JP3948951B2 - 防水シート及びこれを用いた汚物処理袋 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性、水離解性又は水分散性を有する防水シート及びこれを用いた汚物処理袋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
糞尿等の汚物を処理するための汚物処理袋は、今日、ペット等の糞尿処理、簡易トイレ、人工肛門からの排泄物の貯納、介護分野における汚物処理などに広く使用されている。かかる汚物処理袋の材料としては、従来、ポリエチレン等の合成樹脂フィルムが用いられている。そのため、これらの汚物処理袋は、使用後、焼却処分又は埋立処分による廃棄処理が行われており、環境負荷の大きいものである。
【0003】
かかる環境負荷を低減すべく、耐水性及び生分解性を有する内側の樹脂層と、水溶性又は水分解性を有する外側の樹脂層との2層で構成される汚物処理袋が開発されている(特開平4−328616号等公報参照)。この汚物処理袋は、内側の樹脂層の耐水性によって糞尿等の汚物の貯納が可能であり、さらに水洗トイレ等に投棄すると、外側の樹脂層が水に溶解又は離解し、内側の樹脂層が微生物によって生分解されるよう構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の汚物処理袋は、上述のように溶解又は離解及び生分解されるため焼却、埋立等の廃棄処理が不要になるが、内側の樹脂層の微生物による生分解には長時間を要する。従って、この汚物処理袋を水洗トイレ等に投棄すると、外側の樹脂層が溶解又は離解しても内側の樹脂層が残存し、トイレ配管、下水道、下水処理施設等において詰まり等の不都合が発生するおそれがある。そのため、上記汚物処理袋は現在まで市販されていない。
【0005】
本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、優れた溶解性、離解性又は分散性によって例えば水洗トイレ等に直接流すことができ、環境に優しい防水シート及びこれを用いた汚物処理袋の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた発明は、
水溶性又は水離解性を有する樹脂フィルムと、
この樹脂フィルムの表面に積層される耐水樹脂層とを備え、
この耐水樹脂層が樹脂マトリックス中に充填剤を含有しており、
上記充填剤の平均粒子径が耐水樹脂層の厚みの30%以上100%以下で、
上記樹脂マトリックスの基材ポリマー100部に対する充填剤の配合量が50部以上500部以下である汚物処理用防水シートである。
【0007】
当該防水シートは、積層される耐水樹脂層によって防水性を有し、例えば糞尿等の水分を含む汚物を包むことができる。また、当該防水シートの樹脂フィルムは、水中へ浸積することで水中に溶解又は離解する。一方、当該防水シートの耐水樹脂層は、樹脂マトリックス中に充填剤を含有することから、水中へ浸積し、流水、撹拌等によって外的応力を付加することで離解又は分散する。そのため、当該防水シートは、例えば水洗トイレ等に流すことで、全体が溶解、離解又は分解し、焼却、埋立等の廃棄処理を回避することができる。さらに、当該防水シートは、充填剤の平均粒子径を耐水樹脂層の厚みの30%以上100%以下、充填剤の配合量を50部以上500部以下とすることで、耐水樹脂層の防水性を維持しつつ、水中での外的応力付加時の離解又は分解性を促進することができる。
【0008】
上記樹脂フィルムの形成材料としては、溶解性及び溶解後の安全性が高いポリビニルアルコールを用いるとよい。
【0009】
上記耐水樹脂層の形成材料としては生分解性樹脂を用いるとよい。上述のように耐水樹脂層が水中で離解又は分解した後に、例えば流された下水処理施設等において生分解され、環境負荷を格段に低減することができる。
【0010】
上記充填剤としても生分解性樹脂製の充填剤を用いるとよい。このように生分解性樹脂製の充填剤を用いることで、耐水樹脂層の離解又は分解後に、充填剤をも生分解されるため、環境負荷の低減化を促進することができる。
【0012】
上記耐水樹脂層を樹脂フィルムの両表面に積層するとよい。このように、樹脂フィルムの上下両面に耐水樹脂層を積層することで、上述のような汚物処理において当該防水シートの表裏を考慮する必要がなくなり、防水性も向上するため、取扱性が向上する。
【0013】
従って、当該防水シートを用いた汚物処理袋によれば、糞尿等の水分を含む汚物を貯納することができ、かつ、かかる汚物を貯納した状態のまま直接水洗トイレ等に流すことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1は本発明の一実施形態に係る防水シートを示す模式的断面図、図2は図1の防水シートとは異なる形態の防水シートを示す模式的断面図、図3は図1の防水シートを用いた汚物処理袋を示す模式的斜視図である。
