JP3944040B2 - 超音波探触子及びその製造方法 - Google Patents

超音波探触子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の振動素子からなるアレイ振動子を有する超音波探触子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体内の組織について三次元超音波画像を形成するために三次元データ取込用超音波探触子が用いられる。かかる超音波探触子は、複数の振動素子かならる2Dアレイ振動子(スパースアレイ型振動子を含む)を有する。2Dアレイ振動子の背面側には、2Dアレイ振動子から背面側に放射された不要な超音波を吸収するバッキングが設けられる。そのバッキング内には、複数の振動素子に対して個別的に接続された複数のリードが埋設される。バッキングの前面には、各リードの一方端部に対応した複数のパッド(電極パッド)が形成され、各パッドは各振動素子の電極面に接合される。一方、バッキングの後面(背面)においても、各リードの他方端部に複数のパッドが形成される。それらのパッドに対しては個別的に信号線を接続する必要があるが、一般にその作業は極めて煩雑である。
【0003】
下記の特許文献1には、バッキングの背面に接合される中継基板と、その中継基板に接続される複数の回路基板とが開示されている。ここで、中継基板の背面には複数のピン孔が形成され、一方、各回路基板にはその端部に複数のピンが形成されている。そして、複数のピンを複数のピン孔に挿入することによって、中継基板に各回路基板が物理的に接続され、また同時に電気的な接続が図られている。中継基板は、複数の回路基板の積層体の形状に合わせて、バッキングよりも大きく形成されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−292496公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来から、バッキングに設けられた各リードに信号線を接続する作業をより簡易に行いたいという要請がある。上記特許文献1に記載されたピンを用いた接続は、その意味において簡便であるが、実際には複数のピン孔に複数のピンを挿入するのはその位置決めが容易ではなく、また曲がったピンが1本でも存在すると、その差込に多大な労力を要する。また、バッキングの背面に接合される中継基板が大型であると、超音波探触子における先端部近傍に脹らみが生じたり、超音波探触子が全体的に太くなったりし、超音波探触子の操作性の低下を招く。更に、一般に、シグナル間のクロストークをより低減するための構造が要望されている。
【0006】
本発明の目的は、超音波探触子において、リードと信号線の接続を簡単かつ確実に行えるようにすることにある。
【0007】
本発明の他の目的は、超音波探触子の先端部の肥大化を回避できる構造を実現することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、超音波探触子の電気的な特性を良好にすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明は、複数の振動素子からなるアレイ振動子と、前記アレイ振動子の背面側に設けられ、前記複数の振動素子に電気的に接続される複数のリードが挿通された背面側部材と、シグナルライン列が形成された複数のフレキシブル回路基板と、を含み、前記背面側部材の所定面には、前記複数のリードに電気的に接続された複数のパッド列が形成され、且つ、前記複数のパッド列に対応して複数の差込溝が形成され、前記フレキシブル回路基板の差込端部が前記差込溝に差し込まれ、それらの差込状態において、前記パッド列を構成する各パッドと、前記シグナルライン列を構成する各シグナルラインとが電気的に接続され、前記複数のフレキシブル回路基板における複数の差込端部の相互間且つ前記背面側部材の所定面上に、前記各パッドと前記各シグナルラインとの電気的な接続部分が形成された、ことを特徴とする超音波探触子に関する
【0010】
上記構成によれば、背面側部材の所定面に形成された差込溝へフレキシブル回路基板の差込端部が差し込まれ、これにより両者の物理的な連結(仮固定でもよい)が図られ、その一方、パッド列を構成する各パッドと、シグナルライン列を構成する各シグナルラインとが、例えばはんだ付けなどによって、電気的に接続される。差込溝への差込端部の差し込みという簡単な手法で両者の連結できるので、位置決めが容易で作業性がよい。また、構造的にも強固であるので、物理的及び電気的な信頼性を高められる。特に、背面側部材に対して、複数のフレキシブル回路基板を接続する場合においては、既に接続したフレキシブル回路基板を必要に応じて屈曲させつつ、つまり作業スペースを確保しながら、次のフレキシブル回路基板を差し込むことも可能であるので作業性がよい。また、フレキシブル回路基板であるので、必要に応じて超音波探触子内において配置自由度を確保できる。
