JP3945154B2 - シャフト位置調整装置及び画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、スキャナのスキャナヘッドやプリンタのインクタンク等と記録用紙との間を調整するためのシャフト位置調整装置及びこのようなシャフト位置調整装置を備えた画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等から送られる信号に基づいて記録用紙等の記録面へ画像を記録する所謂プリンタには、1乃至複数色のインクを上記の信号に基づいて記録用紙の記録面に吐出させることにより記録用紙の記録面に画像を記録(形成)する所謂インクジェット式プリンタがある。
【0003】
この種のインクジェット式プリンタでは、各色のインク毎にインクタンクを備えており、これらのインクタンクが記録ヘッドキャリッジに保持されている。記録ヘッドキャリッジは、スキャンシャフトと称される支持体に記録用紙の記録面に対して平行で且つ記録用紙の移動方向に対して直交する方向へ移動可能に支持されている。
【0004】
記録ヘッドキャリッジはフラットケーブル等を介してプリンタの制御装置やコンピュータ等へ接続されており、このスキャンシャフトに沿って移動しつつ所定の位置で所定のインクタンクからインクを吐出させる。
【0005】
記録用紙を所定量だけ移動させて上記のようにスキャンシャフトに沿って記録ヘッドキャリッジを移動させつつ所定のインクタンクからインクを吐出させることを繰り返すことで記録用紙の記録面に画像が記録(形成)される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、記録用紙はその種類によって厚さが異なるが、記録用紙の厚さの変化に伴い記録用紙の記録面とインクタンクとの間隔が変わると、記録用紙の記録面に対するインクの着弾位置等が微妙に変化し、これにより、記録用紙に記録された画像の品質が低下する。
【0007】
そこで、記録用紙の厚さ等に応じて適宜にスキャンシャフトを記録用紙に対して接離する方向へ変位させることが考えられており、その一例が、特開平2−110718号や実開平1−174149号等に開示されている。
【0008】
例えば、この特開平2−110718号では、スキャンシャフト(公報では「ガイド軸と称している)の軸方向中間部に対して両端部を偏心させると共に、このスキャンシャフトの両端部を軸受に保持させている。軸受の一方の回動中心はスキャンシャフトに対して偏心している。
【0009】
これに対して実開平1−174149号では、スキャンシャフト(公報では「ガイドロッドと称している)の軸方向中間部に対して両端部を偏心させると共に、このスキャンシャフトの両端部を回動中心がスキャンシャフトに対して偏心した軸受に保持させている。
【0010】
これらの構成は何れも、偏心したスキャンシャフトと偏心した軸受を有するという点で共通しているが、スキャンシャフトの一端側での偏心位相と他端側での偏心位相を厳格に揃えなくてはならず、極めて厳格な寸法精度が要求されるため製造コストが嵩む。また、偏心した軸受に関しても同様に極めて厳格な寸法精度が要求されるうえ、スキャンシャフトに対する組み付けに関しても極めて厳格な組付精度が要求されるため製造コストが嵩む。
【0011】
この他、偏心したスキャンシャフトだけを用いた構成や偏心した軸受だけを用いた構成等も他の公報に開示されているが、何れも上述した問題点の何れかを有することになる。
【0012】
一方、スキャンシャフトの軸方向両端部に偏心カムとギヤを設けてこのモータ等の駆動手段からの駆動力で偏心カムを回転させることでスキャンシャフトを変位させる構成が特開平8−310076号に開示されている。
【0013】
しかしながら、このような偏心カムをスキャンシャフトの軸方向両端部に設ける構成であっても、スキャンシャフトの一端側での偏心カムの偏心位相と他端側での偏心カムの偏心位相を厳格に揃えなくてはならず、極めて厳格な寸法精度が要求されるため製造コストが嵩む。そのうえ、基本的には組み付け時にカムの回転姿勢をも管理しなければならず厳格な組付精度が要求される。しかも、偏心カムと共に設けられたギヤの形状を偏心カムに対応した特殊な形状としなければならない等の問題が生じる。
【0014】
本発明は、上記事実を考慮して、各種部材の加工並びに組み付けが容易で、しかも、スキャンシャフト等のシャフトを確実に所定量だけ移動させることができるシャフト位置調整装置及び画像処理装置を得ることが目的である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、前記ヘッドを支持するシャフトと、を有する画像処理装置に適用され、前記記録面或いは前記原稿面の面に対して接離する接離方向へ移動可能に前記シャフトを支持するシャフト位置調整装置であって、前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を制限する支持体と、前記接離方向に前記シャフトと対向して設けられ、前記接離方向への前記シャフトの移動時において静止している基準部と、前記接離方向に基準部とシャフトとの間で自らの軸周りに回転自在で且つ前記接離方向に変位可能に配置され、外径寸法が回転中心周りに均一で前記シャフト及び前記基準部の何れか一方に外周部が摺接する第1カム部を有すると共に、前記第1カム部と同心に設けられ、前記シャフト及び前記基準部の何れか他方に外周部が摺接し、且つ、外径寸法が回転中心周り一方向へ向けて増加する第2カム部を有するカムを含めて構成された摺接部材と、を備えることを特徴としている。
【0016】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、摺接部材のカムを構成する第1カム部の外周部にシャフト及び基準部の何れか一方が摺接し、第2カム部の外周部にシャフト及び基準部の何れか他方が摺接している。ここで、第1カム部は外径寸法が回転中心周りに均一であるのに対して第2カム部は外径寸法が回転中心周り一方向へ向けて増加するため、カムが回転することでシャフト及び基準部の何れか一方と第1カム部との摺接部位からシャフト及び基準部の何れか他方と第2カム部との摺接部位までの間の摺接部位間寸法が増減する。
【0017】
このため、カムが自らの軸周りの回転方向一方へ回転することで摺接部位間寸法が増加すれば、基準部から遠ざかるようにシャフトが移動し、カムが自らの軸周りの回転方向他方へ変位することで摺接部位間寸法が減少すれば、基準部へ接近するようにシャフトが移動する。
【0018】
ここで、カムは接離方向に基準部とシャフトとの間に配置され、しかも、シャフト自体も支持体により接離方向に対して傾斜した方向への移動が制限されているため、カムが回転した際のシャフトの移動方向は接離方向となる。
【0019】
したがって、記録媒体の記録面や原稿の原稿面とヘッドとの間隔に応じて適宜にカムを回転させることで、ヘッドを記録面や原稿面に対して接離させることができ、これにより、ヘッドと記録面や原稿面との間隔を適切な距離に調整できる。
