JP3949206B2 - 金属加工用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属加工用潤滑油組成物に関し、更に詳しくは、切削又は研削加工に好適な不水溶性金属加工用潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に切削や研削等の金属加工において、塩素系極圧剤が切削性能向上の効果に優れ、かつ比較的安価なため多用されている。しかしながら、近年では塩素系極圧剤を配合した不水溶性切削油剤を使用した場合、焼却処理時のダイオキシンの発生による環境汚染や塩素ガス発生による焼却炉の腐食・損傷の問題を指摘されることがある。また、塩素系極圧剤のうち一部の塩素化パラフィンでは、毒性及び発癌性の可能性についての懸念も生じてきている。したがって、塩素系の極圧剤を含まない油剤の開発が進められている。
【0003】
ところで、活性のジハイドロカルビルポリサルファイド及び不活性の硫化油脂は硫黄系極圧剤として知られている。ここでいう、活性,不活性とは、銅板腐食試験(JIS K−2513)の試験管法において、100℃,1時間の条件で実施した結果の値が3又は4を活性、1又は2を不活性と定義する。活性ジハイドロカルビルポリサルファイドを含む切削油は加工性はよいが、腐食の問題がある。一方、不活性硫化油脂を含む切削油は腐食性は低いが、加工性に問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記観点からなされたもので、塩素系極圧剤を含有せず、焼却処理において有害ガスを発生せず、環境汚染あるいは焼却炉損傷の問題がないうえ、加工性がよく、かつ腐食性の低い金属加工用潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、潤滑油基油として活性のものを使用し、添加剤として活性ジハイドロカルビルポリサルファイドと不活性硫化油脂を併用することにより、驚くべきことに両者の良い点だけを引き出せることを見出し本発明を完成したものである。
【0006】
すなわち、本発明は、(A)活性硫化鉱油、(B)活性ジハイドロカルビルポリサルファイド、及び(C)不活性硫化油脂を含有することを特徴とする金属加工用潤滑油組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。本発明の金属加工用潤滑油組成物を構成する(A)成分は、銅板腐食試験(JIS K−2513)で3又は4の値を有する活性硫化鉱油である。(A)成分中の硫黄含有量は0.1〜1.5重量%が好ましい。
【0008】
(A)成分の一つの態様として、銅板腐食試験(JIS K−2513)で1又は2の値を有する一種あるいは二種以上の不活性鉱油と硫黄を反応して得られる活性硫化鉱油を挙げることができる。該硫化鉱油は、通常鉱油100重量部に対して、硫黄を0.1〜1重量部を加え、120〜130℃で、10分〜1時間反応させればよい。
【0009】
原料の鉱油としては、例えばパラフィン基系原油,中間基系原油あるいはナフテン基系原油を常圧蒸留するか、あるいは常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、またはこれを常法にしたがって精製することによって得られる精製油、例えば、溶剤精製油,水添精製油,脱蝋処理油,白土処理油などを挙げることができる。また、硫黄としては特に制限はなく、天然産のもの、天然ガスや石油留分の脱硫に伴い生産されるものなどを挙げることができる。
【0010】
本発明に使用される活性硫化鉱油は、40℃における動粘度が1〜100mm2/sの範囲にあるものが好ましく、3〜50mm2/sの範囲にあるものがより好ましい。基油の動粘度が高すぎると油剤が被加工物に付着して持ち去られる量が多くなり、経済的でなくなる場合があり好ましくない。逆に、低すぎるとミスト発生により作業性悪化を招く場合があり好ましくない。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、−10℃以下であるのが好ましい。
【0011】
ところで、本発明の金属加工用潤滑油組成物において、前記活性硫化鉱油として40℃における動粘度が約10mm2/s以下の比較的低粘度のものを用いる場合には、高分子化合物を配合することによって、金属加工時のミスト発生を効果的に抑制することができる。上記の高分子化合物は、通常、数平均分子量が2,000〜300,000のものが好ましく使用される。このような高分子化合物としては、種々のものがあるが、例えば、ポリメタクリレート,ポリイソブチレン,オレフィンコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマー,スチレン−ブタジエンコポリマー,スチレン−イソプレンコポリマー等)などを挙げることができる。
【0012】
この高分子化合物の配合割合については、その分子量や基油の性状等にもよるが、通常、組成物全量基準で、0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜10重量%の割合で配合することができる。高分子化合物が0.01重量%未満では、ミスト発生を充分抑制できない場合がある。また、20重量%を超えると、粘度上昇により、油剤が被加工物に持ち去られる等のおそれがあり好ましくない。
【0013】
次に、本発明の金属加工用潤滑油を構成する(B)成分は、銅板腐食試験(JIS K−2513)で3又は4の値を有する活性ジハイドロカルビルポリサルファイドである。
ジハイドロカルビルポリサルファイドは、下記の一般式(I)
R1 −Sx −R2 ・・・(I)
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基又は環状アルキル基,炭素数6〜20のアリール基,炭素数7〜20のアルキルアリール基又は炭素数7〜20のアリールアルキル基を示し、それらは互いに同一でも異なっていてもよく、xは2〜8の整数を示す。)
で表される化合物である。ここで、R1 及びR2 がアルキル基の場合、硫化アルキルと言われる。
【0014】