【0011】
上記において、アレイ振動子は、2Dアレイ振動子であるのが望ましいが、そのバリエーションとしてのスパースアレイ型振動子であってもよい。背面側部材は、バッキング単体、それに背面基板を接合させたもの、それ以外の構造として構成できる。パッドは、リードの端部そのものであってもよいし、その端部に電極を設けたものであってもよい。フレキシブル回路基板は、中継基板として、電子回路搭載基板として、構成することもできる。なお、所定面は、アレイ振動子の接合面を除く、他の1又は複数の面であり、それは背面であるのが望ましい。
【0012】
望ましくは、前記背面側部材はバッキングによって構成され、前記バッキングに対して前記フレキシブル回路基板が差し込まれる。望ましくは、前記背面側部材はバッキング及びそれに接合された背面基板によって構成され、前記背面基板に対して前記フレキシブル回路基板が差し込まれる。
【0013】
望ましくは、前記フレキシブル回路基板の第1面に前記シグナルライン列が形成され、前記フレキシブル回路基板の第2面にグランド面が形成される。望ましくは、前記フレキシブル回路基板の第1面に前記シグナルライン列を覆って第1絶縁層が形成され、前記フレキシブル回路基板の第2面に前記グランド面を覆って第2絶縁層が形成される。各絶縁層は、フレキシブル回路基板の全部又は一部に形成され、望ましくは、はんだ付けなどが行われる接続部分を除いた全体に絶縁層を設けるのがよい。特に、複数のフレキシブル基板を積層させて連結する場合に、隣接するフレキシブル基板間で絶縁性を確保するには上記絶縁層を設けるのが好適である。
【0014】
望ましくは、前記フレキシブル回路基板の第1面及び第2面の両面に前記シグナルライン列が形成される。この場合には、2つのパッド列に対して、1つのフレキシブル基板が対応する。望ましくは、前記フレキシブル回路基板の第1面及び第2面の両面に前記シグナルライン列を覆って第1絶縁層及び第2絶縁層が形成される。
【0015】
望ましくは、前記フレキシブル回路基板における隣接シグナルライン間にシールドラインが形成される。この構成によればクロストークをより軽減できる。
【0016】
望ましくは、前記背面側部材の背面に形成される複数のパッドにはグランド用パッドが含まれ、前記グランド用パッドには、前記アレイ振動子から引き出されたグランドリードが電気的に接続され、かつ、前記差込状態において前記フレキシブル回路基板に形成されたグランドラインが電気的に接続される。この構成によれば、グランドについても、シグナルと同様の接続方式を採用できるので、簡便である。
【0017】
望ましくは、前記差込状態において前記各パッドと前記各シグナルラインとがはんだ付けされる。もちろん、はんだ付け以外の電気的な接続方式を採用してもよい。
【0018】
望ましくは、前記フレキシブル回路基板は、その一方端部としての差込端部からその他方端部としての幅広端部まで横幅が増大され、前記差込端部におけるシグナルライン間ピッチよりも前記幅広端部におけるシグナルライン間ピッチの方が大きい。この構成によれば、シグナルライン間のピッチを増大できるとともに、背面側部材の近傍におけるプローブ形状の肥大化という問題を回避することもできる。
【0019】
望ましくは、前記幅広端部にはシグナル処理用の少なくとも1つの電子回路を搭載した電子回路基板が接続され、更に前記電子回路基板には探触子ケーブル内の複数の信号線が接続され、前記フレキシブル回路基板が中継部材として用いられる。上記の電子回路は、受信信号(及び送信信号)に対して増幅、インピーダンス整合、スイッチングなどを行う回路であってもよい。各電子回路基板は超音波探触子内に配置されるものである。一方、望ましくは、前記フレキシブル回路基板にはシグナル処理用の少なくとも1つの電子回路が搭載される。
【0020】
(2)望ましくは、複数の振動素子からなるアレイ振動子と、前記アレイ振動子の背面側に設けられ、前記複数の振動素子に電気的に接続される複数のリードが挿通された背面側部材と、シグナルライン列が形成された複数のフレキシブル回路基板と、を含み、前記背面側部材の所定面には、前記複数のリードに電気的に接続された複数のパッド列が形成され、且つ、前記複数のパッド列に対応してそれらと互い違いに複数の差込溝が形成され、前記各フレキシブル回路基板の差込端部が前記各差込溝に差し込まれ、前記各フレキシブル回路基板の差込状態において、前記パッド列を構成する各パッドと、前記シグナルライン列を構成する各シグナルラインとが電気的に接続される。
【0021】
