JP3943846B2 - シリンダ錠 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】本発明は、建物や車両のドアに使用されるシリンダ錠に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のシリンダ錠は、ドア本体に装着されるホルダーと、該ホルダー内に回転自在に設けられるシリンダ本体とからなる。そして、このシリンダ本体には、キーの挿入方向と直交する一方向に付勢された複数のタンブラーと、該各タンブラーに向かって付勢されるサイドバーとを配設し、ピッキングによる解錠を困難にしたものが種々提供されている。
【0003】
前記シリンダ錠のサイドバーは、キーが挿入される前の状態で、タンブラーの側縁部に当接してシリンダ本体から突出し、ホルダーに形成した溝に係合することにより、シリンダ本体を回動不可能に維持する。一方、キーを挿入すると、キーに形成したキー山により各タンブラーを移動させ、その縁に形成した切欠部を整列し、その切欠部にサイドバーが没入することにより、ホルダーに対してシリンダ本体を回動可能とするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記サイドバー方式のシリンダ錠では、キー穴より工具等を挿入し、一枚ずつタンブラーとホルダーとの係合を解除し、その状態を保持させるというピッキングにより、解錠することは非常に困難であるが、シリンダ本体のキー挿入穴からタンブラーを装着するタンブラー穴を通して薄板状の治具でスプリングを操作して、タンブラーへの付勢力を無効とし、タンブラーを移動させると、サイドバーの付勢力が働いているため、サイドバーがタンブラーの切欠部に没入し、不正に解錠される可能性がある。
【0005】
また、シリンダ本体のキー挿入穴からタンブラーを装着するタンブラー穴を通して薄板状の治具でサイドバーを操作することにより、不正に解錠される可能性がある。
【0006】
そこで、本発明では、シリンダ本体のキー挿入穴からスプリングとサイドバーを確実に操作不可能とし、不正解錠を防止できるシリンダ錠を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明のシリンダ錠は、ドア本体に装着したホルダーと、該ホルダー内に回転可能に配設したシリンダ本体とからなり、前記シリンダ本体は、軸方向に形成されたキー挿入穴と、該キー挿入穴に連通し、軸方向に所定間隔で形成された複数のタンブラー穴と、前記シリンダ本体の外周面に開口し、各タンブラー穴の一方の側縁部に連通した開口部と、前記タンブラー穴の他方の側縁部に形成されたスプリング挿入孔とを備え、中央部にキーが挿入されるキー穴を有し、一方の側縁部に形成された切欠部と、該切欠部の形成された側縁部に対向する他方の側縁部に突設されたスプリング受部とを有する複数のタンブラーと、前記スプリング挿入孔に収容され、前記タンブラーのスプリング受部に圧接して、前記タンブラーを付勢するスプリングと、前記開口部に配置されるとともに、前記タンブラーの移動方向に対して直交するように付勢され、キーの挿入前の状態では、前記タンブラーの側縁部に当接して前記シリンダ本体から突出することにより、前記ホルダーに係合し、該シリンダ本体を回動不可能とする一方、キーの挿入により整列した前記タンブラーの切欠部に係合してシリンダ本体内に没入し、前記シリンダ本体を回動可能とするサイドバーとを設けたシリンダ錠において、前記タンブラーには、前記キー穴の一方の側縁部とスプリング受部が形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第1の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第1の段部と係合する第1の受部を設けた構成としている。
【0008】
また、本発明の前記タンブラーには、前記キー穴の他方の側縁部と切欠部が 形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第2の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第2の段部と係合する第2の受部を設けてもよい。
【0009】
