JP3946118B2 - 発音体の構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は音響変換器として、耳に密着させて聞くレシーバーと、耳から離して聞くスピーカーとを一体的に備え、電子機器の筐体内に組み込まれて作動する発音体の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図2は発音体を情報機器の筐体に組み込んだ従来例の構造の要部断面図である。発音体にはレシーバー用の(発音音量の比較的小さい)電気−音響変換機構と、スピーカー用の(発音音量の比較的大きい)電気−音響変換機構とが一体的に組み込まれており、おおまかには平たい円形または楕円形の外形をなす。両変換器には同種の部品が多いので、図面に示した部品を表す符号として、同種の部品であることを示す共通の番号に、レシーバーの場合には語尾Rを、スピーカーの場合には語尾Sを付すことにする。また7は発音体が収容される例えば携帯電話機等の電子情報機器の筐体で、ほぼ箱型をしている。
【0003】
1は発音体のフレームであり合成樹脂等より成り、発音体の各部品が支持・固定される。2Rはレシーバー用の変換器を構成する円筒形の永久磁石、2Sはスピーカー用のリング形の永久磁石である。3はレシーバーとスピーカーに共通する磁束を通すヨーク、3Rはレシーバー用のヨーク(トッププレートとも称する)、3Sはスピーカー用のヨークである。4Rはレシーバー用の振動板、4Sはスピーカー用のやや大型の振動板、5Rはレシーバー用のコイル、5Sはスピーカー用のコイルで、それぞれの振動板の固着され、それを駆動するために磁気回路のリング状の空隙内に挿入された円筒形のコイルである。
【0004】
6Rはレシーバー用のプロテクター、6Sはスピーカー用のプロテクターであり、皿状の金属の薄板で、それぞれ数個の放音孔10R、10Sを有し、またフレーム1の上下面に形成された段付きのリング状の凹部1R、1S内に各振動板1R、1Sと共に挿入され、それらを保護すると共に各振動板の周辺部をフレーム1に押圧固定する役割を担う。
以上説明した発音体は電子機器の筐体7内に他の部品(図示省略)と共に組み込まれる。筐体7の上下の内側表面と発音体上下面のプロテクター6R、6Sとの隙間は、各放音孔10R、10Sの外側に位置するリング状のクッション性のあるスペーサー8を仲介させて埋められる。
【0005】
各振動板4R、4Sの前面(外側表面)から発する音響(音圧波)は各放音孔10R、10Sを経て筐体7の上下に設けた放音孔10Cから、矢印11および12で示すように筐体7の外部に放出される。各振動板4R、4Sの背後と磁気回路との比較的狭い空間は後気室9R、9Sと称される。振動板の前方に発生する音と後気室から生ずる音との混合は避けられる。その分離の役割はスペーサー8が担っている。
【0006】
また振動板に出来るだけ自由な振動を許し音量や音質等の音響特性を良好にするため、空気流は各後気室内に閉じ込められず、発音体の外部に開放される。即ちレシーバー側の後気室9Rは音圧気流の竜路を示す矢印13、14で示すようにリング状の凹部1Rに部分的に設けた切欠部22により、またスピーカー側の後気室9Sは矢印16、17で示すようにフレーム1に設けた通気路21Sによって、それぞれ発音体の外部である筐体7の内部空間に連絡している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来例では、後気室9R、9Sが同じ筐体7の内部空間に開放されている。そのため各後気室9R、9Sの一方からの音圧気流の一部が、矢印15あるいは18で示すように切欠部22または通気路21Sを通じて他方の後気室に流入する。そこでスピーカーの振動板4Sが駆動されると、その音による空気圧の変化がレシーバーの振動板4Rを振動させ、レシーバーからも音が出る。レシーバーから大きな音が漏れると、電話の使用者の耳を傷める恐れがある(イヤープロテクト問題)。また逆にレシーバーから電話の会話音などがスピーカーから部外者に聞こえてしまう不都合が生じることもある(漏話問題)。
