JP3940651B2 - フッ化水素酸の回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
半導体製造工場や、ブラウン管製造工場などから排出されるフッ素含有排水からフッ化水素酸を回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フッ化水素酸は、半導体製造工程や金属・ガラスなどの表面処理において多量に消費されている。これらの排水はフッ素を含有しており、自然環境に影響を及ぼすため、排出量を規制した排出基準が定められている。このため、一般に消石灰、カルシウムカーバイト、塩化カルシウムなどのカルシウム含有物質を添加して、難溶性のフッ化カルシウムを生成・沈殿させ、除去したのち排出している(例えば特開2001−54791号公報参照)。
【0003】
しかし、この処理法は、その過程で、排水の中和処理に塩酸、硫酸などを多量に使用しており、これらの反応生成物や、生成するカルシウム化合物を含有する汚泥が大量に発生し、その廃棄問題など、環境問題を考慮したものと云い難い。このようなことから、近年フッ素含有水からのフッ化水素酸のリサイクルが望まれている。このリサイクル法としては、排水処理後に発生したカルシウム系汚泥を原料とする回収法やフッ素キレート樹脂での分離物を原料とする回収法などが試みられている。
【0004】
前記カルシウム汚泥法は、フッ素含有排水を水酸化カルシウムなどのカルシウム系化合物で処理してフッ化カルシウム含有汚泥を生成させ、このフッ化カルシウム含有汚泥を硫酸と混練し、加熱反応によりフッ化水素ガスを発生させた後、水に吸収させて回収する方法である。また、フッ素キレート樹脂法は、フッ素含有排水中のフッ素を選択的に樹脂中に吸着させ、アルカリ溶液で溶離を行なった後、硫酸を添加し蒸留によって回収する方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記カルシウム系化合物処理によるカルシウム汚泥からのフッ化水素酸の回収は、回収効率が高いとはいえず、排水処理コストが高いことや回収汚泥中のフッ素濃度が少ないことなどから、経済的に非現実的なものであった。また、前記フッ素キレート樹脂法の場合も、高価な樹脂や大型な吸着塔などが必要なため、経済的に不利であるという問題があるばかりでなく、高濃度フッ素含有水では、頻繁に樹脂の再生を行なう必要があった。
本発明は、フッ素含有水からフッ化水素酸の回収方法における従来法の上記課題を解決するためになされたもので、簡便な工程によって、フッ素排水からの回収の効率を向上させ、経済的なフッ化水素酸の回収方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フッ素含有水にリン系化合物を含有するカルシウム系化合物反応剤を添加してフッ化カルシウム含有反応生成物を生成させた後、前記フッ化カルシウム含有反応物を無機酸と反応させてフッ化水素酸を回収する方法において、
前記フッ素含有水に前記カルシウム系化合物反応剤を添加して処理を行なう際に、この反応系に二酸化炭素を添加することを特徴とするフッ化水素酸の回収方法である。
【0007】
前記本発明において、前記リン系化合物を含有するカルシウム系化合物反応剤としては、カルシウム化合物とリン酸系原料により反応させて生成させた水酸化リン酸カルシウムであることが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施の形態によって説明する。
[第1の実施の形態]
本実施の形態の回収方法は、フッ素含有水と、カルシウム系化合物反応剤を二酸化炭素の存在下で反応させ、フッ化カルシウム含有反応生成物を形成する工程と、このフッ化カルシウム含有反応生成物を無機酸で処理し、フッ化水素酸に転換する工程からなっている。以下、本発明の実施の形態を工程順に説明する。
【0009】
(第1工程)
本発明の第1工程は、フッ素含有水とカルシウム系化合物反応剤を二酸化炭素の存在下で反応させフッ化カルシウム含有反応生成物を形成するカルシウム化合物反応剤法を用いた工程である。
【0010】
本実施の形態のカルシウム化合物反応剤法は、フッ素含有水にカルシウム化合物および二酸化炭素を加えることによって、以下の2つの反応を利用している。
1.フッ素含有水とカルシウム化合物とを直接反応させて、フッ化カルシウムを生成させること。
2.カルシウム化合物と二酸化炭素とを反応させて水酸化カルシウムとし、水酸化カルシウムとフッ素含有水とからフッ化カルシウムを生成させること。
すなわち、本工程においては、カルシウム塩のフッ素含有水への添加によって溶解したカルシウムイオンとフッ素イオンとの反応物であるふっ化カルシウムの生成(反応1:Ca2+ +2F→CaF)、および未反応のカルシウム化合物の内、フッ素含有水中に投入されたことで生成された水酸化カルシウムと二酸化炭素との反応で合成された炭酸カルシウム反応2:Ca(OH)+CO→CaCO)へのフッ素イオンの吸着反応を生じさせることで、処理液中にフッ化カルシウムを沈殿させて、効率的にフッ素イオンを回収することができるものである。
【0011】
