JP3944409B2 - バール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
この発明は、てこ、釘抜き等に用いられるバールに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば各種工事現場において構造物に打ち込まれた釘を抜く作業や構造物を破壊する作業をする際に、バールが使用される。図5は、従来から一般的に使用されているバール1の要部拡大斜視図である。同図に示されるように、このバール1はヘッド部2と柄部3とを備えている。ヘッド部2には、V字状の切込4が形成されており、釘を抜く作業において作業者が釘を係合させやすいようになっている。
【0003】
ヘッド部2と柄部3とは一体に形成されており、炭素鋼等により構成されている。作業者は柄部3を把持して作業するものであるが、柄部3はゴツゴツとしていて握りにくい。また、特に大きな釘を抜いたりする場合等の柄部3に大きな力を加える必要のある作業では、作業者は作業中に手が痛くなったり、手が滑ってしまうおそれもある。
【0004】
この問題を解決するために従来では、柄部に滑止部材が設けられたバールが提供されている(登録実用新案公報第3041003号)。この滑止部材は、合成樹脂によって筒状に形成されており、柄部を覆うように嵌め込まれている。この滑止部材は柄部に沿ってスライド自在に設けられており、作業者は所望の位置に滑止部材をセットすることができるようになっている。このような滑止部材を設けることによって、作業者は柄部を握りやすくなり、且つ最も力を入れやすい位置に滑止部材を移動させることができる。
しかしながら、かかる構成のバールでは、滑止部材がスライド可能な構造であるから、大きな釘を抜く作業等において滑止部材がスライドしてしまうことがあり、却って使いにくいものとなることがある。
【0005】
そこで、本発明は、握りやすく、しかも大きな力を加えても滑りにくい使い勝手の良いバールを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(1) 本願発明者は、柄部を握りやすくするためには柄部にグリップを設けることが有効であり、このグリップが柄部と一体的に構成されていれば、上記目的を達成できると考えた。
【0007】
(2) 本願に係るバールは、ヘッド部と、ヘッド部に延設された柄部と、柄部を覆うように設けられたグリップとを備え、グリップと柄部とが固定されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、作業者は柄部を把持しながらヘッド部を用いて釘抜き等の作業を行うことができる。このとき、柄部にはグリップが設けられているので、作業者は柄部を握りやすい。また、グリップは、柄部に固定されているから、大きな釘を抜く場合等、柄部に大きな力が加わる場合であっても、柄部に対してグリップがスライドしてしまうことがない。これにより、作業者の手が柄部に対して相対的に滑ってしまうこともない。
【0008】
(3) グリップと柄部とを固定する機構は、上記グリップに設けられた係合部と、上記柄部に設けられた被係合部とを有して構成される。
この構成によれば、係合部と被係合部とが係合することによって、柄部に対してグリップが固定される。
【0009】
上記係合部が上記グリップに形成された凸条により構成され、上記被係合部が上記グリップに形成された凹条により構成されてもよい。
かかる構成とされることによって、係合部及び被係合部がきわめて簡単な構造となる。これにより、固定機構は安価に構成され、バールの製造コストが低減される。
【0010】
また、上記柄部が当該柄部を操作する際に指を掛けることができる指掛部を備え、かつ上記グリップが上記指掛部を覆うように設けられていてもよい。
この構成では、作業者が柄部を操作する際に、指を指掛部に掛けることができるので、作業者は柄部を把持しやすくなる。その結果、作業者は作業をしやすくなり、バールは非常に使い勝手の良いものとなる。
【0011】
特に、上記グリップは、上記柄部の略全体を囲繞する筒状に形成されることができる。
グリップがかかる形状とされることによって、グリップの製造が簡単になる。また、グリップによって柄部の略全体が囲繞されるから、作業者は柄部を一層握りやすくなる。その結果、バールは一層使い勝手の良いものとなる。
【0012】
