JP3942996B2 - イオン付着質量分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン付着質量分析装置に関し、特に、被測定ガスの成分を正確に測定できる定性分析に適したイオン付着質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン付着質量分析方法(IAMS;Ion Attachment Mass Spectrometer )は、被測定ガスの分子を解離(フラグメント)させることなくイオン化し、当該分子イオンを質量分析領域に移動させてその質量分析を行う方法である。イオン付着質量分析方法を実施する装置については、従来、いくつかの特許文献1〜6あるいは非特許文献1〜5で提案されている。
【0003】
本願発明の課題との関係で従来のイオン付着質量分析装置の一般的構成を図8を参照して説明する。図8において、1は金属イオン発生領域、2は付着領域、3は質量分析領域である。金属イオン発生領域1では金属イオンを発生するエミッタ4が配置されている。エミッタ4には図示しない電源から所要の電流が通電され、加熱される。加熱されたエミッタ4から金属イオンが放出される。5は発生した金属イオンの流れである。付着領域2には被測定ガス(試料ガス)の導入機構7および圧力計10が付設され、かつ真空ポンプ9が設けられる。付着領域2と質量分析領域3の間には隔壁8が設けられている。隔壁8には中央に孔8aが形成されている。質量分析領域3には、内部に質量分析計11が配置され、かつ真空ポンプ12が設けられている。
【0004】
金属イオン発生領域1では、アルカリ金属の酸化物を含むエミッタ4を600〜1200℃に加熱して正電荷の金属イオンを発生させている。Li+を得る場合には、アルミナシリケード(Al酸化物、Si酸化物)とLi酸化物から成るエミッタを使用する。Li酸化物の代わりにNa酸化物あるいはK酸化物を使用するとNa+やK+が得られる。エミッタ4には+10〜20Vのバイアス電圧が印加されているので、発生した正電荷の金属イオンは、電界によって0V(接地電位)である付着領域の方向に輸送される。
【0005】
被測定ガスの分子の存在している付着領域2に到達した金属イオンは、被測定ガス分子の電荷の片寄りのある場所に緩やかに付着する。金属イオンが付着した分子は全体として正電荷を持つイオン、すなわち付着イオンが生成される。付着の際に余分となるエネルギ、すなわち余剰エネルギは非常に小さいため解離は発生しない。
【0006】
しかし、金属イオンが脱離しないよう付着イオンを安定化させるため、余剰エネルギを雰囲気ガスとの衝突によって取り除く必要がある。また高い電圧によってエミッタ4から引き出された金属イオンを、雰囲気ガスとの衝突により1eV以下に減速させて付着の効率を上げる必要がある。この2つの効果を最大とするため、通常、付着領域2の圧力を100Pa程度にしている。
【0007】
質量分析領域3に輸送された付着イオンは、Qポール型質量分析計などの電磁気力を利用した質量分析計11によって質量ごとに分別されて計測される。質量分析計11は10-3Pa以下の圧力でしか動作できないので、付着領域2と質量分析領域3の間には圧力差を発生させる隔壁8が設けられている。図8は一般的な従来例を示したが、個々の従来装置では、差動排気領域の有無や真空ポンプの数などが異なっている場合もある。
【0008】
なお新しいエミッタ4を始めて加熱した場合、所望している本来のイオンだけでなく、不純物としてエミッタ4に混入している他のアルカリ金属も大量に発生することが不純物アルカリ金属の初期発生として知られている。例えば、Li酸化物のエミッタからはLiよりも桁違いに多いNa 、K、Rb、Csが発生する。しかしながら、これら不純物のアルカリ金属イオンは、数時間〜数十時間の加熱(エージジング)によって大幅に低減し、最終的にはほとんどが所望のイオンのみとなることも知られている。従って実際の測定では、十分なエージジングを行うことによってこの問題を解決している。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−11485号公報
【特許文献2】
特開2001−174437号公報
【特許文献3】
特開2001−351567号公報
【特許文献4】
特開2001−351568号公報
【特許文献5】
特開2002−124208号公報
【特許文献6】
特開2002−170518号公報
【非特許文献1】
ホッジ(Hodge),「アナリティカル・ケミストリ(Analytcal Chemistry)」,(米国),1976,vol.48,No.6,P.825
