以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。インクジェットプリンタのインクジェットヘッド(機能液滴吐出ヘッド)は、微小なインク滴(液滴)をドット状に精度良く吐出することができることから、例えば機能液滴(吐出対象液)に特殊なインクや、発光性或いは感光性の樹脂等を用いることにより、各種部品の製造分野への応用が期待されている。
本実施形態の電気光学装置は、例えば有機EL装置等の、いわゆるフラットディスプレイの製造装置に適用され、不活性ガスの雰囲気中において、その複数の機能液滴吐出ヘッドから発光材料等の機能液を吐出して(インクジェット方式)、有機EL装置の発光機能を為す各画素のEL発光層および正孔注入層を形成するものである。
そこで、本実施形態では、有機EL装置の製造装置に適用した電気光学装置について説明すると共に、これにより製造される有機EL装置の構造および製造方法(製造プロセス)について説明する。
図1に示すように、実施形態の電気光学装置1は、描画装置2と描画装置2を収容するチャンバ装置3から成り、描画装置2に搭載した機能液滴吐出ヘッド4により、発光材料を吐出して有機EL装置のEL発光層および正孔注入層を形成する一方、この機能液滴吐出ヘッド4の吐出動作を含む一連の製造工程を、チャンバ装置3で構成する不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気中で行うようにしている。
詳細は後述するが、描画装置2は、液滴吐出装置6とこれに付随する各種の装置から成る付帯装置7とを備えている。チャンバ装置3は、チャンバルーム11に、電気室12および機械室13を併設した、いわゆるクリーンルームの形態を有している。チャンバルーム11には、不活性ガスである窒素ガスが導入され、これに収容した上記の液滴吐出装置6および付帯装置7は、全体として窒素ガスの雰囲気に曝され、窒素ガスの雰囲気中で稼動する。
図2ないし図5に示すように、液滴吐出装置6は、床上に設置した架台15と、架台15上に設置した石定盤16と、石定盤16上に設置したX軸テーブル17およびこれに直交するY軸テーブル18と、Y軸テーブル18に吊設するように設けたメインキャリッジ19と、メインキャリッジ19に搭載したヘッドユニット20とを有している。
X軸テーブル17は、X軸方向の駆動系が構成するX軸エアースライダ22およびX軸リニアモータ23を有し、これにθテーブル24および基板Wをエアー吸引する吸着テーブル25を搭載して、構成されている。また、Y軸テーブル18は、Y軸方向の駆動系を構成する一対のY軸スライダ27,27、Y軸ボールねじ28およびY軸モータ(サーボモータ)29を有し、これに上記のメインキャリッジ19を吊設するブリッジプレート30を搭載して、構成されている。
そして、メインキャリッジ19に搭載したヘッドユニット20には、サブキャリッジを介して、複数の機能液滴吐出ヘッド4が搭載されている。特に詳細は図示しないが、サブキャリッジには、12個の機能液滴吐出ヘッド4が搭載されており、これら機能液滴吐出ヘッド4は、6個づつに二分され(図6では前後に二分)、主走査方向に対し所定の角度傾けて配設されている(図6参照)。
本実施形態の液滴吐出装置6では、機能液滴吐出ヘッド4の駆動(機能液滴の選択的吐出)に同期して基板Wが移動する構成であり、機能液滴吐出ヘッド4のいわゆる主走査は、X軸テーブル17のX軸方向への往復動作により行われる。また、これに対応して、いわゆる副走査は、Y軸テーブル18により機能液滴吐出ヘッド4のY軸方向への往動動作により行われる。
一方、ヘッドユニット20のホーム位置は、図1における後側の位置となっており、且つこの液滴吐出装置6の後方からヘッドユニット20の運び込み或いは交換が行われる(詳細は後述する)。また、同図示の左側には、基板搬送装置(図示省略)が臨んでおり、基板Wはこの左方から搬入・搬出される。そして、この液滴吐出装置6の同図手前側には、上記付帯装置7の主な構成装置が、一体的に添設されている。
付帯装置7は、上記の架台15および石定盤16に隣接するように配置したキャビネット形式の共通機台32と、共通機台32内の一方の半部に収容したエアー供給装置33および真空吸引装置34と、共通機台32内の一方の半部に主要装置を収容した機能液供給回収装置35と、共通機台32上に主要装置を収容したメンテナンス装置36とを備えている。なお、図中の符号37は、メインタンク(図示省略)とヘッドユニット20との間の機能液流路に介設した、機能液供給回収装置35の中間タンクである。
エアー供給装置33、機能液供給回収装置35の圧力供給源を構成すると共に、メンテナンス装置36等におけるエアー圧アクチュエータの駆動源として用いられる。真空吸引装置34は、上記の吸着テーブル25に接続され、基板Wをエアー吸引により吸着セットする。機能液供給回収装置35は、機能液滴吐出ヘッド4に機能液を供給すると共に、メンテナンス装置36等から不要となった機能液を回収する。
メンテナンス装置36は、機能液滴吐出ヘッド4の定期的なフラッシング(全吐出ノズルからの機能液の捨て吐出)を受けるフラッシングユニット41と、機能液滴吐出ヘッド4の機能液吸引および保管を行うクリーニングユニット42と、機能液滴吐出ヘッド4のノズル形成面をワイピングするワイピングユニット43とを有している。クリーニングユニット42およびワイピングユニット43は、上記の共通機台32上に配設され、フラッシングユニット41は、基板Wの近傍において、X軸テーブル(θテーブル24)17上に搭載されている。
ここで、図6の模式図を参照して、チャンバ装置3内において窒素ガスの雰囲気中で稼動する描画装置2の一連の動作を簡単に説明する。先ず、準備段階として、ヘッドユニット20が液滴吐出装置6に運び込まれ、これがメインキャリッジ19にセットされる。ヘッドユニット20がメインキャリッジ19にセットされると、Y軸テーブル18がヘッドユニット20を図外のヘッド認識カメラの位置に移動させ、ヘッドユニット20の位置認識が行われる。ここで、この認識結果に基づいて、ヘッドユニット20がθ補正され、且つヘッドユニット20のX軸方向およびY軸方向の位置補正がデータ上で行われる。位置補正後、ヘッドユニット(メインキャリッジ19)20はホーム位置に戻る。
一方、X軸テーブル17の吸着テーブル25上に基板(この場合は、導入される基板毎)Wが導入されると、導入位置において図外の基板認識カメラが基板Wを位置認識する。ここで、この認識結果に基づいて、吸着テーブル25を支持するθテーブル24により基板Wがθ補正され、且つ基板WのX軸方向およびY軸方向の位置補正がデータ上で行われる。
