JP3948939B2 - 印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置、印字ヘッドの温度検出装置及び画像形成装置 - Google Patents

印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置、印字ヘッドの温度検出装置及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電体部材を使用して形成され、圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する印字ヘッドの静電容量検出方法、この印字ヘッドの静電容量検出方法による印字ヘッドの温度検出方法、この印字ヘッドの静電容量検出方法を実施する印字ヘッドの静電容量検出装置、この印字ヘッドの静電容量検出装置を備える印字ヘッドの温度検出装置、この印字ヘッドの静電容量検出装置を備える画像形成装置、及びこの印字ヘッドの温度検出装置を備える画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
並列するインク吐出アクチュエータ(印字ヘッド)に画像信号を印加することにより、画像信号に応じて選択的にインクの吐出を行い、用紙等の画像形成媒体に画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置では、印字ヘッドから吐出されるインク滴の大きさは、インクの粘度に大きく左右され、インクの粘度はその温度に依存して変化する。
インク滴の大きさが不均一である場合、印字画像に濃度むら等が発生し、印字品位の低下及び画質の低下を招く。
【0003】
従って、高品位な印字を行う為に、インク及び印字ヘッドの温度を検出し、印字ヘッドに印加する駆動波形を、検出した温度に応じて適宜変更することにより、印字ヘッドから吐出されるインク滴の大きさを均一にし、高品位な印字を維持することが、従来からなされている。
【0004】
図16は、従来の印字ヘッドの温度検出装置の構成例を示すブロック図である。この印字ヘッドの温度検出装置は、印字ヘッド7内のインク室の内部(図示せず)又は印字ヘッド7近傍に、1又は複数配置されたダイオード8(又はサーミスタ)と、ダイオード8に一定の順方向電圧を与える定電流回路9と、ダイオード8の順方向電圧を増幅する増幅器2と、増幅器2が増幅した順方向電圧をアナログ/ディジタル変換するA/D変換器4と、プリンタ(画像形成装置)が印字する際に必要な図示しない機構部及び印字ヘッド7の駆動制御を行うCPU5(中央処理装置)とから構成されている。
【0005】
ダイオード8は、一定の順方向電流が流れているとき、図15の特性図に示すような温度T−順方向電圧Vf特性を示す。
但し、
順方向電圧Vf=1.15V±50mV (1)
(順方向電流If=200μA、ダイオード8の温度T=25℃.)
温度変化量ΔVf=−4.5mV/℃. (2)
(順方向電流If=200μA)
である。
これにより、温度が高くなるに従って、順方向電圧Vfが低下し、例えば、25℃.のときの順方向電圧Vfが1.15Vであることが判る。
【0006】
このような構成の印字ヘッドの温度検出装置では、プリンタの電源が投入されると、定電流回路9によりダイオード8にIf=200μAの順方向電流が供給される。この状態で、ダイオード8の順方向電圧Vfは、増幅器2により増幅された後、A/D変換器4によりディジタル信号に変換され、CPU5に取り込まれる。
CPU5は、取り込んだ順方向電圧Vfにより、図15に示すような特性を有する内蔵するルックアップテーブルを参照することにより、印字ヘッド7の温度情報を得ることが出来る。
【0007】
尚、このような印字ヘッドの温度検出装置を改良した提案が多数行われており、例えば、特開2001−205803には、記録ヘッド内に有する複数のノズルに対応して設けられた駆動素子を駆動する為の原駆動信号を伝達する原駆動信号線に流れる駆動電流を検出し、検出した駆動電流から駆動素子の温度を決定する記録ヘッドの駆動制御装置が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の印字ヘッドの温度検出装置のように、ダイーオード又はサーミスタを印字ヘッド内部のインク室の内部又は印字ヘッドの近傍に配置し、これらの温度による特性変化量を検出する方法では、印字ヘッドの温度を局所的に検出する結果となり、ダイーオード又はサーミタの配置される位置に依存して、温度が検出されてしまう。
更には、ダイーオード又はサーミタの温度による特性変化量を検出する方法では、間接的に印字ヘッド内部のインク室の温度を検出しており、インク室そのものの温度を検出しているわけではないので、必ずしも正確な温度を検出していないという問題があった。
【0009】
また、図5の印字ヘッドの断面図に示すような、複数のインク室15を有し、インク室15の側壁13の少なくとも一部が、天壁12及び底壁17方向に分極された圧電体部材で形成され、圧電体部材の表面に設けられた電極14に、同一周期の複数の駆動電圧から少なくとも第1駆動電圧及び第2駆動電圧を選択的に印加し、圧電体部材13に剪断変形を生じさせ、インクを吐出する印字ヘッドについては、全てのインク室15の温度情報を加味した温度情報を得ることは困難であった。
【0010】
従来の温度検出方法では、全てのインク室15の温度情報を加味した温度情報を得るには、厳密には全てのノズルに対応した全てのインク室15の内部に、ダイーオード又はサーミタを配置しなければならず、構造が複雑になり製造コストが大きく上昇するという問題があった。その為、実際には、少数のインク室15内部にダイーオード又はサーミタを配置することが多かった。
更には、直接、印字ヘッドの発熱に寄与する印字時のインク室のみの温度情報を得ることは、非常に困難であるという問題があった。
