JP3941263B2 - 圧電素子の周波数調整方法および圧電素子を用いた通信機器 - Google Patents

圧電素子の周波数調整方法および圧電素子を用いた通信機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は圧電素子の周波数調整方法および圧電素子を用いた通信機器に関し、特にたとえば、長さ振動をする圧電共振子などの圧電素子の周波数調整方法と、周波数調整をした圧電素子を用いた通信機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来の圧電素子の周波数調整方法の一例を示す斜視図である。周波数調整される圧電素子1としては、たとえば、圧電体基板2と、圧電体基板2の両面に形成された電極3とからなる圧電共振子などがある。圧電体基板2は、図9の矢印に示すように、厚み方向に分極され、その両面の電極3間に電界を加えることにより、長さ振動が励振される。この圧電素子1の周波数調整を行うために、たとえば、レーザビームを用いて圧電素子1の長手方向の端部が除去される。それにより、圧電素子1の端部の質量が変化し、圧電素子の周波数が調整される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような圧電素子の調整方法では、レーザビームによる加工部の近傍が加熱され、その部分において分極消失が発生し、圧電素子の電気的特性の劣化を引き起こす。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、電気的特性を劣化させることなく、圧電素子の周波数を調整することができる圧電素子の周波数調整方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、このような圧電素子を用いることにより、優れた特性を有する通信機器を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、長手方向を有する基体を含む圧電素子の周波数調整方法であって、基体は、圧電的に活性な活性部と、圧電的に不活性な不活性部とを含み、活性部は、複数の圧電体と電極とを長手方向に積層した積層体で構成されるとともに、基体の長手方向に電界を加えて、基体に長さ振動を励振するものであり、不活性部は、基体内において分極されていない構成か、あるいは電界が印加されない構成の少なくともいずれかであって、不活性部のみをレーザビームで除去することにより周波数を調整する、圧電素子の周波数調整方法である。
また、この発明は、検波器を有する通信機器であって、上述の周波数調整方法で調整された圧電素子が検波器に用いられた、通信機器である。
さらに、この発明は、バンドパスフィルタを有する通信機器であって、上述の周波数調整方法で調整された複数の圧電素子を用いたラダーフィルタがバンドパスフィルタに用いられた、通信機器である。
【0006】
圧電素子の端部にある不活性部をレーザビームで部分的に除去することにより、除去した部分の質量が変化して周波数を調整することができる。また、圧電素子の中央部にある不活性部をレーザビームで部分的に除去することにより、中央部の剛性が変化して周波数を調整することができる。ここで、基体に振動を生じさせない不活性部をレーザビームで部分的に除去したとき、その周囲の不活性部に熱による影響があったとしても、活性部の圧電体に熱による影響が伝わらないため、圧電素子の電気的特性に影響を与えることがない。
このような不活性部の例として、基体内において分極されていない部分や、分極されていても電界が印加されない部分としたものがあり、これらの部分にレーザビームによる熱の影響があっても、電気的特性には関係しない
のような圧電素子としては、圧電体と電極とを長手方向に積層した活性部に電界を加えて長さ振動モードの基本振動を励振する圧電共振子などがある。
このような調整方法で周波数を調整した圧電素子を通信機器の検波器やバンドパスフィルタに用いることにより、優れた検波特性を有する通信機器を得ることができる。
