以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。インクジェットプリンタのインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)は、微小なインク滴(液滴)をドット状に精度良く吐出することができることから、例えば液滴(吐出対象液)に特殊なインクや、発光性或いは感光性の樹脂等を用いることにより、各種部品の製造分野への応用が期待されている。
本実施形態の有機EL装置の製造装置は、いわゆるフラットディスプレイの一種である有機EL装置の製造ラインに組み込まれるものであり、複数の機能液滴吐出ヘッドを用い、その吐出ノズルから発光材料等の機能液を吐出して(インクジェット方式)、有機EL装置の発光機能を為す各画素のEL発光層および正孔注入層を形成するものである。
そこで、本実施形態では、先ず有機EL装置の構造について説明すると共にその製造方法(製造プロセス)について説明する。そして次に、搭載した機能液滴吐出ヘッドを走査する描画装置とその周辺設備とから成る有機EL装置の製造装置を、その製造方法と共に説明する。なお、周辺設備として、チャンバ装置、搬送装置および乾燥装置が存在するが、本実施形態では、そのうちのチャンバ装置を主に説明し、搬送装置および乾燥装置については簡単に説明することとする。
図1ないし図13は、有機EL素子を含む有機EL装置の製造プロセスと共にその構造を表している。この製造プロセスは、バンク部形成工程と、プラズマ処理工程と、正孔注入/輸送層形成工程及び発光層形成工程からなる発光素子形成工程と、対向電極形成工程と、封止工程とを具備して構成されている。
バンク部形成工程では、基板501に予め形成した回路素子部502上及び電極511(画素電極ともいう)上の所定の位置に、無機物バンク層512aと有機物バンク層512bを積層することにより、開口部512gを有するバンク部512を形成する。このように、バンク部形成工程には、電極511の一部に、無機物バンク層512aを形成する工程と、無機物バンク層の上に有機物バンク層512bを形成する工程が含まれる。
まず無機物バンク層512aを形成する工程では、図1に示すように、回路素子部502の第2層間絶縁膜544b上及び画素電極511上に、無機物バンク層512aを形成する。無機物バンク層512aを、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって層間絶縁層514及び画素電極511の全面にSiO2、TiO2等の無機物膜を形成する。
次にこの無機物膜をエッチング等によりパターニングして、電極511の電極面511aの形成位置に対応する下部開口部512cを設ける。このとき、無機物バンク層512aを電極511の周縁部と重なるように形成しておく必要がある。このように、電極511の周縁部(一部)と無機物バンク層512aとが重なるように無機物バンク層512aを形成することにより、発光層510の発光領域を制御することができる。
次に有機物バンク層512bを形成する工程では、図2に示すように、無機物バンク層512a上に有機物バンク層512bを形成する。有機物バンク層512bをフォトリソグラフィ技術等によりエッチングして、有機物バンク層512bの上部開口部512dを形成する。上部開口部512dは、電極面511a及び下部開口部512cに対応する位置に設けられる。
上部開口部512dは、図2に示すように、下部開口部512cより広く、電極面511aより狭く形成することが好ましい。これにより、無機物バンク層512aの下部開口部512cを囲む第1積層部512eが、有機物バンク層512bよりも電極511の中央側に延出された形になる。このようにして、上部開口部512d、下部開口部512cを連通させることにより、無機物バンク層512a及び有機物バンク層512bを貫通する開口部512gが形成される。
次にプラズマ処理工程では、バンク部512の表面と画素電極の表面511aに、親インク性を示す領域と、撥インク性を示す領域を形成する。このプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、バンク部512の上面(512f)及び開口部512gの壁面並びに画素電極511の電極面511aを親インク性を有するように加工する親インク化工程と、有機物バンク層512bの上面512f及び上部開口部512dの壁面を、撥インク性を有するように加工する撥インク化工程と、冷却工程とに大別される。
まず、予備加熱工程では、バンク部512を含む基板501を所定の温度まで加熱する。加熱は、例えば基板501を載せるステージにヒータを取り付け、このヒータで当該ステージごと基板501を加熱することにより行う。具体的には、基板501の予備加熱温度を、例えば70〜80℃の範囲とすることが好ましい。
つぎに、親インク化工程では、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。このO2プラズマ処理により、図3に示すように、画素電極511の電極面511a、無機物バンク層512aの第1積層部512e及び有機物バンク層512bの上部開口部512dの壁面ならびに上面512fが親インク処理される。この親インク処理により、これらの各面に水酸基が導入されて親インク性が付与される。図3では、親インク処理された部分を一点鎖線で示している。
つぎに、撥インク化工程では、大気雰囲気中で4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行う。CF4プラズマ処理により、図4に示すように、上部開口部512d壁面及び有機物バンク層の上面512fが撥インク処理される。この撥インク処理により、これらの各面にフッ素基が導入されて撥インク性が付与される。図4では、撥インク性を示す領域を二点鎖線で示している。
次に、冷却工程では、プラズマ処理のために加熱された基板501を室温、またはインクジェット工程(液滴吐出工程)の管理温度まで冷却する。プラズマ処理後の基板501を室温、または所定の温度(例えばインクジェット工程を行う管理温度)まで冷却することにより、次の正孔注入/輸送層形成工程を一定の温度で行うことができる。
次に発光素子形成工程では、画素電極511上に正孔注入/輸送層及び発光層を形成することにより発光素子を形成する。発光素子形成工程には、4つの工程が含まれる。即ち、正孔注入/輸送層を形成するための第1組成物を各前記画素電極上に吐出する第1液滴吐出工程と、吐出された前記第1組成物を乾燥させて前記画素電極上に正孔注入/輸送層を形成する正孔注入/輸送層形成工程と、発光層を形成するための第2組成物を前記正孔注入/輸送層の上に吐出する第2液滴吐出工程と、吐出された前記第2組成物を乾燥させて前記正孔注入/輸送層上に発光層を形成する発光層形成工程とが含まれる。
まず、第1液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を電極面511a上に吐出する。なお、この第1液滴吐出工程以降は、水、酸素の無い窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。(なお、画素電極上にのみ正孔注入/輸送層を形成する場合は、有機物バンク層に隣接して形成される正孔注入/輸送層は形成されない)
図5に示すように、インクジェットヘッド(機能液滴吐出ヘッド)Hに正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを下部開口部512c内に位置する電極面511aに対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された第1組成物滴510cを電極面511a上に吐出する。
ここで用いる第1組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、R・G・Bの各発光層510bに対して同じ材料を用いても良く、発光層毎に変えても良い。
図5に示すように、吐出された第1組成物滴510cは、親インク処理された電極面511a及び第1積層部512e上に広がり、下部、上部開口部512c、512d内に満たされる。電極面511a上に吐出する第1組成物量は、下部、上部開口部512c、512dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、第1組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、第1組成物滴510cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面511a上に吐出しても良い。
次に正孔注入/輸送層形成工程では、図6に示すように、吐出後の第1組成物を乾燥処理及び熱処理して第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、電極面511a上に正孔注入/輸送層510aを形成する。乾燥処理を行うと、第1組成物滴510cに含まれる極性溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層512a及び有機物バンク層512bに近いところで起き、極性溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。
