JP3949513B2 - 超塑性加工用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超塑性成形に用いる成形素材を所望の温度で成形する超塑性加工用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
超塑性成形に用いる金型には、例えば、▲1▼特開平6−234025号公報「熱間加工の張出し成形法」や▲2▼特開平2−303635号公報「超塑性ブロー成形装置」に示されたものがある。
【0003】
上記▲1▼の成形法は、同公報の段落番号〔0016〕〜段落番号〔0017〕によれば、ブロー成形装置を次の通りに用いる。ただし、以下の説明は原文の要約である。
まず、公報の図3に示すように素材1(符号は公報記載のものを流用した。以下同様。)を金型2と圧力封止盤3との間にセットし、断熱材6を介した金型加熱用ヒータ5および素材1の変形に追従して移動する素材加熱用ヒータ7で素材1を加熱した状態で、圧力流路3bから成形圧力Pを付加し、張出し成形を行う。その結果、素材1を加熱する熱容量を小さくすることができるとともに、大形素材でも均一に加熱することができる。
【0004】
上記▲2▼の超塑性ブロー成形装置20は、同公報の第1図によれば、加圧型12に設けた加熱ブロック10に超塑性材料13を成形型14の給排口17から付加したガス圧で密着させることで、超塑性材料13の温度を加熱ブロック10の温度まで急速に上昇させることができ、生産性を向上させることができるというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記▲1▼の金型2では、金型2と圧力封止盤3との間に素材1をセットした状態で素材1の温度を上げるため、素材1の温度が上昇するまでの待ち時間が発生し、成形サイクルタイムが長くなる。
また、素材加熱用ヒータ7と、この素材加熱用ヒータ7を追従させるヒータ駆動部8を設ける必要があり、生産コストが嵩む。
【0006】
上記▲2▼の成形装置20は、加熱ブロック10で超塑性材料13の温度を急速に上昇させる構造で、加熱ブロック10および加熱ブロック10の温度制御装置が必要であり生産コストが嵩む。
また、成形型14には、給排口17やこの給排口17へ付与するガスを制御する制御装置が必要であり、生産コストが嵩む。
さらに、成形型14の型面には給排口17があり、成形品に給排口17の形状が写るため、成形品のデザインが限定される。
【0007】
そこで、本発明の目的は、金型に素材加熱用ヒータや加熱ブロックを設けずに、成形素材の温度を所望の温度に保持しつつ成形する超塑性加工用金型を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、一対の型で成形素材の縁を把持し、一方の型内に気体を供給して成形素材を他方の型に押圧する超塑性加工用金型において、一方の型の底に気体を吹き出す気体吹き出し口を設け、吹き出す気体を塞き止めて流れ方向を変えて気体の少なくとも一部を内壁に沿って成形素材に当てる気体放散手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
気体放散手段により一方の型の内壁に気体が沿うと、気体は内壁からの熱伝達により温度が上昇する。この結果、所定温度まで上昇した気体が予め所定温度に加熱した成形素材に接触するので、成形素材の温度低下の速度は遅くなるとともに、成形素材の温度のばらつきは小さくなる。従って、超塑性加工用金型は、成形素材の温度を所望の温度に保持する。
【0010】
請求項2は、一方の型の内壁の縁を他方の型の内壁の縁より内側に設けたことを特徴とする。
一方の型内の気体が成形素材を押圧する際の押圧面は、他方の型の内壁の縁から内側に離れるので、他方の型の縁に当接する成形素材の曲げ部は比較的大きな曲げ半径で曲り始めるとともに、伸び始める。従って、曲げ部から亀裂が発生する心配はなくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る超塑性加工用金型の斜視図であり、超塑性加工用金型10は、一方の型であるところの下金型11と、他方の型であるところの上金型12とからなる。13は成形素材を示す。