(3)また、本発明に係る方法は、複数の振動素子からなるアレイ振動子の背面に接合される背面側部材に対して、前記複数の振動素子に対応して複数のパッド列を形成し、且つ、それらの複数のパッド列に対応して複数の差込溝を形成する工程と、前記複数の差込溝に対して、シグナルライン列を有する複数のフレキシブル回路基板の差込端部を差し込む工程と、を含み、前記各フレキシブル回路基板の差込状態において、前記各パッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程が実行され、当該工程では、前記複数のフレキシブル回路基板における複数の差込端部の相互間且つ前記背面側部材の所定面上に、前記各パッドと前記各シグナルラインとの電気的な接続部分が形成される、ことを特徴とする製造方法に関する。
【0022】
望ましくは、前記各バッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程は、前記各フレキシブル基板を差し込んだ時に、その都度逐次的に実行される。望ましくは、前記各パッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程は、前記複数のフレキシブル回路基板の全部を差し込んだ時に、一括して実行される。この場合にはリフロー法などを利用できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1には、本発明に係る超音波探触子の好適な実施形態が示されており、図1はその要部構成を示す斜視図である。
【0025】
図1に示す超音波探触子は、三次元エコーデータ取込用超音波探触子である。すなわち、図1に示される構成が探触子ケース(図示せず)内に収納され、その送受波面が例えば体表面上に当接され、その状態において超音波の送受波が行われる。これによって生体における三次元領域内からエコーデータが取り込まれる。
【0026】
図1に示す2Dアレイ振動子10は、図においてX方向及びY方向に整列した複数の振動素子によって構成される。なお、図1において2Dアレイ振動子10の具体的な構成については図示省略されている。この2Dアレイ振動子10は公知のスパース型アレイ振動子であってもよい。2Dアレイ振動子10の前面側には図示されていない整合層が設けられる。
【0027】
一方、2Dアレイ振動子10の後面(背面)側には図示されるようにバッキング12が接合されている。このバッキング12は、2Dアレイ振動子10から背面側に放射される不要な超音波を吸収、減衰させるものである。バッキング12の大きさは、例えば、X方向が21mmであり、Y方向が21mmであり、Z方向が12mmである。
【0028】
バッキング12における2Dアレイ振動子10の接合面以外の1又は複数の面にはパッドアレイが形成される。本実施形態においては、バッキング12の背面12Aにパッドアレイ14が形成されている。このパッドアレイ14はX方向及びY方向に整列した複数のパッド(電極)によって構成されるものである。具体的には、パッドアレイ14は、複数のパッド列22によって構成され、各パッド列22はX方向に並んだ複数のパッド32によって構成される。複数のパッド列22は図示されるようにY方向に並んでおり、それらは互いに平行である。
【0029】
後述するように、バッキング12内には、2Dアレイ振動子10を構成する複数の振動素子に対応した複数のリードが挿通して埋設されており、それらの複数のリードは複数のパッド32に対して電機的に接続されている。なお、バッキング12は通常は絶縁性をもった材料によって構成されるが、それが導電性をもった材料によって構成されてもよい。その場合においては、少なくとも各リード間及び各パッド間において電気的な短絡が生じないような絶縁処理が施される。また、複数のリードは互いにZ方向に直線的に伸長しているが、それらの複数のリードがバッキング12内において互いにその配列を変換するようなマトリクスを構成していてもよい。
【0030】
図1に示されるように、バッキング12の背面12Aには、複数の差込溝16が形成され、それらによって差込溝アレイ15が形成されている。各差込溝16は上記のパッド列22と同様にX方向に伸長しており、また、複数の差込溝16は互いに平行でY方向に並んでいる。また、本実施形態においては、1つのパッド列22ごとに1つの差込溝16が形成されており、図1において最も下側の差込溝16を除いて、各差込溝は隣接する2つのパッド列22の間に形成されている。差込溝16のY方向の幅は以下に説明するフレキシブル回路基板(FPC)18のY方向の厚みに差し込みやすく、かつ簡単に抜けない程度の適当なあそびを持たせてある。
【0031】
バッキング12の背面側には複数のFPC18からなるFPCアレイ17が接続され、さらに、そのFPCアレイ17には複数の回路基板26からなる回路基板アレイ24が接続される。ここで、1つのFPC18あたり1つの回路基板26が接続されているが、もちろん、そのような構成に本発明は限定されない。
【0032】