【非特許文献2】
ボムビック(Bombick),「アナリティカル・ケミストリ(Analytcal Chemistry)」,(米国),1984,vol.56,No.3,P.396
【非特許文献3】
藤井,「アナリティカル・ケミストリ(Analytcal Chemistry)」,(米国),1986,vol.61,No.9,P.1026
【非特許文献4】
藤井,「ケミカル・フィジクス・レターズ(Chemical Physics Letters)」,(米国),1992,vol.191,No.1.2,P.162
【非特許文献5】
藤井,「リャピド・コミュニケーション・イン・マス・スペクトロメトリ(Rapid Communication in Mass Spectrometry)」,(米国),2000,vol.14,P.1066
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
不純物アルカリ金属の初期発生の問題はエージングにより解決されているが、実際に多種多様の測定を行っていくにつれてエミッタ4に関連する以下のような問題があることが明らかになってきた。
【0011】
第1に、一旦は減少した不純物アルカリ金属が、ある種の反応性ガスと反応して再度増加する。例えば、フッ化化合物ガスでK+やNa+が急増する。
【0012】
第2に、アルカリ金属以外の不純物が、ある種の反応性ガスと反応してイオン化しやすい化合物を生成し、その化合物のイオンが発生する。例えば、フッ化化合物ガスとBaOxでBaFが生成され、BaF+が発生する。
【0013】
第3に、ある種の分解性ガスがエミッタ表面で熱分解し、直接熱イオン化あるいはLi付着によりイオンとして発生する。例えばフッ化化合物ガスでC37 +が発生する。
【0014】
第4に、エミッタから引き出された高エネルギかつ高濃度の金属イオンが雰囲気ガスに衝突し、電子を剥ぎ取り、イオンを生成する。例えば、N2の雰囲気ガスでN2 +を発生する。
【0015】
以上により、発生するイオンの種類と量は、ガス種やエミッタの諸条件によって大きく変化する。また第1の問題については、自身のイオンが検出されると共にLi+以外のアルカリ金属を含む複数の付着イオンを形成する。これら予測し得ないイオンは、干渉イオンとして本来測定すべきイオンの検出を妨害するだけでなくゴーストイオンとして本来含まれていない成分を存在するとの判断ミスを引き起こすので、被測定ガスの成分を正確に測定すべき定性分析にとって極めて深刻な問題となっている。
【0016】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、干渉イオンやゴーストイオンを防止して被測定ガスの成分を高精度に測定できる定性分析に適したイオン付着質量分析装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るイオン付着質量分析装置は、上記目的を達成するために、次の通り構成される。
【0018】
第1のイオン付着質量分析装置(請求項1に対応)は、金属イオン発生領域で発生させた正電荷の金属イオンを付着領域で被測定ガスの分子に付着させて付着イオンを生成し、その後、質量分析領域で付着イオンの質量分析を行う装置であって、金属イオン発生領域にイオン付着用の特定の金属イオンのみを通過させるフィルタを設け、上記特定の金属イオンのみを付着領域に導入するように構成される。
【0019】
第2のイオン付着質量分析装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、
好ましくは、フィルタは、電磁界におけるイオン挙動の質量依存性を利用して特定の金属イオンのみを通過させることを特徴とする。
【0020】
第3のイオン付着質量分析装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、金属イオン発生領域の圧力は、金属イオンの自由飛行が可能である1Paから最大10Paまでの圧力範囲に含まれることを特徴とする。
【0021】
【作用】
前述した第1〜第3の問題点は被測定ガスの存在が原因の1つになっているので、エミッタを被測定ガスと接触させないことが解決手段の1つとなる。そのため、金属イオン発生領域を不活性ガスで満たして被測定ガスを侵入させない、あるいは、金属イオン発生領域を別途に真空ポンプで排気して被測定ガスの濃度を下げる、などの方法があり得る。しかしこれらの方法では、エミッタと被測定ガスの接触頻度を2〜3桁減少させることは可能であるが、それ以上は困難である。イオン付着質量分析装置で測定可能な濃度範囲は6桁に及び、最小検出限界もppbレベルとなっているので、上記の解決方法に基づく被測定ガスの接触回避によっては、高精度な定性分析を保証することはできない。なお上記の第4の問題点は不活性な雰囲気ガスでも発生するので、ガス側での対策は不可能である。