上記一般式(I)におけるR1 及びR2 の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,各種ペンチル基,各種ヘキシル基,各種ヘプチル基,各種オクチル基,各種ノニル基,各種デシル基,各種ドデシル基,シクロヘキシル基,シクロオクチル基,フェニル基,ナフチル基,トリル基,キシリル基,ベンジル基,フェネチル基などを挙げることができる。
【0015】
このジハイドロカルビルポリサルファイドとしては、例えば、ジベンジルポリサルファイド,ジ−tert−ノニルポリサルファイド,ジドデシルポリサルファイド,ジ−tert−ブチルポリサルファイド,ジオクチルポリサルファイド,ジフェニルポリサルファイド,ジシクロヘキシルポリサルファイドなどを好ましく挙げることができる。
【0016】
本発明においては、上記(B)成分は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、通常、組成物全重量基準で、0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜15重量%の範囲がより好ましい。0.1重量%未満では、切削,研削の加工性を維持できない場合があり、30重量%を超えても、配合量に相当する効果の向上がみられない場合がある。
【0017】
また、本発明の金属加工用潤滑油組成物を構成する(C)成分は、銅板腐食試験(JIS K−2513)で1又は2の値を有する不活性硫化油脂である。
硫化油脂は硫黄や硫黄含有化合物と油脂(ラード油,鯨油,植物油,魚油等)を反応させて得られるものであり、その硫黄含有量は特に制限はないが、一般に5〜30重量%のものが好適である。その具体例としては、硫化ラード,硫化なたね油,硫化ひまし油,硫化大豆油,硫化米ぬか油などを挙げることができる。
【0018】
本発明においては、上記(C)成分は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、通常組成物全重量基準で、0.1〜70重量%の範囲が好ましく、1〜30重量%の範囲がより好ましい。0.1重量%未満では、切削,研削の加工性を維持できない場合があり、70重量%を超えても、配合量に相当する効果の向上がみられない場合がある。
【0019】
また、上記(C)成分と(B)成分の重量比(C)成分/(B)成分の値は、相乗効果の点で、0.5〜30が好ましく、1〜10がより好ましい。
本発明の金属加工用潤滑油組成物は、(A)〜(C)成分を配合することにより得られるが、通常、金属加工油としての基本的な性能を維持するために、本発明の目的を阻害しない範囲で各種公知の添加剤を適宜配合することができる。例えば、硫化オレフィン,硫化エステルなどの(B),(C)成分以外の硫黄系極圧剤、リン酸エステル,亜リン酸エステルなどのリン系極圧剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート,フェネート,サリチレートなどの金属系清浄分散剤、アルケニルコハク酸又はそのエステルやイミドなどの無灰系分散剤、オレイン酸,ステアリン酸,ダイマー酸などのカルボン酸又はそのエステルなどの油性剤、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP,アリール型を除く),ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC),硫化オキシモリブデンジチオカルバメート(MoDTC),ジチオリン酸ニッケル(NiDTP),ジチオカルバミン酸ニッケル(NiDTC)などの耐摩耗剤、アミン系やフェノール系の酸化防止剤、チアジアゾール,ベンゾトリアゾールなどの金属不活性化剤、ソルビタンエステル,石油スルホン酸などの防錆剤、ジメチルポリシロキサン,ポリアクリレートなどの消泡剤などを挙げることができる。
【0020】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1及び比較例1〜5
第1表に示す割合で、各成分を配合し、実施例及び比較例の切削油組成物を調製した。これら実施例と比較例の組成物につき、下記の要領で丸棒旋削実験と銅板腐食試験を行い油剤の加工性能と腐食性を評価した。その結果を第1表に示す。
〔切削実験〕
下記の切削条件で丸棒旋削実験を行い、切削抵抗(主分力)及び仕上げ面粗さ(RZ )を計測することにより、油剤の加工性能を評価した。
〔銅板腐食試験〕
JIS K−2513の試験管法において、100℃,1時間の条件で実施した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
(注)
*1:パラフィン系の鉱油を硫黄粉末と反応させたもの。(硫黄含有量0.6 重量%,40℃における動粘度10mm2 /s)
*2:パラフィン系鉱油(40℃における動粘度10mm2 /s)
*3:ジ−tert−ノニルポリサルファイド
*4:ジ−tert−ドデシルトリサルファイド
*5:硫化ラード(硫黄含有量11重量%)
*6:ラード
第1表より、実施例1の油剤の加工性能は比較例1〜4の活性の油剤に比較して同等以上で、腐食性も低いことがわかる。また、不活性の比較例5の油剤と比較して加工性能が優れていることがわかる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の金属加工用潤滑油組成物は、塩素系極圧剤を含有せず、焼却処理において有害ガスを発生せず、環境汚染あるいは焼却炉損傷の問題がないうえ、加工性がよく、かつ腐食性の低いものである。
Claims (3)
- (A)活性硫化鉱油、(B)活性ジハイドロカルビルポリサルファイド、及び(C)不活性硫化油脂を含有することを特徴とする金属加工用潤滑油組成物。
- 組成物全量基準で、(B)成分が0.1〜30重量%、(C)成分が0.1〜70重量%である請求項1記載の金属加工用潤滑油組成物。
- (C)成分/(B)成分(重量比)の値が0.5〜30である請求項1又は2記載の金属加工用潤滑油組成物。
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