本実施の形態において用いられるカルシウム系化合物反応剤は、金属カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムカーバイトなど、水に溶解してカルシウムイオンを生成するか、もしくは水と反応して水酸化カルシウムを生成する物質を用いることができる。また、その反応剤の形態は、水溶液状で被処理水に添加してもよいし、スラリー状で添加しても差し支えないが、最も望ましい反応剤は、スラリー状水酸化カルシウムである。このスラリーの濃度は、分散状体の維持が困難でなければ、可能な限り高い濃度で添加することが望ましい。また、スラリーを構成する粒子の粒径は、反応が速やかに進行するように可能な限り微粒子であることが望ましい。
被処理水と反応剤との反応は、温度が高いほど反応が促進されるので、加熱して行うことが望ましい。加熱温度は、室温〜80℃の範囲が望ましい。また、反応中は攪拌することによって反応が促進されるため望ましい。
【0012】
また、フッ素含有水と前記カルシウム系化合物反応剤との混合物に添加して用いられる二酸化炭素は、ドライアイス、ボイラー排ガスなど、水中で二酸化炭素を発生する物質を用いることができる。すなわち、フッ素イオン含有水にカルシウム系化合物反応剤を添加した反応系に、ドライアイスを直接添加し、二酸化炭素ガスを発生させてもよいし、二酸化炭素の豊富な燃焼ガスを反応系に直接吹き込み、バブリングして系内に二酸化炭素ガスを溶解してもよい。
【0013】
上記反応によって生成するフッ化カルシウム含有反応生成物の粒子が微細で、沈降が速やかに起こらない場合には、アルミニウム系無機化合物や高分子物質のような、凝集剤を加えることによって、生成物の沈降が促進され、従来より少ないカルシウム系化合物反応剤の使用量で、効率よくフッ素含有水からフッ素含有反応生成物を生成することができる。この凝集剤添加によるコロイド状フッ化カルシウムの凝集沈殿作用(反応3:CaF+Al(OH)→Al(OH)・CaF)によるものと考えられる。
【0014】
(第2の工程)
本発明の第2の工程は、前記工程で得られたフッ化カルシウム含有反応生成物を無機酸で処理し、フッ化水素を生成させるものである。具体的には、フッ化カルシウム含有反応生成物を高濃度の無機酸と混合し、加熱してフッ化水素を生成するものである。
本工程において用いられる無機酸としては、硫酸、硝酸、塩酸などの強酸を用いることが好ましく、特に硫酸が適している。その濃度は、5〜36mol/lの範囲が好ましい。また、反応温度は、室温〜500℃の範囲が好ましい。反応温度が、この範囲を下回った場合、反応速度が遅く、実用的ではない。一方、反応温度が、上記範囲を上回った場合、生成するフッ化水素による反応装置の腐食が促進されるため、実用的ではない。
【0015】
上記工程で、フッ化水素はガス状で生成するので、これを水中にバブリングすることによって水に溶解させ回収することができる。また、同時に、上記加熱によってダストや、無機酸を含有する水性蒸気が発生するが、回収するフッ化水素酸の純度を低下させるため、フッ化水素酸の回収の前にこれらを除去することが望ましい。
本実施の形態によれば、これらの工程によって、効率的に純度の高いフッ化水素酸をフッ素含有水から回収することができる。
【0016】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、前述の第1の実施の形態において、フッ素含有水に添加する反応剤として、カルシウム系化合物に加えてリン系化合物を併用して反応させることによってアパタイト系化合物を生成することによって、さらに回収効率を改善するものである。
本実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態においても、前述の第1の実施の形態と同様、フッ素含有水とカルシウム系化合物およびリン系化合物を含有する反応剤とを反応させる第1の工程と、このリン系化合物含有フッ化カルシウム含有反応生成物を無機酸で処理する第2の工程からなるものである。
【0017】
本実施の形態の第1の工程は、フッ素含有水をカルシウム系化合物とリン系化合物からなる反応剤で処理する工程であるが、このカルシウム系化合物とリン系化合物としては、カルシウム系化合物とリン酸系化合物との反応により生成した水酸化リン酸カルシウムであることが望ましい。
この工程は、具体的には、まず、カルシウム塩にリン系化合物を添加し、一部のカルシウム塩をリン系化合物と反応させて、形成された水酸化カルシウムとリン酸カルシウムの混合物もしくは複合塩を含有する生成物を調整し、ついで、フッ素含有水にこの水酸化カルシウムとリン酸カルシウムとを含むスラリー状混合物を加えた後、二酸化炭素を含む気体を吹き込んで水酸化カルシウムと反応させて炭酸カルシウムを生成させることによって、フッ化カルシウムの生成分離を促進し、反応を進行させることができる。本実施の形態において、水酸化カルシウムとリン酸カルシウムの混合物としては、水酸化リン酸カルシウムが望ましい。
【0018】
本実施の形態において用いられるリン系化合物としては、五酸化リン、四酸化リン、次亜リン酸、リン酸など挙げられが、カルシウム化合物と反応して、水酸化リン酸カルシウムを生成するものであれば、どのような薬品でもよい。水酸化カルシウムとリン酸カルシウムの化学当量比は、1:0.5〜10の範囲が好ましく、より好ましくは1:1〜4である。