【0020】
ここで、本シャフト位置調整装置はシャフトとは別に設けられたカムを回転させることによりシャフトを接離移動させる構成である。したがって、仮に、シャフトが回転する構造であっても、偏心シャフトのようにシャフトの軸方向一端側と他端側とで回転位相差が生じるということはないため、シャフト自体に厳格な寸法精度が要求されない。
【0021】
しかも、シャフト自体の移動は支持体により制限されているため、組み付けも容易である。
【0022】
請求項2記載の本発明は、記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、前記ヘッドを支持するシャフトと、を有する画像処理装置に適用され、前記記録面或いは前記原稿面の面に対して接離する接離方向へ移動可能に前記シャフトを支持するシャフト位置調整装置であって、前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を制限する支持体と、前記接離方向に前記シャフトと対向して設けられ、前記接離方向への前記シャフトの移動時において静止している基準部と、前記接離方向に基準部とシャフトとの間に配置され、前記基準部及び前記シャフトの外周部の双方へ摺接していると共に、増加方向への自らの変位により前記接離方向に沿った前記基準部との摺接部位から前記シャフトの外周部との摺接部位までの摺接部位間寸法が増加し、前記増加方向とは反対方向への変位により前記摺接部位間寸法が減少する摺接部材と、を備え、前記基準部は、前記摺接部材に対して摺接する摺接面を有すると共に自らの変位により前記摺接部材との摺接位置が前記接離方向に変位する調整部と、前記調整部に一体に設けられ前記支持体に固定可能な固定部と、を含めて形成された調整手段を有する、ことを特徴としている。
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、基準部とシャフトの外周部との双方に摺接部材が摺接しており、しかも、摺接部材の基準部との摺接部位とシャフトの外周部との摺接部位との間の摺接部位間寸法は、摺接部材の変位方向(すなわち、増加方向若しくはその反対方向)に変化する。
このため、摺接部材が増加方向へ変位することで摺接部位間寸法が増加すれば、基準部から遠ざかるようにシャフトが移動し、摺接部材が増加方向とは反対方向へ変位することで摺接部位間寸法が減少すれば、基準部へ接近するようにシャフトが移動する。
ここで、摺接部材は接離方向に沿った基準部とシャフトとの間に配置され、しかも、シャフト自体も支持体により接離方向に対して傾斜した方向への移動が制限されているため、摺接部材が変位した際のシャフトの移動方向は接離方向となる。
したがって、記録媒体の記録面や原稿の原稿面とヘッドとの間隔に応じて適宜に摺接部材を変位させることで、ヘッドを記録面や原稿面に対して接離させることができ、これにより、ヘッドと記録面や原稿面との間隔を適切な距離に調整できる。
ここで、本シャフト位置調整装置はシャフトとは別に設けられた摺接部材によりシャフトを接離移動させる構成である。したがって、仮に、シャフトが回転する構造であっても、偏心シャフトのようにシャフトの軸方向一端側と他端側とで回転位相差が生じるということはないため、シャフト自体に厳格な寸法精度が要求されない。しかも、シャフト自体の移動は支持体により制限されているため、組み付けも容易である。
一方で、本発明に係るシャフト位置調整装置では、摺接部材と支持体との間には基準部としての調整手段が設けられる。この調整手段は固定部にて支持体へ固定可能であるため、この固定状態において摺接部材との摺接部位が変化することはない。
しかしながら、固定部での支持体に対する固定状態を解除して、支持体に対して調整手段を変位させることで、調整部における摺接部材との摺接部位が接離方向に変化する。したがって、組み付け時において、支持体や摺接部材等に多少の寸法誤差が生じていても、調整手段を変位させることでシャフトが水平(原稿面や記録面に対して平行)に支持された状態で確実に摺接部材を調整手段の調整部へ摺接させることができ、この意味でも組付性が向上する。
なお、本発明において、摺動部材の変位の態様に関してはなんら限定するものではない。したがって、摺動部材の変位は直線的であってもよいし、曲線的であってもよく、更には、回転変位(回動変位)であってもよい。
【0025】
請求項3記載の本発明は、請求項2記載のシャフト位置調整装置において、自らの軸周りに回転自在で且つ前記接離方向に変位可能に設けられ、外周部のうち自らの回転中心を介した一方の側で前記シャフトの外周部へ摺接して他方の側で前記基準部へ摺接すると共に、自らの軸周りの回転方向一方へ向けて前記摺接部位間寸法が漸次増加するカムを前記摺接部材としたことを特徴としている。
【0026】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、摺接部材はカムとされており、カムの外周部は、カムの回転中心を介して一方側でシャフトの外周部に摺接され、他方の側で基準部に摺接される。しかも、カムが自らの回転中心(軸)周りに回転すると、シャフトとの摺接部位から回転中心を介して基準部との摺接部位までの寸法、すなわち、摺接部位間寸法が増減する。
【0027】
このため、カムの回転に伴い摺接部位間寸法が増加すれば、基準部から遠ざかるようにシャフトが移動し、摺接部位間寸法が減少すれば基準部へ接近するようにシャフトが移動する。
【0028】
ここで、摺接部材の変位を直線変位とした場合には、円滑に変位できるように摺接部材を支持するためにはレール等を設けたり、摺接部材の部品強度を高く設定しなければ、シャフト等から作用する力で摺接部材に所謂こじれが生じ、円滑な変位ができないことがある。
【0029】
これに対して、本シャフト位置調整装置では、カムをその回転中心で回転可能若しくは回転可能で且つ接離方向に変位可能に支持できればよいため、格別、レール等を必要としない。しかも、カムはその回転中心を介して一方の側でシャフトの外周部へ摺接し、他方の側で基準部へ摺接するため、シャフトからの荷重はその当接部位から回転中心方向に作用するため、この荷重が作用することによる回転モーメントが生じ難く、したがって、上記のこじれ等が生じ難い。このため、摺接部材(カム)の強度を比較的低く設定でき、小型化、計量化に寄与する。
【0030】
また、カムの回転量と摺接部位間寸法の変化量とが比例する構成とすれば、カムを組み付ける際には、カムの回転姿勢に関係なく記録面や原稿面に対してシャフトが平行な状態でカムの外周部が基準部とシャフトの双方に摺接させればよく、仮に、回転姿勢が組み付け時の基本姿勢等からずれていたとしても、摺接部位間寸法の増減が比例するため、回転量当たりの径寸法の変化量が変わることはない。このため、厳格なカムの回転姿勢設定が不要となり、より一層組付性が向上するという利点もある。