このようにして準備が完了すると、実際の液滴吐出作業では、先ずX軸テーブル17が駆動し、基板Wを主走査方向に往復動させると共に複数の機能液滴吐出ヘッド4を駆動して、機能液滴の基板Wへの選択的な吐出動作が行われる。基板Wが復動した後、こんどはY軸テーブル18が駆動し、ヘッドユニット20を1ピッチ分、副走査方向に移動させ、再度基板Wの主走査方向への往復移動と機能液滴吐出ヘッド4の駆動が行われる。そしてこれを、数回繰り返すことで、基板Wの端から端まで(全領域)液滴吐出が行われる。これにより、有機EL装置の発光層等が形成される。
一方、上記の動作に並行し、液滴吐出装置6のヘッドユニット(機能液滴吐出ヘッド4)20には、エアー供給装置33を圧力供給源として機能液供給回収装置35から機能液が連続的に供給され、また吸着テーブル25では、基板Wを吸着すべく、真空吸引装置34によりエアー吸引が行われる。また、液滴吐出作業の直前には、ヘッドユニット20がクリーニングユニット42およびワイピングユニット43に臨んで、機能液滴吐出ヘッド4の全吐出ノズルからの機能液吸引と、これに続くノズル形成面の拭取りが行われる。液滴吐出作業中には、適宜ヘッドユニット20がフラッシングユニット41に臨んで、機能液滴吐出ヘッド4のフラッシングが行われる。
なお、本実施形態では、ヘッドユニット20に対し、その吐出対象物である基板Wを主走査方向(X軸方向)に移動させるようにしているが、ヘッドユニット20を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ヘッドユニット20を固定とし、基板Wを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。
次に、図7の系統図、および図8ないし図13の構造図を参照して、チャンバ装置3について説明する。なお、チャンバ装置の説明では、図8における紙面の下側を「前」、上側「後」、左側を「左」、右側を「右」して説明する。
チャンバ装置3は、上記の描画装置2を収容するチャンバルーム11と、チャンバルーム11の右前部に併設した電気室12と、チャンバルーム11の右後部に併設した機械室13とを備えている。なお、チャンバルーム11に充填する不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンおよびラドンのいずれかを用いることが好ましいが、本実施形態では、コストおよび安全性を考慮し窒素(窒素ガス)を用いている。
不活性ガス(窒素ガス)は、図外のガス製造装置からガス導入ユニット101を介して機械室13に導入され、ここで調和処理されてチャンバルーム11に導入される。また、チャンバルーム11内の不活性ガスは、チャンバルーム11の左前部に添設した排気ダクト(排気流路)102から適宜は排気され、図外のガス処理装置に送られる。実際の運転では、チャンバルーム11に対し、不活性ガスの補給と排気とが連続して行われ、わずかに流れる不活性ガスにより、チャンバルーム11内の雰囲気が構成されるようになっている。
チャンバルーム11は、左側壁111、右側壁112、前部着脱パネルユニット113、後部着脱パネルユニット114、床壁115および天壁116を、エアータイト材で相互にシールして組み上げたプレハブ形式のものである。一方、チャンバルーム11の内部に収容される液滴吐出装置6は、前後方向をY軸方向とし、左右方向をX軸方向とした姿勢で収容されている(図1参照)。すなわち、メンテナンス等を考慮して、描画装置2の付帯装置7は前部着脱パネルユニット113に面し、ヘッドユニット20の運び込み等を考慮して、ヘッドユニット20のホーム位置側が後部着脱パネルユニット114に面している。また、左側壁111には、基板Wの搬入搬出を行うためのシャッタ付き受渡し開口117が形成されている(図11参照)。
前部着脱パネルユニット113および後部着脱パネルユニット114は、いずれも内パネルユニット121および外パネルユニット122の二重構造を有している。内パネルユニット121は、左右の中間に縦枠123aを有する枠体123と、縦枠123aにより構成した左右の開口部(メンテナンス開口)にそれぞれ着脱自在に装着した窓付きの一対の内パネル124,124とで構成されている(図13参照)。各内パネル124には、左右のハンドルの他、複数のロックレバーが設けられており(いずれも図示省略)、内パネル124は、けんどん形式で枠体123に当てがわれ且つこの複数のロックレバーにより枠体123に気密に装着されている。
同様に、外パネルユニット122は、左右の中間に縦枠125aを有する枠体125と、縦枠125aにより構成した左右の開口部(メンテナンス開口)にそれぞれ着脱自在に装着した窓付きの一対の外パネル126,126とで構成されている(図13参照)。各外パネル126には、左右のハンドル127,127の他、複数のロックレバー128が設けられており、この場合も外パネル126は、けんどん形式で枠体に当てがわれ且つこの複数のロックレバー128により枠体125に気密に装着されている。そして、外パネルユニット122は、内パネルユニット121よりに幾分幅広に且つ幾分丈が長く形成されていて、内外両パネル121,122の着脱作業に支障を生じないようになっている(図13参照)。
また、内外各パネル124,126には、その上側に複数の電磁ロック装置129が組み込まれており、チャンバルーム11内の酸素濃度に応じて、内外各パネル124,126をロック・アンロックできるようになっている(詳細は後述する)。すなわち、前部着脱パネルユニット113および後部着脱パネルユニット114は、電磁ロック装置129によりインターロックされている。
右側壁112の後上部には、機械室13に連なる送気口131が形成され、これに対応して左側壁111の前下部には、排気ダクト102に連なる排気口132が形成されている。また、チャンバルーム11の天井部分には、送気口131に連なるフィルタチャンバ133が形成されている。フィルタチャンバ133は、天井部分を格子状のフィルタ装着枠134で水平に仕切って構成され、このフィルタ装着枠134に複数(4つ)のフィルタ(HEPAフィルタ)135が装着されている(図8参照)。
送気口131から流入した不活性ガスはフィルタチャンバ133に流入し、複数のフィルタ135を通過して液滴吐出装置6の上部に流入する。この場合、送気口131から流入した不活性ガスは、フィルタ(フィルタチャンバ133)135を通過するものの、その気流の主体は、チャンバルーム11内をほぼ対角方向に流れて排気口132に至るようになっている。そして、この対角方向の気流の主流路上には、液滴吐出装置6の液滴吐出動作を行う領域、すなわち吐出エリアが臨んでいる。
すなわち、チャンバルーム11内では、不活性ガスの主気流が吐出エリアを包み込むように流れ、且つ気流全体としはフィルタからダウンフローした後、排気口132に向かって流れる。これにより、吐出エリアは、常に新鮮な不活性ガスの雰囲気に曝されることになる。なお、この場合の気流の流速は、機能液滴吐出ヘッド4から吐出した機能液滴に飛行曲がりが生じない程度に調整されていることは、言うまでもない。