FPC18はそのZ方向における一方端が差込端部18Aを構成しており、そのZ方向の他方端部が幅広端部18Bを構成している。すなわち、差込端部18AのX方向の幅はバッキング12におけるX方向の幅と一致しており、その一方において、その差込端部18AのX方向の幅よりも幅広端部18BのX方向の幅の方が大きい。つまり差込端部18Aから幅広端部18Bに至るまでX方向の幅が徐々に増大されている。そして、幅広端部18BのX方向の幅は本実施形態において回路基板26のX方向の幅と一致している。
【0033】
図1に示されるように、FPC18における差込端部18Aはそれに対応する差込溝16内へ差込まれる。これによって両部材が物理的に連結されることになる。そのような連結すなわち差込は各FPC18ごとに実行され、通常はY方向における一方端から他方端にわたって逐次的に各FPC18が差し込まれる。その場合においては、後述するように、各FPC18の差込ごとにはんだ付け処理を行うようにしてもよいし、全てのFPC18の差込作業が完了した後に、例えばリフロー法などを利用してはんだ付けを一括して実行するようにしてもよい。
【0034】
FPC18の上面には複数のシグナルライン21からなる配線20が形成されている。各シグナルライン21はパッド列22の各バッドに対応しており、すなわちX方向に並ぶ一列のリード群に対して1つの回路基板26が接続されるように配線20がFPC18に施されている。
【0035】
上述したように、FPC18においては、差込端部18Aから幅広端部18Bにわたって徐々にX方向の幅が増大されており、これに対応して、複数のシグナルライン21に着目すると、それらのX方向のピッチは差込端部18Aから幅広端部18Bへ徐々に増大されている。すなわち、回路基板26上の配線上の都合から各シグナルライン21間におけるピッチの増大が必要な場合には、図1に示すような徐々に幅広のFPC18を利用し、シグナルライン間のピッチの拡大を図ることが可能となる。これにより、クロストークを軽減できる。
【0036】
なお、本実施形態においてはFPC18の上面に配線20が形成され、その下面には後述のようにグランド面が形成されるが、そのFPC18の両面に複数のシグナルライン21を形成するようにしてもよい。その場合においては、1つのFPC18により2つのパッド列22に対する電気的な接続が図られることになる。すなわち差込端部18Aの両面においてはんだ付けがなされることになる。
【0037】
回路基板26には回路群28が搭載されており、この回路群28は複数の電子回路30によって構成されている。各電子回路30は例えば受信信号の増幅などを行うものであり、それ以外に受信信号と送信信号のスイッチングなどを行うものであってもよい。上述したように、プローブ内には複数の回路基板26が収納されるが、その場合においてFPC18がそれ自体フレキシブルな材料で構成されているため、回路基板26の配置の自由度を高めることができると共に、その作業性を極めて良好にできるという利点がある。
【0038】
具体的には、FPC18の幅広端部18Bには回路基板26の一方端部26Aが接続され、その接続部分において各シグナルライン21に対して回路基板26上の各配線が接続される。回路基板26の他方端部26Bには必要に応じてプローブケーブル内の複数の信号線がはんだ付けなどによって接続され、あるいはその他方端部26B側にも上記FPC18と同様にFPCを接続することも可能である。すなわち、上記のFPC18はバッキング12と回路基板26との間における中継基板として機能し、その中継基板によりシグナルライン間のピッチの変更が図られ、またそれによって組立作業性が極めて良好とされている。もちろん、FPC18上に上述したような電子回路30を搭載することも可能であり、あるいはFPC18を介してプローブケーブルを接続する構成であってもよい。
【0039】
ちなみに、プローブケース(図示せず)内に、図1に示すような構成を収納する際には、必要に応じて、FPCアレイ17及び回路基板アレイ24が絶縁性をもった樹脂などによりモールドされる。これによって例えば電気的な安定性及び絶縁性を向上させることが可能となる。
【0040】
図2には、図1に示したバッキング12のY−Z断面が部分断面図として示されている。上述したように、バッキング12内には複数のリード31が挿通されており、そのリード31の端部にはパッド32が設けられている。ここで、パッド32は背面12A上に形成されている。パッド32に隣接して差込溝16が所定深さをもって形成されており、その差込溝16内にはFPC18の差込端部が差し込まれる。
【0041】
