JP3944361B2 - グランドパッキンの構成材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、編組パッキンであるグランドパッキンの構成材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
グランドパッキンの構成材としては、一般に、図19に示すような格子編み機101を使用して直線状に格子編み編組された編組紐108が周知である。かかる格子編み機101によれば、基盤103に設けた編糸繰出器104…から編糸141…を組成点106へと導いた上、編糸繰出器104…を回行駆動して、編糸141…を所定の編糸経路上を移動しつつ相互に交絡させることにより、図18に示す如く、断面正方形をなす編組紐108を直線状に格子編み編組することができる。なお、編組紐108は、組成点106の上方位置に設けられた巻取装置102により、組成点106から延びる直線状経路上を移送される。
【0003】
而して、グランドパッキンは、このようにして得られた編組紐108を所定寸法に裁断した上、図16に示す如く、螺旋状に変形させた状態でスタフィングボックスに装填されるか、或いは、所定寸法に裁断した編組紐108を環状に変形させたものを、図17に示す如く、複数段積み重ねた状態でスタフィングボックスに充填される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の編組紐108は、図18(A)に示す如く直線状に編組されたものであるから、図20(A)に示す如く螺旋状又は環状に変形させた場合、軸線方向において、基準面(編組紐108の断面中心を通過して内外周面108b,108cに平行する面)X−Xより外周面108b側においては引張力Fが作用すると共に内周面108c側には圧縮力fが作用することになる。したがって、内周面108cが図20(A)に示す如く凹凸状に変形して、相手軸部材との接触が不均一となり、更に上記した引張力F及び圧縮力fの作用により各断面における密度分布が不均一となる上、断面形状が図20(B)に示す如く台形状に変形する。また、グランドパッキンの構成材として使用される編組紐108にあっては、図19に鎖線図示する如く、編糸141より弾性に優れる弾性糸151…を編糸141と交絡しない状態で組成点106に供給して、編糸141…による編組層中に弾性糸151…を貫通状に配置しておくことにより、グランドパッキンの弾性(復元性)を向上させるようにすることも試みられているが、かかる場合にも、基準面X−Xより内周面108c側に配置された弾性糸151は、上記した圧縮力fにより、図20(A)に示す如く、波状に変形して、弾性向上機能を効果的に発揮することができないし、密度分布の更なる不均一度を増大させることになる。
【0005】
これらのことから、従来の編組紐108を使用してグランドパッキンを構成した場合には、シール面への接触が不均一となる等により良好なシール機能を発揮させることができない。また、十分な弾性(復元性)を確保することができず、パッキン押さえによる締付面圧を必要以上に高くする必要が生じたり、締付面圧を増大させる所謂増し締め作業を頻繁を行う必要がある。
【0006】
かかる問題を解決するために、従来からも、適宜の金型を使用して、編組紐108を螺旋状又は環状に加圧成形して、断面形状及び内周面形状を適正に修正することが行われている。例えば、螺旋状のグランドパッキンPについては、図21(A)に示す如く、所定寸法の裁断した編組紐108を円柱状の芯型110に螺旋状金属板であるスペーサ111を介在させた状態で螺旋状に巻きつけ、これら108,110,111を有底円筒状の外型112内にセットした上で、同図(B)に示す如く、円筒状の押し型113により加圧成形することによって、断面形状が適正な方形をなし且つ内周面を含む表面が凹凸のない平滑面をなす螺旋紐形状に修正するようにしている。
【0007】