これにより図6に示すように、乾燥処理によって電極面511a上でも極性溶媒の蒸発が起き、これにより電極面511a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部510aが形成される。電極面511a上では極性溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面511a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部510aが形成される。
次に第2液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出する。この第2液滴吐出工程では、正孔注入/輸送層510aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層510aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で正孔注入/輸送層510aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出しても、正孔注入/輸送層510aと発光層510bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層510bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、非極性溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層510aの表面の親和性を高めるために、発光層を形成する前に表面改質工程を行うことが好ましい。
そこでまず、表面改質工程について説明する。表面改質工程は、発光層形成の際に用いる第1組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質用溶媒を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法またはディップ法により正孔注入/輸送層510a上に塗布した後に乾燥することにより行う。
例えば、インクジェット法による塗布は、図7に示すように、インクジェットヘッドHに、表面改質用溶媒を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを基板(すなわち、正孔注入/輸送層510aが形成された基板)に対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルHから表面改質用溶媒510dを正孔注入/輸送層510a上に吐出することにより行う。そして、図8に示すように、表面改質用溶媒510dを乾燥させる。
次に第2液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出する。図9に示すように、インクジェットヘッドHに、青色(B)発光層形成材料を含有する第2組成物を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを下部、上部開口部512c、512d内に位置する正孔注入/輸送層510aに対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された第2組成物滴510eとして吐出し、この第2組成物滴510eを正孔注入/輸送層510a上に吐出する。
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。
非極性溶媒としては、正孔注入/輸送層510aに対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。このような非極性溶媒を発光層510bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層510aを再溶解させることなく第2組成物を塗布できる。
図9に示すように、吐出された第2組成物510eは、正孔注入/輸送層510a上に広がって下部、上部開口部512c、512d内に満たされる。第2組成物510eは1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層510a上に吐出しても良い。この場合、各回における第2組成物の量は同一でも良く、各回毎に第2組成物量を変えても良い。
次に発光層形成工程では、第2組成物を吐出した後に乾燥処理及び熱処理を施して、正孔注入/輸送層510a上に発光層510bを形成する。乾燥処理は、吐出後の第2組成物を乾燥処理することにより第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発して、図10に示すような青色(B)発光層510bを形成する。
続けて、図11に示すように、青色(B)発光層510bの場合と同様にして、赤色(R)発光層510bを形成し、最後に緑色(G)発光層510bを形成する。なお、発光層510bの形成順序は、前述の順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決める事も可能である。
次に対向電極形成工程では、図12に示すように、発光層510b及び有機物バンク層512bの全面に陰極503(対向電極)を形成する。なお,陰極503は複数の材料を積層して形成しても良い。例えば、発光層に近い側には仕事関数が小さい材料を形成することが好ましく、例えばCa、Ba等を用いることが可能であり、また材料によっては下層にLiF等を薄く形成した方が良い場合もある。また、上部側(封止側)には下部側よりも仕事関数が高いものが好ましい。これらの陰極(陰極層)503は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、発光層510bの熱による損傷を防止できる点で好ましい。
また、フッ化リチウムは、発光層510b上のみに形成しても良く、更に青色(B)発光層510b上のみに形成しても良い。この場合、他の赤色(R)発光層及び緑色(G)発光層510b、510bには、LiFからなる上部陰極層503bが接することとなる。また陰極12の上部には、蒸着法、スパッタ法、CVD法等により形成したAl膜、Ag膜等を用いることが好ましい。また、陰極503上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
最後に、図13に示す封止工程では、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で、有機EL素子504上に封止用基板505を積層する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極503にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極503に侵入して陰極503が酸化されるおそれがあるので好ましくない。そして最後に、フレキシブル基板の配線に陰極503を接続するとともに、駆動ICに回路素子部502の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置500が得られる。
なお、上記の撥インク膜、陰極503、画素電極511等においても、それぞれ液体材料を用い、インクジェット法で形成するようにしてもよい。
次に、有機EL装置の製造装置について説明する。上述したように有機EL装置の製造プロセスにおいて、正孔注入/輸送層(正孔注入層)を形成する正孔注入/輸送層形成工程(第1液滴吐出工程+乾燥工程)と、表面改質工程と、発光層を形成する発光層形成工程(第2液滴吐出工程+乾燥工程)とは、機能液滴吐出ヘッドを用いたインクジェット法で行われる。これに対応し、本実施形態の有機EL装置の製造装置では、機能液滴吐出ヘッドを、発光機能材料を吐出させながら走査する描画装置が用いられている。
より具体的には、図14に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(必要な場合には表面改質工程を含む)を行う正孔注入層形成設備Aは、第1液滴(発光機能材料:正孔注入層材料)を導入する機能液滴吐出ヘッドを搭載した上記の描画装置1aと、乾燥装置2aと、基板搬送装置3aとを備えており、且つこれらを収容するチャンバ装置4aを備えている。上述したように、正孔注入/輸送層形成工程は不活性ガスの雰囲気中で行うことが好ましく、その手段としてチャンバ装置4aが設けられている。
チャンバ装置4aは、描画装置1aを収容する主チャンバ4aaと、乾燥装置2aおよび基板搬送装置3aを収容すると共にこれらの連結部分(搬送路)をトンネル状に収容する副チャンバ4abとで構成されている。主チャンバ4aaは、不活性ガスを連続的に流して良好な雰囲気を構成する方式を採用しており(詳細は後述する)、副チャンバ4abは、不活性ガスを循環させて良好な雰囲気を構成する方式を採用している。なお、図中の符号5は、基板移載装置である。