機械室13の上部には、図外のガス製造装置に連なるガス導入ユニット101が設けられており、また機械室11の内部は、適宜隔壁137で仕切られ、ガス導入ユニット101から上記の送気口131に至るガス流路138が形成されている。すなわち、機械室13の内部には、ガス流路138となるダクトが一体的に形成されている。
ガス導入ユニット101には、上流側から順に、ガス開閉バルブ(電磁弁)142、ガス調整ダンパー(電動弁:高密度モータダンパー)143およびガス開閉ダンパー(高密度モータダンパー)144から成るガスダンパーユニット141が組み込まれている(図7参照)。上述したように、実施形態のチャンバ装置3では、不活性ガスの補給と排気とを連続して行う運転形態をとっており、ガス開閉バルブ142およびガス開閉ダンパー144を「開」とした状態で、ガス調整ダンパー143により不活性ガスの補給流量が調整される。また、後述する大気置換運転では、ガス開閉バルブ142、ガス調整ダンパー143およびガス開閉ダンパー144は、いずれも「閉」に制御される。
機械室13の内部に構成したガス流路138は、ガス導入ユニット101から機械室13の下部まで延び、ここでUターンして上部の送気口131に至るようになっている。そして、このガス流路138のうち、上方に向かう流路部分に、後述するガス調和機器155が組み込まれている。
また、ガス流路138は、図7に示すように、ガス導入ユニット101の下流側で分岐しており、ガス導入ユニット101からガス調和機器155を通過して送気口131に至る一方の主ガス流路147と、ガス導入ユニット101から直接送気口131に至る他方のバイパス流路148とで構成されている。主ガス流路147およびバイパス流路148には、それぞれ流路切替え用の手動ダンパー149,150が設けられており、この両手動ダンパー149,150は、チャンバ装置3を設置した初期調整時にのみ調整される。
なお、図7にのみ示すが、チャンバルーム11にはリターン流路(リターン口)151が形成されており、チャンバルーム11のリターンガスは、このリターン流路151を介して機械室13に戻され、ガス調和機器155の上流側において主ガス流路147に合流する。但し、このリターンは予備的なものであり、通常運転時にはリターン運転は行わない。
主ガス流路147には、クーラ(チーリングユニット)156、ヒータ(電気ヒータ)157および2台のファン(シロッコファン)158,158から成るガス調和機器155が介設されている。クーラ156およびヒータ157は、機械室の上下中間位置に隣接して配置されており、温度調節装置を構成している。これにより、チャンバルーム11内の不活性ガスの雰囲気が、所定の温度、例えば実施形態のものでは20℃±0.5℃に維持されるようになっている。
ファン158は、機械室13の上部にあって、送気口131に近接して設けられている。ガス導入ユニット101から導入した不活性ガスは、このファン158により、送気口131を介してチャンバルーム11内に強制的に送気される。そして、このファン158により、チャンバルーム11内への不活性ガスの補給量およびチャンバルーム11内の気流の流速等が制御される。
排気流路を構成する排気ダクト102は、排気口132の近傍に排気チャンバ161を有しており、この排気チャンバ161から立ち上がり、さらにチャンバルーム11の上面に沿って水平に延在している。排気ダクト102の下流側(チャンバルーム11の上面に位置する部分)には、排気調整ダンパー163および排気開閉ダンパー164から成る排気ダンパーユニット162が介設され(図7参照)、この排気調整ダンパー163により排気流量が調整される。
また、排気チャンバ161には、上記の前部着脱パネルユニット113および後部着脱パネルユニット114からそれぞれ延びる2本の排気パイプ(パネル体排気流路)166,166が接続されている(図8、図9および図11参照)。各排気パイプの上流端は、内パネルユニット121と外パネルユニット122との間の空隙130に連通しており、また各排気パイプ166には排気バルブ(パネル体排気ダンパー)167が介設されている。これにより、内外両パネルユニット113,114の空隙130部分にリークした不活性ガスを排気できるようになっている(詳細は後述する)。
一方、ガス調和機器155の上流側において主ガス流路147には、隔壁137により機械室内13に構成した外気流路171が合流している(図7参照)。外気流路171の外気取入れ口172は、機械室13の下部側面に開口しており、外気流路171の下流端は、クーラ156の上流側で主ガス流路147に合流している。また、外気流路171には、外気取入れ口172側から順に、外気開閉ダンパー174、外気調整ダンパー175および外気開閉バルブ176から成る外気ダンパーユニット173が介設されている。
この場合、外気開閉ダンパー174および外気調整ダンパー175は高気密ダンパーで構成され、外気開閉バルブ176は電磁弁(または電動二方弁)で構成されている。詳細は後述するが、外気置換運転を行う場合には、外気開閉ダンパー174、外気調整ダンパー175および外気開閉バルブ176はいずれも「開」に制御され、外気調整ダンパー175により外気の流量調整が行われる。また通常運電時には、これらダンパー174,175およびバルブ176はいずれも「閉」に制御され、これらの高気密性と個数とにより、外気の侵入を確実に遮断する。
次に、チャンバ装置3の運転方法について簡単に説明する。チャンバルーム11に不活性ガスを導入する通常運転時では、外気ダンパーユニット173を「閉」とした状態で、ガスダンパーユニット141および排気ダンパーユニット162を「開」とし、ファン158により、チャンバルーム11内に不活性ガスの補給および排気を行って、その雰囲気を構成する。
ガス調整バルブ143には、コントローラ181を介して、チャンバルーム11内に設けた酸素濃度計(低濃度)182および水分計183が接続されており、これらの計測結果に基づいて、不活性ガスの補給流量が調整される。より具体的には、ガス調整バルブ143により、チャンバルーム11内の酸素濃度および水分濃度がいずれも10ppm以下に維持されるように、制御される。なお、図中の符号184は、酸素濃度を表示するスケーリングメータである。