【0008】
本発明の目的は、筐体と組み合わされた発音体においてレシーバーあるいはスピーカーの発生する音響が漏れて相手振動板を駆動することがないような発音体の構造および筐体との組み合わせた構造を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の発音体の構造は次の特徴を備える。
(1)スピーカーおよびレシーバーを一個のフレーム内に組み込んだ発音体において、前記スピーカーの後気室と前記レシーバーの後気室とを、前記発音体が組み込まれる電子情報機器の筐体内において相互に分離する隔壁を前記フレームと一体的に設けたこと。
【0010】
本発明の発音体の構造は更に以下の特徴の少なくとも一つを備えることがある。
(2)前記隔壁は前記レシーバーの振動板の外側を囲み、前記レシーバーの後気室と連絡するリング状の空間を形成すること。
【0011】
(3)前記スピーカーの後気室は前記リング状の区間の外側の前記筐体内空間に開放されていること。
【0012】
(4)前記レシーバーの後気室と前記スピーカーの後気室の少なくとも一方は、更に前記電子情報機器の筐体の表面の異なる場所において外部に向かって開放されていること。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は発音体を情報機器の筐体に組み込んだ本発明の実施の形態の一例の構造の要部断面図である。本図は図2に示す従来構造と共通する部分か多いので、図面の複雑化を避けて簡明にするため、図1においては本発明の作用に直接関係しない永久磁石、ヨーク、コイル、プロテクター等従来例との共通部分については符号の付与も重複する説明も省略することとした。
【0014】
図1において、レシーバーの後気室9Rから発生する音圧気流(矢印13で示す)は凹部1Rに1カ所ないし数カ所設けた切欠部21を通じて、振動板4Rの周囲外側を取り巻くように設けた隔壁20およびその上端面に付加されたスペーサー8Aの存在によって筐体7内空間に形成されたリング状空間(この空間の内側はプロテクター6Rおよびその上面に存在するスペーサー8である)に対して開放されている。従って後気室9Rの実質的な容積は上記リング状空間の分が加算されて大幅に拡大され、振動板4Rの振動の背面抵抗が減少し音響インピーダンスが低下し、音響特性が改善される。
【0015】
一方スピーカーの後気室9Sから発生する音圧気流は通気路21Sを経由して矢印16、17で示すように従来例と同様に筐体7内空間に放出されるが、この空間は隔壁20とスペーサー8Aとによって隔絶されたレシーバー側のリング状空間の外側となり、レシーバーの後気室9Rとは連絡通路がない。従って各後気室9R、9Sの一方から発生する音圧気流が他の後気室に筐体内で流入するという事態は避けられる。
【0016】
発音体の平面的外形(振動板4Sの外形よりも少し大きいのが普通である)を維持する場合、隔壁20の外形は最大において振動板4Sの外形と同程度となし得る。また振動板4Rの外形は一般に(発生音量の大きい)振動板4Sの外形よりも小さい。故に上記リング状空間は必要な内外径差を確保でき、かなりの容積をとることができる。
【0017】
なお本発明における上記リング状空間の容積は、従来例において後気室9Rが開放されていた筐体7の内部空間全体の容積よりは小さいので、後気室9Rの拡大効果は従来例よりは小さいことは止むを得ない。しかしリング状空間の容積がある程度大きければレシーバーの音響特性は一応満足しうるものとなり、その一方では2つの後気室9Rと9Sの分離が確実となるメリットを享受することができる。
【0018】