同様に、図15に示すように、発光層形成工程を行う発光層形成設備Bは、第2液滴(発光機能材料:R・G・B発光層材料)を導入する機能液滴吐出ヘッドを搭載した上記の描画装置1bと、乾燥装置2bと、基板搬送装置3bとを色別に3組備えており、且つこれらを収容するチャンバ装置4bを3組備えている。上記と同様に、発光層形成工程は不活性ガスの雰囲気中で行うことが好ましく、その手段としてチャンバ装置4bが設けられている。そして、この場合のチャンバ装置4bも、各描画装置1bを収容する3つの主チャンバ4baと、各乾燥装置2bおよび各基板搬送装置3bを収容すると共にこれらの連結部分(搬送路)をトンネル状に収容する3つの副チャンバ4bbとで構成されている。
正孔注入層形成設備Aの描画装置1aおよび発光層形成設備Bの各描画装置1bは、それぞれの機能液滴吐出ヘッドに導入する発光機能材料が異なるだけで、同一の構造を有している。また、各乾燥装置2a,2b、各基板搬送装置3a,3bおよび各チャンバ装置4a,4bも、同一もしくは同様の構造を有している。したがって、機能液滴吐出ヘッドの交換や、発光機能材料の供給系の交換における手間を無視すれば、任意の1組の設備(描画装置1、乾燥装置2、基板搬送装3およびチャンバ装置4)で、有機EL装置の製造は可能である。
そこで、本実施形態では、図15における左端の1組の設備、すなわちB色の発光層を形成する描画装置1b、乾燥装置2b、基板搬送装3bおよびチャンバ装置4bを例に、各構成装置を説明し、他の設備の説明は省略する。
図外の装置により、上記のバンク部形成工程およびプラズマ処理工程を経た基板は、図15の左端に位置する基板移載装置5から基板搬送装置3(3b)に搬送され、ここで方向および姿勢転換されて描画装置1(1b)に搬送される。基板搬送装置3(3b)から描画装置1(1b)に受け渡され基板は、描画装置1(1b)にセットされる。描画装置1(1b)では、その機能液滴吐出ヘッドにより、基板の多数の画素領域(開口部512g)にB色の発光材料(液滴)が吐出される(第2液滴吐出工程)。
次に、発光材料が塗着した基板は、描画装置1(1b)から基板搬送装置3(3b)に受け渡され、基板搬送装置3(3b)により乾燥装置2(2b)に導入される。乾燥装置2(2b)では、基板を所定時間、高温の不活性ガスの雰囲気に曝して、発光材料中の溶剤を気化させる(乾燥工程)。ここで再度、基板を描画装置1(1b)に導入し第2液滴吐出工程が行われる。すなわち、この第2液滴吐出工程と乾燥工程とが複数回繰り返され、発光層が所望の膜厚になったところで、基板は基板搬送装置3(3b)を経て、R色の発光層を形成すべく中間の描画装置1(1b)に搬送され、最後に、G色の発光層を形成すべく右端の描画装置1(1b)に搬送される。そして、これらの作業は、上記のチャンバ装置4(4b)内の不活性ガスの雰囲気中で行われる。なお、B・R・Gの各色発光層の形成のための作業順は、任意である。
なお、乾燥装置2および基板搬送装置3の詳細な説明は省略するが、例えば乾燥装置2であれば、不活性ガスを吹き付けるブロー乾燥や真空乾燥の他、ホットプレートを用いるもの或いはランプ(赤外線ランプ)を用いるもの等が、好ましい。そして、乾燥温度は、40±2℃〜200±2℃とすることが、好ましい。
次に、本発明の主体を為す描画装置1および主チャンバ(チャンバ手段)4について、詳細に説明する。描画装置1は、図16ないし図19に示すように、液滴吐出装置(液滴吐出手段)10と、その付帯装置11とを備えている。付帯装置11は、液滴吐出装置10に発光機能材料(発光材料:機能液)を供給すると共に不要となった機能液を回収する機能液供給回収装置13、各構成部品への駆動・制御用等の圧縮エアーを供給するエアー供給装置14、エアーを吸引する真空吸引装置15および機能液滴吐出ヘッド7のメンテナンスに供するメンテナンス装置16等を有している。
液滴吐出装置10は、床上に設置した架台21と、架台21上に設置した石定盤22と、石定盤22上に設置したX軸テーブル23およびこれに直交するY軸テーブル24と、Y軸テーブル24に吊設するように設けたメインキャリッジ25と、メインキャリッジ25に搭載したヘッドユニット26とを有している。詳細は後述するが、ヘッドユニット26には、サブキャリッジ(キャリッジ)41を介して、複数の機能液滴吐出ヘッド7が搭載されている。また、この複数の機能液滴吐出ヘッド7に対応して、X軸テーブル23の吸着テーブル81上に基板(機能液滴吐出対象物)Wがセットされるようになっている。
本実施形態の液滴吐出装置10では、機能液滴吐出ヘッド7の駆動(機能液滴の選択的吐出)に同期して基板Wが移動する構成であり、機能液滴吐出ヘッド7のいわゆる主走査は、X軸テーブル23のX軸方向への往復の両動作により行われる。また、これに対応して、いわゆる副走査は、Y軸テーブル24により機能液滴吐出ヘッド7のY軸方向への往動動作により行われる。なお、上記の主走査をX軸方向への往動(または復動)動作のみで行うようにしてもよい。
一方、ヘッドユニット26のホーム位置は、図17および図19における図示左端位置となっており、且つこの液滴吐出装置10の左方からヘッドユニット26の運び込み或いは交換が行われる(詳細は後述する)。また、図示の手前側には、上記の基板搬送装置3が臨んでおり、基板Wはこの手前側から搬入・搬出される。そして、この液滴吐出装置10の図示右側には、上記付帯装置11の主な構成装置が、一体的に添設されている。
付帯装置11は、キャビネット形式の共通機台31と、共通機台31内の一方の半部に収容した上記のエアー供給装置14および真空吸引装置15と、共通機台31内の一方の半部に主要装置を収容した上記の機能液供給回収装置13と、共通機台31上に主要装置を収容した上記メンテナンス装置16とを備えている。
メンテナンス装置16は、機能液滴吐出ヘッド7の定期的なフラッシング(全吐出ノズルからの機能液の捨て吐出)を受ける大小2つのフラッシングユニット33と、機能液滴吐出ヘッド7の機能液吸引および保管を行うクリーニングユニット34と、機能液滴吐出ヘッド7のノズル形成面をワイピングするワイピングユニット35とを有している。そして、クリーニングユニット34およびワイピングユニット35は、上記の共通機台31上に配設されている。また、小さい方のフラッシングユニット33Aは、基板Wの近傍に配設され、大きい方のフラッシングユニット33Bは、ヘッドユニット26のホーム位置近傍に配設されている(詳細は後述する)。
一方、主チャンバ4は、図14および図15に示すように、チャンバルーム37に、電気室38および機械室39を併設した、いわゆるクリーンルームの形態を有している。チャンバルーム37には、不活性ガスである窒素ガスが導入され、これに収容した上記の液滴吐出装置10および付帯装置11は、全体として窒素ガスの雰囲気に曝され、窒素ガスの雰囲気中で稼動する。
ここで、図20の模式図を参照して、窒素ガスの雰囲気中で稼動する描画装置1の一連の動作を簡単に説明する。先ず、準備段階として、ヘッドユニット26が液滴吐出装置10に運び込まれ、これがメインキャリッジ25にセットされる。ヘッドユニット26がメインキャリッジ25にセットされると、Y軸テーブル24がヘッドユニット26を、図外のヘッド認識カメラの位置に移動させ、ヘッド認識カメラによりヘッドユニット26が位置認識される。ここで、この認識結果に基づいて、ヘッドユニット26がθ補正され、且つヘッドユニット26のX軸方向およびY軸方向の位置補正がデータ上で行われる。位置補正後、ヘッドユニット(メインキャリッジ25)26はホーム位置に戻る。
一方、X軸テーブル23の吸着テーブル81上に基板(この場合は、導入される基板毎)Wが導入されると、この位置(受渡し位置)で後述する主基板認識カメラ90が基板を位置認識する。ここで、この認識結果に基づいて、基板Wがθ補正され、且つ基板WのX軸方向およびY軸方向の位置補正がデータ上で行われる。位置補正後、基板(吸着テーブル81)Wはホーム位置に戻る。なお、X軸およびY軸テーブル23,24の初期調整時(いわゆる通り出し)には、吸着テーブル81上にアライメントマスクを導入し、後述する副基板認識カメラ108により初期調整を行う。
このようにして準備が完了すると、実際の液滴吐出作業では、先ずX軸テーブル23が駆動し、基板Wを主走査方向に往復動させると共に複数の機能液滴吐出ヘッド7を駆動して、機能液滴の基板Wへの選択的な吐出動作が行われる。基板Wが復動した後、こんどはY軸テーブル24が駆動し、ヘッドユニット26を1ピッチ分、副走査方向に移動させ、再度基板Wの主走査方向への往復移動と機能液滴吐出ヘッド7の駆動が行われる。そしてこれを、数回繰り返すことで、基板Wの端から端まで(全領域)液滴吐出が行われる。
なお、本実施形態では、ヘッドユニット26に対し、その吐出対象物である基板Wを主走査方向(X軸方向)に移動させるようにしているが、ヘッドユニット26を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ヘッドユニット26を固定とし、基板Wを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
次に、上記した液滴吐出装置10、付帯装置11および主チャンバ4の各構成装置について、順を追って説明するが、その前に、理解を容易にすべく、液滴吐出装置10の主要部となるヘッドユニット26について詳細に説明する。