一方、排気調整ダンパー163には、コントローラ186を介して圧力計187が接続されており、圧力計187の計測結果に基づいて、不活性ガスの排気流量が調整される。すなわち、排気調整ダンパー163により、大気圧に対しチャンバルーム11内が幾分正圧になるように、制御される。これにより、チャンバルーム11から不活性ガスが漏れることはあっても、外気の侵入は防止される。また、ガスダンパーユニット141の下流側近傍、および排気ダンパーユニット162の上流側近傍には、それぞれ風速モニター188a,188bが設けられており、この風速モニター188a,188bの風力差の変化により、ファン158の故障や不活性ガスのリークが確認できるようになっている。
さらに、チャンバルーム11内には、温度調節計(温度計)189が設けられており、温度調節計189は、リレー190を介してヒータ157に接続されている。この場合、温度調節装置のクーラ156は常時定格運転となっており、ヒータ157により、チャンバルーム11内が20℃±0.5℃になるように制御される。
一方、チャンバルーム11内の不活性ガス追い出して外気を導入する大気置換運転では、ガスダンパーユニット141を「閉」とし、外気ダンパーユニット173および排気ダンパーユニット162を「開」として、ファン158により、チャンバルーム11内に外気を強制的に導入する。すなわち、チャンバルーム11内に外気を強制送気し、チャンバルーム11内の不活性ガスを押し出すようにする。また、両排気バルブ167,167を「開」とし、内外両パネルユニット121,122の空隙130部分にリークした不活性ガスも排気する。
描画装置2のメンテナンス(着脱パネルユニット113,114の開放)を前提とする大気置換運転では、ヒータ157をOFFとすると共に、外気調整ダンパー175および排気調整ダンパー163を「全開」として、流量調整は行わない。これにより、最短時間で大気置換が行われる。そして、チャンバルーム11内に設けた酸素濃度計(高濃度)191の計測結果に基づいて、大気置換の完了が確認され、且つ上記の電磁ロック装置129のロック状態が解除される。これにより、前後両着脱パネルユニット113,114が開放可能状態となる。
また、描画装置(液滴吐出装置6)2の精度確認に関する試験運転を前提とする大気置換運転では、ヒータ157をONとすると共に、外気調整ダンパー175および排気調整ダンパー163が流量調整され、チャンバルーム11内が所望の温度(20℃±0.5℃)の雰囲気(大気)に置換される。
このように、描画装置2をチャンバルーム11に収容し、液滴吐出装置6による液滴吐出作業を新鮮な不活性ガスの雰囲気中で行うようにしているため、基板W上に着弾した機能液滴(発光材料)が変質したり損傷したりすることがなく、有機EL装置を安定に製造することができる。また、大気置換を行う場合に、ファン158を用いて外気をチャンバルーム11内に強制的送り込むようにしているため、短時間で外気置換を行うことができる共に、不活性ガスの残留を極力防止することができる。
次に、電気光学装置1の第2実施形態について説明する。
図14ないし図17に示すように、この電気光学装置201では、液滴吐出装置203をチャンバ装置204のチャンバルーム205内に収容し、これをキャビネット形式の架台206に支持して、描画装置202が構成されている。また、描画装置202に併設するようにしてエアー供給ユニット218を組み込んだ電装ボックス207と、不活性ガスをチャンバルーム205内に導入するためのガス導入ユニット208と、これら構成装置を操作する操作ユニット209とが設けられている。このうち、ガス導入ユニット208は描画装置202の側面に固定されているが、他の装置はそれぞれ別体で構成され、個々に移動可能に付設されている。
チャンバルーム205内には、液滴吐出装置203と共にその付帯装置が収容されている。付帯装置は、機能液滴吐出ヘッド211の吐出液滴量を計測する電子天秤212、基板Wを画像認識する基板認識カメラ213、機能液滴吐出ヘッド(吐出ノズル)211を画像認識するヘッド認識カメラ214、基板W吸着用の真空ポンプ216および機能液滴吐出ヘッド211のメンテナンスに供するメンテナンス装置215等で構成されている。
そして、本実施形態の構成装置を統括制御する制御装置(制御手段)210は、上記の架台206に搭載された装置コントロール用PC(パーソナルコンピュータ)210−1、ヘッド駆動用PC210−2および画像処理装置210−3で構成されている。なお、図示しないが、機能液タンク等の機能液供給系の装置は、架台206上に配設されている。
なお、ホーム位置における機能液滴吐出ヘッド211の中心位置、電子天秤212の中心位置およびヘッド認識カメラ214の中心位置は、横並びに同位置(Y軸方向において同位置)となっている。また、基板認識カメラ213は、基板Wの四隅に設けたアライメントマークを認識すべく、X軸方向に移動自在に構成されている。
メンテナンス装置215は、機能液滴吐出ヘッド211の定期的なフラッシング(全吐出のノズルからの機能液の捨て吐出)を受けるフラッシングユニット217と、機能液滴吐出ヘッド211の機能液吸引等を行う吸引キャップ(図示省略)付きの吸引ポンプ219とで構成されている。なお、実施形態の機能液吸引(クリーニング)およびワイピングは、手動で行われる。
操作部ユニット209は、両画像認識カメラ213,214で撮像した画像を映し出す位置補正用ディスプレイ222と、画像分割装置223と、操作処理用のディスプレイ224およびキーボード225とを、筐体226に搭載して構成されている。
そして、機能液滴吐出ヘッド211はサブキャリッジに搭載されてヘッドユニット228を構成しており(図18参照)、このヘッドユニット228が液滴吐出装置203に着脱可能にセットされている。すなわち、液滴吐出装置211は、このヘッドユニット228を搭載したX軸テーブル231と、X軸テーブル231に直交すると共に基板WをセットするY軸テーブル232とを備えている。また、ヘッドユニット228の近傍に位置してX軸テーブル231には、着弾した基板W上の機能液滴に不活性ガスを吹き付けて、これを乾燥させるブロー装置233が搭載されている。
Y軸テーブル232は、Y軸方向の駆動系を構成するY軸リニアガイド241およびY軸リニアモータ242を有し、これにθテーブル243および基板Wをエアー吸引する吸着テーブル244を搭載して、構成されている。なお、図示では省略したが、吸着テーブル244内には基板乾燥用のセラミックヒータが内蔵されており、セラミックヒータは架台206に収容した温調ユニット230により制御される。同様に、X軸テーブル231は、X軸方向の駆動系が構成するX軸リニアガイド245およびX軸リニアモータ246を有し、これにメインキャリッジ247を搭載して、構成されている。そして、メインキャリッジ247には、微調整ステージ248を介してヘッドユニット228が吊設され、且つヘッドユニット228の先方に位置して、上記のブロー装置233が固定されている。