しかし、このような金型成形によっては、グランドパッキンの外観形態を修正できるにすぎず、密度の不均一や弾性糸151の変形を修正することができない。すなわち、編組紐108を芯型110に螺旋状に巻きつけた場合、その断面形状は、上記した如く、外周面108b側に引張力Fが作用すると共に内周面108c側に圧縮力fが作用することから、内周面108c方向に拡がる台形形状に変形する(図20(B),図21(A)参照)。そして、かかる変形状態では、圧縮力fが作用する内周面108c側の密度が引張力Fが作用する外周面108b側より高くなる。したがって、このような台形形状の断面を、図21(B)に示す如く、方形状に加圧,修正した場合、内周面108c側の密度は更に高くなり、外周面108b側との間の密度差は加圧成形前より更に大きくなる。また、外観形態上、内周面108cの凹凸も加圧成形によって平滑面に修正されるが、内周面108c側の密度分布は均一とならず、編組紐108(螺旋状パッキンP)の長手方向における内周面108c側の密度分布は更に不均一となる。すなわち、内周面108cの凸部と凹部とでは加圧修正による密度変化が異なり、例えば凸部については加圧修正により密度が更に高くなることから、内周面108c側においては更に密度分布が不均一となる。さらに、上記した基準面X−Xより内周面側の弾性糸151の変形(図20(A))は上記した加圧成形によっては修正されず、変形度を却って増大させることになる。
【0008】
したがって、金型成形(加圧成形)を施すことによっては、グランドパッキンにおける上記した機能上の問題を解決することはできない。しかも、このような金型成形を編組紐108に施すことは、グランドパッキンを安価且つ容易に提供し得ず、グランドパッキンの製作経済上、極めて不利である。
【0009】
本発明は、このような問題を生じることなく、グランドパッキンとして螺旋状又は環状をなす形態で好適に使用でき、極めて優れたシール機能を発揮させることができるグランドパッキンの構成材を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成すべく、複数本の編糸を一定の組成点において編組させると共に、当該組成点で生成される編組部分を、順次、組成点から延びる螺旋状経路上を強制移送せしめるべく、一定方向に回転し且つ一定方向に軸線移動する巻取軸であって外周面に螺旋状の鍔部を突設した巻取軸に当該鍔部間に挟持された状態で巻き取ることによって、螺旋状に編組された断面方形の編組紐であって、編糸と交絡することなく編組紐の長手方向に延びる、編糸より高弾性の複数本の弾性糸を、編組紐の断面中心を通過して当該紐の内外周面に平行する基準面より当該紐の外周面側の編組層部分(以下「外周面側層部分」という)に、貫通状に配置して、この弾性糸の存在により、当該編組紐の断面形状が方形に保持されると共に当該外周面側の編組層部分の編組密度及び弾性力が該基準面より当該内周面側の編組部分と同等になるように構成したことを特徴とするグランドパッキンの構成材を提案する。
【0011】
かかるグランドパッキンの構成材たる螺旋状の編組紐にあっては、複数本の弾性糸を、編組紐の断面において、編組紐の外周面と平行する並列状態で配置しておくことが好ましく、更に編組紐の断面において編組紐の外周面と平行する並列状態にある弾性糸群を、編組紐の内外周面に直交する方向に複数段配置しておくことも可能であ、その配置本数も適宜に設定できる。
【0012】
また、編組紐が断面正方形の格子編み構造をなすものである場合等、編組紐の断面形状が方形をなしている場合には、その各角部に編糸と交絡することなく編組紐の長手方向に延びる芯糸を貫通状に配置しておくことができる。この場合において、芯糸として、弾性糸と同様に、編糸より高弾性のものを使用しておくことができる。
【0013】
また、編組紐を径の異なる螺旋状編組紐が連続してなるものとしておくことができる。このようにしておけば、一本の編組紐から異なる軸径に適用できる複数種のグランドパッキンを採取することができる。ところで、グランドパッキンは、所定の軸径範囲毎に、異なる断面積のものが使用される。例えば、軸径が大きくなるに従い、使用されるグランドパッキンの断面積も大きくなる。したがって、上記螺旋状編組紐は、その径に応じた断面積のものとしておくことが好ましい。
【0014】