その結果、金属イオンのエネルギや濃度を下げるしか方法がない。
【0022】
そこで本発明では、金属イオン発生領域に特定のイオンのみを通過させるフィルタを設置し、エミッタから発生したイオンのうちから所望のイオンのみを選別して付着領域に輸送する方法が有効であると考えられた。イオン選別手段であるフィルタには電磁界におけるイオン挙動の質量依存性を利用できる。ただし、イオン選別にはイオンが雰囲気ガス分子と衝突せずに自由飛行できるよう金属イオン発生領域を1Pa程度にすることが望ましい。そのためには、100Paである付着領域との間に隔壁を設置して圧力差を生じさせる、あるいは、電界による金属イオンの減速などにより付着領域の動作圧を低下させる、などの方法が必要とされる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成要素の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0025】
図1は本発明の第1実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図1において、図8で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付している。
【0026】
図1において、イオン付着質量分析装置は、金属イオン発生領域1、付着領域2、質量分析領域3を備える。金属イオン発生領域1では金属イオンを発生するエミッタ4が配置されている。エミッタ4には図示しない電源から所要の電流が通電され、エミッタ4は加熱される。加熱されたエミッタ4から金属イオンが放出される。5は発生した金属イオンの流れを示す。金属イオン発生領域1には、金属イオンの流れ5を囲むような位置関係で、電界による2組の偏向器6が設けられる。偏向器6は対向する矩形電極で形成される。対向する矩形の電極である2組の偏向器6はそれぞれエミッタ4側と付着領域2側に配置され、それらの軸心の向きは金属イオンの流れ5の方向とほぼ一致するようになっている。付着領域2には被測定ガス(試料ガス)の導入機構7および圧力計10が付設され、かつ真空ポンプ9が設けられる。金属イオン発生領域1と付着領域2の間に隔壁はなく、2つの領域は真空環境が共通の空間として形成されている。付着領域2と質量分析領域3の間には隔壁8が設けられている。隔壁8には中央に孔8aが形成されている。質量分析領域3には、内部に質量分析計11が配置され、かつ真空ポンプ12が設けられている。
【0027】
金属イオン発生領域1と付着領域2は真空的に共通となっており、圧力は約100Paとなっている。金属イオンとしてはLi+が使用されているが、Li+の100Paでの平均自由行程は0.1mm程度、金属イオン発生領域1、付着領域2の代表寸法は数十mm程度なので、Li+は雰囲気ガスと数百回も衝突し、自由飛行とはなっていない。
【0028】
雰囲気ガスと衝突しながら進むイオンの速度はドリフト速度として知られている。ドリフト速度はイオンの質量・大きさ、雰囲気ガスの種類・圧力によって変化する。そこで、2組の偏向器6をフィルタとして、ドリフト速度の差によって特定のイオンのみが通過するようにできる。すなわち、電界による偏向器6に偏向電圧E1を断続的に印加し、偏向電圧E1がOFFの時だけイオンは偏向されずに直進する。それぞれの偏向器6への偏向電圧E1におけるON/OFFの周期および位相を雰囲気ガスの種類・圧力に合せた適当な値とすれば、Li+のみを付着領域2に到達させることができる。
【0029】
上記の第1実施形態によれば、イオンが自由飛行しないのでイオンの選別精度がやや低下するが、イオン付着質量分析装置の各領域1,2,3の圧力は従来のままであるという利点を有している。
【0030】
次に図2を参照して本発明の第2実施形態を説明する。図2は本発明の第2実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図2において、図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第2実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0031】