【0012】
下金型11は、本体16に内壁21,22,23,24と底25を形成し、この底25の中央に気体吹き出し口26を設け、この気体吹き出し口26に対向するように底25に気体放散手段27を設けたものである。内壁21〜24の端部には、それぞれ挟持部31・・・(・・・は複数を示す。以下同様。)を形成するとともに、縁32,33,34,35を形成した。36は気体吹き出し口26に連通する流路を示す。
【0013】
上金型12は、本体37に型38とともに、内壁41,42,43,44と底45を形成したものである。内壁41〜44の端部には、それぞれ挟持部51・・・を形成するとともに、縁52,53,54,55を下金型11の縁32,33,34,35に対して段差のないように形成したものである。
【0014】
気体放散手段27は、気体吹き出し口26に対して放散板61の中央を配置するとともに、底25から所定距離Hだけ離して底25に脚部材62・・・を介して取付けた。
【0015】
成形素材13は、アルミニウム合金の板である。アルミニウム合金は、超塑性加工用のAl−Mg系合金(5000系)の一種であるJIS−A5083(490℃での伸び率200%)が好適である。しかし、アルミニウム合金は、超塑性加工用のJIS−A5083以外の例えばAl−Mg系合金(5000系)やAl−Mg−Si系合金(A6000系)を使用することもできる。tは成形素材13の板厚を示す。
【0016】
次に超塑性加工用金型10を用いた成形要領を簡単に説明する。
まず、超塑性加工用金型10の下金型11と上金型12を成形装置63(図2参照)に取付け、これらの下金型11と上金型12を図に示していない加熱装置で所定温度Tmに保持する。一方、成形素材13を図に示していない加熱炉で所定温度Tw(Tw>Tm)、例えば450℃〜550℃に均一に加熱し、加熱炉から450℃〜550℃の成形素材13を図に示していない搬送手段で矢印▲1▼の如く素早く下金型11に搬送する。その次に、上金型12を下降させるとともに、成形素材13の縁64を矢印▲2▼の如く把持し、超塑性成形を開始する。
【0017】
図2は本発明に係る超塑性加工用金型を用いた成形要領の説明図である。
下金型11と上金型12を所定温度Tmに保持し、これらの下金型11と上金型12を成形装置63の所定圧力Pmで型閉すると同時に、所定温度Twの成形素材13を把持した後、下金型11の流路36に気体65を図に示していない気体制御装置で供給する。
【0018】
気体65の温度は、Tg(Tg<Tm<Tw)であり、温度Tgは、常温である。
また、気体65の圧力はPgに設定し、圧力Pgは、例えば5MPa前後に設定した。気体65の流量は、Qgに設定したが、流量は任意である。
【0019】
以上に述べた超塑性加工用金型の作用を次に説明する。
図3は本発明に係る超塑性加工用金型の第1作用図である。
超塑性加工用金型10の下金型11の流路36に気体65を供給すると同時に、気体吹き出し口26から気体65を上向き(矢印▲3▼の方向)に吹き出すと、気体65は、気体放散手段27の放散板61に当たって、矢印▲4▼の如く90°流れ方向を変えて周囲に広がり下金型11の内壁21,22(図1参照),23,24へ向かう。その際、気体65は、温度Tmの下金型11の底25からの熱伝達により温度Tgから温度T1(T1>Tg)に上がる。矢印の黒色は、気体65の温度が温度Tgより高いことを示す。
【0020】
図4は図3の4−4線断面図であり、気体65は、気体放散手段27の放散板61に当たって、矢印▲4▼,▲4▼の如く90°流れ方向を変えて周囲に広がり、温度がTgからT1(T1>Tg)に上がることを示す。続けて、気体65は、下金型11の内壁21,22,23,24に当たる。
【0021】
図5は本発明に係る超塑性加工用金型の第2作用図である。