また、本発明のシリンダ錠は、ドア本体に装着したホルダーと、該ホルダー内に回転可能に配設したシリンダ本体とからなり、前記シリンダ本体は、軸方向に形成されたキー挿入穴と、該キー挿入穴に連通し、軸方向に所定間隔で形成された複数のタンブラー穴と、前記シリンダ本体の外周面に開口し、各タンブラー穴の一方の側縁部に連通した開口部と、前記タンブラー穴の他方の側縁部に形成されたスプリング挿入孔とを備え、中央部にキーが挿入されるキー穴を有し、一方の側縁部に形成された切欠部と、該切欠部の形成された側縁部に対向する他方の側縁部に突設されたスプリング受部とを有する複数のタンブラーと、前記スプリング挿入孔に収容され、前記タンブラーのスプリング受部に圧接して、前記タンブラーを付勢するスプリングと、前記開口部に配置されるとともに、前記タンブラーの移動方向に対して直交するように付勢され、キーの挿入前の状態では、前記タンブラーの側縁部に当接して前記シリンダ本体から突出することにより、前記ホルダーに係合し、該シリンダ本体を回動不可能とする一方、キーの挿入により整列した前記タンブラーの切欠部に係合してシリンダ本体内に没入し、前記シリンダ本体を回動可能とするサイドバーとを設けたシリンダ錠において、前記タンブラーには、前記キー穴の他方の側縁部と切欠部が形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第2の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第2の段部と係合する第2の受部を設けた構成としてもよい。
【0010】
本発明のシリンダ錠では、シリンダ本体内にキーを挿入すれば、各タンブラーがシリンダ本体内に移動し、サイドバーがタンブラーの切欠部に係合してシリンダ本体内に没入する。これにより、キーを回転操作すると、シリンダ本体をホルダー内で回転させることができ、開錠又は施錠操作が可能となる。また、キーの挿入前の状態では、切欠部をサイドバーに係合させようとしても、他のタンブラーの付勢力によりサイドバーが戻され、該サイドバーをタンブラーの切欠部に係合させることができないため、ピッキングにより不正に解錠することはできない。しかも、前記タンブラーには、キー穴の一方の側縁部とスプリング受部が形成されたタンブラーの側縁部との間にタンブラーの全長にかけて延設された第1の段部を設けるとともに、シリンダ本体に第1の段部と係合する第1の受部を設けているため、シリンダ本体内からスプリングの装着部分に通じる直線状の隙間をなくすことができる。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してスプリングを操作することはできず、タンブラーの付勢力をなくすことができない。
【0011】
さらに、前記タンブラーには、キー穴の他方の側縁部と切欠部が形成されたタンブラーの他方の側縁部側との間にタンブラーの全長にかけて延設された第2の段部を設けるとともに、シリンダ本体に第2の段部と係合する第2の受部を設けることにより、シリンダ本体内からサイドバーの装着部分に通じる直線状の隙間をなくすことができる。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してサイドバーを操作することができない。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る建物用に使用したシリンダ錠を示す。このシリンダ錠は、大略、ホルダー1と、その内部に回転可能に設けられるシリンダ本体10と、ホルダー1を覆うカバー34とから構成されている。
【0013】
前記ホルダー1は、亜鉛やアルミニウム等の金属材料を略円筒状に成形することにより得られる。ホルダー1の外周面には位置決め用の突条2と、逃がし溝3がそれぞれ2つずつ90度間隔で交互に形成されている。ホルダー1の前面側には、外方に突出するフランジ状の鍔部4が形成され、その中央部には円筒状に突出する筒状部5が設けられている。筒状部5の内面の対称な位置には、軸方向に沿って一対の第1係合溝6(図1中、一方は図示せず)が形成されている。この第1係合溝6は、後述するタンブラー16の係合凸部21が係合することにより、シリンダ本体10を回動不可能とするものである。また、ホルダー1の内面には、前記第1係合溝6とは90度位相した位置に、シリンダ本体10から突出したサイドバー24を収容する一対の第2係合溝7が形成されている。ホルダー1の後端開口部には、図2に示すように、後端から所定範囲に拡開部8が形成され、この拡開部8に連続して一対の係合凹部9が形成されている。
【0014】
前記シリンダ本体10は円柱状をなし、その内部には、図3に示すように、複数のタンブラー16およびサイドバー24がそれぞれ収容されている。また、このシリンダ本体10の後端側外周部には、図1に示すように、コンストラクションカム28が軸方向に沿ってスライド可能に配設されている。
【0015】