【0031】
請求項4記載の本発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のシャフト位置調整装置において、前記摺接部位間寸法の増減を、前記摺接部材の変位量に比例させたことを特徴としている。
【0032】
上記構成のシャフト位置調整装置では、摺接部材が変位することによる摺接部位間寸法の増減が摺接部材の変位量に比例しているため、シャフトを接離方向へ移動させる際のシャフトの移動量と摺接部材の変位量との関係が簡単になり、摺接部材の変位量制御が容易になる。
【0034】
請求項5記載の本発明は、請求項1又は請求項3記載のシャフト位置調整装置において、前記シャフトに対して同軸的に前記シャフトに設けられ、付与された駆動力により前記シャフト周りに回転する第1ギヤと、前記カムの回転中心に対して同軸的で且つ前記カムに一体的に設けられ、前記第1ギヤへ噛み合う第2ギヤと、を備えることを特徴としている。
【0035】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、シャフトはシャフト周りに回転する第1ギヤが設けられており、この第1ギヤには第2ギヤが噛み合っている。この第2ギヤはカムの回転中心に対して同心で且つカムに一体的に設けられている。
【0036】
したがって、モータ等の駆動手段からの駆動力や手動による回転力が第1ギヤに付与されて第1ギヤが回転させられると、この第1ギヤの回転が第2ギヤへ伝わって第2ギヤが回転させられる。さらに、第2ギヤが回転することで第2ギヤと一体のカムが回転させられ、これにより、シャフトが接離方向に移動することになる。
【0037】
ここで、例えば、シャフトと第1ギヤとを一体にし、且つ、シャフトの両端に第1ギヤ、第2ギヤ、及びカムを設ければ、シャフトの軸方向両端側で接離方向への移動を確実に同期させることも可能となる。
【0038】
請求項6記載の本発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のシャフト位置調整装置において、前記接離方向に長手とされ、前記シャフトが貫通し、内周部にて前記シャフトを前記接離方向に案内すると共に前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を前記内周部にて制限する長孔が形成されたフレームを前記支持体としたことを特徴としている。
【0039】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、長孔が形成されたフレームが支持体とされており、この長孔にシャフトが貫通される。ここで、長孔は接離方向に長手とされているため、摺接部材が変位した際には、長孔の内周部に案内されつつシャフトが接離方向に移動し、しかも、この長孔の内周部により接離方向に対して傾斜した方向への移動が制限される。
【0040】
請求項7記載の本発明は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のシャフト位置調整装置において、前記ヘッドを支持するシャフト本体と、前記シャフト本体の長手方向端部へ連結されると共に前記摺接部材に摺接するカムフォロワと、を含めて前記シャフトを構成したことを特徴としている。
【0041】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、ヘッドを支持するシャフト本体の長手方向端部にカムフォロワが連結され、このカムフォロワに摺接部材が摺接する。
【0042】
ここで、例えば、シャフト本体が支持体の孔部を貫通し、更に、この孔部の内径寸法よりも摺接部材との摺接部分を大径とするような場合であっても、以上のように構成することで容易に組み付けることができる。
【0043】
請求項8記載の本発明は、請求項1に記載のシャフト位置調整装置において、前記第2カム部が前記第1カム部に一体に設けられたことを特徴としている。
【0044】
上記構成のシャフト位置調整装置によれば、第2カム部が第1カム部に一体に設けられ、第1カム部が回転すると第2カム部が回転して、これにより、シャフト及び基準部の何れか一方と第1カム部との摺接部位からシャフト及び基準部の何れか他方と第2カム部との摺接部位までの間の摺接部位間寸法が増減する。
【0045】
請求項9記載の画像処理装置は、記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、前記ヘッドを支持するシャフトと、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の前記シャフト位置調整装置と、を備えている。
【0046】
上記構成の画像処理装置では、原稿面の画像を読み込むヘッド又は記録媒体の記録面に画像を形成するヘッドがシャフトに支持される。ここで、本画像処理装置では、上記の請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のシャフト位置調整装置を備えており、このシャフト位置調整装置によってシャフトの位置が調整される。
【0047】
しかしながら、固定部での支持体に対する固定状態を解除して、支持体に対して調整手段を変位させることで調整手段を変位させることで、調整部における摺接部材との摺接部位が接離方向に変化する。したがって、組み付け時において、支持体や摺接部材等に多少の寸法誤差が生じていても、調整手段を変位させることでシャフトが水平(原稿面や記録面に対して平行)に支持された状態で確実に摺接部材を調整手段の調整部へ摺接させることができ、この意味で組付性が向上する。
【0048】
【発明の実施の形態】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るシャフト位置調整装置10を適用した画像処理装置としての画像記録装置12の要部の構成が斜視図により示されており、図2には画像記録装置12の要部の構成が側面図により示されている。また、図3には画像記録装置12の要部の構成が正面図により示されている。
【0049】
これらの図に示されるように、本画像記録装置12は支持体としてのフレーム14を備えている。このフレーム14は各々の厚さ方向に沿って互いに対向した状態で平行に配置された一対の側壁16、18を備えている。これらの側壁16、18はその幅方向一端側で背壁20により一体に連結されている。一対の側壁16、18の間の一部は記録媒体としての記録用紙22の通過部となっており、図示しない搬送ローラ等の搬送手段によって側壁16、18同士の対向方向に対して直交する一方向(本実施の形態では図2の矢印A方向)へ記録用紙22が移動する。
【0050】
この側壁16、18の間における記録用紙22の通過部の上方には、1乃至複数のインクタンク24を保持するヘッドとしての記録ヘッドキャリッジ26が設けられている。インクタンク24は下方へ向けて自らに貯留されたインクを吐出可能とされており、自らの下方を通過する記録用紙22の記録面へ向けてインクを吐出させることにより記録用紙22の記録面に画像を形成できるようになっている。