【0011】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの静電容量検出方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、安価な簡単な構成でインク室そのものの温度を知ることが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの静電容量検出装置を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの静電容量検出装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法は、圧電体部材を使用して形成され、該圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され前記圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する印字ヘッドの静電容量検出方法であって、前記静電容量は、インクを吐出する為の駆動パルスが印加される圧電体の静電容量であり、かつ、前記圧電体部材に蓄積される電荷量の変化を検出し、検出した電荷量の変化を積分して電荷量を検出し、検出した電荷量に基づき検出する静電容量であり、前記インク室は、互いに隣接する方向の側壁が前記圧電体部材により形成され、該圧電体部材は、前記インク室の底壁及び天壁の方向に分極され、前記電極に同一周期の複数の駆動電圧を選択的に印加することにより、前記圧電体部材が剪断変形し、前記電荷量の変化は、前記複数の駆動電圧の内の第2駆動電圧及び第3駆動電圧のそれぞれの変化を、それぞれの所定の割合で加えたものであることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法は、前記電荷量は、前記電極に電圧が印加された際に蓄積されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法は、前記電荷量は、個別の前記インク室について検出することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法は、前記電荷量は、複数の前記インク室についてまとめて検出することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る印字ヘッドの温度検出方法は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法により検出された印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドの温度を検出することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置は、圧電体部材を使用して形成され、該圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され前記圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する印字ヘッドの静電容量検出装置であって、前記静電容量は、インクを吐出する為の駆動パルスが印加される圧電体の静電容量であり、前記圧電体部材に蓄積される電荷量の変化を検出する電荷量変化検出手段と、該電荷量変化検出手段が検出した電荷量の変化を積分する手段とを有し、該手段の積分結果を前記電荷量として検出する電荷量検出手段を備え、該電荷量検出手段が検出した電荷量に基づき前記静電容量を検出すべくなしてあり、前記インク室は、互いに隣接する方向の側壁が前記圧電体部材により形成され、該圧電体部材は、前記インク室の底壁及び天壁の方向に分極され、前記電極に同一周期の複数の駆動電圧を選択的に印加することにより、前記圧電体部材が剪断変形し、前記電荷量変化検出手段は、前記複数の駆動電圧の内の第2駆動電圧及び第3駆動電圧のそれぞれの変化を検出する手段と、該手段が検出したそれぞれの変化を所定の割合で加える手段とを有し、該手段が加えた結果を前記電荷量の変化とすべくなしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置では、圧電体部材を使用して形成され、圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する。静電容量は、インクを吐出する為の駆動パルスが印加される圧電体の静電容量であり、電荷量検出手段が、圧電体部材に蓄積される電荷量を検出し、電荷量検出手段が検出した電荷量に基づき印字ヘッドの静電容量を検出する。
電荷量検出手段は、電荷量変化検出手段が、圧電体部材に蓄積される電荷量の変化を検出し、積分する手段が、電荷量変化検出手段が検出した電荷量の変化を積分し、その積分結果を圧電体部材に蓄積される電荷量とする。
インク室は、互いに隣接する方向の側壁が圧電体部材により形成され、圧電体部材は、インク室の底壁及び天壁の方向に分極され、電極に同一周期の複数の駆動電圧を選択的に印加することにより、圧電体部材が剪断変形する。電荷量変化検出手段は、変化を検出する手段が、複数の駆動電圧の内の第2駆動電圧及び第3駆動電圧のそれぞれの変化を検出し、加える手段が、その検出したそれぞれの変化を所定の割合で加え、その加えた結果を圧電体部材に蓄積される電荷量の変化とする。
これにより、電荷量変化検出手段に抵抗等の安価な部品を使用することが出来、僅かな回路を追加するのみで、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る。
また、インクを吐出させる為の共通の第2駆動電圧と、インクを吐出させない為の共通の第3駆動電圧(印字頻度の変化による印字ヘッドの発熱を一定化するための補正駆動電圧)との変化を検出して処理することで静電容量を検出するので、全体の1/3のインク室(隣接する3つの内、必ず1つが含まれる)の温度情報を加味した温度を知ることが、僅かな回路を追加するのみで可能となる。また、共通の第2駆動電圧と共通の第3駆動電圧とがそれぞれ印字ヘッドの発熱に寄与する割合を考慮した温度を知ることが、僅かな回路を追加するのみで可能となる。
【0025】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置は、前記電荷量検出手段は、前記電極に電圧が印加された際に蓄積される電荷量を検出すべくなしてあることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置では、電荷量検出手段は、電極に電圧が印加された際に蓄積される電荷量を検出するので、僅かな回路の変更により、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る。