ところで、螺旋状の編組紐は、組成点からの巻き取り方法ないし巻き取り装置を工夫することにより、公知の編組機(格子編み機等)を使用して、容易に得ることができる。すなわち、複数本の編糸を一定の組成点において編組させると共に、組成点で生成される編組部分を、順次、組成点から延びる螺旋状経路上を強制移送せしめるべく、一定方向に回転し且つ一定方向に軸線移動する巻取軸に巻き取ることによって、螺旋状の編組紐を得るようにするのである。この場合、組成点には、編糸に加えて、編糸と交絡させない弾性糸を供給する(必要に応じて、更に芯糸を供給する)。また、外径の異なる複数の巻取軸部分が軸線方向に縦列する巻取軸を使用することにより、断面積及び径の異なる複数の螺旋状編組紐部分が連続する編組紐を得ることが可能となる。また、編組紐を高精度の断面形状をなすものとするためには、巻取軸の外周面に螺旋状の鍔部を突設して、編組紐が鍔部間に挟持された状態で巻き取られるようにしておくことが好ましい。この場合、鍔部が複数部分に分割されており、巻取軸の外周面に着脱自在であることが好ましい。特に、使用する編組機が断面方形の編組紐を得るものである場合には、巻取軸を断面方形の鍔部を有する角ネジ形状をなすものとしておくことが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図17に基づいて具体的に説明する。
【0016】
この実施の形態における本発明に係るグランドパッキンの構成材は、図1、図2、図6、図8及び図9(A)に示す如く、複数本の編糸41…を使用して螺旋状に編組された断面正方形の編組紐8であって、その断面中心80を通過して内外周面8b,8cに平行する基準面X−Xより外周面8b側の編組層部分(外周側層部分)8Aに、編糸41と交絡することなく編組紐8の長手方向に延びる複数本の弾性糸51c…を貫通状に配置すると共に、外周側層部分8Aの角部及び基準面X−Xより内周面8c側の編組層部分(内周側層部分)8Bの角部に、編糸41と交絡することなく編組紐8の長手方向に延びる4本の芯糸51a,51a及び51b,51bを貫通状に配置したものである。
【0017】
この編組紐8は、例えば、図3〜図5に示す如く、公知の編組装置1と特殊な巻取装置2とからなる編組機により製造される。
【0018】
すなわち、編組装置1は、図3〜図5に示す如く、装置基盤3上に複数の編糸繰出器4…(一部のみ図示)を移動自在に設けると共に複数の芯糸繰出器5a…(一部のみ図示)及び弾性糸繰出器5b…(一部のみ図示)を固定し、各編糸繰出器4から繰り出した編糸41並びに各芯糸繰出器5aから繰り出した芯糸51a,51b及び弾性糸繰出器5bから繰り出した弾性糸51cを基盤3の直上方位に設定した組成点6に導いて、基盤3に内装した駆動機構(図示せず)により編糸繰出器4…を、編糸41…を所定の編糸経路7…上を交互に交差するように移動せしめるべく、回行移動させることにより、編糸41…による編組層8A,8Bの一定位置に各芯糸51a,51b及び弾性糸51cが編糸41…と交絡することなく配置された断面正方形の編組紐8を得るように構成されたものであり、冒頭で述べた一般的な格子編み機(巻取装置を除く)101と同様の構成,機能を有するものである。ところで、かかる格子編み機101によって得られる編組紐8の断面形状は、一般に、編糸経路数Mないし編糸本数Nによって決定され、両者M,N間にはN=2M2+2M−4の関係があるが、この例では、M=4,N=36として、図6に示す如く、36本の編糸41…(一部のみ図示)が第1〜第4編糸経路7a,7b,7c,7d上を移動することにより、組成点6において断面正方形の編組部分8aを順次形成して、当該編組部分8aが連続してなる編組紐8を得るようにしてある。また、各芯糸51a,51bは、図6に示す如く、編組紐8の角部を構成する第1及び第4編糸経路7a,7dの各コーナ部の空隙を通過するように、芯糸繰出器5aから組成点6へと導かれている。ところで、M=4とした場合、外側編糸経路7a,7b,7c,7dの交絡部間には、図6に示す如く、基準面X−Xより外周面8b側において3つの外周面側空隙8d…と2つの基準面側空隙8e…とが形成されるが、この例では、3本の弾性糸51c…を、外周面側空隙8d…を通過するように弾性糸繰出器5b…から組成点6へと導くことによって、外周側層部分8Aにおいて外周面8bと平行する並列状態で配置させている。
【0019】