【0015】
図1の防水シート1は、水溶性又は水離解性を有する樹脂フィルム2と、この樹脂フィルム2の表面に積層される耐水樹脂層3とを備えている。
【0016】
樹脂フィルム2は、上述のように水溶性又は水離解性を有するものであり、強度等を考慮して多層構造とすることも可能である。この樹脂フィルム2の形成材料としては、水溶性又は水離解性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリビニルアルコール等の水溶性樹脂が用いられ、その他ワックスエマルジョン、樹脂エマルジョン、合成ゴム系ラテックス、これらの混合物等も用いられる。中でも、高い水溶性又は水離解性を有し、溶解又は離解前に高い強度及び内容物の保護性を有する水溶性樹脂が好適に用いられ、特に優れた水溶性又は水離解性を有し、かつ、溶解又は離解後において環境等に対する安全性を有するポリビニルアルコールが好ましい。
【0017】
上記ポリビニルアルコールの具体例としては、例えば部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体などが挙げられる。この部分ケン化ポリビニルアルコールのケン化度の下限としては75モル%、特に80モル%が好ましく、このケン化度の上限としては98モル%、特に95モル%が好ましい。ケン化度をこの範囲とすることで優れた水溶性を発揮することができる。また、この部分ケン化ポリビニルアルコールの重合度の下限としては300、特に500が好ましく、この重合度の上限としては3000、特に2000が好ましい。これは、部分ケン化ポリビニルアルコールの重合度が上記下限より小さいと、成形後のフィルム強度が小さくなり、逆に、重合度が上記上限を超えると、溶解又は離解が完了するまでの時間が長くなることからである。
【0018】
上記ポリビニルアルコール誘導体としては、(a)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、酢酸アリル等の不飽和カルボン酸と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、(b)無水コハク酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等の酸無水物によるエステル化物などが挙げられる。
【0019】
上記合成ゴム系ラテックスとしては、具体的には、スチレンブタジエンラテックス、メタクリレートブタジエンラテックス、アクリルニトリルブタジエンラテックスなどが挙げられるが、耐水性が良好で、伸びがよく折割れによる亀裂が生じにくいスチレンブタジエンラテックスが好適である。
【0020】
上記アクリル系エマルジョンとしては、具体的には、スチレンおよびスチレン誘導体、アクリル酸(メタクリル酸)、アクリル酸(メタクリル酸)エステル等を共重合したアクリルコポリマー、アクリル−スチレンコポリマー等の共重合体系を用いることができる。
【0021】
なお、この樹脂フィルム2の形成材料には、上記基材ポリマーに加えて、例えばその他の樹脂、炭化水素系オリゴマー、界面活性剤、可塑剤、スリップ剤、分散剤、安定剤、着色剤、顔料、芳香剤等を適宜配合することができる。
【0022】
樹脂フィルム2の厚みは、特に限定されるものではなく、当該防水シート1の使用用途、形成材料等に応じて適宜決定することができる。例えば、当該防水シート1をペットの糞処理袋、簡易トイレの内袋等の汚物処理袋やベットに敷設するおねしょシーツなどに使用する場合、樹脂フィルム2の厚みの下限としては10μm、特に25μmが好ましく、その厚みの上限としては150μm、特に120μmが好ましい。これは、樹脂フィルム2の厚みが上記下限より小さいと、包装材としての強度が不足するおそれがあり、逆に、上記上限を超えると、水中への浸積後溶解又は離解するまでの時間がかかることからである。
【0023】
樹脂フィルム2の形成方法としては、特に限定されるものではなく、上記形成材料に応じて好適な公知の方法が採用される。一般的には、(a)溶融合成樹脂をフィルム状に押し出すTダイ法、インフレーション法等の押出成形や、(b)溶剤で溶解した合成樹脂をステンレスベルト等の板状型に流し、溶剤を乾燥させるキャスティングなどによって製造される。
【0024】
耐水樹脂層3は、耐水性を有する樹脂マトリックス4と、この樹脂マトリックス4中に含有する充填剤5とを有している。かかる耐水樹脂層3は、水中へ浸積し、加えて流水、撹拌等によって外的応力を付加することで、樹脂マトリックス4と充填剤5との界面で容易に裂け、比較的細かく離解又は分散する。