【0051】
また、記録ヘッドキャリッジ26はフラットケーブル等の接続手段を介して制御回路等の制御部(何れも図示省略)へ電気的に接続されており、この制御部から送られた電気信号に基づいてインクタンク24からインクを吐出する。
【0052】
一方、上述した側壁16、18の間にはガイドレール32が設けられている。ガイドレール32は側壁16、18の対向方向に沿って長手で概ね上述した記録用紙22の通過方向が幅方向とされた板材により形成され、その長手方向両端部は対応する側壁16、18へ一体的に固定されている。ガイドレール32の幅方向中間部よりも背壁20側は略上方(記録用紙22の通過部とは反対側)へ向けて略直角に屈曲された当接部34とされており、上述した記録ヘッドキャリッジ26の上端側が背壁20側から当接する。
【0053】
また、ガイドレール32の下方で且つ記録用紙22の通過部の上方にはシャフトとしえてのスキャンシャフト35を構成するシャフト本体36が設けられている。シャフト本体36は側壁16、18の対向方向に沿って長手(軸方向)とされ且つ記録用紙22の記録面に対して平行の棒状で、記録ヘッドキャリッジ26に対して自らの軸周りに回転可能に記録ヘッドキャリッジ26を貫通しており、下方から記録ヘッドキャリッジ26を支持している。
【0054】
また、図1及び図2に示されるように、シャフト本体36に対応して各側壁16、18には長孔40が形成されており、シャフト本体36の軸方向両端側は長孔40を貫通している。長孔40は、側壁16、18の対向方向及び記録用紙22の移動方向の双方に対して直交する方向に沿って長手方向とされていると共に、幅寸法はシャフト本体36の外径寸法に略等しく(厳密には極僅かに大きく)、長孔40を貫通したシャフト本体36は長孔40の長手方向には所定量変位可能であるが、長孔40の幅方向に沿ったシャフト本体36の変位は長孔40の内周部により制限される。
【0055】
さらに、側壁16の側壁18側の面には付勢手段としての捩じりコイルスプリング42が取り付けられている。捩じりコイルスプリング42はその一端が側壁16に係止されていると共に、他端はシャフト本体36の外周部に略上方から圧接しており、その付勢力でシャフト本体36を長孔40の下端側へ向けて付勢している。
【0056】
一方、図3に示されるように、シャフト本体36の軸方向両端部には第1ギヤとしてのギヤ44が設けられている。図1及び図2に示されるように、ギヤ44の軸芯には内径寸法がシャフト本体36の外径寸法に略等しい(厳密には極僅かに大きい)透孔46が形成されており、この透孔46にシャフト本体36の軸方向端部に圧入されることでシャフト本体36とギヤ44とが一体となる。
【0057】
なお、本実施の形態では、透孔46にシャフト本体36を圧入することでシャフト本体36とギヤ44とを一体に連結した構成であったが、例えば、透孔46の内周部やシャフト本体36の透孔46に対応した部分における外周部に回り止め(すなわち、シャフト本体36に対するギヤ44の相対回転防止用)としてローレット加工やD加工を施してもよいし、また、透孔46の内周部に雌ねじを形成すると共にシャフト本体36の透孔46に対応した部分における外周部に雄ねじを形成してギヤ44とシャフト本体36とを螺合させたり、透孔46の内周部及びシャフト本体36の透孔46に対応した部分における外周部の何れか一方にばね性を有する係合片を形成すると共に、何れか他方に係合片の嵌合が可能な係合孔を形成して、係合片を係合孔に嵌合させることでギヤ44とシャフト本体36との機械的な連結を更に強固なものにする構成としてもよい。
【0058】
以上の構成のシャフト本体36は、本画像記録装置12を組立時における初期状態で長孔40の長手方向中間部にて長孔40をシャフト本体36が貫通するように設定される。
【0059】
また、側壁16の側壁18とは反対側に設けられたギヤ44の回転半径方向側方にはアイドルギヤ50が配置されている。アイドルギヤ50は軸方向がギヤ44の軸方向に対して平行となった状態で自らの軸周りに回転自在に側壁16に軸支されている。このアイドルギヤ50は駆動手段としてのモータ52の駆動力により正逆方向へ回転する。図4に示されるように、モータ52は制御手段としての制御装置54へ接続されており、この制御装置54からの信号に基づいて正転駆動或いは逆転駆動する。
【0060】
図4に示されるように、制御装置54は記録用紙22の厚さを検出する記録面検出手段若しくはキャリッジ位置検出手段としてのセンサ56へ電気的に接続されている。センサ56は、例えば、記録用紙22の記録面側へ向けて検出光を発光する発光手段と記録用紙22の記録面にて反射された検出光の反射光を受光する受光手段により構成されており、制御装置54ではセンサ56の発光手段が検出光を発してから受光手段が光を受光するまでの時間等を検出し、この時間等からセンサ56と記録用紙22との間隔を算出し、更に、この間隔から記録用紙22の厚さを算出する。さらに、制御装置54では、この算出した記録用紙22の厚さに基づいてモータ52を所定量正転駆動若しくは逆転駆動させる。
【0061】
一方、図1及び図2に示されるように、アイドルギヤ50の回転半径方向側方には一対の遊星ギヤ58、60が配置されている。これらの遊星ギヤ58、60はアイドルギヤ50へ噛み合っていると共に、上述したギヤ44へも噛み合っており、アイドルギヤ50の回転を遊星ギヤ58、60を介してギヤ44へ伝達してギヤ44を回転させることができるようになっている。
【0062】
また、遊星ギヤ58の軸方向一端側には連結片62が配置されており、遊星ギヤ58が連結片62に対して自らの軸周りに回転自在に連結片62に支持されている。これに対して、遊星ギヤ60の軸方向一端側には連結片64が配置されており、遊星ギヤ60が連結片64に対して自らの軸周りに回転自在に連結片64に支持されている。連結片62、64は何れもアイドルギヤ50に連結されている。連結片62、64の双方はアイドルギヤ50の軸周りに回転自在にアイドルギヤ50に連結されており、これにより、遊星ギヤ58、60の運動は自転並びにアイドルギヤ50周りの公転に制限されている。
【0063】
さらに、連結片62には引張コイルスプリング66の一端が係止されており、この引張コイルスプリング66の他端は連結片64に係止されている。引張コイルスプリング66は、自らの付勢力で連結片62の遊星ギヤ58側を連結片64の遊星ギヤ60側へ相対的に接近させる方向へ付勢しており、この付勢力が連結片62、64に作用することでギヤ44が長孔40の長手方向に沿って所定範囲変位したとしても、遊星ギヤ58、60がギヤ44に噛合するようになっている。
【0064】
一方、ギヤ44の軸方向一端部にはカムフォロワ68が一体形成されている。カムフォロワ68は透孔46を中心とした(すなわち、ギヤ44と同軸の)円盤形状とされており、その外周部側方には摺接部材としてのカム70が配置されている。