上記方法は、前述の第1の実施の形態における反応1〜3とともに、リン系化合物添加で合成されたリン酸カルシウムとフッ素イオンとの反応物のフルオロアパタイトの生成反応(反応4:5Ca(OH)+3HPO+HF→CaF(PO+10HO)が併せて発生し、より効率的にフッ素イオンの分離回収が促進されるものと考えられる。
【0019】
本実施の形態においても、生成するフッ化カルシウム含有反応生成物の粒径が微細で水からの分離が困難である場合には、アルミニウム系無機凝集剤を加えることによって、従来よりさらに少ないカルシウム反応剤の使用量で、効率よくフッ素含有水からフッ素原料の作製・濃縮が生される。
【0020】
前記工程で生成したフルオロアパタイトを含有する反応生成物は、前述の第1の実施の形態における第2の工程と同様にして、無機酸との反応によりフッ化水素を生成する。
【0021】
以上に説明した本発明のフッ素化合物の回収方法は、半導体製造工場において半導体基板のエッチング処理に用いられた排水、あるいはブラウン管製造工場において金属板のエッチング処理に用いられたフッ化水素酸を用いて、半導体装置や金属の表面処理を行い、排出されるフッ素含有水であり、排水中のフッ素含有量としては、50〜5000ppm程度の含有しているものが経済的に回収を行える点で適している。この排水としては、pHが2〜12の範囲であれば本発明の方法を適用することができる。また、排水中に含まれている他の成分としては、上記反応を阻害しない限りいかなる成分が含まれていても差し支えない。
【0022】
【実施例】
以下、実排水からフッ化水素酸を回収した実施例をもって本技術を説明する。
参考例1
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れ、スラリー状25%水酸化カルシウム4kgを排水に加えた後、攪拌しながら煙道ガス(ボイラーガス、二酸化炭素濃度約10%)で溶液のpHが8.5になるまでバブリングした。この溶液に凝集剤の塩基性ポリ塩化アルミニウム溶液(10%)1L加えて約5分間攪拌した後、更に高分子凝集剤(0.05%)溶液を1L加えて約10分間攪拌して凝集沈殿させた。約30分間静置した後、上澄み液を排出した。反応装置の底部から沈殿物を抜き取り、フィルタープレスにより含水率約60%の汚泥とした。この汚泥を硫酸2.5Kgと混練しローターキルンに送り、外部から約400℃に加熱してフッ化水素酸を発生させた。これをキルン頭部のガス取り出し口からスクラバーに導いて冷却し、ガス中のダストと硫酸ミストを分離除去した後、ガスを吸収塔で水に吸収させてフッ化水素酸を回収した。表1には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。これらの結果は、フッ化水素酸の回収率も高く、処理排水のF濃度も排水基準値(8mg/L)以下となっており、また、回収コストも現状の汚泥処理費も含めた排水処理コスト50〜100円/mと大差ないことから、十分に経済的採算が取れるものである。
【0023】
【表1】
Figure 0003940651
【0024】
参考例2
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れ、スラリー状25%水酸化カルシウム8kgを排水に加えた後、攪拌しながら煙道ガス(ボイラーガス、二酸化炭素濃度約10%)で溶液のpHが8.5になるまでバブリングした。以下の実施例1と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。ただし、硫酸は5Kg使用した。表1には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は参考例1とほぼ変わらないものの、固形合成物中のフッ素比率が減少し、回収コストが高くなった。これは水酸化カルシウムと硫酸の使用量が多くなったことによるものである。しかし、処理排水中のフッ素濃度は低下する。
【0025】
【表2】
Figure 0003940651
【0026】
(実施例
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れた。つぎにスラリー状25%水酸化カルシウム4kgをプラスチック容器に入れ、リン酸(1+3)0.5Kgを加えてスラリー状の混合物を作製した。これを排水に加えた後、攪拌しながら煙道ガス(ボイラーガス、二酸化炭素濃度約10%)で溶液のpHが8.5になるまでバブリングした。以下参考例1と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。表3には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は参考例1より向上した。これは、フッ化カルシウム(CaF)に比べ、フルオロアパタイト[CaF(PO]が硫酸と反応しやすいことと、排水中のフッ素を効率よく捕集できたことによるものと考えられる。回収コストは、参考例1に比べ若干高くなったが、処理排水中のフッ素濃度は大きく低下する。
【0027】
【表3】
Figure 0003940651
【0028】
(実施例