図21ないし図24は、ヘッドユニットの構造図である。これらの図に示すように、ヘッドユニット26は、サブキャリッジ41と、サブキャリッジ41に搭載した複数個(12個)の機能液滴吐出ヘッド7と、各機能液滴吐出ヘッド7をサブキャリッジ41に個々に取り付けるための複数個(12個)のヘッド保持部材42とを備えている。12個の機能液滴吐出ヘッド7は、6個づつ左右に二分され、主走査方向に対し所定の角度傾けて配設されている。
また、各6個の機能液滴吐出ヘッド7は、副走査方向に対し相互に位置ずれして配設され、12個の機能液滴吐出ヘッド7の全吐出ノズル68(後述する)が副走査方向において連続する(一部重複)ようになっている。すなわち、実施形態のヘッド配列は、サブキャリッジ41上において、同一方向に傾けて配置した6個の機能液滴吐出ヘッド7を2列としたものであり、且つ各ヘッド列間において機能液滴吐出ヘッド7が相互に180°回転した配置となっている。
もっとも、この配列パターンは一例であり、例えば、各ヘッド列における隣接する機能液滴吐出ヘッド7同士を90°の角度を持って配置(隣接ヘッド同士が「ハ」字状)したり、各ヘッド列間における機能液滴吐出ヘッド7を90°の角度を持って配置(列間ヘッド同士が「ハ」字状)したりすることは可能である。いずれにしても、12個の機能液滴吐出ヘッド7の全吐出ノズル68によるドットが副走査方向において連続していればよい。
また、各種の基板Wに対し機能液滴吐出ヘッド7を専用部品とすれば、機能液滴吐出ヘッド7をあえて傾けてセットする必要は無く、千鳥状や階段状に配設すれば足りる。さらにいえば、所定長さのノズル列(ドット列)を構成できる限り、これを単一の機能液滴吐出ヘッド7で構成してもよいし複数の機能液滴吐出ヘッド7で構成してもよい。すなわち、機能液滴吐出ヘッド7の個数や列数、さらに配列パターンは任意である。
サブキャリッジ41は、一部が切り欠かれた略方形の本体プレート44と、本体プレート44の長辺方向の中間位置に設けた左右一対の基準ピン45,45と、本体プレート44の両長辺部分に取り付けた左右一対の支持部材46,46と、各支持部材46の端部に設けた左右一対のハンドル47,47とを有している。左右のハンドル47,47は、例えば組み立てたヘッドユニット26を上記の液滴吐出装置10に載せ込む場合に、ヘッドユニット26を手持ちするための部位となる。また、左右の支持部材46,46は、サブキャリッジ41を液滴吐出装置10のセット部に固定するときの部位となる(いずれも詳細は後述する)。更に、一対の基準ピン45,45は、画像認識を前提として、サブキャリッジ(ヘッドユニット26)41をX軸、Y軸およびθ軸方向に位置決め(位置認識)するための基準となるものである。
さらに、サブキャリッジ41には、二分された機能液滴吐出ヘッド群7Sの上側に位置して、これら機能液滴吐出ヘッド7に接続される左右一対の配管接続アッセンブリ49,49および左右一対の配線接続アッセンブリ50,50が設けられている。各配管接続アッセンブリ49は、描画装置1の機能液供給回収装置13に配管接続され、同様に各配線接続アッセンブリ50は、描画装置1の制御装置(ヘッドドライバ:図示省略)に配線接続されるようになっている。なお、図22は、一方(左側)の配管接続アッセンブリ49を省略して、描かれている。
なお、図21および図23にのみ示すように、このヘッドユニット26には更に、両配線接続アッセンブリ50を覆う基板カバー51が設けられている。基板カバー51は、各配線接続アッセンブリ50の側面を覆う一対の側面カバー53,53と、一対の側面カバー53,53間に渡した上面カバー54とで構成されている。このうち上面カバー54は、ヘッドユニット26を液滴吐出装置10にセットした後に取り付けるようになっている。
図25に示すように、機能液滴吐出ヘッド7は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針62,62を有する液体導入部61と、液体導入部61の側方に連なる2連のヘッド基板63と、液体導入部61に下方に連なる2連のポンプ部64と、ポンプ部64に連なるノズル形成プレート65とを備えている。液体導入部61には、上記の配管接続アッセンブリ49が接続され、ヘッド基板63の2連のコネクタ66,66には、上記の配線接続アッセンブリ50が接続されている。一方、このポンプ部64とノズル形成プレート65とにより、サブキャリッジ41裏面側に突出する方形のヘッド本体60が構成されている。また、ノズル形成プレート65のノズル形成面67には、多数の吐出ノズル68を列設した2列のノズル列69,69が形成されている。
次に、液滴吐出装置10の他の構成装置、付帯装置11および主チャンバ4の各構成装置について、順を追って説明する。
図26ないし29は、X軸テーブルを搭載した液滴吐出装置の架台21および石定盤22を表している。これら図に示すように、架台21は、アングル材等を方形に組んで構成され、下部に分散配置したアジャストボルト付きの複数(9個)の支持脚71を有している。架台21の上部には、各辺に対し2個の割合で、運搬等の移動の際に石定盤22を固定するための複数(8個)の固定部材72が、側方に張り出すように取り付けられている。各固定部材72は、ブラケット様に「L」字状に形成され、基端側を架台21の上部側面に固定され、先端側を調整ボルト73を介して、石定盤22の下部側面に当接するようになっている。石定盤22は、架台21に対し非締結状態で載っており、石定盤22を運搬する際にこの固定部材72により、架台21に対し石定盤22がX軸方向およびY軸方向(前後左右)に不動に固定される。
石定盤22は、機能液滴吐出ヘッド7を精度良く移動させるX軸テーブル23およびY軸テーブル24が、周囲の環境条件や振動等により精度(特に平面度)上の狂いが生じないように支持するものであり、平面視長方形の無垢の石材で構成されている。石定盤22の下部には、これを架台21上に支持するアジャストボルト付きの3つの主支持脚75および6つの補助脚76が設けられている。3つの主支持脚75は、石定盤22を3点で支持し、その表面の平行度(水平度を含む)を出すためのものであり、6つの補助脚76は、石定盤22の3つの主支持脚75から外れた部分を支持しその撓みを抑制するものである。
このため、図29に模式的に示すように、3つの主支持脚75,75,75は二等辺三角形をなすように配置され、その底辺を為す2つの主支持脚75が、石定盤22の基板搬入側(同図では左側、図16では手前側)に位置するように配設されている。また、6つの補助脚76,76,76,76,76,76は、上記3つの主支持脚75,75,75を含んで縦横に3×3となるように、均一且つ分散して配設されている。
この場合、石定盤22上には、その長辺に沿う中心線に軸線を合致させてX軸テーブル23が設置され、短辺に沿う中心軸に軸線を合致させてY軸テーブル24が設置されている。このため、X軸テーブル23は、石定盤22上に直接固定され、Y軸テーブル24は、その4本の支柱78がそれぞれスペーサブロック79を介して石定盤22上に固定されている。これにより、Y軸テーブル24は、X軸テーブル23を跨いでその上側に直交するように配設されている。なお、図27中の符号80は、後述する主基板認識カメラを固定ための4つの小ブロックであり、主基板認識カメラも石定盤22上に固定されている。
図26ないし図28のX軸移動系と図30ないし図32のθ移動系に示すように、X軸テーブル23は、石定盤22の長辺方向に延在しており、基板Wをエアー吸引により吸着セットする吸着テーブル81と、吸着テーブル81を支持するθテーブル82と(図30ないし図32参照)、θテーブル82をX軸方向にスライド自在に支持するX軸エアースライダ83と、θテーブル82を介して吸着テーブル81上の基板WをX軸方向に移動させるX軸リニアモータ84と、X軸エアースライダ83に併設したX軸リニアスケール85と(図26ないし図29参照)で構成されている。
X軸リニアモータ84は、X軸エアースライダ83のヘッドユニット26搬入側に位置し、X軸リニアスケール85は、X軸エアースライダ83の付帯装置11側に位置しており、これらは、相互に平行に配設されている。X軸リニアモータ84、X軸エアースライダ83およびX軸リニアスケール85は、石定盤22上に直接支持されている。吸着テーブル81には、上記の真空吸引装置15に連なる真空チューブが接続されており(図示省略)、そのエアー吸引によりセットされた基板Wが平坦度を維持するようにこれを吸着する。
また、X軸リニアスケール85の付帯装置11側には、これに平行に位置して、石定盤22上にボックス88に収容された状態で、X軸ケーブルベア87が配設されている。X軸ケーブルベア87には、吸着テーブル81の真空チューブやθテーブル82用のケーブル等が、吸着テーブル81およびθテーブル82の移動に追従するように、収容されている(図27および図28参照)。
このように構成されたX軸テーブル23は、X軸リニアモータ84の駆動により、基板Wを吸着した吸着テーブル81およびθテーブル82が、X軸エアースライダ83を案内にしてX軸方向に移動する。このX軸方向の往復移動において、基板搬入側から奥側に向かう往動動作により、機能液滴吐出ヘッド7の相対的な主走査が行われる。また、後述する主基板認識カメラ90の認識結果に基づいて、θテーブル82による基板Wのθ補正(水平面内における角度補正)が行われる。