(4) 上記グリップは、アイオノマー樹脂又はエチレン−メタクリル酸共重合体により構成されうる。かかる材料が採用されることにより、グリップは、手触りが良くなり且つ効果的な滑り止めが可能となる。アイオノマー樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体は、炭素工具鋼、合金工具鋼等の金属材料からなる柄部との密着性に優れる。つまり、グリップの柄部に対する滑りが確実に防止される。その結果、バールはより一層使い勝手の良いものとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るバール10の正面図であり、図2は左側面図である。また、図3は図1におけるA−A断面拡大図である。
【0015】
図1及び図2を参照して説明する。バール10は、例えば釘抜きや構造物を破壊する作業に用いられる。バール10は、バール本体11と、これに嵌め込まれたグリップ12とを備えている。
本実施形態の特徴とするところは、作業者がバール10を把持しやすいようにグリップ12が設けられている点、及びグリップ12が柄部14に対して固定されている点である。これにより、作業中にグリップ12が柄部14に対してスライドすることがなく、また、作業者の手が柄部14に対して相対的に滑ってしまうこともない。以下、バール10の各部について詳しく説明する。
【0016】
バール本体11は、図1に示されるように、正面視で全体として細長の逆L字状に形成されており、ヘッド部13と柄部14とを備えている。バール本体11は、炭素工具鋼、合金工具鋼等により構成されており、ヘッド本体13と柄部14とは一体的に形成されている。もっとも、これらヘッド部13と柄部14とは別体として構成され、両者が既知の固着手段により固着されていてもよい。
【0017】
ヘッド部13は図1に示されるような逆L字状に形成されている。図2に示されるように、ヘッド部13はV字状の切込部15を備えている。本実施形態では、切込部15はV字状に形成されているが、かかる形状に限定されるものではなく、例えば釘を抜く作業において釘を確実に係合させることができる形状であれば、他の形状に形成されていてもよい。
【0018】
ヘッド部13の外周面は、適宜R面16として形成されている。すなわち、ヘッド部13の外周面は、できるだけ鋭利な角部が存在しないように処理されている。これにより、作業をする際の安全性が向上されている。また、ヘッド部13には凹部17が設けられており、ヘッド部13の軽量化が図られている。なお、図1では紙面に垂直な方向の手前側の凹部17のみが図示されているが、凹部17は、ヘッド部13の両側に設けられている。
【0019】
柄部14は、図1に示されるように正面視で真直な棒状に形成されている。図1及び図2に示されるように、柄部14は、その断面形状が全体として矩形状を呈している。柄部14には、後に詳述される係合溝18(被係合部)が設けられている。また、図2に示されるように、柄部14の下部19は湾曲されている。これにより、作業者が構造物の破壊作業等を容易に行うことができるようになっている。もっとも、当該下部19は湾曲されていなくても良い。
【0020】
さらに、この下部19の先端部20には、切込部21が設けられている。この切込部21は、ヘッド部13に設けられた切込部15と同様にV字状に形成されている。この切込部21の形状は、切込部15と同様にV字状に限定されるものではなく、作業者が例えば釘抜き作業等を容易に行えるような形状であれば他の形状とされてもよい。
【0021】
図1及び図3に示されるように、柄部14の角部は、ヘッド部13の外周面と同様にR面23として形成されている。これにより、作業者は、柄部14を握りやすく、作業を安全に行うことができる。
【0022】
また、ヘッド部13と柄部14との境界部分に首部22が形成されている。詳しく説明すると、ヘッド部13は、釘抜き等の作業をする際に釘等が直接当接される部分であるために厚肉に形成されており、一方、柄部14は、軽量化等のために薄肉に形成されている。このため、両者の境界部分において断面形状が急変すると大きな応力集中が発生するおそれがある。そこで、ヘッド部13と柄部14との境界部分が滑らかに連続されることによって、当該部分に生じる応力集中が緩和されている。上記首部22は、このようにヘッド部13と柄部14とが滑らかに連続されることによって形成されている。
【0023】
上記係合溝18は、柄部14の軸方向(長手方向)に沿って延びた凹条に形成されている。この係合溝18は、図2及び図3に示されるように、柄部14の両側に設けられている。図3に示されるように、係合溝18は、その内面形状が滑らかな半長円形状を呈している。すなわち、係合溝18を形成する壁面の角部は、R面24に形成されている。これにより、係合溝18が設けられたことによって柄部14に生じるであろう応力集中が緩和されている。