図2において、金属イオン発生領域1と付着領域2との間に、比較的に大きな孔13aが形成された隔壁13が設けられる。隔壁13によって金属イオン発生領域1と付着領域2は分離される。金属イオン発生領域1を形成する容器部分に真空ポンプ14が設けられる。さらに金属イオン発生領域1には圧力計(真空計)15が付設されている。その他の構成は第1実施形態の構成と同じである。
【0032】
第2実施形態では、金属イオン発生領域1と付着領域2との間には隔壁13が設けられており、金属イオン発生領域1の圧力を1Pa、付着領域2の圧力を約100Paとして圧力差を生じさせている。金属イオンとしてはLi+が使用されているが、Li+の1Paでの平均自由行程は10mm程度、金属イオン発生領域1と付着領域2の代表寸法は数十mm程度なので、Li+は雰囲気ガスと数回しか衝突せず、十分な自由飛行となっている。
【0033】
自由飛行の場合、イオンの速度はイオンの質量のみに正確に依存する。原理的には電界強度にも依存するが、電界強度はエミッタのバイアス電圧で決まるので実際はすべて同じとなる。そこで、第1実施形態と同様の方法によってLi+のみを付着領域2に到達させることができる。
【0034】
第2実施形態の構成では、第1実施形態に比べて、偏向電圧E2のON/OFFの周期は速くなるように設定され、雰囲気ガスには依存しない高精度なイオン選別が可能となる。なお図2では、付着領域2を直接排気する真空ポンプを省略したが、必要に応じて設置することもできる。
【0035】
次に図3を参照して本発明の第3実施形態を説明する。図3は本発明の第3実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図3において、図1および図2で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第3実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0036】
図3において、金属イオン発生領域1に四重極子ポール16が配置される。この四重極子ポール16には好ましい高周波電圧E3が印加される。その他の構成は第2実施形態の構成と同じである。
【0037】
第3実施形態の構成では、四重極子ポール16がフィルタの機能を発揮する。
この四重極子ポール16に適当な高周波電圧E3を印加することにより、Li+のみを安定振動により通過させ、付着領域2に到達させることができる。
【0038】
第3実施形態の構成は、第1または第2の実施形態に比較すると、Li+を断続させることなく連続的に付着領域2に輸送することができ、感度の面で有利となる。
【0039】
次に図4を参照して本発明の第4実施形態を説明する。図4は本発明の第4実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図4において、図1および図2で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第4実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0040】
第4実施形態では、金属イオン発生領域1において磁界による偏向器17が設けられる。その他の構成は第2実施形態等の構成と同じである。
【0041】
第4実施形態では磁界による偏向器17がフィルタとなっている。エミッタ4は全体の軸に対して若干傾くように、好適には5〜10°の角度で傾くように設置されている。イオンは、進行方向に対して直角方向の磁界があると、質量に応じた偏向角の方向に進む。そこで、磁界による偏向器17に適当な電流を流すと、所要の磁界が形成され、Li+のみ進行方向が軸に合致し、付着領域2に到達する。なお図4では、分かりやすくするため、磁場の方向と偏向方向とが同一平面上に描かれているが、実際には直角となる。
【0042】
第4実施形態の構成によれば、第1〜第3の実施形態の場合に比較して、エミッタ4が傾いて設けられているため、エミッタ4からの光・蒸発物などが質量分析計11に到達せず、到達することで起きる各種問題を低減できる。
【0043】
次に図5を参照して本発明の第5実施形態を説明する。図5は本発明の第5実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図5において、図1および図2等で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第5実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0044】