図33は、主基板認識カメラを表している。同図に示すように、吸着テーブル81の直上部には、基板の搬入位置(受渡し位置)に臨むように、一対の主基板認識カメラ90,90が配設されている。一対の主基板認識カメラ90,90は、基板の2つの基準位置(図示省略)を同時に画像認識するようになっている。
図34、図35および図36に示すように、Y軸テーブル24は、石定盤22の短辺方向に延在しており、上記のメインキャリッジ25を吊設するブリッジプレート91と、ブリッジプレート91を両持ちで且つY軸方向にスライド自在に支持する一対のY軸スライダ92,92と、Y軸スライダ92に併設したY軸リニアスケール93と、一対のY軸スライダ92,92を案内にしてブリッジプレート91をY軸方向に移動させるY軸ボールねじ94と、Y軸ボールねじ94を正逆回転させるY軸モータ95とを備えている。また、一対のY軸スライダ92,92の両側に位置して、一対のY軸ケーブルベア96,96がそれぞれボックス97,97に収容した状態で、配設されている。
Y軸モータ95はサーボモータで構成されており、Y軸モータ95が正逆回転すると、Y軸ボールねじ94を介してこれに螺合しているブリッジプレート91が、一対のY軸スライダ92,92を案内にしてY軸方向に移動する。すなわち、ブリッジプレート91のY軸方向への移動に伴って、メインキャリッジ25がY軸方向に移動する。このメインキャリッジ(ヘッドユニット26)25のY軸方向の往復移動において、ホーム位置側から付帯装置11側に向かう往動動作により、機能液滴吐出ヘッド7の副走査が行われる。
一方、上記の4本の支柱78上には、メインキャリッジ25の移動経路の部分を長方形開口98aとした載置台プレート98が支持されており、載置台プレート98上には、長方形開口98aを逃げて一対のY軸スライダ92,92およびY軸ボールねじ94が、相互に平行に配設されている。また、載置台プレート98から外側に張り出した一対の支持板99,99上には、上記の一対のY軸ケーブルベア96,96が、そのボックス97,97と共に載置されている。
基板搬入側のY軸ケーブルベア96には、主にヘッドユニット26に接続されるケーブルが収容され、逆側のY軸ケーブルベアには、主にヘッドユニット26に接続される機能液用のチューブが収容されている(いずれも図示省略)。そして、これらケーブルおよびチューブは、上記のブリッジプレート91を介してヘッドユニット26の複数の機能液滴吐出ヘッド7に接続されている。
図37および図38に示すように、メインキャリッジ25は、上記のブリッジプレート91に下側から固定される外観「I」形の吊設部材101と、吊設部材101の下面に取り付けたθテーブル102と、θテーブル102の下面に吊設するように取り付けたキャリッジ本体103とで構成されている。そして、この吊設部材101が、上記の載置台プレート98の長方形開口98aに臨んでいる。
キャリッジ本体103は、ヘッドユニット26が着座するベースプレート104と、ベースプレート104を垂設するように支持するアーチ部材105と、ベースプレート104の一方の端部に突出するように設けた一対の仮置きアングル106,106と、ペースプレート104の他方の端部に設けたストッパプレート107とを備えている。また、ストッパプレート107の外側には、基板Wを認識する上記の一対の副基板認識カメラ108が、配設されている。
ベースプレート104には、ヘッドユニット26の本体プレート44が遊嵌する方形開口111が形成され、またこの方形開口111を構成するベースプレート104の左右の各開口縁部112には、ヘッドユニット26を位置決め固定するためのボルト孔113,113、2つの貫通孔114,114および位置決めピン115とが設けられている。
このように構成されたメインキャリッジ25には、ヘッドユニット26が、その両ハンドル47,47により手持ちされて運び込まれ、セットされるようになっている。すなわち、運び込まれたヘッドユニット26は、いったん両仮置きアングル106,106上に載置される(仮置き)。ここで、ブリッジプレート91上に配設した機能液供給回収装置13に連なるチューブを、ヘッドユニット26の配管接続アッセンブリ49に配管接続すると共に、制御系のケーブルを配線接続アッセンブリ50に配線接続する。さらに、上記の上面カバー54を取り付ける。そして、再度ハンドル47,47を把持し、両仮置きアングル106,106をガイドにしてヘッドユニット26を先方に押し入れ、これをベースプレート104の左右の開口縁部112,112にセットするようになっている。
次に、付帯装置11の共通機台31について説明する。図39ないし図42に示すように、共通機台31は、隔壁を介して大小の2つの収容室122a,122bを形成したキャビネット形式の機台本体121と、機台本体121上に設けた移動テーブル123と、移動テーブル123上に固定した共通ベース124と、機台本体121上の移動テーブル123から外れた端位置に設けたタンクベース125とを備えている。共通ベース124には、クリーニングユニット34およびワイピングユニット35が載置され、タンクベース125には、後述する機能液供給回収装置13の中間タンク126が載置されている。
機台本体121の下面には、アジャストボルト付きの6つの支持脚128と、4つのキャスタ129が設けられており、また液滴吐出装置10側には、液滴吐出装置10の架台21と連結するための一対の連結ブラケット130,130が設けられている。これにより、液滴吐出装置10と付帯装置(共通機台31)11と一体化され、且つ必要に応じて付帯装置11を分離し、移動できるようになっている。
機台本体121の小さい方の収容室122bには、エアー供給装置14および真空吸引装置15の主要部分が収容され、大きい方の収容室122aには、機能液供給回収装置13のタンク類が収容されている。そして、このタンク類に接続するための継手群131が、機台本体121の端部上面に形成した矩形開口121aに臨んでいる(図示左端図)。また、この矩形開口121aの近傍に位置して、後述する廃液ポンプ152が設けられている(図16参照)。
移動テーブル123は、機台本体121の長手方向に延在しており、共通ベース124を支持する方形テーブル133と、方形テーブル133をスライド自在に支持する一対の移動スライダ134,134と、一対の移動スライダ134,134間に配設されたボールねじ135と、ボールねじ135を正逆回転させる移動モータ136とを備えている。移動モータ136は、カップリング137を介してボールねじ135の端に接続され、方形テーブル133は、雌ねじこま138を介してボールねじ135に螺合している。これにより、移動モータ136が正逆回転すると、ボールねじ135を介して方形テーブル133および共通ベース124が、X軸方向に進退する。
移動テーブル123は、共通ベース124上に載置したクリーニングユニット34とワイピングユニット35とを移動させるが、移動テーブル123が駆動するときには、上記のY軸テーブル24により、ヘッドユニット26がクリーニングユニット34の直上部に臨んでいる。クリーニングユニット34が、ヘッドユニット26の複数の機能液滴吐出ヘッド7に密着して機能液を吸引すると、各機能液滴吐出ヘッド7のノズル形成面67が汚れるため、続いて移動テーブル123により、複数の機能液滴吐出ヘッド7にワイピングユニット35が接近して、ノズル形成面67が汚れを拭き取るように動作する(詳細は後述する)。
また、移動テーブル123の脇には、これに平行にケーブルベア139が配設されている。ケーブルベア139は、共通機台31上に固定されると共に先端部が共通ベース124に固定されていて、両ユニット34,35用のケーブルやエアーチューブ、或いは後述する洗浄用のチューブや廃液(再利用)用のチューブ等が、収容されている(図示省略)。
次に、図43ないし図46を参照して、機能液供給回収装置13について説明する。図43の配管系統図に示すように、機能液供給回収装置13は、ヘッドユニット26の各機能液滴吐出ヘッド7に機能液を供給する機能液供給系141と、クリーニングユニット34で吸引した機能液を回収する機能液回収系142と、ワイピングユニット35に、機能液の溶剤を洗浄用として供給する洗浄液供給系143と、フラッシングユニット33から機能液の廃液を回収する廃液回収系144とで構成されている。
図44および図45は、上記の共通機台31の大きい方の収容室122aに収容したタンク群であり、引出し形式の防液パン146上に、複数のタンクが載置されている。防液パン146上には、タンク群を構成する、図示左側から洗浄液供給系143の洗浄タンク147、機能液回収系142の再利用タンク148および機能液供給系141の加圧タンク149が横並びに配設されると共に、洗浄タンク147および再利用タンク148の近傍に、小型に形成した廃液回収系144の廃液タンク150が配設されている。
図43に示すように、廃液タンク150は、廃液ポンプ152を介してフラッシングユニット33に接続され、各機能液滴吐出ヘッド7によりフラッシングユニット33に吐出した機能液を、廃液タンク150に回収する。再利用タンク148は、クリーニングユニット34の吸引ポンプ153に接続されており、吸引ポンプ153により各機能液滴吐出ヘッド7から吸引した機能液を回収する。なお、図46に示すように、廃液ポンプ152と後述する中間タンク126上流側の開閉バルブ154とは、支持プレート155に固定されており、上述のように、機台本体121の端部上面に取り付けられている(図16参照)。
