JP3945237B2 - 化粧材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物における壁材や天井材、床材等の内装材や建具、家具、什器、車両内装、家電製品の外装等に使用するための化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
合板等の木質基材の表面に、意匠性や各種表面物性の付与を目的として、熱可塑性樹脂フィルム等のシート類に絵柄の印刷等による装飾加工を施してなる化粧シートを積層した化粧材は、建築内装材やその他の用途に従来広く使用されている。係る化粧材において、主として意匠上の要請により、表面と側面との間の稜部に面取り加工が施されたり、表面に溝加工が施されたりする場合も少なくない。係る面取り加工や溝加工は、一般に鉋又はルーター等の切削工具を用いた切削加工法によって行われる。
【0003】
この場合、木質基材の表面に積層された化粧シートは、通例300μm以下程度の極めて薄いものであるのに対し、面取り部や溝部の深さは、500μm乃至数mm程度とされるのが通例であるから、面取り部や溝部には切削された木質基材の切削面が露出することになる。これを放置すると、化粧シートとの色彩の差により意匠性を低下させたり、耐水性や耐汚染性等に問題が生じたりすることから、切削加工された面取り部や溝部には、化粧シートに近似した色彩の付与及び/又は耐水性や耐汚染性の付与を目的として、合成樹脂塗料の塗装による保護層が形成される場合が多い。
【0004】
しかるに、上述の如く、面取り部や溝部への保護層の形成を塗料の塗装によって行うと、塗装の作業中に面取り部や溝部以外の表面の化粧シートを汚損する事故を発生し易いことや、特に溝部は塗料で埋没して折角の意匠感が減殺される場合があること、塗装に使用する塗料は化粧シートへの絵柄の印刷に使用する印刷インキとは本質的に異なる色材であることから、色彩を十分に近似させることは必ずしも容易ではないこと、仮に色彩は近似していても、塗装による絵柄の付与は極めて困難なため、一般的には単色の塗装となるので、化粧シートの絵柄との間で意匠的に違和感を生じやすいこと、湿式方法のため塗装後には乾燥養生の工程が必要で、生産性が良くないこと等の問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、木質基材の表面に積層された化粧シートの表面からその厚みを越える深さに面取り加工や溝加工が施された化粧材において、面取り部や溝部に設ける保護層の色彩や絵柄を、化粧シートのそれらと十分に近似させることが容易であり、しかも製造中の汚損事故等のおそれも少なく、優れた意匠性を有する製品を簡便な工程で生産性良く製造可能な化粧材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の化粧材は、木質基材の表面に化粧シートが積層され、その表面と側面との間の稜部に、前記化粧シートの表面から該化粧シートの厚みを越える深さの面取り加工が施されてなる化粧材の製造方法において、該面取り部に乾式方法による保護層が設けられてなることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の化粧材は、木質基材の表面に化粧シートが積層され、その表面に、前記化粧シートの表面から該化粧シートの厚みを越える深さの溝加工が施されてなる化粧材の製造方法において、該溝部に乾式方法による保護層が設けられてなることを特徴とするものである。
【0008】
また特に、上記のいずれかの化粧材の製造方法において、前記保護層が、絵柄層及び接着層を介して、前記面取り部又は前記溝部に積層されていることを特徴とするものである。
【0009】
また特に、上記のいずれかの化粧材の製造方法において、前記保護層が、転写法により設けられてなることを特徴とするものである。
【0010】
また特に、上記のいずれかの化粧材の製造方法において、前記保護層に、抗菌剤及び/又は帯電防止剤が添加されてなることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の化粧材の実施の形態を模式的に示す側断面図であり、図2は本発明の化粧材の実施の形態に用いられる化粧シートを模式的に示す側断面図であり、図3は本発明の化粧材の実施の形態に用いられる転写シートを模式的に示す側断面図である。
【0012】
本発明の化粧材10は、図1に示す様に、積層合板等の木質基材11を本体とし、その表面に、印刷による絵柄やエンボス等による意匠性の付与と、耐水性や耐磨耗性等の各種表面物性の付与との為の、化粧シート15が積層されている。
【0013】