編糸41…としては、編組紐8(グランドパッキン)の用途,使用条件に応じて同種のもの又は異種のものを任意に選択することができ、例えば、アラミド繊維,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維,炭素繊維,炭化繊維等の有機,無機繊維からなるものや膨張黒鉛製のもの(膨張黒鉛シートを細幅(例えば、5mm以下)の帯状に裁断したものを複数枚重ね合わせ、その表面をアラミド繊維等でニット編み又は袋編み被覆してなる糸)等を使用することができる。また、弾性糸51cとしては、ガラス繊維,炭素繊維(編糸41として弾性の低いピッチ系の炭素繊維を使用した場合),セラミック繊維等の有機,無機繊維からなるものやゴム糸等のように、編糸41より弾性に優れたもの(材質の異なる複数種の編糸41…を使用する場合には、最も弾性に優れる編糸41より弾性に優れたもの)が使用される。また、芯糸51a,51bは、編組紐8の角部形状を維持するために使用するものであるが、必要に応じて、弾性糸51cと同様に高弾性を有するものを使用することができる。この例では、編糸41…を全て同質のものとし、芯糸51a,51bとして弾性糸51cと同質の高弾性糸を使用している。
【0020】
巻取装置2は、図3〜図5に示す如く、断面が一様の円形をなす巻取軸9と、巻取軸9を回転駆動させる回転機構10と、巻取軸9を軸線方向に移動(軸線移動)させる送り機構11とを具備する。
【0021】
回転機構10は、図3及び図4に示す如く、巻取軸9の両端部に着脱自在な連結器12,12を介して同心状に連結された一対の支軸13,13と、支軸13,13を回転自在に支持する軸受体14,14と、一方の支軸13にモータ出力軸を連結して、巻取軸9を一定方向(矢印方向)に回転駆動させる変速機付きの駆動モータ15とを具備する。送り機構11は、図3及び図4に示す如く、編組装置1の上方位において装置フレーム16に水平に軸受支持17,17されたネジ軸18と、ネジ軸18に螺合された一対の雌ネジ筒19,19と、ネジ軸18を正逆転駆動させる変速機付きの送りモータ20とを具備して、送りモータ20によりネジ軸18を正逆転駆動することにより、両雌ネジ筒19,19を所定の間隔を隔てた状態で軸線方向に螺送させるようになっている。
【0022】
巻取軸9は、図3及び図4に示す如く、軸受体14,14を連結体21,21を介して雌ネジ筒19,19に連結固定することによって、外周面9a上に組成点6が位置する水平状態で回転可能且つ軸線方向移動可能に支持されている。巻取軸9と組成点6との相対位置関係は、図5及び図6に示す如く、巻取軸9の外周面9aにおける巻取軸9の回転により上昇移動する部分9b(図8参照)の適所であって組成点6における編組作用を妨げない個所(この例では、巻取軸9の中心を通過する水平面上ないしその近傍の個所)に、組成点6で編組されつつある編組部分8aの一側面(編組紐8の内周面8cを形成する面)が接触するように設定されている。なお、軸受体14と雌ネジ筒19との上下間隔は、連結体21を油圧シリンダ等の上下伸縮構造のものにすること又は連結体21に軸受体14又は雌ネジ筒19を昇降可能に連結しておくこと等によって、任意に変更できるようになっており、軸受体14と雌ネジ筒19との上下間隔を変更することによって、編糸繰り出し部から組成点6までの距離H(図3(A)参照)を編組条件に応じて適正に調整しうるようになっている。また、巻取軸9の外周面9aには、編組紐8を確実に巻き取るべく、編組紐8の内周面8cとの間に十分な摩擦係合力が生じるような工夫が施されている。例えば、外周面9aに微細な突起,針を突設しておくか、高摩擦材をコーティングしておく。
【0023】
したがって、巻取軸9は、上記した組成点6との相対位置関係を保持した状態で、ネジ軸18を正転駆動させることにより軸線方向に水平移動される。すなわち、ネジ軸18を正転駆動させることにより、巻取軸9は、雌ネジ筒19,19(及び各連結器12,支軸13,軸受体14,連結体21)を介して、組成点6が巻取軸9の始端部に位置する巻取り開始位置(図3(A)に示す位置)から組成点6が巻取軸9の終端部に位置する巻取り終了位置(図4(C)に示す位置)へと一定速度で水平移動(軸線方向移動)される。なお、ネジ軸18を逆転駆動させることにより、巻取軸9を巻取り開始位置へと復帰させることができる。
【0024】
なお、巻取軸9の回転速度(巻取り速度)及び軸線方向移動速度(送り速度)は、各モータ15,20の変速機により、編糸経路7…上における編糸41…の移動速度等に応じて適宜に設定することができる。