【0027】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置は、前記電荷量検出手段は、個別の前記インク室について前記電荷量を検出すべくなしてあることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置では、電荷量検出手段は、個別のインク室について圧電体部材に蓄積される電荷量を検出するので、インク室毎の温度のばらつき情報を得ることが出来、個別のインク室に対して個別の駆動条件を与えることが可能となる。
【0029】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置は、前記電荷量検出手段は、複数の前記インク室についてまとめて前記電荷量を検出すべくなしてあることを特徴とする。
【0030】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置では、電荷量検出手段は、複数のインク室についてまとめて圧電体部材に蓄積される電荷量を検出するので、複数のインク室の温度情報を加味した温度検出が、僅かな回路を追加することにより可能となる。
【0036】
本発明に係る印字ヘッドの温度検出装置は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、該印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドの温度を検出することを特徴とする。
【0037】
本発明に係る印字ヘッドの温度検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの温度検出装置では、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、印字ヘッドの温度を検出する。
これにより、ダイオード又はサーミスタ等の特別な温度検出手段を追加することなく、インク室そのものの温度を検出することが可能であり、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出方法及び印字ヘッドの温度検出装置を実現することが出来る。
【0038】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、該印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つべくなしてあることを特徴とする。
【0039】
この画像形成装置では、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つように構成してあるので、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの静電容量検出装置を備えた画像形成装置を実現することが出来る。
【0040】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る印字ヘッドの温度検出装置を備え、該印字ヘッドの温度検出装置が検出した印字ヘッドの温度に基づき、該印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つべくなしてあることを特徴とする。
【0041】
この画像形成装置では、本発明に係る印字ヘッドの温度検出装置を備え、印字ヘッドの温度検出装置が検出した印字ヘッドの温度に基づき、印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つように構成あるので、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出装置を備えた画像形成装置を実現することが出来る。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づき説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置、印字ヘッドの温度検出装置及び画像形成装置の実施の形態であるインクジェットプリンタの構成を模式的に示した斜視図である。このインクジェットプリンタは、筐体(内部を示す為に外枠のみ図示)の背後から前方斜め下方に、給紙部22が嵌入された状態で設けられている。給紙部22に載置された用紙23は、矢印Pに示すように、前方向に搬送される。
【0043】
印字ヘッド7aは、その上方にインクタンク20が付設され、図示しない印字ヘッド駆動機構により、矢印Sに示すように往復運動する鋼帯24に取り付けられ、搬送された用紙23を横切る方向に架設されたレール25に沿って、往復運動するように設けられている。印字ヘッド7aは、レール25に沿って、矢印Sに示す方向に往復運動しながら、その下方を搬送され、一旦停止した用紙23にインクを吐出して印字する。用紙23は、印字ヘッド7aの1スキャン分の印字が終了すると、1スキャン分の幅に相当する距離だけ搬送される。
【0044】
図2は、印字ヘッド7aの外観を示す拡大斜視図である。印字ヘッド7aは、チャネル形成部材17中に多数のチャネル(インク室)により構成され、インクの吐出口であり、各チャネル(インク室)に対応するノズル21が形成されたノズルプレート18と、各チャネルを覆って各チャネルの天壁を形成する上蓋12と、インクタンク20(図1)が上方に設けられ、インクをろ過しながら各チャネルに供給するインクフィルタ19と、印字する画像上方に応じて各チャネルの制御を行う駆動集積回路10と、駆動集積回路10からの情報を各チャネルに伝達するFPC16(Frexible Printed Circuit board)とから構成されている。
【0045】
図3は、印字ヘッド7aを分解して示す分解図である。チャネル形成部材17は、図5の正面断面図に示すように、各チャネル15を離隔する側壁13及び底壁を形成し、各チャネル15の天壁は、上述したように、上蓋12により形成されている。各チャネル15の側壁13には、図4の上蓋12を省略した斜視図に示すように、電極14が蒸着等で形成されている。各電極14は、FPC16を介して駆動集積回路10に接続されている。
【0046】
チャネル形成部材17は、圧電体部材であり、各側壁13部分は、天壁及び底壁方向に分極されている。従って、電極14により電圧を印加して、側壁13に対して垂直方向に電界を形成すれば、側壁13に剪断変形が生じ、形成する電界の向きに応じて、側壁13が、インク室15(チャネル)に対して凹面又は凸面に変形する。これにより、インク室内部に圧力波が生じ、インク室内を伝搬する。
ここで、インク室15に対して凹面に変形した後に、凸面に変形すると、圧力が増大され、インク室15の長手方向の端部に設けられたノズル21から、I方向へインクが吐出される。
