含んでいることを特徴とする請求項11記載の方法。
  15. 前記複数の出力信号に標識を付けるステップが、時間の関数として、前記イオン検出器からの信号をディジタル信号に変換するステップと、関心事である時間間隔を選択するステップと、前記時間間隔以内に発生するものである前記ディジタル信号を識別するために、前記ディジタル信号にビットを付加するステップとを含み、前記ビットが、前記ディジタル信号を、保存すべきものか、又は無視するものかを区別するものであることを特徴とする請求項11記載の方法。
  16. 第1のメモリに前記複数の標識付きの出力信号を保存するステップが、前記複数の標識付きの出力信号を、並列データバスに、交互に出力するステップと、前記出力信号を、並列レジスタに保存するステップと、前記並列レジスタから専用FIFOに、前記出力信号を転送するステップとを、含んでいることを特徴とする請求項13記載の方法。
  17. 前記アナログ出力信号を生成するステップが、前記アナログ出力信号のゲインを自動的に且つ連続的に調節するステップを含んでいることを特徴とする請求項14記載の方法。
  18. 保存されたディジタル信号を合計する目的のプロセッサのアドレスを識別するために、前記保存されるべきディジタル信号に1ビットを付加するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項15記載の方法。
  19. 前記専用FIFOの各FIFOにある前記出力信号が、ディジタル信号プロセッサに、並列で、逐次的に出力されることを特徴とする請求項16記載の方法。
  20. 飛行時間質量分析計の内部で、イオンのスペクトラムから、少なくとも1つのイオン試料を検出して、さらに測定するための装置において、イオンのスペクトラムを受け取るための、飛行時間質量分析計の内部のイオン検出器回路であって、さらにイオンの前記スペクトラムの受け入れに応じて、時間の関数として、出力信号を生成する前記イオン検出器回路と、前記イオン検出器から前記出力信号を受け取り、時間の関数として、前記少なくとも1つのイオン試料からの信号として、さらに無視されるべき信号として、前記出力信号にタグを付けるためのデータ収集回路と、出力スペクトラムを生成するべく、前記少なくとも1つのイオン試料からの前記タグ付き信号を合計する一方で、無視されるべきものとしてタグが付けられた信号を無視するための信号プロセッサ回路とから成ることを、特徴とする装置。
  21. 前記信号プロセッサ回路、前記データ収集回路、前記イオン検出器回路、及び飛行時間質量分析計に、動作可能な状態で接続されて、これらからデータを受けとりかつこれらにプログラム制御信号を送るための計測器制御回路を、さらに具備していることを特徴とする請求項20記載の装置。
  22. 前記イオン検出器回路が、2次電子倍増管とマイクロチャネルプレート検出器のうちの一つであるイオン検出器と、前記イオン検出器と、動作可能な状態で接続されて、ゲイン制御入力線を有する前置増幅器と、以前に受け取った信号に応じて、前記前置増幅器のゲインを動的に増減するために、前記ゲイン制御入力線に、動作可能な状態で接続されているゲイン制御回路とを、さらに具備していることを特徴とする請求項21記載の装置。
  23. 前記データ収集回路が、前記イオン検出器回路に対する入力信号を受け取るために、動作可能な状態で接続されている信号収集モジュールと、前記信号収集モジュールを動作可能にするために、動作可能な状態で接続されているシーケンス/保存制御モジュールと、前記シーケンス/保存制御モジュールによって制御される前記信号収集モジュールからの信号を一時的に保存するために、前記信号収集モジュールと前記シーケンス/保存制御モジュールに接続されているメモリモジュールとを、具備していることを特徴とする請求項22記載の装置。
  24. 前記信号プロセッサ回路が、少なくとも1つの信号プロセッサ回路と、少なくとも1つの累算器回路を具備し、前記少なくとも1つの信号プロセッサ回路は、信号のゲイン値を共通の基準に調節して、その調節済みの値と、プログラムされたしきい値とを比較し、前記少なくとも1つの累算器回路は、前記プログラムされたしきい値以上の前記調節済みの値を合計することを特徴とする請求項23記載の装置。
  25. 飛行時間質量分析計内の変換器からのアナログ出力を、ディジタル化して、複数のディジタル化データ信号を含むディジタル化出力を生成するための信号収集モジュールであって、各ディジタル化信号が1個以上のイオンの到着を表している信号収集モジュールと、保存すべきか又は廃棄すべきデータ信号として、前記複数のディジタル化データ信号の中のある特定の信号識別するための保存制御モジュールと、以降の処理のために、前記複数のディジタル化データ信号の中の前記特定の信号を、選択的に保存するためのメモリモジュールと、前記複数のディジタル化データ信号の中の前記特定の信号を、合計して、処理するために、前記メモリモジュールに、動作可能な状態で接続されている信号プロセッサモジュールと、全てのデータ収集パラメータを設定し、前記ディジタル化データ信号の分析を開始し、前記信号プロセッサに処理と保存を指示するゲイン制御設定を監視し、前記信号プロセッサモジュールからデータ信号を収集し、さらにディスプレイ上にそのデータ信号を出力するために、前記各モジュールに動作可能な状態で接続されている計測器制御モジュールとを具備し、廃棄すべきデータ信号は前記メモリモジュールに保存されないことを特徴とする飛行時間質量分析計用データ収集システム。
  26. 飛行時間質量分析計内の検体から生じた1つ以上のスペクトラムから、関心事である1個以上のイオン試料を測定する方法において、イオン検出器で、1つ以上のイオンスペクトラムを検出して、それを表すアナログ出力信号を生成するステップと、前記アナログ出力信号を、少なくとも1組のディジタル信号に変換するステップと、関心事の1個以上のイオン試料に相当する、前記ディジタル信号の中のある信号を識別するステップと、関心事である1個以上のイオン試料であるとしては識別されない前記ディジタル信号を廃棄するステップと、各スペクトラムから前記ディジタル化信号の中のある信号を合計するステップと、その合計の出力を発生するステップとから成ることを、特徴とする方法。
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