【0065】
図1、より詳細には図5に示されるように、カム70は、第1カム部72と第2カム部74とにより構成されるカム本体76を備えている。このカム本体76の第1カム部72はその外周部の回転中心Q周り一方の端部72Aから回転中心Qを介して他方の端部72Bが成す角度を180度に設定した半円形状の平板とされており、図5に示されるように、カム70の回転中心Qからが外周部までの半径寸法Dは回転中心Q周りに一定とされ、その外周面が上述したカムフォロワ68の外周面に摺接している。
【0066】
これに対して第2カム部74は回転中心Qを介して第1カム部72とは反対側に形成されている。この第2カム部74は第1カム部72と同様に外周部の回転中心Q周り一方の端部から回転中心Qを介して他方の端部が成す角度を180度に設定した平板状である。しかしながら、第1カム部72とは異なり、回転中心Qから外周部までの半径寸法Rが一定ではなく、外周部の回転中心Q周り一方の端部74Aでの第2カム部74の半径寸法をR1、回転中心Q周り他方の端部74Bでの第2カム部74の半径寸法をR2、端部74Aと第2カム部74の外周部の任意のG点とが成す角度をθ1(但し、θ1:度)、回転中心Q周りに端部74Aと端部74Bとが成す角度をθ2=180(但し、θ2:度)まで角度のとした場合、回転中心Qから任意のG点まで距離すなわち、G点における第2カム部74の半径寸法Rは以下の式(1)を満足するように設定されている。
すなわち、この式からも分かるように、回転中心Qから第2カム部74の外周部までの半径寸法は端部74Aからの角度の増加量に比例して漸次大きくなる構成となっている。
【0067】
以上の構成のカム本体76を有するカム70は、本画像記録装置12の組立直後における初期状態で回転中心Q周りの第1カム部72の端部72Aと端部72Bとの中央部と回転中心Qの双方を通る仮想線が長孔40の軸方向に沿い、且つ、回転中心Q周りの第2カム部74の端部74Aと端部74Bとの中央部と回転中心Qの双方を通る仮想線が長孔40の軸方向に沿うように設定される。但し、このカム70の初期状態はあくまでも原則的なものであって厳格にこれを満足していなくても構わない。
【0068】
また、図1に示されるように、カム本体76の軸方向側壁16側には第2ギヤとしてのギヤ78が一体形成されている。ギヤ78は回転中心Qを回転軸芯とする歯車で上述したギヤ44に噛合している。
【0069】
さらに、ギヤ78のカム本体76とは反対側の端部からはシャフト80がギヤ78に対して同軸的に延出されており、上述した長孔40を貫通している。このシャフト80の外径寸法は長孔40の幅寸法に略等しく(厳密には極僅かに小さく)、このため、シャフト80は長孔40の長手方向に沿って所定範囲変位可能であるが、長孔40の幅方向に対しては長孔40の内周部によりその変位が制限されている。これに対して、カム本体76のギヤ78とは反対側の端部からはシャフト82がギヤ78に対して同軸的に延出されている。
【0070】
一方、カム70の下方にはフレーム14と共に支持体を構成する基板84が設けられている。基板84は、例えば、側壁16の下端部を側壁18とは反対側へ略直角に屈曲することで形成されており、更に、この基板84の側壁16とは反対側は上方へ略直角に屈曲されて支持壁86とされている。この支持壁86には、支持壁86の厚さ方向に沿って貫通し且つ支持壁86の上端部にて開口した切欠部88が形成されている。この切欠部88は長孔40の長手方向と同方向が開口方向とされており、開口幅寸法が開口端から開口端とは反対方向の中間部までが略等しく、しかも、この部分における開口幅寸法がシャフト82の外径寸法に略等しい(厳密には極僅かに大きい)。
【0071】
この切欠部88にはシャフト82が貫通している。したがって、シャフト82は切欠部88の開口方向(すなわち、長孔40の長手方向)に沿って所定範囲変位可能であるが、切欠部88の開口幅方向(すなわち、長孔40の幅方向)に対しては切欠部88の内壁によりその変位が制限されている。これにより、カム70の運動は回転中心Q周りの回転と長孔40の長手方向に沿った変位にのみ制限される。
【0072】
また、基板84上には、調整手段としての調整片90が配置されている。調整片90は平板状の固定部92を備えている。この固定部92には上述した記録用紙22の移動方向に沿って長手方向とされた長孔94が形成されており、固定部92を介して基板84とは反対側から長孔94を貫通した固定ねじ96が基板84に形成された雌ねじ部98へ螺合することで調整片90が基板84上に締結固定されると共に、この締結を緩めることで、長孔94の長手方向に沿って調整片90を所定量変位させることができるようになっている。
【0073】
なお、本実施の形態では、長孔94を固定部92に形成すると共に雌ねじ部98を基板84に形成して、固定部92を介して基板84とは反対側から固定ねじ96を締結固定させる構成であったが、長孔94を基板84に形成すると共に雌ねじ部98を固定部92に形成して基板84を介して固定部92とは反対側から固定ねじ96を締結固定させる構成としてもよい。
【0074】
この固定部92の側壁16側には調整部としての押圧部100が形成されている。この押圧部100は、カム70の回転半径方向に沿って第2カム部74の外周面と対向する押圧面102を備えている。この押圧面102は、長孔94の長手方向一端側における端部から長孔94の長手方向他端側における端部へ向けて基板84からの高さが漸次大きくなる傾斜面とされており、常時、第2カム部74の外周面に摺動接触している。
【0075】
なお、側壁18の側壁16側にも捩じりコイルスプリング42が設けられており、側壁18の側壁16とは反対側にもギヤ44、カム70、基板84、支持壁86、調整片90等が設けられており、基本的には側壁18側も側壁16側と同様の構成を成しているが、側壁18側にはアイドルギヤ50及び遊星ギヤ58、60は設けられていない。しかしながら、側壁16側のギヤ44と側壁18側のギヤ44とがシャフト本体36を介して一体に連結されていることから側壁16側のギヤ44の回転がシャフト本体36を介して側壁18側のギヤ44へ伝えられることで側壁18側のギヤ44が側壁16側のギヤ44と一体に回転するようになっている。
【0076】
<第1の実施の形態の作用、効果>
上記構成の画像記録装置12では、記録用紙22の記録面が記録ヘッドキャリッジ26と対向するように図示しない搬送ローラ等の搬送手段によって記録用紙22が記録ヘッドキャリッジ26と下方に搬送されると、図示しない駆動手段の駆動力によって記録ヘッドキャリッジ26がガイドレール32並びにシャフト本体36に案内されつつガイドレール32並びにシャフト本体36の長手方向(すなわち、主走査方向)へ移動する。
【0077】