【0047】
図6は、上述したインク室15の側壁13の変形状態を説明する為の正面断面図である。インク室15のa,a′について、電圧が印加されない状態(a)、電圧が印加され、インクを吸引するように変形した状態(b)、電圧が印加され、インクを吐出するように変形した状態(c)、インクを吐出した後の電圧が印加されない待機状態(d)をそれぞれ示す。各電極14には、同等に電圧を印加する為、対応する側壁13の変形が問題なく行われる。
【0048】
図6に示すように、本実施の形態では、各インク室15をa〜c,a′〜c′のように、3つのインク室15を1グループとした所謂3分割駆動方式による。3分割駆動方式では、1印字サイクルにおいて、各グループ中の1つのインク室15のみがインク吐出可能であり、1印字サイクルにおける各グループ中のインク吐出可能なインク室15は周期的に可変であり、例えば、前周期でa、今周期でb、次周期でcのインク室15より、インク吐出を可能とする。従って、印字ヘッド7aによるインク吐出は、3チャネルおきにのみ可能であり、3相信号により周期的に制御されている。
【0049】
上述したように作動する印字ヘッド7aにおいて、インク室15に対して側壁13が凸面及び凹面に変形する圧電体部材は、電気的な容量負荷成分を有している。従って、電極14を印加制御する駆動集積回路10(図2)から見た場合、その負荷は容量性負荷ということになる。
【0050】
図7は、電極14を制御する為の印字制御回路11及び駆動集積回路10の構成を示すブロック図である。印字制御回路11は、このインクジェットプリンタの図示しない制御部に含まれており、駆動集積回路10の後述するアナログスイッチ群101に対して、印字ヘッド7aにインクを吐出させる為の共通の駆動パルスA,B,Cを出力する駆動電圧発生回路113と、駆動集積回路10の後述するゲート回路102群をオン/オフ制御するイネーブル信号切換制御部112と、3分割駆動方式の3相信号PH0,PH1,PH2を出力する3相切換制御部111と、印字信号入力部SIと、印字信号同期信号入力部CLKとから構成されている。
駆動電圧発生回路113は、全てのインク室15に共通の駆動パルスA,B,Cをそれぞれ独立して出力する駆動電圧発生回路113A,113B,113Cから構成されている。
【0051】
駆動集積回路10は、駆動電圧発生回路113からの共通の駆動パルスA,B,Cの何れかを、後述するゲート回路群102の制御に基づき、対象となる電極14への接続切換を行うアナログスイッチ群101と、イネーブル信号切換制御部112及び3相切換制御部111により制御され、各インク室に対応するアナログスイッチ103のオン/オフ制御、及び印字信号の要否の制御を行うゲート回路群102とから構成されている。
【0052】
駆動パルスA,B,C及び3相信号PH0,PH1,PH2は、図8のタイミングチャートに示すようなタイミングで出力される。
電極14に印加される駆動パルスA,B,Cは、インクを吐出する駆動パルスA、インクを吐出しない駆動パルスB(印字頻度の変化による印字ヘッドの発熱を一定化する為の補正パルス)、非選択の駆動パルスC(3相切換えによりインク吐出が行われる為)となっている。
【0053】
上述したように、印字ヘッド7aでは、インクの吐出が3チャネル(3インク室)おきにのみ可能な3相信号で周期的に制御されている。従って、印字又は非印字するインク室15は、常に全体のインク室15の1/3である。その為、駆動電圧発生回路113から見て、駆動電圧発生回路113Cが駆動するインク室の数は全体の2/3となり、駆動電圧発生回路113A,11Bが駆動するインク室の合計数は全体の1/3となる。
【0054】
図9は、駆動電圧発生回路113A,113B,113Cの共通の回路構成を示すブロック図である。駆動電圧発生回路113A(113B,113C)は、印字タイミング信号を印字タイミング信号入力端子IN3から受信し、受信した印字タイミング信号に基づき各種パルスを発生させるパルス発生回路1を備えている。パルス発生回路1は、マルチバイブレータ等により構成され、充電信号出力端子IN1からは充電信号を出力し、放電信号出力端子IN2からは放電信号を出力する。
【0055】
充電信号出力端子IN1は、抵抗R5によりプルアップされると共に、抵抗R7を通じて、レベル調整用のNPN型トランジスタQ1のベースに接続されている。トランジスタQ1のベース及びエミッタ間には抵抗R8が接続され、エミッタは接地され、コレクタは、抵抗R12を通じて、定電流用のPNP型トランジスタQ3のコレクタ及びスイッチング用のPNP型トランジスタQ2のベースに接続されている。
【0056】
トランジスタQ3のエミッタは電源端子VHに接続され、ベースは、抵抗R2を通じて、トランジスタQ2のベースに接続されている。トランジスタQ2のベースは、抵抗R9によりプルアップされ、エミッタは、抵抗R1を通じて、電源端子VHに接続され、コレクタは、NPN型トランジスタQ6及びPNP型トランジスタQ8の各ベースに共通接続されている。
トランジスタQ6のコレクタは、ダーリントン接続されたNPN型トランジスタQ7のコレクタと共に、電源端子VHに接続され、トランジスタQ8のコレクタは、ダーリントン接続されたPNP型トランジスタQ9のコレクタと共に接地されている。
【0057】
トランジスタQ6,Q8の各ベースは、時定数設定用のコンデンサC1を通じて接地されている。
トランジスタQ7,Q9の各エミッタは共通接続され、その接続節点は、駆動電圧発生回路113Aの出力端子OUTとなっている。
トランジスタQ6,Q8,Q7,Q9は、コンデンサC1の充電時及び放電時の電流を増幅する電流バッファを構成しており、印字ヘッド7aを駆動することが可能な電流容量を備えている。
【0058】
放電信号出力端子IN2は、抵抗R6によりプルアップされると共に、スイッチング用のNPN型トランジスタQ4のベース、及び定電流用のNPN型トランジスタQ5のコレクタに接続されている。
トランジスタQ5のエミッタは接地され、コレクタ及びエミッタ間には抵抗R10が接続されている。
【0059】
トランジスタQ5のベースは、抵抗R11を通じて、トランジスタQ4のエミッタに接続され、このエミッタは、抵抗R3を通じて、接地されている。
トランジスタQ4のコレクタは、トランジスタQ6,Q8の各ベースに接続されている。
電源端子VH及び接地端子間には、コンデンサC2が接続されている。
【0060】