【0007】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の周波数調整方法に用いられる圧電素子の一例を示す斜視図であり、図2はその図解図である。圧電素子10は、たとえば直方体状の基体12を含む。基体12は、たとえば圧電セラミック材料で形成される。基体12内には、複数の電極14が形成される。電極14は、その面が基体12の長手方向に直交するように形成される。したがって、基体12は、複数の電極14と圧電体とが長手方向に積層された構造を有する。圧電体は、図2の矢印で示すように、1つの電極14の両側において、互いに逆向きとなるように基体12の長手方向に分極される。
【0009】
基体12の対向する側面には、それぞれ複数の絶縁膜16,18が形成される。基体12の一方の側面においては、電極14の露出部が、1つおきに絶縁膜16で被覆される。また、基体12の他方の側面においては、一方の側面で絶縁膜16に被覆されていない電極14の露出部が、1つおきに絶縁膜18で被覆される。ただし、基体12の両端側の電極14のいくつかは、連続して絶縁膜16,18で被覆される。この圧電素子10では、基体12の両端側から連続して3つの電極14が、絶縁膜16で被覆される。また、基体12の両端側から連続して2つの電極14が、絶縁膜18で被覆される。これらの絶縁膜16,18が形成された基体12の2つの側面が、後述の外部電極との接続部となる。
【0010】
さらに、これらの接続部、すなわち基体12の絶縁膜16,18が形成された側面には、外部電極20,22が形成される。したがって、外部電極20には絶縁膜16で被覆されていない電極14が接続され、外部電極22には絶縁膜18で被覆されていない電極14が接続される。つまり、電極14の隣合うものが、それぞれ電極20および電極22に接続される。ただし、基体12の両端側においては、電極14のいくつかが外部電極20,22に接続されない。
【0011】
この圧電素子10では、外部電極20,22が入出力端電極として使用される。このとき、基体12の中央部では、隣合う電極14間に電界が印加されるため、基体12は圧電的に活性となる。しかしながら、基体12の両端部においては、電極14が絶縁されているため、隣合う電極14間に電界が印加されず、圧電的に不活性となる。したがって、図2に斜線で示すように、基体12の中央部に入力信号に対する活性部24が形成される。また、基体12の両端部に入力信号に対する不活性部26が形成される。
【0012】
この圧電素子10では、外部電極20,22に信号を与えることにより、活性部24の互いに逆向きに分極した圧電体に、互いに逆向きの電圧が印加されるため、圧電体は全体として同じ向きに伸縮しようとする。そのため、圧電素子10全体としては、基体12の長手方向の中心部をノードとした長さ振動の基本モードが励振される。この圧電素子10では、活性部24の分極方向,信号による電界方向および振動方向が一致する。つまり、この圧電素子10は、圧電縦効果を利用した共振子となる。
【0013】
この圧電素子10の周波数調整を行うために、図3に示すように、基体12の両端部の不活性部26にレーザビームが照射される。それによって、不活性部26が部分的に除去され、基体12の端部の質量が減少し、圧電素子10の周波数を上げることができる。このとき、不活性部26の除去部分の形状としては、図3に示すように、基体12の端面からレーザビームを照射して不活性部26の端面に溝状に加工することができる。また、基体12の上面から不活性部26の端部にレーザビームを照射し、段状に加工してもよい。
【0014】
このような調整方法では、基体12の不活性部26を部分的に除去するため、レーザビームによる熱によって不活性部26の分極が消去されても、圧電素子10の電気的特性に影響はない。なお、不活性部26部分は、分極されていて電界が加わらない構造のほか、分極されていない構造であってもよい。この場合、レーザビームを照射して不活性部26を部分的に除去しても、その近傍は分極されていないため、分極の消滅ということがなく、圧電素子10の電気的特性に影響を与えることはない。
【0015】
また、不活性部26は、基体12の端部に形成されるだけでなく、図4に示すように、基体12の中央部に形成されてもよい。この場合、不活性部26にレーザビームを照射して、不活性部26を部分的に除去することにより、基体12の中央部の剛性が小さくなり、圧電素子10の周波数を下げることができる。この場合においても、上述した理由により、不活性部26を部分的に除去するときに、レーザビームによる熱が圧電素子10の電気的特性に影響を及ぼさない。
【0018】