なお、本実施形態では長寸の係合溝18が設けられているが、柄部14の長手方向に沿って短寸の係合溝が所定ピッチで複数設けられていてもよい。
【0024】
グリップ12は、図3に示されるように、細長の筒状に形成されている。グリップ12は、柄部14を覆うように柄部14に嵌め込まれている。グリップ12の長手方向寸法は、特に限定されないが、上記係合溝18を完全に覆うことができる寸法に設定されるのが好ましい。グリップ12は、合成樹脂、ゴム等の弾性材料から成形されている。好ましくは、アイオノマー樹脂又はエチレン−メタクリル酸共重合体からグリップ12が成形される。アイオノマー樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体はカルボキシル基を備えているので、金属との密着性に優れる。アイオノマー樹脂又はエチレン−メタクリル酸共重合体が用いられることにより、柄部14とグリップ12とが堅固に固定される。
【0025】
グリップ12は、図3に示されるように4つの辺部25〜28が連続されることによって形成されている。各辺部25〜28が隣り合って形成される角部29〜32は、図に示されるように滑らかな曲面に形成されている。これにより、作業者がグリップ12を握る際に、非常に握りやすくなっている。
【0026】
グリップ12の辺部26、28には、それぞれ、内側に突出した係合突片33、34(係合部)が形成されている。各係合突片33、34は、上記辺部26、27の中央部の肉厚を他の部分よりも厚くすることにより構成されている。各係合突片33、34は、上記辺部26、28の長手方向に沿って延びた凸条に形成されている。各係合突片33、34の長手方向寸法は、上記係合溝18の長手方向寸法に対応している。
【0027】
各係合突片33、34の外周面の形状は、上記係合溝18の内壁面の形状に対応している。したがって、グリップ12を柄部14に嵌め込んだ状態では、上記各係合突片33、34が上記係合溝18にぴったりと嵌め込まれ、グリップ12が柄部14に係止固定される。つまり、これら係合突片33、34と係合溝18とにより、グリップ12が柄部14に固定されるための固定機構が構成されている。
ここで、グリップ12を柄部14に取り付ける作業は、バール本体11を金型内にインサートしながらグリップ12を成形することによって行われる。もっとも、柄部14とは別に成形されたグリップ12が柄部14に嵌め込まれてもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、各係合突片33、34が長寸の単一凸条に形成されているが、これは、各係止突片33、34がぴったりと上記係合溝18に嵌め込まれるようにするためである。前述のように柄部14に複数の短寸の係合溝が設けられた場合には、これに対応して、各係合突片33、34が短寸の複数の凸条に形成されてもよい。もっとも、本実施形態において(上記係合溝18が設けられている場合)、上記係合突片33、34の代わりに、短寸の複数の凸条が設けられていてもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係るバール10の使用要領について、バール10の各部の作用効果と共に説明する。
【0030】
前述のように、このバール10はたとえば釘抜きや構造物を破壊する作業に用いられうる。作業者は、バール10の柄部14を把持する。そして、例えば釘抜き作業をする場合には、作業者は、ヘッド部12を操作して対象となる釘と切欠部15とを係合させ、バール10をてことして用いて当該釘を抜くことができる。また、構造物を破壊する作業をする場合には、柄部14の下部19を構造物の所定部に差し込む等して、バール10をてことして用いて当該構造物を破壊することができる。
【0031】
このとき、柄部14にグリップ12が設けられているので、作業者は柄部14を握りやすい。また、グリップ12が柄部14に固定されているから、大きな釘を抜く作業をする場合等、柄部14に大きな力が加わる場合であっても、柄部14に対してグリップ12がスライドしてしまうことがない。これにより、作業者の手が柄部14に対して相対的に滑ってしまうこともない。
したがって、柄部14に大きな力を加える必要がある作業をする場合であっても、作業者は良好に且つ安全に作業を進めることができる。
【0032】
本実施形態では、上記グリップ12に設けられた係合突片33、34が上記柄部14に設けられた係合溝18に嵌め込まれることによって、グリップ12が柄部14に固定されているから、グリップ12を固定するための機構(構造)が簡単であり、しかもグリップ12が確実に固定されるという利点がある。