【0025】
而して、編組紐8は、上記した編組装置1及び巻取装置2からなる編組機を使用して、次のように編組される。
【0026】
巻取軸9を巻取り開始位置に位置させた状態で、巻取軸9を回転駆動させると共に編組装置1による編組作用を開始させる(図3(A))。更に、ネジ軸18を正転駆動させて、巻取軸9を巻取り開始位置から巻取り終了位置へと一定速度で移動させると、組成点6において編組部分8aが順次形成されて、それが順次組成点6から延びる螺旋状経路上を強制移送せしめられるべく巻取軸9に巻き取られていく(図3(B),図5)。すなわち、図7に示す如く、編組部分8aの連続的な形成により得られる編組紐8が、巻取軸9の外周面9aに螺旋状をなして巻き取られていく。そして、巻取軸9が巻取り終了位置に位置して、編組紐8が巻取軸9の始端部から終端部に亘る部分に螺旋状に巻き取られると(図4(C)と、各装置1,2を停止した上、連結器12,12を操作して、巻取軸9を巻取装置2から取り外す(図4(D)。しかる後、巻取軸9に巻き取られた編組紐8から巻取軸9を引き抜くことにより、図1に示す如き螺旋状の編組紐8が得られる。
【0027】
このように、組成点6から生成する編組紐8を巻取軸9に螺旋状に巻取りながら、編組部分8aを順次生成させるようにすると、組成点6においては、常に、編組部分8aが巻取軸9の外周面9aに一致する内径を有する円弧形状をなした形態で形成されることになる。すなわち、編糸41は内外周面8b,8cで交互に折り返しつつ他の編糸41…と交絡されるが、巻取軸9による編糸41の送り速度が編組紐8ないし編組部分8aにおける外周面8b側と内周面8c側とで異なることから、図8に示す如く、外周面8b側の折り返しピッチPbは内周面8c側の折り返しピッチPcより大きくなる。その結果、組成点6においては円弧形状をなす編組部分8aが順次形成されていき、巻取軸9の外周面9a上を螺旋状に延びる編組紐8が生成されることになるのである。したがって、内外周面8b,8cが歪となるようなことがなく、平滑な湾曲面となる。また、編組紐8の長手方向に貫通する芯糸51a,51b及び弾性糸51cも、図8に示す如く、波形に変形することなく、内外周面8b,8cに沿って螺旋状に延びることになる。
【0028】
ところで、外周面8b側では、上記した如く折り返しピッチPbが大きいため、内周面8c側に比して編目が粗くなる。したがって、編糸41に作用するテンションの影響によって、断面形状が、図9(B)に示す如く、外周面8b側が狭窄された台形形状となり易い。
【0029】
しかし、外周側層部分8Aには、内周側層部分8Bには存在しない弾性糸51c…が配置されていることから、この弾性糸51c…の存在により外周面8b側の狭窄が阻止されることになる。その結果、断面形状が、図9(A)に示す如く、略完全な方形(正方形)となる。また、編目が粗くなる外周側層部分8Aの編組密度及び弾性力(復元力)も、弾性糸51c…の存在により、内周側層部分8Bと同等となり、編組紐8全体の復元力の向上及び密度分布の均一化が図られる。
【0030】
而して、かかる編組紐8を適当寸法に裁断することによって、冒頭で述べた如き金型成形を行うことなく、図16又は図17に示すグランドパッキンPを容易に得ることができる。このように螺旋状に編組された編組紐8から得たグランドパッキンPにあっては、各断面の密度分布,形状が一定であること、内外周面8b,8cが平滑な湾曲面をなしていること、及び弾性材である弾性糸51c(及び芯糸51a,51b)が内外周面8b,8cに平行し且つ変形していない適正な湾曲線状に配置されていることから、パッキン押さえによる締付面圧を必要以上に高くすることなく、スタフィングボックス内に密に充填され得て、良好なシール機能が発揮される。また、弾性材である弾性糸51c(及び芯糸51a,51b)の存在によりパッキンPの弾性機能(復元力)が効果的に増大されて、頻繁な増し締め作業を行う必要がなく、長期に亘ってメンテナンスフリーとなる。
【0031】
ところで、編組紐8の内径寸法は、巻取軸9の外周面9aの径(軸径)によって決定される。したがって、巻取軸9の軸径は、編組紐8を構成材として使用しようとするグランドパッキンPの内径に応じて設定しておく必要がある。但し、螺旋状に編組された編組紐8は、その内径寸法を変更すべく、変形(縮径変形又は拡径変形)させても、その変形がある程度の範囲で行われる限り、上記した機能,効果が損なわれることがない。したがって、編組紐8は、このような範囲内において、内径の異なる複数種のグランドパッキンについて適正に汎用させることができる。