第5実施形態では、エミッタ4の設置位置が偏った位置にされ、かつ金属イオン発生領域1に磁界による速度分別器18が設けられる。その他の構成は、第2実施形態等の構成と同じである。
【0045】
第5実施形態のイオン付着質量分析装置では、磁界による速度分別器18がフィルタとなっている。エミッタ4は、そのイオン放出方向が全体の軸に対して約30°傾くように設置されている。磁界による速度分別器18では図5中その紙面に垂直方向の磁界が形成されており、適当な磁界強度とすることによりLi+のみ進行方向が全体の軸(装置容器の軸心部)に合致し、付着領域2に到達させることができる。
【0046】
第5実施形態における速度分別器8は、例えば第4実施形態に比較すると、磁場形状が扇形となっており、空間的に広がったイオンを集束させる機能がある。
このため、選別によるイオン量の損失を防ぐことができる。またエミッタ4の傾斜がより強いので、質量分析計11への影響を完全に防ぐことができる。
【0047】
次に図6を参照して本発明の第6実施形態を説明する。図6は本発明の第6実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図6において、図1および図2等で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第6実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0048】
第6実施形態は第5実施形態の変形であり、上記の扇形状をした磁界による速度分別器18の中心点側部分と円弧側部分を少し短縮し、その外側に、電界による速度分別器19を配置している。磁界による速度分別器18の作用は第5実施形態の場合と同じであり、これに対してさらに電界による速度分別器19を付設することによって、電磁界重畳の速度分別器が構成される。その他の構成は、第5実施形態の構成と同じである。
【0049】
第6実施形態に係るイオン付着質量分析装置では、電磁界重畳による速度分別器がフィルタとなっている。電磁界重畳による速度分別器では、図6の紙面に垂直方向の磁界と共に当該紙面と平行方向の曲率を持った電界が形成されている。
適当な電界強度および磁界強度とすることにより、Li+のみ進行方向が軸に合致し、付着領域2に到達させることができる。
【0050】
第6実施形態によれば、第5実施形態の場合に比較すると、空間的に広がったイオンだけでなく、速度的にも広がったイオンを集束させる機能がある。その結果、より多くの金属イオンを付着領域2に到達させることができる。
【0051】
次に図7を参照して本発明の第7実施形態を説明する。図7は本発明の第7実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。図7において、図6等で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。以下では第7実施形態の特徴的な構成が説明される。
【0052】
第7実施形態は第6実施形態の変形例であり、第6実施形態の構成においてさらに隔壁13をなくし、付着領域2に金属イオンの減速器20を配置して成るものである。その他の構成は、第6実施形態の構成と同じである。
【0053】
第7実施形態では、第6実施形態と同様に電磁界重畳による速度分別器18,19がフィルタとなっている。さらに付着領域2の圧力が1Paであり、当該付着領域2に筒型の金属イオン減速器20が設置されている。
【0054】
上記の各実施形態では金属イオンの減速を1つの目的として付着領域2の圧力を100Paとしていたが、本実施形態は、これを金属イオンの減速器20によって代わりに実現している。すなわち、金属イオンの減速器20により進行方向と逆向きの電界を形成し、金属イオンの並進エネルギを1eV以下まで減速している。これにより、付着効率を大きく変えずに付着領域2の圧力を1Paとすることが可能となっている。その結果、付着領域2と金属イオン発生領域1が同じ圧力となり、その間の隔壁が不要となり、金属イオンを損失なく付着領域2に輸送できるようになった。また真空ポンプ14の負荷を軽減できる。
【0055】
上記の各実施形態において、本発明は、以下のような変更を行うことも可能である。
【0056】
磁界による偏向器、磁界による速度分別器、および電磁界重畳による速度分別器によるフィルタにおいて磁界を発生させる場合、コイルの代わりに、永久磁石を使用することができる。特に、金属イオンの種類が固定されている場合、磁界強度の調整が不必要なので、永久磁石の方が小型・電源不要などの点で利点を有している。
【0057】