なお、圧電素子10としては、図5に示すように、基体12の1つの側面に2つの外部電極20,22を形成してもよい。この場合、基体12の1つの側面において、2列に絶縁膜16,18が形成されることにより、2列の接続部が形成される。これらの2列の絶縁膜16,18は、それぞれ1つおきの電極14上に形成される。このとき、2列の絶縁膜16,18は、互いに異なる電極14上に形成される。そして、これらの絶縁膜16,18の形成された部分に、2列の外部電極20,22が形成される。このような圧電素子10についても、基体12の端部または中央部に不活性部26を形成し、この不活性部26にレーザビームを照射して、不活性部26を部分的に除去し、周波数を調整することができる。
【0019】
このようにして周波数調整された圧電素子10は、たとえば発振子やディスクリミネータなどとして使用することができる。また、図6に示すように、複数の圧電素子10を用いて、ラダーフィルタ11を形成することができる。このようなラダーフィルタ11では、基板50上に4つの圧電素子10a,10b,10c,10dが取り付けられている。なお、ここで用いられる圧電素子10a〜10dは、図1の実施例に示した構造のものであるが、図5の実施例に示す構造のものであっても同様の構成とすることができる。
【0020】
この圧電素子10では、基板50上に、4つのパターン電極60,62,64,66が形成される。これらのパターン電極60〜66には、間隔を隔てて一列に配置される5つのランドが形成される。この場合、基板50の一端から1番目のランドL1はパターン電極60に形成され、2番目のランドL2および5番目のランドL5はパターン電極62に形成され、3番目のランドL3はパターン電極64に形成され、4番目のランドL4はパターン電極66に形成される。そして、導電接着剤によって、圧電素子10a〜10dと、1番目〜5番目のランドL1〜L5とが接続される。このラダーフィルタ11では、図7に示す梯子型の回路が得られるようにパターン電極60〜66が形成されている。そして、基板50上に、金属キャップ(図示せず)がかぶせられる。このようなラダーフィルタ11においても、不活性部26をレーザビームで除去することにより、電気的特性を劣化させることなく圧電素子10a〜10dの周波数調整を行うことができ、優れた特性を有するものとすることができる。
【0021】
図8はこの発明にかかるダブルスーパーヘテロダイン受信機の一例を示すブロック図である。図8に示すダブルスーパーヘテロダイン受信機100はアンテナ102を含む。アンテナ102は入力回路104の入力端に接続される。入力回路104は、アンテナ102と後述の高周波増幅器106とのインピーダンス整合を行い、希望波を選択する同調回路あるいはバンドパスフィルタが用いられる。入力回路104の出力端は、高周波増幅器106の入力端に接続される。高周波増幅器106は、微弱な電波を低雑音増幅し感度を向上させ、また、イメージ周波数選択度を改善するためのものである。高周波増幅器106の出力端は、第1の周波数混合器108の入力端に接続される。第1の周波数混合器108は、希望波と第1の局部発振波とを混合して和または差の第1の中間周波をつくるためのものである。第1の周波数混合器108の別の入力端には、第1の局部発振器110の出力端が接続される。第1の局部発振器110は、第1の中間周波をつくるための第1の局部発振波を発振するためのものである。第1の周波数混合器108の出力端は、第1のバンドパスフィルタ112の入力端に接続される。第1のバンドパスフィルタ112は、第1の中間周波を通過するためのものである。第1のバンドパスフィルタ112の出力端は、第2の周波数混合器114の入力端に接続される。第2の周波数混合器114は、第1の中間周波と第2の局部発振波とを混合して和または差の第2の中間周波をつくるためのものである。第2の周波数混合器114の別の入力端には、第2の局部発振器116の出力端が接続される。第2の局部発振器116は、第2の中間周波をつくるための第2の局部発振波を発振するためのものである。第2の周波数混合器114の出力端は、第2のバンドパスフィルタ118の入力端に接続される。第2のバンドパスフィルタ118は、第2の中間周波を通過するためのものである。第2のバンドパスフィルタ118の出力端は、中間周波増幅器120の入力端に接続される。中間周波増幅器120は、第2の中間周波を増幅するためのものである。中間周波増幅器120の出力端は、検波器122の入力端に接続される。検波器122は、第2の中間周波から信号波を得るためのものである。検波器122の出力端は、低周波増幅器124の入力端に接続される。低周波増幅器124は、スピーカを駆動できるレベルまで信号波を増幅するためのものである。低周波増幅器124の出力端は、スピーカ126に接続される。