具体的には、前記シリンダ本体10の軸心には、矩形状のキー挿入穴11が形成されている。シリンダ本体10の外周面には、両側から軸方向に所定間隔をもって前記キー挿入穴11に連通する複数のタンブラー穴12がそれぞれ穿設され、このタンブラー穴12にそれぞれ後述するタンブラー16が配設されている。そして、前記タンブラー穴12には、図2に示すように、1つ置きの一端部(下端部)にスプリング挿入孔12aがそれぞれ形成されている。なお、図示していないが、図2の紙面向こう側にも同じく1つ置きの下端部にスプリング挿入孔12aが形成されている。シリンダ本体10の前面側の外周面には、図3に示すように、略I字形の開口部13が形成され、その両端部両側は平坦な取付部13aとなっている。シリンダ本体10の背面側にはフランジ状に突出する鍔部10aが形成され、ホルダー1における後端の拡開部8の内縁に嵌合するようになっている。また、本実施形態のシリンダ本体10には、図3及び図4に示すように、前記タンブラー穴12には、キー挿入穴11に対して後述するサイドバー24が収容される前記開口部13と連通する一方側に後述するタンブラー16の第2段部23に対応する第2受部15が設けられているとともに、前記タンブラー穴12のキー挿入穴11に対してスプリング挿入孔12aが設けられた他方側に後述するタンブラー16の第1段部22に対応する第1受部14が設けられている。
【0016】
前記タンブラー16は板状をなし、全長の短いコンストラクションキーと全長の長いユーザーキーのいずれにも応動する7枚の前面側のタンブラー16aと、ユーザーキーのみに応動する3枚の後方側のタンブラー16bとの10枚で構成されている。また、これらタンブラー16には、中央部に矩形状のキー穴17が穿設されている。各タンブラー16の一方の側縁部16cにはサイドバー24が没入するV字状の切欠部18が形成され、他方の側縁部16dにはスプリング19の一端部が圧接するスプリング受部20が突設されている。さらに、このスプリング受部20の側の端部には、前記第1係合溝6内に突出して係合する係合凸部21が設けられている。さらにまた、本実施形態のタンブラー16の両側面には、前記キー穴17の一方側の側縁部17aとスプリング受部20との間に、図8(A)に示すように断面略V字形状の溝からなる第1段部22が全長にかけて設けられ、前記キー穴17の一方側の側縁部17bと後述するサイドバー24が係合する切欠部18との間に、断面略V字形状の溝からなる第2段部23が全長にかけて設けられている。
【0017】
本実施形態では、前記シリンダ本体10に形成した各タンブラー穴12において、スプリング挿入孔12aが形成されている一方側からスプリング19とタンブラー16を挿入し、図5(A)、(B)に示すように、これらタンブラー16が1つ置きに、2方向に分けて外向きに付勢されるように構成している。また、本実施形態では、シリンダ本体10から突出する前面側の1枚のタンブラー16aを付勢するスプリング19の付勢力のみでサイドバー24がシリンダ本体10から突出するようにしているが、数枚のタンブラー16aを付勢するスプリングの付勢力を利用すれば、各スプリングの付勢力を弱くすることができる。
【0018】
前記サイドバー24は、図3および図5(A)、(B)に示すように、下面が断面三角形状に突出する略直方体形状で、上面両側にはスプリング受部25がそれぞれ形成されている。このサイドバー24は、シリンダ本体10の取付部13aに加締めて固定される止め金具26との間に配設した一対のスプリング27により、シリンダ本体10の開口部13に没入するように付勢されるようになっている。そして、キー45(図7(A)、(B)参照)のキー穴17への挿入によりタンブラー16が整列されて切欠部18が一列に並ぶと、サイドバー24はこれら切欠部18に係合してホルダー1内に没入するようになっている。
【0019】
前記コンストラクションカム28は、図1に示すようにドーナツ状をなし、その一端側に鍔部28aが形成されている。そして、この鍔部28aと、前記シリンダ本体10の鍔部10aとの間にはスプリング29が配設されコンストラクションカム28を前面側(図2において右側)に付勢するようになっている。コンストラクションカム28の外周縁部の対向位置には係合突部30がそれぞれ形成され、内周面には、係合突部30の近傍に背面側のタンブラー凹部31と前面側のタンブラー凹部32がそれぞれ形成され、その間にコンストラクションカム28の前面側への移動を阻止するための係合壁33が設けられている。すなわち、係合壁33の前面側のタンブラー凹部32に係合した後方側のタンブラー16bにより、コンストラクションカム28は前面側への移動を阻止される。
【0020】
前記カバー34は、図1及び図2に示すように、一端が略円錐台形状の円筒状をなし、ホルダー1の外周側を覆った状態で、該ホルダー1がネジ止めにより固定されるものである。このカバー34の円錐面側中央部には、キー45を挿入可能とするための挿入孔35が形成され、その内周縁には前記ホルダー1の先端面との間に環状の蓄光部材36が配設される。この蓄光部材36は、例えば、ポリカーボネイトに蓄光材料を練り込み、夜間に発光するものが使用される。
【0021】