しかも、係合突片33、34はグリップ12と一体的に形成された凸条により構成され、係合溝18は柄部14に形成された凹条により構成されているから、これらをきわめて簡単且つ安価に構成することができる。これにより、バール10の製造コストが低減されるという利点もある
【0033】
また、グリップ12が柄部14を覆う筒状に形成されているから、グリップ12の構造が簡単であり、その製造が簡単である。その結果、バール10の製造コストの上昇は抑えられる。さらに、グリップ12によって柄部14の略全体が覆われるから、作業者は柄部14を一層握りやすくなる。その結果、バール10はきわめて使い勝手の良いものとなる。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態が説明される。
図4は、他の実施形態に係るバール40の正面図である。
【0035】
このバール40と前述のバール10とが相違するところは、柄部14が指掛部38を備えている点、及びグリップ12がこの指掛部38を覆うように形成されている点である。なお、バール40のその他の構成は、上記バール10と同様である。したがって、それらの構成についての説明は省略される。
【0036】
上記指掛部38は、作業者が柄部14を把持する際に指を掛けることができる形状となっている。具体的には、指掛部38は、柄部14の上部41により構成されており、当該上部41の幅寸法dが他の部分の幅寸法よりも大きくなるように設定されている。すなわち、当該上部41が他の部分に比べてさらに扁平した形状に形成されており、当該上部41と他の部分とは滑らかに連続されている。そして、この連続部分の周面が柄部14の内側に凹んだ曲面を形成しており、この曲面によって、指掛部38が構成されている。
【0037】
グリップ12の上部42は、図4に示されるように、指掛部38を覆うように開拡されている。当該上部42を有するグリップ12は、予め成形型により成形されることができる。もっとも、このバール40においてもグリップ12がいわゆるインサート成形により成形されることができ、その場合には、グリップ12の成形と同時に上記指掛部38がグリップ12の上部42によって覆われる。
【0038】
このバール40は以上のような構成であるから、作業者が柄部14を操作する際に、指を指掛部38に掛けることができる。したがって、作業者は柄部14を一層把持しやすくなり、強い力を必要とする作業であっても容易に行うことができる。その結果、バール40は非常に使い勝手の良いものとなる。
【0039】
【発明の効果】
このように本発明によれば、柄部にグリップが設けられているので、作業者は柄部を握りやすい。また、グリップは柄部に固定されているので、相対的に柄部に対して手が相対的に滑る(スライドする)ことがなく、これにより柄部に大きな力を加える必要がある作業をする場合であっても作業者は良好に作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るバールの正面図である。
【図2】図2は、図1における左側面図である。
【図3】図3は、図1におけるA−A断面拡大図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係るバールの正面図である。
【図5】図5は、従来から一般的に使用されているバールの要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
10、40・・・バール
12・・・グリップ
13・・・ヘッド部
14・・・柄部
18・・・係合溝
33、34・・・係合突片
38・・・指掛部
41・・・柄部の上部
42・・・グリップの上部
Claims (3)
- ヘッド部と、ヘッド部に延設された柄部と、柄部を覆うように設けられたグリップとを備えており、
この柄部が金属材料からなり、
このグリップがアイオノマー樹脂又はエチレン−メタクリル酸共重合体からなり、
このグリップが柄部に固定されており、
このグリップを柄部に固定する機構が、係合部と被係合部とからなり、
この係合部がグリップに形成された凸条であり、被係合部が柄部に形成された凹条であるバール。 - 上記柄部が当該柄部を操作する際に指を掛けることができる指掛部を備えており、上記グリップが上記指掛部を覆うように設けられている請求項1に記載のバール。
- 上記グリップが上記柄部の略全体を囲繞する筒状に形成されている請求項1又は2に記載のバール。
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