この化粧材10の表面(使用状態で表に見える面すなわち化粧面)と側面(端面)との間の稜部及び/又は表面には、積層された化粧シート15の表面から、その厚みを越え、木質基材11が露出するような深さに、切削加工等による面取り部12及び/又は溝部13が形成されている。この面取り部12及び/又は溝部13は、所望により、それらの一方のみが形成される場合もあれば、両者が併用して形成される場合もある。
【0014】
この面取り部12及び/又は溝部13には、露出した木質基材11を覆って、この部分を望ましい色彩に着色すると共に、耐水性や耐汚染性等の各種表面物性を付与するための、保護層19が形成されている。そして、本発明においては、この保護層19が、塗装法等の湿式方法に代えて、乾式方法によって形成されていることを特徴としている。
【0015】
上記保護層19の形成方法としての乾式方法とは、塗装法に用いる塗料のような液状物を用いない方法であればよく、本発明において特に限定されるものではないが、代表的な具体例としては以下の2種を挙げることができる。
【0016】
その第一は、面取り部12及び/又は溝部13の幅や長さの寸法に合わせて裁断された、少なくとも裏面が熱接着性を有する帯状体(テープ状体)を、加熱しつつ面取り部12及び/又は溝部13に圧着して接着させる熱圧着法である。
【0017】
第二は、図3に示す様に、少なくとも表面が離型性を有する支持体シート31上に、少なくとも保護層32を含み且つ少なくとも支持体シート31とは反対側の面が熱接着性を有する転写層が形成されてなる転写シートを、加熱しつつ面取り部12及び/又は溝部13に圧着し、しかる後に支持体シート31を剥離することにより、面取り部12及び/又は溝部13のみに保護層32を含む転写層を転写させる転写法である。
【0018】
上記の2種の中でも、予め面取り部12及び/又は溝部13の寸法に合わせて裁断する必要なく、必要な箇所のみに選択的に保護層19を形成することが容易に可能な、後者の転写法によることが、最も望ましい。
【0019】
保護層19の材質は、面取り部12及び/又は溝部13の内面に要求される耐水性や耐汚染性等の表面物性を満足する材質であれば良く、特に限定はされないが、一般的には熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の合成樹脂組成物が採用され、中でも物性面からは、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を、少なくともその最表面に採用することが望ましい。
【0020】
具体的には、熱硬化性樹脂としては例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、イソシアネート硬化型ウレタン樹脂、酸硬化型アクリル樹脂、アミノアルキド樹脂等、電離放射線硬化性樹脂としては例えば不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂等を例示することができる。
【0021】
保護層19には、例えば紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、減摩剤、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、抗菌剤等の各種の添加剤を適宜添加することができる。特に、面取り部12(化粧材10同士を端部で突き合わせ施工した際に実質的に凹部となる)や溝部13においては、化粧材10の一般表面部に対し凹部となっていることから、汚染物が溜まったり雑菌が繁殖したりして外観意匠性を低下させる場合が多いので、この保護層19に帯電防止剤及び/又は抗菌剤を添加すると、静電気による塵埃の付着を防止したり、雑菌の繁殖を抑制したりして、凹部の汚染防止による化粧材10の外観意匠性の長期保持に有効である。
【0022】
保護層19は、それ自体が単色又は絵柄状に着色されていても勿論構わないが、より色彩や絵柄の自由度を高めるために、保護層19は無色透明乃至着色半透明程度とし、その裏面側に別途絵柄層18を設けた構成とすることが望ましい。
【0023】
この絵柄層18は、化粧シート15の絵柄(後述する化粧シート20の絵柄層24)と同様に、発色性や印刷適性に優れた色材である印刷インキを使用した印刷法等によって形成することが可能であるから、化粧シート15の色彩や絵柄との対比において、面取り部12及び/又は溝部13の色彩や絵柄に違和感のない、意匠性に優れた化粧材10を容易に得られる利点がある。
【0024】
上記絵柄層18のなす絵柄の種類には、化粧シート15の絵柄と同様、特に制限はなく、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号等、或いはそれらの複数種の組み合わせ柄等、所望により任意であり、単色無地であっても勿論良い。
【0025】