図43に示すように、洗浄タンク147には、流入側がエアー供給装置14に接続され、流出側がワイピングユニット35の洗浄液噴霧ヘッド噴霧ノズル(後述する)195に接続されている。すなわち、洗浄タンク147は、エアー供給装置14から導入される圧縮エアーにより、内部の洗浄液を洗浄液噴霧ヘッド195に圧力供給する。詳細は後述するが、洗浄液噴霧ヘッド195が吐出した洗浄液は、機能液滴吐出ヘッド7を拭き取るワイピンクングシート182に含浸される。なお、洗浄タンク147には、更にタンク加圧用のチューブ156が接続されている。
加圧タンク149には、流入側がエアー供給装置14に接続され、流出側が機能液供給系141の中間タンク126に接続されており、この中間タンク126とヘッドユニット(の一対の配管接続アッセンブリ49,49)26が複数本のチューブ157で接続されている。加圧タンク149は、機能液のメインタンクであり、エアー供給装置14から導入される圧縮エアーにより、内部の機能液を中間タンク126に圧力供給する。また、加圧タンク149には、更にタンク加圧用のチューブ158が接続されている。
この場合、機能液は、所定の水頭圧で加圧タンク149から中間タンク126に供給されるが、中間タンク126では、この加圧タンク149側の水頭圧が縁切りされ、主に機能液滴吐出ヘッド7のポンピング動作、すなわち圧電素子のポンプ駆動により機能液が供給される。これは、機能液滴吐出ヘッド7の吐出ノズル68から機能液がたれるのを防止せんとするものである。したがって、中間タンク126から機能液滴吐出ヘッド7に無用な水頭圧が加わらないように、中間タンク126の高さ位置が、上記のタンクベース125等よって調節されている。
図47ないし図49は、中間タンク126を表している。中間タンク126は、上記のタンクベース125上に固定されており、両側に液位窓162,162を有すると共にフランジ形式で閉蓋された矩形のタンク本体161と、両液位窓162,162に臨んで機能液の液位(水位)を検出する液位検出器163と、タンク本体161が載置されるパン164と、パン164を介してタンク本体161を支持するタンクスタンド165とを備えている。
タンクスタンド165は、取付けプレート167と、取付けプレート167上に立設した2本の支柱状部材168,168とから成り、この2本の支柱状部材168により、タンク本体161の高さおよび水平が微調節できるようになっている。タンク本体(の蓋体)161の上面には、加圧タンク149に連なる供給チューブ169が繋ぎこまれており、またヘッドユニット26に連なるチューブ(図43の符号158)用の6つのコネクタ170aおよび大気開放用の1つのコネクタ170bが、設けられている。
液位検出器163は、上下に僅かに離間して配設した満液検出器163aおよび減液検出器163bから成り、この満液検出器163aと減液検出器163bとは、タンクスタンド165に対し、基部側で個々に高さ調節自在に取り付けられている。満液検出器163aおよび減液検出器163bは、いずれもタンク本体161の両液位窓162,162に向かっての延びる一対の板状アーム163c,163cを有しており、一対の板状アーム163c,163cの一方には、一方の液位窓162に臨む発光素子163dが、他方には他方の液位窓162に臨む受光素子163eが取り付けられている。すなわち、この発光素子163dおよび受光素子163eにより、透過型の液位センサが構成されている。
中間タンク126に接続される上記の供給チューブ169の上流側には、開閉バルブ154が介設されており(図43および図46参照)、開閉バルブ154により、中間タンク126への機能液の供給が制御される。すなわち、満液検出器163aの液位センサ(満水検知)および減液検出器163bの液位センサ(減水検知)により、開閉バルブ154が開閉制御され、中間タンク126の液位が常に満液と減液の間にあるように調整される。これにより、中間タンク126から各機能液滴吐出ヘッド7に供給される機能液における、水頭圧の変動を極力少なくするようにしている。
なお、図43に示すように、中間タンク126から複数(12個であって24ノズル列69)の機能液滴吐出ヘッド7に至る配管は、中間タンク126からの6本のチューブ157がヘッダパイプ166を介して12本に分岐し、この各チューブが各機能液滴吐出ヘッド7の近傍でY字継手により、それぞれ2つに分岐している(計24本)。これにより、中間タンク126から複数の機能液滴吐出ヘッド7に至るそれぞれの管路において、管路長が同一となって圧力損失(管摩擦損失)が同一となる。
次に、メンテナンス装置16について、ワイピングユニット35、クリーニングユニット34、フラッシングユニット33の順で説明する。
図50ないし図55に示すように、ワイピングユニット35は、別個独立に構成された巻取りユニット(図50ないし図52)171と拭取りユニット(図53ないし図55)172とから成り、上記の共通ベース124上に、突き合わせた状態で配設されている。巻取りユニット171は共通ベース124の手前側に、拭取りユニット172は共通ベース124の奥側、すなわちクリーニングユニット34側に配設されている。
実施形態のワイピングユニット35は、クリーニングユニット34の直上部、すなわちクリーング位置に停止しているヘッドユニット26に対し、後述するワイピングシート182を走行させながら、上記の移動テーブル123により全体としてX軸方向に移動し、複数の機能液滴吐出ヘッド7を拭き取るものである。このため、ワイピングユニット35は、巻取りユニット171から繰り出され、拭取り動作のために拭取りユニット172を周回して巻取りユニット171に巻き取られるようになっている。
図50、図51および図52に示すように、巻取りユニット171は、片持ち形式のフレーム174と、フレーム174に回転自在に支持した上側の繰出しリール175および下側の巻取りリール176と、巻取りリール176を巻取り回転させる巻取りモータ177とを備えている。また、フレーム174の上側部はサブフレーム178が固定されており、このサブフレーム178には、繰出しリール175の先方に位置するように速度検出ローラ179および中間ローラ180が、両持ちで支持されている。さらに、これら構成部品の下側には、洗浄液を受ける洗浄液パン181が配設されている。
繰出しリール175には、ロール状のワイピングシート182が挿填され、繰出しリール175から繰り出されたワイピングシート182は、速度検出ローラ179および中間ローラ180を介して拭取りユニット172に送り込まれる。巻取りリール176と巻取りモータ177との間にはタイミングベルト183が掛け渡され、巻取りリール176は巻取りモータ177により回転してワイピングシート182を巻き取る。
詳細は後述するが、拭取りユニット172にもワイピングシート182を送るモータ(拭取りモータ194)が設けられており、繰出しリール175は、これに設けたトルクリミッタ184により、拭取りモータ194に抗するように制動回転する。速度検出ローラ179は、自由回転する上下2つのローラ179a,179bから成るグリップローラであり、これに設けた速度検出器185により、巻取りモータ177を制御する。すなわち、繰出しリール175は、ワイピングシート182を張った状態で送り出し、巻取りリール176は、ワイピングシート182を弛みが生じないように巻き取る。
図53、図54および図55に示すように、拭取りユニット172は、左右一対のスタンド191,191と、一対のスタンド191,191に支持された断面略「U」字状のベースフレーム192と、ベースフレーム192に両持ちで回転自在に支持された拭取りローラ193と、拭取りローラ193を回転させる拭取りモータ194と、拭取りローラ193に平行に対峙する洗浄液噴霧ヘッド195と、ベースフレーム192を昇降させる複動形式の一対のエアーシリンダ196,196とを備えている。
一対のスタンド191,191は、それぞれ外側に位置する固定スタント198と、固定スタント198の内側に、上下方向にスライド自在に取り付けた可動スタンド199とから成り、各固定スタンド198のベース部に上記のエアーシリンダ196が立設されている。各エアーシリンダ196のプランジャ196aは、可動スタンド199に固定されており、同時に駆動する一対のエアーシリンダ196,196により、ベースフレーム192およびこれに支持された拭取りローラ193や拭取りモータ194等が昇降する。
拭取りローラ193は、タイミングベルト201を介して拭取りモータ194に連結した駆動ローラ202と、ワイピングシート182を挟んで駆動ローラ202に接触する従動ローラ203とから成る、グリップローラで構成されている。駆動ローラ202は、例えばコア部分に弾力性或いは柔軟性を有するゴムを巻回したゴムローラで構成され、これに周回するワイピングシート182を、走行させながら機能液滴吐出ヘッド7のノズル形成面67に押し付けるようになっている。
洗浄液噴霧ヘッド195は、拭取りローラ(駆動ローラ202)193の近傍にあって、上記の中間ローラ180から送られてくるワイピングシート182に、機能液の溶剤等で構成した洗浄液を吹き付ける。このため、洗浄液噴霧ヘッド195の前面、すなわち拭取りローラ193側には、複数の噴霧ノズル204がワイピングシート182の幅に合わせて横並びに設けられ、後面には、上記の洗浄タンク147に連なるチューブ接続用の複数のコネクタ205が設けられている。