この場合、機能液滴吐出ヘッド211の駆動(機能液滴の選択的吐出)に同期して基板Wが移動する構成であり、機能液滴吐出ヘッド211のいわゆる主走査は、Y軸テーブル232の往動動作(または往復の両動作)により行われる。また、これに対応して、いわゆる副走査は、X軸テーブル231による機能液滴吐出ヘッド211のX軸方向への往動動作により行われる。さらに、上記の主走査を後方から追いかけるように(実際には基板Wが移動)、ブロー装置233による不活性ガスの吹付けが行われ、且つこれらの作業は、チャンバルーム205内に充填した不活性ガス(窒素ガス)の雰囲気中で行われる。なお、この実施形態では、単一の機能液滴吐出ヘッド211が用いられており、機能液滴吐出ヘッド211は主走査方向に対し幾分斜めに傾けて配設されている(図18参照)。
このように構成された実施形態の描画装置202では、図18の模式図に示すように、先ず、準備段階として、ヘッドユニット228が液滴吐出装置203に運び込まれてこれにセットされる。ヘッドユニット228がセットされると、X軸テーブル231が、ホーム位置にあるヘッドユニット228を電子天秤212の直上部に移動させる。ここで、機能液滴吐出ヘッド211が駆動し、電子天秤212上に全吐出ノズルから複数回に亘って機能液滴を吐出する。この機能液滴は電子天秤212で計測され、その計測結果に基づいて、吐出ノズルにおける1回の機能液滴の量(重量)が、制御装置210により演算処理され、設計値になるようにヘッドドライバの印加電圧が補正される。もちろん、電子天秤212の計測値を読み取って、人的処理により印加電圧を補正することも可能である。
機能液滴の量的補正の後、再度X軸テーブル231が駆動し、ホーム位置を越えてヘッドユニット228をヘッド認識カメラ214に臨ませる。ここで、ヘッド認識カメラ214によりヘッドユニット(機能液滴吐出ヘッド211のノズル列)228が位置認識(画像認識)され、この認識結果に基づいて、ヘッドユニット228のX・Y・θ補正が行われる。また同時に、機能液滴吐出ヘッド211のノズル面の汚れ等が、ヘッド認識カメラ214により認識される(汚れている場合クリーニングを行う)。そして、位置補正後、ヘッドユニット228はホーム位置に戻る。
一方、Y軸テーブル232の吸着テーブル244上に基板(この場合は、導入される基板毎)Wが導入されると、Y軸テーブル232が基板Wを基板認識カメラ213の直下に移動させ、X軸方向に移動する基板認識カメラ213により基板Wの位置認識(画像認識)が行われる。ここで、この認識結果に基づいて、基板WのX・Y・θ補正が行われる。位置補正後、基板(吸着テーブル244)Wはホーム位置に戻る。
このようにして準備が完了すると、実際の液滴吐出作業では、先ずY軸テーブル232が駆動し、基板Wを主走査方向に往動させると共に機能液滴吐出ヘッド211を駆動して、機能液滴の基板Wへの選択的な吐出動作が行われる。また、この吐出動作に同期してブロー装置233が駆動し、基板W上に着弾した機能液滴に不活性ガスを吹き付ける。すなわち、基板Wを固定として相対的に考えると、基板Wに対し機能液滴吐出ヘッド211が往動して吐出動作が行われると共に、これに後行してブロー装置233が移動し、着弾機能液滴への不活性ガスによる乾燥動作が行われる。
吐出動作が終了して基板Wが復動した後、こんどはX軸テーブル231が駆動し、ヘッドユニット228を1ピッチ分、副走査方向に移動させ、再度基板Wの主走査方向への往復移動と機能液滴吐出ヘッド211およびブロー装置233の駆動が行われる。そしてこれを、数回繰り返すことで、基板Wの端から端まで(全領域)液滴吐出が行われる。なお、ブロー装置233により着弾した機能液滴はその溶剤が気化する(乾燥)が、完全乾燥を期するために上記の処理の後、改めて図外の乾燥装置に導入することが、好ましい。
また、本実施形態では、ヘッドユニット228に対し、その吐出対象物である基板Wを主走査方向(Y軸方向)に移動させるようにしているが、ヘッドユニット228を主走査方向に移動させる構成であってもよい。また、ヘッドユニット228を固定とし、基板Wを主走査方向および副走査方向に移動させる構成であってもよい。さらに、ヘッドユニット228のY軸方向への相対的に往動時のみならず、復動時にも機能液滴の吐出動作が行われる構成としてもよい。
次に、図19ないし図23(同時に図14参照)を参照して、チャンバ装置204について詳細に説明する。
チャンバ装置204は、液滴吐出装置203を収容するチャンバルーム205と、上記のガス導入ユニット208と、ガス導入ユニット208からチャンバルーム205内に不活性ガスを導入する供給チューブ(ガス供給流路:図23参照)252と、チャンバルーム205から不活性ガスを排気する一対の排気ダクト(排気流路)253,253とを備えている。また、大気置換のために上記のエアー供給ユニットを備えている。
チャンバルーム205は、直方体に組んだ枠体261の6面にパネル262を気密に装着したものであり、液滴吐出装置203の機台を構成する底面パネル262aを除いて他の5面のパネル262は、透明なパネルで構成されている。左側面パネル262bの前部および正面パネル262cの中央部は、広く脱着パネル構造となっており、この部分にはそれぞれ手作業を行うための1組のグローブホルダ264,264が取り付けられている。なお、他のパネル262は、枠体261に嵌め殺しで装着されている。
また、背面パネル262dには、横並びに2つの排気口265,265が形成され、この排気口265,265にそれぞれ上記の排気ダクト253,253が接続されている。図示しないが、この一対の排気ダクト253,253の下流側は、排気ダンパーを介してガス処理装置に接続されている。
ガス導入ユニット208は、描画装置202の外部にあって、架台206に添設するように設けられている(図17参照)。図23(b)に示すように、ガス導入ユニット208には、ドライヤ、レギュレータ、フィルタ、開閉バルブ等が組み込まれており、圧力、温度および湿度等が管理された不活性ガスを、チャンバルーム205に供給できるようになっている。
同様に、エアー供給ユニット218は、描画装置202の外部にあって、上記の電装ボックス207内に収容されている。(図16参照)。この場合も、エアー供給ユニット218には、ドライヤ、レギュレータ、フィルタ、開閉バルブ等が組み込まれている。
図23(b)に示すように、供給チューブ252は、ガス導入ユニット208の下流側で、ブロー系、左パージ系および右パージ系の3系統に分岐している。ブロー系供給チューブ271は、上記のブロー装置233に接続されており、これにより供給される不活性ガスは、ブロー装置233で加熱した後、基板Wに吹き付けられる。