次に、前記構成からなる建物用のシリンダ錠の組み立てについて説明する。まず、シリンダ本体10のスプリング挿入孔12aからスプリング19を挿入した後、各タンブラー穴12に対して1つ置きに2方向からタンブラー16を挿入する。ここで、各タンブラー16は図示しない冶具等を用いて押し込んだ状態に維持する。
【0022】
続いて、図3に示すように、シリンダ本体10の開口部13内にスプリング27とともにサイドバー24を配置し、取付部13aの上方から止め金具26を加締めにより固定して取り付ける。この状態で、サイドバー24は前面側のタンブラー16aの側縁部16cに圧接される。
【0023】
その後、シリンダ本体10の外周部に、スプリング29とともにコンストラクションカム28を装着する。この際、コンストラクションカム28をスプリング29の付勢力に抗してシリンダ本体10の鍔部10aに当接するまで押し込む。そして、その位置にあるタンブラー16の押し込み状態を解除する。これにより、後方側のタンブラー16bがコンストラクションカム28のタンブラー凹部32に係合し、係合壁33によってコンストラクションカム28の軸方向への移動が阻止される。
【0024】
次いで、コンストラクションカム28とともにシリンダ本体10をホルダー1内に収容する。この際、各タンブラー16の押し込みを解除し、それぞれホルダー1内の各第1係合溝6に1つ置きに係合させる。また、このときサイドバー24が前面側のタンブラー16aの側縁部16cに押されてシリンダ本体10から突出するため、ホルダー1内の第2係合溝7に係合する。
【0025】
その後、ホルダー1の先端面に蓄光部材36を配置し、この状態で、シリンダ本体10を装着したホルダー1をカバー34の内部に装着し、ネジ止めにより固定する。
【0026】
このようにして組み立てられた建物用シリンダ錠では、図6(A)に示すように、コンストラクションカム28に後方側のタンブラー16bが係合し、コンストラクションカム28はシリンダ本体10と共に回転する。したがって、この段階では、コンストラクションカム28に係合する後方側のタンブラー16bを動作させないコンストラクションキーを挿入することにより、残る前面側のタンブラー16aのみをシリンダ本体10内に没入動作させて開錠操作することが可能となっている。
【0027】
前記シリンダ錠を建物のドア40に取り付ける場合、図2に示すように、そのドア40の前面パネル41に形成した穴41aにホルダー1の後端部を挿入し、突条2によって回転方向の位置決めを行っている。そして、ドア40の背面パネル42にホルダー1の後端部に接続された棒材43を取付台44にネジ止めし、カバー34の後端開口部を前面パネル41に圧接させることにより、前記シリンダ錠の建物のドア40への装着が完了する。
【0028】
このようにしてドア40に装着されたシリンダ錠によれば、ドア40の前面からカバー34によって覆われた部分が突出しているので、キー45の挿入を容易に行うことができる。そして、全長の長いユーザーキーを使用すれば、以下のように、このユーザーキーによってのみ解錠および施錠操作が可能となる。
【0029】
即ち、全長の長いユーザーキーの挿入により、図6(B)に示すように、ホルダー1の係合溝に係合する前面側のタンブラー16aのみならず、コンストラクションカム28に係合した後方側のタンブラー16bも移動する。これにより、コンストラクションカム28はスプリング29の付勢力によって前面側へスライド移動し、その係合突部30がホルダー1の係合凹部9に係合して回転不可能となる。
【0030】
したがって、この段階で、前記コンストラクションキーを挿入しても、ホルダー1と一体化したコンストラクションカム28に係合する後方側のタンブラー16bをシリンダ本体10内に没入させることができず、解錠操作を行うことは不可能になる。
【0031】
一方、全長の長いユーザーキーを使用すれば、前記後方側のタンブラー16bを前面側のタンブラー16aとともにシリンダ本体10内に没入させ、ユーザーキーを回転操作してホルダー1内でシリンダ本体10を回転させることにより、解錠又は施錠操作を行うことが可能である。
【0032】
具体的には、コンストラクションキーによる解錠を不可能とした状態で、かつ、ユーザーキーの挿入前の状態では、図7(A)に示すように、各タンブラー16に形成した切欠部18は、キー45の挿入方向において、左右にランダムに位置する。
【0033】
そして、この状態では、切欠部18をサイドバー24に係合させようとしても、他のタンブラー16の付勢力によりサイドバー24が戻され、該サイドバー24をタンブラー16の切欠部18に係合させることができない。しかも、前記タンブラー16に第1段部22を設けるとともにシリンダ本体10に対応する第1受部14を設けているため、シリンダ本体10内からスプリング19の装着部分に通じる直線状の隙間がない。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してスプリング19を操作することはできず、タンブラー16の付勢力をなくすことができない。その結果、ピッキングによって不正に解錠することはできない。