また、化粧シート15の絵柄と絵柄層18の絵柄とは、同一の絵柄であることが最も望ましいが、面取り部12及び/又は溝部13の面積は化粧材10の全表面積と比較すれば非常に小さいので、色彩さえほぼ近似していれば、多少異なった絵柄であっても、或いは、絵柄層18のみが単色無地であっても、実用上支障のない場合も少なくない。
【0026】
保護層19及び/又は絵柄層18が熱接着性を有する場合には、これらを面取り部12及び/又は溝部13に露出した木質基材11の表面に直接熱接着させることも可能であるが、保護層19としての表面物性や絵柄層18としての意匠表現性と熱接着性との両立が困難な場合が多いので、一般的には、熱接着性に優れた接着層17を介して接着させることが望ましい。
【0027】
接着層17を構成するための接着剤としては、常温では固体であり、加熱により軟化乃至溶融して接着性を発現し、冷却により固化して固着する性質を有する、熱可塑性樹脂系の接着剤である、感熱接着剤又はホットメルト接着剤等と呼ばれる接着剤を使用することが望ましい。
【0028】
具体的には、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−アクリル酸エステル共重合体系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、塩素化ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、ポリウレタン系、ポリビニルエーテル系、繊維素誘導体系等を挙げることができる。
【0029】
これら保護層19、絵柄層18、接着層17は望ましくは、前述した様に、図3に示す如く、離型性の支持体シート31上に、保護層32、絵柄層33、接着層36等を含む転写層が剥離可能に設けられた転写シート30を使用して設けられる訳であるが、これら3層の他、必要に応じて、隠蔽性を高めるための隠蔽層34や、絵柄層33又は隠蔽層34と接着層36との密着性を高めるためのプライマー層35などが、必要に応じて設けられていてもよい。
【0030】
上記転写層を構成する各層は、支持体シート31上に、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、フレキソ印刷法、ドライオフセット印刷法、インクジェット印刷法、電子写真法、静電印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ロッドコート法、キスコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、コンマコート法、リップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種塗工法などを適宜用いて、順次塗工又は印刷して形成すればよい。
【0031】
上記転写シート30を使用して、木質基材11の面取り部12及び/又は溝部13のみに、保護層32を含む転写層を転写形成するためには、転写シート30を面取り部12及び/又は溝部13の形状に沿わせて加熱ロールで加熱しつつ圧着し、しかる後に転写シート30の支持体シート31のみを剥離除去する方法を用いるとよい。
【0032】
上記加熱ロールとしては、少なくともその押圧面がシリコーンゴム等の耐熱性弾性体からなる弾性体ロールを用いることが望ましい。面取り部12及び/又は溝部13の切削面に多少の凹凸があっても、よく追従して良好な転写状態が得られ易いからである。
【0033】
加熱ロールとして、弾性変形性に富む軟質の弾性体ロールを使用すれば、溝部13においても、或いは面取り部12が平面状(C面取り)ではない場合(例えばR面取り等)においても、押圧面が円筒面状である通常の弾性体ロールを使用して、弾性変形を利用して弾性体ロールを面取り部12及び/又は溝部13の表面形状に追従させ、その形状に沿って転写層を転写させることも可能である。
【0034】
但しその場合、弾性体ロールの弾性変形によって、面取り部12及び/又は溝部13に隣接した一般平面部の一部にも転写シート30が圧接され、この部分に転写層がはみ出して転写される原因となる。従って、弾性体ロールとしては、弾性変形性の少ない硬質の(望ましくはゴム硬度が60度以上の)ものを使用することが望ましい。
【0035】
そして、溝部13や平面状でない面取り部12の被転写面においては、加熱ロールの回転軸を含む断面において、被転写面の断面形状を反転した断面形状をなす押圧面形状を有する加熱ロールを使用することが望ましい。具体的には、V溝であれば算盤玉状の形状、R面取りであれば滑車状の形状などである。
【0036】
本発明の化粧材の一般表面部の化粧に用いられる化粧シート15に関しては、従来公知の化粧材におけると同様であり、本発明において特に限定されるものではない。要するに、紙又は合成樹脂フィルム等のシート状の材料に、所望の絵柄の印刷や凹凸模様のエンボス等による装飾加工を施したものであり、各種の材料を用いた各種の構成のものが、従来広く用いられている。中でも意匠性面及び各種物性面から最も望ましいのは、熱可塑性樹脂フィルムを主体として構成される熱可塑性樹脂系化粧シートである。