左パージ系供給チューブ272はさらに3分岐し、この3本の左分岐チューブ272a,272a,272aが、それぞれ流量計273および流量調整バルブ274を介して(図21参照)、図19における左側面パネル262bの隅部3個所に設けたガス吹出口(送気口)275,275,275に接続されている。この場合、ガス吹出口275の設置位置は、左側面パネル262bの隅部のうち、排気口265から最も離れた隅部3個所となっている。
同様に、右パージ系供給チューブ277は3分岐し、この3本の右分岐チューブ277a,277a,277aが、それぞれ流量計273および流量調整バルブ274を介して(図22参照)、図19における右側面パネル262eの隅部3個所に設けたガス吹出口(送気口)275に接続されている。この場合も、ガス吹出口275の設置位置は、左側面パネル262eの隅部のうち、排気口265から最も離れた隅部3個所となっている。すなわち、排気口265から離間した位置に設けた6個のガス吹出口275は、個々に、不活性ガスの吹出し流量を調整できるようになっている。
第2実施形態のチャンバ装置204も、上記実施形態と同様に、不活性ガスの補給と排気とを連続させて、チャンバルーム205内に良好な雰囲気を構成する運転形態をとっており、ガス導入ユニット208により不活性ガスの全体の補給量が調整されるが、さらに計6個のガス吹出口275毎に、不活性ガスの補給量が調整される。
例えば、後下部の一対の排気口265,265から最も離れた前上部の2つのガス吹出口275,275における不活性ガスの吹出し流量を他のものより多くして、チャンバルーム205内の気流が略対角方向に流れるようにすることが、好ましい。これにより、不活性ガスの主流路が、液滴吐出装置203の液滴吐出動作を行う領域、すなわち吐出エリアに交差するように且つこれを包み込むように流れ、吐出エリアに常に新鮮な不活性ガスを供給することができる。
また、チャンバルーム205内には、6つのガス吹出口275から不活性ガスが流入するため、不活性ガスのガス溜まりが生じ難く、全体として新鮮な不活性ガスによる雰囲気を構成することができる。なお、不活性ガスのガス溜まりを防止する他の対策としては、隅部をアール形状に埋めることや、気流の流れ方向を調整する邪魔板等を設けることも可能である。
一方、図23(a)に示すように、エアー供給ユニット218に連なるエアーチューブ281も、エアー供給ユニット218の下流側で、左パージ系および右パージ系の2系統に分岐している。そして、左パージ系エアーチューブ282は3分岐し、この3本の左分岐チューブ282aが、それぞれ流量計283および流量調整バルブ284を介して(図21参照)、図19における左側面パネル262bの隅部3個所に設けたエアー吹出口(送気口)285,285に接続されている。同様に、右パージ系供給チューブ287は3分岐し、この3本の右分岐チューブ287aが、それぞれ流量計283および流量調整バルブ284を介して(図22参照)、図19における右側面パネル262eの隅部3個所に設けたエアー吹出口(送気口)285,285,285に接続されている。
このように構成されたエアー供給ユニット218を用いて、チャンバルーム205内の大気置換を行う場合には、単純に、ガス導入ユニット208を閉塞しておいて、エアー供給ユニット218を開放し、6つのガス吹出口285から圧縮エアーをチャンバルーム205内に導入し、不活性ガスを排気口265に向かって押し出すようにする。
次に、上記第1および第2実施形態の電気光学装置1,201を用いた有機EL装置の製造方法について説明する。
図24ないし図36は、有機EL装置の製造プロセスと共にその構造を表している。この製造プロセスは、バンク部形成工程と、プラズマ処理工程と、正孔注入/輸送層形成工程及び発光層形成工程からなる発光素子形成工程と、対向電極形成工程と、封止工程とを具備して構成されている。
バンク部形成工程では、基板501に予め形成した回路素子部502上及び電極511(画素電極ともいう)上の所定の位置に、無機物バンク層512aと有機物バンク層512bを積層することにより、開口部512gを有するバンク部512を形成する。このように、バンク部形成工程には、電極511の一部に、無機物バンク層512aを形成する工程と、無機物バンク層の上に有機物バンク層512bを形成する工程が含まれる。
まず無機物バンク層512aを形成する工程では、図24に示すように、回路素子部502の第2層間絶縁膜544b上及び画素電極511上に、無機物バンク層512aを形成する。無機物バンク層512aを、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって層間絶縁層514及び画素電極511の全面にSiO2、TiO2等の無機物膜を形成する。
次にこの無機物膜をエッチング等によりパターニングして、電極511の電極面511aの形成位置に対応する下部開口部512cを設ける。このとき、無機物バンク層512aを電極511の周縁部と重なるように形成しておく必要がある。このように、電極511の周縁部(一部)と無機物バンク層512aとが重なるように無機物バンク層512aを形成することにより、発光層510の発光領域を制御することができる。
次に有機物バンク層512bを形成する工程では、図25に示すように、無機物バンク層512a上に有機物バンク層512bを形成する。有機物バンク層512bをフォトリソグラフィ技術等によりエッチングして、有機物バンク層512bの上部開口部512dを形成する。上部開口部512dは、電極面511a及び下部開口部512cに対応する位置に設けられる。
上部開口部512dは、図25に示すように、下部開口部512cより広く、電極面511aより狭く形成することが好ましい。これにより、無機物バンク層512aの下部開口部512cを囲む第1積層部512eが、有機物バンク層512bよりも電極511の中央側に延出された形になる。このようにして、上部開口部512d、下部開口部512cを連通させることにより、無機物バンク層512a及び有機物バンク層512bを貫通する開口部512gが形成される。
次にプラズマ処理工程では、バンク部512の表面と画素電極の表面511aに、親インク性を示す領域と、撥インク性を示す領域を形成する。このプラズマ処理工程は、予備加熱工程と、バンク部512の上面(512f)及び開口部512gの壁面並びに画素電極511の電極面511aを親インク性を有するように加工する親インク化工程と、有機物バンク層512bの上面512f及び上部開口部512dの壁面を、撥インク性を有するように加工する撥インク化工程と、冷却工程とに大別される。
まず、予備加熱工程では、バンク部512を含む基板501を所定の温度まで加熱する。加熱は、例えば基板501を載せるステージにヒータを取り付け、このヒータで当該ステージごと基板501を加熱することにより行う。具体的には、基板501の予備加熱温度を、例えば70〜80℃の範囲とすることが好ましい。