【0032】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0033】
例えば、弾性糸51cの本数及び外周側層部分8Aにおける配置は任意であり、図10に示す如く、外周面側空隙8d…のみならず、基準面側空隙8e…にも配置することができる。すなわち、編組紐8の断面において外周面8bと平行する並列状態で配置されている弾性糸群51c…を、当該外周面8bに直交する方向に複数段配置するようにすることができる。また、芯糸51a,51bは必要に応じて使用すればよく、例えば、図11に示す如く、芯糸51a,51bを設けないようにすることも可能である。また、図6及び図10に示すものにおいて、芯糸51a,51bとして弾性糸51cと同様の高弾性糸を使用しておくこともできる
【0035】
また、図12〜図14に示す如く、巻取軸9の外周面9aに螺旋状の鍔部22を突設して、編組紐8が鍔部22,22間に挟持された状態で巻き取られるようにしておくことができる。このようにすれば、編組紐8の巻取り時における断面形状の変形を効果的に防止し得て、断面一様の編組紐8をより確実に編組することができる。特に、上記した格子編み編組紐8のような角打組物(断面方形の編組構造物)を生成する場合にあっては、図12及び図14に示す如く、鍔部22の断面形状を方形として、巻取軸9を角ネジ形状をなすものとしておくことにより、適正な方形断面をなす編組紐8を確実に得ることができる。このような鍔部22を設ける場合には、巻き取った編組紐8の巻取軸9からの離脱を容易に行うために、鍔部22を、図12〜図14に示す如く、複数部分22a…に分割して、これらの部分22a…を巻取軸9の外周面9aにボルト22b…等により着脱自在に固定するように工夫しておくことが好ましい。
【0036】
また、巻取軸9を、図15に例示する如く、外径の異なる複数の巻取軸部分91,92,93が軸線方向に縦列するものに構成しておいてもよい。このようにすれば、径D1,D2,D3(D1<D2<D3)の異なる螺旋状編組紐81,82,82を連続的に製造することができ、つまり径の異なる螺旋状編組紐81,82,83が連続してなる編組紐8を得ることができ、一本の編組紐8から径の異なる複数種のグランドパッキンを採取することができる。この場合、太さが一定長毎に段階的に変化する編組糸を使用する等により、螺旋状編組紐81,82,83がその径に応じた断面積のものに編組されるようにしておくことが好ましい。なお、このような巻取軸9を使用する場合においても、各巻取軸部分91,92,93の外周面に前記した鍔部22に相当するものを突設しておくことが可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明のグランドパッキンの構成材によれば、冒頭で述べた問題を生じることなく、良好なシール機能を発揮することができ且つ高い復元力により長期に亘ってメンテナンスフリーとなる極めて実用的なグランドパッキンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るグランドパッキンの構成材である螺旋状の編組紐を示す一部縦断の斜視図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明に係る構成材を製造するための編組機の一例を示す側面図である。
【図4】図3と異なる作用状態を示す図3相当の側面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う縦断正面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図であり、組成点における編糸経路をモデル化して示すものである。
【図7】図3(B)の要部の拡大詳細図であり、編組紐が巻取軸に巻き取られた状態を示す側面図である。
【図8】図5の要部拡大図である。
【図9】(A)図は編組紐の断面図(断面は図8のIX−IX線に沿う)であり、(B)図は弾性糸を有しない場合の編組形態を示す(A)図相当の断面図である。