【0037】
その具体的構成としては、例えば、熱可塑性樹脂からなる不透明な基材シートの表面に絵柄層を設けたものや、熱可塑性樹脂からなる透明な基材シートの裏面及び/又は表面に絵柄層を設けたもの、それらの表面に表面保護層を設けたものなどの単層構成の化粧シートや、図2に示す様に、透明又は不透明の熱可塑性樹脂からなる基材シート22上に、絵柄層24等を介して、透明な熱可塑性樹脂からなる透明樹脂層26を積層してなる、複層構成の化粧シート20などを使用することができ、その意匠性、接着適性、耐候性、耐溶剤性、耐磨耗性等の各種の面からは、後者である複層構成の化粧シート20が有利である。
【0038】
上記化粧シート20には、隠蔽性を高めて意匠性を安定させるために、基材シート22に酸化チタン又は酸化鉄等の不透明顔料を添加して隠蔽性に着色したり、絵柄層24の裏面に不透明顔料を含む不透明印刷インキによる隠蔽層23を形成したり、基材シート22と透明樹脂層26との接着性を高めるために層間に接着性樹脂層25を設けたり、透明樹脂層26の表面に凹凸模様のエンボス27を施したり、該エンボス27の凹部をワイピング法等により着色したり、最表面に表面保護や艶調整のための表面保護層28を施したり、裏面に木質基材11との接着性を向上させるためのプライマー層21を施したりすることも、任意に行うことができる。また、透明樹脂層26には、耐候性を向上させるための紫外線吸収剤や光安定剤、熱安定剤等が添加されるのが一般的である。
【0039】
木質基材11と化粧シート15との積層方法としては、接着剤層14を介したウェットラミネート法又はドライラミネート法や、接着剤層14を介するか又は介さない熱ラミネート法、両者の間に溶融押出した熱可塑性樹脂層を介在させて積層するサンドラミネート法等、従来公知の任意の積層方法を適宜採用することができる。
【0040】
中でも接着剤層14を介した接着法によるのが最も簡便で仕上がりも良いので好適である。接着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン系接着剤(硬化剤が配合される場合もある)や、2液ウレタン系接着剤、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤などが広く用いられている。
【0041】
化粧シート15の表面には、さらなる表面物性の向上を目的として、表面塗膜16が設けられる場合もある。この場合、化粧シート15の表面に予め表面保護層(図2に示す化粧シート20における表面保護層28)が設けられている場合には、十分な層間密着性を得るために、この表面保護層は表面塗膜16との親和性に優れた再塗装性(リコート性)を有するものとされる。
【0042】
具体的には例えば、イソシアネート基やエポキシ基等の接着性に富む反応性官能基を多く含むものとしたり、表面塗膜16が極性樹脂を主体とするものであれば水酸基やアミノ基、カルボキシル基等の極性官能基を多く含むものとしたり、表面塗膜16が反応硬化性樹脂(例.2液ウレタン樹脂)を主体とするものであればそれと反応可能な官能基(例.水酸基)を多く含むものとしたり、表面塗膜16が電離放射線硬化性樹脂を主体とするものであれば重合性二重結合基(例.(メタ)アクリロイル基)を多く含むものとしたりする等の方法が用いられる。
【0043】
表面塗膜16は、優れた表面物性を発現させるために、架橋密度の高い熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂(特に、紫外線硬化性樹脂又は電子線硬化性樹脂)を主成分とする塗料によって形成されるのが一般的である。熱硬化性樹脂としては、例えばメラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂、酸硬化型アクリル樹脂、アミノアルキド樹脂等、電離放射線硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂等を例示することができる。
【0044】
表面塗膜16には、必要に応じて、例えば着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、艶調整剤、減摩剤等の添加剤を添加することもできる。
【0045】
表面塗膜16は、1層のみならず、複数層の積層構成とすることもできる。この場合、上記した各種の添加剤は全ての層に添加する必要は必ずしもなく、最も効果を発揮し易い層にのみ添加することにより、添加剤の使用量を節減しつつ最大の効果を発揮させることもできる。例えば、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、艶調整剤等は、複数層からなる表面塗膜16の最表層のみに添加するといった応用も可能である。