つぎに、親インク化工程では、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。このO2プラズマ処理により、図26に示すように、画素電極511の電極面511a、無機物バンク層512aの第1積層部512e及び有機物バンク層512bの上部開口部512dの壁面ならびに上面512fが親インク処理される。この親インク処理により、これらの各面に水酸基が導入されて親インク性が付与される。図26では、親インク処理された部分を一点鎖線で示している。
つぎに、撥インク化工程では、大気雰囲気中で4フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行う。CF4プラズマ処理により、図27に示すように、上部開口部512d壁面及び有機物バンク層の上面512fが撥インク処理される。この撥インク処理により、これらの各面にフッ素基が導入されて撥インク性が付与される。図27では、撥インク性を示す領域を二点鎖線で示している。
次に、冷却工程では、プラズマ処理のために加熱された基板501を室温、またはインクジェット工程(液滴吐出工程)の管理温度まで冷却する。プラズマ処理後の基板501を室温、または所定の温度(例えばインクジェット工程を行う管理温度)まで冷却することにより、次の正孔注入/輸送層形成工程を一定の温度で行うことができる。
次に発光素子形成工程では、画素電極511上に正孔注入/輸送層及び発光層を形成することにより発光素子を形成する。発光素子形成工程には、4つの工程が含まれる。即ち、正孔注入/輸送層を形成するための第1組成物を各前記画素電極上に吐出する第1液滴吐出工程と、吐出された前記第1組成物を乾燥させて前記画素電極上に正孔注入/輸送層を形成する正孔注入/輸送層形成工程と、発光層を形成するための第2組成物を前記正孔注入/輸送層の上に吐出する第2液滴吐出工程と、吐出された前記第2組成物を乾燥させて前記正孔注入/輸送層上に発光層を形成する発光層形成工程とが含まれる。
まず、第1液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を電極面511a上に吐出する。なお、この第1液滴吐出工程以降は、水、酸素の無い窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。(なお、画素電極上にのみ正孔注入/輸送層を形成する場合は、有機物バンク層に隣接して形成される正孔注入/輸送層は形成されない)
図28に示すように、インクジェットヘッド(機能液滴吐出ヘッド)Hに正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを下部開口部512c内に位置する電極面511aに対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された第1組成物滴510cを電極面511a上に吐出する。
ここで用いる第1組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、R・G・Bの各発光層510bに対して同じ材料を用いても良く、発光層毎に変えても良い。
図28に示すように、吐出された第1組成物滴510cは、親インク処理された電極面511a及び第1積層部512e上に広がり、下部、上部開口部512c、512d内に満たされる。電極面511a上に吐出する第1組成物量は、下部、上部開口部512c、512dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、第1組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、第1組成物滴510cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面511a上に吐出しても良い。
次に正孔注入/輸送層形成工程では、図29に示すように、吐出後の第1組成物を乾燥処理及び熱処理して第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させることにより、電極面511a上に正孔注入/輸送層510aを形成する。乾燥処理を行うと、第1組成物滴510cに含まれる極性溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層512a及び有機物バンク層512bに近いところで起き、極性溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。
これにより図29に示すように、乾燥処理によって電極面511a上でも極性溶媒の蒸発が起き、これにより電極面511a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部510aが形成される。電極面511a上では極性溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面511a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部510aが形成される。
次に第2液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出する。この第2液滴吐出工程では、正孔注入/輸送層510aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層510aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で正孔注入/輸送層510aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出しても、正孔注入/輸送層510aと発光層510bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層510bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、非極性溶媒ならびに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層510aの表面の親和性を高めるために、発光層を形成する前に表面改質工程を行うことが好ましい。
そこでまず、表面改質工程について説明する。表面改質工程は、発光層形成の際に用いる第1組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質用溶媒を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法またはディップ法により正孔注入/輸送層510a上に塗布した後に乾燥することにより行う。