この移動時には制御装置54からの信号に基づいて記録ヘッドキャリッジ26に保持されたインクタンク24のインクが適宜に記録用紙22へ向けて吐出される。記録ヘッドキャリッジ26が一点範囲移動すると、記録用紙22がその搬送方向(すなわち、副走査方向)へ所定量だけ移動し、この状態で再び記録ヘッドキャリッジ26がガイドレール32並びにシャフト本体36に案内されつつガイドレール32並びにシャフト本体36の長手方向へ移動しつつインクタンク24から適宜にインクが吐出される。
【0078】
以上の記録用紙22の搬送と記録ヘッドキャリッジ26の移動に伴うインクタンク24からのインクの吐出を繰り返すことで記録用紙22の記録面に画像が記録される。
【0079】
また、本画像記録装置12では、記録用紙22が記録ヘッドキャリッジ26の下方に位置するよりも先に図4に示されるセンサ56からの信号に基づいて制御装置54が記録用紙22の厚さを算出すると、制御装置54はこの算出結果に基づいてモータ52を正転駆動或いは逆転駆動させる。モータ52の回転力(駆動力)はアイドルギヤ50へ伝えられてアイドルギヤ50を自らの軸回りに所定角度回転させ、更に、アイドルギヤ50に噛合している遊星ギヤ58、60を回転させる。
【0080】
遊星ギヤ58、60の回転は遊星ギヤ58、60に噛合しているギヤ44へ伝えられ、これにより、ギヤ44が回転させられる。ギヤ44の回転はギヤ44に噛合するカム70のギヤ78へ伝えられると共に、ギヤ44と一体のシャフト本体36を介して同様にシャフト本体36と一体の他方のギヤ44(すなわち、側壁18側のギヤ44)へ伝えられる。
【0081】
ギヤ44からの回転を伝えられることで回転するギヤ78はカム70の第1カム部72及び第2カム部74を回転中心Q周りに回転させる。ここで、上述したように、第2カム部74の半径は端部74Aからの角度の増加量に比例して漸次大きくなる。このため、第2カム部74が回転中心Q周りに回転することでその回転量に比例して回転中心Qから第2カム部74と調整片90の押圧面102との当接部位までの長さ(すなわち、特許請求の範囲で言うところの摺接部位間寸法)が増減する。
【0082】
ここで、例えば、図6の(A)に示される状態から、第2カム部74を回転させることで図6の(B)に示されるように回転中心Qから第2カム部74と調整片90の押圧面102との当接部位までの長さが減少すると、シャフト本体36及びシャフト本体36と一体のギヤ44を介してギヤ44のカムフォロワ68に摺接している第1カム部72に作用する捩じりコイルスプリング42の付勢力によりカム70が下降する。これによってカム70の第1カム部72に摺接しているカムフォロワ68、すなわち、ギヤ44が下降し、更に、ギヤ44が一体に取り付けられているシャフト本体36が下降する。
【0083】
これに対して、例えば、図6の(B)に示される状態から、第2カム部74を回転させることで図6の(A)に示されるように回転中心Qから第2カム部74と調整片90の押圧面102との当接部位までの長さが増加すると、第2カム部74は押圧面102を回転中心Qから遠ざけようと押圧面102を押圧するが、調整片90は基板84に固定されているために調整片90を動かすことができず、したがって、押圧面102からの押圧反力により第2カム部74が持ち上げられてカム70が捩じりコイルスプリング42の付勢力に抗して上昇する。
【0084】
これによってカム70の第1カム部72に摺接しているカムフォロワ68、すなわち、ギヤ44が上昇し、更に、ギヤ44が一体に取り付けられているシャフト本体36が上昇する。
【0085】
ここで、ギヤ44の上下動に伴いアイドルギヤ50との間隔(より詳細には、ギヤ44の中心からアイドルギヤ50の中心までの距離)が変化するが、このギヤ44とアイドルギヤ50との間隔に伴い遊星ギヤ58、60が太陽ギヤ周りに所定量回動することで、遊星ギヤ58、60を介したギヤ44とアイドルギヤ50との機械的な連結が適切に保たれる。このため、アイドルギヤ50の回転(すなわち、モータ52の逆転駆動)を正確にギヤ44、更にはギヤ78へ伝えることができ、シャフト本体36を確実に上下動させることができる。
【0086】
しかも、側壁16側のギヤ44の回転はシャフト本体36を介して側壁18側のギヤ44に伝えられるが、両ギヤ44は何れもシャフト本体36へ一体に組み付けられているため、側壁16側のギヤ44と側壁18側のギヤ44の回転量は常に一定である。したがって、側壁16側のカム70の回転量と側壁18側のカム70の回転量が一定となり、シャフト本体36の長手方向両端側での上下動量は常に一定となる。このため、このようにシャフト本体36が上下動しても記録用紙22の記録面に対するシャフト本体36の平行度が変化することはない。
【0087】
このようにシャフト本体36が記録用紙22の記録面に対して平行に上下動させられることで、シャフト本体36に支持された記録ヘッドキャリッジ26が記録用紙22の記録面に対して平行に上下動する。
【0088】
上述したように、この記録ヘッドキャリッジ26の上下動量に対応したアイドルギヤ50の回転量(すなわち、モータ52の回転量)はセンサ56からの信号に基づいた制御装置54にて算出された記録用紙22の厚さに応じているため、記録用紙22の厚さが基準となる用紙の厚さよりも厚ければ、その厚さの差分だけシャフト本体36が上昇され、また、記録用紙22の厚さが基準となる用紙の厚さよりも薄ければ、その厚さの差分だけシャフト本体36が下降されるため、記録用紙22の厚さが増減しても記録用紙22の記録面と記録ヘッドキャリッジ26との間隔を常に一定に保つことができる。
【0089】
これによって、記録用紙22の記録面の適切な着弾位置にインクタンク24からのインクを吐出させることができ、所定の画像を適切に記録用紙22の記録面へ記録できる。
【0090】
ところで、本実施の形態では、シャフト本体36の両端部は長孔40によりその変位方向が長孔40の長手方向に規制される。しかも、シャフト本体36とギヤ44とは同軸であるため、シャフト本体36が偏心することもない。
【0091】
このため、本画像記録装置12の組立時において、カムフォロワ68にて摺接する第1カム部72にシャフト本体36の回転モーメントに起因する外力を付与することがない。したがって、カム70を組み付けるにあたっては、特別な保持用の治具等でカム70を所定の姿勢で保持する必要がなく容易にカム70を組み付けることができる。
【0092】
しかも、組み立て当初における回転中心Q周りのカム70の位置(すなわち、組み付け時におけるカム70の回転姿勢)は、上述した初期状態が理想ではあるが、組み付け当初に第2カム部74の外周部のどの部分が押圧面102に接触していても、第2カム部74の回転量に応じた半径の変化量は同じであるため、組み付け時におけるカム70の回転姿勢を厳格に設定する必要がなく、この意味でもカム70を容易に組み付けることができる。
【0093】