【0046】
また、減摩剤は、アルミナ又は炭化珪素等、合成樹脂との親和性の比較的低い無機物質からなり、しかも、粒径数μm乃至数十μmという粒径の大きな粒子からなるため、最表層に添加すると表面塗膜16から脱落し易いことや、その硬度が極めて高いため、化粧材10に接触する物品に減摩剤が直接接触すると物品を損耗させることなどの問題がある。そこで、こうした減摩剤は、複層構成の表面塗膜16における最表層以外の層(例えば、2層構成における下層や、3層構成における中間層など)に添加することにより、減摩剤の表面を表面塗膜16の最表層で覆い、脱落や接触物品の損耗を防止するといった応用も可能である。
【0047】
表面塗膜16は、化粧シート15の木質基材11上への積層前に化粧シート15の表面に塗装形成しても良いし、木質基材11上に化粧シート15を積層した後に塗装形成しても良い。また、表面塗膜16が複数層からなる場合には、その下側の一部を木質基材11上への化粧シート15の積層前に、表面側の残部を木質基材11上への化粧シート15の積層後にという様に、複数回に分けて形成することもできる。
【0048】
表面塗膜16の全部又は一部が、木質基材11上への化粧シート15の積層後に塗装形成される場合に、その塗装工程と面取り部12及び/又は溝部13の形成工程との順序に関しては、本発明において特に制限されるものではなく、任意の順序とすることができる。但し、塗装工程を溝部13の形成工程の後に実施すると、塗工された塗料の一部が溝部13に流れ込み、溝部13を完全に又は部分的に埋没させて意匠性を損なう場合があり、しかもその後で流れ込んだ塗料を除去することも困難であるので、溝部13の形成工程は塗装工程の後とすることが望ましい。
【0049】
【実施例】
<実施例1>
[化粧シートの作製]
厚さ60μmの無延伸着色ポリプロピレン樹脂フィルムを基材シートとして、その表面にコロナ処理を施して濡れ指数40mN/m以上に調整し、その表面にウレタン樹脂系インキにてグラビア印刷法により隠蔽層及び木目柄の絵柄層を順次印刷形成した。該絵柄層上に、エチレンーエチルアクリレート系接着性樹脂層20μmと、光安定剤0.2重量%及び紫外線吸収剤0.3重量%を添加したランダム共重合ポリプロピレン樹脂100μmとを共押出ラミネートして、透明樹脂層を形成すると同時に、金属製エンボスロールにて導管柄のエンボスを施し、冷却固化後、該透明樹脂層の表面にコロナ処理を施して濡れ指数を40mN/m以上に調整し、表面全体に2液硬化型ウレタン系トップコート剤をグラビアコート法にて乾燥後の塗布量4g/m2に施し乾燥硬化させて表面保護層を形成した後、基材シートの裏面にコロナ処理を施して濡れ指数を38mN/m以上に調整し、シリカ粉末を配合したウレタン樹脂系プライマー剤をグラビアコート法にて乾燥後の塗布量1g/m2に施してプライマー層を形成して、総厚約190μmの化粧シートを作製し、これをロール状に巻き取った。
【0050】
[転写シートの作製]
厚さ20μmのPETフィルム(ニックマット−メラミン焼き付けPET)を支持体シートとして、その表面に、帯電防止剤及び抗菌剤を添加した2液硬化型ウレタン樹脂系トップコート剤を、グラビアコート法にて乾燥後の塗布量5g/m2に施し乾燥硬化させて保護層を形成した。さらに該保護層面に、ウレタン樹脂系インキにてグラビア印刷法により、上記化粧シートに施したものと同一の木目柄の絵柄層及び隠蔽層を順次印刷形成した後、接着層とのプライマー層として、ウレタン系樹脂層を乾燥硬化後の塗布量が1g/m2となるようにグラビアコートした。最後に接着層として、ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(軟化点90℃)をコンマコーターにて乾燥後の塗布量が10g/m2となるように塗工して、転写シートを作製した。
【0051】
[化粧材の作製]
平面寸法950mm×1900mm、総厚12mmの積層合板を基材として、その表面上に、変性酢酸ビニル系エマルジョン接着剤にて上記化粧シートを貼着し、これを平面寸法310mm×1900mmとなるように正寸カットした。その後、製品サイズ表面が300mm×1800mmとなるように、基材端部に嵌合部分及び面取り部(幅・深さ1.5mm)を切削加工した。次に、基材上に貼着された化粧シートの表面に、下層、中間層、最表層の3層からなる表面塗膜を、紫外線硬化型樹脂塗料を用いてロールコーター法にて、硬化後の塗布量が下層は5g/m2、中間層は10g/m2、最表層は5g/m2になるように塗工した。なお、下層はウレタン系紫外線硬化型樹脂、中間層はエポキシ系紫外線硬化型樹脂、最表層はポリエステル系紫外線硬化型樹脂を使用し、中間層には樹脂自体の硬さだけでなく、φ5〜10μmの鱗片状の炭化珪素粒子を樹脂固形分100重量部当たり20重量部添加した。塗工した表面塗膜を紫外線照射により硬化させた後に、基材表面に目地部分として、深さ1.5mm・開口角度45度となるようにルーター加工を施し、溝部を形成した。しかる後、面取り部及び溝部に保護層を形成するために、上記転写フィルムを使用して、ゴム硬度80度の180℃に加熱したゴムロールで線圧約15kN/m(15kgf/cm)、ライン速度5m/minの条件で転写し、本発明の化粧材を完成した。