【0025】
耐水樹脂層3の厚みは、特に限定されるものではなく、当該防水シート1の使用用途、形成材料の物性等を考慮して適宜決定することができる。例えば、当該防水シート1をペットの糞処理袋、簡易トイレの内袋等の汚物処理袋やベットに敷設するおねしょシーツなどに使用する場合、耐水樹脂層3の厚みの下限としては1μm、特に5μmが好ましく、耐水樹脂層3の厚みの上限としては100μm、特に60μmが好ましい。これは、耐水樹脂層3の厚みが上記下限より小さいと、防水性が低下するおそれがあり、逆に、上記上限を超えると、不経済になるばかりであり、上述のように生分解性樹脂を用いた場合には生分解されるのに時間がかかり過ぎることからである。
【0026】
樹脂マトリックス4はポリマー組成物から形成されている。このポリマー組成物の基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂等を用いることができる。中でも、基材ポリマーとしては生分解性樹脂が好ましい。かかる生分解性樹脂から耐水樹脂層3を形成すると、耐水樹脂層3が生分解され、耐水樹脂層3によるゴミの発生や下水道等の詰まりの発生を防止することができる。
【0027】
上記生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステル等の合成生分解性樹脂と天然生分解性樹脂とに大別される。この脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリヒドロキシ酢酸、ポリラクタイド、ポリプロピオラクトン、ポリ3−ホドロキシブチレート、ポリε−カプロラクトン、ポリピバラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼテート、ポリエチレンスベレート、3ヒドロキシブチレート−3ヒドロキシバリレート共重合体などが挙げられる。また、上記天然生分解性樹脂としては、例えばシェラック、ダンマル、キサンタンガム、キトサン、コラーゲン、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0028】
なお、耐水樹脂層3の樹脂マトリックス4を形成するためのポリマー組成物には、上記基材ポリマーの他に、例えば可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤、界面活性剤、スリップ剤、着色剤、顔料、芳香剤等が配合されてもよい。
【0029】
充填剤5には、無機フィラー及び有機フィラーがある。この無機フィラーとしては、具体的にはシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。また、有機フィラーの具体的な材料としては、例えばアクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。特に、この充填剤5として生分解性樹脂製のものを用いるとよく、上述のように樹脂マトリックス4の基材ポリマーに生分解性樹脂を用いることと相まって、耐水樹脂層3の全てが離解又は分解後に生分解され、環境負荷の低減化をより一層促進することができる。
【0030】
充填剤5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、粒状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも耐水樹脂層3の離解又は分散性に優れる球状が好ましい。
【0031】
充填剤5の平均粒子径の下限としては耐水樹脂層3の厚みの30%、特に50%、さらに60%が好ましく、上記平均粒子径の上限としては耐水樹脂層3の厚みの100%、特に90%、さらに80%が好ましい。これは、充填剤5の平均粒子径が上記下限より小さいと、充填剤5による耐水樹脂層3の離解又は分散作用が低減するおそれがあり、逆に、上記平均粒子径が上記上限を越えると、充填剤5が耐水樹脂層3の表面から突出し、耐水樹脂層3の防水性が低下するおそれがあることからである。
【0032】
樹脂マトリックス4を形成する上記ポリマー組成物の基材ポリマー100部に対する充填剤5の配合量の下限としては10部、特に25部、さらに50部が好ましく、上記配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、充填剤5の配合量が上記下限より小さいと、充填剤5による耐水樹脂層3の離解又は分散作用が低減するおそれがあり、逆に、充填剤5の配合量が上記上限を越えると、耐水樹脂層3の防水性が低下するおそれがあることからである。