気体65は、下金型11の内壁21,22(図1参照),23,24に沿うとともに、下金型11内を満たしながら同時に、内壁21,22(図1参照),23,24からの熱伝達により温度がT1からT2(T2>T1)に上昇する。
温度T2は下金型11の温度Tmより僅かに低く且つ、成形素材13の温度Twより少し低い温度(T2<Tm<Tw)である。
この結果、温度T2の気体65が温度Twの成形素材13に接触するので、成形素材13の温度低下の速度を遅くすることができるとともに、成形素材13の温度のばらつきを小さくすることができる。
【0022】
図6(a),(b)は本発明に係る超塑性加工用金型の第3作用図である。
(a)において、成形素材13の温度低下を抑えると同時に、温度のばらつきを防止するので、成形素材13に圧力Pgが作用すると、成形素材13はほぼ均一な板厚t1(t1<t)で伸び始める。
【0023】
(b)において、引き続き、温度T2の気体65を供給し続けることで、成形素材13はほぼ均一な板厚で伸びると同時に塑性変形し、上金型12の内壁41,42(図1参照),43,44(図1参照)および底45に板厚t2(t2<t1)で密着する。従って、成形素材13から均一な板厚t2の成形品66を得ることができる。
【0024】
このように、下金型11の底25に気体65を矢印▲3▼の方向に吹き出す気体吹き出し口26を設け、吹き出す気体65を塞き止めて流れ方向を変え(矢印▲4▼の方向)て気体65を下金型11の内壁21,22(図1参照),23,24に沿って成形素材13に当てる気体放散手段27を設けたので、内壁21,22(図1参照),23,24からの熱伝達により気体65の温度は上昇する。この結果、超塑性加工用金型10に素材加熱用ヒータや加熱ブロックを設けずに、成形素材13の温度を所望の温度に保持しつつ成形することができる。
【0025】
次に、本発明に係る超塑性加工用金型の第1別実施の形態を示す。
図7(a),(b)は第1別実施の形態図であり、上記図1に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
(a)において、下金型11Bは、内壁23Bの縁34Bを上金型12の内壁43の縁54より距離Lbだけ内側(矢印▲5▼の方向)に設けたことを特徴とする。図に示していない内壁21B,22B,24Bのそれぞれの縁32B,33B,35Bも同様である。
【0026】
(b)において、気体65の圧力Pgが成形素材13に作用する位置は上金型12の縁54から距離Lbだけ離れるので、成形素材13を大きな曲げ半径Rbで滑らかに曲げ始めることができ、縁54に当接する成形素材13の曲げ部から亀裂が生じるのを防止することができる。
【0027】
次に、第2別実施の形態を示す。
図8(a),(b)は第2別実施の形態図であり、上記図1に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
(a)において、下金型11Cは、内壁23Cに突部68を設け、この突部68に縁34Cを上金型12の内壁43の縁54より距離Lcだけ内側(矢印▲6▼の方向)に設けたことを特徴とする。図に示していない内壁21C,22C,24Cのそれぞれの縁32C,33C,35Cも同様である。
【0028】
(b)において、気体65の圧力Pgが作用する位置は上金型12の縁54から距離Lcだけ離れるので、成形素材13を大きな曲げ半径Rcで滑らかに曲げ始めることができ、成形素材13の亀裂を防止することができる。
また、縁34Cを突部68に設けることで、縁34Cを設けることによる下金型11Cの重量増加を小さくすることができる。
【0029】
次に、第3別実施の形態を示す。
図9は第3別実施の形態図であり、気体放散手段27Bは、複数の気体吹き出し口26,26に対してそれぞれ放散板71,71を脚部材72・・・を介して下金型11Dに配置したものである。
【0030】
第3別実施の形態では、複数の気体吹き出し口26,26に対して気体放散手段27Bを配置したので、複数の気体吹き出し口26,26から吹き出す気体65,65の流れ方向を変えて気体65,65を矢印▲7▼,▲7▼の如く周囲に広げ、下金型11Dの内壁に沿って成形素材に当てることができる。従って、気体吹き出し口26を複数設けても、気体65の温度を上げることができる。