洗浄液を吹き付けられたワイピングシート182は、洗浄液を含浸し、機能液滴吐出ヘッド7に臨んでこれを拭き取るようになっている。なお、拭取りローラ193の下方に位置して、ベースフレーム192にも洗浄液パンが設けられており、巻取りユニット171の洗浄液パン181と共に、ワイピングシート182から滴る洗浄液を受け得るようになっている。
ここで、図56の模式図を参照して、一連の拭取り動作を簡単に説明する。ヘッドユニット26のクリーニングが完了すると、移動テーブル123が駆動し、ワイピングユニット35を前進させてヘッドユニット26に十分に接近させる。拭取りローラ193が機能液滴吐出ヘッド7の近傍まで移動したら、移動テーブル123を停止し、両エアーシリンダ196,196を駆動して、機能液滴吐出ヘッド7に接触(押し付ける)するように拭取りローラ193を上昇させる。
ここで、巻取りモータ177および拭取りモータ194を駆動して、ワイピングシート182を拭取り送りすると共に、洗浄液の噴霧を開始する。また、これと同時に、再度移動テーブル123を駆動し、ワイピングシート182の送りを行いながら、拭取りローラ193を、複数の機能液滴吐出ヘッド7の下面を拭き取るように前進させる。拭取り動作が完了したら、ワイピングシート182の送りを停止し且つ拭取りローラ193を下降させ、さらに移動テーブル123によりワイピングユニット35を、元の位置に後退させる。
次に、図57ないし図60を参照して、クリーニングユニット34について説明する。クリーニングユニット34は、12個の機能液滴吐出ヘッド7に対応して12個のキャップ212を、キャップベース213に配置したキャップユニット211と、キャップユニット211を支持する支持部材214と、支持部材214を介してキャップユニット211を昇降させる昇降機構215とを備えている。また、図43に示すように、クリーニングユニット34には、各キャップ212に連なる吸引チューブ216と、12本の吸引チューブ216が接続されるヘッダパイプ217と、ヘッダパイプ217の下流側に設けた吸引ポンプ153とが設けられている。そして、吸引ポンプ153は、再利用タンク148に連通している。
支持部材214は、上端にキャップユニット211を支持する支持プレート241を有する支持部材本体242と、支持部材本体242を上下方向にスライド自在に支持するスタンド243とを備えている。支持プレート241の長手方向の両側下面には、一対の大気開放シリンダ(エアー圧シリンダ)244,244が固定されており、この一対の大気開放シリンダ244,244により、操作プレート245を介して後述する大気開放弁231が開閉(下動で「開」、上動で「閉」)されるようになっている。
昇降機構215は、上昇降機構(エアー圧シリンダ)246と下昇降機構(エアー圧シリンダ)247とから成り、下昇降機構247はスタンドベース248上に固定されていて上昇降機構246を昇降させ、上昇降機構246はそのプランジャが支持プレート241に固定されていて、支持部材本体242を昇降させる。この場合、ヘッドユニット26の下面(機能液滴吐出ヘッド7のノズル形成面67)とキャップユニット211の上面とは、所定のギャップ有しており、このギャップ分の昇降を上昇降機構246で行い、このギャップ調整のための昇降を下昇降機構247が行う。したがって、通常の運転時には上昇降装置246のみが駆動する。
12個のキャップ212は、12個の機能液滴吐出ヘッド7のヘッド本体60に対応しており、12個のヘッド本体60と同じ並びで且つ同じ傾き姿勢で、キャップベース213に固定されている。各キャップ212は、図61に示すように、キャップ本体219とキャップホルダ220とから成り、キャップ本体219は、2つのばね221,221で上方に付勢され且つ僅かに上下動可能な状態でキャップホルダ220に保持されている。キャップベース213には、12個のキャップ212に対応して12個の取付け開口223が形成されると共に、この取付け開口223を含むように12個の浅溝224が形成されている。各キャップ212は、下部を取付け開口223に挿入し、そのキャップホルダ220を浅溝224に位置決めされた状態で、浅溝224の部分にねじ止めされている(図60参照)。
各キャップ本体219の表面には、ヘッド本体60の2本のノズル列69,69を包含する凹部226が形成され、凹部226の周縁部にはシールパッキン227が取り付けられ、また底部位には吸収材228が敷設されている。そして、凹部226の底部位には小孔229が形成され、この小孔229が、吸引チューブ216が接続されるL字継手230に連通している。機能液を吸引する場合には、機能液滴吐出ヘッド7のヘッド本体60に、シールパッキン227を押し付けて、2列のノズル列69,69を包含するようヘッド本体60のノズル形成面67を封止する。なお、図中の符号231は、大気開放弁であり、機能液の吸引動作の最終段階で、上記の大気開放シリンダによりこれを「開」とすることで、吸収材228に含浸されている機能液も吸引できるようになっている。
このように構成されたクリーニングユニット34は、移動テーブル123によりクリーニング位置に移動しており、これに対しヘッドユニット26がY軸テーブル24により移動して、クリーニングユニット34の直上部に臨む。ここで、昇降機構(上昇降装置246)215が駆動し、ヘッドユニット26の12個の機能液滴吐出ヘッド7に、下側から12個のキャップ212を押し付ける。各機能液滴吐出ヘッド7に押し付けられたキャップ212は、自身の2つのばね221,221に抗してそのキャップ本体219が幾分沈み込み、そのシールパッキン227がヘッド本体60のノズル形成面67に均一に密着する。
続いて、吸引ポンプ153を駆動し、キャップユニット211を介して、12個の機能液滴吐出ヘッド7の全吐出ノズル68から機能液を吸引する。そして、吸引完了の直前に大気開放弁231を開弁して、吸引を完了する。吸引動作が完了したら、再度、昇降機構(上昇降装置246)215を駆動してキャップユニット211を下降させる。なお、装置の稼動を停止しているとき等のヘッド保管時には、上記のキャップユニット211を上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド7を各キャップ212で封止して、保管状態とする。
次に、図62ないし図66を参照して、フラッシングユニット33について説明する。フラッシングユニット33は、機能液滴吐出ヘッド7が吐出した機能液滴を受けるものであり、実施形態の描画装置1では、X軸テーブル23により基板(吸着テーブル81)Wと共に移動する可動形式の小型のフラッシングユニット(図62および図63)33Aと、上記の石定盤22上に直接固定される固定形式の大型のフラッシングユニット(図64ないし図66)33Bとが搭載されている。
可動形式のフラッシングユニット33Aは、主にヘッドユニット26の液滴吐出動作時のフラッシングに使用され、固定形式のフラッシングユニット33Bは、主にヘッドユニット26の待機時のフラッシングに使用される。
そこで先ず、図62および図63を参照して、可動形式のフラッシングユニット33Aから説明する。このフラッシングユニット33Aは、上記したX軸ケーブルベア87のボックス88上に配設されている(図30参照)。フラッシングユニット33Aは、X軸ケーブルベア87上に固定したスライドベース251と、スライドベース251上に進退自在に設けた長板状のスライダ252と、スライダ252の両端部に固定した一対のフラッシングボックス253,253と、各フラッシングボックス253内に敷設した一対の機能液吸収材254,254とで構成されている。
一対のフラッシングボックス253,253は、ヘッドユニット26の各機能液滴吐出ヘッド群7aに対応する幅を有すると共に、各機能液滴吐出ヘッド群7aの副走査方向の移動範囲に対応する長さを有して、細長形状に形成されている。そして、この一対のフラッシングボックス253,253は、スライダ252からX軸テーブル23の上側に直角に延在し、且つ吸着テーブル81を挟むように配設されている。また、各フラッシングボックス253,253の中央部底面には、ドレン口を構成する排水継手256が取り付けられている。この排水継手256に接続した排水チューブ(図示省略)は、X軸ケーブルベア87内を通って上記の廃液タンク150に接続されている。
スライダ252には、一対のフラッシングボックス253,253間に位置して、X軸テーブル23のθテーブル82に向かって延びる一対の取付け片257,257が固定されており、この一対の取付け片257,257の先端部が、θテーブル82のベース部に固定されている。すなわち、スライダ252を介して、一対のフラッシングボックス253,253が、スライドベース251に案内されてθテーブル82と共に移動するようになっている。