ここで、FPC18の構造について説明すると、基体34の上面側には上記のように複数のシグナルライン21が形成され、その一方、基体34の下面側にはその全面にわたってグランド面38が形成されている。FPC18の上面には複数のシグナルライン21を覆って絶縁層40が形成されており、下面側においてもグランド面38の全体を覆って絶縁層42が形成されている。ここで、差込端部に対応する部分の絶縁層40は除去されており、すなわちシグナルライン21の端部は露出している。そこで、その露出部分を用いてはんだ44によりパッド32とシグナルライン21との間における電気的な接続を行うことができる。この場合において、FPC18の下面側には絶縁層42が形成されているため、下面側に位置するはんだ44が上側のFPC18に対して電気的に接続されてしまう問題を未然に防止することが可能となる。また上記のはんだ44をつけることによりFPC18はバッキング12に対して確実に機械的に連結されることになる。
【0042】
以上のように、本実施形態においては、差込溝16に対してFPC18の差込端部18Aを差し込むだけで、両者を結合させることができ、その場合において従来のような複数のピンの差込は不要であるので、その位置決めに当たっての作業性を向上することができる。すなわち、例えば若干ながらX方向に位置決め誤差があったとしてもその物理的な連結及び電気的な接続に問題は生じない。またY方向の位置決めは溝への差込という簡単な手法によるため複数のピンの差込に比べて極めて容易である。さらに、複数のFPC18を段階的に差し込む場合において、既に取り付けられているFPC18を屈曲させて作業空間を確保しつつ次の新しいFPC18の差込を行うことも可能であるので、その意味においても作業性を向上できるという利点がある。
【0043】
図3にはバッキング12に対してFPCアレイ17を接続し、さらにそのFPCアレイ17に対して回路基板アレイ24を接続した構成が示されている。図3に示す例では回路基板アレイ24に対して複数のFPC46がさらに接続されており、そのFPC46はプローブケーブル内の複数の信号線に対して接続される。
【0044】
図4に示す例では、中継基板としてのFPC18が用いられる一方、プローブケーブルまで引き伸ばされたFPC48も利用されている。すなわち一部の信号について電子的な処理が不要であるような場合には、図4に示すような構成を採用すればよい。たとえば、送信信号用としてはFPC48を利用し、受信信号用としてはFPC18及び回路基板26を設けるようにしてもよい。ここで、符号24’は回路基板アレイを示しているが、上述したように図3に示した構成に比べてその回路基板アレイ24を構成する回路基板26の枚数は削減されている。
【0045】
図1に示した超音波探触子を製造する場合においては、複数のリードが内蔵されたバッキング12の背面12Aに対してパッドアレイ14が形成され、また、複数の差込溝アレイ15が形成される。この場合においてはダイシングソーなどを利用して各差込溝16を形成するようにしてもよい。
【0046】
その後、上記のように形成された各差込溝16に対して、必要に応じて回路基板26が接続されたFPC18が差し込まれ、その差込完了後にはんだ付け処理がなされる。すなわちFPC18上に形成された各シグナルライン21と各パッドとを電気的に接続する処理がなされることになる。そしてそのような工程が各FPC18ごとに実行される。もちろん上述したように全てのFPC18の接続が完了した後に、一括してはんだ付けを行うことも可能である。
【0047】
図5乃至図7には他の実施形態に係る超音波探触子が示されている。なお、図1乃至図4に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
【0048】
図1に示した実施形態においては、2Dアレイ振動子10の背面側に設けられる背面側部材がバッキング12だけによって構成されていたが、図5に示す実施形態においては、その背面側部材がバッキング12に加えてその背面に接合された背面基板52によって構成されている。そして、その背面基板52の背面52Aには、図1に示したバッキング12の背面12Aに形成された構造と同一の構造が採用されている。すなわち、その背面52Aには、パッドアレイ14が形成されると共に、差込溝アレイ15が形成されている。
【0049】
図6には、図5に示すバッキング12のY−Z断面が示されており、図7には、図5に示すバッキング12のX−Z断面が示されている。
【0050】
図6において、バッキング12の背面には基板52の全面が接合されている。ちなみに、基板52はバッキング12のX方向及びY方向の大きさと同様の大きさを有している。バッキング12には各リード36に対応してスルーホール部材56が設けられており、そのスルーホール部材56にはリード36が挿通固定されている。そしてリード36の端部はパッド32まで伸長されており、両者は電気的に接続されている。
【0051】
また、背面基板52には上記のように複数の差込溝16が形成されており、各差込溝16内にはFPC18が差し込まれる。その接続関係については図2に示したものと同様である。