さらに、側壁16側のカム70と側壁18側のカム70とで回転姿勢が異なれば、当然、側壁16側と側壁18側とで第2カム部74の押圧面102との当接部位から回転中心までの半径寸法が異なるが、この場合には、特別厳格に両カム70の回転姿勢を調整しなくても、調整片90を長孔94の長手方向に沿って適宜に変位させて、カム70の位置やシャフト本体36の位置を調整することが可能であるため、この意味でもカム70を容易に組み付けることができる。
【0094】
なお、本実施の形態では、センサ56の検出結果に基づいて制御装置54がモータ52を駆動させ、このモータ52の駆動力でアイドルギヤ50を回動させる構成であったが、アイドルギヤ50を回動させるための駆動力の駆動源(駆動手段)はモータ52でなくてもよく、例えば、アイドルギヤ50を回動可能に連結されたダイヤルやレバー等の操作手段を設け、この操作手段を手動で動かすことによりアイドルギヤ50を回動させる構成としてもよい。
【0095】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するうえで、基本的に前記第1の実施の形態にて説明した部位と同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0096】
図7には本実施の形態に係るシャフト位置調整装置120を適用した画像処理装置としての画像記録装置122の要部の構成が斜視図により示されている。
【0097】
この図に示されるように、本シャフト位置調整装置120を適用した画像記録装置122は上述したアイドルギヤ50の周囲に遊星ギヤ58、60が設けられておらず、代わりに、アイドルギヤ50とギヤ44との間にラックバー124が配置されている。
【0098】
ラックバー124の幅方向一方の端部には、アイドルギヤ50へ噛合可能な歯が形成されてアイドルギヤ50に噛合していると共に、幅方向他方の端部にはギヤ44に噛合可能な歯が形成されてギヤ44へ噛み合っている。また、このラックバー124の幅方向中間部には自らの長手方向に沿って長手とされた長孔126が形成されている。
【0099】
長孔126に対応して側壁16には一対の支持ピン128が形成されている。これらの支持ピン128は外径寸法が長孔126の内径寸法に略等しく(厳密には極僅かに小さく)、更に、一方の支持ピン128の径方向中心と他方の支持ピン128の径方向中心とを結ぶ仮想線は上述した長孔40の長手方向に沿う(すなわち、一対の支持ピン128は長孔40の長手方向に沿って互いに対向する)。
【0100】
ラックバー124は、これらの支持ピン128に長孔126が入り込んだ状態で側壁16へ取り付けられており、このため、ラックバー124の長手方向は長孔40の長手方向に沿い、支持ピン128が長孔126の長手方向端部に当接するまでラックバー124が自らの長手方向に沿ってスライドできるようになっている。
【0101】
以上の構成の本実施の形態では、図8の(A)に示される状態でアイドルギヤ50が正転すると、図8の(B)に示されるように、アイドルギヤ50に噛み合うラックバー124が下降し、これに伴いアイドルギヤ50とは反対側でラックバー124に噛合するギヤ44が回転し、これにより、前記第1の実施の形態と同様にシャフト本体36が下降する。
【0102】
また、図8の(B)に示される状態でアイドルギヤ50が逆転すると、図8の(A)に示されるように、アイドルギヤ50に噛み合うラックバー124が下降し、これに伴いアイドルギヤ50とは反対側でラックバー124に噛合するギヤ44が回転し、これにより、前記第1の実施の形態と同様にシャフト本体36が上昇する。
【0103】
このように、本実施の形態は、ラックバー124を介してアイドルギヤ50の回転をギヤ44へ伝えることでシャフト本体36を上下動させる。ここで、シャフト本体36を上下動させることでギヤ44もまた上下動することになるが、ラックバー124の長手方向は長孔40の長手方向、すなわち、ギヤ44の上下動方向と平行であるため、ギヤ44が上下動しても常にギヤ44はラックバー124に噛み合う。このため、アイドルギヤ50の回転を確実にギヤ44へ伝えることができ、確実にシャフト本体36を上下動させることができる。
【0104】
また、このように、アイドルギヤ50の回転をギヤ44へ伝え、更に、このギヤ44の回転をカム70に伝えることでシャフト本体36を上下動させることに関しては基本的に前記第1の実施の形態と同様であるため、この点に関しては基本的に前記第1の実施の形態と同様の作用を奏し、同様の効果を得ることができる。
【0105】
なお、以上の各実施の形態は何れも調整片90を備える構成であったが、第2カム部74の外周部を基板84へ直接当接させる構成としても構わない。また、このような場合を含め、第2カム部74のうち、初期状態(組付直後の状態)において基板84若しくは押圧面102に接する部分に対応して位置合わせ用の刻印等のマークを第2カム部74の軸方向端部及び基板84若しくは押圧部100に形成することで、容易にカム70の位置設定が可能となる。
【0106】
さらに、以上の各実施の形態では、第1カム部72とギヤ44のカムフォロワ68とが摺接し、第2カム部74と調整片90の押圧面102とが摺接する構成であったが、第1カム部72と調整片90の押圧面102とが摺接し、第2カム部74とギヤ44のカムフォロワ68とが摺接する構成としてもよい。
【0107】
また、以上の実施の形態では、第2カム部74の端部74Aから端部74Bまでの角度を180度に設定した構成であったが、第2カム部74の端部74Aから端部74Bまでの角度θ2は180度に限定されるものではなく、180度を超えるように設定してもよいし、180度未満に設定してもよい。
【0108】
さらに、本実施の形態では、回転中心Qを介して第1カム部72の反対側に第2カム部74を形成した構成であったが、例えば、第1カム部72と第2カム部74とが軸方向沿って並ぶように形成してもよい。
【0109】
この場合、ギヤ44のカムフォロワ68を介して第1カム部72に伝わる捩じりコイルスプリング42の付勢力の第1カム部72における作用点と、押圧面102と第2カム部74との当接部位がカム70の軸方向に沿って変位することになるため、第2カム部74の軸線の向きを傾斜させる方向の回転モーメントが発生する。
【0110】
したがって、組み付け時や作動時におけるバランスという点で回転中心Qを介して第1カム部72の反対側に第2カム部74を形成した構成より劣るが、第2カム部74のθ2の角度を360度にまで設定できるため、例えば、R1とR2の値をカム70と同じにした場合には、カム70の回転量当たりの第2カム部74の半径の増減を減らすことができ、その結果、シャフト本体36の上下動の精度を高めることができる。
【0111】