このような構成の駆動電圧発生回路113A(113B,113C)では、パルス発生回路1は、図10のタイミングチャートに示すように、印字タイミング信号が入力されると(a)、これに同期して充電時間に相当するように定められたパルス幅Tcmの充電信号を、充電信号出力端子IN1から出力する(b)。充電信号が出力されると(b)、レベル調整用のトランジスタQ1がオンとなるから、トランジスタQ2もオンとなる。これにより、電源電圧が、時定数設定用抵抗R1を介して、コンデンサC1に印加され、抵抗R1及びコンデンサC1で定まる時定数により、コンデンサC1が充電される。
【0061】
時定数設定用抵抗R1は、その両端に定電流用トランジスタQ3が接続されており、その両端電圧は、トランジスタQ3のエミッタ−ベース間電位に略等しい値に維持されるから、コンデンサC1に流れ込む電流は、時間的に変動せず一定値となる。この結果、コンデンサC1の端子電圧の立ち上がり勾配t1は、抵抗R1の抵抗値をR1、コンデンサC1の容量をC1、定電流トランジスタQ3のベース−エミッタ間電圧をVbe1とすると、
t1=ABS(Vbe1)/(R1×C1) (3)
となる。尚、ABSは絶対値であることを示している。
【0062】
このようにして、充電信号のパルス幅Tcmに相当する時間が経過すると(図10(b))、コンデンサC1の端子電圧は、電圧VM迄上昇する(d)。この時点で充電信号がLレベルに切り換わり、レベルシフト用トランジスタQ1がオフとなって、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる。この結果、コンデンサC1は、電圧VMを維持する。
【0063】
充電信号がLレベルに切り換わって(図10(b))から所定時間Temが経過した時点で、放電信号出力端子IN2から、放電信号が出力される(図10(c))。この放電信号は、コンデンサC1の電荷を略ゼロ電位に迄放電させることが出来るパルス幅Tdmを有しており、スイッチングトランジスタQ4をオンにする。この結果、コンデンサC1に蓄積された電荷は、時定数設定用抵抗R3を介して放電される。
同時に、定電流用トランジスタQ5 がオンとなるので、上述した定電流用トランジスタQ3の作用と同様の作用により、時定数設定用抵抗R3の端子電圧が、トランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧Vbe2となる。これにより、コンデンサC1の端子電圧は、一定の勾配で直線的に低下する(図10(d))。
【0064】
即ち、立ち下がりの勾配t2は、時定数設定用抵抗R3の抵抗値R3、コンデンサC1の容量をC1、定電流トランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧をVbe2とすると、
t2=ABS(Vbe2)/(R3×C1) (4)
となる。
時間Tdmが経過して、放電信号がLレベルになると、スイッチングトランジスタQ4がオフになり、コンデンサC1の端子電圧の変化が止まる。
【0065】
このように、時定数設定用抵抗R1,R3及びコンデンサC1により、所定の立ち上がり速度及び立ち下がり速度で変化する電圧は、トランジスタQ6,Q8,Q7,Q9で構成される電流バッファにより増幅され、駆動集積回路10を介して、印字ヘッド7aの各電極14に選択的に印加される。
つまり、駆動電圧発生回路113A,113B,113Cによりそれぞれ出力された駆動パルスA,B,Cは、アナログスイッチ103(図7)が印字信号に応じてオン/オフすることにより、選択的に各電極14に印加される。尚、充電信号のパルス幅Tcm及び放電信号のパルス幅Tdmは、対象となる印字ヘッドの構造及びインクの物性等に依存して設定される。
【0066】
図11は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置及び印字ヘッドの温度検出装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。この印字ヘッドの静電容量検出装置(印字ヘッドの温度検出装置)は、上述した駆動電圧発生回路113A,113B,113Cの内、駆動電圧発生回路113C内のトランジスタQ6,Q7の各コレクタ間に、電荷量変化検出手段として抵抗R4を接続してあり、印字ヘッド7aの静電容量に応じて、トランジスタQ7のコレクタに流れる電流により、電源電圧より降下した電圧を、電荷量の変化として増幅する増幅器2cと、増幅器2cが増幅した電荷量の変化を積分する積分器3cと、積分器3cが積分した電荷量値Qをアナログ/ディジタル変換するA/D変換器4と、A/D変換器4がディジタル化した電荷量Qが与えられるCPU5(中央処理装置)とを備えている。
【0067】
CPU5は、プリンタとして印字動作を行う際に必要な、図示しない機構部及び印字ヘッド7aの駆動制御等を実行する。
抵抗R4は、共通の駆動パルスCが立ち上がり勾配により発生させる電圧変化を電荷量変化として検出する。従って、共通の駆動パルスCの立ち上がり勾配の期間にのみ着目して、電荷量変化を検出することになる。
抵抗R4が検出する電荷量変化は、共通の駆動パルスCにより印字ヘッド7aが充電される電荷量の変化を示している。印字ヘッド7aに充電された電荷は、共通の駆動パルスCの立ち下がり勾配の期間に、駆動電圧発生回路113C内のトランジスタQ9を通じて放電される。
【0068】
抵抗R4により検出された電荷量変化は、増幅器2cにより増幅される。増幅器2cの増幅率は、A/D変換器4のダイナミックレンジを有効に使用できるように設定されている。
積分器3cは、増幅器2cにより増幅された電荷量変化を、所定の積分期間について積分して電荷量値Qを出力する。積分器3cの積分期間は、温度が一定のときに、電荷量値Qが時間によらず一定となるように設定されている。
【0069】
図13は、上述した各動作における電圧波形を示した波形図であり、駆動パルスC(a)、抵抗R4により検出された電荷量変化(b)、及び積分器3cにより積分された電荷量値Q(c)を示している。
積分された電荷量値Qは、A/D変換器4によりディジタル変換され、CPU5に与えられる。
【0070】
印字ヘッドの温度検出装置の場合、CPU5では、内部の「電荷量値Q対温度特性」を示すルックアップテーブルを参照することにより、印字ヘッド7aの温度情報を算出する。
印字ヘッドの静電容量検出装置の場合、CPU5では、内部の「電荷量値Q対インク吐出量制御データ」を示すルックアップテーブルを参照することにより、印字ヘッド7aのインク吐出量を決定する。
【0071】