【0052】
<実施例2>
上記実施例1において作製したものと同一の化粧シートを使用して、その作製の数日後に、その表面に、下層及び最表層の2層からなる表面塗膜を、紫外線硬化型樹脂塗料を用いてグラビアコート法にて、硬化後の塗布量がそれぞれ3g/m2となるように塗工し、紫外線照射により硬化させた。なお、下層はウレタン系紫外線硬化型樹脂、最表層はポリエステル系紫外線硬化型樹脂を使用した。塗工した表面塗膜を紫外線照射により硬化させた後に、この表面塗膜形成済みの化粧シートを使用して、以下、上記実施例1と全く同一の要領にて(但し、化粧シートの基材上への積層後の表面塗膜の塗装工程を除く)、本発明の化粧材を完成した。
【0053】
これら実施例1及び実施例2の化粧材はいずれも、面取り部及び溝部に、帯電防止剤及び抗菌剤が添加された保護層が設けられているため、面取り部や溝部における耐水性や耐磨耗性等の表面物性が優れ、しかも溝部へのほこりの溜まりや黒ずみなども発生しにくかった。しかも、面取り部及び溝部に、一般表面部と同一の色彩及び絵柄が付与されていると共に、保護層等が一般表面部にはみ出しておらず、意匠性にも極めて優れた化粧材であった。
【0054】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明の化粧材は、面取り部及び/又は溝部における木質基材の露出面への保護層の形成を、転写法等の乾式方法で行うようにしたことにより、化粧シートへの絵柄の形成と同様の色材や方法を使用した保護層への色彩や絵柄の付与が可能となり、従って一般表面部と面取り部及び/又は溝部との色彩差や柄差を少なくして、該色彩差や柄差による違和感を緩和することができ、しかも、塗装法の場合のような塗料の飛散やはみ出しによる一般表面部の汚損事故も容易に防止できるので、意匠性に優れた化粧材を簡便且つ容易に得ることができるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧材の実施の形態を模式的に示す側断面図。
【図2】本発明の化粧材の実施の形態に用いられる化粧シートを模式的に示す側断面図。
【図3】本発明の化粧材の実施の形態に用いられる転写シートを模式的に示す側断面図。
【符号の説明】
10‥‥‥‥化粧材
11‥‥‥‥木質基材
12‥‥‥‥面取り部
13‥‥‥‥溝部
14‥‥‥‥接着剤層
15‥‥‥‥化粧シート
16‥‥‥‥表面塗膜
17‥‥‥‥接着層
18‥‥‥‥絵柄層
19‥‥‥‥保護層
20‥‥‥‥化粧シート
21‥‥‥‥プライマー層
22‥‥‥‥基材シート
23‥‥‥‥隠蔽層
24‥‥‥‥絵柄層
25‥‥‥‥接着性樹脂層
26‥‥‥‥透明樹脂層
27‥‥‥‥エンボス
28‥‥‥‥表面保護層
30‥‥‥‥転写シート
31‥‥‥‥支持体シート
32‥‥‥‥保護層
33‥‥‥‥絵柄層
34‥‥‥‥隠蔽層
35‥‥‥‥プライマー層
36‥‥‥‥接着層

Claims (5)

  1. 木質基材の表面に化粧シートが積層され、その表面と側面との間の稜部に、前記化粧シートの表面から該化粧シートの厚みを越える深さの面取り加工が施されてなる化粧材の製造方法において、該面取り部に乾式方法による保護層が設けられてなることを特徴とする化粧材の製造方法
  2. 木質基材の表面に化粧シートが積層され、その表面に、前記化粧シートの表面から該化粧シートの厚みを越える深さの溝加工が施されてなる化粧材の製造方法において、該溝部に乾式方法による保護層が設けられてなることを特徴とする化粧材の製造方法
  3. 請求項1又は2に記載の化粧材の製造方法において、前記保護層が、絵柄層及び接着層を介して、前記面取り部又は前記溝部に積層されていることを特徴とする化粧材の製造方法
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化粧材の製造方法において、前記保護層が、転写法により設けられてなることを特徴とする化粧材の製造方法
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の化粧材の製造方法において、前記保護層に、抗菌剤及び/又は帯電防止剤が添加されてなることを特徴とする化粧材の製造方法
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