【0031】
尚、本発明の実施の形態に示した図1の気体放散手段27では、放散板61として平板を用いたが、放散板61の形状は任意である。例えば、円錐状や角錐状の板でもよい。つまり、傘状に形成した放散板の頂部を気体吹き出し口26に向けて取付けることで、傘状の傾斜に沿って気体吹き出し口26から吹き出した気体を滑らかに、滞留させることなく型の内壁へ流すことができる。
【0032】
図1の下金型11および上金型12の型38の形状は一例である。
下金型11の挟持部31および上金型12の挟持部51の形状は任意である。
下金型11の内壁21,22,23,24に放熱板を設けてもよい。放熱板を設けることで、気体65の温度をより上げることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、一方の型の底に気体を吹き出す気体吹き出し口を設け、吹き出す気体を塞き止めて流れ方向を変えて気体の少なくとも一部を内壁に沿って成形素材に当てる気体放散手段を設け、気体放散手段は、底から所定距離だけ離れて、底から成形素材の縁を把持する挟持部までの距離の中央より底側近傍に配置されている放散板なので、一方の型の内壁に気体が沿うと、気体は内壁からの熱伝達により温度が上昇する。この結果、所定温度まで上昇した気体が予め所定温度に加熱した成形素材と放散板との間に流入して成形素材の全面に接触するので、成形素材の温度低下の速度は遅くなるとともに、成形素材の温度のばらつきは小さくなる。従って、超塑性加工用金型は、例えば、素材加熱用ヒータや加熱ブロックを設けずに、成形素材の温度を所望の温度に保持しつつ、最初に成形素材の中央をたわませて、成形することができ、成形素材から均一な板厚の成形品を得ることができる。
【0034】
請求項2では、一方の型の内壁の縁を他方の型の内壁の縁より内側に設けたので、一方の型内の気体が成形素材を押圧する際の押圧面は、他方の型の内壁の縁から内側に離れ、他方の型の縁に当接する成形素材の曲げ部は比較的大きな曲げ半径で曲り始めるとともに、伸び始める。従って、曲げ部から亀裂が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超塑性加工用金型の斜視図
【図2】本発明に係る超塑性加工用金型を用いた成形要領の説明図
【図3】本発明に係る超塑性加工用金型の第1作用図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】本発明に係る超塑性加工用金型の第2作用図
【図6】本発明に係る超塑性加工用金型の第3作用図
【図7】第1別実施の形態図
【図8】第2別実施の形態図
【図9】第3別実施の形態図
【符号の説明】
10…超塑性加工用金型、11…一方の型(下金型)、12…他方の型(上金型)、13…成形素材、21〜24…一方の型の内壁(下金型の内壁)、25…一方の型の底(下金型の底)、26…気体吹き出し口、27…気体放散手段、32〜35,34B,34C…一方の型の内壁の縁(下金型の内壁の縁)、41〜44…他方の型の内壁(上金型の内壁)、52〜55…他方の型の内壁の縁(上金型の内壁の縁)、64…成形素材の縁、65…気体。
Claims (2)
- 一対の型で成形素材の縁を把持し、一方の型内に気体を供給して成形素材を他方の型に押圧する超塑性加工用金型において、
前記一方の型の底に気体を吹き出す気体吹き出し口を設け、吹き出す気体を塞き止めて流れ方向を変えて気体の少なくとも一部を内壁に沿って成形素材に当てる気体放散手段を設け、
前記気体放散手段は、前記底から所定距離だけ離れて、前記底から前記成形素材の縁を把持する挟持部までの距離の中央より底側近傍に配置されている放散板であることを特徴とする超塑性加工用金型。 - 前記一方の型の内壁の縁を前記他方の型の内壁の縁より内側に設けたことを特徴とする請求項1記載の超塑性加工用金型。
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