ここで、インク吐出量の制御は、例えば、駆動電圧発生回路113Cの充電信号のパルス幅Tcm、放電信号のパルス幅Tdm、充電信号と放電信号との間のタイミングTem、及び駆動電圧の最大値VH等を調整することによって行われる。
「電荷量値Q対インク吐出量制御データ」は、各温度に対応する最適なインク吐出量制御データの関係と「電荷量値Q対温度特性」とから温度の項目を消去して作成する。
【0072】
図12は、チャネル形成部材17の温度対比誘電率特性の一例を示す特性図である。この特性図によると、0℃.から20℃.迄の比誘電率温度係数は3874ppm/℃.であり、20℃.から60℃.迄の比誘電率温度係数は5627ppm/℃.であることを示している。印字ヘッド7aを容量性負荷と見做した場合の容量値をCrとすると、容量値Crは
Cr=εr・S/d (5)
で示される。ここで、εrは圧電体部材の比誘電率、Sは容量性負荷を1つのコンデンサと見做したときの電極面積、dは容量性負荷を1つのコンデンサと見做したときの電極間距離である。
【0073】
従って、印字ヘッド7aを容量性負荷と見做した場合の容量値Crは、チャネル形成部材17の比誘電率εrに比例して変化し、0℃.から20℃.迄の間では、3874ppm/℃.の比率で変化し、20℃.から60℃.迄の間では、5627ppm/℃.の比率で変化する。
【0074】
印字ヘッド7aを容量性負荷と見做した場合の蓄積される電荷量をQ、印加される電圧をVとすると、
Q=Cr・V (6)
の関係がある。(6)式を時間軸で微分すると、
dQ/dt=Cr・dV/dt (7)
となる。
【0075】
ここで、駆動電圧発生回路113Cから出力される共通の駆動パルスCは、図13(a)に示す波形であるから、dV/dtは、駆動パルスCの立ち上がり勾配及び立ち下がり勾配のときに、それぞれ一定の値を取り、その他のときは0の値をとる。本実施の形態では、電荷量変化検出手段である抵抗R4によって、駆動パルスの立ち上がり勾配のときの電荷量変化のみを検出するので、駆動パルスCの立ち上がり勾配の期間のみ、(7)式を考慮する。この期間において、dV/dtは、ある一定の常数値となり、図13(b)に示す電荷量変化が、抵抗R4により検出される。
【0076】
更に、(7)式を時間軸で積分することにより、抵抗R4により検出された検出量を積分した電荷量値について、次式が成立する。
Q(T)∝Cr(T) (8)
故に、温度Tが一定であるならば、共通の駆動パルスCが立ち上がり勾配のときに、抵抗R4の検出値は一定値を取る。更に、温度が一定であるならば、積分器3が出力する電荷量値は一定値を取る。
以上の温度検出原理に基づき、CPU5内には、予め実験的に求められた「電荷量値Q対温度特性」を示すルックアップテーブル、又はこの「電荷量値Q対温度特性」に基づき作成された「電荷量値Q対インク吐出量制御データ」を示すルックアップテーブルを格納しておく。
【0077】
ここで、駆動パルスCは非選択(3相切り換えによりインク吐出が行われる為)のパルスであるから、駆動電圧発生回路113Cが駆動するインク室15の数は、常に全体のインク室15数の2/3である。従って、算出された温度情報は、全体のインク室15数の2/3のインク室15(隣接する3つのインク室15の内、必ず2つが含まれる)の温度情報を加味したものとなっている。
また、駆動集積回路10のアナログスイッチ103を使用して、1つのインク室15のみを駆動電圧発生回路113Cにより駆動させることも可能である。上述した温度検出方法は、1つのインク室15のみを駆動した場合においても適用可能であるから、個別のインク室15のみの温度検出が可能となる。
【0078】
実施の形態2.
図14は、本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置、印字ヘッドの温度検出装置及び画像形成装置の実施の形態であるインクジェットプリンタの印字ヘッドの静電容量検出装置及び印字ヘッドの温度検出装置の構成を示すブロック図である。この印字ヘッドの静電容量検出装置(印字ヘッドの温度検出装置)は、上述した駆動電圧発生回路113A,113B,113Cの内、駆動電圧発生回路113A,113B内のそれぞれのトランジスタQ6,Q7の各コレクタ間に、それぞれの電荷量変化検出手段として抵抗R4を接続してあり、印字ヘッド7aの容量負荷に応じて、それぞれトランジスタQ7のコレクタに流れる電流により、電源電圧より降下した電圧を、電荷量の変化として増幅する増幅器2a,2bとを備えている。
【0079】
この印字ヘッドの温度検出装置は、また、増幅器2a,2bがそれぞれ増幅した電荷量の変化を、それぞれ積分する積分器3a,3bと、積分器3a,3bがそれぞれ積分した電荷量値Qa,Qbを加算する加算器6(加える手段)と、加算器6が加算した電荷量値をアナログ/ディジタル変換するA/D変換器4と、A/D変換器4がディジタル化した電荷量値Qが与えられるCPU5(中央処理装置)とを備えている。
CPU5は、プリンタとして印字動作を行う際に必要な、図示しない機構部及び印字ヘッド7aの駆動制御等を実行する。その他のインクジェットプリンタとしての構成は、実施の形態1で説明した構成と同様であるので、同一部分には同一符号を付して、説明を省略する。
【0080】
各抵抗R4は、共通の駆動パルスA,Bがそれぞれ立ち上がり勾配により発生させる電圧変化を電荷量変化としてそれぞれ検出する。従って、共通の駆動パルスA,Bの各立ち上がり勾配の期間にのみ着目して、電荷量変化を検出することになる。
各抵抗R4が検出する電荷量変化は、共通の駆動パルスA,Bにより印字ヘッド7aがそれぞれ充電される電荷量の変化を示している。印字ヘッド7aにそれぞれ充電された電荷は、共通の駆動パルスA,Bのそれぞれの立ち下がり勾配の期間に、駆動電圧発生回路113A,B内の各トランジスタQ9を通じて放電される。
【0081】
各抵抗R4により検出された電荷量変化は、それぞれ増幅器2a,2bにより増幅される。増幅器2a,2bの各増幅率は、後述する観点を除けば基本的には、A/D変換器4のダイナミックレンジを有効に使用できるように設定されている。
積分器3a,3bは、増幅器2a,2bによりそれぞれ増幅された電荷量変化を、それぞれ所定の積分期間について積分して電荷量値Qa,Qbを出力する。積分器3a,3bの各積分期間は、温度が一定のときに、それぞれの電荷量値Qa,Qbが時間によらず一定となるように設定されている。
【0082】