【0034】
また、前記タンブラー16に第2段部23を設けるとともにシリンダ本体10に対応する第2受部15を設けているため、シリンダ本体10内からサイドバー24の装着部分に通じる直線状の隙間がない。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してサイドバー24を操作することはできず、さらにピッキングによる不正解錠を防止することができる。
【0035】
次に、解錠可能なユーザーキーを挿入すると、タンブラー16のキー穴17の縁にキー45のキー山が当接する。そうすると、各タンブラー16は、スプリング19の付勢力に抗してシリンダ本体10のタンブラー穴12内でスライドし、その係合凸部21がホルダー1の第1係合部6内からシリンダ本体10内に位置する。
【0036】
これにより、図7(B)に示すように、キー45の挿入前の状態でランダムに位置していた切欠部18が一列に整列する。その結果、サイドバー24は、スプリング27の付勢力により、ホルダー1の第2係合溝7内からシリンダ本体10内に没入し、ユーザがキー45を回転操作することにより、それに応じてシリンダ本体10を回転させることができる。
【0037】
なお、本発明のシリンダ錠は前記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、タンブラー16に形成する第1段部22、第2段部23を、図8(A)に示すように、略V字形状の溝により形成したが、略V字形状に限定されず、図8(B)に示すように、凸状に突出する突起により構成してもよい。また、溝または突起からなる段部22、23の形状は、図8(C)に示すように、タンブラー16において、一端面に凹状の段部を設け、他端面に凸状の段部を設けてもよい。さらに、図8(D)に示すように、従来よりタンブラ穴12に段部が設けられたシリンダ錠においては、その段部を第1受部14、第2受部15とし、そのタンブラ穴12と同形状にタンブラ16を形成することにより、別途シリンダ本体10に受部14、15を形成する必要がなく、製造コストを削減することができる。さらにまた、図8(E)に示すように、タンブラー16に形成するキー穴17を設ける際に、キー穴17のスプリング受部20側および切欠部18側の両側縁部17a,17bを押し広げてバリを立たせて、そのバリを第1段部22、第2段部23とすることにより、簡単に段部22、23を設けることができる。即ち、前記タンブラー16の第1段部22およびシリンダ本体10の第1受部14の位置は、スプリング19の側に位置すれば、その形状や位置は限定されない。同様に、前記タンブラー16の第2段部23およびシリンダ本体10の第2受部15の位置は、サイドバー24の側に位置すれば、その形状や位置は限定されない。
【0038】
また、前記実施形態では、シリンダ錠を建物のドア40に取り付けたが、車両のドア40に適用しても、前記と同様の作用、効果を得ることができる。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のシリンダ錠では、キーの挿入によりシリンダ本体内に没入するタンブラーのほかに、各タンブラーの切欠部が整列することによりシリンダ本体内に没入するサイドバーを設けるようにしたので、盗難防止性に優れている。しかも、前記タンブラーにおいて、キー穴のスプリング側に第1の段部を設けるとともに、シリンダ本体に第1の段部が係合する第1の受部を設けているため、シリンダ本体内からスプリングの装着部分に通じる直線状の隙間をなくすことができる。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してスプリングを操作することはできず、タンブラーの付勢力をなくすことはできない。その結果、ピッキングによってキー挿入穴からの不正な解錠を確実に防止することができる。
【0040】
さらに、前記タンブラーにおいて、キー穴のサイドバー側に第2の段部を設けるとともに、シリンダ本体に第2の段部が係合する第2の受部を設けることにより、シリンダ本体内からサイドバーの装着部分に通じる直線状の隙間をなくすことができる。そのため、その部分から薄板状の治具を挿入してサイドバーを操作することはできない。その結果、ピッキングによってキー挿入穴からの不正な解錠を確実に防止することができ、さらに盗難防止性の高いシリンダ錠とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシリンダ錠を示す分解斜視図である。
【図2】 組立状態のシリンダ錠の断面図である。