本例においては発音体の平面形状の概形は楕円形で、レシーバーの振動板4Rはほぼ楕円の短径を直径とする円形、スピーカーの振動板4Sの形状は楕円の外形に近い大型である。凹部1Rには切欠部1Rを1か所のみに設け、その切欠部1Rを囲むように、発音体の総厚さと等しい高さを持つ隔壁20をフレーム1の一部として一体に成形してある。隔壁20に囲まれた内部は通気路21Rとなり、後気室9Rからの気流は矢印13のように下方に導かれる。(後気室9Sとは連絡なく、最終的には筐体7の放音孔10CRに達して外部に開放される。)スピーカーの後気室9Sからの気流はフレーム1の異形穴の通気路21S(平面図図2のみに図示されている)から放出される。
【0019】
本発明の実施の形態は以上に述べたもののみに限られない。隔壁20の外形は振動板4Sの外形より大きく設定することもあり得る。また図示を省略するが、例えばレシーバーの後気室を隔壁内部のリング状の空間に開放するだけでなく、更に筐体に専用の放音孔を設けてそのリング状の空間を筐体の外部に導けば(専用の放音孔までは隔壁つきの通路を用いる)、レシーバーの振動板の振動の音響インピーダンスを下げることができてレシーバーの音響特性(音量や音質)を改善することができる。なおこの専用の放音孔はレシーバーの振動板の前面からの音を筐体外に放出する主な放音孔とは距離を離すか筐体の側面など別の表面に設けることが望ましい。
【0020】
またスピーカーの後気室を筐体の外部に開放するようにしても良い。その場合スピーカーの音響特性の改善を図ることができる。その他発音体の基本構造や隔壁・通気路の形状構造、筐体内の音響的な仕切り方法やそのための部材の選択、その他細部の構成等種々の変形があり得ることはもちろんである。
【0021】
【発明の効果】
本発明においては隔壁をフレームと一体的に設けたことにより、極めて簡素かつ低コストで実施可能な構造でイヤープロテクトや漏話の問題を解決できた。また各後気室の分離構造を電子情報機器の部品である発音体側で構築できるので、筐体側の設計的負担もなく容易かつ簡潔な構造で目的を達成できた。
【0022】
またレシーバーの後気室を周囲のリング状空間に開放することにより、あるいは更にスピーカーの後気室を前記リング状空間の外側の筐体内に開放することにより、発音体の平面形状を特に大きくすることなく実質的にレシーバーの後気室の容積を増し音響特性を損なわないようにすることができた。また更に少なくとも一方の後気室を筐体外に開放することによりその後気室の容積を実質的に更に増し音響インピーダンスを低下させ音響特性を改善することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】発音体を情報機器の筐体に組み込んだ本発明の実施の形態の一例の構造の要部断面図である。
【図2】発音体を情報機器の筐体に組み込んだ従来例の構造の要部断面図である。
【符号の説明】
1 フレーム
1R、1S 凹部
2R、2S 永久磁石
3、3R、3S ヨーク
4R、4S 振動板
5R、5S コイル
6R、6S プロテクター
7 筐体
8、8A スペーサー
9R、9S 後気室
10R、10S、10C 放音孔
11、12、13、14、15、16、17、18 矢印
20 隔壁
21S 通気路
22 切欠部

Claims (4)

  1. スピーカーおよびレシーバーを一個のフレーム内に組み込んだ発音体において、前記スピーカーの後気室と前記レシーバーの後気室とを、前記発音体が組み込まれる電子情報機器の筐体内において相互に分離する隔壁を前記フレームと一体的に設けたことを特徴とする発音体の構造。
  2. 前記隔壁は前記レシーバーの振動板の外側を囲み、前記レシーバーの後気室と連絡するリング状の空間を形成することを特徴とする請求項1の発音体の構造。
  3. 前記スピーカーの後気室は前記リング状の区間の外側の前記筐体内空間に開放されていることを特徴とする請求項2の発音体の構造。
  4. 前記レシーバーの後気室と前記スピーカーの後気室の少なくとも一方は、更に前記電子情報機器の筐体の表面の異なる場所において外部に向かって開放されていることを特徴とする請求項2または3の発音体の構造。
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