このように構成された可動形式のフラッシングユニット33Aでは、図30に示すように、θテーブル82と共にフラッシングユニット33Aが往道して行くと、最初に同図示の右側のフラッシングボックス253がヘッドユニット26の直下を通過する。このとき、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド7が順にフラッシング動作を行い、ヘッドユニット26は、そのまま通常の液滴吐出動作に移行する。同様に、フラッシングユニット33Aが復道して行くと、最初に左側のフラッシングボックス253がヘッドユニット26の直下を通過する。このとき、複数の機能液滴吐出ヘッド7が順にフラッシング動作を行い、ヘッドユニット26は、そのまま通常の液滴吐出動作に移行する。
すなわち、可動形式のフラッシングユニット33Aでは、ヘッドユニット26が、主走査のための往復動中に適宜フラッシングが行われる。したがって、フラッシング動作のためにのみヘッドユニット26等が移動することはなく、フラッシングがタクトタイムに影響することがない。
次に、図64、図65および図66を参照して、固定形式のフラッシングユニット33Bについて説明する。フラッシングユニット33B、機能液滴を受けるべく上面を開放したフラッシングボックス261,261と、フラッシングボックス261内に敷設した2組の機能液吸収材262,262と、フラッシングボックス261を昇降させる昇降シリンダ263と、フラッシングボックス33Bを支持するボックススタンド264とを備えている。
フラッシングボックス33Bは、方形に形成された浅いトレイ様のものであり、内部には、ヘッドユニット26の2列の機能液滴吐出ヘッド群7a,7aに対応して2組の機能液吸収材262,262が離間して配設されている。また、フラッシングボックス261内には、各機能液吸収材262を両側から挟み込むようにして、フラッシング時の機能液滴の飛散を防止する飛散防止板266が設けられている。また、フラッシングボックス33Bの底板には、各機能液吸収材262に対応して2個所、計4個所のドレン口となる排水継手267が設けられている。そして、この排水継手267に接続した排水チューブ(図示省略)が、上記の廃液タンク150に接続されている。
ボックススタンド264は、固定スタント268と、固定スタント268の側面に上下方向スライド自在に取り付けた可動スタンド269と、固定スタンド268を支持するスタンドベース270とで構成されている。スタンドベース270には、固定スタント268に対峙するように上記の昇降シリンダ263が立設されており、昇降シリンダ263のプランジャ263aが、ブラケット271を介して可動スタンド269に固定されている。
装置稼動時のフラッシングボックス33Bは、昇降シリンダ263により上昇位置にあるが、非稼動時には、メンテナンス等の邪魔にならないように下降位置に移動している。そして、実施形態の液滴吐出装置10では、機能液滴の吐出と基板の往動とが行われた後、基板Wが復動している間に、Y軸テーブル24によりヘッドユニット26がフラッシングユニット33Bの位置に移動して、フラッシングを行うようになっている。
次に、図67ないし図71を参照して、主チャンバ4について説明する。なお、主チャンバ4の説明では、図67における紙面の下側を「前」、上側「後」、左側を「左」、右側を「右」して説明する。主チャンバ4は、上記の描画装置1を収容するチャンバルーム37と、チャンバルーム37の右前部に併設した電気室38と、チャンバルーム37の右後部に併設した機械室(ガス供給設備)39とを備えている。なお、チャンバルーム37に充填する不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンのいずれかを用いることが好ましいが、本実施形態では、コストおよび安全性を考慮し窒素(窒素ガス)を用いている。
不活性ガス(窒素ガス)は、図外のガス製造装置からガス導入ユニット301を介して機械室39に導入され、ここで調和処理されてチャンバルーム37に導入される。また、チャンバルーム37内の不活性ガスは、チャンバルーム37の左前部に添設した排気ダクト302から適宜は排気され、図外のガス処理装置に送られる。すなわち、ガス製造装置、ガス導入ユニット301および機械室39等によりガス供給設備が構成され、排気ダクト302およびガス処理装置によりガス排気設備が構成されている。
チャンバルーム37は、左側壁311、右側壁312、前部二重パネル313、後部二重パネル314、床壁315および天壁316を、エアータイト材で相互にシールして組み上げたプレハブ形式のものである。一方、チャンバルーム37の内部に収容される液滴吐出装置10は、前後方向をY軸方向とし、左右方向をX軸方向とした姿勢で収容されている。前部二重パネル313および後部二重パネル314は着脱パネルであり、メンテナンス等を考慮して、描画装置1の付帯装置11は前部二重パネル313に面し、ヘッドユニット26の運び込み等を考慮して、ヘッドユニット26のホーム位置側が後部二重パネル314に面している。また、左側壁311には、基板Wの搬入搬出を行うためのシャッタ付き受渡し開口317が形成されている。
前部二重パネル313および後部二重パネル314は、いずれも着脱形式の窓付きの2枚の外パネル313a,314aおよび2枚の内パネル313b,314bとから成り、チャンバルーム37内に外気を導入した時のみ開放可能となるように、インターロックされている。右側壁312の後上部には、機械室39に連なる送気口319が形成され、これに対応して左側壁の前下部には、排気ダクト302に連なる排気口320が形成されている。
本実施形態では、不活性ガスの補給(送気)および排気を連続させて、チャンバルーム37内に不活性ガスの雰囲気を構成するようになっており、送気口319から流入した不活性ガスは、そのチャンバルーム37内を対角方向に流れて排気口320に至るようになっている。そして、この対角方向に気流の主流路上には、液滴吐出装置10の液滴吐出動作を行う領域、すなわち吐出エリアが臨んでいる。
機械室39の上部には、ガス製造装置に連なるガス導入ユニット301が設けられており、また機械室39の内部は、適宜隔壁321で仕切られ、ガス導入ユニット301から上記の送気口319に至るガス流路322が形成されている。ガス流路322は、ガス導入ユニット301の下流側で分岐し、後述するガス調和機器303を通過して送気口319に至る一方の主ガス流路323と、ガス調和機器303のフィルタ330を介して直接送気口319に至る他方のバイパス流路324とで構成されている(図67参照)。
なお、主ガス流路323とバイパス流路324とは、主チャンバ4を設置したときにその手動ダンパー325,325により、流量調整が行われる。したがって、通常運転時における不活性ガスは、適宜主ガス流路323およびバイパス流路324からチャンバルーム37内に送り込まれる。
この主ガス流路323には、クーラ(チーリングユニット)327、ヒータ(電気ヒータ)328、ファン(シロッコファン)329およびフィルタ(ヘパフィルタ)330から成るガス調和機器303が介設されている。これにより、チャンバルーム37内の不活性ガスの雰囲気が、所定の温度および湿度に維持されるようになっている。例えば、実施形態の雰囲気は、20℃±0.5℃に維持される。なお、ろ過面積を広く取るべく、フィルタ330を天壁316の直下に設けてもよい。すなわち、チャンバルーム37内において、天壁316の直下に隔壁様にフィルタ330を設けるようにしてもよい。
また、ガス調和機器303の上流側において主ガス流路323には、外気流路332が合流している。外気流路332の外気取入れ口333は、機械室39の下部側面に開口しており、外気流路332の下流端は、クーラ327の上流側で主ガス流路323に合流している。また、外気流路332には2つの高気密ダンパー334,334および電磁弁342が介設されていて、通常運転時における外気の流入を確実に阻止できるようになっている。
例えば、描画装置1のメンテナンスを行う場合には、上記の各二重扉313,314を開放する前に、チャンバルーム37の雰囲気を不活性ガスから外気に入れ替える必要がある。かかる場合には、ガス導入ユニット301のガスダンパー335、電動弁343および電磁弁344を閉じると共に外気流路332の両高気密ダンパー334,334を開き、さらに後述する排気ダンパー340,340を開き、ファン329を駆動して外気をチャンバルーム37に送り込む。このように外気を強制的に送り込むようにしているため、短時間で外気置換を行うことができる。
一方、チャンバルーム37内には、酸素濃度計337および水分計338が設置されており、これら計器の計測結果に基づいて、ガス導入ユニット301の電動弁343が制御され、酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下に維持されるようになっている。
排気ダクト302には、2つの排気ダンパー340,340が介設されており、一方のダンパー340は開閉制御され、他方のダンパー340は、チャンバルーム37内の圧力計341の計測結果に基づいて、チャンバルーム37内が常に正圧になるように制御される。これにより、チャンバルーム37内に、シール部分(エアータイト材の不備部分)等から外気が流入するのを防止している。
このように、液滴吐出装置10および付帯装置11をチャンバルーム37に収容し、液滴吐出装置10による液滴吐出作業を不活性ガスの雰囲気中で行うようにしているため、基板W上に着弾した機能液滴(発光材料)が変質したり損傷したりすることがなく、有機EL装置を安定に製造することができる。