【図3】 第1実施形態のシリンダ本体に対するタンブラーおよびサイドバーの分解斜視図である。
【図4】 第1実施形態のシリンダ本体に対するタンブラーおよびスプリングの別の方向から見た分解斜視図である。
【図5】 (A)、(B)はシリンダ錠を異なる位置で切断した断面図である。
【図6】 (A)はユーザーキーの挿入前の状態を示す断面図、(B)はユーザーキーの挿入後の状態を示す断面図である。
【図7】 (A)は、キー挿入前の切欠部の状態を示す断面図、(B)はキー挿入後の切欠部の状態を示す断面図である。
【図8】 (A)は第1実施形態のタンブラーに形成する段部およびシリンダ本体に形成する受部であり、(B)、(C)、(D)、(E)は段部および受部の変形例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
1…ホルダー、10…シリンダ本体、11…キー挿入穴、12…タンブラー穴、13…開口部、14…第1受部、15…第2受部、16…タンブラー、17…キー穴、18…切欠部、19…スプリング、22…第1段部、23…第2段部、24…サイドバー、28…コンストラクションカム、34…カバー、40…ドア、45…キー。
Claims (3)
- ドア本体に装着したホルダーと、
該ホルダー内に回転可能に配設したシリンダ本体とからなり、
前記シリンダ本体は、軸方向に形成されたキー挿入穴と、該キー挿入穴に連通し、軸方向に所定間隔で形成された複数のタンブラー穴と、前記シリンダ本体の外周面に開口し、各タンブラー穴の一方の側縁部に連通した開口部と、前記タンブラー穴の他方の側縁部に形成されたスプリング挿入孔とを備え、
中央部にキーが挿入されるキー穴を有し、一方の側縁部に形成された切欠部と、該切欠部の形成された側縁部に対向する他方の側縁部に突設されたスプリング受部とを有する複数のタンブラーと、
前記スプリング挿入孔に収容され、前記タンブラーのスプリング受部に圧接して、前記タンブラーを付勢するスプリングと、
前記開口部に配置されるとともに、前記タンブラーの移動方向に対して直交するように付勢され、キーの挿入前の状態では、前記タンブラーの側縁部に当接して前記シリンダ本体から突出することにより、前記ホルダーに係合し、該シリンダ本体を回動不可能とする一方、キーの挿入により整列した前記タンブラーの切欠部に係合してシリンダ本体内に没入し、前記シリンダ本体を回動可能とするサイドバーとを設けたシリンダ錠において、
前記タンブラーには、前記キー穴の一方の側縁部とスプリング受部が形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第1の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第1の段部と係合する第1の受部を設けたことを特徴とするシリンダ錠。 - 前記タンブラーには、前記キー穴の他方の側縁部と切欠部が形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第2の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第2の段部と係合する第2の受部を設けたことを特徴とする請求項1記載のシリンダ錠。
- ドア本体に装着したホルダーと、
該ホルダー内に回転可能に配設したシリンダ本体とからなり、
前記シリンダ本体は、軸方向に形成されたキー挿入穴と、該キー挿入穴に連通し、軸方向に所定間隔で形成された複数のタンブラー穴と、前記シリンダ本体の外周面に開口し、各タンブラー穴の一方の側縁部に連通した開口部と、前記タンブラー穴の他方の側縁部に形成されたスプリング挿入孔とを備え、
中央部にキーが挿入されるキー穴を有し、一方の側縁部に形成された切欠部と、該切欠部の形成された側縁部に対向する他方の側縁部に突設されたスプリング受部とを有する複数のタンブラーと、
前記スプリング挿入孔に収容され、前記タンブラーのスプリング受部に圧接して、前記タンブラーを付勢するスプリングと、
前記開口部に配置されるとともに、前記タンブラーの移動方向に対して直交するように付勢され、キーの挿入前の状態では、前記タンブラーの側縁部に当接して前記シリンダ本体から突出することにより、前記ホルダーに係合し、該シリンダ本体を回動不可能とする一方、キーの挿入により整列した前記タンブラーの切欠部に係合してシリンダ本体内に没入し、前記シリンダ本体を回動可能とするサイドバーとを設けたシリンダ錠において、
前記タンブラーには、前記キー穴の他方の側縁部と切欠部が形成された前記タンブラーの側縁部との間に前記タンブラーの全長にかけて延設された第2の段部を設けるとともに、前記シリンダ本体に前記第2の段部と係合する第2の受部を設けたことを特徴とするシリンダ錠。
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