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れた。つぎにスラリー状25%水酸化カルシウム4kgをプラスチック容器に入れ、リン酸(1+3)1.0Kgを加えてスラリー状の混合物を作製した。これを排水に加えた後、攪拌しながら煙道ガス(ボイラーガス、二酸化炭素濃度約10%)で溶液のpHが8.5になるまでバブリングした。ただし、硫酸は以下の実施例3と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。表4には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は、参考例1より向上した。これは、実施例と同様な理由によるものと考えられる。回収コストは、実施例に比べ若干高くなったが、処理排水中のフッ素濃度は実施例より低下した。
【0029】
【表4】
Figure 0003940651
【0030】
(実施例
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れた。つぎにスラリー状25%水酸化カルシウム2kgをプラスチック容器に入れ、リン酸(1+3)0.5Kgを加えてスラリー状の混合物を作製した。これを排水に加えた後、攪拌しながら煙道ガス(ボイラーガス、二酸化炭素濃度約10%)で溶液のpHが8.5になるまでバブリングした。以下は実施例と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。ただし、硫酸は1.25Kg使用した。表5には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は、参考例1より更に向上した。これは、実施例と同様な理由によるものと考えられる。処理排水中のフッ素濃度は実施例に比べ若干高くなったが、回収コストは実施例より低下した。
【0031】
【表5】
Figure 0003940651
【0032】
(比較例1)
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れた。つぎにスラリー状25%水酸化カルシウム4kgをプラスチック容器に入れ、煙道ガスでバブリングすることなく、5分間攪拌した。この溶液を希硫酸を用いてpH8.0に調整した後、塩基性ポリ塩化アルミニウム溶液(10%)1Lを加えて約5分間攪拌した。更に高分子凝集剤(0.05%)溶液を1L加えて、約10分間攪拌して凝集沈殿させた。以下は実施例1と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。表6には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は、実施例1に比べ低いものであり、しかも処理排水のF濃度も排水基準値(8mg/L)以上であった。これらのことから、実用性に乏しいと云えるものである。
【0033】
【表6】
Figure 0003940651
【0034】
(比較例2)
ふっ素濃度250mg/Lの排水1000Lを反応容器に入れた。つぎにスラリー状25%水酸化カルシウム16kgをプラスチック容器に入れ、煙道ガスでバブリングすることなく、5分間攪拌した。この溶液を希硫酸を用いてpH8.0に調整した後、塩基性ポリ塩化アルミニウム溶液(10%)1Lを加えて約5分間攪拌した。更に高分子凝集剤(0.05%)溶液を1L加えて、約10分間攪拌して凝集沈殿させた。以下は実施例1と同様な操作を行なってフッ化水素酸を回収した。だだし、フッ化水素酸を発生させるための硫酸は、10Kg使用した。表7には、フッ素回収用合成物中の固形分成分比、フッ化水素酸の回収率、排水1mあたりの排水処理も含めたフッ化水素酸の回収における薬品使用コストおよび処理排水中のフッ素濃度を示す。フッ化水素酸の回収率は比較的高く、処理排水のF濃度も排水基準値(8mg/L)以下であった。しかし、回収コストが比較例1に比べ、約4倍上昇した。このことから、経済性に乏しいと云える。
【0035】
【表7】
Figure 0003940651
【0036】
以上の実施例および比較例で説明したように、本発明の回収方法によれば、二酸化炭素を用いていない比較例と比べて、フッ化水素酸の回収率および処理後の排水中に含まれるフッ素イオン濃度のいずれにおいても、優れており、かつ経済的であることが判明した。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明によれば、簡便な工程によって、フッ素排水からの回収の効率を向上させ、経済的なフッ化水素酸の回収を行うことができる。

Claims (2)

  1. フッ素含有水に、リン系化合物を含有するカルシウム系化合物反応剤を添加してフッ化カルシウム含有反応生成物を生成させた後、前記フッ化カルシウム含有反応物を無機酸と反応させてフッ化水素酸を回収する方法において、
    前記フッ素含有水に前記カルシウム系化合物反応剤を添加して処理を行なう際に、この反応系に二酸化炭素を添加することを特徴とするフッ化水素酸の回収方法。
  2. 前記リン系化合物を含有するカルシウム系化合物反応剤が、カルシウム系化合物とリン系化合物との反応により生成した水酸化リン酸カルシウム系化合物であることを特徴とする請求項に記載のフッ化水素酸の回収方法。
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