【0052】
図7において、この実施形態においては、FPCの上面に複数のシグナルライン36が形成され、それらのシグナルライン36間にシールドライン80が形成されている。このシールドライン80はシグナルライン36間におけるクロストークをより防止するためのものであり、シールドライン80はグランドに接続されている。
【0053】
FPC18の上面はそのほとんどが絶縁層40によって覆われているが、差込端部に相当する部分は露出している。その露出部分を利用して上記のように各シグナルライン36とパッド32とがはんだ44によって電気的及び機械的に接続される。
【0054】
また、図7に示す例では、FPC18の上面側にグランドライン60が形成されており、そのグランドライン60は背面基板52に形成されたグランド用パッド32Aにはんだ44Aによって接続される。
【0055】
グランド用パッド32Aはスルーホール部材56Aを介して第1内部電極62に接続されており、その第1内部電極62は例えばはんだ66などにより第2内部電極64に接続されている。もちろん両者の内部電極62,64がL型を有する一体部材で構成されてもよい。
【0056】
そして、第2内部電極64はスルーホール部材68を介して側面パッド70に接続されており、さらに側面パッド70にははんだ74によってグランドリード72が接続されている。このグランドリード72はアレイ振動子の前面側に設けられるグランド面から引き出されたものであり、バッキング12の側面をまわってグランドライン60との間で電気的な接続を図るためのものである。すなわち、グランドリード72は上記の側面パッド70、スルーホール部材68、第2内部電極64、第1内部電極62、スルーホール部材56A、パッド32Aなどを介してグランドライン60に電気的に接続されている。
【0057】
ちなみに、図7における破線は差込端が到達するレベルを表しており、これは差込溝の底面レベルに相当するものである。
【0058】
図5乃至図7に示した実施形態においては、その製造工程を実行する場合に、例えば背面基板52がバッキング12に複数のリードを埋設するためのフレームとして利用される。いずれにしても、バッキング12及び背面基板52とが接合された積層体に対してパッドアレイ14及び差込溝アレイ15が形成され、その後、上述したようにそれぞれの差込溝16に対してFPC18が差し込まれ、個別的に一括してはんだ付けがなされることになる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リードと信号線の接続を簡単かつ確実に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る超音波探触子の要部構成を示す斜視図である。
【図2】 図1に示すバッキングの部分的な断面図である。
【図3】 超音波探触子内に配置される組立体の一例を示す図である。
【図4】 超音波探触子内に配置される組立体の他の例を示す図である。
【図5】 他の実施形態に係る超音波探触子の構成を示す斜視図である。
【図6】 図5に示したバッキングの垂直断面図である。
【図7】 図5に示したバッキングの水平断面図である。
【符号の説明】
10 2Dアレイ振動子、12 バッキング、14 パッドアレイ、15 差込溝アレイ、16 差込溝、17 FPCアレイ、18 FPC、20 配線、21 シグナルライン、24 回路基板アレイ、26 回路基板、28 回路群、30 電子回路。

Claims (16)

  1. 複数の振動素子からなるアレイ振動子と、
    前記アレイ振動子の背面側に設けられ、前記複数の振動素子に電気的に接続される複数のリードが挿通された背面側部材と、
    シグナルライン列が形成された複数のフレキシブル回路基板と、
    を含み、
    前記背面側部材の所定面には、前記複数のリードに電気的に接続された複数のパッド列が形成され、且つ、前記複数のパッド列に対応して複数の差込溝が形成され、
    前記フレキシブル回路基板の差込端部が前記差込溝に差し込まれ、それらの差込状態において、前記パッド列を構成する各パッドと、前記シグナルライン列を構成する各シグナルラインとが電気的に接続され
    前記複数のフレキシブル回路基板における複数の差込端部の相互間且つ前記背面側部材の所定面上に、前記各パッドと前記各シグナルラインとの電気的な接続部分が形成された、
    ことを特徴とする超音波探触子。
  2. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記背面側部材はバッキングによって構成され、
    前記バッキングに対して前記フレキシブル回路基板が差し込まれることを特徴とする超音波探触子。
  3. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記背面側部材はバッキング及びそれに接合された背面基板によって構成され、