積分された電荷量値Qa,Qbは、加算器6により加算され、その加算結果Qa+Qbは、A/D変換器4によりディジタル変換され、CPU5に与えられる。CPU5では、内部の「電荷量値(Qa+Qb)対温度特性」を示すルックアップテーブルを参照することにより、印字ヘッド7aの温度情報を算出する。
【0083】
ここで、インクを吐出する駆動パルスA、インクを吐出しない駆動パルスB(印字頻度の変化による印字ヘッドの発熱を一定化する為の補正パルス)、非選択の駆動パルスC(3相切換えによりインク吐出が行われる為)となっている。従って、印字ヘッド7aの発熱に寄与するのは、共通の駆動パルスCであるよりも、むしろ、共通の駆動パルスA,Bであるということが出来る。
上述したように、本実施の形態の印字ヘッド7aでは、インクの吐出は、3チャネル(3インク室15)おきにのみ可能な3相信号PH0,PH1,PH2により、周期的に制御されている。
【0084】
従って、印字又は非印字するインク室15は、常に全体のインク室15の1/3である。その為、駆動電圧発生回路113から見て、駆動電圧発生回路113A,113Bが駆動するインク室の合計数は全体の1/3となる(隣接する3つのインク室15の内、必ず1つが含まれる)。
共通の駆動パルスAはインク吐出を行うパルスであり、共通の駆動パルスBはインク非吐出を行うパルス(印字頻度の変化による印字ヘッドの発熱を抑制する為の補正パルス)であるから、共通の駆動パルスA,Bが、それぞれインク室15の発熱に寄与する度合いは異なっている。従って、増幅器2a,2bの各増幅率を、印字ヘッド7aの発熱に寄与する度合いに応じて設定することにより、より正確な印字ヘッドの温度検出が可能となる。その他の動作は、実施の形態1で説明した動作と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
【発明の効果】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、僅かな回路を追加するのみで、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る。
【0086】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、電荷量変化検出手段に抵抗等の安価な部品を使用することが出来、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る。
【0087】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、僅かな回路の変更により、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る。
【0088】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、インク室毎の温度のばらつき情報を得ることが出来、個別のインク室に対して個別の駆動条件を与えることが可能となる。
【0089】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、複数のインク室の温度情報を加味した温度検出が、僅かな回路を追加することにより可能となる。
【0090】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、非選択(3相切り替えによりインク室を選択駆動する)の駆動電圧である共通の第1駆動電圧の変化を検出して処理することで静電容量を検出するので、全体の2/3のインク室(隣接する3つの内、必ず2つが含まれる)の温度情報を加味した温度を知ることが、僅かな回路を追加するのみで可能となる。
【0091】
本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置によれば、インクを吐出させる為の共通の第2駆動電圧と、インクを吐出させない為の共通の第3駆動電圧(印字頻度の変化による印字ヘッドの発熱を一定化するための補正駆動電圧)との変化を検出して処理することで静電容量を検出するので、全体の1/3のインク室(隣接する3つの内、必ず1つが含まれる)の温度情報を加味した温度を知ることが、僅かな回路を追加するのみで可能となる。また、共通の第2駆動電圧と共通の第3駆動電圧とがそれぞれ印字ヘッドの発熱に寄与する割合を考慮した温度を知ることが、僅かな回路を追加するのみで可能となる。
【0092】
本発明に係る印字ヘッドの温度検出方法及び本発明に係る印字ヘッドの温度検出装置によれば、ダイオード又はサーミスタ等の特別な温度検出手段を追加することなく、インク室そのものの温度を検出することが可能であり、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出方法及び印字ヘッドの温度検出装置を実現することが出来る。
【0093】
本発明に係る画像形成装置によれば、インク室そのものの温度を知ることが出来る印字ヘッドの静電容量を、安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの静電容量検出装置を備えた画像形成装置を実現することが出来る。
【0094】
本発明に係る画像形成装置によれば、インク室そのものの温度を安価な簡単な構成で検出することが出来、全てのインク室の温度情報を加味した温度情報を得ることが出来る印字ヘッドの温度検出装置を備えた画像形成装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置、印字ヘッドの温度検出装置及び画像形成装置の実施の形態であるインクジェットプリンタの構成を模式的に示した斜視図である。
【図2】印字ヘッドの外観を示す拡大斜視図である。
【図3】印字ヘッドを分解して示す分解図である。
【図4】印字ヘッドの外観を、上蓋を省略して示した斜視図である。
【図5】印字ヘッドの構成を示す正面断面図である。
【図6】インク室の側壁の変形状態を説明する為の正面断面図である。
【図7】電極を制御する為の印字制御回路及び駆動集積回路の構成を示すブロック図である。
【図8】駆動パルス及び3相信号の出力タイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】駆動電圧発生回路の共通の回路構成を示すブロック図である。