磁界による速度分別器、および電磁界重畳による速度分別器によるフィルタでは、イオンの曲げ角を30°としているが、これは60°、あるいは90°であっても構わない。角度集束や速度集束の条件、装置内での位置関係などで有利なものを選択できる。
【0058】
付着領域の圧力を低下させた第7実施形態では、電磁界重畳による速度分別器をフィルタとしたが、これは当然ながら他の形式も適用できる。また金属イオンの減速器による圧力の低下と、隔壁による圧力差の発生とを、同時に採用することもできる。
【0059】
第2実施形態〜第7実施形態では、金属イオン発生領域の圧力を平行自由行程が約10mmの1Paとしたが、1Paに限定されず、金属イオンが実質的に自由飛行できる圧力範囲であれば良い。厳密には、雰囲気ガスの並進エネルギは0.04eVであって、減速した金属イオンと比べても大きな差があるので、10回程度の衝突では実質的に自由飛行となる。また、雰囲気ガスと衝突せずに飛行できる距離は分布を持っており、全数の1%は平均自由行程の約5倍となっている。そこで、金属イオン発生領域の代表的寸法を50mmとやや大きめに見積もって、付着領域の圧力を平均自由行程が約1mmの10Paとしても1%のイオンが自由飛行することになる。従って、実用的観点から2桁以内の感度低下の範囲として、金属イオン発生領域の圧力は最大10Paでも構わない。
【0060】
金属イオンとしてはLi+を使用したしたが、これに限定されず、K+、Na+、Rb+、Cs+、Al+、Ga+、In+などに適用できる。また質量分析計としてはQポール型質量分析計を使用したが、これに限定されず、外部イオン化方式によるイオントラップ型質量分析計、磁場セクタ型質量分析計、TOF(飛行時間)型質量分析計、ICR(イオンサイクロトロンレゾナンス)型質量分析計も使用することができる。
【0061】
被測定ガスとしては最初からガス状のもの以外に、本来は固体・液体であっても何らかの手段でガス状になっていればよい。また本装置を他の成分分離装置、例えばガスクロマトグラフや液体クロマトグラフに接続して、ガスクロマトグラフ/質量分析装置(GC/MS)、液体クロマト/質量分析装置(LC/MS)とすることもできる。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、金属イオン発生領域と付着領域と質量分析領域を有するイオン付着質量分析装置において、金属イオン発生領域にイオン付着用の特定の金属イオンのみを通過させるフィルタを設け、上記特定の金属イオンのみを付着領域に導入するようにしたため、干渉イオンやゴーストイオンを防止でき、被測定ガスの成分を高精度に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図5】本発明の第5実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図6】本発明の第6実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図7】本発明の第7実施形態に係るイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【図8】従来のイオン付着質量分析装置の内部構造を概略的に示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 金属イオン発生領域
2 付着領域
3 質量分析領域
4 エミッタ
5 金属イオンの流れ
6 電界による偏向器
7 被測定ガスの導入機構
8 隔壁
10 圧力計
11 質量分析計
16 四重極子ポール
17 磁界による偏向器
18 磁界による速度分別器
19 電界による速度分別器

Claims (3)

  1. 金属イオン発生領域で発生させた正電荷の金属イオンを付着領域で被測定ガスの分子に付着させて付着イオンを生成し、その後、質量分析領域で前記付着イオンの質量分析を行う装置において、
    前記金属イオン発生領域に付着させるべき特定の金属イオンのみを通過させるフィルタを設け、前記特定の金属イオンのみを前記付着領域に導入することを特徴とするイオン付着質量分析装置。
  2. 前記フィルタは、電磁界におけるイオン挙動の質量依存性を利用して前記特定の金属イオンのみを通過させることを特徴とする請求項1記載のイオン付着質量分析装置。
  3. 前記金属イオン発生領域の圧力は、前記金属イオンの自由飛行が可能である1Paから最大10Paまでの圧力範囲に含まれることを特徴とする請求項1または2記載のイオン質量分析装置。
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