例えば、インクジェット法による塗布は、図30に示すように、インクジェットヘッドHに、表面改質用溶媒を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを基板(すなわち、正孔注入/輸送層510aが形成された基板)に対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルHから表面改質用溶媒510dを正孔注入/輸送層510a上に吐出することにより行う。そして、図31に示すように、表面改質用溶媒510dを乾燥させる。
次に第2液滴吐出工程では、インクジェット法(液滴吐出法)により、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層510a上に吐出する。図32に示すように、インクジェットヘッドHに、青色(B)発光層形成材料を含有する第2組成物を充填し、インクジェットヘッドHの吐出ノズルを下部、上部開口部512c、512d内に位置する正孔注入/輸送層510aに対向させ、インクジェットヘッドHと基板501とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された第2組成物滴510eとして吐出し、この第2組成物滴510eを正孔注入/輸送層510a上に吐出する。
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。
非極性溶媒としては、正孔注入/輸送層510aに対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。このような非極性溶媒を発光層510bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層510aを再溶解させることなく第2組成物を塗布できる。
図32に示すように、吐出された第2組成物510eは、正孔注入/輸送層510a上に広がって下部、上部開口部512c、512d内に満たされる。第2組成物510eは1回のみならず、数回に分けて同一の正孔注入/輸送層510a上に吐出しても良い。この場合、各回における第2組成物の量は同一でも良く、各回毎に第2組成物量を変えても良い。
次に発光層形成工程では、第2組成物を吐出した後に乾燥処理及び熱処理を施して、正孔注入/輸送層510a上に発光層510bを形成する。乾燥処理は、吐出後の第2組成物を乾燥処理することにより第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発して、図33に示すような青色(B)発光層510bを形成する。
続けて、図34に示すように、青色(B)発光層510bの場合と同様にして、赤色(R)発光層510bを形成し、最後に緑色(G)発光層510bを形成する。なお、発光層510bの形成順序は、前述の順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決める事も可能である。
次に対向電極形成工程では、図35に示すように、発光層510b及び有機物バンク層512bの全面に陰極503(対向電極)を形成する。なお,陰極503は複数の材料を積層して形成しても良い。例えば、発光層に近い側には仕事関数が小さい材料を形成することが好ましく、例えばCa、Ba等を用いることが可能であり、また材料によっては下層にLiF等を薄く形成した方が良い場合もある。また、上部側(封止側)には下部側よりも仕事関数が高いものが好ましい。これらの陰極(陰極層)503は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、発光層510bの熱による損傷を防止できる点で好ましい。
また、フッ化リチウムは、発光層510b上のみに形成しても良く、更に青色(B)発光層510b上のみに形成しても良い。この場合、他の赤色(R)発光層及び緑色(G)発光層510b、510bには、LiFからなる上部陰極層503bが接することとなる。また陰極12の上部には、蒸着法、スパッタ法、CVD法等により形成したAl膜、Ag膜等を用いることが好ましい。また、陰極503上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
最後に、図36に示す封止工程では、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中で、有機EL素子504上に封止用基板505を積層する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極503にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極503に侵入して陰極503が酸化されるおそれがあるので好ましくない。そして最後に、フレキシブル基板の配線に陰極503を接続するとともに、駆動ICに回路素子部502の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置500が得られる。
1…電気光学装置 2…描画装置 3…チャンバ装置 4…機能液滴吐出ヘッド 6…液滴吐出装置 11…チャンバルーム 12…電気室 13…機械室 17…X軸テーブル 18…Y軸テーブル 20…ヘッドユニット 101…ガス導入ユニット 102…排気ダクト 113…前部着脱パネルユニット 114…後部着脱パネルユニット 121…内パネルユニット 122…外パネルユニット 124…内パネル 126…外パネル 129…電磁ロック装置 130…空隙 131…送気口 132…排気口 133…フィルタチャンバ 135…フィルタ 137…隔壁 138…ガス流路 141…ガスダンパーユニット 142…ガス開閉バルブ 143…ガス調整バルブ 144…ガス開閉ダンパー 147…主ガス流路 155…ガス調和機器 156…クーラ 157…ヒータ 158…ファン 161…排気チャンバ 162…排気ダンパーユニット 163…排気調整ダンパー 164…排気開閉ダンパー 166…排気パイプ 167…排気バルブ 171…外気流路 172…外気取入れ口 173…外気ダンパーユニット 174…外気開閉ダンパー 175…外気調整ダンパー 176…外気開閉バルブ 201…電気光学装置 202…描画装置 203…液滴吐出装置 204…チャンバ装置 205…チャンバルーム 208…ガス導入ユニット 211…機能液滴吐出ヘッド 228…ヘッドユニット 231…X軸テーブル 232…Y軸テーブル 252…供給チューブ 253…排気ダクト 265…排気口 274…流量調整バルブ 275…ガス吹出口 500…有機EL装置 501…基板 504…有機EL素子 510a…正孔注入/輸送層 510b…発光層 W…基板