【図10】駆動電圧発生回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図11】本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置及び印字ヘッドの温度検出装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図12】チャネル形成部材の温度対比誘電率特性の一例を示す特性図である。
【図13】本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出装置(印字ヘッドの温度検出装置)の動作を示す波形図である。
【図14】本発明に係る印字ヘッドの静電容量検出方法、印字ヘッドの温度検出方法、印字ヘッドの静電容量検出装置及び印字ヘッドの温度検出装置の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図15】ダイオードの温度−順方向電圧特性を示す特性図である。
【図16】従来の印字ヘッドの温度検出装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 パルス発生回路
2,2a,2b,2c 増幅器(電荷量検出手段)
3,3a,3b,3c 積分器(積分する手段、電荷量検出手段)
5 CPU
6 加算器(加える手段)
7a 印字ヘッド
10 駆動集積回路
11 印字制御回路
13 側壁
14 電極
15 インク室(チャネル)
17 チャネル形成部材
101 アナログスイッチ群
102 ゲート回路群
103 アナログスイッチ
111 3相切換制御部
112 イネーブル信号切換制御部
113,113A,113B,113C 駆動電圧発生回路
A,B,C 共通の駆動パルス(駆動電圧)
CLK 印字信号同期信号入力部
PH0,PH1,PH2 3相信号
SI 印字信号入力部
Q1〜Q9 トランジスタ
R1,R3 抵抗
R4 抵抗(電荷量変化検出手段、電荷量検出手段)

Claims (12)

  1. 圧電体部材を使用して形成され、該圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され前記圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する印字ヘッドの静電容量検出方法であって、
    前記静電容量は、インクを吐出する為の駆動パルスが印加される圧電体の静電容量であり、かつ、前記圧電体部材に蓄積される電荷量の変化を検出し、検出した電荷量の変化を積分して電荷量を検出し、検出した電荷量に基づき検出する静電容量であり、前記インク室は、互いに隣接する方向の側壁が前記圧電体部材により形成され、該圧電体部材は、前記インク室の底壁及び天壁の方向に分極され、前記電極に同一周期の複数の駆動電圧を選択的に印加することにより、前記圧電体部材が剪断変形し、前記電荷量の変化は、前記複数の駆動電圧の内の第2駆動電圧及び第3駆動電圧のそれぞれの変化を、それぞれの所定の割合で加えたものであることを特徴とする印字ヘッドの静電容量検出方法。
  2. 前記電荷量は、前記電極に電圧が印加された際に蓄積される請求項1記載の印字ヘッドの静電容量検出方法。
  3. 前記電荷量は、個別の前記インク室について検出する請求項1又は2記載の印字ヘッドの静電容量検出方法。
  4. 前記電荷量は、複数の前記インク室についてまとめて検出する請求項1又は2記載の印字ヘッドの静電容量検出方法。
  5. 請求項1乃至の何れか1つに記載された印字ヘッドの静電容量検出方法により検出された印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドの温度を検出することを特徴とする印字ヘッドの温度検出方法。
  6. 圧電体部材を使用して形成され、該圧電体部材に接着された電極に電圧が印加され前記圧電体部材が変形することにより、インクを吐出する複数のインク室を有する印字ヘッドの静電容量を検出する印字ヘッドの静電容量検出装置であって、
    前記静電容量は、インクを吐出する為の駆動パルスが印加される圧電体の静電容量であり、前記圧電体部材に蓄積される電荷量の変化を検出する電荷量変化検出手段と、該電荷量変化検出手段が検出した電荷量の変化を積分する手段とを有し、該手段の積分結果を前記電荷量として検出する電荷量検出手段を備え、該電荷量検出手段が検出した電荷量に基づき前記静電容量を検出すべくなしてあり、前記インク室は、互いに隣接する方向の側壁が前記圧電体部材により形成され、該圧電体部材は、前記インク室の底壁及び天壁の方向に分極され、前記電極に同一周期の複数の駆動電圧を選択的に印加することにより、前記圧電体部材が剪断変形し、前記電荷量変化検出手段は、前記複数の駆動電圧の内の第2駆動電圧及び第3駆動電圧のそれぞれの変化を検出する手段と、該手段が検出したそれぞれの変化を所定の割合で加える手段とを有し、該手段が加えた結果を前記電荷量の変化とすべくなしてあることを特徴とする印字ヘッドの静電容量検出装置。
  7. 前記電荷量検出手段は、前記電極に電圧が印加された際に蓄積される電荷量を検出すべくなしてある請求項記載の印字ヘッドの静電容量検出装置。
  8. 前記電荷量検出手段は、個別の前記インク室について前記電荷量を検出すべくなしてある請求項6又は7記載の印字ヘッドの静電容量検出装置。
  9. 前記電荷量検出手段は、複数の前記インク室についてまとめて前記電荷量を検出すべくなしてある請求項6又は7記載の印字ヘッドの静電容量検出装置。
  10. 請求項乃至の何れか1つに記載された印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、該印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドの温度を検出することを特徴とする印字ヘッドの温度検出装置。
  11. 請求項6乃至9の何れか1つに記載された印字ヘッドの静電容量検出装置を備え、該印字ヘッドの静電容量検出装置が検出した印字ヘッドの静電容量に基づき、該印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つべくなしてあることを特徴とする画像形成装置。
  12. 請求項10に記載された印字ヘッドの温度検出装置を備え、該印字ヘッドの温度検出装置が検出した印字ヘッドの温度に基づき、該印字ヘッドが有するインク室からのインク吐出量を増減することにより、印字の品位を保つべくなしてあることを特徴とする画像形成装置。
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