    前記背面基板に対して前記フレキシブル回路基板が差し込まれることを特徴とする超音波探触子。
  4. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板の第1面に前記シグナルライン列が形成され、
    前記フレキシブル回路基板の第2面にグランド面が形成されたことを特徴とする超音波探触子。
  5. 請求項4記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板の第1面に前記シグナルライン列を覆って第1絶縁層が形成され、
    前記フレキシブル回路基板の第2面に前記グランド面を覆って第2絶縁層が形成されたことを特徴とする超音波探触子。
  6. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板の第1面及び第2面の両面に前記シグナルライン列が形成されたことを特徴とする超音波探触子。
  7. 請求項6記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板の第1面及び第2面の両面に前記シグナルライン列を覆って第1絶縁層及び第2絶縁層が形成されたことを特徴とする超音波探触子。
  8. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板における隣接シグナルライン間にシールドラインが形成されたことを特徴とする超音波探触子。
  9. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記背面側部材に形成される複数のパッドにはグランド用パッドが含まれ、
    前記グランド用パッドには、前記アレイ振動子から引き出されたグランドリードが電気的に接続され、かつ、前記差込状態において前記フレキシブル回路基板に形成されたグランドラインが電気的に接続されたことを特徴とする超音波探触子。
  10. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記差込状態において前記各パッドと前記各シグナルラインとがはんだ付けされて前記接続部分を構成することを特徴とする超音波探触子。
  11. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板は、その一方端部としての差込端部からその他方端部としての幅広端部まで横幅が増大され、
    前記差込端部におけるシグナルライン間ピッチよりも前記幅広端部におけるシグナルライン間ピッチの方が大きいことを特徴とする超音波探触子。
  12. 請求項11記載の超音波探触子において、
    前記幅広端部にはシグナル処理用の少なくとも1つの電子回路を搭載した電子回路基板が接続され、
    更に前記電子回路基板には探触子ケーブル内の複数の信号線が接続され、
    前記フレキシブル回路基板が中継部材として用いられることを特徴とする超音波探触子。
  13. 請求項1記載の超音波探触子において、
    前記フレキシブル回路基板にはシグナル処理用の少なくとも1つの電子回路が搭載されたことを特徴とする超音波探触子。
  14. 複数の振動素子からなるアレイ振動子の背面に接合される背面側部材に対して、前記複数の振動素子に対応して複数のパッド列を形成し、且つ、それらの複数のパッド列に対応して複数の差込溝を形成する工程と、
    前記複数の差込溝に対して、シグナルライン列を有する複数のフレキシブル回路基板の差込端部を差し込む工程と、
    を含み、
    前記各フレキシブル回路基板の差込状態において、前記各パッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程が実行され、当該工程では、前記複数のフレキシブル回路基板における複数の差込端部の相互間且つ前記背面側部材の所定面上に、前記各パッドと前記各シグナルラインとの電気的な接続部分が形成される、
    ことを特徴とする超音波探触子の製造方法。
  15. 請求項14記載の製造方法において、
    前記各バッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程は、前記各フレキシブル基板を差し込んだ時に、その都度逐次的に実行されることを特徴とする超音波探触子の製造方法。
  16. 請求項14記載の製造方法において、
    前記各パッドと前記各シグナルラインとを電気的に接続する工程は、前記複数のフレキシブル回路基板の全部を差し込んだ時に、一括して実行されることを特徴とする超音波探触子の製造方法。
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