また、上記の各実施の形態は何れも摺接部材をカム70という回転体とした構成であったが、例えば、摺接部材が直線的若しくは曲線的に変位する構成であってもよい。このような構成の一態様としては、斜面(斜辺部)がカムフォロワ68へ摺接した略三角形状や略台形状の摺動部材としての摺動片の底面(底辺部)を、長孔40の長手方向に対して直交する方向に沿って摺動可能に側壁16に形成した支持レールに摺接させると共に、モータ等の駆動手段でこの摺接片を支持レールに沿って摺動させる構成がある。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、各種部材の加工並びに組み付けが容易で、しかも、接離方向へシャフトを確実に所定量だけ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係るシャフト位置調整装置を適用した画像処理装置の要部の分解斜視図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態に係るシャフト位置調整装置を適用した画像処理装置の要部の側面図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態に係るシャフト位置調整装置を適用した画像処理装置の要部の正面図である。
【図4】 センサ、制御装置、及びモータの関係を示すブロック図である。
【図5】 カムの正面図である。
【図6】 本発明の第1の実施の形態に係るシャフト位置調整装置の動作を説明する図である。
【図7】 本発明の第2の実施の形態に係るシャフト位置調整装置を適用した画像処理装置の要部の分解斜視図である。
【図8】 本発明の第2の実施の形態に係るシャフト位置調整装置の動作を説明する図6に対応した図である。
【符号の説明】
10 シャフト位置調整装置
12 画像記録装置(画像処理装置)
14 フレーム(支持体)
22 記録用紙(記録媒体)
26 記録ヘッドキャリッジ(ヘッド)
35 スキャンシャフト(シャフト)
36 シャフト本体
40 長孔
42 捩じりコイルスプリング(付勢手段)
44 ギヤ(第1ギヤ)
68 カムフォロワ
70 カム(摺接部材)
72 第1カム部
74 第2カム部
78 ギヤ(第2ギヤ)
84 基板(支持体)
90 調整片(調整手段)
92 固定部
98 押圧部(調整部)
120 シャフト位置調整装置
122 画像記録装置(画像処理装置)
Q 回転中心
Claims (9)
- 記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、
前記ヘッドを支持するシャフトと、
を有する画像処理装置に適用され、前記記録面或いは前記原稿面の面に対して接離する接離方向へ移動可能に前記シャフトを支持するシャフト位置調整装置であって、
前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を制限する支持体と、
前記接離方向に前記シャフトと対向して設けられ、前記接離方向への前記シャフトの移動時において静止している基準部と、
前記接離方向に基準部とシャフトとの間で自らの軸周りに回転自在で且つ前記接離方向に変位可能に配置され、外径寸法が回転中心周りに均一で前記シャフト及び前記基準部の何れか一方に外周部が摺接する第1カム部を有すると共に、前記第1カム部と同心に設けられ、前記シャフト及び前記基準部の何れか他方に外周部が摺接し、且つ、外径寸法が回転中心周り一方向へ向けて増加する第2カム部を有するカムを含めて構成された摺接部材と、
を備えることを特徴とするシャフト位置調整装置。 - 記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、
前記ヘッドを支持するシャフトと、
を有する画像処理装置に適用され、前記記録面或いは前記原稿面の面に対して接離する接離方向へ移動可能に前記シャフトを支持するシャフト位置調整装置であって、
前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を制限する支持体と、
前記接離方向に前記シャフトと対向して設けられ、前記接離方向への前記シャフトの移動時において静止している基準部と、
前記接離方向に基準部とシャフトとの間に配置され、前記基準部及び前記シャフトの外周部の双方へ摺接していると共に、増加方向への自らの変位により前記接離方向に沿った前記基準部との摺接部位から前記シャフトの外周部との摺接部位までの摺接部位間寸法が増加し、前記増加方向とは反対方向への変位により前記摺接部位間寸法が減少する摺接部材と、
を備え、前記基準部は、前記摺接部材に対して摺接する摺接面を有すると共に自らの変位により前記摺接部材との摺接位置が前記接離方向に変位する調整部と、
前記調整部に一体に設けられ前記支持体に固定可能な固定部と、
を含めて形成された調整手段を有する、
ことを特徴とするシャフト位置調整装置。 - 自らの軸周りに回転自在で且つ前記接離方向に変位可能に設けられ、外周部のうち自らの回転中心を介した一方の側で前記シャフトの外周部へ摺接して他方の側で前記基準部へ摺接すると共に、自らの軸周りの回転方向一方へ向けて前記摺接部位間寸法が漸次増加するカムを前記摺接部材としたことを特徴とする請求項2記載のシャフト位置調整装置。
- 前記摺接部位間寸法の増減を、前記摺接部材の変位量に比例させたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のシャフト位置調整装置。
- 前記シャフトに対して同軸的に前記シャフトに設けられ、付与された駆動力により前記シャフト周りに回転する第1ギヤと、
前記カムの回転中心に対して同軸的で且つ前記カムに一体的に設けられ、前記第1ギヤへ噛み合う第2ギヤと、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3記載のシャフト位置調整装置。 - 前記接離方向に長手とされ、前記シャフトが貫通し、内周部にて前記シャフトを前記接離方向に案内すると共に前記接離方向に対して傾斜する方向への前記シャフトの移動を前記内周部にて制限する長孔が形成されたフレームを前記支持体としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のシャフト位置調整装置。
- 前記ヘッドを支持するシャフト本体と、
前記シャフト本体の長手方向端部へ連結されると共に前記摺接部材に摺接するカムフォロワと、
を含めて前記シャフトを構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のシャフト位置調整装置。 - 前記第2カム部が前記第1カム部に一体に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のシャフト位置調整装置。
- 記録媒体の記録面或いは原稿の原稿面に対して平行に設けられ、前記記録面へ画像を形成し或いは前記原稿面の画像を読み込むヘッドと、
前記ヘッドを支持するシャフトと、
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の前記シャフト位置調整装置と、
を備える画像処理装置。
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