【0022】
そして、この発明では、そのダブルスーパーヘテロダイン受信機100において、検波器122に上述の調整方法で周波数調整をした圧電素子10が用いられてもよく、また、第1のバンドパスフィルタ112および第2のバンドパスフィルタ118の少なくとも一方、または双方に上述のラダーフィルタ11が用いられてもよい。
【0023】
また、この発明では、シングルスーパーヘテロダイン受信機において、検波器に上述の圧電共振子が用いられてもよく、また、バンドパスフィルタに上述のラダーフィルタが用いられてもよい。
【0024】
この発明の周波数調整方法で調整した圧電素子10は、所望の周波数特性を得ることができるとともに電気的特性の劣化がなく、このような圧電素子10を受信機に用いることにより、優れた特性を有する通信機器を得ることができる。
【0026】
【発明の効果】
この発明によれば、基体の不活性部をレーザビームで除去することにより、電気的特性に影響を与えることなく所望の周波数特性を有する圧電素子を得ることができる。その結果、加工条件を広くすることができ、効率的な加工が可能となる。さらには、周波数調整のための加工が容易であり、バリなどの発生も少ない。また、この発明の周波数調整方法で調整した圧電素子を通信機器に用いることにより、優れた特性を有する通信機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の周波数調整方法に用いられる圧電素子の一例を示す斜視図である。
【図2】 図1に示す圧電素子の構造を示す図解図である。
【図3】 図1に示す圧電素子の端部に形成された不活性部をレーザビームで除去する状態を示す図解図である。
【図4】 図1に示す圧電素子の中央部に形成された不活性部をレーザビームで除去する状態を示す図解図である。
【図5】 この発明の周波数調整方法に用いられる圧電素子の他の例を示す図解図である。
【図6】 この発明の周波数調整方法で調整した圧電素子を用いたラダーフィルタの一例を示す図解図である。
【図7】 図6に示すフィルタの回路図である。
【図8】 この発明にかかるダブルスーパーヘテロダイン受信機の一例を示すブロック図である。
【図9】 従来の圧電素子の周波数調整方法を示す図解図である。
【符号の説明】
10 圧電素子
11 ラダーフィルタ
12 基体
14 電極
16,18 絶縁膜
20,22 外部電極
24 活性部
26 不活性部
50 基板
60,62,64,66 パターン電極
100 ダブルスーパーヘテロダイン受信機
102 アンテナ
104 入力回路
106 高周波増幅器
108 第1の周波数混合器
110 第1の局部発振器
112 第1のバンドパスフィルタ
114 第2の周波数混合器
116 第2の局部発振器
118 第2のバンドパスフィルタ
120 中間周波増幅器
122 検波器
124 低周波増幅器
126 スピーカ

Claims (3)

  1. 長手方向を有する基体を含む圧電素子の周波数調整方法であって、
    前記基体は、圧電的に活性な活性部と、圧電的に不活性な不活性部とを含み、
    前記活性部は、複数の圧電体と電極とを長手方向に積層した積層体で構成されるとともに、前記基体の長手方向に電界を加えて、前記基体に長さ振動を励振するものであり、
    前記不活性部は、前記基体内において分極されていない構成か、あるいは電界が印加されない構成の少なくともいずれかであって、
    前記不活性部のみをレーザビームで除去することにより周波数を調整する、圧電素子の周波数調整方法。
  2. 検波器を有する通信機器であって、請求項1に記載の周波数調整方法で調整された圧電素子が前記検波器に用いられた、通信機器。
  3. バンドパスフィルタを有する通信機器であって、請求項1に記載の周波数調整方法で調整された複数の圧電素子を用いたラダーフィルタが前記バンドパスフィルタに用いられた、通信機器。
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