【図10】編組紐の変形例を示したもので、図6相当の断面図である。
【図11】編組紐の他の変形例を示したもので、図6相当の断面図である。
【図12】巻取軸の変形例を示す一部切欠の側面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿う縦断正面図である。
【図14】図12に示す巻取軸に編組紐を巻き取らせた状態を示す一部縦断側面図である。
【図15】編組紐の更に他の変形例を示しており、巻取軸に編組紐を巻き取らせた状態を示す一部縦断側面図である。
【図16】グランドパッキンの使用形態を示す斜視図である。
【図17】図16と異なるグランドパッキンの使用形態を示す斜視図である。
【図18】(A)図は従来の編組紐の要部を示す正面図であり、(B)図は(A)図のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】従来の編組紐を製造する編組機の一例を示す正面図である。
【図20】(A)図は従来の編組紐を湾曲させた状態を示す要部の正面図であり、(B)図は(A)図のXX−XX線断面図である。
【図21】従来の編組紐を螺旋状のグランドパッキンに金型成形する場合の工程を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
6…組成点、8,81,82,82…編組紐、8a…編組部分、8b…組紐の外周面、8c…編組紐の内周面、8A…外周側層部分(基準面より編組紐の外周面側の編組層部分)、8B…内周側層部分(基準面より編組紐の内周面側の編組層部分)、9…巻取軸、41…編糸、51a,51b,…芯糸、51c…弾性糸、80…断面中心、P…グランドパッキン、X…基準面

Claims (7)

  1. 複数本の編糸を一定の組成点において編組させると共に、当該組成点で生成される編組部分を、順次、組成点から延びる螺旋状経路上を強制移送せしめるべく、一定方向に回転し且つ一定方向に軸線移動する巻取軸であって外周面に螺旋状の鍔部を突設した巻取軸に当該鍔部間に挟持された状態で巻き取ることによって、螺旋状に編組された断面方形の編組紐であって、
    編糸と交絡することなく編組紐の長手方向に延びる、編糸より高弾性の複数本の弾性糸を、編組紐の断面中心を通過して当該紐の内外周面に平行する基準面より当該紐の外周面側の編組層部分に、貫通状に配置して、この弾性糸の存在により、当該編組紐の断面形状が方形に保持されると共に当該外周面側の編組層部分の編組密度及び弾性力が該基準面より当該内周面側の編組部分と同等になるように構成したことを特徴とするグランドパッキンの構成材。
  2. 複数本の弾性糸が、編組紐の断面において、編組紐の外周面と平行する並列状態で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載するグランドパッキンの構成材。
  3. 編組紐の断面において編組紐の外周面と平行する並列状態で配置されている弾性糸群が、当該外周面に直交する方向に複数段配置されていることを特徴とする、請求項2に記載するグランドパッキンの構成材。
  4. 編組紐の断面形状が方形をなしており、その各角部に編糸と交絡することなく編組紐の長手方向に延びる芯糸が貫通状に配置されていることを特徴とする、請求項1、請求項2又は請求項3に記載するグランドパッキンの構成材。
  5. 芯糸が編糸より高弾性のものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載するグランドパッキンの構成材。
  6. 編組紐が、外径の異なる複数の巻取軸部分が軸線方向に縦列してなる巻取軸を使用して編組されたものであって、径の異なる螺旋状編組紐が連続してなるものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載するグランドパッキンの構成材。
  7. 編組紐が格子編み構造をなすものであることを特徴とする、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6に記載するグランドパッキンの構成材。
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