【0033】
上記耐水樹脂層3の形成方法としては、樹脂フィルム2の表面に耐水樹脂層3が積層できれば特に限定されないが、一般的には塗工等の手段が採用される。耐水樹脂層3を塗工により形成する方法としては、具体的には、樹脂マトリックス4を構成するポリマー組成物に充填剤5を混合することで塗工液を製造する工程と、この塗工液を樹脂フィルム2の表面に塗工することで耐水樹脂層3を積層する工程とからなる。
【0034】
当該防水シート1は、耐水樹脂層3の防水性によって例えば糞尿等の水分を含む汚物を包むことができる。また、当該防水シート1は、水中への浸積によって樹脂フィルム2が溶解又は離解し、水中への浸積及び流水、撹拌等による外的応力の付加によって耐水樹脂層3が離解又は分散する。
【0035】
図2の防水シート11は、樹脂フィルム2の上下両表面に耐水樹脂層3が積層されている。この樹脂フィルム2及び耐水樹脂層3は、上記図1の防水シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。当該防水シート11によれば、両面に耐水樹脂層3が積層されているため、上述のような汚物処理において表裏を考慮する必要がなくなり、さらに防水性も向上するため、取扱性が向上する。
【0036】
図3の汚物処理袋21は、防水シート1を袋状に形成したものであり、樹脂フィルム2が外側、耐水樹脂層3が内側となるよう構成されている。当該汚物処理袋21は、内側の耐水樹脂層3が有する防水性によって、糞尿等の水分を含む汚物を貯納することができる。また、当該汚物処理袋21は、例えば水洗トイレ等に流すことで、樹脂フィルム2が溶解又は離解し、耐水樹脂層3が離解又は分解し、つまり全体が溶解、離解又は分解し、トイレ配管や下水処理施設等に詰まり等の不都合が発生することがない。そのため、当該汚物処理袋21によれば、ペットの糞等の汚物を貯納したまま直接水洗トイレ等に流すことができ、汚物処理の便利性が格段に向上する。また、従来の汚物処理袋のような焼却、埋立等の廃棄処理が不要であり、環境に非常に優しいものである。
【0037】
なお、本発明の防水シートは上記実施形態に限定されるものではなく、例えば看護分野においてベッドに敷設するおねしょシーツなどとして使用することができ、同様に環境負荷の大きい焼却、埋立等の廃棄処理を回避することができる。また、汚物処理袋は手袋状に成形することもでき、ペットの糞等の貯納の容易化が促進される。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防水シート及びこれを用いた汚物処理袋によれば、全体が溶解、離解又は分解されるため、例えば水洗トイレ等に直接流すことができ、環境に優しくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る防水シートを示す模式的断面図である。
【図2】図2は、図1の防水シートとは異なる形態の防水シートを示す模式的断面図である。
【図3】図1の防水シートを用いた汚物処理袋を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
1・・・防水シート
2・・・樹脂フィルム
3・・・耐水樹脂層
4・・・樹脂マトリックス
5・・・充填剤
11・・・防水シート
21・・・汚物処理袋

Claims (6)

  1. 水溶性又は水離解性を有する樹脂フィルムと、
    この樹脂フィルムの表面に積層される耐水樹脂層とを備え、
    この耐水樹脂層が樹脂マトリックス中に充填剤を含有しており、
    上記充填剤の平均粒子径が耐水樹脂層の厚みの30%以上100%以下で、
    上記樹脂マトリックスの基材ポリマー100部に対する充填剤の配合量が50部以上500部以下である汚物処理用防水シート。
  2. 上記樹脂フィルムの形成材料としてポリビニルアルコールが用いられている請求項1に記載の防水シート。
  3. 上記耐水樹脂層の形成材料として生分解性樹脂が用いられている請求項1又は請求項2に記載の防水シート。
  4. 上記充填剤として生分解性樹脂製の充填剤が用いられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の防水シート。
  5. 上記耐水樹脂層が樹脂フィルムの両表面に積層されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の防水シート。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の防水シートを用いた汚物処理袋。
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